【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
杖の杖軸に装着して脚部を開くことによって、杖の自立を可能にする杖の自立装置であって、
杖軸の下部に着脱自在に装着される取付ベースと、この取付ベースに対して上向きに閉じられた閉脚状態と斜め下向きに開かれた開脚状態との間で開閉される3本以上の脚部と、これら各脚部の基端をそれぞれ前記取付ベースに回動自在に接続するヒンジ部とが、一体に成形されて装置ユニットを構成しており、
前記装置ユニットにおける前記各脚部は、前記ヒンジ部に近い基端部分と、この基端部分に対して鈍角をなして開脚状態での表側の向きに折曲された延長部分とを有し、
前記装置ユニットの外側に嵌装されて、上方に移動された閉脚保持位置と下方に移動された開脚保持位置との間で切換可能な筒状の操作スライダを備え、
前記操作スライダは、前記装置ユニットにおける前記各脚部をそれぞれ外方に突出させるための開口を有し、この開口の上部に開脚保持部が設けられ、この開口の下部に閉脚保持部が設けられており、
前記操作スライダを上方の閉脚保持位置に移動させて前記各脚部が上向きに閉じられると、これら各脚部における前記延長部分が操作スライダに沿って垂直状に配列されると共に、その延長部分の裏側の一部が操作スライダにおける前記閉脚保持部によって外方から覆われ、
前記操作スライダを下方の開脚保持位置に移動させて前記各脚部が斜め下向きに開かれると、これら各脚部における前記基端部分が操作スライダに沿って垂直状に配列されると共に、その基端部分の表側が操作スライダにおける前記開脚保持部によって外方から覆われる、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、装着用の取付ベースと開閉自在の各脚部と接続用のヒンジ部とが、一体に成形されて装置ユニットを構成し、この装置ユニットの外側に開閉切換用の操作スライダが嵌装されたものなので、全体が2部品だけになって、部品点数及び組立工数が大幅に削減される。
【0010】
そして、この構成によれば、各脚部が基端部分と延長部分との間で折曲されて、いわゆる「くの字」形状なので、操作スライダを閉脚保持位置に移動させて各脚部が閉脚状態に回動されると、各脚部の延長部分が操作スライダに沿って垂直状に位置される。その延長部分の裏側の一部が操作スライダの閉脚保持部によって外方から覆われるので、各脚部の開脚方向への回動が阻止されて閉脚状態で確実に保持される。
また、操作スライダを開脚保持位置に移動させて各脚部が開脚状態に回動されると、各脚部の基端部分が操作スライダに沿って垂直状に位置される。その基端部分の表側が操作スライダの開脚保持部によって外方から覆われるので、各脚部の閉脚方向への回動が阻止されて開脚状態で確実に保持される。
したがって、操作スライダの上下移動だけで、各脚部が全て同時に閉脚状態と開脚状態とに切り換えられて確実に保持されるので、各脚部の開閉操作が極めて容易になり、各脚部を開脚状態及び閉脚状態で保持させるための別個の保持部材やバネ部材などが不要となる。
【0011】
ところで、各脚部は操作スライダの開口から外方に突出させているので、開脚時には各脚部が開口の上縁(開脚保持部の下側)によって押し下げられ、閉脚時には各脚部が開口の下縁(閉脚保持部の上側)によって押し上げられる、と動作的に見てとれる。
このときの動作を詳細に検討すると、ヒンジ部の弾性によって各脚部が開脚方向または閉脚方向に回動されるものでもよい。さらに、ヒンジ部の弾性なしで各脚部が自重の作用によって開脚方向に回動されるものでもよい。したがって、各脚部が開閉途中にどのような構成で回動されるかは、請求項1において必須の要件ではない。
【0012】
次に、請求項2に係る発明は、請求項1の杖の自立装置において、
前記各脚部における表側で幅方向中央には、補強リブが全長に亘って形成されており、
前記操作スライダにおける前記開脚保持部が、それぞれスリット分割された一対の開脚保持部からなり、
前記各脚部が開脚状態に回動されると、前記基端部分の表側で前記補強リブを避けた両側位置が、前記操作スライダにおける前記一対の開脚保持部によって外方から覆われる、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、補強リブによって各脚部が実質的に剛体となるので、開脚状態の各脚部によって杖を確実に支持できる。それでいて、操作スライダの開脚保持部がそれぞれ一対あるので、各脚部の基端部分の表側に補強リブがあっても、この補強リブを避けた両側位置が一対の開脚保持部によって確実に覆われて保持される。
【0014】
次に、請求項3に係る発明は、請求項1または2の杖の自立装置において、
前記各脚部における前記延長部分には、常用ロック部が設けられており、
前記操作スライダを上方の閉脚保持位置に移動させて前記各脚部が上向きに閉じられた際に、前記常用ロック部が操作スライダにおける前記開口の上下両縁に係合されることによって、操作スライダが閉脚保持位置において常態的にロックされる、ことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、操作スライダが閉脚保持位置にあって各脚部が閉脚状態であると、各脚部の延長部分の常用ロック部によって操作スライダが常態的にロックされるため、操作スライダが閉脚保持位置から不測に下方に移動されることが防止される。また、同様な状態で、常用ロック部によって操作スライダの上方移動が阻止されるため、操作スライダが閉脚保持位置において上方への抜け止めがなされる。
【0016】
次に、請求項4に係る発明は、請求項3の杖の自立装置において、
前記各脚部における前記常用ロック部が、前記延長部分の表裏方向に弾性変形可能なロック片であり、
このロック片には、前記操作スライダにおける前記開脚保持部の下縁に係脱可能な第1係合部と、前記操作スライダにおける前記閉脚保持部の上縁に係脱可能な第2係合部とが形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、各脚部の延長部分のロック片が弾性変形可能なので、操作スライダに対する各脚部の組立時には、ロック片の第2係合部が操作スライダの閉脚保持部の上縁にスムーズに係合される。そして、各脚部の閉脚状態では、ロック片の第1係合部が操作スライダの開脚保持部の下縁に確実に係合される。特に各脚部が剛体の場合でも、弾性変形可能なロック片によって、操作スライダの閉脚保持状態での確実なロック及びロック解除が可能となる。
【0018】
次に、請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れかの杖の自立装置において、
前記装置ユニットにおける前記取付ベースの下部に結合されて、杖軸の下端に着脱自在 に嵌着される専用の石突キャップを備え、
前記各脚部が斜め下向きに開かれた際に、前記石突キャップの下端面が前記各脚部の接地部分と同一高さに若しくは上方に位置される、ことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、杖軸の下端で一般的に取替可能な石突キャップとして、開閉自在の各脚部を有する装置ユニットに最適な専用部品が使用される。これによって、石突キャップの下端面を各脚部の接地部分と同一面に若しくは浮かせて、好ましくは石突キャップと各脚部との支持で安定した杖の自立が可能となる。また、専用の石突キャップを使用するので、杖軸に装置ユニットの取付ベースを装着する際に、その装着位置の特別な設定が不要になる。
【0020】
次に、請求項6に係る発明は、請求項5の杖の自立装置において、
前記石突キャップの上端には、ゴム弾性を有するリング状の結合部が形成されており、
前記取付ベースにおける杖軸装着孔の上段部に、前記石突キャップにおける前記リング状の結合部が弾性嵌合される、ことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、専用の石突キャップを取付ベースに結合させる際に、石突キャップのリング状の結合部が取付ベースの杖軸装着孔の上段部に弾性嵌合されるので、取付ベースに対して石突キャップが一体的に強固に結合される。