(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
本実施形態の酸素検知剤組成物は、ポリエチレングリコール、酸化還元色素、還元剤、及び塩基性物質を含む酸素検知剤組成物であって、ポリエチレングリコールの含有量が酸素検知剤組成物の総量に対して5〜35質量%であり、塩基性物質が、20℃での水への溶解度が1g/100g−H
2O未満の水難溶性塩基性物質であり、リン酸三ナトリウムを実質的に含まない、酸素検知剤組成物である。本実施形態の酸素検知剤組成物は、常温で長期間保存した場合であっても、酸素濃度変化に対する応答性が良好であり、かつ、色彩保持性や印刷適性に優れる。また、低温で保存した場合であっても、酸素濃度変化に対する応答性が良好であり、かつ、色彩保持性や印刷適性に優れることは勿論である。なお、ここでいう常温とは、25〜40℃程度である。以下、各成分等について説明する。
【0012】
<ポリエチレングリコール>
本実施形態の酸素検知剤組成物は、保水剤としてポリエチレングリコールを用いる。酸素検知剤組成物におけるポリエチレングリコールの含有量は、5〜35質量%である。ポリエチレングリコールの含有量は、10〜30質量%であることが好ましく、12〜20質量%であることがより好ましい。ポリエチレングリコールの含有量を上記範囲内とすることで、後述する酸化還元色素の酸化還元反応が促進されて、酸素濃度変化に対する応答性が良好となり、常温で長期間保存した後も酸素検知剤組成物の色彩変化を抑制することができると共に、酸素検知剤組成物のべたつきが抑制され、良好な印刷適性が得られる。
【0013】
ポリエチレングリコールの平均分子量は、特に限定されないが、200〜2000であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましく、200〜700であることが更に好ましく、300〜600であることがより更に好ましい。なお、本明細書におけるポリエチレングリコールの平均分子量とは、日本薬局方記載のマクロゴールの平均分子量測定法により求められる平均分子量のことを指す。具体的には分子量400〜600の留分を多く含有する市販の「ポリエチレングリコール400」(平均分子量400±約15)及び「ポリエチレングリコール600」(平均分子量600±約15)を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0014】
ポリエチレングリコール以外の多価アルコールの含有量は、酸素検知剤組成物の総量に対して5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることがより更に好ましい。すなわち、ポリエチレングリコール以外の多価アルコールは含まないことがより更に好ましい。本実施形態の酸素検知剤組成物では、ポリエチレングリコール以外の多価アルコールの含有量が少ないほど、酸素検知剤組成物の常温での色彩保持性や変色性能等を高めることができる。
【0015】
<酸化還元色素>
本実施形態の酸化還元色素は、酸化状態と還元状態で可逆的に色が変化するものであれば、何ら限定されない。例えば、フェロイン、エリオグラウシンA等の酸化還元指示薬;メチレンブルー、ニューメチレンブルー、メチレングリーン等のチアジン染料;サフラニンT、フェノサフラニン等のアジン染料;ナイルブルー等のオキサジン染料;インジゴ、インジゴカルミン等のインジゴイド染料;チオインジゴ等のチオインジゴイド染料等が挙げられる。これらの中でも、着色力、雰囲気応答性及び耐久性の観点から、チアジン染料が好ましく、その中でもメチレンブルーがより好ましい。
【0016】
酸化還元色素の含有量は、酸化状態と還元状態で色の変化が目視で確認できれば特に限定されないが、組成物の色彩、変色速度の観点から、酸素検知剤組成物の総量に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜3質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。
【0017】
<還元剤>
本実施形態で用いられる還元剤は、酸素濃度が大気中より低い条件であっても、酸化状態にある酸化還元色素を還元できる化合物であればよく、その種類は特に限定されない。還元剤としては、公知の還元剤を用いることもできる。還元剤の具体例としては、例えば、グルコース、フルクトース、キシロース等の単糖類、マルトース等の二糖類、アスコルビン酸及びその塩、亜ジチオン酸及びその塩、システイン及びその塩等挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、還元力及び安全性の観点から単糖類が好ましく、その中でもフルクトースがより好ましく、D−フルクトースが更に好ましい。
【0018】
還元剤の含有量は、特に限定されないが、還元反応促進の観点から、物質量ベースで酸化還元色素の2倍量以上であることが好ましい。酸化還元色素に対する還元剤のモル比(還元剤/酸化還元色素)は、5〜1000であることが好ましく、10〜500であることがより好ましく、50〜300であることが更に好ましい。
【0019】
<塩基性物質>
塩基性物質は、20℃での水への溶解度が1g/100g−H
2O未満の水難溶性塩基性物質であり、還元剤の還元活性等を高めるために用いられる。水難溶性塩基性物質としては、具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;シリカ、ゼオライト、粘土鉱物等のうち水スラリーとした際に塩基性を示すもの等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、価格や変色性能の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩が好ましく、アルカリ土類金属水酸化物がより好ましい。本実施形態の効果が得られる範囲であれば、塩基性物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、本実施形態の酸素検知剤組成物は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物を含まないことが好ましい。
【0020】
本実施形態の酸素検知剤組成物は、塩基性物質としてリン酸三ナトリウム(例えば、リン酸三ナトリウム十二水和物等の水和物等も含む。)を実質的に含まない。従来、リン酸三ナトリウム等の塩基性物質を配合することも一部では試みられていたが、本発明者らが鋭意研究した結果、意外にも、リン酸三ナトリウムを実質的に含まない本実施形態の酸素検知剤組成物が、常温で長期間保存した場合であっても、酸素濃度変化に対する応答性が良好で、色彩保持性や印刷適性に優れることを見出した。ここでいう「リン酸三ナトリウムを実質的に含まない」とは、酸素検知剤組成物中のリン酸三ナトリウムの含有量が0.8質量%以下であることをいい、0.5質量%以下であることが好ましく、0.09質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることがより更に好ましい。すなわち、本実施形態の酸素検知剤組成物は、リン酸三ナトリウムを含まないことが更に好ましい。
【0021】
酸素検知剤組成物中の水難溶性塩基性物質の含有量は、20〜70質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。水難溶性塩基性物質の含有量を上記範囲内とすることで、酸素濃度変化に対する応答性をより早められると共に、色彩保持性をより高めることができる。
【0022】
本実施形態の酸素検知剤組成物では、その効果が損なわれない範囲において、塩基性物質として、20℃での水への溶解度が1g/100g−H
2O以上である水溶性塩基性物質を水難溶性塩基性物質と併用してもよいが、酸素検知剤組成物中の当該水溶性塩基性物質の含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることがより更に好ましい。すなわち、水溶性塩基性物質は含まないことがより更に好ましい。本実施形態の酸素検知剤組成物では、水溶性塩基性物質の含有量が少ないほど、酸素検知剤組成物の常温での色彩保持性を高めることができる。
【0023】
<バインダー>
本実施形態の酸素検知剤組成物には、必要に応じてバインダーを添加することができる。バインダーとしては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガントガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子;エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセチルプロピオネート等のセルロース類;酢酸ビニル樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、石油系樹脂等の水不溶性高分子;等が挙げられる。
【0024】
バインダーを用いる際には、必要に応じて溶剤を用いてもよい。例えば、バインダーとして水溶性高分子を用いる場合は、溶剤は、水が好ましい。また、バインダーとして水不溶性高分子を用いる場合は、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等が好ましい。これらの中でも、アルコール類、エステル類、あるいはその両方を任意の比率で混合した混合溶剤が、より好ましい。本実施形態の酸素検知剤組成物におけるバインダーの含有率は、1〜90質量%が好ましく、3〜80質量%がより好ましく、5〜50質量%が更に好ましい。
【0025】
なお、本実施形態の酸素検知剤組成物がバインダーや溶剤を含む場合、基材に対して酸素検知剤組成物をどのように用いるかに応じて、その粘度を適宜調節することが好ましい。例えば、後述するように基材表面に酸素検知剤組成物を印刷する方法を行う場合、その印刷手法に応じて好適な粘度が異なるので、その印刷手法に応じて適切な粘度となるよう調節することが好ましい。粘度は、例えば、塗膜の強度、薄膜化、べたつき抑制等の観点から、適宜調節することができる。例えば、グラビア印刷によって基材に酸素検知剤組成物を印刷する場合、酸素検知剤組成物の粘度は、0.05〜0.5Pa・sであることが好ましく、0.1〜0.3Pa・sであることがより好ましい。オフセット印刷によって基材に酸素検知剤組成物を印刷する場合、酸素検知剤組成物の粘度は、0.01〜0.3Pa・sであることが好ましく、0.05〜0.1Pa・sであることがより好ましい。なお、ここでいう粘度は、B型粘度計によって測定することができる。
【0026】
<着色剤>
本実施形態の酸素検知剤組成物には、酸素濃度によって変色しない着色剤を更に加えることで、酸化還元色素の変色をより鮮明にすることができる。例えば、赤色104号、赤色106号等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、食品や医薬を保存する容器中の酸素検知を行う場合には、着色剤として食用染料を用いることが好ましい。酸素検知剤組成物における着色剤の含有量は、酸化還元色素が無色になったことが目視で確認できれば特に限定されないが、組成物への色素の分散性や溶解性の観点から、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜3質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。
【0027】
<その他の添加剤>
本実施形態の酸素検知剤組成物には、必要に応じて、上記以外の他の添加剤を添加することもできる。このような添加剤としては、例えば、組成物中の液体成分の染み出しによる塗膜べたつき抑制を目的とする無機粉体(例えば、シリカ、ゼオライト等)、組成物のブロッキング抑制を目的とする表面改質剤(例えば、ポリジメチルシロキサン、長鎖アルカン、表面を疎水化処理した無機粉体等)、粘度調整による組成物中の粒子の凝集や沈降の防止及び均質化を目的とする増粘剤等が挙げられる。
【0028】
<酸素検知剤組成物の製造方法>
酸素検知剤組成物の製造方法は、特に限定されず、上述した物質を公知の方法で混合することで製造することもできる。例えば、上記の酸化還元色素、還元剤、ポリエチレングリコール、塩基性物質及び溶剤を混合してなる酸素検知剤組成物は、紙、糸、不織布等の繊維質基材へ含浸後乾燥させることで糸状やシート状(「フィルム状」と呼ばれることもある。)の酸素検知体を得ることができる。
【0029】
<酸素検知シート、脱酸素剤用包装材料、脱酸素剤包装体>
本実施形態の酸素検知剤組成物は、酸素検知シート、脱酸素剤用包装材料、脱酸素剤包装体等として用いることができる。
【0030】
酸素検知シート(「フィルム」と呼ばれることもある。)としては、例えば、本実施形態の酸素検知剤組成物を含む酸素検知シート等が挙げられる。酸素検知シートの製造方法に関して、例えば、アルコール類とエステル類の混合溶剤にバインダーを溶解させた溶液を用意し、これにポリエチレングリコール、酸化還元色素、還元剤を加えて、分散混合したインキ状の酸素検知剤組成物を調製し、基材に、塗布又は含浸した後に乾燥することで、酸素検知シートを製造することができる。
【0031】
酸素検知剤組成物は基材に対して直接塗布又は印刷することもできるが、組成物の基材への密着性向上を目的として、両者の間に目止めを塗布することが有効な場合がある。目止めとしては、ポリウレタン樹脂、天然ゴム等の柔軟性のある樹脂のワニスを用いることができる。また、酸素検知剤組成物の塗布層(以下、「酸素検知剤層」、「酸素検知剤組成物を含む層」等という場合がある。)にオーバープライマーを更に塗布することが、酸素検知剤層の保護に有効な場合がある。オーバープライマーとしては、上記目止めと同様のものを用いることができる。
【0032】
基材としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック基材や、紙、不織布等の繊維質基材等が挙げられる。酸素検知剤組成物が液状である場合、基材に対して酸素検知剤組成物を塗布、含浸、印刷等といった手法を採用することができる。基材に酸素検知剤組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレーやバーコーター等を用いる方法が挙げられる。基材に酸素検知剤組成物を印刷する方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法等が挙げられる。
【0033】
基材は、単層でもよいし、複数層でもよい。酸素検知剤層を他の層で挟んだ複数層を有する構成である場合、塗布部の色彩を目視可能とするためには、塗布層の上層又は下層の少なくともいずれかの層を実質的に透明とする必要がある。
【0034】
上記した液状の酸素検知剤組成物を基材に塗布する際の乾燥温度は、溶剤等を揮発させることができれば特に限定されないが、酸素検知剤組成物の熱による変色を防止する観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることが更に好ましい。
【0035】
本実施形態では、上記した酸素検知シートを含む脱酸素剤用包装材料とすることができる。酸素検知シートを包装材料として使用する場合は、外表面層/酸素検知剤層(酸素検知剤組成物を含む層)/内表面層等といった複数層を有する構成であることが好ましい。すなわち、外表面層と、この外表面層の上に設けられた酸素検知剤層と、酸素検知剤層の上に設けられた内表面層とを、少なくとも有し、酸素検知剤層が酸素検知剤組成物を含む層である構成等が好ましい。ここで、内表面層は、脱酸素剤組成物と接する層である。外表面層は外部と接する層であり、内部に保存された脱酸素剤組成物とは反対側に位置する表面層である。よって、脱酸素剤用包装材料で、脱酸素剤組成物を包装した場合、例えば、外表面層/酸素検知剤層/内表面層/脱酸素剤組成物の順に接する構成をとることができる。
【0036】
内表面層は、脱酸素剤組成物を直接包装するため、ヒートシール性を有する層(ヒートシール層)であることが好ましい。例えば、低密度ポリエチレンフィルム等を含む層であることが好ましい。
【0037】
外表面層は、外部と接する層であるため、ポリエチレンテレフタレート等を含む層であることが好ましい。
【0038】
酸素検知剤組成物に含まれる各種成分の溶出を避ける観点から、酸素検知剤層の上に保護層として透明樹脂を含む層を更に有することが好ましい。保護層は、酸素検知剤層の変色を外部から視認可能であればよく、外表面層と酸素検知剤層との間に設けてもよいし、内表面層と酸素検知剤層の間に設けてもよい。酸素検知剤層の上に保護層を設ける方法としては、酸素検知剤組成物を含む部分(層)をフィルムの裏刷り印刷により設けることが好ましい。印刷後のラミネート方法としては、酸素検知剤部分が高温に曝されにくいという観点から、ドライラミネートが好ましい。
【0039】
本実施形態の脱酸素剤包装体は、脱酸素剤組成物と、脱酸素剤組成物を包装する上記した脱酸素剤用包装体と、を含む脱酸素剤包装体が挙げられる。脱酸素剤組成物は、酸素を吸収して、脱酸素状態(例えば、酸素濃度0.1%以下等)を形成できるものであればよく、特に限定されない。
【0040】
脱酸素剤組成物を脱酸素剤用包装体で包装する方法としては、特に限定されず、例えば、ロータリーパッカー等による三方包装、スティックパッカー等によるピロー包装、四方包装機等による四方包装等公知の包装機及び包装方法を用いることができる。これらの中でも、生産効率の観点からロータリーパッカー等による三方包装が好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
以下の実施例において、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」と表記する。)、酢酸エチル、メチレンブルー、メチレングリーン、D−フルクトース、D−キシロース、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三ナトリウム十二水和物、グリセリン、ポリエチレングリコール200(以下、「PEG200」と表記する。)及び表1に示す全ての保水剤は、特に断りがない限り、和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
【0043】
(実施例1)
<酸素インジケーターインキの作製>
IPA4.5g及び酢酸エチル4.5gの混合溶媒を用意し、バインダーとしてセルロースアセテートプロピオネート(商品名「504−0.2」、EASTMAN CHEMICAL社製、以下「CAP」と表記する。)1.0gを溶解させた。この溶液に、酸化還元色素としてメチレンブルー0.016g、着色剤としてフロキシンB(食用赤色104号、保土谷化学株式会社製)0.011g、保水剤としてPEG200を3.6g(乾燥後の酸素検知剤組成物の総量に対するPEG200の含有率は25質量%)、還元剤としてD−フルクトース2.1gを加えて分散させることによりインキAを得た。
【0044】
また、IPA5.8g及び酢酸エチル5.8gの混合溶媒にCAP1.4gを溶解させた。この溶液に、水難溶性塩基性物質として水酸化マグネシウム(20℃での水への溶解度:0.9mg/100g−H
2O)10gを、混合し分散させることによりインキBを得た。
【0045】
インキA1.1g、インキB1.1g、IPA0.7g及び酢酸エチル0.7gを混合することにより酸素インジケーターインキを得た。
【0046】
<酸素検知シートの作製>
100mm×150mmに切り取ったユポ紙(FPD−80、株式会社ユポコーポレーション製)の表面に以下の手順によりインキを塗布した。インキの塗布はバーコーター(テスター産業株式会社製)を用いて行った。まず、保護層として「CLIOSメジウム (A)」(DICグラフィックス株式会社製)を塗布し、60℃の温風により10秒間乾燥させた。次いで、酸素検知層として得られた酸素インジケーターインキを塗布し、60℃の温風により10秒間乾燥させた。最後に、もう一度「CLIOSメジウム」(A)(DICグラフィックス株式会社製)を、塗布し、60℃の温風により10秒間乾燥させることにより酸素検知シートを得た。
【0047】
<変色性能評価>
得られた酸素検知シートを5mm×15mmの大きさに切り出し、酸素バリア袋内にテープで固定した。次いで、該袋に80%RHに調湿する調湿綿と脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製、「エージレスSA−100」;自力反応型の鉄系脱酸素剤)及び窒素500mLを封入し密封した。袋内の酸素濃度が0.1容量%未満となっていることを、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、「GC−14A」)を用いて確認した後に該袋を25℃で保存し、酸素検知シートの色調を6時間ごとに目視で確認した。酸素濃度が0.1容量%未満になっていることを示すピンク色に変色するまでに要した時間が6時間以内であった場合を「A」、12時間以内であった場合を「B」、18時間以上であった場合を「C」と評価した。なお、80%RHに調湿する調湿綿は、グリセリン2.55g及び水2.45gを混合し脱脂綿に含浸させることにより作製した。
【0048】
<色彩保持性評価>
得られた酸素検知シートを5mm×15mmの大きさに切り出し、酸素バリア袋内にテープで固定した。次いで、該袋に脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製、「エージレスSA−202」、自力反応型の鉄系脱酸素剤)、70%RHに調湿する調湿綿及び空気250mLを封入して密封した。該密封袋を35℃で1ヵ月保存した後に、該密封袋内の酸素検知シートの色彩を目視で確認した。保存前後で色彩に変化が無かった場合を「A」、色彩が変化しているが酸素濃度視認できた場合を「B」、色彩が変化し酸素濃度視認が困難であった場合を「C」と評価した。結果を表1に示す。なお、70%RHに調湿する調湿綿は、グリセリン3.15g及び水1.85gを混合し、脱脂綿に含浸させることにより作製した。
【0049】
<印刷適性評価>
得られた酸素検知シートを2枚用意し、1枚の酸素検知シート(以下、「酸素検知シートA」と表記する。)をインキ塗布面が上向きとなるよう置いた。次に、もう1枚の酸素検知シート(以下、「酸素検知シートB」と表記する。)をインキ塗布面が上向きとなるよう酸素検知シートAの上に重ねて置いた。その後、酸素検知シートBのインキを塗布していない面(酸素検知シートAのインキ塗布面と接触した面)のインキ付着の状態を、目視で観察した。インキ付着が無かったものを「A」、インキ付着があったものを「C」と評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2〜
4、参考例5、6、比較例1〜8)
PEG200に代えて、保水剤として表1に示した物質を用いた点以外は、実施例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した。そして、これらについて、実施例1と同様にして、変色性能評価、色彩保持性評価及び印刷適性評価を行った。その結果を表1に示す。なお、表1に記載の平均分子量に関して、ポリエチレングリコールは日本薬局方記載のマクロゴールの平均分子量測定法によって求めた。
使用したポリエチレングリコールを以下に示す。
「ポリエチレングリコール200」(平均分子量:190〜210)
「ポリエチレングリコール300」(平均分子量:280〜320)
「ポリエチレングリコール400」(平均分子量:380〜420)
「ポリエチレングリコール600」(平均分子量:570〜630)
「ポリエチレングリコール1000」(平均分子量:900〜1100)
「ポリエチレングリコール1540」(平均分子量:1500)
なお、ポリエチレングリコール以外に使用したものを以下に示す。
エチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、分子量62)
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、分子量76)
ジプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、分子量134)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業株式会社製、分子量90)
ジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、分子量106)
ポリプロピレングリコール300(和光純薬工業株式会社製、商品記載の分子量300)
ポリプロピレングリコール700(和光純薬工業株式会社製、商品記載の分子量700)
ポリプロピレングリコール2000(和光純薬工業株式会社製、商品記載の分子量2000)
【0051】
【表1】
酸化還元色素:メチレンブルー
還元剤:D−フルクトース
水難溶解性塩基性物質:水酸化マグネシウム
保水剤含有率:25質量%
【0052】
保水剤としてポリエチレングリコールを用いた
実施例1〜4、参考例5、6では、試験開始後6時間以内にピンク色に変色しており、かつ、色彩保持性や印刷適性が良好であった。一方、ポリエチレングリコール以外の保水剤を用いた比較例1〜8では、変色性能か色彩保持性の少なくともいずれかが不十分な結果であった。
【0053】
(
参考例7、実施例
8〜12、比較例9〜10)
PEG200の配合量を表2に示した含有率(質量%)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した。すなわち、表2に記載の「PEG含有率」は、乾燥後の酸素検知剤組成物の総量に対するPEG200の含有率(質量%)を示す。そして、これらについて、実施例1と同様にして、性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2によれば、特に実施例8〜12が、変色性能、色彩保持性能及び印刷適性の全てがより優れていることが確認された。
【0056】
(実施例13、比較例11)
メチレンブルーに代えて、酸化還元色素としてメチレングリーンを用いた点以外は、実施例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した(実施例13)。また、メチレンブルーに代えて、酸化還元色素としてメチレングリーンを用いた点以外は、比較例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した(比較例11)。実施例13及び比較例11について、各々性能評価を行った。実施例13では変色性能、色彩保持性及び印刷適性が全て「A」であったが、比較例11では色彩保持性が「C」であった。
【0057】
(実施例14、比較例12)
D−フルクトースに代えて、還元剤としてD−キシロースを用いた点以外は、実施例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した(実施例14)。また、D−フルクトースに代えて、還元剤としてD−キシロースを用いた点以外は、比較例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した(比較例12)。実施例14及び比較例12について、各々性能評価を行った。実施例14では変色性能、色彩保持性及び印刷適性が全て「A」であったが、比較例12では色彩保持性が「C」であった。
【0058】
(実施例15、比較例13)
水酸化マグネシウムに代えて、水難溶性塩基性物質として炭酸マグネシウム(20℃での水への溶解度:0.039g/100g−H
2O)を用いた点以外は、実施例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した(実施例15)。また、水酸化マグネシウムに代えて、水難溶性塩基性物質として炭酸マグネシウムを用いた点以外は、比較例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製した(比較例13)。実施例15及び比較例13について、各々性能評価を行った。実施例15では変色性能、色彩保持性及び印刷適性が全て「A」であったが、比較例13では色彩保持性が「C」であった。
【0059】
(比較例14)
インキBに対してリン酸三ナトリウム十二水和物(20℃での水への溶解度:12.1g/100g−H
2O(無水物換算))0.4g(乾燥後の酸素検知剤組成物の総量に対するリン酸三ナトリウム十二水和物の含有量は2質量%であり、リン酸三ナトリウムの無水物換算の含有量は0.86質量%)を更に添加して混合分散した点以外は、実施例1と同様にして、酸素検知剤と酸素検知シートを作製し、性能評価を行った。比較例14では色彩保持性が「C」であった。
【0060】
実施例13〜15と比較例11〜14の結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
本出願は、2013年7月16日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−147933)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。