(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含フッ素ポリマーは、一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位、及び、その他の含フッ素エチレン性単量体に由来する構成単位を有する2元以上の共重合体である請求項3記載の粉体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の粉体は、含フッ素ポリマーの粉体であって、上記粉体及び水を混合することにより得られる組成物を目開きが20μmであるメッシュで濾過することにより算出される分散度が50%以上であることを特徴とする。上記分散度としては、75%以上が好ましく、上限は特に限定されないが、100%であってよく、99.99%であってよい。本発明の粉体は、上記分散度を有しており、従来の粉体に比べて、容易に再分散可能である。
【0022】
上記分散度は、次の方法により算出する。乾燥質量がXgの上記粉体と、任意の量の水とを混合することにより、上記含フッ素ポリマーを含む組成物を調製する。次に上記組成物を目開きが20μmであるメッシュで濾過して濾液を回収し、上記濾液に含まれる上記含フッ素ポリマーの乾燥質量Ygを測定する。上記分散度は、次式により算出される。
分散度(%)=Y/X×100
【0023】
上記含フッ素ポリマーは、基Aを有するものであることから、吸湿性が高いので、X及びYを算出する際には、上記含フッ素ポリマーを充分に乾燥させてから質量を測定すべきである。また、高い精度が得られることから、上記含フッ素ポリマーを5質量%前後で含むように上記組成物を調製することが好ましい。上記組成物中の上記含フッ素ポリマーの含有量は4.6〜5.4質量%であってよい。
【0024】
上記粉体は、平均二次粒子径が0.5〜10000μmであることが好ましい。上記平均二次粒子径としては、1μm以上がより好ましく、1000μm以下がより好ましい。上記平均二次粒子径は、マイクロトラックベル社製マイクロトラックMT3300EXIIを用いて測定できる。
【0025】
上記粉体は、取り扱い及び輸送が容易であることから、0〜20質量%の揮発分を含むことが好ましい。上記揮発分の含有量としては、0.2質量%以上がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。上記揮発分は、OHAUS社製ハロゲン水分量計MB45により測定できる。上記含フッ素ポリマーは、吸湿性が高いので、上記粉体は少量の水分を含むことが通常である。
【0026】
上記揮発分量を維持するために、上記粉体を公知の乾燥剤とともに保管することができる。
【0027】
上記含フッ素ポリマーは、液状媒体への再分散性がより一層優れることから、当量重量EW(プロトン交換基1当量あたりの上記含フッ素ポリマーの乾燥重量グラム数)は1000以下であることが好ましい。より好ましい上限は800であり、さらに好ましい上限は650であり、最も好ましい上限は550である。
上記含フッ素ポリマーの生産性が優れることから、当量重量EWは200以上であることが好ましい。より好ましい下限は250であり、さらに好ましい下限は300であり、最も好ましい下限は400である。
当量重量EWは、上記含フッ素ポリマーを塩置換し、その溶液をアルカリ溶液で逆滴定することにより測定することができる。
【0028】
上記含フッ素ポリマーは、−SO
2Y、−COOR、−SO
3X、−SO
2NR
12及び−COOX(Yは、ハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、M
1/L又はNR
14を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。R
1はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基Aを有する。
【0029】
基Aとしては、再分散がより一層容易であることから、−SO
3X、−SO
2NR
12及び−COOXからなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、−SO
3X及び−COOXからなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましい。
【0030】
Xとしては、H、Na、K又はCaが好ましく、金属成分による最終製品への影響を回避できることから、Hがより好ましい。
【0031】
上記含フッ素ポリマーとしては、例えば、下記一般式(I):
CF
2=CF−(O)
n1−(CF
2CFY
1−O)
n2−(CFY
2)
n3−A (I)
(式中、Y
1は、ハロゲン原子又はパーフルオロアルキル基を表す。n1は0又は1の整数を表す。n2は、0〜3の整数を表す。n2個のY
1は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y
2は、ハロゲン原子を表す。n3は、1〜8の整数を表す。n3個のY
2は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、上述した基Aと同じ。)で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位を有するものが好ましい。
【0032】
上記Y
1及びY
2のハロゲン原子としては特に限定されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の何れであってもよいが、好ましくは、フッ素原子である。上記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。上記n1は、1であることが好ましい。上記n2は、0又は1であることが好ましい。上記n3は2、3又は4であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0033】
上記フルオロモノマーとしては、上記一般式(I)におけるY
1がトリフルオロメチル基、Y
2がフッ素原子、n1が1、n2が0又は1、及び、n3が2であるものが好ましい。
【0034】
上記含フッ素ポリマーは、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する構成単位、及び、その他の含フッ素エチレン性単量体に由来する構成単位を有する2元以上の共重合体であることが好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体は、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーと共重合可能なモノマーであり、ビニル基を有するものであれば特に限定されず、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーとは異なるものである。
【0035】
上記含フッ素エチレン性単量体としては、例えば、下記一般式(II):
CF
2=CF−R
f1 (II)
(式中、R
f1は、フッ素原子、塩素原子、R
f2又はOR
f2を表す。R
f2は、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜9の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表す。)で表される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。上記一般式(II)で表される単量体は、一部又は全部がテトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0036】
また、上記含フッ素エチレン性単量体としては、下記一般式(III):
CHY
3=CFY
4 (III)
(式中、Y
3は、水素原子又はフッ素原子を表し、Y
4は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、R
f3又は−OR
f3を表す。R
f3は、炭素数1〜9のエーテル結合を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表される水素含有フルオロエチレン性単量体等を挙げることができる。
【0037】
上記含フッ素エチレン性単量体は、CF
2=CF
2、CH
2=CF
2、CF
2=CFCl、CF
2=CFH、CH
2=CFH、CF
2=CFCF
3、及び、CF
2=CF−O−R
f4(式中、R
f4は、炭素数1〜9のフルオロアルキル基又は炭素数1〜9のフルオロポリエーテル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。上記フルオロビニルエーテルは、R
f4の炭素数が1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0038】
上記含フッ素エチレン性単量体は、特にパーフルオロエチレン性単量体であることが好ましく、CF
2=CF
2であることがより好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体としては、1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
上記含フッ素エチレン性単量体以外にも、更に、上記含フッ素ポリマーに種々の機能を付与するために、含フッ素ポリマーとしての基本的な性能を損なわない範囲で、その他の共重合可能な単量体を添加してもよい。上記その他の共重合可能なモノマーとしては特に限定されず、例えば、重合速度の制御、ポリマー組成の制御、弾性率等の機械的物性の制御、架橋サイトの導入等の目的に応じて共重合可能なモノマーのなかから適宜選択され、パーフルオロジビニルエーテル等の不飽和結合を2つ以上有するモノマー、CF
2=CFOCF
2CF
2CN等のシアノ基を含有するモノマー等が挙げられる。
【0040】
上記含フッ素ポリマーは、フルオロモノマー単位の含有率が5〜40モル%であるものが好ましい。
【0041】
本明細書において、上記「フルオロモノマー単位」とは、上記含フッ素ポリマーの分子構造上の一部分であって、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーに由来する部分を意味する。
上記「フルオロモノマー単位の含有率」は、含フッ素ポリマーの分子における全単量体単位が由来する単量体のモル数に占める、フルオロモノマー単位が由来するフルオロモノマーのモル数の割合である。上記「全単量体単位」は、上記含フッ素ポリマーの分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。上記「全単量体単位が由来する単量体」は、上記含フッ素ポリマーをなすこととなった単量体全量である。
上記フルオロモノマー単位の含有率は、赤外吸収スペクトル分析[IR]、又は、300℃における溶融NMRを用いて得られる値である。
【0042】
本発明は、上述の粉体の製造方法であって、
乳化重合により、−SO
2Y及び−COOR(Yは、ハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む水性分散体(a)を製造する工程(1)、
水性分散体(a)に、アルカリ又は酸を添加して、−SO
3X、−SO
2NR
12及び−COOX(Xは、M
1/L又はNR
14を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。R
1はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む水性分散体(b)を得る工程(2)、
水性分散体(b)を濾過して濾物を回収する工程(3)、及び、
上記濾物を200W以下の仕事量で乾燥させることにより、0〜20質量%の揮発分を含む粉体を得る工程(4)を含むことを特徴とする製造方法でもある。
【0043】
工程(1)では、乳化重合により、−SO
2Y及び−COOR(Yは、ハロゲン原子を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む水性分散体(a)を製造する。
【0044】
水性分散体(a)に含まれる上記含フッ素ポリマーは、上記一般式(I)で表されるフルオロモノマーのうち、−SO
2Y又は−COORを有するフルオロモノマーと、上記含フッ素エチレン性単量体とを重合することにより得られる。このように、上述した一般式(I)で表されるフルオロモノマーのうち、−SO
2Y又は−COORを有するフルオロモノマーを使用し、乳化重合により、上記含フッ素ポリマーを製造することにより、実質的に球形である上記含フッ素ポリマーの微粒子を含む水性分散体(a)を製造することができ、液状媒体への再分散が可能な上述した粉体を製造することができる。
【0045】
上記乳化重合は、水性反応媒体中において、乳化剤及び/又は乳化作用剤を用いて行うことができる。上記乳化剤は、従来の乳化重合に通常用いられている乳化剤又は上記既存乳化剤とは異なるものを使用してもよいし、既存乳化剤と新規乳化剤との両方を使用してもよい。
【0046】
上記乳化剤としては、炭素数が4から12の酸素を含んでもよいフルオロアルキル基と解離性極性基からなる化合物をもちいることができ、例えばパーフルオロオクタン酸アンモニウム[C
7F
15COONH
4]、パーフルオロヘキサン酸[C
5F
11COONH
4]、CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4等が挙げられる。上記乳化重合に用いる上記乳化剤は、一般に、水性反応媒体の0.01〜10質量%使用することができる。
【0047】
上記乳化作用剤としては、−SO
3M
1/L、−SO
3NR
14、−COONR
14又は−COOM
1/L(Mは、水素原子又はL価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。R
1はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を有するフルオロモノマーを用いることができ、特にCF
2=CFOCF
2CF
2SO
3Na、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2SO
3Na、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CO
2Na等の重合反応に関与してポリマー乳化剤を与え得るフルオロモノマーが好ましい。上記フルオロモノマーは、乳化重合において乳化作用を有するとともに、エチレン性化合物であるので、重合反応における単量体として付加させ、含フッ素ポリマーの分子構造上の少なくとも一部となるように重合させることができる。
【0048】
上記乳化作用剤を使用した場合、水性反応媒体は既存乳化剤を有さなくても乳化することができるので、乳化剤を使用せずに乳化重合を行うことができる。
【0049】
上記乳化重合は、重合条件によっては、得られる含フッ素ポリマーの粒子数が低下して粒子径が大きくなり、製膜の際に膜が不均質になる場合があるので、上記乳化重合は、上記乳化剤を用いることが好ましい場合もある。また、粒子数を増やすためには、多量の乳化剤を用いて重合し得られたディスパージョンを希釈し、引き続き重合を継続する、いわゆる「シード重合」を行うことができる。
【0050】
本明細書において、上記「水性反応媒体」とは、上記重合において用いられる水からなる媒体であって、水そのもの、又は、水に有機媒体を溶解若しくは分散させてなる媒体を意味する。上記水性反応媒体は、上記有機媒体を含まないものが好ましく、上記有機媒体を含むものであってもごく微量であることが好ましい。
【0051】
上記重合反応は、重合開始剤を用いて行ってもよい。上記重合開始剤としては特に限定されず、通常、フルオロポリマーの重合に用いられているものであればよく、例えば有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。特に、過硫酸アンモニウム[APS]を用いることが好ましい。上記重合開始剤の添加量としては、重合反応に使用する全ての単量体の合計の0.01〜1質量%であることが好ましい。
【0052】
上記重合反応における水性反応媒体のpHとしては、4〜7であることが好ましい。pHが上記範囲内であると、重合反応が円滑に進行し、また、重合反応中のフルオロモノマー及び/又は含フッ素ポリマーが有する−SO
2Y及び/又は−COOR(Y、Rは、上記定義したものと同じ。)の加水分解を最小限に抑えることができる。
【0053】
上記重合反応における反応温度等の反応条件は、特に限定されず通常の方法に従って行うことができる。
【0054】
工程(1)で得られる上記含フッ素ポリマーは、通常、水性分散体(a)中に微粒子として含まれる。
【0055】
上記微粒子は、再分散性が良好な粉体を容易に製造できることから、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含むものであることが好ましい。本明細書において、上記「含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含む」とは、含フッ素ポリマーからなる微粒子の25質量%以上が含フッ素ポリマー球形微粒子であることを意味する。
【0056】
上記微粒子の粒子形状は、アスペクト比を目安にすることができる。本明細書において、上記「実質的に球形である」とは、アスペクト比が3以下であることを意味する。通常、アスペクト比が1に近づくほど球形に近くなる。上記含フッ素ポリマーからなる微粒子のアスペクト比は、3以下であることが好ましい。より好ましい上限は、2であり、更に好ましい上限は、1.5である。
【0057】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子が、実質的に球形である含フッ素ポリマー球形微粒子を25質量%以上含むものであると、例えば、精製含フッ素ポリマー水性分散体の粘度を、上記含フッ素ポリマーからなる微粒子の形状が実質的に球形でない場合に比べて、低くすることが可能であり、精製含フッ素ポリマー水性分散体の固形分濃度を高くすることができ、ひいてはキャスト製膜等の方法によって製膜する際、高い生産性を実現することが可能である。
【0058】
上記含フッ素ポリマーからなる微粒子は、含フッ素ポリマー球形微粒子を50質量%以上含むものであることがより好ましい。
【0059】
上記微粒子は、再分散性が良好な粉体を容易に製造できることから、平均粒子径(平均一次粒子径)が10nm以上であることが好ましい。上記平均粒子径は、上記範囲内であれば、水性分散体(a)の安定性や含フッ素ポリマーの作りやすさという点から、上限を例えば300nmとすることができる。上記微粒子は、平均粒子径が10〜300nmであるものがより好ましい。平均粒子径の更に好ましい下限は、30nmであり、更に好ましい上限は、160nmである。
【0060】
上記含フッ素ポリマーは、メルトフローレート(MFR)が0.05〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30g/10分であり、更に好ましくは0.2〜20g/10分である。MFRは、JIS K 7210に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、メルトインデクサーを用いて測定し、押し出された上記含フッ素ポリマーの質量を10分間あたりのグラム数で表したものである。
【0061】
上記アスペクト比と上記平均粒子径とは、走査型若しくは透過型の電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で、水性分散体(a)をガラス板に塗布したのち水性分散媒を除去して得られた上記微粒子の集合体を観測し、得られた画像上の20個以上の微粒子について測定した長軸及び短軸の長さの比(長軸/短軸)を上記アスペクト比、長軸及び短軸の長さの平均値を上記平均粒子径としてそれぞれ得ることができる。
【0062】
工程(2)では、水性分散体(a)に、アルカリ又は酸を添加して、−SO
3X、−SO
2NR
12及び−COOX(Xは、M
1/L又はNR
14を表す。Mは、水素原子又はL価の金属を表し、上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。R
1はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する含フッ素ポリマーを含む水性分散体(b)を得る。
【0063】
上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が挙げられる。上記酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類が挙げられる。上記工程では、アルカリにより処理し、引き続き酸で処理することも好ましい。
【0064】
工程(2)において、上記酸処理は、水性分散体(a)又はアルカリを添加した水性分散体(a)を、陽イオン交換樹脂に接触させるものであることも好ましい。例えば、水性分散体(a)を、陽イオン交換樹脂を充填した容器中を通過させることで酸処理を行うことができる。
【0065】
工程(3)では、水性分散体(b)を濾過して濾物を回収する。
【0066】
上記濾過としては、限外濾過が好ましい。上記限外濾過は、限外濾過膜を有する限外濾過装置を用いて低分子量不純物を除去する方法であれば特に限定されず、例えば遠心式限外濾過法、回分式限外濾過法、循環式限外濾過法等が挙げられる。上記限外濾過膜及び限外濾過膜を有する限外濾過装置は、除去する低分子量不純物の分子量、種類、水系媒体の種類、含フッ素ポリマーの分子量、種類等により適宜選択される。上記低分子量不純物としては、例えば、含フッ素アニオン界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。上記限外濾過膜を有する限外濾過装置としては、市販のものを好適に使用することができ、試験的には、例えば、Centriprep(商品名、アミコン社製)、ミリタン(商品名、ミリポア社製)等が挙げられる。上記限外濾過により、加水分解時に生成する塩を除去することもできる。また、得られた含フッ素ポリマーの濃縮も行うことができる。
【0067】
本発明の製造方法において、限外濾過を行いながら、被処理物である上記含フッ素ポリマー水性分散体に精製水を追加する操作、酸を添加して被処理液の含フッ素ポリマー水性分散体のpHを3以下とする操作を行ってもよい。具体的には、遠心式限外濾過法及び回分式限外濾過法による処理を行った後、処理後の液に精製水や酸を添加し、再度限外濾過処理を施す工程を繰り返すことができる。また、循環式限外濾過法では、処理液タンク内に適宜、精製水や酸を追加すればよい。
【0068】
上記限外濾過の終点は、濾液に含まれる不純物の量に基づいて決定することが適切である。簡便な方法としては、精製水を追加する方法では、濾液の電気伝導度に基づいて決定することができる。また酸を追加する方法では、ICP分析や原子吸光分析でアルカリ金属等を定量する方法、濾液を酸・塩基滴定して、酸が消費されなくなった時点とする方法などがあるが、簡便であることから、後者の方法が好ましい。
【0069】
工程(4)では、上記濾物を乾燥させることにより、0〜20質量%の揮発分を含む粉体を得る。上記揮発分の含有量としては、0.2質量%以上がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0070】
上記製造方法は、工程(4)において、上記乾燥を200W以下の仕事量で行うことを特徴とする。上記仕事量としては、0W以上が好ましい。
【0071】
上記乾燥方法としては、スプレードライ、熱風乾燥、熱風箱型乾燥、流動床乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、伝導伝熱乾燥、減圧加熱乾燥等が挙げられ、粒子径の制御が容易であり、粉体の粒度分布が狭くなることから、スプレードライ又は凍結乾燥が好ましい。さらには、粉体の形状が球状になり、粉体の流動性に優れることから、スプレードライがより好ましい。
【0072】
上記仕事量は、乾燥方法が対流乾燥である場合は、次の式に従って計算する。本明細書において、「対流乾燥」とは、熱風乾燥、熱風箱型乾燥、スプレードライ、流動床乾燥、真空乾燥等により乾燥する方法をいう。
式:Q=hA(T
2−T
1)
(式中、Q:仕事量、h:熱伝達係数、A:伝熱面積、T
1:乾燥物温度、T
2:流体ガス温度)
【0073】
上記仕事量は、乾燥方法が伝熱乾燥である場合は、次の式に従って計算する。本明細書において、「伝熱乾燥」とは、エバポレーター、伝導伝熱乾燥等により乾燥する方法をいう。
式:Q=λAΔT/Δx
(式中、Q:仕事量、λ:熱伝導度、A:伝熱面積、ΔT:温度差、Δx:伝熱距離)
【0074】
200W以下の仕事量で行う乾燥方法を、具体的に例示すれば、例えば、80℃以下で実施する熱風乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥機を使用する乾燥、流動床乾燥等が挙げられる。上記熱風乾燥は55℃以下で実施することが好ましい。
【0075】
本発明の粉体は、水分をほとんど含まないため、非水系溶媒中にも好適に分散させることが可能であり、さらに容易に再分散する特質から、加工直前に調製することができるので、沈降などの障害なしに加工を行うことができる。
【実施例】
【0076】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0078】
固形分量
OHAUS社製ハロゲン水分計MB45を使用して、加熱重量減法により揮発分量を求めた。固形分量は全量からの揮発分量の差で算出した。
【0079】
分散度(再分散性試験)
(1)500mLビーカーにイオン交換水を190g加え、プロペラ型撹拌翼を用いて200rpmで撹拌を行った。
(2)撹拌中のビーカーに各々の実施例及び比較例で作製した含フッ素ポリマー粉体を加えて3分間撹拌を行った。また、熱重量減法で水分量測定を行い、上記含フッ素ポリマー粉体の乾燥重量X(g)を求めた。
(3)3分後、撹拌を停止し、目開き20μmの金属メッシュでろ過しながら300mLビーカーに移した。
(4)ろ液の高さ中央部、壁面から10mm以上離れた部分をサンプリングし、加熱重量減法で水分量測定を行い、乾燥重量Y(g)を求め、下記の式により分散度を算出した。
加熱重量減法の測定装置は以下の装置を使用した。
加熱重量減法:OHAUS社製ハロゲン水分計MB45
【0080】
分散度(%)=Y/X×100
X:再分散性試験の(2)で加えた含フッ素ポリマー粉体の乾燥重量X(g)
Y:再分散性試験の(4)で測定した含フッ素ポリマー粉体の乾燥重量Y(g)
【0081】
仕事量
仕事量は以下の方法で算出した。
<対流乾燥時>(加熱乾燥およびスプレードライに適応)
式:Q=hA(T
2−T
1)
Q:仕事量、h:熱伝達係数、A:伝熱面積、T
1:乾燥物温度、T
2:流体ガス温度
・加熱乾燥時の熱伝達係数はガス流量を一定にしたため、h=29の定数として計算を行った。
・スプレードライの熱伝達係数は粒子径を一定にしたため、h=2787の定数として計算を行った。
・乾燥物は室温から乾燥を行ったため、T
1=25の定数として計算を行った。
【0082】
<伝熱乾燥時>(ロータリーエバポレーター乾燥に適応)
式:Q=λAΔT/Δx
Q:仕事量、λ:熱伝導度、A:伝熱面積、ΔT:温度差、Δx:伝熱距離
【0083】
平均一次粒子径
各合成例で得られた分散体中の含フッ素ポリマー前駆体の粒子径(平均一次粒子径)は、マイクロトラック・ベル社製Nanotracwaveを使用して、動的光散乱法により求めた。
【0084】
メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、メルトインデクサーを用いて測定した。
【0085】
当量重量(EW)
含フッ素ポリマー前駆体の分散体から得られたポリマーを塩置換し、その溶液をアルカリ溶液で逆滴定することにより測定した。
【0086】
合成例1
含フッ素ポリマー前駆体の分散体の作製
(1)容積1292Lのガラスライニング製撹拌式オートクレーブにイオン交換水(IE水)632kg、50質量%のCF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4(PMPA)水溶液を22.4kg入れ、真空窒素置換を十分に行った後、槽内を真空にした。CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fを40.1kg、CF
4を2.47kg槽内に仕込んだ後、昇温を開始した。槽内温度が45.7℃で安定した後、TFEを0.7MPaまで充填し、4質量%過硫酸アンモニウム水溶液を10.42kg圧入し、重合を開始した。撹拌回転数145rpmで槽内圧力が0.7MPaになるようにTFEを連続的に、かつCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2FとTFEの仕込み比が0.66で一定になるように重合を継続した。10時間後冷却、脱圧して重合を停止した。
【0087】
(2)TFEおよびCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fからなる含フッ素ポリマー前駆体の分散体が無色透明の状態で得られ、未反応のCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fは22.48kgであった。分散体中の含フッ素ポリマー前駆体の固形分含有量は33.2質量%で、粒子径は142nmであった。
【0088】
(3)得られた含フッ素ポリマー前駆体の分散体の一部をサンプリングし、10質量%HNO
3を加えて凝析させた。凝析させたポリマーをろ過、洗浄し熱風乾燥機(エスペック社製SAFETY OVEN SPHH−100)で90℃12時間、120℃12時間乾燥しポリマーを得た。
【0089】
(4)得られたポリマーのMFRは2.16、EWは706であった。
【0090】
含フッ素ポリマー分散体の作製
(5)容積500LのSUS316製撹拌式槽にIE水を120kg、48質量%のNaOH水溶液を30kg入れ、槽内が60℃になるように撹拌を行いながら昇温を行った。
【0091】
(6)60℃に到達した後、含フッ素ポリマー前駆体の分散体を200kg加えて内温を60℃に保ちながら3時間加水分解反応を行い、ポリマー末端をSO
2FからSO
3Naにした。
【0092】
(7)加水分解後のポリマー分散体を限外ろ過装置(MILLIPORE社製PELLICON
TM)を使用し、ろ液を排出しながら適宜IE水を加えてポリマーの洗浄を行った。
洗浄中、HORIBA社製CONDUCTIVITY METER B−173を使用してろ液の伝導率を測定し、ろ液の電気伝導率が1μS/mになるまで精製し、含フッ素ポリマー分散体Aを得た。
【0093】
合成例2
含フッ素ポリマー前駆体の分散体の作製
(1)容積6Lのステンレス製撹拌式オートクレーブにIE水2300g、50質量%PMPA水溶液を482g入れ、真空窒素置換を十分に行った後、槽内を真空にした。CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fを1152g槽内に仕込んだ後、昇温を開始した。槽内温度が21.2℃で安定した後、TFEを0.15MPaまで充填し、20質量%Na
2SO
3を10g、1質量%FeSO
4を10g槽内へ仕込んだ後、60質量%過硫酸アンモニウムを16g圧入し、重合を開始した。撹拌回転数500rpmで槽内圧力が0.15MPaになるようにTFEを連続的に仕込み、重合を継続した。2時間後冷却、脱圧して重合を停止した。
【0094】
(2)TFEおよびCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fからなる含フッ素ポリマー前駆体の分散体が無色透明の状態で得られた。分散体中の含フッ素ポリマー前駆体の固形分含有量は25.4質量%であった。
【0095】
(3)得られた含フッ素ポリマー前駆体の分散体の一部をサンプリングし、10質量%HNO
3を加えて凝析させた。凝析させたポリマーをろ過、洗浄し熱風乾燥機(エスペック社製SAFETY OVEN SPHH−100)で90℃12時間、120℃12時間乾燥しポリマーを得た。
【0096】
(4)得られたポリマーのMFRは1.03でEWは504であった。
【0097】
含フッ素ポリマー分散体の作製
(5)1Lのポリエチレン製容器にIE水を240g、48質量%のNaOH水溶液を60g入れた。
【0098】
(6)よく撹拌した後、含フッ素ポリマー前駆体の分散体を400g加えて恒温槽で60℃に保ちながら6時間加水分解反応を行い、ポリマー末端をSO
2FからSO
3Naにした。
【0099】
(7)加水分解後のポリマー分散体を限外ろ過装置(MILLIPORE社製PELLICON
TM)を使用し、ろ液を排出しながら適宜IE水を加えてポリマーの洗浄を行った。
洗浄中、HORIBA社製CONDUCTIVITY METER B−173を使用してろ液の伝導率を測定し、ろ液の電気伝導率が1μS/mになるまで精製し、含フッ素ポリマー分散体Bを得た。
【0100】
実施例1
(1)含フッ素ポリマー分散体Aを金属製バット(縦×横×高さ=30cm×41cm×9cm、伝熱面積A=0.123m
2)に5kg加え、熱風乾燥機(エスペック社製SAFETY OVEN SPHH−100)を用いて50℃24時間乾燥し含フッ素ポリマー粉体を得た。
上記条件で仕事量を算出した。
(2)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体の固形分量をOHAUS製ハロゲン水分計MB45を用いて測定し、マイクロトラックベル社製マイクロトラックMT3300EXIIを用いて、粉体の平均二次粒子径測定を行った。
(3)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体を用いて上記再分散性試験を行った。
(4)仕事量、固形分量、平均二次粒子径および分散度の結果を表1に示す。
【0101】
実施例2
含フッ素ポリマー分散体Aの乾燥温度を80℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作で乾燥および各々の測定を行った。
【0102】
実施例3
(1)含フッ素ポリマー分散体Aを、500mLナス型フラスコに200g加え、ドライアイス−アセトンバスを用いて瞬間凍結を行った。
(2)凍結したことを確認した後、凍結乾燥機(東京理科機械社製 EYELA FREEZEDRYER FD−1)を用いて24時間凍結乾燥を行った。
(3)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体の固形分量をOHAUS製ハロゲン水分計MB45を用いて測定し、マイクロトラックベル社製マイクロトラックMT3300EXIIを用いて、粉体の平均二次粒子径測定を行った。
(4)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体を用いて上記再分散性試験を行った。
(5)仕事量、固形分量、平均二次粒子径および分散度の結果を表1に示す。
【0103】
実施例4
(1)含フッ素ポリマー分散体Aを、噴霧乾燥機(大川原化工機社製内径800mm、50mm径ディスク式L−8型スプレードライヤー)を用い、入口温度250℃出口温度110℃、送液量4.1kg/h、ディスク回転数32000rpmの条件で含フッ素ポリマー分散体Aを5kg乾燥し含フッ素ポリマー粉体を得た。
(2)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体の固形分量をOHAUS製ハロゲン水分計MB45を用いて測定し、マイクロトラックベル社製マイクロトラックMT3300EXIIを用いて、粉体の平均二次粒子径測定を行った。
(3)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体を用いて上記再分散性試験を行った。
(4)仕事量、固形分量、平均二次粒子径および分散度の結果を表1に示す。
【0104】
比較例1
(1)含フッ素ポリマー分散体Aの乾燥温度を100℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作で乾燥および各々の測定を行った。
【0105】
比較例2
(1)含フッ素ポリマー分散体Aの乾燥温度を150℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作で乾燥および各々の測定を行った。
【0106】
比較例3
(1)含フッ素ポリマー分散体Aの乾燥温度を200℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作で乾燥および各々の測定を行った。
【0107】
比較例4
(1)含フッ素ポリマー分散体Aの乾燥温度を250℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作で乾燥および各々の測定を行った。
【0108】
比較例5
(1)含フッ素ポリマー分散体Aを、外径15cmのフラスコに800g加え、ウォーターバスを80℃に設定し、ヤマト科学社製ロータリーエバポレーターを用いて乾燥し含フッ素ポリマー粉体を得た。
(2)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体の固形分量をOHAUS製ハロゲン水分計MB45を用いて測定し、マイクロトラックベル社製マイクロトラックMT3300EXIIを用いて、粉体の平均二次粒子径測定を行った。
(3)上記操作で得られた含フッ素ポリマー粉体を用いて上記再分散性試験を行った。
(4)仕事量、固形分量、平均二次粒子径および分散度の結果を表1に示す。
【0109】
実施例5
(1)含フッ素ポリマー分散体Bを使用したこと以外は実施例3と同様の操作で乾燥および各々の測定を行った。
【0110】
再分散性試験を行った結果を以下の表に示す。
【0111】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の粉体を様々な液体、固体と混合することにより、酸・酸塩型基を有する含フッ素ポリマーが高度に分散した組成物を得ることができ、産業上有効に利用できる。
【0113】
上記液体としては、室温(25℃)以上の沸点を有するものであれば、特に限定されない。
具体的には、水、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−ノルマル−ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノール、ベンゼン、o−ジクロルベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロルエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロメタン、テトラクロルエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブチルアルコール、1−プロパノール、イソプロパノール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、ジクロルメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ノルマルヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマル−ペンチル、酢酸イソペンチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル、二硫化炭素、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット等が挙げられる。また、オリーブオイル、大豆油、牛脂、豚脂等の天然油脂を使用することもできる。シリコンオイル、フッ素系のオイル、フッ素系アルコールも使用可能である。
【0114】
上記固体としては、粒径が10mm以下の粉体であることが好ましく、有機・無機材料のいずれでも使用可能である。
【0115】
上記固体としては、産業上の利用価値が高いことから、高分子材料が特に好ましい。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体〔ETFE〕、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕などのフッ素樹脂及び、ビニリデンフルオライド〔VdF〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体などのフッ素ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロンMXD6等のポリアミド〔PA〕樹脂;ポリエチレンテレフタレート〔PET〕、ポリブチレンテレフタレート〔PBT〕、ポリアリレート、芳香族系ポリエステル(液晶ポリエステルを含む)、ポリカーボネート〔PC〕等のポリエステル;ポリアセタール〔POM〕樹脂;ポリフェニレンオキシド〔PPO〕、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン〔PEEK〕等のポリエーテル樹脂;ポリアミノビスマレイミド等のポリアミドイミド〔PAI〕樹脂;ポリスルホン〔PSF〕、ポリエーテルスルホン〔PES〕等のポリスルホン系樹脂;ABS樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1(TPX樹脂)等のビニル重合体のほか、ポリフェニレンスルフィド〔PPS〕、ポリケトンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド〔PI〕等が挙げられる。
【0116】
上記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体、ポリスチレン(PS)、AS樹脂(AS)、ABS樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ブタジエン樹脂(BDR)、ポリブテン−1(PB−1)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリルスチレン(MS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)などα−オレフィンの重合で得られる高分子が挙げられる。
【0117】
上記ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒型線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、及び、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。より好ましくは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒型線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び、ポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0118】
本発明の粉体を、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴムと混合することにより、本発明の粉体及び上記ゴムを含む組成物を調製できる。本発明の粉体と上記ゴムとの混合方法としては、オープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を用いて混練する方法が挙げられる。
【0119】
本発明の粉体を、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂と混合することにより、本発明の粉体及び上記熱可塑性樹脂を含む組成物を調製できる。本発明の粉体と上記熱可塑性樹脂との混合方法としては、V型ブレンダ、タンブラー、ヘンシェルミキサ等の混合機にて混合した後、さらに二軸押出機などの溶融混練装置を用いて混練する方法が挙げられる。また、溶融混練装置内で溶融している上記熱可塑性樹脂に本発明の粉体を途中で供給する方法も可能である。
【0120】
本発明の粉体を、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と混合することにより、本発明の粉体及び上記熱硬化性樹脂を含む組成物を調製できる。本発明の粉体と上記熱硬化性樹脂との混合方法としては、上記粉体及び未硬化の熱硬化性樹脂を、ミキサー等で予め乾式混合した後、ロールにより混練する方法、ニーダーや押出機を用いて溶融混合する方法が挙げられる。