【実施例】
【0028】
以下の表1、表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、このフラックスを使用してソルダペーストを調合して、はんだの濡れ広がりの良否と、はんだの濡れ不良(ディウェット)の抑制の良否について検証した。なお、表1、表2における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0029】
ソルダペーストは、フラックスが11wt%、金属粉が89wt%である。また、ソルダペースト中の金属粉は、Agが3.0wt%、Cuが0.5wt%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、金属粉の粒径の平均はφ20μmである。
【0030】
<はんだの濡れ広がりの評価>
(1)検証方法
はんだの濡れ広がりの評価試験は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスと上述した金属粉を混合させたソルダペーストを、JIS Z 3284−3に記載の所定のパターンでソルダペーストの印刷部が形成されたステンレス製のマスクを使用して、縦50mm×横50mm×厚さ0.5mmのBare−Cu板に印刷する。
【0031】
マスクに設けられた印刷部は四角形の開口で、大きさは3.0mm×1.5mmとなっている。印刷部は、同じ大きさの複数の開口が間隔を異ならせて並び、開口の間隔は0.2−0.3−0.4−0.5−0.6−0.7−0.8−0.9−1.0−1.1−1.2mmとなっている。
【0032】
ソルダペーストの印刷後、マスクを取り除き、リフロー前に、並列する印刷部の最小間隔である0.2mmの箇所でソルダペーストが接触していないことを確認し、リフローを行う。リフローの条件は、エアー雰囲気下に190℃で120secの予備加熱を行った後、昇温速度を1℃/secとして190℃から260℃まで温度を上昇させて本加熱を行う。
【0033】
(2)判定基準
図1は、はんだの濡れ広がりの評価結果を示す説明図である。上述した所定の間隔で印刷されたソルダペーストが、リフロー後に濡れ広がって接触し融合された箇所の間隔を確認する。N=4において
〇:間隔Lが0.8mm以下の箇所が全て融合している。
×:1か所でも間隔Lが0.8mm以下の箇所で融合していない。
【0034】
なお、
図1(a)は実施例1のフラックスを使用した場合、
図1(b)は実施例3のフラックスを使用した場合、
図1(c)は比較例1のフラックスを使用した場合、
図1(d)は比較例2のフラックスを使用した場合である。
【0035】
<はんだのディウェット抑制の評価>
(1)検証方法
はんだのディウェット抑制の評価試験は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスと上述した金属粉を混合させたソルダペーストを、縦0.8mm×横0.8mmのCu−OSPランド上に印刷し、リフローを実施した。ソルダペーストの印刷厚さは0.12mmである。リフローの条件は、エアー雰囲気下に190℃で120secの予備加熱を行った後、昇温速度を1℃/secとして190℃から260℃まで温度を上昇させて本加熱を行う。
【0036】
(2)判定基準
図2は、はんだのディウェット抑制の評価結果を示す説明図である。リフロー後にディウェットDwが発生していないか光学顕微鏡を用いて観察した。
N=12において
○:はんだ組成物を塗布した部分はすべて、はんだでぬれた状態である。
×:はんだ組成物を塗布した部分の大半は、はんだでぬれた状態(ディウェッティングも含まれる。)であり濡れ不良が発生している。または、はんだがぬれた様子はなく、溶融したはんだは一つまたは複数のはんだボールとなった状態(ノンウェッティング)である。
【0037】
なお、
図2(a)は実施例1のフラックスを使用した場合、
図2(b)は実施例3のフラックスを使用した場合、
図2(c)は比較例1のフラックスを使用した場合、
図2(d)は比較例2のフラックスを使用した場合である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
本発明では、実施例1〜実施例4に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれかを5wt%含むフラックスでは、濡れ広がり及びディウェット抑制に対して十分な効果が得られた。
【0041】
また、実施例5に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のそれぞれを1.25wt%、合計で5wt%含むことでも、濡れ広がり及びディウェット抑制に対して十分な効果が得られた。なお、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上を合計で5wt%含むことでも、濡れ広がり及びディウェット抑制に対して十分な効果が得られた。
【0042】
これに対し、比較例1及び比較例2に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の何れも含まないフラックスでは、本発明で規定された所定量の有機酸とアミンを含んでも、濡れ広がり及びディウェット抑制に対して十分な効果が得られなかった。
【0043】
また、本発明で規定された範囲内でロジンを含むことで、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例6〜実施例8に示すように、ロジンの種類を変える、また、複数種類のロジンを組み合せた場合でも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。
【0044】
更に、本発明で規定された範囲内でアミンを含むことで、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例9〜実施例11に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を20wt%含むことで、本発明で規定された範囲内でアミンを減らしても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例9に示すように、アミンを含まなくても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。
【0045】
これに対し、実施例12に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を5wt%含み、アミンを10wt%含むことでも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。また、実施例13に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を0.5wt%含み、アミンを10wt%含むことでも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。更に、実施例14〜実施例16に示すように、アミンの種類を変えても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。なお、実施例9に示すように、アミンを含まなくても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られるが、好ましくは、アミンを0.1wt%以上10wt%以下、より好ましくは、アミンを0.5wt%以上10wt%以下含むことで、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸の添加量を抑制しつつ、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られる。
【0046】
また、本発明で規定された範囲内で有機酸を含むことで、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例17に示すように、有機酸を10wt%含んでも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例18に示すように、有機酸の種類を変えても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。
【0047】
更に、本発明で規定された範囲内で有機ハロゲン化合物を含むことで、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例19に示すように、有機ハロゲン化合物を含まなくても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例20に示すように、有機ハロゲン化合物を5wt%含んでも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。また、実施例21に示すように、有機ハロゲン化合物の種類を変えても、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。
【0048】
更に、本発明で規定された範囲内でアミンハロゲン化水素酸塩を含むことで、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例22に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩を1wt%含んでも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られ、実施例23に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩を5wt%含んでも、濡れ広がり及びディウェット抑制の効果が得られた。
【0049】
以上のことから、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸またはオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸のいずれか、あるいは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸に水素を添加した水添ダイマー酸及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸に水素を添加した水添トリマー酸の2種以上を0.5wt%以上20wt%以下、ロジンを30wt%以上60wt%以下、有機酸を0wt%以上10wt%以下、アミンを0wt%以上10wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上5wt%以下、溶剤を29wt%以上60wt%以下、チキソ剤を0wt%以上10wt%以下含むフラックス、及びこのフラックスを用いたソルダペーストでは、熱負荷の大きい条件下でも良好な濡れ広がりを示し、かつディウェットの発生を抑制することができることが判り、どのような熱履歴でも安定して仕上がりのよいはんだ付けが可能となるフラックスを提供できる。