(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のDCDCコンバータでは、出力開始時の突入電流を防ぐため、出力開始直後の初期段階では、出力の目標値を次第に上昇させるソフトスタート制御が行われる。このソフトスタート制御では、例えば、最終的な目標電流値に向けて制御目標電流値を一定の上昇勾配で次第に上昇させ、制御目標電流値に基づいてPID制御等のフィードバック制御を行いながら出力を増加させるといった制御方式などが採用される。
【0005】
しかしながら、このように出力開始直後にソフトスタート制御を行うと、ソフトスタート制御中の出力電流量が少なくなるため、インダクタ電流が0を下回ることになる期間が生じ、この期間に出力電流の逆流状態が発生してしまうことになる。このような逆流状態が発生すると大きな損失を招くため何らかの対策が求められるが、特許文献1の技術では、このような逆流状態についての対策はなされていない。
【0006】
例えば、
図4には、制御部3以外を
図1と同様のハードウェア構成にした同期整流方式の多相コンバータにおいて、1つの相に着目し、この相のソフトスタート制御中の電流波形を概念的に示している。
図4において、破線で示すVaは、平均電流値を概念的に示している。
図4では、ソフトスタート制御が開始した直後の時期におけるインダクタ電流の波形を実線で示しており、
図4のように出力電流(平均電流Va)が小さい時期には、ハイサイドFETの立ち上がりタイミング前後の時間帯でインダクタ電流が0を下回ることになり、この時間帯で逆流が発生することになる(
図4の領域A1,A2を参照)。
【0007】
このような逆流を防ぐためには、例えば、
図5のように、逆流が発生する時間帯にローサイドFETをオフ状態に切り替えることが考えられる。このようにすれば、出力ラインからローサイドFETを介してグランドに流れ込む逆流経路の導通を遮断することができ、逆流の発生を防ぐことができる。しかし、この方法では、ハードウェア又はソフトウェアによるPWM制御が複雑になってしまう。
【0008】
別の方法としては、
図1で示す構成と同様、各相に逆流防止FET(
図1のスイッチング素子SC1,SC2,SC3,SC4と同様の素子)を配置し、各相のソフトスタート制御中に、各相の逆流防止FETをオフ状態で維持し、各相の出力電流を寄生ダイオードで整流する方法が考えられる。しかし、この方法では、各相の逆流防止FETをオン動作させて出力する場合と比較して損失が大きくなってしまう。
【0009】
本発明は上述した事情に基づいてなされたものであり、多相変換部の動作を開始する際に各々の電圧変換部に対して出力の目標値を次第に上昇させる制御を行い得る構成において、逆流の発生を抑制し得る構成を、より簡易に且つより損失を抑えた形で実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の多相コンバータは、
入力側の導電路に入力された電圧を変換して出力側の導電路に出力する電圧変換部を複数備えた多相変換部と、
前記多相変換部の出力が目標値となるように各々の前記電圧変換部を制御信号によって個々に制御し、前記多相変換部の動作を開始する際に各々の前記電圧変換部に対し出力の目標値を次第に上昇させる制御を行う制御部と、
前記多相変換部からの出力電流を反映した値を検出する検出部と
、
各々の前記電圧変換部における前記出力側の導電路に設けられ、外部からの信号によってオン状態とオフ状態とに切り替えられるスイッチング部と、前記スイッチング部に対し並列に設けられるとともに正規の出力方向の通電を許容し逆方向の通電を遮断するダイオード部とを備えたスイッチング素子と、
を有し、
前記制御部は、前記多相変換部の動作を開始する際に駆動開始時期をずらして複数の前記電圧変換部を順次駆動し、各々の前記電圧変換部の駆動を開始する毎に、前記検出部で検出される値が前記多相変換部における駆動済みの電圧変換部の個数に対応付けられた個別閾値に達したか否かを判断し、達した場合に次の前記電圧変換部の駆動を開始
する構成であり、前記多相変換部の動作開始の際に最初に駆動する前記電圧変換部の駆動開始から前記検出部で検出される値が前記個別閾値よりも小さい所定閾値に達するまでの間は、前記スイッチング部をオフ状態に切り替え、達した後に前記スイッチング部をオン状態に切り替える。
【0011】
本発明の多相コンバータにおいて、制御部は、多相変換部の動作を開始する際に駆動開始時期をずらして複数の電圧変換部を順次駆動する。そして、順次駆動される各電圧変換部の駆動開始後には、出力電流を、動作している電圧変換部の個数(駆動相数)に対応する閾値まで上昇させてから次の電圧変換部を駆動するように制御を行う。つまり、各電圧変換部の駆動開始毎に、そのときの駆動相数に合わせた電流値まで出力電流を引き上げて電流量を確保してから次の電圧変換部を駆動する。このように制御を行えば、2番目以降に順次駆動される各電圧変換部の駆動後に、出力電流が小さくなる期間(逆流が生じる程度に出力電流が小さい期間)を減らすことができ、出力電流の逆流を抑制することができる。
【0012】
従って、多相変換部の動作を開始する際に各々の電圧変換部に対して出力の目標値を次第に上昇させる制御を行い得る構成において、逆流の発生を抑制し得る構成を、より簡易に且つより損失を抑えた形で実現することができる。
また、各々の電圧変換部における出力側の導電路には、外部からの信号によってオン状態とオフ状態とに切り替えられるスイッチング部と、スイッチング部に対し並列に設けられるとともに正規の出力方向の通電を許容し逆方向の通電を遮断するダイオード部とを備えたスイッチング素子が設けられている。そして、制御部は、多相変換部の動作開始の際に最初に駆動する電圧変換部の駆動開始から検出部で検出される値が個別閾値よりも小さい所定閾値に達するまでの間は、スイッチング部をオフ状態に切り替え、達した後にスイッチング部をオン状態に切り替える構成である。
各々の電圧変換部に対して出力の目標値を次第に上昇させる制御を行う場合、最初に駆動される電圧変換部の駆動開始直後の期間は、出力電流が非常に小さくなる期間となり、通常の駆動では逆流が発生しやすくなる。これに対し、上記構成では、最初の電圧変換部の駆動を開始した後の初期期間(駆動開始から検出部で検出される値が所定閾値に達するまでの期間)は、スイッチング部をオフ状態に切り替え、ダイオード部を用いたダイオード整流によって電流を流すため、出力電流が小さくなる初期期間であっても確実に逆流を防ぐことができる。また、検出部で検出される値が所定閾値に達した後、即ち、最初に駆動される電圧変換部が出力する出力電流がある程度高まった後には、スイッチング部をオン状態に切り替えることができるため、ダイオード整流を継続し続ける構成と比較して損失を確実に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す多相コンバータ1は、例えば、車載用の多相型DCDCコンバータとして構成されており、第1導電路6に印加された直流電圧(入力電圧)を多相方式且つ降圧方式で電圧変換し、入力電圧を降圧した出力電圧を第2導電路7に出力する構成となっている。
【0017】
多相コンバータ1は、第1導電路6と第2導電路7とを備えた電源ライン5と、入力された電圧を変換して出力するm個の電圧変換部CV1,CV2…CVmを備えた多相変換部2と、電圧変換部CV1,CV2…CVmを制御信号(PWM信号)によって個々に制御する制御部3とを備える。なお、電圧変換部の個数であるmは2以上の自然数であればよい。以下では、
図1で示す構成、即ち、m=4である場合を代表例として説明する。
【0018】
第1導電路6は、例えば、相対的に高い電圧が印加される一次側(高圧側)の電源ラインとして構成され、一次側電源部91の高電位側の端子に導通するとともに、その一次側電源部91から所定の直流電圧(例えば、48V)が印加される構成をなす。この第1導電路6は、各電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の各入力側の導電路(個別入力路)LA1,LA2,LA3,LA4にそれぞれ接続されている。一次側電源部91は、例えば、リチウムイオン電池、或いは電気二重層キャパシタ等の蓄電手段によって構成され、高電位側の端子は例えば48Vに保たれ、低電位側の端子は例えばグラウンド電位(0V)に保たれている。
【0019】
第2導電路7は、相対的に低い電圧が印加される二次側(低圧側)の電源ラインとして構成されている。この第2導電路7は、例えば、二次側電源部92の高電位側の端子に導通するとともに、その二次側電源部92から一次側電源部91の出力電圧よりも小さい直流電圧(例えば12V)が印加される構成をなす。二次側電源部92は、例えば、鉛蓄電池等の蓄電手段によって構成され、高電位側の端子は、例えば12Vに保たれ、低電位側の端子は、例えばグラウンド電位(0V)に保たれている。
【0020】
第1導電路6と第2導電路7との間には、多相変換部2が設けられている。この多相変換部2は、第1導電路6と第2導電路7との間に並列に接続されたm個の電圧変換部CV1,CV2…CVmを備える。m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmは、同様の構成をなし、いずれも同期整流方式の降圧型コンバータとして機能する。第1導電路6からはm個の電圧変換部CV1,CV2…CVmの各入力側の導電路LA1,LA2…LAmが分岐している。また、m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmの各出力側の導電路LB1,LB2…LBmは、共通の出力路である第2導電路7に接続されている。なお、m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmは、それぞれ1相目、2相目…m相目とされている。
【0021】
m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmのうち、第k相の電圧変換部CVkについて説明する。以下において、kは、m以下の自然数である。第k相の電圧変換部CVkは、入力側の導電路LAkに入力された電圧を変換して出力側の導電路LBkに出力するように機能する。第k相の電圧変換部CVkは、ハイサイド側のスイッチング素子SAkと、ローサイド側のスイッチング素子SBkと、インダクタLkと、保護用のスイッチング素子SCkとを備える。例えば、第1相の電圧変換部CV1は、ハイサイド側のスイッチング素子SA1と、ローサイド側のスイッチング素子SB1と、インダクタL1と、保護用のスイッチング素子SC1とを備えており、第2相の電圧変換部CV2は、ハイサイド側のスイッチング素子SA2と、ローサイド側のスイッチング素子SB2と、インダクタL2と、保護用のスイッチング素子SC2とを備えている。第3相、第4相も同様である。
【0022】
第k相の電圧変換部CVkにおいて、スイッチング素子SAkは、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、スイッチング素子SAkのドレインには、第1導電路6から分岐した入力側の導電路LAkが接続されている。スイッチング素子SAkのソースには、ローサイド側のスイッチング素子SBkのドレイン及びインダクタLkの一端が接続されている。スイッチング素子SBkは、スイッチング素子SAkとインダクタLkとの接続点にドレインが接続され、ソースは接地されている。インダクタLkの他端は、スイッチング素子SCkのソースに接続されている。スイッチング素子SCkのドレインは、第2導電路7に接続されている。
【0023】
第k相の電圧変換部CVkにおいて、スイッチング素子SCkは、出力側の導電路LBkに介在している。スイッチング素子SCkは、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、ソースがインダクタLkに接続され、ドレインが共通の出力路(第2導電路7)に接続されている。スイッチング素子SCkにおいて、MOSFET部SWkは、外部からの信号によってオン状態とオフ状態とに切り替えられるスイッチング部として機能し、寄生ダイオードDkは、MOSFET部SWkに対し並列に設けられるとともに正規の出力方向の通電を許容し逆方向の通電を遮断するダイオード部として機能する。例えば、スイッチング素子SC1であれば、ソースがインダクタL1に接続され、ドレインが第2導電路7に接続され、MOSFET部SW1がスイッチング部として機能し、寄生ダイオードD1がダイオード部として機能する。
【0024】
スイッチング素子SC1,SC2…SCmを構成するMOSFET部SW1,SW2…SWmは、いずれもゲートに与えられる電圧が制御部3によって制御され、いずれも制御部3からの信号によってオンオフが切り替えられるようになっている。
【0025】
制御部3は、主として、制御回路10とPWM駆動部18とを備える。制御回路10は、例えばマイクロコンピュータを含む回路であり、各種演算処理を行うCPU12、ROM、RAM、不揮発性メモリなどによって構成される記憶部14、アナログ電圧をデジタル信号に変換するA/D変換器16などを備える。A/D変換器16には、後述する電流検出部9Aから出力される電圧値や、第2導電路7の電圧値が入力される。
【0026】
制御部3において、制御回路10は、デューティ比を決定する機能、及び決定したデューティ比のPWM信号を生成し出力する機能を有しており、具体的には、m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmのそれぞれに対するPWM信号を生成し、出力する。例えば、後述するソフトスタート制御の終了後の定常出力状態において、m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmを全て駆動する場合、制御回路10は、位相が2π/mずつ異なるPWM信号を生成し、m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmのそれぞれに出力する。例えば、
図1のように多相変換部2が4個の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4によって構成されている場合において、定常出力状態で全相が駆動される場合には、位相を2π/4ずつ異ならせたPWM信号が各相に与えられる。
【0027】
PWM駆動部18は、制御回路10で生成された各相に対するPWM信号に基づき、各相のスイッチング素子SAk,SBk(kは、1〜mの自然数)のそれぞれを交互にオンするためのオン信号をスイッチング素子SAk,SBkのゲートに印加する。スイッチング素子SAk,SBkへのPWM信号の出力中においてスイッチング素子SBkのゲートに与えられる信号は、デッドタイムが確保された上で、スイッチング素子SAkのゲートに与えられる信号に対して位相が略反転する。
【0028】
検出部8は、出力電流を検出する電流検出部9Aと、出力電圧を検出する電圧検出部9Bとを備え、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVmからの共通の出力経路(第2導電路7)における出力電流及び出力電圧を反映した値をそれぞれ検出する。電流検出部9Aは、第2導電路7を流れる電流に対応する電圧値を検出値として出力する構成であればよい。例えば、電流検出部9Aは、第2導電路7に介在する抵抗器と差動増幅器とを有し、抵抗器の両端電圧が差動増幅器に入力され、第2導電路7を流れる電流によって抵抗器に生じた電圧降下量が差動増幅器で増幅され、検出値として制御回路10のA/D変換器16に出力するようになっている。電圧検出部9Bは、例えば第2導電路7の電圧を反映した値(例えば、第2導電路7の電圧そのもの、或いは分圧値等)を制御回路10のA/D変換器16に入力する経路として構成され、
図1の例では、第2導電路7から分岐して制御回路10のA/D変換器16と導通するように構成されている。
【0029】
このように構成される多相コンバータ1では、制御部3は、m個の電圧変換部CV1,CV2…CVmのそれぞれに対して、デッドタイムを設定した形でPWM信号を相補的に出力する。例えば、第k相の電圧変換部CVkを構成するスイッチング素子SAk,SBkの各ゲートに対しては、制御部3は、デッドタイムを設定した上で、スイッチング素子SAkのゲートへのオン信号の出力中には、スイッチング素子SBkのゲートにオフ信号を出力し、スイッチング素子SAkのゲートへのオフ信号の出力中には、スイッチング素子SBkのゲートにオン信号を出力する。電圧変換部CVkは、このような相補的なPWM信号に応じて、スイッチング素子SAkのオン動作とオフ動作との切り替えをスイッチング素子SBkのオフ動作とオン動作との切り替えと同期させて行い、これにより、入力側の導電路LAkに印加された直流電圧を降圧し、出力側の導電路LBkに出力する。出力側の導電路LBkの出力電圧は、スイッチング素子SAk,SBkの各ゲートに与えるPWM信号のデューティ比に応じて定まる。このような制御は、上述した自然数kが1からmのいずれの場合でも、即ち、第1相から第m相までのいずれの電圧変換部においても、同様に行われる。
【0030】
制御部3は、多相変換部2を動作させる場合、複数の電圧変換部CV1,CV2…CVmの一部又は全部を制御信号(PWM信号)によって個々に制御し、多相変換部2からの出力が設定された目標値となるようにフィードバック制御を行う。具体的には、制御部3は、制御回路10に入力された第2導電路7の電流値と、出力電流の目標値(目標電流値)とに基づき、公知のPID制御方式によるフィードバック演算によって制御量(デューティ比)を決定する。例えば、駆動相数がNである定常出力状態では、出力電流の目標値(目標電流値)が駆動相数Nに対応する値で固定化され、フィードバック演算によって決定したデューティ比のPWM信号を、位相を2π/Nずつ異ならせてN個の電圧変換部のそれぞれに出力する。
【0031】
次に、多相コンバータ1における動作開始に伴う初期制御(ソフトスタート制御)について説明する。なお、
図2では、
図1の構成(即ち、相数m=4の構成)に関する制御を代表例として説明する。
【0032】
多相コンバータ1は、所定の動作開始条件の成立に伴い、制御部3が
図2の流れで制御を行う。動作開始条件は、例えばイグニッション信号のオフからオンへの切り替わり等であり、これ以外の動作開始条件であってもよい。
【0033】
制御部3は、
図2で示す初期制御の開始に伴い、全ての相(即ち、多相変換部2を構成する複数の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の全て)に設けられたスイッチング素子(逆流防止FET)SC1,SC2,SC3,SC4をオフ動作させる(S1)。このS1の処理により、MOSFET部SW1,SW2,SW3,SW4が全てオフ状態で維持される。
【0034】
S1の処理の後には、1相目のスイッチング素子SA1(ハイサイドFET)及びスイッチング素子SB1(ローサイドFET)に対して相補的なPWM信号を出力し、1相目の電圧変換部CV1による電圧変換を開始する(S2)。なお、S2において1相目の電圧変換部CV1による電圧変換を開始した後には、1相目の電圧変換部CV1のソフトスタート制御を行う。1相目のみのソフトスタート制御を行う期間は、1相目の電圧変換部CV1からの出力電流の平均(インダクタ電流の平均)が多相変換部2の総出力電流の平均となり、この制御では、多相変換部2における出力の目標値を次第に上昇させながら、多相変換部2の出力(即ち、1相目の電圧変換部CV1の出力)が設定された目標値となるようにフィードバック制御を繰り返す。
【0035】
制御部3は、S2で1相目のソフトスタート制御を開始させた後、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が、所定閾値It0以上であるか否かを判断する(S3)。この所定閾値It0は、「1相目のインダクタ電流の逆流閾値」であり、多相変換部2において1相目の電圧変換部CV1のみが駆動されている場合に、逆流が生じなくなるような総出力電流の範囲のうちの下限値である。つまり、多相変換部2において1相目の電圧変換部CV1のみが駆動されている場合、第2導電路7を流れる総出力電流の平均(1相目のインダクタ電流の平均)が所定閾値It0以上であれば、第2導電路7において逆流が発生する期間がなくなる。
【0036】
制御部3は、S3において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が所定閾値It0未満と判断した場合、S3でNOに進み、1相目のソフトスタート制御を継続しつつ総出力電流の目標値(目標電流値)を増加させる(S4)。そして、S4の処理で目標値を増加させた後に再びS3の判断処理を行う。つまり、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が所定閾値It0に達するまでS3とS4の処理を繰り返す。
【0037】
制御部3は、S3において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が所定閾値It0以上と判断した場合、S3でYESに進み、1相目の電圧変換部CV1におけるスイッチング素子SC1(逆流防止FET)をオン動作させる。つまり、
図3の上段で示すように、1相目の電圧変換部CV1のソフトスタート制御を開始した後、第2導電路7を流れる総出力電流の平均(1相目のインダクタ電流の平均)を次第に上昇させ、この値が所定閾値It0に達するまでは、スイッチング素子SC1(逆流防止FET)をオフ状態で継続し、達した後にはオン状態に切り替えるのである。S2の処理の後、S5の処理が実行される前までは、MOSFET部SW1がオフ状態であるため、1相目の電圧変換部CV1の出力電流は寄生ダイオードD1を流れることになる。一方、S5の処理が実行された後は、MOSFET部SW1がオン状態となり、出力電流は寄生ダイオードD1だけでなく主にMOSFET部SW1を流れることになる。
【0038】
S5の処理の後には、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が、個別閾値It1以上であるか否かを判断する(S6)。本構成では、駆動相数に対応付けた個別閾値が設定されており、駆動相数と個別閾値を対応付けた情報が例えば記憶部14に記憶されている。具体的には、駆動相数「1」に対応付けて個別閾値It1が定められ、駆動相数「2」に対応付けて個別閾値It2が定められ、駆動相数「3」に対応付けて個別閾値It3が定められている。
【0039】
例えば、駆動相数「1」に対応付けられた個別閾値It1は、「1相目及び2相目のインダクタ電流の逆流閾値」であり、1相目の電圧変換部CV1の駆動を継続しながら次の相(2相目)の電圧変換部CV2を駆動しても逆流が生じなくなるような総出力電流(総出力電流の平均)の範囲のうちの下限値である。つまり、多相変換部2において1相目と2相目の電圧変換部CV1,CV2のみが駆動されている場合、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It1以上であれば、第2導電路7において逆流が発生する期間がなくなる。具体的には、1相目と2相目の電圧変換部CV1,CV2を同一のデューティ比で駆動する場合、総出力電流の平均値の1/2が各相に流れる電流の平均値であり、1相目と2相目の電圧変換部CV1,CV2のいずれも、各相での出力電流(インダクタ電流)の平均値がIt1/2以上であれば逆流が発生しないように構成されている。
【0040】
制御部3は、S6において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It1未満と判断した場合、S6でNOに進み、1相目のソフトスタート制御を更に継続しつつ総出力電流の目標値(目標電流値)を増加させる(S7)。そして、S7の処理で目標値を増加させた後に再びS6の判断処理を行う。つまり、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It1に達するまでS6とS7の処理を繰り返す。
【0041】
制御部3は、S6において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It1以上と判断した場合、S6でYESに進み、1相目の電圧変換部CV1に加え、2相目のスイッチング素子SA2(ハイサイドFET)及びスイッチング素子SB2(ローサイドFET)に対しても相補的なPWM信号を出力し、2相目の電圧変換部CV2による電圧変換を開始する(S8)。更に、2相目の電圧変換部CV2におけるスイッチング素子SC2(逆流防止FET)のMOSFET部SW2をオン動作させる(S9)。つまり、
図3の上段(1相目の図)及び下段(2相目の図)で示すように、1相目の電圧変換部CV1のソフトスタート制御を開始した後、第2導電路7を流れる総出力電流の平均(1相目のインダクタ電流の平均)を次第に上昇させ、この値が個別閾値It1に達するまでは、2相目を停止状態で維持し、達した後には2相目を動作状態に切り替え、その直後に2相目のスイッチング素子SC2(逆流防止FET)をオンさせるのである。
【0042】
S8において2相目の電圧変換部CV2による電圧変換を開始した後には、1相目と2相目の電圧変換部CV1,CV2のソフトスタート制御を行う。1相目及び2相目のソフトスタート制御では、総出力電流の目標値(目標電流値)を、S8の開始時点での値から次第に上昇させてゆく。そして、総出力電流の目標値の1/2が各相の目標値となり、各相の出力電流を各相の目標値に近づけるようにフィードバック制御を行う。
【0043】
S9の処理の後には、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が、個別閾値It2以上であるか否かを判断する(S10)。駆動相数「2」に対応付けられた個別閾値It2は、「1相目、2相目、3相目のインダクタ電流の逆流閾値」であり、1相目及び2相目の電圧変換部CV1,CV2の駆動を継続しながら次の相(3相目)の電圧変換部CV3を駆動しても逆流が生じなくなるような総出力電流(総出力電流の平均)の範囲のうちの下限値である。つまり、多相変換部2において1相目、2相目、3相目の電圧変換部CV1,CV2,CV3のみが駆動されている場合、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It2以上であれば、第2導電路7において逆流が発生する期間がなくなる。具体的には、1相目、2相目、3相目の電圧変換部CV1,CV2,CV3を同一のデューティ比で駆動する場合、総出力電流の平均値の1/3が各相に流れる電流の平均値であり、1相目、2相目、3相目の電圧変換部CV1,CV2,CV3のいずれも、各相での出力電流(インダクタ電流)の平均値がIt2/3以上であれば逆流が発生しないように構成されている。
【0044】
制御部3は、S10において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It2未満と判断した場合、S10でNOに進み、1相目及び2相目のソフトスタート制御を更に継続しつつ総出力電流の目標値(目標電流値)を増加させる(S11)。そして、S11の処理で目標値を増加させた後に再びS10の判断処理を行う。つまり、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It2に達するまでS10とS11の処理を繰り返す。
【0045】
制御部3は、S10において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It2以上と判断した場合、S10でYESに進み、1相目及び2相目の電圧変換部CV1,CV2に加え、3相目のスイッチング素子SA3(ハイサイドFET)及びスイッチング素子SB3(ローサイドFET)に対しても相補的なPWM信号を出力し、3相目の電圧変換部CV3による電圧変換を開始する(S12)。更に、3相目の電圧変換部CV3におけるスイッチング素子SC3(逆流防止FET)のMOSFET部SW3をオン動作させる(S13)。
【0046】
S12において3相目の電圧変換部CV3による電圧変換を開始した後には、1相目、2相目、3相目の電圧変換部CV1,CV2,CV3のソフトスタート制御を行う。1相目、2相目、3相目のソフトスタート制御では、総出力電流の目標値(目標電流値)を、S12の開始時点での値から次第に上昇させてゆく。そして、総出力電流の目標値の1/3が各相の目標値となり、各相の出力電流を各相の目標値に近づけるようにフィードバック制御を行う。
【0047】
S13の処理の後には、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が、個別閾値It3以上であるか否かを判断する(S14)。駆動相数「3」に対応付けられた個別閾値It3は、「1相目、2相目、3相目、4相目のインダクタ電流の逆流閾値」であり、1相目、2相目、3相目の電圧変換部CV1,CV2,CV3の駆動を継続しながら次の相(4相目)の電圧変換部CV4を駆動しても逆流が生じなくなるような総出力電流(総出力電流の平均)の範囲のうちの下限値である。つまり、多相変換部2において全相の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4が駆動されている場合、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It3以上であれば、第2導電路7において逆流が発生する期間がなくなる。具体的には、全相の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4を同一のデューティ比で駆動する場合、総出力電流の平均値の1/4が各相に流れる電流の平均値であり、電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4のいずれも、各相での出力電流(インダクタ電流)の平均値がIt3/4以上であれば逆流が発生しないように構成されている。
【0048】
制御部3は、S14において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It3未満と判断した場合、S14でNOに進み、1相目、2相目、3相目のソフトスタート制御を更に継続しつつ総出力電流の目標値(目標電流値)を増加させる(S15)。そして、S15の処理で目標値を増加させた後に再びS14の判断処理を行う。つまり、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It3に達するまでS14とS15の処理を繰り返す。
【0049】
制御部3は、S14において、第2導電路7を流れる総出力電流の平均が個別閾値It3以上と判断した場合、S14でYESに進み、1相目、2相目、3相目の電圧変換部CV1,CV2,CV3に加え、4相目のスイッチング素子SA4(ハイサイドFET)及びスイッチング素子SB4(ローサイドFET)に対しても相補的なPWM信号を出力し、4相目の電圧変換部CV4による電圧変換を開始する(S16)。更に、4相目の電圧変換部CV3におけるスイッチング素子SC4(逆流防止FET)のMOSFET部SW4をオン動作させる(S17)。
【0050】
S16において4相目の電圧変換部CV4による電圧変換を開始した後には、全相のソフトスタート制御を行う。全相のソフトスタート制御では、総出力電流の目標値(目標電流値)を、S16の開始時点での値から次第に上昇させてゆく。そして、総出力電流の目標値の1/4が各相の目標値となり、各相の出力電流を各相の目標値に近づけるようにフィードバック制御を行う。最終的に総出力電流の目標値が一定値に達した場合にはソフトスタート制御を終了する。その後は、総出力電流の目標値を一定値に設定した定常出力状態となる。
【0051】
以上のように、本構成では、制御部3が
図2で示す初期制御を行う場合、駆動開始時期をずらして複数の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4を順次駆動し、電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の各々の駆動を開始する毎に、検出部8で検出される値が多相変換部2における駆動済みの電圧変換部の個数に対応付けられた個別閾値に達したか否かを判断し、達した場合に次の電圧変換部の駆動を開始する。つまり、順次駆動される各電圧変換部の駆動開始後には、出力電流を、動作している電圧変換部の個数(駆動相数)に対応する閾値まで上昇させてから次の電圧変換部を駆動するように制御を行う。このように各電圧変換部の駆動開始毎に、そのときの駆動相数に合わせた電流値まで出力電流を引き上げ、電流量を確保してから次の電圧変換部を駆動しているため、出力電流の逆流を防ぐことができる。
【0052】
また、制御部3は、最初に駆動する電圧変換部CV1の駆動開始から、検出部8の検出値によって特定される総出力電流値が所定閾値It0に達するまでの間は、MOSFET部SW1(スイッチング部)をオフ状態で維持し、この期間は、寄生ダイオードD1を介して出力電流を流している。そして、検出部8の検出値で特定される総出力電流値が所定閾値It0に達した後にMOSFET部SW1をオン状態に切り替えている。
【0053】
以下、本構成の主な効果を例示する。
本構成の多相コンバータ1では、制御部3は、多相変換部2の動作を開始する際に駆動開始時期をずらして複数の電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4を順次駆動する。そして、順次駆動される電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の各々の駆動開始後には、出力電流を、動作している電圧変換部の個数(駆動相数)に対応する閾値まで上昇させてから次の電圧変換部を駆動するように制御を行う。つまり、電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の各々の駆動開始毎に、そのときの駆動相数に合わせた電流値まで出力電流を引き上げ、電流量を確保してから次の電圧変換部を駆動する。このように制御を行えば、2番目以降に順次駆動される各電圧変換部の駆動後に、出力電流が小さくなる期間(逆流が生じる程度に出力電流が小さい期間)を減らすことができ、出力電流の逆流を抑制することができる。
【0054】
従って、多相変換部2の動作を開始する際に電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4の各々に対して出力の目標値を次第に上昇させる制御を行い得る構成において、逆流の発生を抑制し得る構成を、より簡易に且つより損失を抑えた形で実現することができる。
【0055】
また、本構成では、最初の電圧変換部CV1の駆動を開始した後の初期期間(駆動開始から検出部8で検出される値が所定閾値に達するまでの期間)は、MOSFET部SW1(スイッチング部)をオフ状態に切り替え、寄生ダイオードD1(ダイオード部)を用いたダイオード整流によって電流を流すため、出力電流が小さくなる初期期間であっても確実に逆流を防ぐことができる。また、検出部8で検出される値が所定閾値に達した後、即ち、最初に駆動される電圧変換部CV1が出力する出力電流がある程度高まった後には、MOSFET部SW1(スイッチング部)をオン状態に切り替えることができるため、ダイオード整流を継続し続ける構成と比較して損失を確実に低減することができる。
【0056】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)実施例1では、降圧型の多相コンバータを例示したが、昇圧型の多相コンバータであってもよく昇降圧型の多相コンバータであってもよい。
(2)実施例1では、kを1〜mの自然数とし、各相のローサイド側にスイッチング素子SBkを設けたが、接地電位にアノードが接続されたダイオードに置き換えることが可能である。また、スイッチング素子SAk,SBkは、Pチャネル型のMOSFETであってもよく、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチング素子であってもよい。
(3)実施例1における一次側電源部91や二次側電源部92の具体例はあくまで一例であり、蓄電手段の種類や発生電圧は上述した例に限定されず、様々に変更することができる。また、例えば二次側電源部が存在しない構成とすることもできる。
(4)
図1の例では、入力側導電路や出力側導電路に接続される発電機や負荷などは省略して示したが、様々な装置や電子部品を入力側導電路や出力側導電路に接続することができる。
(5)
図1では、4つの電圧変換部CV1,CV2,CV3,CV4が並列に接続された4相構造の多相コンバータ1を代表例として例示したが、電圧変換部の数は4未満の複数であってもよく、5以上の複数であってもよい。