(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6460179
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】食品冷却方法
(51)【国際特許分類】
F25D 21/04 20060101AFI20190121BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20190121BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
F25D21/04 Z
F25D23/00 302L
A23L3/36 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-153623(P2017-153623)
(22)【出願日】2017年8月8日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 明敏
(72)【発明者】
【氏名】大薗 拓未
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−218553(JP,A)
【文献】
特表2008−532478(JP,A)
【文献】
特開平02−195844(JP,A)
【文献】
特開昭57−065149(JP,A)
【文献】
特開2003−106740(JP,A)
【文献】
米国特許第06266973(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/00−23/12
A22C 21/00
A23B 4/06
A23L 3/36−3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のフィンにフロストが生じない第1の吹出温度の冷風で食品を冷却して当該食品の主に除湿処理を行う除湿ステップと、
除湿ステップを経た食品を、前記第1の吹出温度よりも低く前記フィンにフロストが生じ得る第2の吹出温度の冷風で冷却して当該食品の主に冷却処理を行う冷却ステップと
を含む、食品冷却方法。
【請求項2】
前記第1の吹出温度が10〜20℃であり、前記第2の吹出温度が−5〜0℃である、請求項1に記載の食品冷却方法。
【請求項3】
前記フィンのピッチが2〜5mmである、請求項1又は請求項2に記載の食品冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品冷却方法に関する。さらに詳しくは、例えば豚や牛等の枝肉を冷却する食品冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豚や牛等の家畜の処理を行う食肉工場では、通常、と畜工程及び皮剥工程を経た家畜は背割により枝肉の状態に解体される。枝肉は懸肉室で除湿され、その後、枝肉冷蔵庫で所定の温度まで冷却される。
【0003】
例えば豚の枝肉は、
図3に示されるように、懸肉室51で約24時間かけて水分が取り除かれ、その後、枝肉冷蔵庫52で48〜72時間かけて枝肉の芯温が4℃程度になるまで冷却される。冷却された枝肉は、枝肉冷蔵庫52に続く加工処理室53で部分肉に加工される。
【0004】
枝肉冷蔵庫52は、複数のゾーン(
図3に示される例ではA〜Cの3つのゾーン)に分割されており、枝肉は、各ゾーンに配設されたレール54に走行自在に取り付けられたフック(図示せず)に吊り下げられる。ゾーンAの入口55から搬入された枝肉は、枝肉冷蔵庫52内にて当該枝肉冷蔵庫52内に配設された室内機56から吹き出される−5〜−4℃程度の冷風により潜熱及び顕熱処理、すなわち除湿及び冷却処理が施され、ゾーンCの出口57から搬出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した処理フローにおいて、懸肉室51における除湿処理が不十分であり、枝肉の水分が落ちていない状態で当該枝肉が枝肉冷蔵庫52に搬入されると、室内機56の熱交換器のフィンに霜ないしフロストが付着して当該室内機56の能力が低下するという問題がある。熱交換器のフィンにフロストが付着すると空気との熱交換効率が悪くなり、また、一定時間毎(例えば、5〜6時間毎)に30分程度デフロスト運転をする必要が生じるので、冷却効率が低下する。また、フロストの付着を想定して広いフィンピッチ(例えば、8〜10mm)にすると、その分、熱交換器、ひいては室内機56が大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱交換器のフィンに付着するフロスト量を少なくして冷却効率を向上させることができる食品冷却方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品冷却方法は、
(1)熱交換器のフィンにフロストが生じない第1の吹出温度の冷風で食品を冷却して当該食品の主に除湿処理を行う除湿ステップと、
除湿ステップを経た食品を、前記第1の吹出温度よりも低く前記フィンにフロストが生じ得る第2の吹出温度の冷風で冷却して当該食品の主に冷却処理を行う冷却ステップと
を含む。
【0008】
本発明の食品冷却方法では、前工程である除湿ステップにおいて、従来の−5〜−4℃よりも設定温度を上げ、熱交換器のフィンにフロストが生じない第1の吹出温度の冷風で食品を冷却して当該食品の主に除湿処理を行っている。そして、後工程である冷却ステップにおいて、設定温度を従来の温度程度に戻し、第1の吹出温度よりも低く前記フィンにフロストが生じ得る第2の吹出温度の冷風で冷却して当該食品の主に冷却処理を行っている。このように、フロストが生じない温度で主に潜熱処理を行い、その後、フロストが生じ得る温度で主に顕熱処理を行うことで、熱交換器のフィンに付着するフロストの量を少なくすることができる。これにより熱交換の効率を向上させるとともに、デフロスト運転の頻度を少なくすることができるので、冷却効率を向上させることができる。なお、本明細書において「主に除湿処理」とは、食品に含まれる水分を除去することを目的とする処理のことであり、冷風を食品にあてることから、潜熱処理だけでなく、当該食品の温度が下がる顕熱処理も部分的に付随して行われる。また、「主に冷却処理」とは、食品の温度を下げることを目的とする処理のことであり、冷風を食品にあてることから、顕熱処理だけでなく、当該食品に含まれている水分を除去する潜熱処理も部分的に付随して行われる。
【0009】
(2)前記(1)の食品冷却方法において、前記第1の
吹出温度を10〜20℃とし、前記第2の
吹出温度を−5〜0℃とすることができる。この場合、除湿ステップにおいて主に除湿処理を行うとともに、冷却ステップにおいて主に冷却処理を行うことができる。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)の食品冷却方法において、前記フィンのピッチを2〜5mmとすることができる。この場合、従来の室内機の熱交換器に比べてフィンピッチが小さくなるので、熱交換器、ひいては室内機を小型化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品冷却方法によれば、熱交換器のフィンに付着するフロスト量を少なくして冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の食品冷却方法の一実施形態のプロセス説明図である。
【
図2】本発明の食品冷却方法における冷風の状態を示す空気線図である。
【
図3】従来の食品冷却方法の一例のプロセス説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の食品冷却方法を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る食品冷却方法のプロセス説明図である。本実施形態では、食品である豚の枝肉を冷却する。豚は、と畜工程及び皮剥工程を経たのちに背割りにより枝肉の状態に解体される。解体により得られる枝肉は、懸肉室1において、例えば約24時間かけて除湿処理が施され、当該枝肉に含まれている水分が取り除かれる。
【0015】
懸肉室1で水分が除去された枝肉は、枝肉冷蔵庫2で例えば48〜72時間かけて当該枝肉の芯温が約4℃程度になるまで冷却される。冷却された枝肉は、枝肉冷蔵室2に続く加工処理室3で部分肉に加工される。
【0016】
本実施形態における枝肉冷蔵庫2は、当該枝肉冷蔵庫2の入口側からゾーンA、ゾーンB及びゾーンCの3つのゾーンに分割されている。ゾーンAとゾーンB、及び、ゾーンBとゾーンCは、それぞれ隔壁4a,4bによって区画されている。枝肉は、各ゾーンに配設されたレール5に走行自在に取り付けられたフック(図示せず)に吊り下げられる。ゾーンAの入口6から搬入された枝肉は、枝肉冷蔵庫2内で除湿及び冷却処理が施され、ゾーンCの出口7から搬出される。隔壁4a,4bには、枝肉の通過時に開放可能な扉9が配設されている。
【0017】
各ゾーンの壁際には、複数の室内機8が配設されている。本実施形態では、枝肉を挟んで3台ずつ、合計6台の室内機8が各ゾーンに配設されている。当該室内機8から各ゾーンの空間に冷風が吹き出され、この冷風によって枝肉の潜熱処理及び顕熱処理が行われる。
【0018】
本実施形態では、ゾーンAにおいて、主に除湿処理が行われる(除湿ステップ)。この除湿ステップでは、枝肉冷却の前工程として、室内機8内に設けられた熱交換器のフィンに霜ないしフロストが生じない第1の吹出温度、例えば10℃程度の冷風で枝肉を冷却して当該枝肉の主に除湿処理が行われる。このため、ゾーンAに配設される室内機8は、再熱が可能な再熱除湿機とされている。ゾーンAでは、以下の表1に示されるように、例えば吸込温度が15℃、吹出温度が10.3℃となるような制御がなされる。
図2において、a1がゾーンAにおける吸込空気、a2が吹出空気を示している。
このとき、熱交換器における冷媒の蒸発温度は約5℃であり、風量が256m
3/minで、比容積が0.827m
3/kgであるとすると、除湿量は(256×60)÷0.827×(0.0085−0.0070)≒27.9kg/hとなる。
【0020】
ゾーンB及びゾーンCでは、主に冷却処理が行われる(冷却ステップ)。この冷却ステップでは、前述した除湿ステップに続く後工程として、当該除湿ステップにおける第1の吹出温度よりも低く、室内機8に設けられた熱交換器のフィンにフロストが生じ得る第2の吹出温度、例えば−4℃程度の冷風で枝肉を冷却して当該枝肉の主に冷却処理が行われる。ゾーンB及びゾーンCでは、上記表1に示されるように、例えば吸込温度が0℃、吹出温度が−4.1℃となるような制御が行われる。
図2において、b1がゾーンB及びゾーンCにおける吸込温度、b2が吹出温度を示している。
このとき、熱交換器における冷媒の蒸発温度は約−10℃であり、風量が256m
3/minで、比容積が0.777m
3/kgであるとすると、除湿量は(256×60)÷0.777×(0.0030−0.0024)≒11.9kg/hとなる。
【0021】
ゾーンAでは、従来の冷却方法よりも設定温度を上げて絶対湿度が大きい状態の空気で除湿処理を行っているので、従来の冷却方法に比べて単位時間当たりの除湿能力を向上させることができる。本実施形態では、ゾーンB又はゾーンC(従来の冷却方法)に比べて、単位時間あたりの除湿量を27.9/11.9≒2.3倍にすることができる。
【0022】
また、本実施形態では、フロストが生じない温度で主に潜熱処理を行い、その後、フロストが生じ得る温度で主に顕熱処理を行っている。このため、ゾーンB及びゾーンCにおける室内機8の熱交換器のフィンに付着するフロストの量を少なくすることができる。その結果、ゾーンB及びゾーンCの熱交換器の効率を向上させるとともに、デフロスト運転の頻度を少なくすることができるので、冷却効率を向上させることができる。これにより省エネを図ることができ、運転コストを削減することができる。
【0023】
また、付着するフロストの量が少なくなることから、熱交換器のフィンピッチを従来のものよりも小さくすることができる。例えば、従来6〜10mm程度であったものを2〜5mm程度にすることができる。これにより、熱交換器、ひいては室内機の小型化を図ることができる。小型化することで、室内機のコストダウンを図ることができる。本実施形態では、ゾーンAの熱交換器のフィンピッチを4mm、ゾーンB及びゾーンCの熱交換器のフィンピッチを4mmとしている。
【0024】
〔その他の変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、枝肉冷蔵庫が3つのゾーンに分割されているが、主に除湿処理を行うゾーンと、主に冷却処理を行うゾーンとがある限り、分割の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0025】
また、前述した実施形態では、フロストが生じない第1の吹出温度として10.3℃としているが、この温度は、冷却する食品の内容及び量等に応じて適宜変更することができ、例えば10〜20℃とすることができる。同様に、フロストが生じ得る第2の吹出温度として−4.1℃としているが、この温度も、冷却する食品の内容及び量、並びに食品の設定冷却温度等に応じて適宜変更することができ、例えば−5〜0℃とすることができる。
【0026】
また、前述した実施形態では、冷却する食品として豚の枝肉を例示しているが、これに限らず、例えば牛の枝肉等の他の食品に対しても、本発明の食品冷却方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 :懸肉室
2 :枝肉冷蔵庫
3 :加工処理室
4a:隔壁
4b:隔壁
5 :レール
6 :入口
7 :出口
8 :室内機
9 :扉
51 :懸肉室
52 :枝肉冷蔵庫
53 :加工処理室
54 :レール
55 :入口
56 :室内機
57 :出口
【要約】 (修正有)
【課題】熱交換器のフィンに付着するフロスト量を少なくして冷却効率を向上させることができる食品冷却方法を提供する。
【解決手段】熱交換器のフィンにフロストが生じない第1の吹出温度の冷風で食品を冷却して当該食品の主に除湿処理を行う除湿ステップと、除湿ステップを経た食品を、前記第1の吹出温度よりも低く前記フィンにフロストが生じ得る第2の吹出温度の冷風で冷却して当該食品の主に冷却処理を行う冷却ステップとを含む。
【選択図】
図1