特許第6460283号(P6460283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6460283
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 1/00 20060101AFI20190121BHJP
   B01F 15/04 20060101ALI20190121BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20190121BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B01F1/00 A
   B01F1/00 B
   B01F15/04 D
   B01D63/02
   B01F5/06
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-515684(P2018-515684)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2017045145
(87)【国際公開番号】WO2018116987
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-246478(P2016-246478)
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】安西 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】羽田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−292362(JP,A)
【文献】 特開2001−205063(JP,A)
【文献】 特開2015−213145(JP,A)
【文献】 特開2003−010660(JP,A)
【文献】 特開2006−261674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/
B01F 5/
B01D 63/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比抵抗値の調整対象である超純水に、前記超純水の比抵抗値を調整するための調整ガスを溶解させて、前記超純水に前記調整ガスが溶解された処理液体を生成するガス溶解装置と、
前記ガス溶解装置から排出された前記処理液体が供給されるバッファタンクと、
を備え
前記ガス溶解装置は、
前記超純水が供給される液相側領域と前記調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、前記中空糸膜を透過した前記調整ガスを飽和状態で前記超純水に溶解させて調整ガス飽和液体を生成する中空糸膜モジュールと、
前記超純水が供給される液体供給管と、
前記液体供給管を分岐する分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールに前記超純水を供給するモジュール供給管と、
前記中空糸膜モジュールから前記調整ガス飽和液体が排出されるモジュール排出管と、
前記分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、
前記モジュール排出管と前記バイパス管とを合流する合流部を介して前記モジュール排出管及び前記バイパス管と連通される液体排出管と、を備える、
比抵抗値調整装置。
【請求項2】
比抵抗値の調整対象である超純水に、前記超純水の比抵抗値を調整するための調整ガスを溶解させて、前記超純水に前記調整ガスが溶解された処理液体を生成するガス溶解装置と、
前記ガス溶解装置から排出された前記処理液体が供給されるバッファタンクと、
前記超純水を前記バッファタンクに供給する第一調整用配管と、
前記超純水に前記調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体を前記バッファタンクに供給する第二調整用配管と、
前記バッファタンク内の前記処理液の比抵抗値を計測する比抵抗値センサと、を備える、
比抵抗値調整装置。
【請求項3】
前記ガス溶解装置は、
前記超純水が供給される液相側領域と前記調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、前記中空糸膜を透過した前記調整ガスを飽和状態で前記超純水に溶解させて前記調整ガス飽和液体を生成する中空糸膜モジュールと、
前記超純水が供給される液体供給管と、
前記液体供給管を分岐する分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールに前記超純水を供給するモジュール供給管と、
前記中空糸膜モジュールから前記調整ガス飽和液体が排出されるモジュール排出管と、
前記分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、
前記モジュール排出管と前記バイパス管とを合流する合流部を介して前記モジュール排出管及び前記バイパス管と連通される液体排出管と、を備える、
請求項2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項4】
前記第一調整用配管は、前記液体供給管又は前記バイパス管に接続されており、
前記第二調整用配管は、前記モジュール排出管に接続されている、
請求項3に記載の抵抗値調整装置。
【請求項5】
前記バッファタンクは、円筒状の容器である、
請求項1〜4の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項6】
前記バッファタンクは、前記処理液体が供給される供給口と、前記処理液体を排出する排出口と、を有し、
前記供給口と前記排出口とは、互いに異なる線上に向けられている、
請求項1〜5の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項7】
前記供給口及び前記排出口は、前記バッファタンクの上下方向に延びる中心軸線から外れた位置に向けられている、
請求項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項8】
前記供給口と前記排出口とは、前記バッファタンクの上下方向において異なる位置に配置される、
請求項又はに記載の比抵抗値調整装置。
【請求項9】
前記排出口は、前記供給口よりも上方に配置される、
請求項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項10】
前記供給口は、前記バッファタンクの上部に形成されている、
請求項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項11】
前記バッファタンクの容量は、前記処理液体が7〜12秒で満たされる容量である、
請求項1〜10の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項12】
前記バッファタンクから前記処理液体が排出される処理液体排出管と、
前記処理液体排出管に取り付けられて前記処理液体を送り出すポンプと、
前記処理液体排出管の前記ポンプよりも下流側に取り付けられて前記処理液体排出管を開閉する開閉弁と、
前記処理液体排出管における前記ポンプと前記開閉弁との間から分岐されて、前記処理液体排出管を流れる前記処理液体を前記バッファタンクに戻す循環配管と、を更に備える、
請求項1〜11の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項13】
前記バッファタンクは、前記循環配管から前記処理液体が供給される循環口を有し、
前記循環口は、前記バッファタンクの上部に形成されている、
請求項12に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項14】
比抵抗値の調整対象である超純水に、前記超純水の比抵抗値を調整するための調整ガスを飽和状態で溶解させて、前記超純水に前記調整ガスが溶解された処理液体を生成する処理液体生成ステップと
生成された前記処理液体をバッファタンクに供給するバッファタンク供給ステップとを備え、
前記処理液体生成ステップでは、前記超純水が供給される液相側領域と前記調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、前記中空糸膜を透過した前記調整ガスを飽和状態で前記超純水に溶解させて調整ガス飽和液体を生成する中空糸膜モジュールと、前記超純水が供給される液体供給管と、前記液体供給管を分岐する分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールに前記超純水を供給するモジュール供給管と、前記中空糸膜モジュールから前記調整ガス飽和液体が排出されるモジュール排出管と、前記分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、前記モジュール排出管と前記バイパス管とを合流する合流部を介して前記モジュール排出管及び前記バイパス管と連通される液体排出管と、を備えるガス溶解装置により、前記処理液体を生成する、
比抵抗値調整方法。
【請求項15】
比抵抗値の調整対象である超純水に、前記超純水の比抵抗値を調整するための調整ガスを飽和状態で溶解させて、前記超純水に前記調整ガスが溶解された処理液体を生成する処理液体生成ステップと、
生成された前記処理液体をバッファタンクに供給するバッファタンク供給ステップと、
前記バッファタンク内の前記処理液の比抵抗値に基づいて前記超純水を前記バッファタンクに供給する超純水供給ステップと、
前記バッファタンク内の前記処理液の比抵抗値に基づいて前記超純水に前記調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体を前記バッファタンクに供給する調整ガス飽和液体供給ステップと、を備える、
比抵抗値調整方法。
【請求項16】
前記処理液体生成ステップでは、前記超純水が供給される液相側領域と前記調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、前記中空糸膜を透過した前記調整ガスを飽和状態で前記超純水に溶解させて前記調整ガス飽和液体を生成する中空糸膜モジュールと、前記超純水が供給される液体供給管と、前記液体供給管を分岐する分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールに前記超純水を供給するモジュール供給管と、前記中空糸膜モジュールから前記調整ガス飽和液体が排出されるモジュール排出管と、前記分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、前記モジュール排出管と前記バイパス管とを合流する合流部を介して前記モジュール排出管及び前記バイパス管と連通される液体排出管と、を備えるガス溶解装置により、前記処理液体を生成する、
請求項15に記載の比抵抗値調整方法。
【請求項17】
前記超純水供給ステップでは、前記液体供給管又は前記バイパス管の前記超純水を前記バッファタンクに供給し、
前記飽和液体供給ステップでは、前記モジュール排出管の前記調整ガス飽和液体を前記バッファタンクに供給する、
請求項16に記載の比抵抗値調整方法。
【請求項18】
前記バッファタンク供給ステップでは、前記バッファタンクにおける前記処理液体の滞留時間を7〜12秒とする、
請求項14〜17の何れか一項に記載の比抵抗値調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の比抵抗値を調整する比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体又は液晶の製造工程では、超純水を使用して基板を洗浄する。この場合、超純水の比抵抗値が高いと、静電気が発生する。これにより、絶縁破壊して、又は微粒子が再付着して、製品歩留まりに著しく悪影響を及ぼす。このような問題を解決するために、疎水性の中空糸膜モジュールを用いた技術が提案されている。この技術は、中空糸膜モジュールを用いて超純水中に炭酸ガス又はアンモニアガス等のガスを溶解させる。すると、解離平衡によりイオンが発生し、この発生したイオンにより超純水の比抵抗値が低下した処理水が生成される。
【0003】
また、基板の洗浄、ダイシング等の工程では、超純水の流動変動が激しい。そこで、特許文献1では、流量が変動しても比抵抗値を安定させる比抵抗値調整装置が提案されている。特許文献1に記載された比抵抗値調整装置は、小流量の高濃度ガス付加超純水を生成する中空糸膜モジュールと、大流量の超純水を通過させるバイパス管路と、を備える。そして、中空糸膜モジュールで生成された高濃度ガス付加超純水とバイパス管路を通過した超純水とを合流して、基板を洗浄するための処理水を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3951385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超純水に溶解したガスは、次のように式(1)及び式(2)の二段階で解離(イオン化)する。なお、以下の式は、ガスとして炭酸ガスを用いたものを示している。
O+CO=H+HCO …(1)
HCO=H+CO …(2)
【0006】
しかしながら、超純水に溶解したガスは、徐々に解離が進行していく。例えば、特許文献1に記載された比抵抗値調整装置を用いた場合、中空糸膜モジュールにおいて超純水にガスを溶解する段階で式(1)のイオン化はほぼ終了するが、式(2)のイオン化には時間がかかる。このため、比抵抗値調整装置の下流側に配置される配管のうち、比抵抗値調整装置の近傍で計測した処理水の比抵抗値と、比抵抗値調整装置から数m下流側で計測した処理水の比抵抗値とに、ズレ(乖離)が生じてしまう問題がある。
【0007】
また、処理水中のイオン濃度にムラが生じることで、比抵抗値が振れてしまう問題もある。例えば、特許文献1に記載された比抵抗値調整装置を用いた場合、超純水とガス付加超純水とを合流するが、超純水とガス付加超純水との混合状態によって、超純水中のイオン濃度のムラが発生する。
【0008】
これら2つの問題は、比抵抗値の調整値である比抵抗調整値が高いほど顕著に表れる傾向がある。
【0009】
そこで、これら2つの問題を解決する手段として、比抵抗値調整装置の下流側に配置される配管を長くして、処理水が当該配管内を流れている間に自然混合及び解離を行わせることが考えられる。
【0010】
しかしながら、当該配管を長くすると、(1)配管圧損が高くなり、(2)長い配管を収納するスペースが必要になり、(3)配管長に限界があるため比抵抗値のズレ及び振れが完全に収束しない、等の問題が発生する。
【0011】
そこで、本発明は、規模の拡大を抑制しつつ、処理水の比抵抗値のズレ及び振れの双方を抑制することができる比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整装置は、比抵抗値の調整対象である液体に、液体の比抵抗値を調整するための調整ガスを溶解させて、液体に調整ガスが溶解された処理液体を生成するガス溶解装置と、ガス溶解装置から排出された処理液体が供給されるバッファタンクと、を備える。
【0013】
この比抵抗値調整装置では、ガス溶解装置において、液体に調整ガスが溶解された処理液体が生成され、この生成された処理液体がバッファタンクに供給される。処理液体がバッファタンクに供給されると、処理液体の流路が急激に広くなることで処理液体の流速が急激に低下する。これにより、バッファタンクに供給された処理液体は、バッファタンク内で対流することにより解離が促進される。また、バッファタンクに供給された処理液体は、バッファタンク内で乱流となって撹拌されることによりイオン濃度の均一化が促進される。その結果、処理液体の比抵抗値のズレ及び振れの双方が抑制される。しかも、バッファタンクの代わりに長い配管を用いる場合に比べて、処理液体の圧損を小さくすることができ、更には、装置規模を小さくすることができる。
【0014】
バッファタンクは、円筒状の容器であってもよい。この比抵抗値調整装置では、バッファタンクが円筒状の容器であるため、バッファタンクに供給された処理液体を、バッファタンクの内周面に沿って対流させることができる。これにより、バッファタンク内における処理液体の対流時間を十分に確保することができるとともに撹拌効果を向上させることができる。
【0015】
バッファタンクは、処理液体が供給される供給口と、処理液体を排出する排出口と、を有し、供給口と排出口とは、互いに異なる線上に向けられていてもよい。この比抵抗値調整装置では、バッファタンクの供給口と排出口とが互いに異なる線上に向けられているため、バッファタンク内で大きな乱流が起きるとともに、供給口から排出口への経路が複雑化される。これにより、処理液体の対流及び撹拌を促進させることができる。
【0016】
供給口及び排出口は、バッファタンクの上下方向に延びる中心軸線から外れた位置に向けられていてもよい。この比抵抗値調整装置では、バッファタンクの供給口と排出口とがバッファタンクの中心軸線から外れた方向に向けられているため、バッファタンク内において、バッファタンクの中心軸線周りに処理液体を旋回させることができる。これにより、バッファタンク内における処理液体の対流時間を十分に確保することができるとともに撹拌効果を向上させることができる。
【0017】
供給口と排出口とは、バッファタンクの上下方向において異なる位置に配置されていてもよい。この比抵抗値調整装置では、バッファタンクの供給口と排出口とが上下方向において異なる位置に配置されているため、バッファタンク内における処理液体の対流時間を十分に確保することができる。
【0018】
排出口は、供給口よりも上方に配置されていてもよい。この比抵抗値調整装置では、排出口が供給口よりも上方に配置されるため、処理液体に含まれる気泡を速やかに排出することができる。
【0019】
供給口は、バッファタンクの上部に形成されていてもよい。この比抵抗値調整装置では、供給口がバッファタンクの上部に形成されているため、供給口からバッファタンクに供給される処理液体により、バッファタンクに溜められている処理液体を撹拌することができる。
【0020】
ところで、本発明者らの実験の結果、上記式(2)のイオン化が十分に行われるまでには、7〜12秒程度必要であるとの知見を得た。そこで、バッファタンクの容量は、処理液体が7〜12秒で満たされる容量であってもよい。この比抵抗値調整装置では、バッファタンクの容量が、処理液体が7〜12秒で満たされる容量、つまり、処理液体の流量の7〜12秒分に相当する容量であるため、バッファタンクが大型化するのを抑制しつつ、バッファタンク内において処理液体を十分に解離させることができる。
【0021】
バッファタンクから処理液体が排出される処理液体排出管と、処理液体排出管に取り付けられて処理液体を送り出すポンプと、処理液体排出管のポンプよりも下流側に取り付けられて処理液体排出管を開閉する開閉弁と、処理液体排出管におけるポンプと開閉弁との間から分岐されて、処理液体排出管を流れる処理液体をバッファタンクに戻す循環配管と、を更に備えてもよい。この比抵抗値調整装置では、開閉弁を開くと、処理液体排出管からユースポイントに処理液体を供給することができるが、開閉弁を閉じると、バッファタンクから処理液体排出管に排出された処理液体を循環配管からバッファタンクに戻すことができる。このため、ユースポイントで処理液体が必要でないときは、開閉弁を閉じておくことで、バッファタンク、処理液体排出管、及び循環配管で処理液体を循環させることができる。これにより、処理液体の解離及びイオン濃度の均一化が更に促進されるため、処理液体の比抵抗値のズレ及び振れを更に抑制することができる。
【0022】
ところで、基板を洗浄する洗浄機等では、頻繁に流量変動が起こるため、流動変更に伴う比抵抗値の振れの問題も発生する。また、流量を変化させると、処理液体の比抵抗値が安定するまでに多少の時間がかかる。これに対して、この比抵抗値調整装置では、ユースポイントにはバッファタンクに溜められている処理液体を供給するため、常にガス溶解装置で処理液体を生成する必要は無く、バッファタンクに溜められている処理液体が少なくなったときに、ガス溶解装置で処理液体を生成すればよい。このため、ガス溶解装置に供給する液体の流量を一定にすることができる。これにより、ユースポイントでの流量変動や使用流量に影響されることなく、処理液体の比抵抗値を安定させることができる。
【0023】
バッファタンクは、循環配管から処理液体が供給される循環口を有し、循環口は、バッファタンクの上部に形成されていてもよい。この比抵抗値調整装置では、循環口がバッファタンクの上部に形成されているため、循環口からバッファタンクに供給される処理液体により、バッファタンクに溜められている処理液体を撹拌することができる。
【0024】
ガス溶解装置は、液体が供給される液相側領域と調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、中空糸膜を透過した調整ガスを液体に溶解させて高濃度ガス付加液体を生成する中空糸膜モジュールと、液体が供給される液体供給管と、液体供給管を分岐する分岐部を介して液体供給管に連通されて、中空糸膜モジュールに液体を供給するモジュール供給管と、中空糸膜モジュールから高濃度ガス付加液体が排出されるモジュール排出管と、分岐部を介して液体供給管に連通されて、中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、モジュール排出管とバイパス管とを合流する合流部を介してモジュール排出管及びバイパス管と連通される液体排出管と、を備えてもよい。この比抵抗値調整装置では、ガス溶解装置に供給された液体は、中空糸膜モジュールに供給される液体と中空糸膜モジュールをバイパスする液体とに分配される。中空糸膜モジュールでは、中空糸膜を透過した調整ガスが液体に溶解されて、液体に調整ガスが溶解した高濃度ガス付加液体が生成される。そして、中空糸膜モジュールで生成された高濃度ガス付加液体と中空糸膜モジュールをバイパスした液体とが合流することで、処理液体が生成される。これにより、ガス溶解装置に供給される液体の流量が変動しても、処理液体の比抵抗値を安定させることができる。
【0025】
液体をバッファタンクに供給する第一調整用配管と、高濃度ガス付加液体をバッファタンクに供給する第二調整用配管と、バッファタンク内の処理液の比抵抗値を計測する比抵抗値センサと、を更に備えてもよい。この比抵抗値調整装置では、比抵抗値センサの計測結果に基づいて第一調整用配管又は第二調整用配管から液体又は高濃度ガス付加液体をバッファタンクに供給することで、バッファタンクに溜められている処理液体の比抵抗値を調整することができる。なお、バッファタンクに液体又は高濃度ガス付加液体を供給しても、開閉弁を閉じて、バッファタンク、処理液体排出管、及び循環配管で処理液体を循環させることで、バッファタンクに溜められている処理液体の解離及びイオン濃度の均一化を促進することができる。
【0026】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整方法は、比抵抗値の調整対象である液体に、液体の比抵抗値を調整するための調整ガスを溶解させて、液体に調整ガスが溶解された処理液体を生成し、生成された処理液体をバッファタンクに供給する。
【0027】
この比抵抗値調整方法では、液体に調整ガスが溶解された処理液体が生成され、この生成された処理液体がバッファタンクに供給される。処理液体がバッファタンクに供給されると、処理液体の流路が急激に広くなることで処理液体の流速が急激に低下する。これにより、バッファタンクに供給された処理液体は、バッファタンク内で対流することにより解離が促進される。また、バッファタンクに供給された処理液体は、バッファタンク内で乱流となって撹拌されることによりイオン濃度の均一化が促進される。その結果、処理液体の比抵抗値のズレ及び振れの双方が抑制される。しかも、バッファタンクの代わりに長い配管に処理液体を流す場合に比べて、処理液体の圧損を小さくすることができ、更には、装置規模を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、規模の拡大を抑制しつつ、処理水の比抵抗値のズレ及び振れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第一実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図2】ガス溶解装置の模式図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、バッファタンクにおける供給口及び排出口の配置例を示す図である。
図4】第二実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図5】バッファタンクにおける供給口及び排出口の配置例を示す図である。
図6】第三実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図7】バッファタンクにおける供給口及び排出口の配置例を示す図である。
図8】第四実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図9】比較例の比抵抗値調整装置の模式図である。
図10】実施例1の計測結果を示す図である。
図11】比較例1の計測結果を示す図である。
図12】実施例2の流量が2.0[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図13】実施例2の流量が1.0[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図14】実施例2の流量が0.2[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図15】実施例3の流量が2.0[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図16】実施例3の流量が1.0[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図17】実施例3の流量が0.2[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図18】実施例4のバッファタンクの容量が150[cc]の場合の計測結果を示す図である。
図19】実施例4のバッファタンクの容量が300[cc]の場合の計測結果を示す図である。
図20】実施例4のバッファタンクの容量が400[cc]の場合の計測結果を示す図である。
図21】実施例4のバッファタンクの容量が500[cc]の場合の計測結果を示す図である。
図22】実施例4のバッファタンクの容量が700[cc]の場合の計測結果を示す図である。
図23】実施例5の液体の流量が1.0[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
図24】実施例5の液体の流量が0.2[L/min]の場合の計測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、実施形態の比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図1に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1は、ガス溶解装置2と、バッファタンク3と、処理液体排出管4と、を備える。
【0032】
ガス溶解装置2は、比抵抗値の調整対象である液体Lに、液体Lの比抵抗値を調整するための調整ガスGを溶解させて、液体Lに調整ガスGが溶解された処理液体L2を生成する。
【0033】
図2は、ガス溶解装置の模式図である。図2に示すように、ガス溶解装置2は、中空糸膜モジュール11と、ガス供給管12と、液体供給管13と、モジュール供給管14と、モジュール排出管15と、バイパス管16と、液体排出管17と、調整弁18と、を備える。
【0034】
中空糸膜モジュール11は、比抵抗値の調整対象である液体Lに、液体Lの比抵抗値を調整するための調整ガスGを溶解させる。液体Lとして用いる液体は、特に限定されないが、例えば、半導体、液晶等を洗浄するための超純水とすることができる。通常、超純水の比抵抗値は、17.5[MΩ・cm]以上18.2[MΩ・cm]の範囲である。調整ガスGとして用いるガスは、特に限定されないが、例えば、炭酸ガス又はアンモニアガスとすることができる。中空糸膜モジュール11は、複数本の中空糸膜21と、これらの中空糸膜21を内部に収容するハウジング22と、を備える。
【0035】
中空糸膜21は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。中空糸膜21の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。ハウジング22は、中空糸膜21を内部に収容する密閉容器である。
【0036】
中空糸膜モジュール11のハウジング22内の領域は、中空糸膜21により、液相側領域と気相側領域とに分けられる。液相側領域は、中空糸膜モジュール11のハウジング22内の領域のうち、液体Lが供給される領域である。気相側領域は、中空糸膜モジュール11のハウジング22内の領域のうち、調整ガスGが供給される領域である。中空糸膜モジュール11の種類としては、内部灌流型及び外部灌流型がある。本実施形態では、内部灌流型及び外部灌流型の何れであってもよい。外部灌流型の中空糸膜モジュール11では、中空糸膜21の内側(内表面側)が気相側領域となり、中空糸膜21の外側(外表面側)が液相側領域となる。内部灌流型の中空糸膜モジュール11では、中空糸膜21の内側(内表面側)が液相側領域となり、中空糸膜21の外側(外表面側)が気相側領域となる。
【0037】
そして、中空糸膜モジュール11は、中空糸膜21を透過した調整ガスGを液体Lに溶解させて、液体Lに調整ガスGが溶解した高濃度ガス付加液体L1を生成する。このとき、例えば、中空糸膜モジュール11に供給する調整ガスGのガス圧を一定にし、中空糸膜モジュール11に供給する液体Lの流量を調整することで、高濃度ガス付加液体L1として、液体Lに調整ガスGが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体を生成することが好ましい。中空糸膜モジュール11に供給する液体Lの流量は、調整弁18により調整することができる。なお、ガス溶解装置2では、中空糸膜モジュール11により高濃度ガス付加液体L1を生成した段階で、上記式(1)のイオン化はほぼ終了する。
【0038】
ハウジング22には、ガス供給口23と、液体供給口24と、液体排出口25と、が形成されている。ガス供給口23は、気相側領域に調整ガスGを供給するためにハウジング22に形成された開口である。液体供給口24は、液相側領域に液体Lを供給するためにハウジング22に形成された開口である。液体排出口25は、液相側領域から高濃度ガス付加液体L1を排出するためにハウジング22に形成された開口である。このため、ガス供給口23は、気相側領域に連通され、液体供給口24及び液体排出口25は、液相側領域に連通される。ガス供給口23、液体供給口24、及び液体排出口25の位置は特に限定されない。
【0039】
ガス供給管12は、内周側に流路が形成された管状の部材である。ガス供給管12は、ガス供給口23に接続されている。ガス供給管12は、中空糸膜モジュール11の気相側領域に連通されており、中空糸膜モジュール11の気相側領域に調整ガスGを供給する。
【0040】
ガス供給管12には、圧力調整弁19と、圧力計P1と、が接続されている。圧力調整弁19は、ガス供給管12を流れる調整ガスGのガス圧を調整する。つまり、気相側領域における調整ガスGのガス圧は、圧力調整弁19により調整される。圧力調整弁19としては、周知の様々な圧力調整弁を採用することができる。圧力計P1は、ガス供給管12を流れる調整ガスGのガス圧を計測する。圧力計P1は、ガス供給管12における圧力計P1の下流側、すなわち、ガス供給管12における圧力計P1の気相側領域側に接続されている。圧力計P1としては、周知の様々な圧力計を採用することができ、例えば、ダイヤフラム弁を採用することができる。そして、比抵抗値調整装置1を制御する制御部(不図示)は、ガス供給管12を流れる調整ガスGのガス圧、すなわち、気相側領域における調整ガスGのガス圧が、所定値(又は所定範囲内)となるように、圧力計P1で計測した調整ガスGのガス圧に基づいて圧力調整弁19を制御する。
【0041】
なお、本実施形態では、中空糸膜モジュール11の気相側領域から調整ガスGが排出されないものとして説明するが、中空糸膜モジュール11の気相側領域から調整ガスGが排出されるものとしてもよい。この場合、中空糸膜モジュール11のハウジング22に、気相側領域から調整ガスGを排出するための開口であるガス排出口(不図示)を形成する。そして、このガス排出口に、中空糸膜モジュール11の気相側領域から調整ガスGが排出されるガス排出管(不図示)を接続する。ガス排出管は、内周側に流路が形成された管状の部材である。
【0042】
液体供給管13は、内周側に流路が形成された管状の部材である。液体供給管13には、比抵抗値調整装置1に供給される液体Lの全量が供給される。液体供給管13は、分岐部Aにより、モジュール供給管14とバイパス管16とに分岐されている。つまり、分岐部Aの上流側には、液体供給管13が接続されており、分岐部Aの下流側には、モジュール供給管14とバイパス管16とが接続されている。そして、分岐部Aは、液体供給管13を流れる液体Lを、モジュール供給管14とバイパス管16とに分岐して排出する。
【0043】
モジュール供給管14は、内周側に流路が形成された管状の部材である。モジュール供給管14は、分岐部Aを介して液体供給管13に連通されて、液体Lを中空糸膜モジュール11に供給する。モジュール供給管14は、中空糸膜モジュール11の上流側に配置されて、中空糸膜モジュール11の液体供給口24に接続されている。モジュール供給管14は、中空糸膜モジュール11の液相側領域に連通されており、中空糸膜モジュール11の液相領域に液体Lを供給する。
【0044】
モジュール排出管15は、内周側に流路が形成された管状の部材である。モジュール排出管15は、中空糸膜モジュール11から高濃度ガス付加液体L1が排出されて、合流部Bを介して液体排出管17に連通されている。モジュール排出管15は、中空糸膜モジュール11の下流側に配置されて、中空糸膜モジュール11の液体排出口25に接続されている。モジュール排出管15は、中空糸膜モジュール11の液相側領域に連通されており、中空糸膜モジュール11の液相側領域から高濃度ガス付加液体L1が排出される。
【0045】
バイパス管16は、内周側に流路が形成された管状の部材である。バイパス管16は、分岐部Aを介して液体供給管13に連通されている。バイパス管16は、中空糸膜モジュール11をバイパスしている。このため、バイパス管16を流れる液体Lは、中空糸膜モジュール11に供給されずに、中空糸膜モジュール11をバイパスする。バイパス管16は、合流部Bによりモジュール排出管15と合流されている。
【0046】
合流部Bの上流側には、モジュール排出管15とバイパス管16とが接続されており、合流部Bの下流側には、液体排出管17が接続されている。そして、合流部Bは、モジュール排出管15を流れる高濃度ガス付加液体L1とバイパス管16を流れる液体Lとを合流する。そして、合流部Bは、液体Lと高濃度ガス付加液体L1とが合流してなる処理液体L2を、液体排出管17に排出する。
【0047】
液体排出管17は、内周側に流路が形成された管状の部材である。液体排出管17は、合流部Bに接続されており、液体排出管17は、合流部Bを介してモジュール排出管15及びバイパス管16と連通されており、合流部Bから処理液体L2が排出される。
【0048】
調整弁18は、モジュール排出管15の流路を開閉する弁である。調整弁18は、モジュール排出管15の流路を開閉することで、モジュール排出管15を流れる高濃度ガス付加液体L1とバイパス管16を流れる液体Lとの割合を調整する。つまり、調整弁18により上記割合を調整することで、処理液体L2の比抵抗値を調整することができる。この場合、調整ガスGが飽和状態で液体Lに溶解された高濃度ガス付加液体L1が生成されるように、調整弁18の開度を設定することが好ましい。ここで、飽和状態とは、完全な飽和状態だけでなく、飽和状態に近い状態も含む。飽和状態に近い状態とは、中空糸膜モジュール11に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール11をバイパスする液体Lの流量との分配比率のみによって液体Lの比抵抗値を調整できる程度に、液体Lに調整ガスGが溶解されている状態をいう。
【0049】
図1に示すように、バッファタンク3は、ガス溶解装置2から排出された処理液体L2が供給される。バッファタンク3は、ガス溶解装置2に接続されている。つまり、処理液体L2は、ガス溶解装置2から排出されると、処理液体排出管4を経由することなく、すぐにバッファタンク3に供給される。バッファタンク3は、処理液体L2を一時的に溜めておくことができる容器である。このため、処理液体L2がバッファタンク3に供給されると、処理液体L2の流路が急激に広くなることで処理液体L2の流速が急激に低下する。これにより、バッファタンク3に供給された処理液体L2は、バッファタンク3内で対流することにより解離が促進される。また、バッファタンク3に供給された処理液体L2は、バッファタンク3内で乱流となって撹拌されることによりイオン濃度の均一化が促進される。
【0050】
バッファタンク3は、密閉容器であり、バッファタンク3に処理液体L2が供給されることで、バッファタンク3内が処理液体L2で満たされる。このため、バッファタンク3の下流側にポンプ等を配置しなくても、ガス溶解装置2から排出された処理液体L2をバッファタンク3に供給することで、バッファタンク3から処理液体L2が排出される。なお、バッファタンク3内が処理液体L2で完全に満たされている必要は無く、バッファタンク3内に処理液体L2が満たされない領域(空隙)が残っていてもよい。
【0051】
バッファタンク3は、如何なる形状の容器であってもよいが、円筒状の容器であることが好ましい。このように、バッファタンク3が円筒状の容器であると、バッファタンク3に供給された処理液体L2を、バッファタンク3の内周面に沿って対流させることができる。これにより、バッファタンク3内における処理液体L2の対流時間を十分に確保することができるともに撹拌効果を向上させることができる。
【0052】
図3は、バッファタンクにおける供給口及び排出口の配置例を示す図である。図1及び図3に示すように、バッファタンク3は、ガス溶解装置2の液体供給管13に接続される供給口3aと、処理液体排出管4に接続される排出口3bと、を備える。供給口3a及び排出口3bの配置は、特に限定されないが、バッファタンク3内で処理液体L2の対流及び撹拌を促進する観点から、図3(a)及び(b)に示すように、供給口3aと排出口3bとが、互いに異なる線上に向けられていることが好ましい。このように、バッファタンク3の供給口3aと排出口3bとが互いに異なる線上に向けられていると、バッファタンク3内で大きな乱流が起きるとともに、供給口3aから排出口3bへの経路が複雑化される。これにより、処理液体L2の対流及び撹拌を促進させることができる。
【0053】
図3(a)に示すバッファタンク3は、供給口3a及び排出口3bが、バッファタンク3の上下方向に延びる中心軸線Cから外れた位置に向けられている。このように、バッファタンク3の供給口3aと排出口3bとがバッファタンク3の中心軸線Cから外れた方向に向けられていると、バッファタンク3内において、バッファタンク3の中心軸線C周りに処理液体L2を旋回させることができる。これにより、バッファタンク3内における処理液体L2の対流時間を十分に確保することができるとともに撹拌効果を向上させることができる。
【0054】
図3(b)に示すバッファタンク3は、供給口3aと排出口3bとが、バッファタンク3の上下方向において異なる位置に配置されている。このように、バッファタンク3の供給口3aと排出口3bとが上下方向において異なる位置に配置されていると、バッファタンク3内における処理液体L2の対流時間を十分に確保することができる。
【0055】
また、図3(b)に示すバッファタンク3は、排出口3bが供給口3aよりも上方に配置されている。処理液体L2に気泡が含まれていると、バッファタンク3内では、当該気泡が供給口3aから上方に浮上していく。このため、排出口3bが供給口3aよりも上方に配置されていると、処理液体L2に含まれる気泡を速やかに排出口3bから排出することができる。
【0056】
ところで、本発明者らの実験の結果、上記式(2)のイオン化が十分に行われるまでには、7〜12秒程度必要であるとの知見を得た。実験の詳細は、以下の実施例に示す。そこで、バッファタンク3の容量は、処理液体L2が7〜12秒で満たされる容量、つまり、処理液体L2の流量の7〜12秒分に相当する容量であることが好ましい。このように、バッファタンク3の容量を、処理液体L2が7〜12秒で満たされる容量とすることで、バッファタンク3が大型化するのを抑制しつつ、バッファタンク3内において処理液体L2を十分に解離させることができる。
【0057】
図1に示すように、処理液体排出管4は、内周側に流路が形成された管状の部材である。処理液体排出管4は、バッファタンク3の排出口3bに接続されており、バッファタンク3から処理液体L2が排出される。そして、処理液体L2は、処理液体排出管4を流れていくことで、処理液体L2が使用されるユースポイントに供給される。処理液体排出管4の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0058】
このように、本実施形態では、ガス溶解装置2において、液体Lに調整ガスGが溶解された処理液体L2が生成され、この生成された処理液体L2がバッファタンク3に供給される。処理液体L2がバッファタンク3に供給されると、処理液体L2の流路が急激に広くなることで処理液体L2の流速が急激に低下する。これにより、バッファタンク3に供給された処理液体L2は、バッファタンク3内で対流することにより解離が促進される。また、バッファタンク3に供給された処理液体L2は、バッファタンク3内で乱流となって撹拌されることによりイオン濃度の均一化が促進される。その結果、処理液体L2の比抵抗値のズレ及び振れの双方が抑制される。しかも、バッファタンクの代わりに長い配管を用いる場合に比べて、処理液体L2の圧損を小さくすることができ、更には、装置規模を小さくすることができる。
【0059】
また、ガス溶解装置2に供給された液体Lは、中空糸膜モジュール11に供給される液体Lと中空糸膜モジュール11をバイパスする液体Lとに分配される。中空糸膜モジュール11では、中空糸膜21を透過した調整ガスGが液体Lに溶解されて、液体Lに調整ガスGが溶解した高濃度ガス付加液体L1が生成される。そして、中空糸膜モジュール11で生成された高濃度ガス付加液体L1と中空糸膜モジュール11をバイパスした液体Lとが合流することで、処理液体L2が生成される。これにより、ガス溶解装置2に供給される液体Lの流量が変動しても、処理液体L2の比抵抗値を安定させることができる。
【0060】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、基本的に第一実施形態と同様であり、バッファタンクが処理液体で満たされない容器である点、及び処理液体排出管にポンプが取り付けられている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0061】
図4は、第二実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図4に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Aは、ガス溶解装置2と、バッファタンク3Aと、処理液体排出管4と、ポンプ5と、を備える。
【0062】
バッファタンク3Aは、第一実施形態のバッファタンク3と同様に、ガス溶解装置2から排出された処理液体L2が供給されて、処理液体L2を一時的に溜めておくことができる容器である。
【0063】
バッファタンク3Aは、開放容器であり、バッファタンク3Aに処理液体L2が供給され、又は、バッファタンク3Aから処理液体L2が排出されることで、バッファタンク3A内に溜められている処理液体L2が増減する。このため、ガス溶解装置2から排出された処理液体L2をバッファタンク3Aに供給しただけでは、バッファタンク3Aから処理液体L2が排出されない。
【0064】
図5は、バッファタンクにおける供給口及び排出口の配置例を示す図である。図4及び図5に示すように、バッファタンク3Aは、ガス溶解装置2の液体供給管13に接続される供給口3aと、処理液体排出管4に接続される排出口3bと、を備える。供給口3a及び排出口3bの配置は、特に限定されないが、バッファタンク3A内で処理液体L2の対流及び撹拌を促進する観点から、図5に示すように、供給口3aが、バッファタンク3Aの上部に形成されていることが好ましい。供給口3aがバッファタンク3Aの上部に形成されているとは、例えば、バッファタンク3Aの天壁に供給口3aが形成されていること、バッファタンク3Aの天壁に液体排出管17を貫通させてバッファタンク3Aの上部に供給口3aが形成されていること、バッファタンク3Aの側壁の上部に供給口3aが形成されていること、バッファタンク3Aの側壁の上部に液体排出管17を貫通させてバッファタンク3Aの上部に供給口3aが形成されていること等をいう。このように、供給口3aがバッファタンク3Aの上部に形成されていると、供給口3aからバッファタンク3Aに供給される処理液体L2により、バッファタンク3Aに溜められている処理液体L2を撹拌することができる。
【0065】
図4に示すように、ポンプ5は、処理液体排出管4に取り付けられている。ポンプ5は、処理液体排出管4内の処理液体L2をバッファタンク3Aとは反対側に送ることで、バッファタンク3Aから処理液体排出管4に処理液体L2を送り出す。
【0066】
このように、本実施形態でも、第一実施形態と同様に処理液体L2がバッファタンク3Aに供給されるため、処理液体L2の比抵抗値のズレ及び振れの双方を抑制することができる。また、バッファタンクの代わりに長い配管を用いる場合に比べて、処理液体L2の圧損を小さくすることができ、更には、装置規模を小さくすることができる。
【0067】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態は、基本的に第二実施形態と同様であり、処理液体排出管を開閉する開閉弁と、処理液体排出管を流れる処理液体をバッファタンクに戻す循環配管と、を備える点のみ、第二実施形態と相違する。このため、以下では、第二実施形態と相違する事項のみを説明し、第二実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0068】
図6は、第三実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図6に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Bは、ガス溶解装置2と、バッファタンク3Bと、処理液体排出管4と、ポンプ5と、開閉弁6と、循環配管7と、を備える。
【0069】
開閉弁6は、処理液体排出管4のポンプ5よりも下流側に取り付けられて、処理液体排出管4の流路を開閉する弁である。開閉弁6は、処理液体排出管4の流路を開閉することで、処理液体L2をユースポイントに供給するか否かを選択することができる。
【0070】
循環配管7は、内周側に流路が形成された管状の部材である。循環配管7は、処理液体排出管4におけるポンプ5と開閉弁6との間から分岐されて、処理液体排出管4を流れる処理液体L2をバッファタンク3Bに戻す。ポンプ5と開閉弁6との間とは、ポンプ5の下流側かつ開閉弁6の上流側である。このため、開閉弁6を開くと、バッファタンク3Bから処理液体排出管4に排出された処理液体L2は、ユースポイントに供給されるが、開閉弁6を閉じると、バッファタンク3Bから処理液体排出管4に排出された処理液体L2は、循環配管7を通ってバッファタンク3Bに戻される。
【0071】
バッファタンク3Bは、第二実施形態のバッファタンク3Aと同様に、開放容器であり、バッファタンク3Bに処理液体L2が供給され、又は、バッファタンク3Bから処理液体L2が排出されることで、バッファタンク3B内に溜められている処理液体L2が増減する。このため、ガス溶解装置2から排出された処理液体L2をバッファタンク3Bに供給しただけでは、バッファタンク3Bから処理液体L2が排出されない。
【0072】
図7は、バッファタンクにおける供給口及び排出口の配置例を示す図である。図6及び図7に示すように、バッファタンク3Bは、ガス溶解装置2の液体供給管13に接続される供給口3aと、処理液体排出管4に接続される排出口3bと、循環配管7に接続される循環口3cと、を備える。供給口3a、排出口3b及び循環口3cの配置は、特に限定されないが、バッファタンク3B内で処理液体L2の対流及び撹拌を促進する観点から、図7に示すように、供給口3a及び循環口3cが、バッファタンク3Bの上部に形成されていることが好ましい。このように、供給口3a及び循環口3cがバッファタンク3Bの上部に形成されていると、供給口3aからバッファタンク3Bに供給される処理液体L2又は循環口3cからバッファタンク3Bに戻される処理液体L2により、バッファタンク3Bに溜められている処理液体L2を撹拌することができる。
【0073】
このように、本実施形態では、開閉弁6を開くと、処理液体排出管4からユースポイントに処理液体L2を供給することができるが、開閉弁6を閉じると、バッファタンク3Bから処理液体排出管4に排出された処理液体L2を循環配管7からバッファタンク3Bに戻すことができる。このため、ユースポイントで処理液体L2が必要でないときは、開閉弁6を閉じておくことで、バッファタンク3B、処理液体排出管4、及び循環配管7で処理液体L2を循環させることができる。これにより、処理液体L2の解離及びイオン濃度の均一化が更に促進されるため、処理液体L2の比抵抗値のズレ及び振れを更に抑制することができる。
【0074】
ところで、基板を洗浄する洗浄機等では、頻繁に流量変動が起こるため、流動変更に伴う比抵抗値の振れの問題も発生する。また、流量を変化させると、処理液体L2の比抵抗値が安定するまでに多少の時間がかかる。これに対して、本実施形態では、ユースポイントにはバッファタンク3Bに溜められている処理液体L2を供給するため、常にガス溶解装置2で処理液体L2を生成する必要は無く、バッファタンク3Bに溜められている処理液体L2が少なくなったときに、ガス溶解装置2で処理液体L2を生成すればよい。このため、ガス溶解装置2に供給する液体Lの流量を一定にすることができる。これにより、ユースポイントでの流量変動や使用流量に影響されることなく、処理液体L2の比抵抗値を安定させることができる。
【0075】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態は、基本的に第三実施形態と同様であり、バッファタンク内で処理液体の比抵抗値を調整する点のみ、第三実施形態と相違する。このため、以下では、第三実施形態と相違する事項のみを説明し、第三実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0076】
図8は、第四実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図8に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Cは、ガス溶解装置2と、バッファタンク3Cと、処理液体排出管4と、ポンプ5と、開閉弁6と、循環配管7と、第一調整用配管8と、第二調整用配管9と、比抵抗値センサ10と、を備える。
【0077】
第一調整用配管8は、内周側に流路が形成された管状の部材である。第一調整用配管8は、液体Lをバッファタンク3Cに供給する。第一調整用配管8は、液体Lの流路に接続されている。第一調整用配管8が接続される液体Lの流路としては、例えば、ガス溶解装置2の液体供給管13、バイパス管16等が挙げられる。第一調整用配管8には、電磁弁(不図示)が取り付けられている。そして、比抵抗値調整装置1Cを制御する制御部(不図示)は、比抵抗値センサ10の計測結果に基づいて、電磁弁の開閉制御を行う。
【0078】
第二調整用配管9は、内周側に流路が形成された管状の部材である。第二調整用配管9は、高濃度ガス付加液体L1をバッファタンク3Cに供給する。第二調整用配管9は、高濃度ガス付加液体L1の流路に接続されている。第二調整用配管9が接続される高濃度ガス付加液体L1の流路としては、例えば、ガス溶解装置2のモジュール排出管15が挙げられる。第二調整用配管9には、電磁弁(不図示)が取り付けられている。そして、比抵抗値調整装置1Cを制御する制御部(不図示)は、比抵抗値センサ10の計測結果に基づいて、電磁弁の開閉制御を行う。
【0079】
比抵抗値センサ10は、バッファタンク3Cに溜められている処理液体L2の比抵抗値を計測するセンサである。バッファタンク3Cに溜められている処理液体L2は、比抵抗値が安定しているが、装置の不具合等によって比抵抗値が比抵抗調整値からずれる可能性がある。そこで、比抵抗値センサ10でバッファタンク3Cに溜められている処理液体L2の比抵抗値を計測する。そして、比抵抗値調整装置1Cを制御する制御部(不図示)は、計測結果が比抵抗調整値から外れている場合は、第一調整用配管8又は第二調整用配管9から液体L又は高濃度ガス付加液体L1をバッファタンク3Cに供給することで、比抵抗値センサ10でバッファタンク3Cに溜められている処理液体L2の比抵抗値を調整する。
【0080】
このように、本実施形態では、比抵抗値センサ10の計測結果に基づいて、第一調整用配管8又は第二調整用配管9から液体L又は高濃度ガス付加液体L1をバッファタンク3Cに供給することで、バッファタンク3Cに溜められている処理液体L2の比抵抗値を調整することができる。なお、バッファタンク3Cに液体L又は高濃度ガス付加液体L1を供給しても、開閉弁6を閉じて、バッファタンク3C、処理液体排出管4、及び循環配管7で処理液体L2を循環させることで、バッファタンク3Cに溜められている処理液体L2の解離及びイオン濃度の均一化を促進することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、上記実施形態では、ガス溶解装置として、中空糸膜モジュールで生成した高濃度ガス付加液体L1と中空糸膜モジュールをバイパスした液体Lとを合流せることで処理液体L2を生成する膜方式のガス溶解装置を用いて説明したが、特開昭60−027603号公報、特開平10−212105号公報、特開2004−344821号公報等に記載されたような気体注入方式のガス溶解装置等に適用してもよい。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
[実施例1]
実施例1では、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。ガス溶解装置2(液体供給管13)に供給する液体Lは、温度:25[℃]、供給水圧:0.25[MPa]、比抵抗値:18.2[MΩ・cm]、流量:2.0[L/min]とした。比抵抗調整値は、0.4[MΩ・cm]、0.5[MΩ・cm]、0.6[MΩ・cm]、0.8[MΩ・cm]、1.0[MΩ・cm]とした。処理液体排出管4として、直径12×8[mm]のチューブを用いた。バッファタンク3として、円筒状の容器を用いた。処理液体L2のバッファタンク3での推定滞留時間が約12秒となるように、バッファタンク3の容量(内容積)を400[cc]とした。推定対流時間は、バッファタンク3の容量を、処理液体L2の流量で除算した時間とした。
【0084】
そして、バッファタンク3の直後に比抵抗値センサを取り付け、この比抵抗値センサで処理液体L2の比抵抗値を計測した。比抵抗値センサとしては、堀場アドバンストテクノ社製HE−480Rを用いた。計測結果を図10に示す。
【0085】
[比較例1]
比較例1では、図9に示す比抵抗値調整装置100を用いた。比較例1の比抵抗値調整装置100は、バッファタンクを備えない点を除き、実施例1の比抵抗値調整装置1と同じとした。ガス溶解装置2(液体供給管13)に供給する液体L及び比抵抗調整値は、実施例1と同条件とした。
【0086】
そして、ガス溶解装置2から排出された処理液体L2が比抵抗値センサに到達するまでの時間が実施例1と同条件となるように、処理液体排出管4におけるガス溶解装置2の8m下流側に比抵抗値センサを取り付け、この比抵抗値センサで処理液体L2の比抵抗値を計測した。つまり、比抵抗値センサを上記位置に取り付けることで、処理液体L2がガス溶解装置2から排出されてから比抵抗値センサに到達するまでの推定時間を約12秒とし、比抵抗値センサまでの処理液体排出管4の容積(内容積)を400ccとした。比抵抗値センサとしては、実施例1と同じものを用いた。計測結果を図11に示す。
【0087】
[評価1]
図11に示すように、比較例1では、比抵抗値センサを取り付けるまでの距離を長くしたため、イオン濃度のムラに起因する比抵抗値の振れが大きかった。
【0088】
これに対し、図10に示すように、実施例1では、比抵抗値の振れが、比較例1に対して大幅に抑制された。この結果から、バッファタンク3を備えることで、比抵抗値の振れを抑制できることが分かった。
【0089】
[実施例2]
実施例2では、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。ガス溶解装置2(液体供給管13)に供給する液体Lは、温度:25[℃]、供給水圧:0.25[MPa]、比抵抗値:18.2[MΩ・cm]とした。液体Lの流量は、2.0[L/min]、1.0[L/min]、0.2[L/min]とした。比抵抗調整値は、0.2[MΩ・cm]、0.5[MΩ・cm]、0.6[MΩ・cm]、0.7[MΩ・cm]、0.8[MΩ・cm]、0.9[MΩ・cm]、1.0[MΩ・cm]とした。バッファタンク3として、円筒状の容器を用い、バッファタンク3の容量(内容積)を700[cc]とした。バッファタンク3の供給口3aと排出口3bとが同一上線上に向けられているものとした。
【0090】
そして、バッファタンク3の直後に比抵抗値センサを取り付け、この比抵抗値センサで処理液体L2の比抵抗値を計測した。比抵抗値センサは実施例1と同じものを用いた。流量が2.0[L/min]の計測結果を図12に示し、流量が1.0[L/min]の計測結果を図13に示し、流量が0.2[L/min]の計測結果を図14に示す。
【0091】
[実施例3]
実施例3では、バッファタンク3の供給口3aと排出口3bとが互いに異なる線上に向けられているものとした他は、実施例2と同条件とした。具体的には、供給口3a及び排出口3bは、バッファタンク3の上下方向に延びる中心軸線から外れた位置に向けられているものとし、更に、排出口3bを供給口3aよりも上方に配置した。
【0092】
そして、バッファタンク3の直後に比抵抗値センサを取り付け、この比抵抗値センサで処理液体L2の比抵抗値を計測した。比抵抗値センサは実施例1と同じものを用いた。流量が2.0[L/min]の計測結果を図15に示し、流量が1.0[L/min]の計測結果を図16に示し、流量が0.2[L/min]の計測結果を図17に示す。
【0093】
[評価2]
図12図14図15図17とを比べると、液体Lの流量に関わらず、実施例3は、実施例2よりも比抵抗値の振れが抑制されている。これは、実施例2では、処理液体L2がバッファタンク3の供給口3aから排出口3bに直線的に抜けやすいことから、実施例3に比べて処理液体L2の撹拌効果が弱まった結果である思われる。一方、実施例3では、処理液体L2がバッファタンク3の内側面に当たって旋回するように対流するため、実施例2に比べて撹拌効果が高まった結果であると思われる。
【0094】
[実施例4]
実施例4では、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。ガス溶解装置2(液体供給管13)に供給する液体Lは、温度:25[℃]、供給水圧:0.25[MPa]、比抵抗値:18.2[MΩ・cm]、流量:2.0[L/min]とした。比抵抗調整値は、0.1[MΩ・cm]、0.2[MΩ・cm]、0.5[MΩ・cm]、0.6[MΩ・cm]、0.7[MΩ・cm]、0.8[MΩ・cm]、0.9[MΩ・cm]、1.0[MΩ・cm]とした。バッファタンク3として、円筒状の容器を用い、バッファタンク3の容量(内容積)を150[cc]、300[cc]、400[cc]、500[cc]、700[cc]とした。
【0095】
そして、バッファタンク3の直後と、処理液体排出管4におけるバッファタンク3の5m下流側とに、それぞれ比抵抗値センサを取り付け、これらの比抵抗値センサで処理液体L2の比抵抗値を計測した。比抵抗値センサは実施例1と同じものを用いた。バッファタンク3の容量が150[cc]の計測結果を図18に示し、バッファタンク3の容量が300[cc]の計測結果を図19に示し、バッファタンク3の容量が400[cc]の計測結果を図20に示し、バッファタンク3の容量が500[cc]の計測結果を図21に示し、バッファタンク3の容量が700[cc]の計測結果を図22に示す。
【0096】
[評価3]
バッファタンク3の直後に取り付けられた比抵抗値センサの計測結果を参照すると、バッファタンク3の容量を大きくするほど、比抵抗値の振れ幅が小さくなった。この結果から、バッファタンク3の容量を大きくするほど、バッファタンク3内で処理液体L2の撹拌が促進されるため、イオン濃度が均一化して、比抵抗値の振れが抑制されることが分かった。
【0097】
[評価4]
バッファタンク3の直後に取り付けられた比抵抗値センサの計測結果と、処理液体排出管4におけるバッファタンク3の5m下流側に取り付けられた比抵抗値センサの計測結果とを比較すると、バッファタンク3の容量を大きくするほど、比抵抗値の差が小さくなった。この結果から、バッファタンク3の容量を大きくするほど、バッファタンク3内で処理液体L2の滞留時間が長くなるため、イオン濃度の均一化と同時に、解離が促進されて、比抵抗値の振れ及びズレの双方が抑制されることが分かった。
【0098】
[評価5]
バッファタンク3の直後に取り付けられた比抵抗値センサの計測結果と、処理液体排出管4におけるバッファタンク3の5m下流側に取り付けられた比抵抗値センサの計測結果とを比較すると、バッファタンク3の容量が150[cc]よりも大きくなることで、比抵抗値の差が小さくなっていた。また、バッファタンク3の容量が400[cc]以上の場合は、比抵抗値の差は殆ど変わらなかった。ここで、バッファタンク3の容量が150[cc]である場合の処理液体L2のバッファタンク3の推定滞留時間は約5秒となり、バッファタンク3の容量が300[cc]である場合の処理液体L2のバッファタンク3の推定滞留時間は約9秒となり、バッファタンク3の容量が400[cc]である場合の処理液体L2のバッファタンク3の推定滞留時間は約12秒となる。このため、バッファタンク3の容量を、処理液体L2が約7〜12秒で満たされる容量、つまり、処理液体L2の流量の約7〜12秒分に相当する容量とすることで、バッファタンク3が大型化するのを抑制しつつ、バッファタンク3内において処理液体L2を十分に解離させることができることが分かった。
【0099】
[実施例5]
実施例5では、液体Lの流量を1.0[L/min]、0.2[L/min]とし、バッファタンク3の容量を400[cc]とした他は、実施例4と同条件とした。
【0100】
そして、実施例4と同じ位置に比抵抗値センサを取り付け、これらの比抵抗値センサで処理液体L2の比抵抗値を計測した。比抵抗値センサは実施例1と同じものを用いた。液体Lの流量が1.0[L/min]の計測結果を図23に示し、液体Lの流量が0.2[L/min]の計測結果を図24に示す。
【0101】
[評価]
図20図23及び図24は、液体Lの流量が異なるだけで、他の条件は同じである。そして、何れの計測結果においても、比抵抗値の振れ及びズレが抑制されていた。この結果から、液体Lの流量に関わらず、上記の評価3〜評価5が妥当であると類推できることが分かった。
【符号の説明】
【0102】
1,1A,1B,1C…比抵抗値調整装置、2…ガス溶解装置、3,3A,3B,3C…バッファタンク、3a…供給口、3b…排出口、3c…循環口、4…処理液体排出管、5…ポンプ、6…開閉弁、7…循環配管、8…第一調整用配管、9…第二調整用配管、10…比抵抗値センサ、11…中空糸膜モジュール、12…ガス供給管、13…液体供給管、14…モジュール供給管、15…モジュール排出管、16…バイパス管、17…液体排出管、18…調整弁、19…圧力調整弁、21…中空糸膜、22…ハウジング、23…ガス供給口、24…液体供給口、25…液体排出口、100…比抵抗値調整装置、A…分岐部、B…合流部、C…中心軸線、G…調整ガス、L…液体、L1…高濃度ガス付加液体、L2…処理液体、P1…圧力計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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