【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る電動工具の一例であるディスクグラインダ1の全体形状を示す斜視図である。ディスクグラインダ1のハウジング(筐体)は、駆動源たる電気モータを内部に収容する本体ハウジング2と、本体ハウジング2の前方に取り付けられるギヤケース3により構成される。本体ハウジング2は、前後方向にその中心軸が延びる略筒状であって、後述するモータを収容する部分と電池パック60を保持する部分(拡径部2c)との間に、本体ハウジング2の外径(高さ及び/又は幅)が小さく絞られた把持部(細径部)2bが形成され、作業者が把持しやすいように構成される。本体ハウジング2の前方端付近の側方(左側面)にはモータの回転をオン又はオフするためのスイッチのスイッチレバー8が設けられる。ギヤケース3は本体ハウジング2の前方側において、ファンカバー17を介在させた状態で前から後ろ方向に挿入される4本のねじ16により固定される。ギヤケース3は、その内部に砥石70が取り付けられるスピンドル(出力軸)を固定するものであり、モータの回転に連動してギヤケース3に収納された回転伝達機構(図示せず)を介して砥石70が回転する。
【0017】
砥石70は、例えば直径100mmのレジノイドフレキシブルトイシ、フレキシブルトイシ、レジノイドトイシ、サンディングディスク等であり、用いる砥粒の種類の選択により金属、合成樹脂、大理石、コンクリートなどの表面研磨、曲面研磨が可能である。砥石70の回転速度は、例えば1000〜5000rpmの任意の回転数に調整できる。砥石70の後方側の周囲には研削された部材や破損した砥粒等の飛散から作業者を保護するためのホイルガード20が設けられる。ギヤケース3の一方の側面(ここでは右側)に着脱式のサイドハンドル4が設けられる。本体ハウジング2の前方の側面には本体ハウジング2の後端付近の両側側面には、後述する冷却ファンにより外気を吸引するための吸気孔19bが形成され、ギヤケース3には吸引された空気を排出するための排気孔3aが設けられる。
【0018】
図2は本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の後端底面付近を示す部分斜視図である。本体ハウジング2の後方側であって把持部2bと拡径部2cとの接続部分付近には、モータの回転速度を調整するためのダイヤル9が設けられる。ダイヤル9は回転式であって、ダイヤルには速度レベルを示すための数字が印字されている。尚、モータ5の回転速度調整手段は、ダイヤル式の調整手段だけで無く、高と低を切替える切替えスイッチにて構成しても良いし、電子的なスイッチを用いて設定できるようにしても良い。拡径部2cの後方かつ下側には、電池パック60を保持すると共に電池パック60に形成された空気孔を塞ぐための覆い部2dが設けられる。覆い部2dには表示パネル25が設けられ、AUTOボタン26と電池残量チェックボタン27が設けられる。これらは共にタクタイルスイッチにて構成できる。AUTOボタン26は制御方法を自動変速モードに設定するボタンであり、自動変速モードが設定されると、無負荷時はモータ5の回転数を下げ、負荷を検出したら通常の(ダイヤルで選択した)回転数に切り替えるという制御を行う。電池残量チェックボタン27を押すと電池の残量に応じた形態にて電池残量表示ランプ28が点灯する。ここでは電池残量表示ランプ28は複数のLEDにて形成し、例えば、電池の残量が大きいときはすべてのLEDが点灯し、電池の残量が少なくなるにつれて点灯するLEDの数を減らすように構成すれば良い。電池パック60を取り外すときは、電池パックの両側面に設けられたラッチ61を押しながら図中の矢印に示す取り外し方向に移動させる。
【0019】
図3は本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の内部構成を示す縦断面図である。モータ5は軸方向(前後方向)に細長い形状とされ、ここではモータ5として3相ブラシレスDCモータを用いる。モータ5は、略円筒状の外形をもつステータ5bと、ステータ5bの内周部内に同心軸状に設けられるロータ5aを含んで構成され、ポリカーボネイド等の高分子樹脂の成型により製造された略筒状の本体ハウジング2の内部の前方側に収容される。モータ5のステータ5bは本体ハウジング2の内部に固定され、回転軸5cは、ギヤケース3と本体ハウジング2の間に挟持されるファンカバー17に固定される軸受18aにより前方側が軸支され、本体ハウジング2の中央付近に固定される軸受18bにより後方側が軸支される。ステータ5bには、3相巻線U、V、Wからなるコイル(電機子巻線)が巻かれる。ロータは、回転軸5cの外周側に取り付けられる金属製のロータコアと、N極およびS極を有する円筒形のマグネット(永久磁石)から構成される。マグネットとしては、例えば円管形ネオジウム焼結磁石を用いることによりロータの小径化を図ることができる。ステータ5bと軸受18bとの間には、3つの位置検出素子を搭載するための検出基板21が設けられる。検出基板21は、回転軸5cを貫通させるための貫通穴を有する円環状か又は半円状の基板とすると良く、検出基板21上には位置検出素子22、23、24(
図4参照)が設けられる。位置検出素子22、23、24は、回転するロータ5aのマグネットの位置を検出することにより、ロータ5aの回転位置を検知するものであり、例えばホールICが用いられ、回転方向に60°毎に3つ配置される。
【0020】
軸受18bの後方であって本体ハウジング2のほぼ中央付近には、モータ5を回転させるためのスイッチ7が設けられる。スイッチ7はスイッチレバー8(
図1参照)に連動して動作することによりモータ5の回転のオン又はオフを指示するものであり、プッシュボタン7aを移動させることによりオン(接続状態)又はオフ(断続状態)に切替える1回路1接点スイッチである。プッシュボタン7aはスイッチレバー8の移動に連動して移動するリンク機構(図示せず)によって操作される。尚、スイッチレバー8の移動に連動させてプッシュボタン7aを移動させる機械的な機構は種々あって、それらは公知であるので、ここでの説明は省略する。
【0021】
前方側の軸受18aとロータ5a、ステータ5bとの間には、冷却ファン10が設けられる。冷却ファン10は回転軸5cの回転により回転し、後方側の吸気孔19b(
図2参照)から前方側の排気孔3aに至る空気流を発生させる送風手段である。本体ハウジング2の外部から取り込まれた空気流は、図中の黒矢印にて例示するように、ヒートシンク40の近傍を流れることによりスイッチング素子33、36等を冷却し、その後、スイッチ7の周囲を通過してモータ5に到達する。モータ5付近において冷却風は、ステータ5bの外周と本体ハウジング2の内壁面の間、及び、ステータ5bとロータ5aの間の空隙を通過して冷却ファン10に到達し、その後、主に排気孔3aからハウジングの外部に前方向きに排出される。
【0022】
本体ハウジング2の後方側の端部には着脱式の電池パック60が装着される。電池パック60は充電可能な二次電池であり、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等を用いることができる。本実施例では、電池パック60は上方向から下方向にスライドさせるようにして装着可能であり、ラッチ61により固定される。電池パック60の高さ方向の寸法H
Bは本体ハウジング2のモータ5の収容部分の直径d
mよりも十分大きい。このように本体ハウジング2の直径よりも大きい高さ寸法を有する電池パック60を保持するために、本体ハウジング2の電池パック60の装着部分には拡径部2cが形成される。拡径部2cは本体ハウジング2の高さ方向及び幅方向(左右方向)が、本体ハウジング2のモータ5の収容部分の直径よりも大きく形成された部分であって、この拡張された内部空間に制御基板31が配置される。制御基板31は基板ケース32の内部に収容され、制御基板31の面がモータ5の回転軸方向(本体ハウジング2の長手方向)と直交するように配置され、電池パック60のスライド面と平行になるように配置される。制御基板31には6つのスイッチング素子(33、36等)と制御手段を構成するマイコン(図示せず)が搭載されるが、比較的大きな取り付けスペースを有するスイッチング素子は、制御基板31からモータ5の方向に延びるように配置される。6つのスイッチング素子(33、36等)には、その冷却のために大型のヒートシンク40が設けられる。ヒートシンク40は、金属製の厚板にて構成でき、厚板の一方の面(上面)と他方の面(下面)にそれぞれスイッチング素子33、36等が固定される。
【0023】
本体ハウジング2の拡径部2cの前方側には、モータ5の回転速度を設定するためのダイヤル9が設けられる。ダイヤル9は回転軸9aを軸として回転可能となっており、その回転軸9aがモータ5の回転軸方向と平行に配置され、外周部の一部を除いてダイヤル9の大部分が本体ハウジング2の内部に収容される。ダイヤル9は可変抵抗器であって、制御回路に接続される。このようにダイヤル9を拡径部2cの前方部分に設けることにより制御基板31との配線が短くてすむので、効率的な実装を行うことができる。本実施例の本体ハウジング2は、モータ5の回転軸を通る鉛直面から左右に分割される分割構造であって、制御基板31を収容する基板ケース32とダイヤル9は、本体ハウジングの右側部分と左側部分の内壁に形成された保持部(取り付けリブ)によって挟み込むようにして固定される。
【0024】
ギヤケース3は、例えばアルミニウム等の金属の一体成型により構成され、1組の傘歯車機構(傘歯車12、13)を用いた動力伝達機構を収容すると共に、出力軸となるスピンドル14を回転可能に保持する。スピンドル14には、モータ5の回転軸5c(水平方向)に対して直交するように延在するもので、図示しないスパナで砥石70の下側から固定されるホイルナット15を外して砥石70を交換できる。モータ5が回転すると冷却ファン10によって、本体ハウジング2の内部に後方から前方に至る空気流が発生する。
図3にてその空気流の流れの一部を矢印にて示しており、ヒートシンク40は、本体ハウジング内における冷却風の流れにおいて、モータ5よりも上流側であってスイッチ7と電池パック60の間に位置する。
【0025】
次に、モータ5の駆動制御系の構成を
図4に基づいて説明する。
図4において点線で示す回路(制御回路手段とインバータ回路手段)は制御基板31に搭載される。本実施例では、モータ5は3相のブラシレスDCモータで構成される。このブラシレスDCモータは、いわゆるインナーロータ型であって、複数組(本実施例では2組)のN極とS極を含む永久磁石(マグネット)を含んで構成されたロータ5aと、スター結線された3相の固定子巻線U、V、Wから成るステータ5bを有する。演算部51は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための中央処理装置(CPU)、処理プログラムや制御データを記憶するためのROM、データを一時記憶するためのRAM、タイマ等を含んで構成され、モータ5の回転速度の制御を行う。モータ5の回転速度は、ダイヤル9にて任意に設定可能であり、演算部51は作業者によるスイッチ7の操作に応じてモータ5の起動又は停止をする。
【0026】
インバータ回路手段は、3相ブリッジ形式に接続されたFET等の6個のスイッチング素子33〜38から主に構成される。ブリッジ接続された6個のスイッチング素子33〜38の各ゲートは、制御信号出力回路52に接続され、6個のスイッチング素子33〜38の各ドレインまたは各ソースは固定子巻線U、V、Wに接続される。これによって、6個のスイッチング素子33〜38は、制御信号出力回路52から入力されたスイッチング素子駆動信号(H4、H5、H6等の駆動信号)によってスイッチング動作を行い、インバータ回路手段に印加される電池パック60の直流を3相(U相、V相及びW相)交流電圧Vu、Vv、Vwに変換して固定子巻線U、V、Wにモータ5の駆動電力を供給する。
【0027】
6個のスイッチング素子33〜38の各ゲートを駆動するスイッチング素子駆動信号(3相信号)のうち、3個の負電源側スイッチング素子36〜38をパルス幅変調信号(PWM信号)H4、H5、H6として供給し、制御基板31上に搭載された演算部51によって、モータ5のスイッチ手段を構成する位置検出素子22〜24の出力信号に基づいてモータ5への電力供給を開始させる。ここで、PWM信号は、インバータ回路手段の負電源側スイッチング素子36〜38に供給される。
【0028】
スイッチ7の操作状態はスイッチ操作検出回路56にて検出され、スイッチ操作検出回路56はハイ(スイッチON)又はロー(スイッチOFF)のいずれかの出力を演算部51に出力する。モータ5の回転速度を調整するためのダイヤル9の出力は回転速度設定回路57に入力され、回転速度設定回路57はダイヤル9の設定位置に応じた制御信号を演算部51に送出する。演算部51は、スイッチ操作検出回路56と回転速度設定回路57の出力信号に基づいて所定のスイッチング素子33〜38を交互にスイッチングするための駆動信号を形成し、モータ5の駆動信号を制御信号出力回路52に出力する。これによって固定子巻線U、V、Wの所定の巻線に交互に通電し、ロータ5aを設定された回転速度で回転させる。モータ5の回転速度は、位置検出素子22〜24の出力を検出する回転子位置検出回路53の出力を用いて、回転数検出回路54が検出する。回転子位置検出回路53及び回転数検出回路54の出力は共に演算部51に出力される。モータ5に供給される電流値は、電流検出回路55によって測定され、その値が演算部51にフィードバックされることにより、演算部51は設定された駆動電力となるように調整することによりモータ5の回転制御を行う。
【0029】
次に
図5を用いて、スイッチング素子33〜38とヒートシンク40との接続状況を説明する。
図5は
図3における矢印Aの方向から矢視図であって大部分を透視図にて図示している。ここで理解できるように複数のスイッチング素子のうちスイッチング素子33〜35は共通のヒートシンク40の表側(上側面)に一列に並べた状態でネジ止めされる。この際、スイッチング素子33〜35は互いに接触しないように所定の間隔を有するように固定することが重要である。また、
図5では見えないが、ヒートシンク40の裏側(下側面)にも同様にしてスイッチング素子36〜38がネジ止めされ、スイッチング素子33〜35とスイッチング素子36〜38は、面対称となる位置に配置される。ヒートシンク40の形状は種々考えられるが、本実施例では厚さ約10mmのアルミニウム板を用いるようにした。アルミニウム板の面は、前後及び左右に延びるものであって、制御基板31と直角方向になるように配置される。別の表現をするとヒートシンク40は、制御基板31からモータ5側に向かって回転軸方向に延びるように配置される。
【0030】
ヒートシンク40は、本体ハウジング2の内側壁面に沿って前端の角部が斜めに形成された斜面部40bを有し、角落としをして本体ハウジング2内の空間を有効に活用している。基板ケース32の後方側には、電池パック60の接続端子と接触させるための複数の端子(図示せず)を固定するため端子ホルダ39が設けられる。本体ハウジング2の拡径部2cの左右側面には、空気の吸気孔19a、19bが設けられる。
図5では吸気孔19a、19bに図示しないフィルタ装置を取り付けるために外側に大きめに突出した形状をしている。吸気孔19a、19bから本体ハウジング2の内部に取り込まれた外気は、本体ハウジング2の長手方向、つまり回転軸方向に沿うように流れる。これによってヒートシンク40の延びる方向とほぼ同方向に冷却風が流れることになり、ヒートシンク40に流れを妨げられることのない空気の流れを作ることができる。また、ヒートシンク40の上下左右の側面に冷却風がよく当たるので、効率よくヒートシンク40及びスイッチング素子33〜38を冷却することができる。このようにヒートシンク40を構成したために、モータ5を収容するモータ収容部2aの後ろ側にモータ収容部2aよりも細径である把持部2bを設けた構成でありながら、効果的にスイッチング素子33〜38を冷却することが可能となった。
【0031】
図6は、モータの回転軸方向の前方側から制御基板31を見た状態を示す図である。制御基板31は、合成樹脂製の基板ケース32の内部に固定される。
図6において、厚さT
aのアルミニウム合金製のヒートシンク40の一面(上面)に3つのスイッチング素子33〜35を面接触させ、一面(上面)に対向する他面(下面)に3つスイッチング素子36〜38を並んで面接触させるようにした。この際、スイッチング素子33〜35及び36〜38は、絶縁シート(
図6では図示せず。
図7にて後述)を介してヒートシンク40に固定すると良い。制御基板31の長手方向の寸法(長さLc)は、モータ5のステータ5bの直径よりも十分大きくなっており、その大きくなった部分にマイコン51等の電子素子を搭載すると良い。
【0032】
次に、
図7を用いて
図6のB−B部の断面図を説明する。基板ケース32は上側に開口面を有する略直方体の容器状に形成され、その内部にスイッチング素子33〜38を搭載した制御基板31が収容される。金属製の厚板であるヒートシンク40は、制御基板31から僅かに離れて隙間46を有するように位置づけられる。ヒートシンク40は導体であるため、制御基板31の端子等をショートさせないようために隙間46を設けたものである。スイッチング素子33〜38は公知のFET(電界効果トランジスタ)であり、ソース、ドレイン、ゲートの3つの端子35a、38aを有し、本体部の背面の一部及び背面から上に延びるように金属製のネジ穴を有する放熱板35b、38bを有する。放熱板35b、38bはそれぞれネジ43によってヒートシンク40に形成されたネジ穴40aにネジ止めされるが、ヒートシンク40と放熱板35b、38bが電気的に絶縁状態になるように、電気を通さない絶縁スリーブ44を介在させて固定される。このとき、放熱板35bを止めるネジ43と放熱板38bを止めるネジ43は同軸上に位置する。また、スイッチング素子35、38とヒートシンク40との間にも熱伝導性であるが電気的に絶縁性の樹脂シート41を介在させるようにして、放熱性を良好に保ちつつスイッチング素子35、38とヒートシンク40が電気的に短絡しないように構成した。ヒートシンク40の回転軸方向(前後方向)における寸法は、スイッチング素子35、38の寸法F
Tよりも十分大きいことが理解できよう。尚、スイッチング素子33〜34、36〜37についても同様の方法にてヒートシンク40に固定される。このような固定方法を用いることにより1つのヒートシンク40に6つのスイッチング素子33〜38を固定することができた。
【0033】
本実施例ではさらに、スイッチング素子33〜38とマイコン51を含むその他の電子素子(
図7では図示せず)を搭載した制御基板31をシリコン等の防水・絶縁樹脂にて充填して固めるようにした。ここでは容器状の基板ケース32の開口を上向きにして液体状の樹脂を内側底面から高さHとなる一点鎖線の位置まで充填して固化させる。この高さHは、スイッチング素子35の制御基板31への取り付け後の端子(脚部)35aの長さF
Bよりも高くなるように構成することが重要である。このように充填する樹脂の高さHを端子(脚部)35aの長さF
Bよりも高くすることで、電動工具の稼働時の振動によるスイッチング素子33〜38の破損を効果的に防止でき、電動工具の長寿命化を図ることができる。一方、高さHはスイッチング素子35の制御基板31への取り付け後の本体部の高さ(セラミックパッケージの上端位置)F
Tよりも低くした。このように設定することによりセラミックパッケージの上端位置よりも上方に延びる放熱板35bは樹脂の外部に露出するために、冷却ファン10によって生成される空気流中に放熱板35bが晒されるため良好な放熱性を実現できる。ヒートシンク40は部分的に樹脂の内部に位置するが、大部分は樹脂から外部に露出するので、樹脂によってがたつきが無いようにしっかりと固定される上に、冷却ファン10によって生成される空気流によって良好に冷却される効果が得られる。
【0034】
以上、本実施例の構成を説明したがヒートシンク40による冷却効果を良好に保つためには、金属の厚板であるヒートシンク40の板厚やサイズを適切に設定することが重要である。ここでは、スイッチング素子38の厚さがT
fである場合に、それに対応するヒートシンク40の厚さを2T
f以上となるように構成した。このような厚さのヒートシンク40とすれば、ネジ43を用いて両面にスイッチング素子を固定することが容易となり、ネジ穴40aを形成することが可能となる。また、ヒートシンク40はアルミニウムであるため軽量であり、比較的安価に製造できる一方で十分な熱容量を持つことにより良好な放熱性能を達成できる。
【0035】
次に
図8を用いてヒートシンク40の単体形状を説明する。ヒートシンク40の形状は種々考えられ、アルミニウム押し出し成形を用いた複雑なフィン形状を有するもの等の様々な形状としても良い。しかしながら本実施例では、単純な軽金属合金の厚板とし、その両面に6つのネジ穴40aを形成するようにした。ネジ穴40aは、その対面にもう1つのネジ穴40aが配置されるようになっており、対面する二つのネジ穴40aは同軸上に位置する。また、ネジ穴40aは片面に3つ形成され、その3つのネジ穴40aを繋いだ線は回転軸5cと直交する左右方向に延びる。この配置により、上下左右の重量バランスが良くなる。また、本体ハウジング2の把持部2bの外径が46mmの際には、ヒートシンク40の幅Waは41mm、板厚Taが10mm、高さHaが43mm程度とすれば良い。尚、対面する二つのネジ穴40aを同軸上に位置させるか、ずらして配置するか等は比較的任意に決定すれば良いので、本実施例の配置に限定されるものではない。
【0036】
次に
図9を用いて、ダイヤル9とヒートシンク40との配置関係を説明する。ここでは制御基板31の収容スペースと、ヒートシンク40及びスイッチ7の収容スペースを横(右側又は左側)から見ると、太線で示す部分がL字状の空間47となる。本実施例ではこのL字状の空間47に直角に挟まれる部分48にダイヤル9を設けるようにした。この関係は軸方向にみてヒートシンク40が占める前後位置Saと、ダイヤル9が占める前後位置Sdが上下方向、つまり回転軸5cに沿った方向と交差する方向においてオーバーラップする位置関係にある。このように回転速度調整手段(ダイヤル9等)が、回転軸方向(本体ハウジング2の長手方向)においてヒートシンク40とオーバーラップするように配置されるので、前後左右に延びたヒートシンク40を効率よく実装できる上に、ヒートシンク40が占めていない上下方向の空間に回転速度調整手段を実装することで、無駄のない配置による電動工具の小型化を実現することができる。また、ヒートシンク40の板厚Ta(
図7参照)はL字状の空間47の高さ寸法Hhよりも小さく、ヒートシンク40の幅Wa(
図6参照)はL字状の空間47の高さ寸法Hh(ヒートシンク40の前後中央付近の本体ハウジング2の内壁部分の高さ)よりも大きい関係となっている。すなわち、ヒートシンク40のスイッチング素子33〜38が並ぶ横方向の寸法(幅Wa)は、これに直交するハウジングの高さ寸法(Hh)よりも大きい関係となっている。
【0037】
以上、本発明を示す実施例に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、位置検出素子を用いてロータのマグネットの位置を検出する方法でなく、ステータ5bのコイルの誘起電圧(逆起電力)をフィルタを通して論理信号として取り出すことによってロータ位置を検出する、いわゆるセンサレス方式の回転位置検出方式を採用することも可能である。また、本実施例では電源として2次電池パックを用いているが、従来例と同様にAC電源と整流回路を用いても良い。この場合は制御基板31の後方側に、さらに電源回路基板を設け、交流を直流に変換するダイオードブリッジとコンデンサを用いた全波整流回路等を搭載すれば良い。さらに、上述の実施例では電動工具の例としてディスクグラインダを用いて説明したが、ディスクグラインダだけに限られずにインバータ回路を用いてモータを駆動するようにしたその他の電動工具に適用しても良い。