【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明は以下の内容に関するものである。
(1)耐久性に優れたシリカグラウト(組成と耐久性)(請求項1〜16)
(2)所定の注入領域に浸透固結するシリカグラウト(特に土中ゲル化時間と注入時間と所定領域における浸透固結性を得る組成やゲルタイムの設定)(請求項8、9、17、22、23、25)
(3)耐久期間を考慮した所定の耐久効果を持続するシリカグラウト(強度の長期変化と耐久期間)(請求項10〜15)
(4)注入目的、地盤条件、環境条件、耐久期間に対応した所定の注入効果を持続する耐久シリカグラウトを用いた地盤改良工法(耐久性に及ぼす要因と耐久性の持続)(請求項10〜25)
(5)ホモゲルとサンドゲルの長期耐久性特性から強度予測した所定の改良効果を得る耐久シリカグラウトを用いた地盤改良工法(請求項10〜13)
(6)現場採取土を用いた配合設計法による耐久性地盤改良工法(請求項22)
(7)注入材並びに注入前後の地盤のシリカ含有量から所定注入領域における浸透固結性並びに注入地盤の改良効果を確認する耐久シリカグラウトを用いた地盤改良工法(請求項22)
(8)多様な地盤条件で化学反応に依存する地盤珪化を互いに関連する耐久要因とそれを構成する要素技術を統合して、耐久期間に対応して所定の効果を持続する耐久性地盤改良工法(請求項26〜33)
(9)注入管理法(請求項17、22〜32)
【0022】
また、本願発明に関する説明事項には以下の内容が含まれる。
1.注入目的を満たす耐久効果の持続性と所定領域に浸透固結する耐久シリカグラウトの開発(請求項1〜16)
2.注入目的を満たす耐久性と耐久期間(請求項10〜16)
(1)耐久性とは何か(請求項10〜25)
(2)耐久強度とは(請求項10〜16、20)
(3)耐久強度の種類(請求項10、14)
(4)耐久シリカグラウトの強度の設定(請求項4〜7、10〜16,18〜22)
(5)シリカゲルの耐久性:シリカの溶脱と体積変化と強度(請求項10〜16)
(6)固結土の強度変化と耐久性(請求項10〜16、18〜22)
3.耐久性の向上
(1)各注入材の耐久性の経時変化の特徴と耐久性強度の低減の向上(請求項3〜18、22〜25)
(2)微粒子シリカの付加(請求項6、18)
(3)耐久グラウトの注入に先立つ一次注入による不均質地盤の均質化(請求項18)
4.耐久性評価法(請求項10〜16、19、20)
(1)耐久性の評価項目
(2)耐久性の評価要素
(3)耐久性の評価判断
(4)耐久性評価としての耐久レベル
5.耐久シリカグラウトを用いた耐久性地盤改良工法(請求項17〜33)
(1)シリカ溶液の組成とシリカ濃度を注入目的と耐久期間に対応して適用する耐久シリカ地盤改良工法(請求項1〜20)
(2)所定の注入領域に浸透したシリカグラウトが留まって固結する耐久シリカ地盤改良工法(請求項1〜9、17、18、23〜25)
(3)耐久条件並びに地盤条件に対応した耐久性が得られる耐久シリカ地盤改良工法(請求項7〜25)
(4)耐久性の向上を可能にする耐久シリカ地盤改良工法(請求項5〜9、18、22〜25)
(5)環境保全性耐久シリカ地盤改良工法(請求項2、4、7、14,、25、27、28、30、31)
6.耐久性の評価法による耐久シリカ地盤改良工法(請求項10〜16、19〜21)
7.現場採取土による地盤珪化評価法を用いた耐久シリカ地盤改良工法(請求項22、25)8.配合設計法による耐久シリカグラウトを用いた耐久シリカ地盤改良工法(請求項19〜22、25)
9.耐久シリカ地盤改良効果推定法を用いた耐久シリカグラウトによる耐久シリカ地盤改良工法(請求項12〜22)
10.要素技術を統合してなる耐久シリカ地盤改良工法(請求項17〜33)
11.インターネットによる情報管理システムと耐久性地盤改良工法の品質管理(請求項17、26〜32)
【0023】
本発明者は30年以上にわたる薬液注入による長期耐久性の研究を行ない、耐久性に優れたシリカグラウトやそれを用いた耐久性注入技術の研究開発を進めてきた。又ホモゲル、サンドゲルのゲル化のメカニズムと耐久原理と経時的耐久性の特性を明らかにした。
【0024】
その薬液注入の長期耐久性試験の結果、非アルカリ性シリカ溶液は以下の点で耐久シリカグラウトになりうることが判った。
(1)非晶質のシリカ溶液は酸性〜弱アルカリ領域(非アルカリ領域 pH:1〜10)では
含有シリカ分を析出する。(
図3、
図4)
(2)非アルカリ性領域において、シリカのゲル化物からのシリカの溶脱は無視できるほど小さい。(
図32、
図33)
(3)非アルカリ性シリカゲルは長期的に脱水してゲルの体積が減少して強度が増大するが(シネリシス)シリカゲルの強度の低下は殆どなく、最終的にほぼ一定値になるとみなして良い。(
図44、
図45、
図46、
図57(a))
(4)シリカゲルで固結した土の強度はゲルの強度と地盤の状態に依存するが、ゲルの収縮が過大になると強度低下の傾向が生ずる。しかしシリカ濃度が濃くなるほど、強度低下は低減する。(
図34、
図35、
図36、
図49、
図53、
図54)
(5)シリカ溶液の組成中にコロイダルシリカの含有量が多いほどゲルの収縮は低減し固結砂の耐久性は向上する。(
図34(b)、
図35(b)、
図36、
図37、
図38、
図42、
図53、
図54)
【0025】
このため本発明者は注入目的に対応した耐久期間と何をもって耐久性というかを明らかにし、その施工にあたっての耐久期間中の耐久性と所定の注入領域に確実に浸透固結が得られる特性をもつ耐久性グラウトを開発し、さらに耐久性グラウトを用いて、施工後の耐久性地盤が所定の目的を達していることを確認できる地盤改良工法の開発に努めた。
【0026】
特に耐久性地盤改良は注入材そのものの耐久性が優れていても、それを注入した地盤の注入領域に注入液が逸脱することなく浸透固結していなくては地盤の耐久性は得られない。このため耐久シリカ溶液のゲル化の特性を地盤中における浸透固結性に効果的に活かすことができるメカニズムを解明し地盤条件と注入目的と施工法に対応したシリカグラウトの組成と配合処方と施工管理からなる以下の(1)〜(3)を一体化した所定注入領域から逸脱することなく浸透固結する技術を開発した。
【0027】
(1)耐久性と浸透固結性にすぐれた、かつ適用する注入方式や地盤条件に対応した所定の領域に浸透固結する土中ゲル化時間を基本とするゲル化の特性をもつシリカグラウトの組成と配合処方。(請求項1〜7)
(2)所定領域に浸透固結するシリカグラウトを所定領域に注入したことを可視化するこ
とによりリアルタイムで把握するための施工管理法。(請求項22、25)
(3)所定領域に浸透固結して所定の改良効果が得られている事を確認するためのシリカ量分析による地盤珪化確認法。(請求項22、25)
さらに供用期間に対応したシリカグラウトのゲルの耐久性の持続性と地盤条件に対応した耐久性の向上、注入地盤の改良効果の持続と改良効果の把握、環境保全性を一体とした技術開発を行い上記課題の解決を可能にしたものである。(請求項8〜19、26〜33)
【0028】
本発明は上記耐久地盤改良工法において、互いに関連する要件を明らかにし、それを構成する要素技術を開発して、これらを統合した耐久地盤改良工法を提供するものである。(
図79、
図81)(請求項26〜33)
【0029】
1)シリカ溶液を用いたグラウトが上記課題を解決する長期の耐久性を得るためには、シ
リカゲルの劣化要因であるアルカリを除去したシリカ溶液を用い、さらに所定の注入領域から逸脱することなく広範囲浸透固結性がある浸透ゲル化特性を有し、かつ固結地盤が所定の期間必要な耐久性を持続する組成を必要とする。
【0030】
[注入目的に応じた耐久性が得られる耐久シリカグラウトの組成]
そのため本発明シリカ溶液は、シリカ注入液を地盤中に注入することにより地盤改良を行う耐久性地盤改良工法に使用するpHが1〜10のシリカグラウトであって、該シリカ注入
液はシリカコロイド又は水ガラス又のいずれか1種又は複数種と、酸或いは塩のいずれか1種或いは複数種を有効成分とし、該シリカ注入液がコロイドと水ガラスと酸からなる場合は該シリカコロイドに起因するシリカ濃度と水ガラスに起因するシリカ濃度の比率は100
:0〜0:100、かつシリカ濃度は0.4〜40wt%、シリカのモル比は2.0〜100から選定したシ
リカグラウトであって、注入目的に応じた耐久性が得られる処方を上記範囲内で選定してなることを特徴とする耐久シリカグラウト(
図3、
図4、
図37)を用いる(請求項1)。
【0031】
この領域のシリカグラウトは長いゲル化時間で浸透性が優れていることと、そのシリカゲル並びに固結土はシリカの溶脱がきわめて少なく、固結砂の長期固結性はすぐれている為、耐久シリカグラウトとしてみなすことができる。しかしゲルの収縮は固結砂の強度変化と関係があるため、サンドゲルの強度変化の特性が耐久期間に所定の強度を持続するシリカグラウトでなくてはならない(
図37)。
【0032】
更に詳述すると、該耐久シリカグラウトは主剤として以下の組成とシリカ濃度から選定してなることを特徴とする耐久シリカグラウトである(請求項1〜4)。
【0033】
(1)「シリカコロイド」又は「水ガラス」または「酸性シリカゾル」のいずれか1種ま
たは複数種液を有効成分とするシリカ注入液であって、このシリカ溶液に反応剤として酸、塩、或いは酸と塩のいずれかを添加剤として加えてシリカ注入液のモル比が2.0〜100、pHは1.0〜10の注入材として用いる。
(2)該シリカ注入液のシリカの組成とシリカ濃度以下の範囲とする。
0.4%≦SiO
2・T ≦40%
0 ≦SiO
2・S ≦40%
0 ≦ SiO
2・C ≦40%
ただし、
上記シリカコロイドに起因するシリカ濃度をSiO
2・C(%)
上記水ガラスまたはシリカゾルに起因するシリカ濃度をSiO
2・S(%)、
上記シリカ注入液中の全シリカ濃度をSiO
2・T(%)(=SiO
2・C(%)+ SiO
2・S(%
))
とする。
【0034】
(3)上記シリカ注入液のシリカ濃度と組成は水ガラス中のシリカが酸性溶液中で析出されて、シリカ溶液全体をゲル化する限界濃度の0.4%以上であって、ゲル化時間はpHとゲ
ル化時間の曲線において瞬結から、10000分以内のゲル化時間の範囲内に選定する(
図3、
図4、表1)。
ゲル化時間はpHとシリカの組成とシリカ濃度と組成の比率、pHと酸、塩の種類と濃度によって調整される。
【0035】
(4)所定領域に浸透固結するゲル化時間と各ステージで所定量の浸透注入を管理して所定の注入領域外への逸脱を低減しながら注入される。
【0036】
図3、
図4、
図5、
図6、
図8は本発明における耐久シリカグラウトのpHとゲル化時間の関
係を示す。
図3において、Sラインは水ガラスと酸(又は+塩)のpHとゲル化時間の曲線の例であ
る。Cラインはシリカコロイドと塩又は塩+酸の例である。Dラインはシリカコロイドと水ガラスと酸(+塩)からなる複合シリカのゲル化ラインの例を示し、その範囲はSラインよりも上側に、かつCラインを超えてゲル化時間が10000分を上限とする。斜線は注入
目的と施工条件に応じた耐久期間で所定の耐久性を満たす組成とシリカ濃度でかつ所定の注入領域に浸透固結するゲルタイムを選定することができる耐久シリカグラウトの範囲を示す。
図4は非アルカリ性シリカ溶液のゲルタイムとpHとシリカ濃度の例を示す。
【0037】
更に本発明のシリカ注入液は地盤中に注入することにより地盤改良を行う耐久性地盤改良工法に使用する(pHが1〜10)のシリカグラウトであるから上述したようにサンドゲル
の長期変化の特性が耐久期間に所定の強度を持続するシリカグラウトでなくてはならない。このため該シリカ注入液は
図3の耐久期間の時間軸に相当する経時的強度変化の例をグ
ラフ
図37に示すことができる。
【0038】
即ち
図37において、上記シリカグラウトは「シリカコロイドグラウト(Cライン)」と
「水ガラスと酸を有効成分とする酸性シリカグラウト(Sライン)」と「コロイドと水ガ
ラスと酸を有効成分とする複合シリカグラウト(Dライン)」の経時強度の最大ラインと
最小ラインで囲まれた範囲を適用範囲Eとし、適用範囲Eの範囲内で注入目的に応じた耐
久期間内で耐久性を満たす強度が得られる組成とシリカ濃度を選定してなることを特徴とする耐久シリカグラウトである。具体的には上記耐久シリカグラウトは最小シリカ濃度が0.4%の経時的MIN強度ラインとし、最大シリカ濃度が40%の経時的MAX強度ラインとする
(請求項3、10)。
【0039】
水ガラス+コロイド+酸を有効成分とする複合シリカグラウトにおいてシリカ溶液が非アルカリ領域を呈する配合であって、コロイド量を調整することによってゲル化時間の調整とゲルの収縮量の低減を行って強度の低下のない耐久シリカグラウトを得る事ができるし、また水ガラス量を増やすことによって強度発現が早くかつサンドゲルの強度の高い耐久シリカグラウトを得ることができる(請求項6、
図36、
図37、
図49、
図52、
図53)。(請
求項2、4、5)
【0040】
酸性シリカ溶液においてシリカコロイドによる固結土のシリカ濃度が高い割には強度が低く強度発現が遅い性質を、シリカコロイド溶液と水ガラスまたは酸性シリカゾルを混合して酸性複合シリカにすることにより、シリカ濃度が低い割には強度を高くし強度発現を早くすることができる。また
図35〜37、
図49、
図53、
図54より、強度のピークを生ずるシリカゾルグラウトをコロイドと組み合わせることにより初期強度の向上と強度の一定化又は向上又は所定の範囲内の強度低下におさえて、即ち耐久期間内の所定の改良効果が持続する地盤改良工法を可能にしたシリカグラウトである活性複合シリカグラウト(
図39)を
用いることができる。(請求項3、4、14、16)
【0041】
コロイダルシリカと水ガラスと酸を混合して酸性シリカ溶液(酸性複合シリカ溶液)とすることにより、ゲルの収縮と強度低下を抑え、両方の中間的物性を発現する。コロイダルシリカに起因するシリカ分と水ガラスに起因するシリカ分を有するシリカ溶液中の全シリカ量に対するシリカコロイド比が大きいほど初期強度は小さいが、収縮率は小さく、強度低下が少ない。シリカコロイドが全シリカ量の10%以上あると収縮が少なくなり強度はほぼ一定値で収束する。一方、シリカゾルではシリカ濃度が10%以上あると収縮が少なくなり、強度低下が低減し、強度はほぼ一定値に収束する。全シリカ中のコロイドが10%以下の場合はシリカ溶液中の水ガラス比が大きいほど長期的に強度は増大し、全シリカ溶液中のシリカ濃度が高くなると収縮はあっても強度低下は低減し、強度は長期的に一定の値に収束する(
図49(a)、
図53、
図54)。(請求項4、14、16)
【0042】
また、非アルカリ性シリカグラウトは注入した地盤では、ほぼ全量が析出して地盤の固結にあずかるから固結土が経時的に低下しても、その低下を加味することにより収束強度を設定することができる。
現場において、耐久シリカグラウトを地盤中に注入した場合、固結後の地盤の強度は前記ゲルの体積変化と強度増加の他に地盤の砂の密度、粒径が影響する。注入目的、耐久目的、耐久期間、地盤条件に応じてシリカ濃度と組成を調整して耐久性地盤を形成することができる。(請求項8、10、11、14、16、18、22)
【0043】
地盤の土の粒径が大きく砂の密度が低い場合、或いは空隙の大きい地盤ではゲルの体積変化による砂の間隙での収縮が長期強度に影響を生ずる。シリカコロイドと水ガラスを併用した酸性複合シリカは、コロイドと水ガラスの比率によって両者の中間的値をとるが注入目的、耐久目的、地盤条件に応じて適切な比率を用いることができる(
図36、
図37、
図39〜54)。(請求項2、3、4、5、16)
【0044】
表5、
図3、
図5、
図6、
図30よりシリカゾル(酸性領域の水ガラスグラウト)はゲル化時間が早くpHの少しの変化でゲル化時間が変動しやすく、活性シリカコロイドや活性複合シリカはゲル化時間が緩やかでゲル化時間が長く、ゲル化時間が調整しやすいことが判る。
【0045】
即ち、活性シリカコロイドも活性複合シリカもシリカゾルに比べて弱酸性から弱アルカリ性のほぼ中性領域でゲル化時間が調整しやすく中性に近い領域で広範囲浸透固結性に優れていることが判る。(
図3、
図23、
図24、
図26、
図27)
【0046】
図3で非アルカリ性シリカであればシリカ濃度0.4%含有のシリカ溶液はシリカの全量が析出して全配合液を含有したままゲル化する。しかし容器から取り出して自立する程度を保持するシリカ濃度は1%であった。低濃度シリカによるホモゲル、サンドゲルの固結性
を表1に示す。
【0047】
従って、本発明のシリカ注入液のシリカ濃度と組成とゲル化時間は、
図3、
図4、表1よ
り、シリカ濃度が40%を上限とし0.4%を下限とする範囲とし、pHは1〜10とし、ゲルタイ
ムは瞬結領域(通常30秒〜数秒をいう)を下限とし、1ステージ当りの注入時間の最大値
である10000分を上限とする(請求項1、2、3)。
【0048】
本発明における、非アルカリ性シリカ注入液において、シリカコロイドはイオン交換法、イオン交換膜法、金属シリカ法で得られたシリカコロイド又は析出シリカ又はシリカの微粒子の1種又は複数種、水ガラスはモル比3.0〜5.0の珪酸塩、又は水ガラスと酸を有
効成分とする酸性シリカ溶液の1種又は複数種から選定される。上記耐久シリカグラウト
において、該シリカ注入液のシリカ濃度は0.4〜40wt%とし反応剤として、硫酸の他、各種
酸や塩やアルカリを用いることができる。特にリン酸化合物又は/並びに金属イオン封鎖材(有機酸も含む)を有効成分とする組成から選定した場合、コンクリート表面にハイドロキシアパタイトの結晶構造を形成し、硫酸からコンクリートを保護するためコンクリート構造物周辺部における地盤改良において環境上の安全性に優れている。(
図59)(請求項1〜4)
【0049】
また酸として硫酸とリン酸を用いた場合、酸におけるリン酸の比率は75%硫酸、75%リン酸に換算してリン酸は全酸量の15容量%〜50容量%とするとシリカ濃度が高くてもゲル化時間の調整が容易で(
図31)、かつコンクリートの安全性に優れた効果を得る。(
図59)勿論、リン酸のみでも良いが同一pHに対してリン酸量が多くなるため反応生成物が多くなる。
従って、環境に応じて硫酸のみの使用、リン酸のみの使用、リン酸と硫酸の併用とその比率の調整を行うのが望ましい(請求項2、4、14)。
【0050】
以上のように、ゲル化時間の調整は酸としては硫酸、またはリン酸或いはその混酸を用い、塩は1価または多価金属塩、或いは金属イオン封鎖剤を用いたものから選定する(請
求項6、7、60、68)。
【0051】
金属イオン封鎖剤としては以下の化合物を上げることができる。テトラポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩(特にナトリウム塩が良い)、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、酸性ヘキサメタリン酸塩、酸性ピロリン酸塩等の縮合リン酸塩類、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸またはこれらの塩類等が挙げられ、実用的には縮合リン酸塩類が好ましい。
また、リン酸系化合物としては、リン酸、各種の酸性リン酸塩、中性リン酸塩、塩基性リン酸塩等が挙げられる。このようにして、環境条件に応じた組成を選定してコンクリート構造物の近傍における耐久性地盤を形成することができる。これらの材料を含む耐久シリカは
図59の効果を発現して、土中コンクリートを保護する(請求項2、8、10、14)。
【0052】
また添加剤としては金属イオン封鎖剤の他に各種塩、例えば炭酸塩、重炭酸塩、アルミニウム塩、塩化物、アルミン酸塩等任意の塩を添加することができる。(請求項1、2、4
)
【0053】
ゲルタイムの調整のために各種塩(1価のアルカリ金属塩、硫酸アルミニウムやポリ塩
化アルミニウム等のアルミニウム塩やCa、Mg等のアルカリ土金属塩や金属イオン封鎖剤やヘキサメタリン酸ソーダやリン酸ナトリウム等のリン酸塩等)やアルカリを用いることができる、特にゲル化時間の調整と作業性、並びに長い浸透距離を要求される場合は、リン酸と硫酸を併用して用い、ゲル化反応速度を調整することができる。(リン酸の方が硫酸よりも反応が緩やかである)従って長いゲル化時間で浸透距離を長くとることができ、かつ中性領域に近いpH領域で長いゲル化時間をとることができる(
図30、31)。これらは特に土中ゲル化時間(GT
S)や土中pH(pH
S)や浸透距離やシリカ濃度を考慮した配合液の気中ゲル化時間(GT
0)や気中pH(pH
0)の調整や組成の設定に有用である(請求項2〜7)(表11、表12、
図82〜84)。本発明における酸性反応剤は硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、等の有機酸;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸1カルシウム、リン酸1ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の酸性塩;エステル、アミド類、グリオキザール等のアルデヒド、等のようにアルカリの存在のもとに加水分解して酸基を生ずる物質等であるが、これらに限定するものではない。
【0054】
なお、本発明では、さらに塩化物、炭酸塩等の強度増強剤あるいはゲル化時間調整剤を併用することもできる。
たとえば、塩化物、塩素酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重亜硫酸塩、珪弗酸塩、珪酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ピロリン酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩等の無機塩、任意の有機塩、アルコール類、その他金属酸化物、カルシウムシリケート、等であるが、これらの例に制限されないのは勿論である。(請求項1、2、4)
【0055】
以下に上記組成について追加説明する。
・活性シリカコロイド:シリカコロイドは水ガラスのアルカリをイオン交換処理して増粒した弱アルカリ性或いは金属シリカ或いは析出シリカから製造されたシリカコロイドで(表5)コロイド自体の反応性はほとんどないが、それに塩や酸を加えて反応性を与えた
酸性〜弱アルカリ性を呈するシリカ溶液を活性シリカコロイドと称している。
【0056】
・シリカゾル:水ガラスと酸(+塩)を有効成分とする非アルカリ性酸性シリカ溶液(
図3、
図5、
図6、
図35、
図36)。
・活性複合シリカ:シリカコロイドと水ガラスと酸を有効成分とする非アルカリ性複合シリカ溶液又は酸性シリカ溶液とコロイドからなる非アルカリ性複合シリカ溶液(
図3、
図7〜10、
図30、
図36、
図37、
図39)。
【0057】
ここで活性複合シリカとはコロイドに起因する大きなシリカ粒子と水ガラス又はシリカゾルに起因する小さなシリカ粒子の非アルカリ性複合シリカをいう。通常、水ガラスに起因するシリカ粒子の径は0.1nm、水ガラスのアルカリを酸で中和してなる酸性シリカゾル
の粒径は1nm、コロイドの粒径は5〜100nmで、通常は5〜20nmである。活性複合シリカはそれ自体反応性が付与されているので活性複合シリカと称している(表5(a))。
【0058】
活性複合シリカでは、シリカ溶液中のコロイドに起因するシリカ量は全シリカ量中の10重量%〜50重量%が好ましい。コロイドはアルカリをほとんど含んでいないから水ガラスに起因するシリカ量が増えるほど、シリカ溶液を非アルカリ領域のpHにするためには水ガラス中のアルカリを除去するための酸量を増やさなくてはならない(
図3、
図4、
図30、
図31)。酸として硫酸を用いると急激にpHが変化するためゲル化時間の調整が困難なため、ゲル化時間が安定したゲル化時間の長い強酸性に配合するのが普通である(
図3〜6、
図30)。このため硫酸量を多く必要とする。(請求項2、4)
【0059】
一方コロイドを含むシリカ溶液は水ガラスが少なく、従ってアルカリが少ないため酸量が少なくても非アルカリ性シリカグラウトが形成でき、かつコロイドはpHが弱アルカリ(pHが9〜10)であるため、弱酸性〜中性付近で硫酸量を少なくしてゲル化時間の調整しや
すい配合を得ることができる。(請求項2、4)
【0060】
また酸性活性複合シリカはコロイド量の比率が上がるほど、酸の量が少ないため、地盤に注入した場合、土中pHはほぼ中性値を保ちやすい(
図8、
図9、
図23、
図30、
図31)。従って地盤条件、施工条件、環境条件に応じて最適のゲル化時間を調整して所定領域で注入対象外へ逸脱しにくいシリカグラウトを得る事ができる。このように全シリカ量とコロイドと水ガラスの比率と硫酸とリン酸の比率を調整して所定の領域で固結する所定の耐久性を得るシリカ溶液を配合することができる(請求項2、4)。
【0061】
上述したように、シリカグラウトのコロイドと水ガラスと酸の比率と配合組成は注入液のpHとゲル化時間に関係する水ガラスとコロイドの比率においてシリカの全濃度において、コロイドの比率が大きいほど中性領域に近くなり、水ガラスが大きいときは強酸性になる。また酸として硫酸とリン酸を併用すると水ガラスとリン酸の中和反応が硫酸に比べて緩やかなので、中性近くでゲルタイムの調整がしやすくなる。また中性付近で長いゲル化時間を適用しやすくなる。このためコロイドと水ガラスの比率、硫酸とリン酸の比率を調
整して、弱酸性〜中性付近でゲル化時間を調整しやすくでき、注入孔間隔を大きくして、広範囲を限定固結することができる。(請求項2、4、8)またリン酸の比率がおおきくな
るにつれコンクリートに対する保護効果が生ずる。上記において、複合シリカの場合、コロイドの全シリカ中の比率が10〜100%、リン酸の全酸(硫酸+リン酸)に対する比率は15〜100%を用いることができる。(請求項3、4、6、8)
【0062】
シリカグラウトのシリカは水ガラスを主剤とし、反応剤に硫酸を用いた場合に比べてシリカとしてコロイド分を増やして或いは酸としてリン酸又はリン酸の比率を増やして注入液のpHを中性方向に移行させる事ができ(
図30、
図31)(pH2.5〜5付近)、ほとんど中性に近いpH付近でゲル化する(
図9(b))。また地盤にCa分が多く含まれていたり、セメントが混入されているとGTsは大幅に短縮する(
図9(a)、
図10)。GTsは土中ゲルタイムであるが、地盤に注入している間に土中注入液のpH(pHs)が上昇するとゲルタイム(GTs)が短縮する(
図7、
図9(a)、
図10)。しかし酸性シリカ溶液で注入して固結した固結土のpHを
測定するとほとんど中性値を呈する(
図6、
図9(b))(請求項4〜5)。
【0063】
本発明における、最小シリカ濃度は0.4%である。シリカ濃度1%ではゲルそのものが自立する。0.4%ではゲルは自立しないが、シリカグラウト中のシリカの全量が析出する。
(表1)
従って、0.4〜3%の希薄なシリカ溶液を用いてその溶液中にマイクロバブルを混入すれば、マイクロバブルを含んだまま、土粒子間にシリカでマイクロバブルを吸着して固定するのでマイクロバブルが長期に亘って地表面に逸脱することがない。シリカ濃度が2%よ
りも低いシリカ溶液は固結目的のためには強度が低い。しかしマイクロバブルとの併用では有効である。マイクロバブル液は不飽和化工法として有効であることはすでに知られている。しかし長期的に気泡が空気中に逸出する可能性があった。これを防ぐため上記低濃度シリカ、2%より低濃度のシリカを含むマイクロバブル液はマイクロバブルをシリカで
地盤中に固定するだけでマイクロバブルの液状化防止機能を保持できる。この場合、シリカゲルだけでは強度が低く自立するのが難しい程の低強度の方がマイクロバブルの機能を発現できるので効果的である。(表1)(請求項1、2、7)。
【0064】
またシリカゲルが弱いため地震動に対してマイクロバブルが縮む機能を失うことなく過剰間隙水圧の上昇を低減して液状化を防ぐことができる。またこのような薄いシリカ溶液中に粉状シリカやベントナイト等の粉体(表6)を混入して粗い空隙を充填し、地下水の
影響を防ぎ、かつゲルの収縮を低減することができるので、経済的地盤改良が可能になる。また薄いシリカ溶液中にベントナイトとマイクロバブルを混入して注入すればマイクロバブルが逸出することなくベントナイトは強度が弱いので地震動に対してマイクロバブルが縮む機能が失われることなく液状化を防ぐことができる。またこのように薄いシリカ溶液は中性領域で長いゲル化時間をとる事ができるので環境上からもすぐれており、かつ粉体を混入して経済的に地盤を高密度化して液状化を防ぐことができる(請求項63)。
またシリカ濃度15〜30wt%のシリカコロイドはシリカの溶脱が無視できるほど小さくて耐久性並びに耐水圧性に優れているので岩盤注入の止水注入や廃棄物や有害物の封じ込めや液化ガスの貯溜等、耐水圧性止水ゾーンの構築に用いる事ができる。(
図32〜34、
図35(b)、
図36〜38、
図44(c)、
図49(c)、
図54(f)、
図55、
図56)(請求項3、6、7、16)
図38(a)、(b)によりシリカコロイド系グラウトとシリカゾル系グラウトの長期止水性の違いが判る。シリカコロイド系が経時的収縮がほとんどないのに比べ、シリカゾル系は収縮が大きいことから、固結性は持続するものの長期的にはゲルの収縮が大きくなるにつれて1000〜3000日の間に止水性が低減することが判る。このようにゲルの収縮が(コロイドを含有する活性シリカコロイド又は活性複合シリカグラウト)と(シリカゾルグラウト)の強度の低減と止水性の低減に影響し、表4の耐久レベル1、2と3の違いとなる。
【0065】
[注入領域外への逸脱を低減して所定の注入組成で注入目的に応じた地盤改良を可能にし
たシリカグラウト]
耐久シリカグラウトの耐久性が優れていても、耐久性地盤改良は多様な地盤条件において注入した地盤が耐久期間中耐久目的を満たす効果を持続することが要求される。本出願人は、以下に上記耐久シリカグラウトの特性を利用して所定の注入領域からの逸脱を低減しながら浸透固結性を得る地盤改良法を開発した。(請求項4〜8、17、18、22)
配合組成による逸脱防止を以下に説明する。
耐久性に優れた注入材を所定量地盤中に注入しても注入液が注入領域外へ脈状に割裂して逸脱したり(
図16(a))、下方に流下してしまっては耐久性地盤は形成されない(
図16(b))。所定の領域に注入が可能なためにはまず注入地盤が薬液注入の浸透可能な地盤でなくてはならない。
図1(a)(b)は液状化の可能性のある地盤であり、液状化対策工で薬液注
入する場合の対象となる。
図2は液状化対策で地盤改良を行った地盤である。土粒子間浸
透するには表2の地盤で
図2の土粒子間浸透注入領域、少なくとも浸透・割裂注入領域で土粒子間限界速度内の毎分注入量(注入速度)で、かつ上限圧力は注入地点の上載土量や建造物等の上裁荷重を考慮した注入圧を上限圧力として注入されなくてはならない。
【0066】
注入液が粗い土層を通して注入範囲外へ逸脱したり、注入速度が大きくて割裂して注入範囲外へ逸脱し続けた場合、
図16(a)のような現象が起こる。また所定注入量注入後にも
ゲル化に到っていなくて、かつ透水性の大きい地盤では下方に流下してしまい所定領域に固結していない現象が起こる(
図16(b))。このような場合、以下に本発明者による所定
領域への逸脱を低減して浸透固結するための注入液の流動特性と注入方式に対応したゲル化の挙動を示す配合液を注入することが必要である。
【0067】
このような目的を満たすための耐久シリカグラウトの流動ゲル化特性についての研究結果を以下に示す(表11、表12、
図3〜
図31、請求項1〜23)。
本出願人による室内実験並びに種々の注入方式を用いた現場試験による研究により、地盤に注入された非アルカリ性シリカ注入液のゲルタイムとその流動性の挙動は以下の事が判った。酸性シリカ溶液はpHの変化で急激に配合液のゲルタイムが変動する。しかも地中に入ると地盤のpHと反応成分と反応して注入中にpHが変動して、地中ゲルタイムが変動する(
図4、
図6、
図7、
図9、
図10、
図17〜
図28)。このために酸性シリカ溶液をゲルタイムで固結範囲を調整できることは実質的に不可能であることが判った。まして1.5〜4mとい
った広範囲な領域で所定の浸透固結は更に不可能である。このため本発明者は注入時間(H)、土中ゲル化時間(GTs
0)を基本にして配合液を設定する(GT
0)というコンセプトにより以下の手法によって注入した注入液が注入量に相当する固結体を形成することを可能にした。(請求項5〜9、17、18、22)
【0068】
(1)比較的均質な地盤:このような酸性領域のシリカグラウトのゲル化特性の研究の結果、均質な地盤では所定量注入すれば所定の注入液を注入した時点でゲル化していなくても注入液が地盤中で中性方向に移行し、遅かれ早かれその場所でゲル化する。これは酸性シリカ溶液がそれよりもpHが高い地盤中でゲル化が促進され、かつ酸性シリカ溶液中のシリカ分は例え地下水で希釈されても全量が確実に析出されるという特性を利用したものである(
図4、
図5、表1、
図17(a)、(e))(請求項5〜9、17)。
【0069】
(2)不均質な地盤の場合:地中におけるゲル化を進行させながら半ゲル状態で乗り越えながら浸透させることによって逸脱を防ぎながらシリカ濃度の希釈を押さえながら注入範囲を拡大できる(
図17(b)、(c)、(d))。これは酸性シリカ溶液が低濃度で長いゲル化時
間で確実にゲル化し、ゲルはアルカリ領域のゲルに比べてゲルそのものが弱いという特徴による。(請求項5〜8、17)
【0070】
以上より酸性シリカ溶液はゲル化を充分長く取りさえすれば、厳密なゲルタイムを設定しなくても中性側の地盤においても確実にゲル化するため地盤条件、施工条件に対応して
配合液のゲルタイムを設定すればよいことが判る。この目安は、確実に設定、或いは測定できる土中ゲル化時間(GTs
0)、注入時間(H)を基準に決めれば良い事が判った。実験
によって地盤条件、注入条件によって、H≧GTs
0、H≦GTs
0か適用され、地盤状況並びに施工法に応じてこれを併用すれば良いことが判った。以下、具体的に説明する。(請求項5
〜8、17)(表4、表11、表12、
図82〜84)
【0071】
(1)注入距離は通常仮設注入では1.0mであるが本設注入では大量注入による経済性の必要から通常1.5m以上に大きくとるため、1ステージ当りの注入量が大きくなり(表4、表11、表12、
図84)、土粒子間浸透の注入可能限界内の速度で注入すると(
図15)、注入速度は注入方式によって異なるが(
図82〜84)注入時間は長くなる(表11、12)。注入液と土との反応が進行して土中ゲル化時間が短縮する(
図6、
図7、
図9(a)、
図10)。一方、浸透距離が長くなるにつれ、注入液が地下水によって希釈されるとゲル化時間が延長して、強度が低下する傾向を生ずる(
図4、
図23〜
図27)という相反する現象が生ずる。
【0072】
(2)一般に地盤のpHは4.5〜8.5を呈し(
図9(a)、
図10)、非アルカリ性シリカグラウトの配合液のpH(
図3、
図4、
図6、
図7、
図9(a))よりもpHが高いため、注入液の土中ゲルタイムは促進される(
図6、
図7、
図9(a)、
図10)。
【0073】
(3)豊浦砂の場合、土のpHはほとんど中性付近にあるため、土中ゲルタイム(GT
S)は
薬液の気中ゲルタイム(GT
0)とほとんど変わらない(
図7の豊浦砂を参照)。また均質地盤では注入時間(H)と土中ゲル化時間(GT
S0)の差が少ない程、形状が所定の固結体に
なりやすい。
【0074】
(4)貝殻混じりの土ではCaが含まれるため、土中ゲルタイムは大幅に短縮する。
即ち土中ゲルタイムは土性によっても影響される(
図7、
図9(a)、
図10)。
【0075】
以上より確実に注入領域に浸透固結するには主として以下の手法を用いれば良い事が判った。
(a)一般に注入対象地盤はk=10
0〜10
5cm/secのオーダーにあり、特にk=a.10
-2〜b.10
-4cmで、pHが6〜8.5付近が主であり(表2、
図1、
図2)、まず土粒子間浸透可能な低注入
速度と限界圧力内(
図15)で注入しなくてはならない。配合液のpH(pH
0)が土のpHより
も酸性側の配合であると注入液の土中pH
0は上昇し、土中ゲル化時間(GT
S)は気中ゲル化時間(pH
0)よりも短縮する。また地盤にCa分や反応組成分が含まれていればゲル化時間
が短縮する。(請求項4〜8、17)
【0076】
(b)実際の地盤は均質ではないため、透水性の大きな粗い層や透水性の低い層が介在している場合がある。
透水性が大きかったり、不均質な地盤条件や地下水条件が影響する場合、注入液が対象領域から逸脱したり流下したり、注入液が地下水に薄まってゲルタイムが延びたりする場合がある(
図16(b))。本発明者の長年の研究の結果、酸性シリカグラウトは注入中にpH
が中性方向に移行してゲル化が進行する。酸性シリカ液を用いて不均質でかつ多様な地盤に対して、注入時間(H)よりも土中ゲル化時間(GT
S0)を短くしておくことにより、瞬
結≦GT
0≦10000分)(GT
0≧H≧GT
S0)とすると地下水による希釈や地盤の不均質性に関わらず半ゲル状になりながら脈状になることなく土粒子間浸透しながら固結領域が拡大していくことが判った。(請求項5、7、8)、(
図17(a)(b)(c)(d))
【0077】
これは酸性領域のシリカグラウトを土中ゲル化時間(GT
S0)よりも長い注入時間(H)
で注入するとpHが増大してゲル化時間が短縮して注入液がゲル化しかかった状態で注入領域内に保持されたままで注入範囲が拡大して所定領域を確実に固結できることが判った(
図17)。注入孔間隔を広く取るには、1ステージ当りの注入量が多量になる(表11、表12
)。多量の注入を注入対象外へ逸脱することなく所定領域に浸透固結させるためには1ス
テージ当りの注入時間を短くして、しかも浸透注入しなくてはならない。このため1ステ
ージ長を長くして短時間で土粒子間浸透せしめる方式が柱状浸透注入方式である。(
図82、
図83、表12)
一方、多点同時注入方式は1ステージ長を短くして1ステージ当たりの注入量を小さくして注入時間を短くする事ができる。(
図83(a)、
図84(b)、表12)
【0078】
(c)地盤条件が比較的均質な地盤では注入液のpHより中性側にあれば酸性シリカ注入材は所定量の注入が完了した時間でゲル化に至らなくても所定領域に保持されたままゲル化することが判った(GT
0>GTs
0>H)(表11、表12、
図17(e)、
図84(a))この場合、球状浸透でも柱状浸透でも
図11〜14の浸透理論にほぼ基いて浸透固結する。このような浸透固結性は非アルカリ性のシリカグラウトを用い、かつ土との相互反応によって生ずる、非アルカリ性シリカグラウトの流動特性とゲル化特性と施工法、注入孔ピッチ、点注入、柱状注入、多点注入に対応したステージ長、ステージ数、注入速度、注入時間と土中ゲル化時間と配合処方を効果的に組み合わせることにより、地盤中で先行している半ゲル状態のシリカグラウトを後続してくるシリカグラウトが外周部に押しやりながら或いはそれを乗り越えながら固結する現象を用いて所定領域で浸透、ゲル化させることができることが判った。(表12(b)、※2、※3)
※2、※3でGTs
0はHより小さいが、
図17(b)のように乗り越えながら固化する。
【0079】
図83(a),(b),(c)は
図84(d)の粒径分布の地盤で
図84(e)のように多様な土層からなる地
盤条件下で注入されたにもかかわらず、表12(b)の気中ゲルタイムGT
0と土中ゲルタイムGT
S0と注入時間Hによる注入によって所定の注入領域外へ逸脱することなく浸透固結するこ
とが判った。これはあたかも地上に噴出したマグマの温度が冷えるに従って流動性を失いながら次から次へ続くマグマがそれを乗り越えて広範囲に広がって固化する現象に似ている(
図17(b)、(c)、(d))
のでマグマアクション法と名付けている。以下表12を説明する。
【0080】
実施例を解析した結果例を表12に示す。これらから所定領域に浸透固結せしめるためには、気中ゲル化時間GT
0、土中ゲル化時間GTS
0、1ステージの注入時間又は1バッチの注入
時間をHとすると、地盤条件又は注入孔間隔または固結径、または注入方式に応じてまた
はさらに施工実績に基いて補正しながら配合液の組成と配合液のゲル化時間(GT
0)また
はpH
0を以下のように設定して所定注入領域に浸透固結せしめることができる(請求項18
)、
気中ゲルタイムGT
0=瞬結〜10000分、ただし、通常GT
0は10分〜10000分が望ましいが、一次注入として瞬結を用いる時は、二重管瞬結・緩結複合注入工法等により、先端部の注入管のまわりに合流注入で瞬結にしてパッカを形成してから二次注入する。
土中ゲルタイムGT
S0=10〜3000分(
図7ではGTs
0=10〜6000分程度であるが、ここでは10〜3000分とした)、GTs
0は通常、地盤条件にもよるが10〜3000分の範囲が好ましいが、
地盤のCa分が多い場合、あるいは不均質地盤で一次注入としてCB等を注入して地盤の均質化を図った場合、土中ゲルタイムGT
S0は10秒付近まで短縮することがある。
注入速度(毎分吐出量)=1〜30L/min
1ステージ長:1〜4m
1ステージ当りの注入量=132〜25600L
1ステージ当りの注入時間(H)=10000〜4.4分
土中ゲルタイム(GTso)=10〜3000分
従って
【0081】
【数1】
【0082】
土中ゲルタイム(GT
S0)と注入速度と1ステージ当りの注入量と1ステージ当りの注入時間(H)の関係を注入実績に基いて表12に示す。
表12において、1本あたりの受持面積を計算し易いように正方形とした。実際は
図81の
ように円形となるが実質的には殆ど変わらないものとする。
表12(a)は注入孔間隔と注入方式(表11、
図82、
図83)とステージ長と1ステージの注
入量と注入速度を定めることにより、点注入と柱状注入の場合の注入時間(H)を算出したものである。(注入率40%)
表12は実際の現場試験(
図84)において現場土を用いた室内試験(
図2、
図84(d)と現場注入試験における土粒子間浸透の限界内の注入速度(
図15)と注入方式(
図82、83)並びに施工後の耐久性や液状化強度も含めた長期注入効果の確認(
図85)を行い、所定の注入目的を達した施工データを示したものである。
1.注入液の組成(
図3、
図4気中pH:pHo、気中ゲルタイム:GTo)と注入液と現場採取土を混合したときの土中ゲルタイム(GTs0)と土中pH(pHso)
2.現場注入試験による浸透注入限界内の注入速度の設定(
図64)
3.注入方式とステージ長、毎分注入速度(毎分吐出量):表12(a)
4.1ステージ当たりの注入時間:H
5.表12(b)よりGTs0とHの関係を試験結果と実績データから、H/GTs0(又は GTs0/H)の範囲を算出する。
表12(b)より以下のことがわかる。
※1 H/GTs
0=0.45(GT s
0=2.2H)(
図84(a))
土中ゲルタイム(GTs
0)が注入時間より長くても(GTs
0>H)注入中にpHが中性側に移行して土中ゲルタイム(GTs
0)が短縮して注入が完了した後注入範囲外に逸脱することなく所定の領域に固化したと考えられる。
※2 H/(GTs
0)=1.44(GTs
0=0.69H)(
図84(c))
土中ゲルタイム(GTs
0)が注入時間より短くても(GTs
0<H)先行したゲル化しかかった注入液を乗り越えながら浸透することを繰り返して(マグマアクション)所定の注入量の注入が完了した時点で流動性を失うことにより、所定の注入範囲から逸脱することなく固結したものと思われる。
※3 H/GTs
0=1.13(GTs0=0.88H)(
図84(b))
説明は※2と同様
※4 H/GTso=0.34(GTso=2.9H)(
図17(e))
土中ゲルタイム(GTs
0)が注入時間の約3倍(GTs
0<H)の長さでも、土粒子間浸透範囲の注入速度で浸透させることによって、pHが中性方向に移行してゲル化が進行するため、注入後も注入液が所定領域に留まったままゲルタイムに到った時点で流動性が停止して固結したものと思われる。
表12(b)におけるHの範囲は、
0.34 GTs
0 ≦H≦1.46GTs
0
即ち、
GTs
0の範囲は0.69H≦GTs
0 ≦2.9Hにある。
また、
図28(b)には、
A=H/GTs
0=2.16、4.68、2.2の例が記載されており、従って
【数2】
となる。これらを含めれば、
0.21H≦GTs
0≦2.9H …式(1)
即ち
0.2H<GTs
0<3H …式(2)
の範囲で所定の注入領域に逸脱することなく所定の注入効果が得られ、かつ長期耐久性が得られる耐久シリカ地盤の構築が可能なことがわかる。
本発明ではこれらの注入目的を達した室内試験結果、現場採取土を用いた注入試験実績を合わせて、
土中ゲルタイムGTso=10〜3,000分(
図7)
注入速度(毎分吐出量)=1〜30L/min
1ステージ当りの注入量=132〜25,600L(表12(a))
ただし注入速度は限界注入速度内とする(
図15)
1ステージ当りの注入時間H=10,000分〜4.4分(表12(a))
(気中ゲル化時間は
図3、
図4より最大10000分。即ちGT
0≦10000で、かつH≦GT
0 である
から、H≦10000となる。)
従って、
【数1】
即ち
0.001H<GTs
0<1000H
より好ましくは、
0.2H<GTs
0<3H
の範囲になるように地盤条件、注入方式、注入孔間隔とGTs
0とHの関係が満たされるように、注入方式、注入孔間隔、ステージ長、配合処方を設定すればよいことが判った。
このように、この表12(a)より表12(b)のように注入目的を達したGTsoとHに関するデー
タに基づきGTsoとHの範囲を選定してそれに対応した注入方式とステージ長と注入時間を地盤条件、施工条件に応じて設定することにより逸脱を低減しながら注入目的を達する注入管理を行うことができる。
以上のようにして、土中ゲルタイム(GTso)と注入時間(H)に対応した注入液の配合
(pHo、GTo)を管理して注入目的に達することができる。
注入目的を達することができた土中ゲル化時間の実績を表12(b)並びに
図7に示す。この範囲からHとGT
S0の注入実績から目的を達することができ、適切な比率の範囲を知ること
ができる。
従って、適用する注入方式における注入孔間隔を1〜4m、1ステージ当たりの毎分吐出
量を1〜30L/min、1ステージ当たりのステージ長を1〜4mの範囲として注入時間Hと土中ゲル化時間の関係が〔数2〕或いは式(1)、式(2)の範囲にあるように注入方式と注入孔間隔と毎分吐出量とステージ長を設定すれば所定の注入領域から逸脱を低減しながら所定の改良効果が得られることが判る。
例えば表中、表12(b)の実験結果ではGTs
0=150分、200分であった場合、Hを0.5H<GTs
0<2Hの範囲で選定した場合の注入孔間隔、1ステージ長、注入方式、注入時間、毎分吐出量
を表12(a)から選定できる。即ち、GTs
0が150分の場合H:75〜300分、GTs
0が200分の場合H:100〜400分の範囲になる注入方式と注入設計を選定すればよい。
このように、この表12(a)より表12(b)のように注入目的を達したGTs
0とHに関するデー
タに基づきGTs
0とHの範囲を選定してそれに対応した注入方式とステージ長と注入時間を
地盤条件、施工条件に応じて設定することにより逸脱を低減しながら注入目的を達する注入管理を行うことができる。
以上のようにして、土中ゲルタイム(GTso)と注入時間(H)と注入設計に対応した注
入液の配合(pHo、GTo)を管理して注入目的に達することができる。
なお、上記において毎分吐出量は土粒子間浸透の限界速度(
図15)範囲内とする。
【0083】
特に注入材が対象範囲に逸脱したり、希釈されやすい地盤条件下では上記手法に加えて注入中に配合組成、即ちシリカ濃度、ゲル化時間を変化させる等、特に初期にシリカ濃度を高くして、pH(pH
0)を低くして、後期にシリカ濃度を薄くしpHを高くする等の手法(
図28、
図29(a))や一次注入を併用して地盤の均質化を測る手法が有用である(
図16(c),(d))。
また地盤状況に応じて上記(a)〜(c)を併用することもできる。(請求項8〜20)
【0084】
本出願人による研究からさらに以下の手法で対応すれば良いことが判った。
(イ)不均質な地盤条件下で或いは地下水の流動性の影響下において、懸濁液や粉状体(表6)や、石灰、石膏、カルシウムシリケート、粘土等の1次注入により、予め地盤を均等化してから上記のようにシリカ溶液のゲル化時間を設定することによって所定量注入した時点で注入したシリカグラウトが未だゲル化時間に到ってなくても、そのままほとんど位置を保って時間の経過と共にゲル化する(
図16(c)、(d)、表6)
【0085】
(ロ)逸脱しやすい地盤や空隙の大きい地盤では予めセメントベントナイトグラウトのようなアルカリ性懸濁液やベントナイトや水酸化マグネシウムのように弱アルカリ材、或いはホワイトカーボン等の中性のシリカ粉体を注入した上で上述したシリカ溶液のゲル化時間を設定して注入することができる。この場合も上記(イ)のような効果を生ずる(
図16(c),(d))。
【0086】
(ハ)注入孔間隔を広げることは固結体が地表面に逸脱しやすい事になり、又地表面へ達することにもなる。それを防ぐため地表面の注入孔間隔を密にすることによって逸脱を防ぐ事ができる(
図29(c))。また注入ステージを地表面近くのステージの注入を先行して
地表面への逸出を防ぐことができる。
【0087】
このように注入対象地盤に注入液が逸脱したり或いは注入後所定の注入領域に注入されても注入液のゲル化時間が長すぎて流下して所定領域に固結していなかったりする現象を防ぐためには以下のようにすればよいことが判った。(請求項7、8、17、18)
(1)注入速度が過大にならないよう土粒子間浸透の限界速度内並びに上裁荷重を上限とする圧力内で注入する(
図15の直線を呈する土粒子間浸透の注入限界内の注入速度の範囲)。
ここで、限界速度内とは、
図15の浸透注入領域と浸透・割裂注入領域内の少なくとも圧力低下を生じない領域内の浸透速度をいうが、直線領域の限界注入速度内が好ましい。
【0088】
(2)注入液の気中ゲル化時間(または地盤に注入前の注入液のゲル化時間)の配合設定(GTo)は適用する注入方式と地盤条件に対応した土中ゲル化時間(GTs)、特に初期土中ゲル化時間(GT
S0)と1ステージ又は1バッチ当りの注入量を注入する注入速度(q)、注
入時間(H)(或いは注入距離(L))を考慮して、ステージ長の設定、1ステージ当りの
注入量と毎分注入速度、1ステージ当りの注入時間を考慮した配合処方を用いて、注入中
或いは所定の注入量を注入した後、注入範囲外へ逸脱したり、或いは注入深度よりも下方に流下したりしないゲルタイム(GT
0)を設定する(表11、表12、
図82〜84)。
【0089】
(3)粗い土層、空隙の大きい土層や不均質な地盤、地下水流がある地盤等の地盤条件によっては注入液の1バッチ当りのゲルタイム又は合流液のゲルタイムは逸脱を防ぐゲルタ
イムを設定する。注入液の配合時の気中pH(pH
0)と気中ゲルタイム(GT
0)と土中pH(pH
S)、特に初期土中pH(pH
S0)、土中ゲルタイム(GT
S)、特に初期土中ゲルタイム(GT
S0)並びにその変化等と注入量と注入時間を考慮して定める。ここで初期土中pH
S0、初期
土中ゲルタイムGT
S0は現場の土と注入液を混合したとき又は土に浸透させた時の注入液のpHとゲルタイムをいう。
(4)上記(イ)、(ロ)、(ハ)(1)〜(3)を併用する。
【0090】
以上のように配合設定に当たって、土中ゲル化時間、特に土中ゲルタイム(GT
S0)を測定し、地盤状況に応じて注入時間H≧土中ゲルタイムGT
S0、又はH≦GT
S0又はH≧GTo、H≦GToのいずれか並びに又は併用して注入すれば良い。
【0091】
非アルカリ性シリカグラウトが所定の注入対象領域に留まって固結するためには注入ステージの設定、ステージ長の設定、地盤状況並びに注入方式に対応して注入配合液の気中ゲル化時間(GT
0)と土中ゲルタイム(GT
S、特に初期の土中ゲルタイムGT
S0)と地盤での注入中における土中ゲルタイム(GT
S)の変化と1ステージの注入量と毎分注入量(注入速度)と注入時間(H)と所定の注入が完了した時点に注入領域先端部の注入液が注入範囲
外への逸脱を低減する配合処方(GT
0)からなるシリカグラウトであることが耐久性地盤
改良に要求される注入材ということができる事が判った。(請求項6、8)
【0092】
また土中ゲルタイム(GT
S)、土中pH(pH
S)といっても、地盤中における変化は測定しにくいがで、注入液を現場土と混合した土中ゲルタイム(GT
S0)や土中pH(pH
S0)は測
定できるので配合液のpH(pH
0)やゲルタイム(GT
0)と共に基準として考えるのが好ましい。また
図18、
図19の装置を用いれば、GT
Sf、pH
Sfを計測でき、この値もGT
0やpH
0を設定するための基準に加える事ができる。
【0093】
しかし、地盤状況の不均質性、シリカ溶液の土との反応性、多様な土性を注入中における注入液の流動性の変化、注入液の希釈、注入方式、注入量と注入時間等を考えれば所定の注入範囲に確実に浸透固結するゲル化時間を一次的に設定するのは難しいのは当然である。
【0094】
このため本出願人は互いに関連する以下の要因を明らかにして所定領域に確実に浸透固結することを可能にした。
配合液のシリカ濃度とpHとゲル化時間については
図4、
図5、
図8、
図30、
図31より、地
盤中におけるサンドゲルのpHとゲル化時間並びにそれらの変化に関しては、
図6、
図7、
図9、
図10、
図23、
図24、
図26、
図27に固結地盤の強度並びに浸透長に対する強度変化に関
しては
図25、
図26、
図39、
図49〜56、
図57(c)、(d)、
図58、
図85に注入方式と注入方式と浸透固結方式による注入孔間隔、注入ステージ、ステージ長、注入速度、注入時間は
図11〜17、表11、表12、
図28に記載されている。
【0095】
なお、
図4、
図6、
図7に示す例より、土中ゲル化時間(GTS
0)と気中ゲル化時間(GT
0)の関係は地盤条件並びに注入材の濃度によって異なるがほぼ以下の範囲にあることが判った。(請求項5)
図4、
図7よりpH
0=1〜10で 気中GT
0=10000分(pH
0=2)に対して、土中GT
S0=40分(pH
0=2から土中pHsoはほぼ4.7付近に移行する)、また、GT
0=10分(pH
0=5.5)に対してGT
S0=10分(pHso=5.5)となる。しかし、Caの多い地盤ではGT
0が10000分に対し、GT
S0がほぼ10分となった(
図10)。
従ってGT
0とGT
S0の比は
【0096】
【数3】
図7より、GT
S0は通常6000分(数1は3000(0080)〜10分の範囲にあるが、Ca分が多かっ
たりセメント等が一次注入されていると短縮され、Gso=6000分〜10秒の範囲になる。(0080)
又
図7において、気中pHはpH
0=2〜5.5、気中ゲルタイムはGT
0=10000分〜10分の範囲にあり、土中pHはpHso=2〜5.5(
図26,27)、土中ゲルタイムはGTso =6000分〜10分の範囲
にある。又
図6においては、pH
0=2、GT
0=4000分の注入液が土に混合されてpHはpHso=4.5に移行してGTso =10分〜20分に短縮されている。又、瞬結注入で合流注入すれば気中ゲルタイムは
GT
0=10000分〜0.1分
の範囲となる。
以上より、通常 GT
0/Gsoは最大値が10000/10=1000、最小値が10/10=1の範囲にあるとみなせる。〔数3〕
【0097】
の範囲にある。
ただし、GTs
0 6000分〜10秒、GT
0=10000分〜0.1分である。(20℃として)
【0098】
以下に上記の詳細を説明する。1ステージ当りの所定量の注入を土粒子間浸透させた場
合の球状浸透と柱状浸透の推定計算結果例を
図11〜
図14に示す。注入が終わった時間(注入時間H)に、注入液のゲル化が生じていなくても注入液がその場所にそのまま保持され
ている条件下では注入液は更にpHが上昇するため時間と共にゲル化に到る。注入後の固結土のpHは最終的にほぼ中性領域を呈する(
図9(b))。
【0099】
しかし、注入後ゲル化に到らないで、かつ土が粗いならば注入液は流下して下層の透水性の悪い層に移行してゲル化するために所定の注入領域の固結は不十分になる(
図16(b)
)。
従って、非アルカリ性シリカグラウトの配合液のゲル化時間(GTo)の設定では注入液
のpH(pHo)、注入地盤のpHと含有Ca等の土性や透水性や地下水状況等の地盤条件、土中
ゲル化時間(GT
S0)と所定注入領域に注入する1ステージ当りの注入量と土粒子間浸透可
能な限界注入速度内の注入速度と注入時間(H)を考慮して注入完了後に注入液が流動し
にくい気中ゲル化時間(GTo)の設定が重要である。
また、所定範囲外へ逸脱を低減する注入配合液のpH(pH
0)とゲル化時間(GTo)の設定に当たっては、配合液のpHは土のpHよりも酸性側とし、又、土にCa分や反応剤が含まれている土中ゲル化時間は配合液のゲル化時間を土中ゲル化時間よりも長くする。注入時間(H)よりも土中ゲル化時間(GT
S0)が短くなる配合を用いる。
【0100】
図4〜
図31、表12より、このような場合、ステージ長の短縮化、並びに1バッチの量の少量化、或いは複数注入ステージの同時注入によって注入時間の短縮化することによって、気中ゲル化時間(GT
0)、或いは土中ゲル化時間(GT
S0)を短縮して短時間のうちに半ゲ
ル状態の押出、或いは乗り越えというマグマアクションを繰返して注入することができる。また
図28のように注入中にゲル化時間を変化させて広範囲に地盤中のpH並びに強度を均等化して注入することができる。(請求項5)
【0101】
以上より土中ゲル化時間の概念が重要となる事が判る。本発明者の研究によれば土中pHは注入中に注入距離が長くなるにつれて中性方向に変動する(
図23)。また地盤中の土との反応による中性方向への移行と地下水との希釈はシリカ濃度の低下とゲル化時間の延長を生ずることが判った。そこでここでは注入液を現場砂と混ぜた場合のゲルタイムによるゲル化時間を初期土中ゲルタイム(GT
S0)と称するものとした。ゲルタイムの測定方法は容器中でシリカグラウトと土を混合して上澄み液のpHとゲル化時間を注入液の土中pHと土中ゲルタイム(GT
S0)としても良いし、容器中の土にシリカグラウトを充填して針を突き刺して孔が空いたままの時点をゲル化時間としてもよい。配合液のpH(pH
0とする)を測
定して、容器中に現場砂をとりシリカ液に浸してゲルタイムを測定したゲル化時間を初期土中ゲルタイム(GTso)とすると通常GTo≧GTsoとなる。
【0102】
地盤中に注入されたシリカグラウトの注入孔地点から浸透した距離の間で酸性シリカグラウトは土との中和作用でpHが中性方向に移行し(pHs)(
図23)、注入液の先端部の注
入液のゲルタイムは短縮されてゲル化しかかるが引き続いて浸透してくる注入液は先の注入液と土との中和反応後を浸透するため注入液のpHは長いままで先行したゲル化しかかった膜(
図17)を押し破って外側に浸透してはじめて新たに中和作用が生じpHが上昇してゲル化時間が短縮してゲル化しかかった膜を生ずるが同じような経過を繰り返してゲル化しながら所定領域を固結する(
図17)。このため所定の注入領域で逸脱することなく所定領域に保持されてそのまま固結する。このようにゲル化しかかった状態で浸透していくと注入長が長くても地下水で希釈されにくいことが判った。
【0103】
またH=αGT
S0、H=βGT
0とし、1ステージの注入時間または1バッチの注入時間をHとし、α、βは地盤条件または注入孔間隔又は注入方式に応じて、またはさらに施工実績に基づいて補正しながら、配合液の組成とゲル化時間(GT
0)又はpH
0を設定して、所定の注入領域に浸透固結せしめることができる(請求項18)。このようにGT
0≧H≧GT
S0を満たすゲル化時間の設定は空隙が大きかったり透水性の大きな層が介在したり、地下水が流動していたり注入管まわりのパッカが不十分だったりした場合にも効果的であることが判った。
【0104】
更に本発明者は所定量注入した時点で所定の浸透固結体が形成される配合液pH(pH
0)
と所定の注入長を浸透して固結する土中pHの関係を知るための実験を行った。所定の注入量を注入した時点でも注入液の浸透の先端部のゲル化時間の短縮が少なく、所定量注入した後、ゲル化に到るまでの時間が充分長かったりすると、注入液は逸脱したり、下方に流下したり注入管まわりから地表面に逸脱するする恐れが生ずる(
図16(b))。従って、注
入液の気中ゲル化時間GToが所定量注入した時点、或いは所定距離(R)浸透した時点(pHsf、GTsf)でゲル化するか或いはその後短時間のうちにゲル化すれば注入範囲外へ逸脱することがない。
【0105】
図18〜
図22に試験方法の例を示す。
図18、
図19、
図21を用いて固結半径(又は注入孔間隔×1/2)Rに対応した長さL又はγLの注入パイプに現場砂を充填して間隙水を充填して後、シリカグラウトを注入して注入長Rの浸透注入をして注入パイプの上端から間隙水を排
出した後、間隙水と注入液が混ざった排出し、その後も注入し続けると注入液そのものが排出される(
図24)。間隙水が排出した時点で注入を止めて放置しておけばそのままゲル化が生じて固結体が形成される。
図25は固結柱を10cmごとに切断して強度分布を調べたものである。浸透距離と共に強度が低下するのは水による希釈と考えられる。
浸透長Lのパイプを用いた注入試験によって、現場採取土を用いて、配合液の組成とゲ
ル化時間(GT
0)又はpH(pH
0)と土中ゲル化時間(GT
S0)又は土中pH(pH
S0)と浸透長L
を通過後の土中ゲル化時間(GT
Sf)又は土中pH(pH
Sf)の関係を知ることができる。この関係を、土中ゲル化時間GT
S0をベースにして、以下のようにして現場ごとにデータを集積することができる。
A=GT
Sf/GT
S0、B=pH
Sf/pH
S0、C=pH
0/pH
S0
α=GT
0/GT
S0、β=H/GT
S0
ここではHは室内浸透試験ではL(
図18)の浸透時間であり、現場では1ステージの注入時
間であって、固結径=Lの1/2又は注入孔間隔の1/2の注入時間に相当する。室内試験では
注入長Lのパイプに現場土を現場密度で充填して間隙水で充填した土とシリカ注入液を注
入して、注入液が溢出してきた時点の注入液のゲルタイムをGT
Sf、pHをpH
Sfとし、その浸透時間をHとする。或いは実施工における注入時間をHとする。実際の施工においては上記A、B、C、α、βは地盤条件、注入孔間隔または固結径、注入時間、施工法によって室内
注入試験とは異なるが、実施工における施工データ(表12)と注入後の効果の確認(
図29
、
図81)を加味して、上記A、B、C、α、βのデータを集積して適切な値を選定すること
ができる。本発明者の研究では地盤条件、施工条件に応じて、
β=H/GT
S0=1000〜0.001 (ここで、Hは実施工における注入時間である)
の範囲になりうることが判った。(表12、
図17)、(0080)
【0106】
溢出した注入液のpH(pHsf)を測定し(
図24)、そのゲル化時間を測定し(GTsf)、その後ゲル化がすぐ起きるか或いは現場砂中のゲル化時間を測定して短時間のうちにゲル化するような配合液のゲル化時間(GTo)を設定するができる。この場合、
図18のあふれ出
た注入液のゲル化時間(GTsf)がbGT
S0≦GTsf≦aGTsoの範囲内で地盤状況に合わせて配合液のゲルタイムを設定すれば確実に所定領域に注入液を留めてゲル化させることができる。この範囲のGT
Sfを呈する注入材が更に新しく地盤に浸透すればpHが上昇し、確実にゲル化するためのa並びにbを地盤状況や注入方式や注入状況によって定めれば良いし、また施工実績によるデータに基いて修正しながら定めれば良い。
例えば0≦GT
Sf≦cGT
S0と設定すると、c=1ならば、GT
Sf=GT
S0となり、注入長Lの注入
が終わった時点でもGT
S0に相当する流動性はあることになるが注入固結体は互いにオーバーラップして一体になることを考えれば(
図80(b)、表12(b)※1、
図82)、GT
S0の限度な
らば問題ないと考えて良い。cは地盤条件、注入条件に応じて、また注入後の浸透固結状
況の調整から経験値を加味して修正していけば良い。また上記注入試験は一次元注入試験であり、実際には三次元で行われるわけであるので、実際の注入時間Hは三次元注入のた
め(
図11〜14、
図17、
図22、
図28、
図29)、一次元注入の注入時間Hよりもずっと長く、
従って長い時間ゆっくりと土と反応して拡大していく(γLに対応するとみなす)のであ
るから一概にcの幅を定める事ができない。しかし目安としてγLに対する試験値を得る
ことができるのであるから、GT
0、pH
0、GT
S0、pH
S0、GT
Sf、pH
SfとγLに対するHを測定しておき、γは一次元注入のLに対する三次元注入における係数として実際の現場の注入に
おける浸透固結効果のデータと対応させることにより、地盤条件、施工条件、注入材の条件に対応した数値を把握して注入領域に確実に浸透固結するcやB、Aを得ることができる。これらの点を目安にして、計算値のみならず経験値も加えて、b、a、c、α、β、γを設定していけばよい。
【0107】
また現場における試験注入と、その後のサンプリングによるシリカ濃度の測定によって所定の改良効果によってシリカグラウトの注入方式を加味した配合設定の正しさを確認することができる(
図29(b)、
図58)。地盤条件と注入方式に対応して適切に配合設定する
ことにより、また所定注入ステージに所定の注入量が所定の注入速度で注入されていれば、注入量完了時にゲル化していなくても、そのまま放置しておけば時間の経過と共にゲル化して固化する(表12、※
1、※
4、
図84(a))。このような現象は地盤が比較的均質で透
水性も10
-2〜10
-4cm /secのオーダー付近で注入後注入液が所定領域に保持されていれば
注入液のpHが増大してゲル化する場合に起こる。
【0108】
また空隙の大きい地盤や不均質な地盤状況や或いは地下水によって注入液の希釈が大きいと予想される場合によっては数秒〜5分の短いゲル化時間で注入することが好ましい場
合もある。
【0109】
所定量の注入における注入時間と土中ゲル化時間がほぼ同じ場合、或いは注入後もゲル化時間にいたらないが注入液の所定量を地盤中に注入後、注入液が移動しない地盤条件でゲル化時間に到った時にゲル化する場合、Maagの浸透理論に準ずる状況で球状浸透する(
図11、12、13)。その場合、注入範囲外に逸脱する可能性が少なくなる。注入孔間隔を広くとり1ステージで広範囲に注入するには1ステージ当たりの注入量を多くしなくてはならないため、
図15の限界注入速度内で注入するには、1ステージ当りの注入量を1バッチ(通常100L〜400L)で送りきれないことが生ずる。
【0110】
一般に非アルカリ性領域の注入材、特に酸性領域の注入材を大量に注入する限り、1ス
テージ当り数バッチも必要なため1ステージの注入時間(H)は1バッチの注入時間(H)よりも長くなるのが普通である。従って、この場合は1ステージ当たりの注入量を複数のバ
ッチ数で行えば1バッチの注入量の注入時間を土中ゲル化時間の注入時間よりも短時間に
行うことができるし、或いは土中ゲル化時間より長く取ることもできる。地盤状況や注入孔間隔によって、いずれの選択も可能である。
【0111】
また先行する注入液が土中ゲル化時間経過後ゲル化しかかっても、後続するゲル化時間の長いグラウトがゲル化しかかった膜を破って外側に広がって土中ゲル化時間の経過と共に固結することになる(
図17)。このように1ステージ当りの注入量、1バッチ当りの注入量と注入時間とバッチ数、注入速度、土中ゲル化時間(GT
S0とGT
S)、気中ゲル化時間(GT
0)、所定量注入した時点の注入時間(H)と注入液のpH(pH
0とpH
S)等によって、配合
時の組成とゲル化時間(GT
0)を決めることにより所定の注入領域に浸透固結させること
ができる。
この場合、1ステージ当たり或いは1バッチ当りのの注入時間はH≦GTso、或いはH≧GTsoとすることができる(表12)。
【0112】
このようなゲル化時間(GT
0)の設定は通常の地盤は勿論、注入液が逸脱しやすい地盤
や地下水の流動している地盤への注入に対応して設定することができる。特に地盤条件が悪くて注入液のpHと土中ゲル化時間の調整のみで所定注入領域に所定の強度の浸透固結が困難な場合は1ステージの注入過程中でこれらを注入状況に応じてゲルタイムやシリカ濃
度を変えて、またH≧GT
S0、H≦GT
S0、GT
0<Hとして併用する事ができる。(請求項5、6、7、15)
【0113】
上記において、注入時間(H)は1ステージ当りの注入量Q(又は1バッチの注入量)を土粒子間浸透の範囲の注入速度(毎分注入量q)で割った時間Q/q=Hを算出することを基本
とする。
【0114】
図18の一次元注入の場合、ゲル化時間GToが浸透時間(H)より短ければ円筒パイプで注入すればL長の浸透が終わらないうちに注入液は途中でゲル化して浸透は停止するが実際
、注入液は浸透範囲を拡大しながら浸透して(
図22)、三次元的に球状浸透して注入先端部の範囲が球の表面積のように拡大していくので(
図11、
図12、
図13、
図14)、
図17のように土中ゲル化時間(GTs
0)よりも注入時間が長くてもゲル化しかかった先端表面部を乗り越えて、或いはゲル化しかかった注入液を外周方向に押しやりながら浸透固結していく。(請求項8)
【0115】
この現象は、地上に噴出したマグマが冷えると共に流動性を失い後続するマグマがそれを乗り越えて固化しながら広範囲に固結するのと同様である。このようにゲル化時間(GTo)或いは並びにシリカ濃度を状況に合わせて設定することにより大きな注入孔間隔で逸
脱しにくく、かつ地下水に薄まりにくく、確実に広範囲を固化せしめる事ができる(
図17(d)、
図85(b))。このため浸透距離に対応した強度低下は少なく、地下水による希釈が少ないことが判った。そのため、その指標として、注入速度、注入時間、気中ゲル化時間、土中ゲル化時間(GT
S0)を地盤条件に応じて適切に設定することになる。また
図17(e)は
均質地盤における固結の形状を示す。この場合、表12(a)※4に示すようにH/ GT
S0=0.34
となっており、所定量の注入が終わった時点では土中ゲルタイム(GT
S0)に達しない例である。しかし実際には注入液の先端部では注入液はpH
S0よりも中性方向に移行し(
図23)、GT
S0よりもGT
SfはGT
S0よりも短縮していると考えられ、注入の完了と共に、或いは注入完了後、急速にゲル化して図のように球状に固結したと考えられる。
【0116】
シリカ濃度の希釈の影響に関しては、
図4、
図18、
図19、
図23〜
図27からその傾向を知
ることができる。
図18の装置(L=1.5m)を用いて、シリカ濃度5%の注入液のpHとゲルタイムがGT
0=1000分、pH
0=3.5の注入液をL=1.5m注入して間隙水が溢出したあとに、溢出した注入液のpHfとGTfを測定した(
図24)。溢出液のpHが6.6、ゲルタイムか1分30秒となった場合は、
図4(a)点から
図4(b)点に移ったことになり、シリカ濃度はほぼ5%で殆
ど希釈がないことが判る。
【0117】
また同じく溢出液がpHが6でゲルタイム7分だと、
図4(a)点から
図4(c)点に移ったことになり、地下水で希釈されて、シリカ濃度が4%になったことがわかる。また地下水が多
くて希釈されやすい地盤条件下でシリカ濃度5%の強度を保持したい場合は、
図4の(d)
点配合(シリカ濃度10%)を注入して、間隙水が溢出してのち
図4の(b)点の配合が溢出してきたら5%のシリカ濃度が確保されたことが判る。また
図4の(a)点の配合を注入し
ていたところ、地表面に漏出した注入液のpHとゲルタイムを測定して(e)点だったなら
ばシリカ濃度が地下水で0.5%濃度に薄まっていることが判る。上記において、pH測定の
かわりに、伝導率を測定することもできる(
図74)。
【0118】
以上述べたように、所定の注入領域に確実に注入液が保持されて浸透固結するには、
(1)注入速度と注入圧が適切に行われること
(2)気中ゲル化時間(GTo)
(3)地盤状況(地盤のpH、Ca含有量、粒度、透水係数、地下水状況等)
(4)土中ゲル化時間(GT
S0)
(5)各注入方式に対応したステージ長と注入速度とステージ当りの注入量と注入時間
を考慮して配合したグラウトを注入しなくてはならない。(請求項23)
【0119】
以上より所定の注入領域に確実に浸透固結させるには配合液のpH
0とゲルタイム(GT
0)と土中ゲル化時間(GT
S0)と注入時間(H)を地盤状況並びに注入方式によって設定する
。特にGT
S0≧H又はGT
S0≦Hのいずれか或いはその組み合わせが必要である。
【0120】
また地盤条件、注入条件によっては、注入初期には前者の方法(H≧GT
S0でシリカ濃度
を高く、pH
0を低く)で後期に後者の方法(H≦GT
S0でシリカ濃度を低く、pH
0を高く)に
よる場合もある(請求項14)。又二重管を用いてA液にはシリカ溶液(或いはシリカ溶液+酸)をB液には反応剤溶液(或いはシリカ溶液)を、或いはA液に1液式のシリカと反応剤
の混合液をB液に促進剤を用いて合流注入しても良いし、また合流注入後、1液式のA液の
注入に切り替えてもよい(二重管瞬結・緩結複合注入工法)。この場合、土中ゲル化時間(GTso)より短いゲル化時間の配合液(GTo)の注入も容易である。
【0121】
多数の施工実績から以下の注入条件で所定の領域に浸透固結することが確認出来た。表11、表12、
図82〜83の注入方式を用いて、シリカ濃度を0.4〜40%とし、1ステージ当たりの毎分吐出量を1〜30L/minとし、1ステージ当たりのステージ長を33cm〜4mとし、注入ポ
イントは1点注入から多点注入並びに柱状注入とし、ゲルタイムが瞬結(10秒以内)から10000分(或いは0.1分〜10000分)とし、注入孔間隔1〜4mとして本発明を実施することができる。(請求項8)
【0122】
図84(a)の写真は
図82(c)の柱状浸透方式による固結形状を示し、
図84(c)は
図83(b)の固結の形状を示し、
図84(b)の写真は
図83(a)の注入方式による固結の形状を示す。また
図85は13年前に施工した固結地盤の
図84(a)並びに
図84(b)における固結土のコアサンプリングによる経日強度を示す。以上の野外実験により所定の注入領域に注入材が逸脱することなく浸透固結し、かつ所定の強度(100MN/m
2)以上の強度が13年以上持続して所定の値以
上に収束していることが判った。また平成11(1999)年に野外注入試験を行った地盤(
図84(a))から採取した改良土の不攪乱試料による液状化強度試験と東日本大震災(2011年3月)後の平成23(2011)年9月に採取した改良土の不攪乱試料の液状化強度試験を行い比
較した。東日本大震災以降に採取した12年目のコアの液状化強度は、いずれの濃度においても注入後3年目(2002年)に実施した結果より強くなる傾向を示していた。これは、3年目以降も若干ではあるが増加する傾向を示し、大地震後も液状化強度が劣化していないことが判った(
図85(b))
【0123】
(1)気中ゲルタイム(GT
0)と土中ゲルタイム(GT
S0)
本発明者の実験より
図4の気中ゲルタイム(GT
0)と土中ゲルタイム(GT
S0)は、
図6、
図7、
図9(a)、
図10の例も含めて、pH
0=1〜10の範囲でGT
0:10000分〜0.1分の範囲でGT
S0は通常6000分〜10分の範囲にあるが、Ca分が多かったり、セメント等が1次注入されてい
ると6000〜10秒の範囲にあることが判った。α=GT
0/GT
S0は
図6〜
図10より以下の範囲にある。
又、GT
0=10分の場合GTsoはほぼ10分或いはGT
0が短い程GTsoはほぼ同様になる。或いはGTsoはGT
0よりも長くはならないからGT
0/GT
S0の最小値は1となる。
【0124】
【数4】
【0125】
図7、
図9、
図10より、Ca分が多い土では、土中ゲルタイムは大幅に短縮する。しかし、pH
0を低くして
図17の作用によって注入領域を拡大し、所定量注入するとその時点で固結
する。
以下に本発明の所定領域に浸透固結するための注入条件の具体例を表12(a)(b)、
図4、
図7、
図9、
図10、
図28の例を含めて以下に示す。
【0126】
(例1)
注入孔間隔又は固結径L=1.0〜4.0m(表12(a))
毎分注入速度q=1〜30L/minただし、限界注入速度内とする。
1ステージ長:0.33m〜4.0m(表12(a))
1ステージ当たりの注入時間H 4.4〜10000分(表12(a))
ただし、注入時間(H)は現場の作業性や工期も考慮して選定すれば良い。
気中ゲル化時間 GT
0 瞬結〜10000分、好ましくは3分〜10000分
pH(pH
0) 1.5〜10
シリカ濃度 0.4〜40%(重量%)
土中ゲルタイム GT
S0 10秒〜3000分、または10分〜6000分(
図6、
図7)
土中pH(pH
S0)=3〜10(
図9、
図10)
地盤 a×10
0〜b×10
-4cm/sec(表2)
地盤のpH 4〜10(
図9、
図10)
地盤のpHの上限10までの中性以上のpHはCa分の多い地盤やCBを一次注入した地盤である。
【0127】
【数5】
(表12(b)、
図6、
図7、
図9(a))
【0128】
【数6】
好ましくは、
β=4.68〜0.34 (0143)より
即ち
0.2H<GTso<3H(0144)より
【0129】
(2)ステージ数、ステージ長と1ステージ内の吐出口数並びに注入配合液のpHとゲルタイムとシリカ濃度は、適用する注入方法に対応した毎分注入速度、全注入量(又は1ステ
ージ注入量)全注入時間(又は1ステージ注入時間)、土中ゲルタイム、初期土中ゲルタ
イム(GTs
0)と所定土中浸透距離浸透後の土中ゲルタイム(GTsf)並びに地盤の均質化並びに地下水影響低減処理を考慮して上記(1)の範囲から設定する。(表12(a))
【0130】
(3)注入方式の例を
図60、
図61、
図82〜84に示す。
(4)注入固結径と注入量と注入速度と注入時間の例を表11、表12、
図28、
図80に示す。
ここで、注入孔間隔を最大4m、間隔率40%、間隙充填率100%とし、注入率40%とすると、1注入吐出口からの1ステージ当りの注入固結土量=4/3×π×r
3=33.5m
3(r=2.0m)(
図80)
【0131】
1注入吐出口からの1ステージ当りの注入量=33.5m
3×0.4=13,400L、ただし1ステー
ジの注入注入長を4mとしているが1ステージ当りの注入長を2mとし、簡便に注入長4mを2分割して注入するとすると1ステージ当りの注入量は約13,400÷2=6700Lとなる(実際には
円柱状に固結する)。
【0132】
所定領域に浸透固結する土粒子間限界注入速度(
図15)の毎分吐出量を1L/min(点注入、
図11、
図12)〜25L/min(柱状注入、
図14)とすると1ステージ当りの注入時間は6700÷(1〜25)=6700〜268分=111.7時間〜4.5時間=4.7日〜4.5時間 。なお、1ステージの注入長を4mとし、柱状注入で25L/minとすると注入時間は13400L÷25=536分=22時間となる。
【0133】
これより、配合液のゲル化時間を1ステージ当りの注入量の注入時間とすると最大6700
〜536分とすればよい。但し、実際の1ステージ長は注入方式によって異なり(表11、表12、
図82〜83)、例えば点注入による32箇所同時注入方式の例(
図60、
図83)は1注入ポイ
ントからの注入速度は1〜8L/minが多く用いられる、柱状浸透方式で1ステージ当たり10〜30L/minが多く用いられる(
図82(c),(d)、
図83(b)。またダブルパッカ工法では5〜20L/minが多く用いられる(
図82(a))。
【0134】
さらに適用注入方式によって、ステージ長注入速度を地盤条件に対応し、注入速度、注入時間を設定が異なる(表11)これらの設定に対応して所定領域に確実に浸透固結する注入液の設定がなされる。このように、耐久シリカグラウトは地盤条件と注入方法に対応して所定の耐久強度を得られるシリカ濃度と配合処方と所定の注入領域に土粒子間浸透の限界速度範囲で浸透固結させるためのゲル化特性を有する注入材でなくてはならない。
【0135】
(5)表12に注入方式による注入孔間隔、1ステージ長、1本当りの受持面積(ここでは計算しやすいように正方形とした)、1ステージ受持土量、1ステージ当りの注入量、注入時間について点注入と柱状注入の注入速度別の例を示す。
【0136】
(6)地下水による影響を受けやすい地盤について、注入過程中でゲルタイム、シリカ濃度を考慮して固結強度と固結地盤のpHの均等化をはかる例を
図28に示す。
【0137】
(例1)以下に表12を例にして説明する。
点注入:同時注入施工の例(
図60、
図83(a)参照)
表12(a)で注入孔間隔1.5m、1ステージ長0.5m、毎分注入速度1L/min、1本当りの受持土
量1.13m
3を固結する場合、1ステージ当りの注入量は452L、注入時間Hは452分かかる。1.5mの注入長を0.5mずつ3点同時注入すれば合計1350Lを452分で注入できる。
すなわち、注入ステージ1.5mとし、1点注入1L/分で1350Lを1350分で注入すると同じ注入を452分で注入できることになる。
1ステージ当りの注入時間を短くすればゲル化時間を短くpHを中性付近になりやすくな
り強度は大きくなるという利点が生ずる。
注入液としては、
図4でシリカ濃度5%、pH
0=3.0、GT
0=3000分で、注入速度1L/min、
土中ゲル化時間GT
S0=200分、土中pH
S0=4.5、H=452分とすると、
【0138】
【数7】
【数8】
(〔数1〕〔数4〕、式(2)の範囲に入る)
【0139】
となる。
この注入液は1.5m/3の注入長(0.5m)を452分かけて浸透している間にpHが上昇して
ゲル化時間が短縮しながら
図17の現象を生じながら所定領域に確実に浸透固結する(固結例
図84(b)、表12)。
【0140】
柱状注入方式の例(
図82(c)、
図83(b)並びに
図84(c))
表12で注入孔間隔4.0、1ステージ長2.0m、毎分注入速度25L、注入時間512分、注入液としては
図4でシリカ濃度6%、pH
0=3.0、GT
0=1000分とすると、
土中ゲル化時間 GT
S0=150分
土中pHS0=3.7であった。
【0141】
【数9】
【数10】
(〔数1〕、〔数4〕、式(2)の範囲に入る)
【0142】
この注入液は4.0m/2の注入長(2m)を512分かけて浸透している間にpHが上昇して
図17の現象を生じながらゲル化を生じながら注入範囲を拡大して所定領域に浸透固結する固
結例である。
【0143】
図28より、
【数11】
また表12(b)より
【数12】
以上を合わせると、
【数13】
即ち、
β=4.68〜0.34
【0144】
従って、
2.94H > GTs
0 > 0.21H
即ち、
3H > GT s
0 > 0.2H
の範囲にあることが判った。
【0145】
(例2)
以下は地盤が不均質で或いは地下水条件で注入液が逸脱しやすい場合、地下水で希釈されやすい可能性があるときの例である。(請求項5)
そこで、注入地盤を薬液吐出口から
図28のように3つの領域に分け、それぞれの領域ご
とに薬液の配合及び注入を行った。
図28(a)に示す注入地盤の1ステージ当りの断面を
図28(b)に示す。注入孔を4m間隔で埋設した場合、注入管から吐出される薬液の浸透距離は2mとなる(
図29(a)実際には
図29(b)或いは
図81のようにダブるように配置される)。
この注入領域で、注入範囲外に逸出することなく、各領域とも注入後1日程度で固結し
、固結体の一軸圧縮強度をほぼ均一化して約0.1MN/m
2になるように薬液を配合する。
【0146】
注入管の吐出口から遠く、外周部0.6mの地盤を領域(3)とする。従来この領域にお
いては、初期に注入した薬液が地盤中の水、及び現地盤との反応によって薬液が中性化し、また、一方で地盤中の水によりシリカ分が希釈され固結した地盤の強度が低下や未固結等の問題点がある。そこで、現場砂を使用した浸透試験の2.0mの実験結果を考慮した注
入を行う。
図28(b)において、注入領域(3)の注入に当ってはシリカ濃度を高くして6%、pH
0を
低くして注入する。
【0147】
吐出口から離れた0.6mの領域(2)においては初期に注入した薬液により地盤のアル
カリ分が中和され希釈が少ない。後続するシリカのpHは上昇が低減されゲル化時間の短縮が低減する。このためシリカ濃度は5%とする。吐出口付近の領域(1)においては先に
注入した薬液により地盤中は中性からほぼホモゲルのpHに近づき、又、希釈も殆どない。従ってpH
0は中性近くにしてGT
0は短くする。
【0148】
以下、具体的な注入方法及び、薬液の配合方法を記す。(
図28(b))
実際の注入においては各改良領域における薬液の注入時間を管理することで、各領域毎に薬液の配合を変えて注入することができる。
薬液注入時間の算出は次のように行った。
〔各段階における注入時間の算出〕
1. 注入管の埋設間隔 4m
2. 注入体積 固結体P=2m×2m×2m×4/3π=33.49(m
3)の球体とする
【0149】
1ステージ当りの注入長並びに毎分吐出量は例1に示すように注入方式によって定めるものとするが、ここでは直径4mの球状固結体を得るものとし、1ステージ長2mとし、毎分注入速度8L/minとする。
【0150】
注入方式としては、表11のダブルパッカ工法の点注入とする。
図82(c),(d)、
図83(b)の注入方式でも良い。他の注入方式を用いる場合、表12のように、配合ゲルタイムとシリカ濃度、注入方式によって最適のステージ長を定め、注入速度、注入時間、土中ゲル化時間を設定すればよい。
注入方式によっては1ステージ長を以下のようにすることができ、それぞれの1ステージ当りの注入速度は例1に準じて定めることができる。
【0151】
点注入、多点注入 0.33m、0.5m、1.0m、1.5m、2.0m
エキスパッカ工法 0.5m、 1.0m、1.5m、2.0m、3.0m、4.0m
【0152】
3. 領域(1)の改良土量(m
3) V(1)=0.8m×0.8m×0.8m×4/3π=2.14
4. 領域(2)の改良土量(m
3) V(2)=1.4m×1.4m×1.4m×4/3π)V(1)=9.35
5. 領域(3)の改良土量(m
3) V(3)=(2m×2m×2m×4/3π)−(1.4m×1.4
m×1.4.m×4/3π)=22.00
6. 注入率 0.35〜0.40
7. 領域(1)の薬液の注入量(kl) Q(1)=V(1)×0.35〜0.40=0.75〜0.86
8. 領域(2)の薬液の注入量(kl) Q(2)=V(2)×0.35〜0.40=3.27〜3.74
9. 領域(3)の薬液の注入量(kl) Q(3)=V(3)×0.35〜0.40=7.70〜8.80
10.注入速度 8(l/min)
11.領域(1)の注入時間(min) T(1)=Q(1)/注入速度=93.75〜107.5
12.領域(2)の注入時間(min) T(2) = Q(2)/注入速度=408.75〜467.5
13.領域(3)の注入時間(min) T(3)=Q(3)/注入速度=962.5〜1100
【0153】
算出した注入時間より、3段階に注入する薬液の配合例を表12に示す。また、注入1日後に各領域の固結体をサンプリングし、一軸圧縮強度およびpHを測定した。
【0154】
上記で、領域(1)に注入する配合は、地盤中に先行した注入液によるシリカ分子が多量に存在することからシリカ濃度4%と比較的濃度を低く設定し、pHも4〜4.5と高めに設定する。この配合は通常ホモゲルの状態では表4の示すとおり200〜300分程度のゲルタイムであるが、地盤中では、前段階の薬液によりpHが下がっていることより500分程度
のゲルタイムを要するものと考えられる。
【0155】
[耐久地盤改良工法と注入管理]
上述したように、所定領域に逸脱することなく浸透固結させるためには上述したようなpHとシリカ濃度の関係、注入目的と注入方式に対応した配合液の組成と濃度と注入液のゲルタイムと土中ゲルタイムと注入速度と注入時間を設定することになるが、地盤と土性の多様性と注入液の流動特性と注入液の土との化学反応を考慮すれば一次的にゲルタイムを設定することは困難なので一次注入による地盤の均質化と注入地盤を酸性シリカグラウトが注入された後、所定領域に流下しにくい透水係数の地盤にするための一次注入による粗詰注入による地盤の均質化と過大な透水性の低下を行う手法を併用する等(
図16)、上述した注入前の試験と注入液の設計と注入中の注入液の流動に関する管理(
図60〜78)とともに注入後のサンプリングによるシリカ濃度を分析して(
図58)、GT
0、GT
S0、pH
0、pH
S0、H並びに注入量等との関係をチェックして浸透固結と強度の確認、
図29(a),(b)を行い、上記注入前の試験と比較して、その現場に対するゲルタイムpH
0とGT
S0を注入ステージに
おける注入量と注入速度と注入時間Hの設定をしてその現場に適用するのが望ましいこと
が判る。(請求項15〜23)
【0156】
本発明は液状化防止工事や、大規模工事における急速施工のための地盤改良等、大容量土の地盤改良に使用され、特に注入孔間隔が1.5〜4mの広範囲の浸透固結で注入液が所定範囲内に逸脱することなく、また隣接する各注入ステージで最適の量と注入速度で注入範囲外へ逸脱することなく浸透固結されることが要求される。このため前述した耐久シリカグラウトを用いて配合液のゲル化時間GT
0とpH
0を土中ゲル化時間(GT
S0)と注入時間(H)を考慮したシリカ溶液を注入するにあたって、改良すべき地盤に複数の注入管路を設置し、これら複数の注入管路から上記注入液を同時に、あるいは選択的に注入する際に、複数の注入管路からの注入を同時に管理して各注入ステージの注入がそれぞれの注入領域に浸透固結していることをリアルタイムで把握する注入管理方法を適用しなくてはならない。(
図60〜
図84)
【0157】
また土中ゲル化時間によりゲル化しかかった注入液を各注入ステージに適切に注入されていることが確認できるよう三次元的施工管理で可視化する必要がある。これによって注入液が逸脱することなく
図29(b)のように複数のステージが平面的にも断面的にも連続し
て改良されることが可能になる(
図60〜73)。
【0158】
図60、61はシリカ注入液を地盤中に注入することにより地盤改良を行う集中管理装置26およびこの装置に連結された注入監視盤
(図62)を備え、地盤注入液を注入各ポンプから、流量圧力検出器f、Pをそれぞれ複数の注入液送液管を通して地盤中の複数の注入ステージに注入するに際し、流量圧力検出器f、Pにより検出された注入液の流量、圧力および/または積算注入量のデータ信号を集中管理装置26に入力してなり、さらに注入監視盤に集中管理装置に入力された前記データ信号を画面表示してなり(
図62)(
図63〜
図73)、これらデータの情報に基づき、注入液送液管からの各注入ステージにおける注入状況を画面上で一括監視し、注入を管理するしことから構成される。
【0159】
さらに、本発明の注入管理方法によれば、複数の注入液送液系統を通し地盤中の複数の注入ステージに注入するに際し、地盤の所定注入領域に代表的注入領域を設定し、この代表的注入領域の位置する各注入ステージにおける適切な圧力および/または流量を測定し、得られた値の適切な範囲を注入監視盤を備えた集中管理装置に設定し、この設定範囲に基づいて所定の注入領域における各注入ステージでの注入を行うことができる。
【0160】
さらに、本発明によれば、地盤注入液を複数の注入液送液管を通して地盤中の複数の注入ステージに注入するにあたって、複数の注入液送液管に設けた流量圧力検出器から検出された注入液の注入圧力および/または流量のデータを注入監視盤を備えた集中管理装置に送信し、これらデータを注入監視盤に画面表示することにより注入状況の一括監視を行
なって、送液系統におけるそれぞれの注入圧力および/または流量を所定の範囲に維持しながら注入するとともに、上記データの情報に基づき、注入の完了、中止、継続あるいは再注入を行なうことができる。(請求項25)