(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体と、該吸収体の一方面側に重ねられる液透過性のセカンドシートと、該セカンドシートに重ねられる液透過性のトップシートと、前記吸収体の他方面側に重ねられる液不透過性のバックシートと、前記トップシートの幅方向の両側縁部に重ねられる一対のサイドシートとを備える吸収性物品であって、
前記一対のサイドシートは、前記トップシートから立ち上がって立体ギャザーを形成する起立領域を有し、
前記トップシートの幅方向の両側縁部は、前記一対のサイドシートの起立領域に接合され、
前記トップシートの幅方向の両側縁部の近傍の前記サイドシートで覆われる範囲内のみに、スリット状の通路が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トップシートは、肌に直接触れるものであるため、肌触りが重視される。しかしながら、水様便を透過させるための透過孔は、トップシートに熱を加えて切り取る加工で形成されているため、孔自体や切り取り面に残ったバリが肌への刺激となる場合があった。加えて、セカンドシートは、トップシートよりも液透過性が高い構成となっている。すなわち、トップシートに比べ、セカンドシートで用いる繊維は、繊維径が太い、樹脂成分が硬く強固など、繊維間の空域を保持しやすい構成となっている。また、セカンドシートで用いる繊維は、密度の低い短繊維なども用いられる。通常、セカンドシートはトップシートに覆われているが、トップシートに透過孔を設けると、透過孔部分はセカンドシートが露出することになるため、セカンドシートの繊維の硬さや短繊維による繊維端部の絶対的数の増加などにより肌への刺激となる場合があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みて、水様便などの粘性の比較的高い体液についても確実に吸収して漏れを防止するとともに、肌への刺激が低い吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、吸収性物品において特定の構成とする場合には上記目的を達成する吸収性物品が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記の吸収性物品に関する。
【0009】
第1の発明に係る吸収性物品は、吸収体と、該吸収体の一方面側に重ねられる液透過性のセカンドシートと、該セカンドシートに重ねられる液透過性のトップシートと、前記吸収体の他方面側に重ねられる液不透過性のバックシートと、前記トップシートの幅方向の両側縁部に重ねられる一対のサイドシートとを備える吸収性物品であって、前記一対のサイドシートは、前記トップシートから立ち上がって立体ギャザーを形成する起立領域を有し、前記トップシートの幅方向の両側縁部は、前記一対のサイドシートの起立領域に接合され、前記トップシートの幅方向の両側縁部の近傍には、スリット状の通路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係る吸収性物品は、上記第1の発明に係る吸収性物品であって、前記トップシートの幅方向の両側縁部の表面及び/又は裏面が、前記一対のサイドシートの幅方向の起立領域に接合されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係る吸収性物品は、上記第1または第2の発明に係る吸収性物品であって、前記セカンドシートは、エアレイド不織布を含むことを特徴とする。
【0012】
第4の発明に係る吸収性物品は、上記第1ないし第3のいずれかの発明に係る吸収性物品であって、前記トップシートの幅方向の両側縁部の近傍には、複数のスリット状の通路が形成され、前記複数のスリット状の通路は、第1の方向に延在する第1のパターンと、前記第1の方向と異なる第2の方向に延在する第2のパターンとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、粘性の比較的高い体液についても確実に吸収して漏れを防止するとともに、肌への刺激が低い吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る吸収性物品は、吸収体と、吸収体の一方面側に重ねられる液透過性のセカンドシートと、セカンドシートに重ねられる液透過性のトップシートと、吸収体の他方面側に重ねられる液不透過性のバックシートと、トップシートの幅方向の両側縁部に重ねられる一対のサイドシートとを備える吸収性物品であって、一対のサイドシートは、トップシートから立ち上がって立体ギャザーを形成する起立領域を有し、トップシートの幅方向の両側縁部は、一対のサイドシートの起立領域に接合され、トップシートの幅方向の両側縁部の近傍には、スリット状の通路が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る一実施形態の吸収パッドについて、
図1から
図6を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施形態のみに限らず、本発明の概念に帰属する他の吸収性物品も包含するものである。
【0017】
本実施形態において、「長手方向」とは、吸収パッド及びテープタイプおむつやパンツタイプおむつなどの外装体において、前身頃から後身頃にわたる第1の方向をいう。すなわち、着用者が本実施形態の吸収パッド等を装着した際に腹側から股下を通り、背側にわたる方向をいう。また、「幅方向」とは、長手方向(第1の方向)に平面的に直交する第2の方向をいう。
図1において、長手方向はY軸で示し、幅方向はX軸で示す。
【0018】
以下に、外装体に配置されて使用される本実施形態の吸収パッドを説明する。
【0019】
本実施形態の吸収パッドの肌対向面から見た平面図を
図1に示す。そして、
図1に示される吸収パッドをII−II線で切断した断面図を
図2に示す。
図3は、吸収パッドの分解斜視図である。
【0020】
吸収パッド10は、着用者の腹側から股下を通り、背側まで伸びる長方形状の形をしている。腹側に位置する部分を前身頃21、背側に位置する部分を後身頃22、股下に位置する部分を股下部23とする。本実施形態の吸収パッド10は、前身頃21から後身頃22まで、同じ幅の形であるが、本発明はこれに限らず、股下部23の幅がRカット等により狭まっているものや、前身頃21が股下部23や後身頃22に比べてやや幅広な形となっていてもよい。
【0021】
吸収パッド10は、吸収体11と、吸収体11の一方面側に重ねられる液透過性のセカンドシート12と、セカンドシート12に重ねられる液透過性のトップシート13と、トップシート13の幅方向の両側縁部に重ねられ、立体ギャザーを形成するための一対のサイドシート14と、吸収体11の他方面側に重ねられる液不透過性(撥液性)のバックシート15とを備えている。
【0022】
吸収体11は、セカンドシート12とバックシート15の間に配置され、トップシート13およびセカンドシート12を透過した尿等の体液を吸収し、保持する。吸収体11は、このような機能を果たすために、吸収性材料によって構成されており、吸収性材料は、吸収機能を有する公知の材料を採用することができる。具体的には、例えばフラッフパルプ、高吸水性ポリマー(SAP:Superabsorbent Polymer)、又は親水性シートを用いてもよい。吸収体11の吸収性材料には、上記材料のうち1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。本実施形態においては、(1)フラッフパルプにSAPを混ぜ込んだものをマット状にし、単層、または複数層を積層したものを用いているが、これに限らず、(2)フラッフパルプ層とフラッフパルプ層との層間にSAPを散布したものや、(3)上記(1)及び(2)を組み合わせたものであってもよい。そして、図示していないが、吸収体11は、液透過性のコアラップ(ティシュ)等によって包まれている。なお、コアラップは、吸収体11を包む場合に限らず、吸収体11と吸収体11の上下に接合するシートとの間に挟み込む場合や、吸収体11の下層だけ包み込んで吸収体11の上層に被せる場合であってもよい。
【0023】
トップシート13は、着用者の股下の肌に直接接し、尿等の体液を吸収体11に透過させるためのものである。そのため、トップシート13は、肌触りのよい液透過性材料で形成されている。トップシート13を構成する材料としては、液透過性の織布、不織布、多孔性フィルム等を用いることができる。具体的には、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維などを用いて不織布にしたものを用いることとしてもよい。本実施形態のトップシート13は、エアスルー法でフォーミングした不織布(以下「エアスルー不織布」とも言う)が用いられている。このエアスルー不織布は、一般的に30〜50mm程度と比較的長めの繊維を用いているため、不織布表面で毛羽立つことがなく、肌触りがよい。また、本実施形態のトップシート13の密度は、0.20g/cm
3以下が好ましい。
【0024】
セカンドシート12は、トップシート13と吸収体11との間に位置し、トップシート13を透過した体液を吸収体11上に体液を一次吸収保持し、下層部へ移行させる目的で設けられている。セカンドシート12を設けることで、着座時など、吸収パッド10が圧迫されて、吸収速度が低下する際に、セカンドシート12を設けることで、吸収体11とトップシート13との間に十分な空間が形成されるので、体液の吸収速度の低下を抑制できる。セカンドシート12を構成する材料としては、トップシート13と同様に、液透過性の織布、不織布、多孔性フィルム等を用いることができる。本実施形態のセカンドシート12は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂繊維で、一般的に3〜10mm程度の比較的短めの繊維を用いてエアレイド法でフォーミングした不織布(以下、「エアレイド不織布」とも言う)が用いられている。エアレイド不織布は、エアスルー不織布に比べ、繊維が短いため、絶対的繊維本数が多くなり、且つ繊維の配向が3次元となりやすいので、繊維間の空域が確保され、液を一次吸収保持しやすい。一方で、繊維が短く、且つ繊維の配向が3次元のため、肌触りが劣る。
【0025】
また、本実施形態のセカンドシート12の密度は、0.10g/cm
3以下が好ましく、特に0.05g/cm
3以下が好ましい。セカンドシート12は、トップシート13に比べて密度が低く、繊維間の空域が大きいため、液が吸収されやすく、かつ、液を通しやすくなる。なお、本実施形態では、セカンドシート12はエアレイド不織布を含むシートとしたが、トップシート13と同様にエアスルー不織布を含むシートであってもよい。また、セカンドシート12をエアスルー不織布とする場合においても、その密度は、トップシート13よりも低いことが好ましい。
【0026】
バックシート15は、吸収体11に吸収された体液が、外装体側に漏れ出すことを防止するための部材である。したがって、バックシート15は、液不透過性材料で構成されている。具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。また、液を漏らさずに通気性を確保するために、0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0027】
また、吸収パッド10の肌対向面側の幅方向両側縁部には、長手方向の全体にわたって、一対のサイドシート14が重ねられている。一対のサイドシート14は、吸収パッド10の両側縁に沿って、体液の横漏れを防止する立体ギャザーを形成する。サイドシート14としては、撥水性と通気性を有するものが適している。具体的な材料として、例えば、カードエンボスやスパンボンド等の製法により形成された不織布シートを用いることができ、特に、防水性と通気性の高い、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS:Spunbond-Meltbrown-Spunbond)やスパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS:Spunbond-Meltbrown-Meltbrown-Spunbond)等の不織布シートを用いるのが好ましい。また、サイドシート14は、織布や不織布に撥水加工をしたものであってもよく、あるいは、トップシート13等と同様に、液透過性材料を用いることも可能である。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、サイドシート14は、吸収パッド10の幅方向の両側縁部にそれぞれ設けられ、吸収パッド10の長手方向に沿って伸びる帯状のシートである。サイドシート14の長手方向の両端部は、それぞれトップシート13の長手方向の両端部と接合される。そして、
図2に示されるように、サイドシート14の幅方向の外側端部は、吸収体11よりも吸収パッド10の幅方向の外側に延出したバックシート15の幅方向の側縁部と接合される。接合されたサイドシート14の幅方向の外側端部とバックシート15の幅方向の側縁部とは、共にトップシート13側に巻き込まれて折り返されている。さらに、サイドシート14は、バックシート15と接合された外側端部よりも吸収パッド10の幅方向中央側の部分で、バックシート15に接合されたセカンドシート12の表面と接合される。本実施形態では、サイドシート14がセカンドシート12及びバックシート15に接合される領域を接合領域D1という。なお、サイドシート14とバックシート15とを直接接合するのではなく、バックシート15の表面に接合したセカンドシート12にサイドシート14を接合する形としてもよい。
【0029】
接合領域D1よりも吸収パッド10の幅方向中央側に延びているサイドシート14の幅方向の内側端部には、糸ゴムなどの立体ギャザー伸縮部材17が長手方向に伸張した状態で巻き込まれている。この立体ギャザー伸縮部材17が縮むことにより、サイドシート14の幅方向の内側端部にギャザーが寄せられ、吸収パッド10の長手方向の両端部を互いに引き寄せる。
図2及び
図4に示されるように、この引き寄せに伴って、サイドシート14の非接合領域D2及び自由端領域D3が立ち上がることとなる。そして、サイドシート14の非接合領域D2には、トップシート13の幅方向の側縁部の表面及び/又は裏面が接合されている。非接合領域D2とは、接合領域D1と自由端領域D3との間に位置し、サイドシート14がセカンドシート12及びバックシート15に接合されていない領域をいう。また、自由端領域D3とは、サイドシート14が、トップシート13とサイドシート14との接合部分よりも吸収パッド10の幅方向の中央側に延びている領域をいう。トップシート13とサイドシート14との接合部分のうち、トップシート13の幅方向の中央側から側縁部にかけてトップシート13とサイドシート14とが最初に接する点を以下、接合点Sともいう。
【0030】
ここで、サイドシート14の非接合領域D2に、トップシート13の幅方向の側縁部の表面及び/又は裏面が接合される態様について説明する。
図2では、サイドシート14の非接合領域D2に、トップシート13の幅方向の側縁部の表面が接合されている。この接合は、トップシート13の幅方向の側縁部が、接合点Sを起点に接合領域D1側に折り曲げられることで達成される。また、サイドシート14の非接合領域D2に、トップシート13の幅方向の側縁部の裏面が接合される場合は、トップシート13の幅方向の側縁部が、接合点Sを起点に自由端領域D3側に折り曲げられる。さらに、サイドシート14の非接合領域D2に、トップシート13の幅方向の側縁部の表面及び裏面の両面が接合される場合は、(a)トップシート13の幅方向の側縁部が、接合点Sを起点に接合領域D1側に一旦折り曲げられ、さらに折り曲げられたトップシート13の一部は自由端領域D3側に折り返されるか、または(b)トップシート13の幅方向の側縁部が、接合点Sを起点に自由端領域D3側に一旦折り曲げられ、さらに折り曲げられたトップシート13の一部は接合領域D1側に折り返される。
【0031】
したがって、
図2に示されるように、サイドシート14がトップシート13から立ち上がるのに伴って、トップシート13の幅方向の側縁部もセカンドシート12から立ち上がることとなる。なお、トップシート13及びセカンドシート12から立ち上がり、立体ギャザーを形成する非接合領域D2と自由端領域D3は、両者を合わせてサイドシート14の幅方向の起立領域(以下、単に起立領域ともいう)といい、サイドシート14の長手方向に延在する、非接合領域D2と自由端領域D3との境界線を起立線という。起立線は、トップシート13とサイドシート14とが接合している部分を示している。また、本実施形態では、トップシート13の幅方向の両側縁部は、一対のサイドシート14の非接合領域D2に接合されているが、接合箇所はこれに限らず、起立領域内であれば、例えば、自由端領域D3内に含まれるサイドシート14の幅方向の内側端部に接合されていてもよい。さらに、立体ギャザー伸縮部材17は、立体ギャザーを形成するサイドシート14の起立領域内であればいずれの位置に配置されていてもよい。
【0032】
ところで、本実施形態1のトップシート13の幅方向の両側縁部の近傍には、その両側縁部に沿って、スリット状の通路(以下、スリットともいう)16が形成されている。なお、本実施形態の「スリット」は、切り込みだけのものに限らず、切り込み方向に対して幅を持つものも含まれる。具体的には、
図1に示されるように、トップシート13上のサイドシート14が重なる部分に、長手方向に沿って延びる複数のスリット16が形成されている。
図2及び
図4に示されるように、サイドシート14が立ち上がるのに伴って、サイドシート14に接合されているトップシート13の幅方向の側縁部が上方に引っ張られる。そして、トップシート13の幅方向の側縁部が上方に引き上げられるのに伴って、トップシート13の両側縁部のサイドシート14の起立領域と接合された部分の近傍に形成されたスリット16が広がり、開口となる。したがって、股下部23を中心に、サイドシート14と吸収パッド10の肌当接面との間に、トップシート13の幅方向の側縁部が膜を張ったように立ち上がり、部分的にスリット16の開口が形成されることとなる。また、立ち上がったトップシート13及びサイドシート14と、セカンドシート12とで、開口を通過した体液を保持できる空間Qを形成している。
【0033】
スリット16は、トップシート13の幅方向の側縁部の近傍に間欠的に切り込みを入れることによって形成される。したがって、トップシート13に熱による抜き加工で孔を開けるわけではないので、スリット16の切断面にバリが残らず、肌を刺激しない。また、切り込みを入れるだけなので、抜き加工に比べて加工が簡単であり、製造ラインの速度を低下させずに加工することもできる。
【0034】
このように、本実施形態の吸収パッド10は、トップシート13の幅方向の両側縁部の近傍に沿ってスリット16を設け、水様便などの粘性の比較的高い体液を吸収するための工夫を施している。上述したように、トップシート13は肌触りを重視するために、比較的長めの繊維を用いており、体液を通す隙間が細かいものとなっている。したがって、水様便などの粘性の比較的高い体液は、隙間をうまく通過できず、トップシート13上で滞ってしまう場合がある。このような粘性の比較的高い体液を吸収体11側へ移動させるための通路として、スリット16は作用する。すなわち、本実施形態の吸収パッド10では、サイドシート14の立ち上がりに伴って、スリット16が開口することにより、トップシート13の幅方向の両側縁部の近傍に大口径の開口が形成されることとなる。なお、
図4のスリット16は、開口することを表現するために、開口する部分を誇張して表している。
【0035】
そして、
図4に示されるように、吸収パッドを着用した際に、股下部23は両脚の引き寄せに伴い、吸収パッド10は幅方向中央部が尾根となって折れることとなる。したがって、トップシート13表面に滞る水様便などの粘性の高い体液は幅方向の両側縁部に向かって流れる。この幅方向の両側縁部に向かって流れる粘性の高い体液はこのスリット16による開口を通って、セカンドシート12上に移動する。
【0036】
図2に示されるように、サイドシート14の起立領域が立ち上がっているため、スリット16による開口を通過した粘性の高い体液は、このサイドシート14が堰となって外に漏れ出さない。また、立ち上がったトップシート13及びサイドシート14と、セカンドシート12とで囲まれる空間Qは、開口を通過した体液を保持できる空間となる。そして、開口を通過した体液は、セカンドシート12を介して吸収体11に吸収される。セカンドシート12は、トップシート13に比べて密度が低く、繊維間の空域が大きいため、粘性の高い体液を保持吸収しやすく、徐々に吸収体11へ移行することができる。したがって、水様便など粘性の高い体液は、トップシート13表面で滞ることなく、吸収体11に吸収されるため、脚周り開口部などから漏れることがない。
【0037】
また、スリット16は、トップシート13の幅方向の両側縁部の近傍に形成されており、トップシート13の肌に直接触れる箇所には形成されていない。したがって、スリット16の切り口やセカンドシート12が肌に直接触れて肌を刺激することがなく、確実に粘性の高い体液を吸収体11へ移動させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、サイドシート14の起立領域には、トップシート13の幅方向の表面側縁部が接合されているが、本発明はこれに限らず、トップシート13のスリット16の形成領域を谷折りにし、トップシート13の幅方向の裏面側縁部をサイドシート14の起立領域に接合する形としてもよい。
【0039】
このように、本実施形態の吸収パッド10は、トップシート13におけるサイドシート14と重なる領域にスリット16を設けることにより、粘性の高い体液がトップシート13表面で滞ることなく、確実に吸収体11側へ通過することができ、水様便などの横漏れを確実に防ぐことができる。また、トップシート13と吸収体11との間に、トップシート13よりも液透過用の繊維間の空域が広いセカンドシート12を設けることにより、粘性の高い水様便を一次保持吸収させて、吸収体11に徐々に移行させることができる。したがって、吸収体11の吸収箇所が一箇所に集中しオーバーフローし、吸収できなかった体液が溢れるなどの事態も防ぐことができる。
【0040】
このように、股下における良好な肌触りを維持するとともに、粘性の高い水様便等を確実に吸収するためには、スリット16が形成されたスリット形成領域は次に示す範囲が好ましい。
【0041】
図5は、股下部23における、スリット形成領域の幅と、サイドシート14の幅方向の内側端部間の間隔との関係を示す模式図である。
【0042】
図2及び
図5に示されるように、サイドシート14の非接合領域D2と自由端領域D3との境界線である一方の起立線と他方の起立線との間の起立線間隔をE1とする。また、トップシート13におけるサイドシート14の自由端領域D3と重なるスリット形成領域の幅をE2とする。本実施形態では、スリット形成領域は起立線より吸収パッド10の中央側のサイドシート14の下部に位置し、その幅はサイドシート14の幅よりも狭い。具体的には、トップシート13におけるサイドシート14の自由端領域D3直下の部分がスリット形成領域となる。起立線間隔E1に対するスリット形成領域の幅E2の割合は、10〜80%であり、30〜70%の範囲が好ましい。例えば、本実施形態では、起立線間隔E1が190mmであり、スリット形成領域の幅E2が45mmである。この場合、起立線間隔E1に対するスリット形成領域の幅E2の割合は、47%となる。
【0043】
一方、吸収パッド10の幅をL1とし、立体ギャザー伸縮部材17を伸張した状態での一方のサイドシート14の幅方向の内側端部から他方のサイドシート14の幅方向の内側端部までの距離、すなわち、サイドシート14の内側端部間隔をL2とする。吸収パッドの幅L1は、210mm〜260mmの範囲が好ましく、サイドシート14の内側端部間隔L2は、60mm〜110mmの範囲が好ましい。例えば、本実施形態では、吸収パッドの幅L1が220mmであり、サイドシート14の内側端部間隔L2が90mmである。
【0044】
また、スリット16一つの長さM1は、吸収性物品の大きさや、サイドシート14の幅に応じて適宜調整されるものであるが、あまりに短いと、立体ギャザーによってサイドシート14が起立した際の開口面積が小さくなり、好ましくない。本実施形態の吸収パッド10におけるスリット16一つの長さM1は、10mm〜40mm程度であり、15mm〜25mmが好ましい。また、スリット16は、立体ギャザーの起立に伴い、トップシート13が引き上げられる方向に対して異なる方向に延びる成分を有していれば、開口面積を確保した開口を形成することができる。したがって、
図6(a)〜(f)に示される例のように、様々な配置のバリエーションを適用することができる。例えば、
図6(a)〜(c)に示されるように、トップシート13の長手方向に切り込まれて延在するスリットパターン(第1のパターン)であってもよいし、
図6(d)または(e)に示されるように、トップシート13の長手方向に対して傾斜した方向に切り込まれて延在するスリットパターン(第2のパターン)であってもよい。また、
図6(f)または(g)に示されるように、トップシート13の長手方向に切り込まれて延在するスリットパターン(第1のパターン)と、トップシート13の幅方向に切り込まれて延在するスリットパターン(第3のパターン)との組み合わせ(第4のパターン)であってもよい。
【0045】
このように、本実施形態の吸収パッド10を用いることにより、水様便など粘性の高い体液も、スリット16による開口を経由して吸収体11に送ることができる。したがって、脚周り開口部などからの液漏れを防止することができる。また、スリット16がトップシート13におけるサイドシート14と重なる領域のみに形成され、トップシート13の肌に直接触れる部分には形成されないため、スリット16が肌に直接触れることがなく、肌を傷つけることがない。また、粘性の高い体液を吸収体11に導く開口として、トップシート13に孔をくりぬくのではなく、スリット16とすることにより、トップシート13に対して、切り込みを入れるだけの加工でよく、加工が容易である。また、切り込み加工では、切りくずなどが出ない。したがって、切りくずが製造ラインに溜まるなどの問題もない。加えて、孔をくりぬくのではないので、くりぬきの切断面に残るバリなどで肌を傷つけることもない。
【0046】
また、トップシート13と吸収体11との間に、トップシート13よりも粘性の高い体液に対して保持吸収性の高いセカンドシート12を設けることにより、次の効果がある。すなわち、スリット16の開口を通過した粘性の高い体液が、セカンドシート12によって一次保持吸収され、吸収体11に移行されることにより、吸収体11の特定箇所に集中することなく吸収されるため、液溢れが起こりにくい。
【0047】
肌触りを重視するトップシート13は、エアスルー不織布を含むシートが好ましい一方、粘性の高い体液の保持拡散、移行性を重視するセカンドシート12は、エアレイド不織布を含むシートが好ましくエアレイド不織布からなるシートがより好ましい。エアレイド不織布は、用いる繊維がエアスルー不織布に比べて短く、繊維の向きが3次元配向のため、エアスルー不織布に比べて肌を刺激しやすい。本実施形態では、スリット16による開口以外、エアレイド不織布が露出することがないため、肌を刺激することがない。すなわち、スリット16の開口は上述したように、肌に直接触れる箇所には形成されないため、その下に位置するエアレイド不織布も同様に肌に直接触れる箇所には露出しないこととなる。
【0048】
なお、本実施形態は吸収パッドに本発明を適用して説明したが、本発明はこれに限らず、使い捨ておむつなどにも適用可能である。この場合、大人用だけでなく乳幼児用の使い捨ておむつにも適用可能であるのは言うまでもない。