(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つの被接合部材を接合するべく、前記2つの被接合部材の間にホットメルト接着剤を挟み込んだ状態で前記2つの被接合部材が並ぶ方向において磁束線を貫通させる態様での誘導加熱を行うことによって前記被接合部材を加熱する際に、前記2つの被接合部材を前記ホットメルト接着剤に押し付ける状態で挟み込むクランプであって、
前記2つの被接合部材を挟み込む部分である一対の口金は、その一部分が、他の部分と比較して前記被接合部材への伝熱を抑える形状の伝熱抑制部からなる
ことを特徴とするクランプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した態様で被接合部材を接合する際には、電磁コイルを用いた誘導加熱によって被接合部材(詳しくは、ホットメルト接着剤)を加熱することが考えられる。この誘導加熱では、例えば電磁コイルに、2つの被接合部材が並ぶ方向においてそれら被接合部材を磁束線が貫通する態様の磁束を発生させる。この電磁コイルが発生する磁束によって被接合部材の表面が加熱されるようになる。
【0005】
ここで、電磁コイルの特性上、電磁コイルの形状を設定することによって磁束が発生する範囲を定めることができる一方で、同範囲内の各部における磁束密度を個別に定めることは困難である。そのため、誘導加熱によって被接合部材を加熱する際には、同被接合部材の各部の温度を細かく管理することが困難であり、場合によっては、被接合部材が部分的に過熱状態になって同被接合部材の変形を招いたり、ホットメルト接着剤の一部分の温度を十分に上昇させることができなくなって被接合部材の接合強度の低下を招いたりするおそれがある。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘導加熱によって被接合部材を加熱して接合するときの同被接合部材の各部の温度を容易に定めることのできるクランプ、および同クランプを用いて好適な接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのクランプは、2つの被接合部材を接合するべく、前記2つの被接合部材の間にホットメルト接着剤を挟み込んだ状態で前記2つの被接合部材が並ぶ方向において磁束線を貫通させる態様での誘導加熱を行うことによって前記被接合部材を加熱する際に、前記2つの被接合部材を前記ホットメルト接着剤に押し付ける状態で挟み込むクランプであって、前記2つの被接合部材を挟み込む部分である一対の口金は、その一部分が、他の部分と比較して前記被接合部材への伝熱を抑える形状の伝熱抑制部からなる。
【0008】
上記クランプを用いて2つの被接合部材が並ぶ方向において磁束線を貫通させる態様での誘導加熱を行うことにより、2つの被接合部材と、それら被接合部材を挟んでいる口金とが加熱されるようになる。そして、口金の一部分が被接合部材への伝熱が抑えられる形状であるため、口金から被接合部材への伝熱を被接合部材の任意の部分において抑えることができる。これにより、誘導加熱に際して、口金から被接合部材への伝熱を同被接合部材の任意の部分においては抑える一方で、他の部分においては抑えることなく許容することができるため、被接合部材の各部の温度を細かく管理することができるようになる。このように上記クランプによれば、隣接する被接合部材への口金からの伝熱が部分的に抑えられるように同口金の形状を設定するといった容易な設定作業を通じて、誘導加熱によって被接合部材を加熱して接合するときの同被接合部材の各部の温度を容易に定めることができる。
【0009】
上記クランプにおいて、前記伝熱抑制部は、前記被接合部材を挟み込む方向における前記口金の肉厚が部分的に厚い部分であることが好ましい。
上記クランプを用いた誘導加熱では、先ず、同クランプの口金の表面(詳しくは、被接合部材に接触する面[接触面]と反対側の面)の温度が高くなる。そして、この表面の熱が口金における上記接触面まで伝わるとともに同接触面から被接合部材に伝達されることにより、被接合部材が加熱される。このことから、クランプの口金の肉厚が厚いほど、誘導加熱に際して口金の表面で発生した熱が接触面に伝わるまでに要する時間が長くなり、その熱が被接合部材に伝達され難くなると云える。
【0010】
上記クランプによれば、口金の肉厚を部分的に厚くした部分を伝熱抑制部にしているため、この伝熱抑制部における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0011】
上記クランプにおいて、前記伝熱抑制部は、前記口金において前記被接合部材を挟み込む方向に延びる貫通口であることが好ましい。
口金において貫通口が形成された部分では、同口金と被接合部材とが接触しないために、口金から被接合部材への伝熱が殆どなされない。上記クランプによれば、口金に形成された貫通口を伝熱抑制部にしているため、この伝熱抑制部における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0012】
上記クランプにおいて、前記伝熱抑制部は、前記被接合部材を挟む面に沿う方向における前記口金の縁が切り欠かれた形状の部分であることが好ましい。
口金において縁が切り欠かれた部分では、同口金と被接合部材とが接触しないために、口金から被接合部材への伝熱が殆どなされない。上記クランプによれば、口金の縁が切り欠かれた部分を伝熱抑制部にしているため、この伝熱抑制部における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0013】
上記課題を解決するための接合方法は、ホットメルト接着剤によって2つの被接合部材を接合する接合方法であって、前記2つの被接合部材の間に前記ホットメルト接着剤を挟む第1工程と、前記2つの被接合部材を、前記ホットメルト接着剤に押し付けた状態でクランプの一対の口金によって挟み込む第2工程と、前記一対の口金によって前記2つの被接合部材を挟み込んだ状態で、前記2つの被接合部材および前記一対の口金が並ぶ方向において磁束線を貫通させる態様での誘導加熱を行う第3工程と、を含み、前記クランプとして、前記口金の一部分が同口金の他の部分と比較して前記被接合部材への伝熱を抑える形状の伝熱抑制部からなるものを用いる。
【0014】
上記接合方法によれば、2つの被接合部材が並ぶ方向において磁束線を貫通させる態様での誘導加熱が行われるために、2つの被接合部材と、それら被接合部材を挟んでいるクランプの口金とが加熱されるようになる。そして、クランプの口金の一部分が被接合部材への伝熱が抑えられる形状であるため、口金から被接合部材への伝熱を被接合部材の任意の部分において抑えることができる。これにより、誘導加熱に際して、口金から被接合部材への伝熱を同被接合部材の任意の部分においては抑える一方で、他の部分においては抑えることなく許容することができるため、被接合部材の各部の温度を細かく管理することができるようになる。このように上記接合方法によれば、隣接する被接合部材への口金からの伝熱が部分的に抑えられるように同口金の形状を設定するといった容易な設定作業を通じて、誘導加熱によって被接合部材を加熱して接合するときの同被接合部材の各部の温度を容易に定めることができる。
【0015】
上記接合方法において、前記クランプとして、前記被接合部材を挟み込む方向における前記口金の肉厚を部分的に厚くして前記伝熱抑制部にしたものを用いることが好ましい。
上記誘導加熱では、先ず、クランプの口金の表面(詳しくは、被接合部材に接触する面[接触面]と反対側の面)の温度が高くなる。そして、この表面の熱が口金における上記接触面まで伝わるとともに同接触面から被接合部材に伝達されることにより、被接合部材が加熱される。このことから、口金の肉厚が厚いほど、誘導加熱に際して口金の表面で発生した熱が接触面に伝わるまでに要する時間が長くなり、その熱が被接合部材に伝達され難くなると云える。
【0016】
上記接合方法によれば、クランプが口金の肉厚を部分的に厚くした部分である伝熱抑制部を有しているため、この伝熱抑制部における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0017】
上記接合方法において、前記クランプとして、前記口金において前記被接合部材を挟み込む方向に延びる貫通口が形成された部分を前記伝熱抑制部にしたものを用いることが好ましい。
【0018】
クランプの口金において貫通口が形成された部分では、同口金と被接合部材とが接触しないために、口金から被接合部材への伝熱が殆どなされない。上記接合方法によれば、クランプの口金が貫通口を有しているため、この貫通口が形成された部分(伝熱抑制部)における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0019】
上記接合方法において、前記クランプとして、前記被接合部材を挟む面に沿う方向における前記口金の縁が切り欠かれた部分を前記伝熱抑制部にしたものを用いることが好ましい。
【0020】
クランプの口金において縁が切り欠かれた部分では、同口金と被接合部材とが接触しないために、口金から被接合部材への伝熱が殆どなされない。上記接合方法によれば、口金の縁が切り欠かれた部分である伝熱抑制部をクランプが有しているため、この伝熱抑制部における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0021】
上記接合方法において、前記クランプとして、前記一対の口金によって前記被接合部材を挟み込んだ状態において前記被接合部材から部分的に離間して延びる部分を前記伝熱抑制部にしたものを用いることが好ましい。
【0022】
一対の口金によって被接合部材を挟み込んだ状態において口金の一部を被接合部材から離間して延びる形状にすると、その離間して延びる部分(離間部分)では口金と被接合部材とが接触しないために、口金から被接合部材への伝熱が殆どなされない。上記接合方法によれば、そうした離間部分である伝熱抑制部を有するクランプが用いられるため、この伝熱抑制部における口金から被接合部材への伝熱を、他の部分における口金から被接合部材への伝熱と比較して抑えることができる。
【0023】
上記接合方法において、前記クランプとして、前記一対の口金の少なくとも一方が、前記2つの被接合部材を挟み込んだ状態で隣接する同被接合部材の形成材料よりも電流浸透深さの浅い材料からなるものを用いることが好ましい。
【0024】
誘導加熱では、加熱対象(被接合部材や口金)の形成材料が電流浸透深さの浅い材料であるほど、同加熱対象の温度を上昇させ易い。上記接合方法では、誘導加熱に際して、電流浸透深さが深い材料からなる被接合部材の温度はさほど上昇せず、電流浸透深さが比較的浅い材料からなる口金の温度は大きく上昇するようになる。そのため、クランプの口金の各部から被接合部材に伝達される熱量を細かく設定することができれば、被接合部材の各部の温度を細かく設定することができるようになる。
【0025】
上記接合方法によれば、クランプの口金に伝熱抑制部を設けることによって口金の各部から被接合部材に伝達される熱量を細かく設定することができるため、誘導加熱によって被接合部材を加熱して接合するときの同被接合部材の各部の温度を細かく定めることができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、誘導加熱によって被接合部材を加熱して接合するときの同被接合部材の各部の温度を容易に定めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、クランプおよび接合方法の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、インナーフレーム11とアウターフレーム12とが、ホットメルト接着剤13によって接着される。インナーフレーム11およびアウターフレーム12は、車両のバックドアのフレームの一部を構成するものである。インナーフレーム11は樹脂材料(具体的には、ポリプロピレン)によって長方形の平板形状に形成されており、アウターフレーム12は、金属材料(具体的には、アルミニウム合金)によって長方形の平板形状に形成されている。また、ホットメルト接着剤13は、主成分として、熱可塑性プラスチックからなる。なお本実施形態では、インナーフレーム11およびアウターフレーム12が2つの被接合部材に相当する。
【0029】
以下、インナーフレーム11とアウターフレーム12との接合に用いる装置について説明する。
図2および
図3に示すように、接合装置20は、ホットメルト接着剤13を間に挟んだ状態のインナーフレーム11とアウターフレーム12とを、同ホットメルト接着剤13に押し付けた状態で挟み込むクランプ30を有している。
【0030】
クランプ30は、S字形状に形成されたレバー31と、逆S字形状に形成されたレバー32とを備えている。これらレバー31,32は、その延設方向における中間部分において、相対回転可能に軸支されている。各レバー31,32の一方(
図2における右側)の端部にはインナーフレーム11とアウターフレーム12とを挟み込む部分である口金31A,32Aが設けられており、他方(
図2における左側)の端部が口金31A,32Aを開閉操作する操作部31B,32Bになっている。
【0031】
図3および
図4に示すように、口金31Aは、レバー31の先端から突出する形状であり、一対の口金31A,32Aによってインナーフレーム11とアウターフレーム12と挟み込んだ状態において、アウターフレーム12に隣接する位置で同アウターフレーム12に押し付けられる形状である。口金31Aは、一対の口金31A,32Aによって各フレーム11,12を挟み込む方向S(
図4における上下方向)における断面が長方形状である。また口金31Aは、上記挟み込む方向Sにおける肉厚が、同口金31Aのレバー31からの突出方向P(
図4における左右方向)における中央部分において最も厚く、同中央部分から離れるに連れて薄くなる形状である。
【0032】
このように口金31Aの上記挟み込む方向Sにおける肉厚は、上記突出方向Pにおける中央部分およびその周辺部分(伝熱抑制部34)において部分的に厚くなっている。本実施形態では、口金31Aの上記突出方向Pにおける中央部分およびその周辺部分が、他の部分と比較してアウターフレーム12への伝熱を抑える形状の伝熱抑制部34として機能する。
【0033】
また、口金32Aは、レバー32の先端から突出する形状であり、一対の口金31A,32Aによってインナーフレーム11とアウターフレーム12と挟み込んだ状態において、インナーフレーム11に隣接する位置で同インナーフレーム11に押し付けられる形状である。口金32Aは、上記挟み込む方向Sにおける断面が長方形の平板形状である。
【0034】
口金31Aは「炭素鋼」によって形成されており、口金32Aは「ステンレス鋼」によって形成されている。また、2本のレバー31,32は「ステンレス鋼」によって形成されている。本実施形態では、インナーフレーム11とアウターフレーム12とをクランプ30によって挟み込んだ状態において、アルミニウム合金からなるアウターフレーム12に隣接する口金31Aの形成材料(炭素鋼)が、ポリプロピレンからなるインナーフレーム11に隣接する口金32Aの形成材料(ステンレス鋼)よりも電流浸透深さの浅い材料である。また本実施形態では、口金31Aの形成材料(炭素鋼)が、インナーフレーム11とアウターフレーム12とをクランプ30によって挟み込んだ状態で同口金31Aに隣接するアウターフレーム12の形成材料(アルミニウム合金)よりも電流浸透深さの浅い材料である。
【0035】
クランプ30における各操作部31B,32Bの間には、それら操作部31B,32Bを互いに離間する方向に付勢するスプリング33が取り付けられている。そして、スプリング33の付勢力に抗して各レバー31,32の操作部31B,32Bを操作して、それら操作部31B,32Bを近づけることにより、一対の口金31A,32Aが互いに遠ざかり、口金31A,32Aの間にインナーフレーム11とアウターフレーム12とを挿入可能な状態になる。また、各レバー31,32の操作部31B,32Bを操作しない状態にして、スプリング33の付勢力によって各レバー31,32の操作部31B,32Bを離間させて一対の口金31A,32Aを互いに近づけることにより、それら口金31A,32Aの間にインナーフレーム11とアウターフレーム12とを挟み込むことの可能な状態になる。
【0036】
図2に示すように、接合装置20は、磁界を発生させるための電磁コイル21と、同電磁コイル21に電力を供給する高周波電源22とを有している。電磁コイル21は、口金31A,32Aの並び方向(
図2における上下方向)において、それら口金31A,32Aと並ぶ位置(
図2における口金31A,32Aの上方)に配置されている。これにより、電磁コイル21に電力を供給して磁束を発生させた場合に、その発生磁束が、口金31A,32Aの並び方向においてそれら口金31A、32Aを貫通するようになっている。また、この場合に、一対の口金31A,32Aにインナーフレーム11とアウターフレーム12とが挟み込まれた状態(
図2に示す状態)であると、電磁コイル21が発生する磁束が、各フレーム11,12が並ぶ方向においてそれらフレーム11,12を貫通するようになる。
【0037】
また、接合装置20は、冷却水が貯留されたタンク23と、同タンク23内の冷却水を圧送するポンプ24と、レバー31における口金31Aに隣接する部分に巻き付けられる形状で延設されるとともにポンプ24によって圧送された冷却水が内部に導入される冷却水管25とを有している。ポンプ24によって圧送された冷却水は、冷却水管25の内部を通過した後に、タンク23内に戻される。このとき、冷却水管25の内部を通過する冷却水とレバー31との熱交換を通じて、同レバー31(詳しくは、電流浸透深さの浅い炭素鋼からなる口金31Aに隣接する部分)が冷却される。
【0038】
以下、接合装置20を用いて、インナーフレーム11とアウターフレーム12とを接合する方法について説明する。
<第1工程>
先ず、第1工程において、
図1に示すように、インナーフレーム11とアウターフレーム12との間にシート状のホットメルト接着剤13が挟み込まれる。
【0039】
<第2工程>
その後の第2工程では、
図2に示すように、ホットメルト接着剤13を間に挟んだ状態のインナーフレーム11とアウターフレーム12とがクランプ30の一対の口金31A,32Aに挟み込まれる。これにより、インナーフレーム11とアウターフレーム12とが、ホットメルト接着剤13に押し付けられた状態でクランプ30の一対の口金31A,32Aによって挟み込まれた状態になる。
【0040】
<第3工程>
その後の第3工程では、所定時間にわたり、高周波電源22から電磁コイル21に電力が供給される。電磁コイル21への電力供給時には、同電磁コイル21が発生する磁束により、炭素鋼からなる口金31A、アルミニウム合金からなるアウターフレーム12、およびステンレス鋼からなる口金32Aが発熱して加熱される。これにより、インナーフレーム11とアウターフレーム12とが、クランプ30の口金31A,32Aによって挟み込まれた状態で加熱されるようになる。そして、これらインナーフレーム11およびアウターフレーム12からの伝熱により、各フレーム11,12の間に挟まれたホットメルト接着剤13が加熱されて溶ける。その後において電磁コイル21への電力供給が停止されると、一旦溶けたホットメルト接着剤13が冷えて固まることにより、インナーフレーム11とアウターフレーム12とが接着(接合)されるようになる。
【0041】
また第3工程では、ポンプ24が作動して冷却水が圧送される。これにより、冷却水管25内を冷却水が流れるため、レバー31における口金31Aに隣接する部分が冷却されるようになる。
【0042】
以下、クランプ30を用いてインナーフレーム11とアウターフレーム12とを接合することによる作用効果について説明する。
図4に示すように、クランプ30を用いた誘導加熱では、先ず、同クランプ30の口金31Aの表面35(詳しくは、アウターフレーム12に接触する面[接触面36]と反対側の面)の温度が高くなる。そして、この熱が口金31Aの内部を介して上記接触面36まで伝わるとともに同接触面36からアウターフレーム12に伝達されることにより、同アウターフレーム12が加熱される。このことから、口金31Aの上記挟み込む方向Sにおける肉厚が厚いほど、口金31Aの表面35と接触面36との距離(
図4中にL1,L2で示す距離)が長くなるため、誘導加熱に際して口金31Aの表面35で発生した熱が接触面36に伝わるまでに要する時間が長くなり、その熱がアウターフレーム12に伝達され難くなると云える。
【0043】
本実施形態では、口金31Aの上記挟み込む方向Sにおける肉厚が、上記突出方向Pにおける中央部分において最も厚く、同中央部分から離れるに連れて薄くなる。そのため、誘導加熱時における口金31Aからアウターフレーム12への伝熱が、同口金31Aの上記突出方向Pにおける中央部分(上記肉厚が最も厚い部分)において最も抑えられる。そして、上記中央部分から離れるに連れて、口金31Aからアウターフレーム12への伝熱が抑えられずに許容されるようになる。
【0044】
なお本実施形態では、発明者らによる各種実験の結果をもとにホットメルト接着剤13の各部の温度を適切な温度にすることが可能になる口金31Aの各部の肉厚が予め求められており、その求めた結果をもとに口金31Aの各部の肉厚が定められている。本実施形態では、口金31Aの上記突出方向Pにおける中央部分およびその周辺からのアウターフレーム12への伝熱を他の部分からのアウターフレーム12への伝熱と比較して抑えることにより、ホットメルト接着剤13の各部の温度が均一になる。この点をふまえて、口金31Aの上記挟み込む方向Sにおける肉厚を、上記突出方向Pにおける中央部分において最も厚くするとともに、同中央部分から離れるに連れて薄くしている。
【0045】
このように、クランプ30を用いた接合方法によれば、アウターフレーム12への口金31Aからの伝熱が部分的に抑えられるように同口金31Aの各部の肉厚を設定するといった容易な設定作業を通じて、誘導加熱によって各フレーム11,12を加熱して接合するときのアウターフレーム12の各部の温度を細かく管理することができる。なお、電磁コイル21の形状や電磁コイル21に供給する電力を綿密に検討した上で設定することにより、誘導加熱時におけるアウターフレーム12の各部の温度を大まかに管理することは可能になる。とはいえ、そうした設定手法では、アウターフレーム12の各部の温度を細かく管理することは困難である。
【0046】
本実施形態によれば、口金31Aからの伝熱によってアウターフレーム12の各部を適切に加熱することができるため、このアウターフレーム12からの伝熱によってホットメルト接着剤13の全体を適切に加熱して溶かすことができる。したがって、ホットメルト接着剤13によるインナーフレーム11とアウターフレーム12との接合を好適に行うことができる。
【0047】
誘導加熱では、被接合部材(インナーフレーム11およびアウターフレーム12)の形成材料が電流浸透深さの深い材料であるほど、同被接合部材の温度を上昇させ難い。本実施形態では、アウターフレーム12が、その形成材料として広く用いられている炭素鋼と比較して電流浸透深さの深いアルミニウム合金によって形成されている。また、インナーフレーム11が、誘導加熱では発熱することのないポリプロピレンによって形成されている。そのため、単にホットメルト接着剤13を間に挟んだ状態のインナーフレーム11とアウターフレーム12とに電磁コイル21が発生する磁束を貫通させても、インナーフレーム11やアウターフレーム12の温度を十分に上昇させることができない可能性がある。そして、この場合には、ホットメルト接着剤13を適正に加熱することができず、同ホットメルト接着剤13によるインナーフレーム11とアウターフレーム12との接合を適切に行えなくなってしまう。
【0048】
本実施形態によれば、アウターフレーム12が電流浸透深さの深いアルミニウム合金によって形成されているとはいえ、インナーフレーム11とアウターフレーム12とをクランプ30によって挟み込んだ状態で同アウターフレーム12に隣接する口金31Aが、アルミニウム合金よりも電流浸透深さの浅い炭素鋼によって形成されている。そのため、誘導加熱により、アルミニウム合金からなるアウターフレーム12を加熱することに加えて、アルミニウム合金よりも電流浸透深さの浅い炭素鋼からなる口金31Aを効率良く加熱することができる。そして、この口金31Aからの伝熱によってアウターフレーム12を効率よく加熱することができるため、このアウターフレーム12からの伝熱によってホットメルト接着剤13を加熱して溶かすことができ、同ホットメルト接着剤13によってインナーフレーム11とアウターフレーム12とを接合することができる。
【0049】
このように上記クランプ30を用いた接合方法によれば、誘導加熱を利用して効率良くインナーフレーム11とアウターフレーム12とを接合することができる。
また、クランプ30を用いた誘導加熱に際して、アルミニウム合金からなるアウターフレーム12の温度はさほど上昇せず、炭素鋼からなる口金31Aの温度は大きく上昇するようになる。そのため、クランプ30の口金31Aの各部からアウターフレーム12に伝達される熱量を細かく設定することができれば、同アウターフレーム12の各部の温度を細かく設定することができるようになる。
【0050】
本実施形態によれば、口金31Aの各部の上記挟み込む方向Sにおける肉厚を設定することによって、口金31Aの各部からアウターフレーム12に伝達される熱量を細かく設定することができるため、誘導加熱によってアウターフレーム12を加熱して接合するときの同アウターフレーム12の各部の温度を細かく定めることができる。
【0051】
ここで仮に、アウターフレーム12とインナーフレーム11との接合に際して、耐熱性の高いアルミニウム合金からなるアウターフレーム12に見合う高い温度まで同アウターフレーム12とインナーフレーム11とを加熱する。この場合には、アウターフレーム12の温度を十分に高くしてホットメルト接着剤13を適正に加熱することができるものの、耐熱性の低いポリプロピレンからなるインナーフレーム11が溶ける等して不要に変形するおそれがある。また仮に、ポリプロピレンからなるインナーフレーム11に見合う比較的低い温度まで同インナーフレーム11とアウターフレーム12とを加熱する。この場合には、インナーフレーム11の不要な変形が抑えられるものの、インナーフレーム11およびアウターフレーム12の温度を十分に高くすることができずに、ホットメルト接着剤13によるインナーフレーム11とアウターフレーム12との接合を適切に行えなくなる可能性がある。
【0052】
上記クランプ30では、インナーフレーム11とアウターフレーム12とを挟み込んだ状態でアルミニウム合金からなるアウターフレーム12に隣接する口金31Aが、電流浸透深さの浅い炭素鋼によって形成されている。そのため、誘導加熱によってアウターフレーム12を十分に高い温度に加熱することができ、同アウターフレーム12からの伝熱によってホットメルト接着剤13を適正に加熱することができる。このときアウターフレーム12が溶ける等して変形することもない。
【0053】
しかも上記クランプ30では、インナーフレーム11とアウターフレーム12とを挟み込んだ状態でポリプロピレンからなるインナーフレーム11に隣接する口金32Aが、電流浸透深さの深いステンレス鋼によって形成されている。これにより、耐熱性の高いアウターフレーム12と比較して、耐熱性の低いインナーフレーム11を加熱され難くすることができる。そのため、クランプ30にアウターフレーム12を十分に加熱する機能を発揮させつつ、同クランプ30にインナーフレーム11を加熱され難くして同インナーフレーム11の不要な変形を抑える機能を発揮させることもできる。
【0054】
クランプ30では、口金31Aが電流浸透深さの浅い炭素鋼によって形成されている。そのため、誘導加熱によるインナーフレーム11とアウターフレーム12との接合に際して口金31Aの温度が高くなり、クランプ30全体の温度が高くなって不要な変形を招くなど、クランプ30の信頼性の低下を招くおそれがある。本実施形態によれば、誘導加熱によってインナーフレーム11とアウターフレーム12とを接合する際に、ポンプ24によって冷却水が圧送されて、レバー31の口金31Aに隣接する部分が冷却される。そのため、クランプ30における口金31A以外の部分の温度上昇を抑えることができ、同クランプ30の過熱による信頼性の低下を抑えることができる。
【0055】
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)口金31Aの各部の肉厚を設定するといった容易な設定作業を通じて、誘導加熱によって各フレーム11,12を加熱して接合するときのアウターフレーム12の各部の温度を容易に定めることができる。
【0056】
(2)クランプ30の口金31Aの形成材料(炭素鋼)を、インナーフレーム11とアウターフレーム12とをクランプ30によって挟み込んだ状態で同口金31Aに隣接するアウターフレーム12の形成材料(アルミニウム合金)よりも電流浸透深さの浅い材料にした。そのため、口金31Aの各部の上記挟み込む方向Sにおける肉厚を設定することによって、口金31Aの各部からアウターフレーム12に伝達される熱量を細かく設定することができ、誘導加熱によってアウターフレーム12を加熱して接合するときの同アウターフレーム12の各部の温度を細かく定めることができる。
【0057】
(第2実施形態)
以下、クランプおよび接合方法の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、以下では第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して示し、その詳細な説明は割愛する。
【0058】
本実施形態と第1実施形態とは、アウターフレームの構造と、クランプの口金の形状とが異なる。
ここでは先ず、本実施形態のアウターフレームの構造について説明する。
【0059】
図5(a)および
図5(b)に示すように、アウターフレーム40は、金属材料(具体的にはアルミニウム合金)によって長方形の略平板形状に形成されたベース部41を有している。このベース部41には、前記挟み込む方向S(
図5(b)の上下方向)において断面円形状で延びる第1部材43が一体に設けられている。第1部材43は、樹脂材料(具体的にはポリプロピレン)によって形成されており、ベース部41の長方形の長手方向における一方(
図5(a)の上方)の端部近傍の位置であり、且つ、ベース部41の長方形の短手方向(前記突出方向P[
図5の左右方向])における中央部分に設けられている。また、ベース部41には、断面四角形状で延びる第2部材44が一体に設けられている。この第2部材44は、樹脂材料(具体的にはポリプロピレン)によって形成されており、ベース部41の長方形の長手方向における他方(
図5(a)における下方)の端部近傍において、上記突出方向P(
図5の左右方向)における一方の端部から他方の端部まで延びる形状である。
【0060】
次に、本実施形態のクランプの口金の形状について説明する。
図6および
図7に示すように、クランプ50の一対の口金51A,32Aのうちの一方(口金51A)は、平板形状の第1接触部52と、平板形状の第2接触部53と、それら第1接触部52および第2接触部53を接続する湾曲した形状のアーチ部54とを有している。これら第1接触部52、第2接触部53、およびアーチ部54は一体に形成されている。
【0061】
第1接触部52は前記挟み込む方向Sにおいて断面円形状で延びる貫通口55(
図6)を有している。第1接触部52は、一対の口金51A,32Aによってインナーフレーム11とアウターフレーム40とを挟み込んだ状態になると、貫通口55の内面が第1部材43の周囲を囲む態様でアウターフレーム40に押し付けられた状態になる。
【0062】
第2接触部53は、一対の口金51A,32Aによってインナーフレーム11とアウターフレーム40とを挟み込んだ状態になると、アウターフレーム40の長方形状における一方(
図6の下方)の端部近傍に押し付けられた状態になる。
【0063】
アーチ部54は、一対の口金51A,32Aによってインナーフレーム11とアウターフレーム40とを挟み込んだ状態において、全体がアウターフレーム40(詳しくは、第2部材44が配設された部分とその近傍の部分)から離間した位置で延びるように、一方向(
図7における左方向)に凸の形状で湾曲している。また、
図6に示すように、アーチ部54の上記突出方向Pにおける長さが、第1接触部52の上記突出方向Pにおける長さや第2接触部53の上記突出方向Pにおける長さよりも短くなっている。
【0064】
本実施形態では、口金51Aにおける貫通口55とアーチ部54とが、被接合部材への伝熱を抑える形状の伝熱抑制部に相当する。
以下、クランプ50を用いてインナーフレーム11とアウターフレーム40とを接合することによる作用効果について説明する。
【0065】
クランプ50を用いて誘導加熱を行うことにより、アウターフレーム40と、各フレーム11,40を挟んでいる一対の口金51A,32Aとが加熱されるようになる。
図8に示すように、クランプ50の口金51Aにおいて貫通口55が形成された部分では、一対の口金51A,32Aによって各フレーム11,40を挟み込んだ状態(
図8に示す状態)において、同口金51Aとアウターフレーム40とが接触しない。そのため、アウターフレーム40における上記貫通口55に対向する部分には、口金51Aからの伝熱が殆どなされない。したがって、アウターフレーム40における上記貫通口55に対向する部分を介した口金51Aからアウターフレーム40への伝熱は、アウターフレーム40における他の部分(具体的には、第1接触部52と接触する部分や第2接触部53に接触する部分)を介した口金51Aからアウターフレーム40への伝熱と比較して抑えられるようになる。これにより、第1部材43およびその周辺への伝熱が抑えられて、同第1部材43の温度上昇が抑えられるため、第1部材43が溶けるなどといった過熱による第1部材43の不要な変形を回避することができる。
【0066】
また
図9に示すように、口金51Aのアーチ部54は、一対の口金51A,32Aによって各フレーム11,40を挟み込んだ状態においてアウターフレーム40から離間して延びる形状であるため、同アウターフレーム40と接触しない。そのため、アウターフレーム40における上記アーチ部54に対向する部分には、口金51Aからの伝熱が殆どなされない。したがって、アウターフレーム40における上記アーチ部54に対向する部分を介した口金51Aからアウターフレーム40への伝熱は、アウターフレーム40における他の部分(具体的には、第1接触部52と接触する部分や第2接触部53に接触する部分)を介した口金51Aからアウターフレーム40への伝熱と比較して抑えられるようになる。
【0067】
アウターフレーム40における上記アーチ部54に対向する部分には、第2部材44が設けられている。上記クランプ50を用いて誘導加熱を行うことにより、第2部材44およびその周辺への伝熱が抑えられるため、同第2部材44の温度上昇を抑えることができ、第2部材44が溶けるなどといった過熱による第2部材44の不要な変形を回避することができる。
【0068】
このように本実施形態によれば、誘導加熱時における口金51Aからアウターフレーム40への伝熱を、アウターフレーム40における温度上昇を抑えたい部分においては抑える一方で、アウターフレーム40における加熱が必要な部分においては抑えることなく許容することができる。これにより、アウターフレーム40の各部の温度を細かく管理することができる。また、クランプ50によれば、アウターフレーム40への口金51Aからの伝熱が部分的に抑えられるように口金51Aに貫通口55やアーチ部54を設けるといった容易な作業を通じて、誘導加熱によってアウターフレーム40を加熱して接合するときの同アウターフレーム40の各部の温度を容易に定めることができる。
【0069】
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(3)口金51Aに貫通口55やアーチ部54を設けるといった容易な作業を通じて、誘導加熱によってアウターフレーム40を加熱して接合するときの同アウターフレーム40の各部の温度を容易に定めることができる。
【0070】
(4)クランプ50を用いた誘導加熱に際して、アルミニウム合金からなるアウターフレーム40の温度はさほど上昇せず、炭素鋼からなる口金51Aの温度は大きく上昇するようになる。そのため、クランプ50の口金51Aの各部からアウターフレーム40に伝達される熱量を細かく設定することができれば、同アウターフレーム40の各部の温度を細かく設定することができるようになる。本実施形態によれば、口金51Aに貫通口55やアーチ部54を設けることによって口金51Aの各部からアウターフレーム40に伝達される熱量を細かく設定することができるため、誘導加熱によってアウターフレーム40を加熱して接合するときの同アウターフレーム40の各部の温度を細かく定めることができる。
【0071】
(5)アーチ部54の上記突出方向Pにおける長さを、第1接触部52の上記突出方向Pにおける長さや第2接触部53の上記突出方向Pにおける長さよりも短くした。これにより、アーチ部54の上記突出方向Pにおける長さが第1接触部52や第2接触部の上記突出方向Pにおける長さと同一であるものと比較して、誘導加熱に際して電磁コイル21が発生する磁束が貫通する範囲が狭くなるため、口金51A全体の温度を低くすることができる。このように本実施形態によれば、誘導加熱時におけるアウターフレーム40の温度を設定するための設定パラメータとして、アーチ部54の上記突出方向Pにおける長さを用いることができる。
【0072】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第1実施形態において、口金31Aの各部の前記挟み込む方向Sにおける肉厚は、任意に変更することができる。例えば
図10に示すように、一対の口金61A,32Aのうちの一方(口金61A)を、前記挟み込む方向Sにおける肉厚が前記突出方向Pにおける中央部分において最も薄い形状であり、且つ同中央部分から離れるに連れて厚くなる形状にしてもよい。また、
図11に示すように、一対の口金71A,32Aのうちの一方(口金71A)を、前記挟み込む方向Sにおける肉厚が前記突出方向Pにおける中央部分を境に一方側(
図7の右側)が薄くなるとともに他方側(
図7の左側)が厚くなる形状にすることもできる。要は、実験結果などに基づいてホットメルト接着剤13の各部の温度を適切な温度にすることが可能になる口金の各部の肉厚を予め求め、その求めた結果をもとに口金の各部の肉厚を定めればよい。
【0073】
なお、アウターフレームの前記挟み込む方向Sにおける肉厚が同アウターフレームの各部において異なる場合には、ホットメルト接着剤13の各部の温度が十分に高くなるように、アウターフレームの各部の肉厚に適合させて口金の各部の前記挟み込む方向Sにおける肉厚を設定するようにしてもよい。
【0074】
・第2実施形態において、貫通口55の断面形状は任意に変更することができる。また、口金51Aに、前記挟み込む方向Sにおいて延びる貫通口を複数設けてもよい。さらには、アウターフレーム40に設けられる部材(第2実施形態では第1部材43)の過熱による変形が問題にならないのであれば、貫通口55を省略してもよい。
【0075】
・第2実施形態において、アーチ部54の各部における前記突出方向Pの長さは任意に変更することができる。アーチ部54の各部における前記突出方向Pの長さと他の部分(アウターフレーム40に接触する部分)の前記突出方向Pの長さとを同一にしてもよいし、アーチ部54の前記突出方向Pの長さを他の部分の前記突出方向Pの長さよりも長くしてもよい。要は、誘導加熱時におけるアウターフレーム40の温度が所望の温度になるように、アーチ部54の上記突出方向Pにおける長さを定めればよい。
【0076】
・第2実施形態において、アーチ部54の延設形状は任意に変更することができる。また、一対の口金51A,32Aによって各フレーム40,12を挟み込んだ状態においてアウターフレーム40から離間して延びる部分(第2実施形態では、アーチ部54)を口金に複数設けてもよい。さらには、アウターフレーム40に設けられる部材(第2実施形態では第2部材44)の過熱による変形が問題にならないのであれば、アーチ部54を省略してもよい。
【0077】
・
図12に示すように、口金81Aからアウターフレーム80への伝熱が抑えられる形状の伝熱抑制部として、口金81Aに、アウターフレーム80を挟む面に沿う方向(
図12の紙面に沿う方向)における口金81Aの縁が切り欠かれた形状の切り欠き部86を設けるようにしてもよい。
【0078】
口金81Aにおいて切り欠き部86が形成された部分では、口金81Aによってアウターフレーム80を挟んだ状態において、同口金81Aとアウターフレーム80とが接触しない。そのため、アウターフレーム80における上記切り欠き部86に対向する部分には、口金81Aからの伝熱が殆どなされない。したがって、アウターフレーム80における上記切り欠き部86に対向する部分を介した口金81Aから同アウターフレーム80への伝熱は、アウターフレーム80における他の部分(具体的には、口金81Aと接触する部分)を介した口金81Aから同アウターフレーム80への伝熱と比較して抑えられるようになる。これにより、アウターフレーム80に設けられた第3部材85およびその周辺への伝熱が抑えられて、同第3部材85の温度上昇が抑えられるために、第3部材85が溶けるなどといった、過熱による第3部材85の不要な変形を回避することができる。
【0079】
なお樹脂材料からなる装飾部材や、合成ゴムからなるシール部材、発泡ウレタンからなる緩衝部材など、過熱による変形が懸念される部材が一体に設けられているアウターフレームの接合に口金を用いる場合には、同部材およびその周辺の温度が過度に高くならないように、貫通口やアーチ部、切り欠き部などを口金に適宜設ければよい。
【0080】
・各レバー31,32の操作部31B,32Bの間にスプリング33を設けることに代えて、流体(空気やオイル)の圧力によって作動する流体圧シリンダや電動式のアクチュエータなどを設けてもよい。要は、任意のタイミングで、各レバー31,32の操作部31B,32Bを互いに近づけたり遠ざけたりすることができればよい。
【0081】
・レバー31の口金に隣接する部分を冷却するための構成としては、冷却水が流れる冷却水管25を設ける構成の他、冷却水以外の流体(オイルなど)が通過する流体管を設ける構成や、空冷用の放熱フィンを設ける構成、レバーに向けて送風するブロアを設ける構成などを採用することができる。
【0082】
・誘導加熱に起因するクランプ30の過熱が抑えられるのであれば、レバー31の口金に隣接する部分を冷却するための構成(上記各実施形態では、タンク23、ポンプ24、および冷却水管25)を省略してもよい。
【0083】
・クランプにおけるアウタープレートに隣接する口金以外の部分は、アルミニウム合金や耐熱性を有する樹脂材料など、ステンレス鋼以外の材料によって形成してもよい。
・上記各実施形態のクランプや接合方法は、インナーフレームとアウターフレームとが共に金属材料(例えばアルミニウム合金)からなるものにも適用することができる。また、インナーフレームおよびアウターフレームの一方、あるいは両方が炭素繊維を含む材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック[CFRP])からなるものにも、上記各実施形態のクランプや接合方法は適用可能である。そして、インナーフレームおよびアウターフレームが共に耐熱性の高いものになる場合には、クランプの一対の口金を、共に電流浸透深さの浅い材料(例えば、炭素鋼)によって形成してもよい。また、この場合には、インナーフレームの各部の温度が適切な温度になるように、インナーフレームに隣接する口金の各部の上記挟み込む方向Sにおける肉厚を設定したり、同口金に貫通口やアーム部、切り欠き部などを設けたりしてもよい。これにより、誘導加熱によってインナーフレームを加熱して接合するときの同インナーフレームの各部の温度を容易に定めることができる。
【0084】
・被接合部材(インナーフレームまたはアウターフレーム)の形成材料と同被接合部材に隣接する口金の形成材料を同一にしたり、被接合部材の形成材料を同被接合部材に隣接する口金の形成材料よりも電流浸透深さの浅い材料にしたりすることもできる。
【0085】
この場合には、誘導加熱に際して、貫通口や切り欠き部を有する口金を用いると、口金に貫通口や切り欠き部が設けられた部分では、口金の温度の影響を殆ど受けることなく、被接合部材の表面が直接加熱されるようになる。その一方で、口金に貫通口や切り欠き部が設けられていない部分では、被接合部材に押し付けられている口金の表面が加熱されるとともに同表面の熱が口金の内部を伝わって被接合部材に伝達されるといったように、口金の温度の影響を受けつつ、被接合部材が加熱されるようになる。こうしたことから、口金における貫通口や切り欠き部が設けられた部分では被接合部材が加熱され易くなる一方で、口金における貫通口や切り欠き部が設けられていない部分では被接合部材が加熱され難くなると云える。したがって、この場合には、前述したように被接合部材の各部における口金からの伝熱態様の相異を考慮することに加えて、被接合部材の各部における加熱され易さの相異を考慮して口金の形状を定めることにより、誘導加熱によって被接合部材を加熱して接合するときの同接合部材の各部の温度をより細かく定めることができるようになる。
【0086】
・電流浸透深さの浅い材料として、炭素鋼以外の材料を採用することも可能である。
・車両のバックドアのフレームを構成するインナーフレームとアウターフレームとの接合に用いるクランプや接合方法に限らず、ホットメルト接着剤を間に挟んだ状態での2つの被接合部材の接合に用いるクランプや接合方法であれば、上記実施形態のクランプや接合方法は適用可能である。