【文献】
The American Journal of Pathology,2011年 9月,179(3),p.1243-1256
【文献】
The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2001年,298(2),p.501-507
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
AIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって得られる動物を用いる、腎疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法であって、
腎疾患が急性腎不全、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症またはIgM腎症である、スクリーニング方法。
AIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって得られる動物を用いる、腎疾患予防又は治療剤の予防又は治療効果の評価方法であって、
腎疾患が急性腎不全、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症またはIgM腎症である、評価方法。
被検者の試料中のAIM濃度を測定することを含む、腎疾患患者の予後の予測方法であって、腎疾患が急性腎不全、ネフローゼ症候群、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症またはIgM腎症であり、該試料中のAIM濃度が、健常者または一定水準と比べて低い場合に、被検者の腎疾患が将来的に悪化する可能性が高いとの指標となる、予測方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、AIMもしくはその部分ペプチド、またはそれらをコードする塩基配列を含む核酸を含有してなる、腎疾患の予防・治療剤を提供する。
本発明におけるAIMは、配列番号:2(ヒト由来AIM蛋白質のアミノ酸配列)または配列番号:4(ネコ由来AIM蛋白質のアミノ酸配列)で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質である。
AIMは、例えば、温血動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)の免疫細胞であるマクロファージから単離・精製される蛋白質であってよい。また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で生化学的に合成された蛋白質であってもよいし、あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸を導入された形質転換体から産生される組換え蛋白質であってもよい。
【0014】
配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は蛋白質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照)。
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J .Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
より好ましくは、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0015】
配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、前記の配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含み、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。ここで「活性」とは、例えば、動脈硬化巣マクロファージのアポトーシス抑制活性、動脈硬化の維持・促進活性、脂肪細胞分化抑制活性、脂肪細胞の脂肪滴融解活性、脂肪細胞縮小活性、CD36結合活性、脂肪細胞へのエンドサイトーシス活性、FAS結合活性、FAS機能抑制活性、抗肥満活性などをいう。「実質的に同質」とは、それらの活性が定性的(例えば、生理学的または薬理学的)に同じであることを示す。したがって、前記活性は同等であることが好ましいが、これらの活性の程度(例えば、約0.1〜約10倍、好ましくは約0.5〜約2倍)や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
前記活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができる。
【0016】
また、本発明のAIMには、例えば、(1)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち1または2個以上(好ましくは、1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、さらに好ましくは1〜10個程度、特に好ましくは1〜数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜100個程度、好ましくは1〜50個程度、さらに好ましくは1〜10個程度、特に好ましくは1〜数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜50個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち1または2個以上(好ましくは、1〜50個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、蛋白質の活性が保持される限り特に限定されない。
【0017】
本発明のAIMは、好ましくは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するヒトAIM蛋白質(GenBankアクセッション番号:AAD01446)または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有するネコAIM蛋白質、あるいは他の哺乳動物におけるそのホモログ[例えば、GenBankにアクセッション番号:AAD01445として登録されているマウスホモログ等]であり、より好ましくは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるヒトAIM蛋白質または配列番号:4で表されるアミノ酸配列からなるネコAIM蛋白質である。
【0018】
本明細書において、蛋白質およびペプチドは、ペプチド表記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をはじめとする、本発明のAIMは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO
-)、アミド(-CONH
2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC
1-6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC
3-8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC
6-12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C
1-2アルキル基;α-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C
1-2アルキル基などのC
7-14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のAIMがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の蛋白質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のAIMには、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC
1-6アルカノイルなどのC
1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成し得るN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC
1-6アルカノイル基などのC
1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
【0019】
AIMの部分ペプチド(以下、単に「本発明の部分ペプチド」と略称する場合もある)は、上記したAIMの部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つAIMと実質的に同質の活性を有する限り、何れのものであってもよい。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。また、「実質的に同質の活性」の測定はAIMの場合と同様に行なうことができる。
AIMは、システインを多く含む3つのSRCR(Scavenger-Receptor Cysteine-Rich)ドメイン含んでいることから、それぞれのSRCRドメインを本発明の部分ペプチドとして使用できる。具体的には、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列のうち、SRCR1ドメイン(配列番号:2で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号24〜125)、SRCR2ドメイン(配列番号:2で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号138〜239)、SRCR3ドメイン(配列番号:2で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号244〜346)をそれぞれ含む部分アミノ酸配列やSRCRドメインの任意の組合せを含む部分アミノ酸配列を有するものなどが用いられる。また、配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、SRCR1ドメイン(配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号24〜125)、SRCR2ドメイン(配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号139〜239)、SRCR3ドメイン(配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号244〜346)をそれぞれ含む部分アミノ酸配列やSRCRドメインの任意の組合せを含む部分アミノ酸配列を有するものなども用いられる。本発明の部分ペプチドは、上記の機能ドメインを含む限りそのサイズに特に制限はないが、好ましくは50個以上の部分アミノ酸配列を含むもの、より好ましくは100個以上の部分アミノ酸配列を含むもの、さらに好ましくは200個以上の部分アミノ酸配列を含むものが挙げられる。該部分アミノ酸配列は一個の連続した部分アミノ酸配列であってもよく、あるいは不連続な複数の部分アミノ酸配列が連結されたものであってもよい。
【0020】
また、本発明の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO
-)、アミド(-CONH
2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、AIMについて前記したと同様のものが挙げられる。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば、C末端のエステルと同様のものなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記したAIMと同様に、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
【0021】
本発明で用いられるAIMまたはその部分ペプチドは塩の形態であってもよい。例えば、生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0022】
AIMは、前述した哺乳動物のマクロファージから自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することができる。具体的には、哺乳動物のマクロファージをホモジナイズし、低速遠心により細胞デブリスを除去した後、上清を高速遠心して細胞膜含有画分を沈澱させ、該上清を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等に付すことによりAIMまたはその塩を調製することができる。
【0023】
AIMまたはその部分ペプチドは、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる(以下、これらの化学合成の説明においては、特にことわらない限り、全長AIMおよびその部分ペプチドを包括して、単にAIMという)。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。AIMを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質を製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)および(2)に記載された方法に従って行われる。
(1)M. BodanszkyおよびM. A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966年)
(2)SchroederおよびLuebke, The Peptide, Academic Press, New York(1965年)
【0024】
このようにして得られたAIMは、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られるAIMが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にAIMが塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0025】
さらに、AIMは、それをコードする核酸を含有する形質転換体を培養し、得られる培養物からAIMを分離精製することによって製造することもできる。AIMまたはその部分ペプチドをコードする核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であってもよい。
AIMまたはその部分ペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、温血動物(例えば、ヒト、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、トリなど)のマクロファージ由来のcDNA、合成DNAなどが挙げられる。AIMまたはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAであれば、前記動物のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例、褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋など]より調製したゲノムDNA画分を鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction(以下、「PCR法」と略称する)によって直接増幅することができ、AIMまたはその部分ペプチドをコードするcDNAであれば、マクロファージより調製した全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、PCR法およびReverse Transcriptase-PCR(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって直接増幅することもできる。あるいは、AIMまたはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
【0026】
AIMをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列と同一または実質的に同一な塩基配列を含むDNAなどが挙げられる。
配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列と実質的に同一な塩基配列を含むDNAとしては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有し、前記したAIMと実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
【0027】
AIMをコードするDNAは、好ましくは配列番号:1で表される塩基配列で示されるヒトAIM蛋白質をコードする塩基配列を含むDNA(GenBankアクセッション番号:AF011429)、または配列番号:3で表される塩基配列で示されるネコAIM蛋白質をコードする塩基配列を含むDNAあるいは他の哺乳動物におけるそのホモログ[例えば、GenBankにアクセッション番号:AF011428として登録されているマウスホモログ等]である。
【0028】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列の部分塩基配列を含むDNA、または(2)配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列の部分塩基配列を含むDNAと約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含み、前記したAIMと実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAなどが用いられる。
【0029】
AIMまたはその部分ペプチドをコードするDNAは、該AIMまたはその部分ペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、AIMの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイブリダイゼーションすることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring HarborLab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1%SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0030】
AIMまたはその部分ペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、AIMをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λP
Lプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
【0031】
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する場合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子(以下、amp
rと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、neo
rと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列をコードする塩基配列(シグナルコドン)を、AIMまたはその部分ペプチドをコードするDNAの5’末端側に付加(またはネイティブなシグナルコドンと置換)してもよい。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが;宿主が動物細胞である場合、インスリン・シグナル配列、α-インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
【0032】
上記したAIMまたはその部分ペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、AIMまたはその部分ペプチドを製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 60巻, 160(1968)〕,エシェリヒア・コリJM103〔ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,エシェリヒア・コリJA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,エシェリヒア・コリHB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー, 41巻, 459(1969)〕,エシェリヒア・コリC600〔ジェネティックス(Genetics), 39巻, 440(1954)〕などが用いられる。
【0033】
動物細胞としては、例えば、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞(以下、CHO(dhfr
−)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞などが用いられる。
【0034】
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
エシェリヒア属菌は、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 69巻, 2110(1972)やジーン(Gene), 17巻, 107(1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
【0035】
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory,New York 1972〕が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β-インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、通常約15〜約43℃で、約3〜約24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5〜約20%の胎児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association),199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6〜約8である。培養は、通常約30℃〜約40℃で、約15〜約60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外にAIMを製造せしめることができる。
【0036】
前記形質転換体を培養して得られる培養物からAIMまたはその部分ペプチドを自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、AIMまたはその部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX-100
TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。また、AIMまたはその部分ペプチドが菌体(細胞)外に分泌される場合には、培養物から遠心分離またはろ過等により培養上清を分取するなどの方法が用いられる。
このようにして得られた可溶性画分、培養上清中に含まれるAIMまたはその部分ペプチドの単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
【0037】
かくして得られるAIMまたはその部分ペプチドの存在は、AIMに対する抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより確認することができる。
【0038】
以上の通りにして得られるAIMもしくはその部分ペプチドまたはその塩あるいはAIMもしくはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含む核酸(ここでは、AIM類と表現することもある)は、腎疾患の発症の予防・治療剤として提供することができる。
【0039】
本発明はまた、AIM類に替えて、AIMの発現を誘導する薬剤やAIMを安定化させる薬剤も使用することができる。
【0040】
AIMの発現を誘導する薬剤としては、例えば、AIM転写活性作用を持つ化合物などが挙げられ、該化合物としては、AIM遺伝子のプロモーター領域に結合できる転写因子等が挙げられる。また、本発明者は、AIMがマクロファージにおいて発現することを見出している。従って、AIMの発現を誘導する薬剤として、マクロファージ分化誘導剤が挙げられる。マクロファージ分化誘導剤としては、顆粒球マクロファージコロニー形成細胞(CFU-GM)やマクロファージコロニー形成細胞(CFU-M)などの前駆細胞からマクロファージを分化誘導できるものであれば特に制限されないが、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony stimulating factor:GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony stimulating factor:M-CSF)などを用いることができる。転写因子、GM-CSF、M-CSFは、前記の公知手段によって、哺乳動物の組織・細胞から単離・精製される蛋白質であってよいし、化学合成もしくは無細胞翻訳系で生化学的に合成された蛋白質であってもよい。あるいは、上記蛋白質をコードする塩基配列を含む核酸を導入された形質転換体から産生される組換え蛋白質であってもよい。
【0041】
AIMを安定化させる薬剤としては、AIM分解を阻害する化合物、または尿中への排泄を阻害する化合物などが挙げられる。分解を阻害する化合物としては、プロテアーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤など挙げられる。プロテアーゼ阻害剤としては、例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤(フッ化4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩(AEBSGF)、アプロチニン、トリプシンインヒビターなど)、システインプロテアーゼ阻害剤(E-64、ロイペプチンなど)などが挙げられる。プロテアソーム阻害剤としては、ラクタシスチン、MG-115、MG-132、プロテアソームインヒビターIなどが挙げられる。尿中への排泄を阻害する化合物としては、例えば、糸球体の基底膜を通過できない分子量をAIMに付与する化合物が挙げられる。IgMはAIMと結合することから(WO2013/162021; Arai et al., Cell Reports 3: 1187-1198, 2013)、尿中への排泄を阻害する化合物として、IgMが挙げられる。しかし、IgM自体を投与すると免疫系の副作用が懸念されることから、AIMとの結合部位であるIgMのFc部分と尿細管でろ過され尿中に排出されない程度の分子量の蛋白質とを融合させた融合蛋白質が好ましく用いられる。融合させる蛋白質は限定されないが、副作用の懸念が少ない蛋白質が好ましく、例えばアルブミンが使用できる。結合は直接つなげても構わないし、ヒンジ部分を用いてつなげても構わない。ヒンジ部分としてはFLAG tagを並列したものが例示される。このような分子は、それぞれをコードする遺伝子をつなぎ、ひとつの組換えタンパクとして常法により製造することができる。また、IgMと結合するAIMは任意の温血動物由来のAIMであってよいが、ネコ由来のAIMは除かれてもよい。
【0042】
本発明の後述する実施例においては、AIMのノックアウトマウスは、片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下、腎疾患の症状を示した。以上のことから、AIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤、或いは、後述するスクリーニング方法で探索することができるAIMの機能を代替できる化合物は、腎疾患の発症、進行を予防・治療できることが示唆される。
【0043】
本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤を含有する医薬組成物の投与対象は、ヒトまたは他の温血動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、トリ、好ましくはネコなど)があげられる。
【0044】
本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤を含有する医薬組成物の適用対象となる腎疾患は、例えば、急性腎不全、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症またはIgM腎症があげられ、好ましくは急性腎不全または慢性腎不全が挙げられる。膠原病に伴う腎症としては代表的なものは、ループス腎炎が挙げられる。
【0045】
本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤を含有する医薬組成物は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは他の温血動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、トリ、好ましくはネコなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
【0046】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記AIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
【0047】
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
【0048】
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤は、例えば、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
【0049】
本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤を含有する上記予防・治療剤の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人の腎疾患の治療・予防のために使用する場合には、本発明のAIM類を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により、1日〜21日程度、好ましくは1日〜14日程度投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0050】
なお、前記した各組成物は、本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0051】
さらに、本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤は、腎疾患の治療に有用な他の薬剤、例えば、降圧薬(例、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬、レニン阻害薬、α遮断薬、β遮断薬等);利尿薬(例、炭酸脱水素酵素阻害薬、ループ利尿剤、サイアザイド系利尿薬、抗アルドステロン薬、カリウム保持利尿薬等);活性型ビタミンD3製剤(例、カルシトリオール、アルファカシルドール、マキサカルシトール、ファレカルシトリオール等);経口吸着炭素製剤(例、活性炭等);カリウム補正薬(例、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等);リン吸着薬(例、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩酸セベラマー、炭酸ランタン等)、赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent;ESA)(例、エリスロポエチン製剤)、アミノ酸輸液製剤などと併用してもよい。本発明のAIM類、AIMの発現を誘導する薬剤またはAIMを安定化させる薬剤および上記薬剤は、同時または異なった時間に患者に投与すればよい。
【0052】
また、後述する実施例の通り、血中においてAIMが検出できなかったネコについては、血中においてネコAIMがネコIgMと結合することができず、容易に糸球体の基底膜を通じて尿中に排泄されることが示唆される。結果として、ネコAIMは安定的に血中に存在することができず、腎臓疾患の遠因になると考えられる。さらに、マウスAIMはネコIgMとネコ血中において結合できることが明らかとなり、特にマウスAIMのSRCR3ドメインがネコIgMとの結合において重要であることが示唆された。従って、本発明はまた、ネコIgMと結合することを特徴とするAIMもしくはその部分ペプチド、またはそれらをコードする塩基配列を含む核酸を含有してなる、ネコに投与するための腎疾患の予防・治療剤を提供する。
本発明におけるネコIgMと結合するAIMは、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含み、かつネコIgMと結合することができる蛋白質である。
そのような蛋白質は例えば、化学合成もしくは無細胞翻訳系で生化学的に合成された蛋白質であってもよいし、あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸を導入された形質転換体から産生される組換え蛋白質であってもよい。
【0053】
配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。「相同性」については、上記と同様であってよい。より好ましくは、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。また、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、前記の配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含み、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。
【0054】
ネコIgMと結合することができるAIM蛋白質としては、ネコ血中においてネコIgMと結合する限り、どのようなAIM蛋白質であってもよいが、例えば、マウス由来AIMのSRCR3ドメインを含む蛋白質であることが好ましい。具体的には、例えば、配列番号:6で表されるアミノ酸配列のうちアミノ酸番号246〜348を含むAIM蛋白質が挙げられる。また、マウス由来AIMのSRCR3ドメインを含む蛋白質は、AIMが元来有しているSRCR3ドメインをマウス由来AIMのSRCR3ドメインで置換した蛋白質であってもよい。
【0055】
ネコIgMと結合するAIMの部分ペプチドは、上記したネコIgMと結合するAIMの部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つAIMと実質的に同質の活性を有する限り、何れのものであってもよい。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。
具体的には、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、SRCR1ドメイン(配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号24〜125)、SRCR2ドメイン(配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号139〜239)、SRCR3ドメイン(配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号244〜346)をそれぞれ含む部分アミノ酸配列やSRCRドメインの任意の組合せを含む部分アミノ酸配列を有するものなども用いられる。上記の部分ペプチドは、上記の機能ドメインを含む限りそのサイズに特に制限はない。
【0056】
ネコIgMと結合するAIMまたははその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むDNAとしては、例えば、配列番号:3で表される塩基配列と同一または実質的に同一な塩基配列を含むDNAなどが挙げられる。
配列番号:3で表される塩基配列と実質的に同一な塩基配列を含むDNAとしては、例えば、配列番号:3で表される塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有し、前記したAIMと実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAなどが用いられる。「相同性」については、上記と同様であってよい。該DNAは、上記した方法と同様に調製される。
【0057】
本発明のネコIgMと結合するAIMもしくはその部分ペプチド、またはそれらをコードする塩基配列を含む核酸を含有する医薬組成物の投与対象としては、ネコがあげられる。
【0058】
本発明のネコIgMと結合するAIMもしくはその部分ペプチド、またはそれらをコードする塩基配列を含む核酸を含有する医薬組成物の適用対象となる腎疾患は、例えば、急性腎不全、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症またはIgM腎症があげられ、好ましくは急性腎不全または慢性腎不全が挙げられる。膠原病に伴う腎症としては代表的なものは、ループス腎炎が挙げられる。
【0059】
本発明のネコIgMと結合するAIMもしくはその部分ペプチド、またはそれらをコードする塩基配列を含む核酸を含有する医薬組成物は低毒性であり、上記と同様に経口的または非経口的に対象に投与することができる。剤形、投与量等は上記と同様であってよい。
【0060】
また、前記の通り、AIMのノックアウトマウスは、片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下、腎疾患の症状を示した。このことは、片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下に置かれたAIMのノックアウトマウスは、腎疾患の新たなモデルマウスとして提供できることを示唆する。従って、本発明は、AIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって得られる動物を用いた、腎疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0061】
AIM発現不全非ヒト哺乳動物とは、内在性AIMの発現が不活性化された非ヒト哺乳動物を意味し、AIMがノックアウト(KO)されたES細胞から、作製されるAIM KO動物の他、アンチセンスもしくはRNAi技術によりAIMの発現が不活性化されたノックダウン(KD)動物なども含まれる。ここで「ノックアウト(KO)」とは、内在性遺伝子を破壊したり、除去したりすることにより完全なmRNAを産生不能にすることを意味し、他方、「ノックダウン(KD)」とは、mRNAから蛋白質への翻訳を阻害することにより、結果的に内在性遺伝子の発現を不活性化することを意味する。以下、本発明のAIM KO/KD動物を、単に「本発明のKO/KD動物」という場合がある。本発明のAIM KO動物としては、例えば、Miyazaki T. et al.(J. Exp. Med., 189, 413-422, 1999、またはWO2013/162021)に開示されている。
【0062】
本発明で対象とし得る「非ヒト哺乳動物」は、トランスジェニック系が確立されたヒト以外の哺乳動物であれば特に制限はなく、例えば、マウス、ラット、ウシ、サル、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなどが挙げられる。好ましくは、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター等であり、なかでも疾患モデル動物作製の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、繁殖が容易な齧歯動物がより好ましく、とりわけマウス(例えば、純系としてC57BL/6系統、BALB/c系統、DBA2系統など、交雑系としてB6C3F
1系統、BDF
1系統、B6D2F
1系統、ICR系統など)およびラット(例えば、Wistar、SDなど)が好ましい。
また、哺乳動物以外にもニワトリなどの鳥類を本発明で対象とする「非ヒト哺乳動物」と同様の目的に用いることができる。
【0063】
AIMをノックアウトする具体的な手段としては、前記のMiyazaki T. et al.(J. Exp. Med., 189, 413-422, 1999、またはWO2013/162021)にも開示されているが、その他の公知の一般的な手法としては、対象非ヒト哺乳動物由来のAIM(ゲノムDNA)を常法に従って単離し、例えば、(1)そのエキソン部分やプロモーター領域に他のDNA断片(例えば、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子等)を挿入することによりエキソンもしくはプロモーターの機能を破壊するか、(2)Cre-loxP系やFlp-frt系を用いてAIMの全部または一部を切り出して該遺伝子を欠失させるか、(3)蛋白質コード領域内へ終止コドンを挿入して完全な蛋白質の翻訳を不能にするか、あるいは(4)転写領域内部へ遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入して、完全なmRNAの合成を不能にすることによって、結果的に遺伝子を不活性化するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、相同組換えにより対象非ヒト哺乳動物のAIM遺伝子座に組み込ませる方法などが好ましく用いられ得る。
【0064】
該相同組換え体は、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)への上記ターゲッティングベクターの導入により取得することができる。
ES細胞は胚盤胞期の受精卵の内部細胞塊(ICM)に由来し、インビトロで未分化状態を保ったまま培養維持できる細胞をいう。ICMの細胞は将来、胚本体を形成する細胞であり、生殖細胞を含むすべての組織の基になる幹細胞である。ES細胞としては、既に樹立された細胞株を用いてもよく、また、EvansとKaufmanの方法(ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年)に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスES細胞の場合、現在、一般的には129系マウス由来のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で、例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF
1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF
1)から樹立されるES細胞なども良好に用いることができる。BDF
1マウスは、採卵数が多く、かつ卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これ由来のES細胞は疾患モデルマウスを作製したとき、C57BL/6マウスと戻し交雑することでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman,ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin, プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschmanら,ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のターゲッティングベクターを導入されたES細胞を分化させて得られるAIM発現不全非ヒト哺乳動物細胞は、インビトロにおけるAIMの細胞生物学的検討において有用である。
【0065】
例えば、ターゲッティングベクターが、AIMのエキソン部分やプロモーター領域に他のDNA断片を挿入することにより、該エキソンもしくはプロモーターの機能を破壊すべく設計されたものである場合、当該ベクターは、例えば、以下のような構成をとることができる。
【0066】
まず、相同組換えにより、AIMのエキソンもしくはプロモーター部分に他のDNA断片が挿入されるために、ターゲッティングベクターは、当該他のDNA断片の5’上流および3’下流に、それぞれ標的部位と相同な配列(5’アームおよび3’アーム)を含む必要がある。
【0067】
挿入される他のDNA断片は特に制限はないが、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子を用いると、ターゲッティングベクターが染色体へ組み込まれたES細胞を、薬剤耐性もしくはレポーター活性を指標として選択することができる。ここで薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)遺伝子などが、レポーター遺伝子としては、例えば、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子などがそれぞれ挙げられるが、それらに限定されない。
【0068】
薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子は、哺乳動物細胞内で機能し得る任意のプロモーターの制御下にあることが好ましい。例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)ロングターミナルリピート(LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、マウス白血病ウイルス(MoMuLV)LTR、アデノウイルス(AdV)由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ-アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。しかしながら、薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子がAIMの内在性プロモーターの制御下におかれるようにAIM内に挿入される場合は、ターゲッティングベクター中に該遺伝子の転写を制御するプロモーターは必要でない。
【0069】
また、ターゲッティングベクターは、薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子の下流に、該遺伝子からのmRNAの転写を終結させる配列(ポリアデニレーション(polyA)シグナル、ターミネーターとも呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス遺伝子由来、あるいは各種哺乳動物または鳥類の遺伝子由来のターミネーター配列を用いることができる。好ましくは、SV40由来のターミネーターなどが用いられる。
【0070】
通常、哺乳動物における遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、導入されたDNAは染色体の任意の位置にランダムに挿入される。したがって、薬剤耐性やレポーター遺伝子の発現を検出するなどの選択(ポジティブ選択)によっては相同組換えにより標的となる内在性AIMにターゲッティングされたクローンのみを効率よく選択することができず、選択されたすべてのクローンについてサザンハイブリダイゼーション法もしくはPCR法による組込み部位の確認が必要となる。そこで、ターゲッティングベクターの標的配列に相同な領域の外側に、例えば、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を連結しておけば、該ベクターがランダムに挿入された細胞はHSV-tk遺伝子を有するため、ガンシクロビル含有培地では生育できないが、相同組換えにより内在性AIM遺伝子座にターゲッティングされた細胞はHSV-tk遺伝子を有しないので、ガンシクロビル耐性となり選択される(ネガティブ選択)。あるいは、HSV−tk遺伝子の代わりに、例えばジフテリア毒素遺伝子を連結すれば、該ベクターがランダムに挿入された細胞は自身の産生する該毒素によって死滅するので、薬剤非存在下で相同組換え体を選択することもできる。
【0071】
ES細胞へのターゲッティングベクターの導入には、リン酸カルシウム共沈殿法、電気穿孔(エレクトロポレーション)法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、顕微注入(マイクロインジェクション)法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、DEAE-デキストラン法などのいずれも用いることができるが、上述のように、哺乳動物における遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、相同組換え体が得られる頻度は低いので、簡便に多数の細胞を処理できること等の点からエレクトロポレーション法が一般的に選択される。エレクトロポレーションには通常の動物細胞への遺伝子導入に使用されている条件をそのまま用いればよく、例えば、対数増殖期にあるES細胞をトリプシン処理して単一細胞に分散させた後、10
6〜10
8細胞/mlとなるように培地に懸濁してキュベットに移し、ターゲッティングベクターを10〜100μg添加し、200〜600V/cmの電気パルスを印加することにより行なうことができる。
【0072】
ターゲッティングベクターが組み込まれたES細胞は、単一細胞をフィーダー細胞上で培養して得られるコロニーから分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることによっても検定することができるが、他のDNA断片として薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子を使用した場合は、それらの発現を指標として細胞段階で形質転換体を選択することができる。例えば、ポジティブ選択用マーカー遺伝子としてnptII遺伝子を含むベクターを用いた場合、遺伝子導入処理後のES細胞をG418などのネオマイシン系抗生物質を含有する培地中で培養し、出現した耐性コロニーをトランスフォーマントの候補として選択する。また、ネガティブ選択用マーカー遺伝子として、HSV-tk遺伝子を含むベクターを用いた場合、ガンシクロビルを含有する培地中で培養し、出現した耐性コロニーを相同組換え体の候補として選択する。得られたコロニーをそれぞれ培養プレートに移してトリプシン処理、培地交換を繰り返した後、一部を培養用として残し、残りをPCRもしくはサザンハイブリダイゼーションにかけて導入DNAの存在を確認する。
【0073】
導入DNAの組込みが確認されたES細胞を同種の非ヒト哺乳動物由来の胚内に戻すと、宿主胚のICMに組み込まれてキメラ胚が形成される。これを仮親(受胚用雌)に移植してさらに発生を続けさせることにより、キメラKO動物が得られる。キメラ動物の中でES細胞が将来卵や精子に分化する始原生殖細胞の形成に寄与した場合には、生殖系列キメラが得られることとなり、これを交配することによりAIM発現不全が遺伝的に固定されたKO動物を作製することができる。
【0074】
キメラ胚の作製方法としては、桑実胚期までの初期胚同士を接着させて集合させる方法(集合キメラ法)と、胚盤胞の割腔内に細胞を顕微注入する方法(注入キメラ法)とがある。ES細胞によるキメラ胚の作製においては従来より後者が広く行なわれているが、最近では、8細胞期胚の透明帯内へのES細胞の注入により集合キメラを作る方法や、マイクロマニピュレーターが不要で操作が容易な方法として、ES細胞塊と透明帯を除去した8細胞期胚とを共培養して凝集させることによって集合キメラを作製する方法も行われている。
【0075】
いずれの場合も、宿主胚は、後述する受精卵への遺伝子導入において、採卵用雌として使用され得る非ヒト哺乳動物から同様にして採取することができるが、例えばマウスの場合、キメラマウス形成へのES細胞の寄与率を毛色(コートカラー)で判定し得るように、ES細胞の由来する系統とは毛色の異なる系統のマウスから宿主胚を採取することが好ましい。例えば、ES細胞が129系マウス(毛色:アグーチ)由来であれば、採卵用雌としてC57BL/6マウス(毛色:ブラック)やICRマウス(毛色:アルビノ)を用い、ES細胞がC57BL/6もしくはDBF
1マウス(毛色:ブラック)由来やTT2細胞(C57BL/6とCBAとのF
1(毛色アグーチ)由来)であれば、採卵用雌としてICRマウスやBALB/cマウス(毛色:アルビノ)を用いることができる。
【0076】
また、生殖系列キメラ形成能はES細胞と宿主胚との組み合わせに大きく依存するので、生殖系列キメラ形成能の高い組み合わせを選択することがより好ましい。例えばマウスの場合、129系統由来のES細胞に対してはC57BL/6系統由来の宿主胚等を用いることが好ましく、C57BL/6系統由来のES細胞に対してはBALB/c系統由来の宿主胚等が好ましい。
【0077】
採卵用雌マウスは約4〜約6週齢程度が好ましく、交配用の雄マウスとしては約2〜約8ヶ月齢程度の同系統のものが好ましい。交配は自然交配によってもよいが、好ましくは性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン、次いで黄体形成ホルモン)を投与して過剰排卵を誘起した後に行なわれる。
【0078】
胚盤注入法による場合は、胚盤胞期胚(例えばマウスの場合、交配後約3.5日)を採卵用雌の子宮から採取し(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地(後述)中で胚盤胞期まで培養してもよい)、マイクロマニピュレーターを用いて胚盤胞の割腔内にターゲッティングベクターが導入されたES細胞(約10〜約15個)を注入した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植する。受胚用雌非ヒト哺乳動物は受精卵への遺伝子導入における受胚用雌として使用され得る非ヒト哺乳動物を同様に用いることができる。
【0079】
共培養法による場合は、8細胞期胚および桑実胚(例えばマウスの場合、交配後約2.5日)を採卵用雌の卵管および子宮から採取して(あるいは8細胞期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地(後述)中で8細胞期または桑実胚期まで培養してもよい)酸性タイロード液中で透明帯を溶解した後、ミネラルオイルを重層した胚培養用培地の微小滴中にターゲッティングベクターが導入されたES細胞塊(細胞数約10〜約15個)を入れ、さらに上記8細胞期胚または桑実胚(好ましくは2個)を入れて一晩共培養する。得られた桑実胚または胚盤胞を上記と同様にして受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植する。
【0080】
移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開によりキメラ非ヒト哺乳動物が得られる。自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌(通常に交配・分娩した雌非ヒト哺乳動物)に哺乳させることができる。
【0081】
生殖系列キメラの選択は、まずES細胞の雌雄が予め判別されている場合はES細胞と同じ性別のキメラマウスを選択し(通常は雄性ES細胞が使用されるので、雄キメラマウスが選択される)、次いで毛色等の表現型からES細胞の寄与率が高いキメラマウス(例えば、50%以上)を選択する。例えば、129系マウス由来の雄性ES細胞であるD3細胞とC57BL/6マウス由来の宿主胚とのキメラ胚から得られるキメラマウスの場合、アグーチの毛色の占める割合の高い雄マウスを選択するのが好ましい。選択されたキメラ非ヒト哺乳動物が生殖系列キメラであるか否かの確認は、適当な系統の同種動物との交雑により得られるF
1動物の表現型に基づいて行なうことができる。例えば、上記キメラマウスの場合、アグーチはブラックに対して優性であるので、雌C57BL/6マウスと交雑すると、選択された雄マウスが生殖系列キメラであれば得られるF
1の毛色はアグーチとなる。
【0082】
上記のようにして得られるターゲッティングベクターが導入された生殖系列キメラ非ヒト哺乳動物(ファウンダー)は、通常、相同染色体の一方のAIMのみがKOされたヘテロ接合体として得られる。相同染色体の両方のAIMがKOされたホモ接合体を得るためには、上記のようにして得られるF
1動物のうちヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。ヘテロ接合体の選択は、例えばF
1動物の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることにより検定することができる。得られるF
2動物の1/4がホモ接合体となる。
【0083】
ターゲッティングベクターとしてウイルスを用いる場合の別の好ましい一実施態様として、ポジティブ選択用マーカー遺伝子が5’および3’アームの間に挿入され、該アームの外側にネガティブ選択用マーカー遺伝子を含むDNAを含むウイルスで、非ヒト哺乳動物のES細胞を感染させる方法が挙げられる(例えば、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 第99巻,第4号,第2140-2145頁,2002年参照)。例えば、レトロウイルスやレンチウイルスを用いる場合、ディッシュなどの適当な培養器に細胞を播き、培養液にウイルスベクターを加えて(所望によりポリブレンを共存させてもよい)、1〜2日間培養後、上述のように選択薬剤を添加して培養を続け、ベクターが組み込まれた細胞を選択する。
【0084】
AIMをノックダウンする具体的な手段としては、AIMのアンチセンスRNAもしくはsiRNA(shRNAを含む)をコードするDNAを、自体公知のトランスジェニック作製技術を用いて導入し、対象非ヒト哺乳動物細胞内で発現させる方法などが挙げられる。
【0085】
目的のポリヌクレオチドの標的領域と相補的な塩基配列を含むDNA、即ち、目的のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるDNAは、該目的のポリヌクレオチドに対して「アンチセンス」であるということができる。
AIMをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に、相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスDNAとしては、AIMをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有し、該ポリヌクレオチドの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。
【0086】
AIMをコードするポリヌクレオチドに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、該ポリヌクレオチドの相補鎖の塩基配列と、オーバーラップする領域に関して、約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列である。本明細書における塩基配列の相同性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
特に、AIMをコードするポリヌクレオチドの相補鎖の全塩基配列のうち、(a)翻訳阻害を指向したアンチセンスDNAの場合は、AIMのN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAが、(b)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンスDNAの場合は、イントロンを含むAIMをコードするポリヌクレオチドの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAがそれぞれ好適である。
【0087】
具体的には、対象非ヒト哺乳動物がマウスの場合、GenBank accession No.AF011428として登録されている塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部を含むアンチセンスDNA、好ましくは、該塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を含むアンチセンスDNAなどが挙げられる。
【0088】
AIMをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスDNA(以下、「本発明のアンチセンスDNA」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定されたAIMをコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるアンチセンスDNAは、AIMの複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンスDNAは、AIMから転写されるRNA(mRNAまたは初期転写産物)とハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができる。
【0089】
本発明のアンチセンスDNAの標的領域は、アンチセンスDNAがハイブリダイズすることにより、結果としてAIMへの翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、該蛋白質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。具体的には、AIMの5’端ヘアピンループ、5’端6-ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンスDNAの好ましい標的領域として選択しうるが、AIM内の如何なる領域も対象として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもできる。
さらに、本発明のアンチセンスDNAは、AIMのmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるAIMと結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。あるいはDNA:RNAハイブリッドを形成してRNaseHによる分解を誘導するものであってもよい。
【0090】
AIMをコードするmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムをコードするDNAもまた、本発明のアンチセンスDNAに包含され得る。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。AIM mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788(2001)]。
【0091】
本明細書においては、AIMのmRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相同なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆる単鎖干渉RNA(siRNA)もまた、本発明のKD動物作製のために用いることができる。siRNAを細胞内に導入するとそのRNAに相同なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836):494−498(2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。siRNAは標的となるmRNAの塩基配列情報に基づいて、市販のソフトウェア(例:RNAi Designer;Invitrogen)を用いて適宜設計することができる。
【0092】
本発明のアンチセンスオリゴDNA及びリボザイムは、AIMのcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。合成されたアンチセンスオリゴDNAまたはリボザイムは、必要に応じて適当なリンカー(アダプター)配列を介して発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、アンチセンスオリゴRNAまたはリボザイムをコードするDNA発現ベクターを調製することができる。ここで用いられ得る発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスなどの動物もしくは昆虫ウイルスなどが用いられる。なかでも、プラスミド(好ましくは大腸菌由来、枯草菌由来または酵母由来、特に大腸菌由来のプラスミド)や、動物ウイルス(好ましくはレトロウイルス、レンチウイルス)が好ましく例示される。また、プロモーターとしては、例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)ロングターミナルリピート(LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、マウス白血病ウイルス(MoMuLV)LTR、アデノウイルス(AdV)由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ-アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。
【0093】
より長いアンチセンスRNA(例えば、AIM mRNAの相補鎖全長など)をコードするDNA発現ベクターは、常法によりクローニングしたAIM cDNAを、必要に応じて適当なリンカー(アダプター)配列を介して発現ベクターのプロモーターの下流に逆方向に挿入することにより調製することができる。
【0094】
一方、siRNAをコードするDNAは、センス鎖またはアンチセンス鎖をコードするDNAとして別個に合成し、それぞれを適当な発現ベクター中に挿入することにより調製することができる。siRNAの発現ベクターとしては、U6やH1などのPol III系プロモーターを有するものが用いられ得る。この場合、該ベクターが導入された動物細胞内で、センス鎖とアンチセンス鎖がそれぞれ転写されてアニーリングすることにより、siRNAが形成される。shRNAはセンス鎖およびアンチセンス鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば15から25塩基程度)を間に挿入したユニットを適当な発現ベクター中に挿入することにより調製することができる。shRNAの発現ベクターとしてはU6やH1などのPol III系プロモーターを有するものが用いられ得る。この場合、該発現ベクターを導入された動物細胞内で転写されたshRNAは、自身でループを形成した後に、内在の酵素ダイサー(dicer)などによってプロセシングされることにより成熟siRNAが形成される。あるいは、Pol II系プロモーターで、ターゲットのsiRNA配列を含むマイクロRNA(miRNA)を発現させてRNAiによりノックダウンを達成することも可能である。この場合には組織特異的発現を示すプロモーターにより、組織特異的ノックダウンも可能となる。
【0095】
AIMのアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAを含む発現ベクターを細胞に導入する方法としては、標的細胞に応じて自体公知の方法が適宜用いられる。例えば、受精卵などの初期胚への導入については、マイクロインジェクション法が用いられる。また、ES細胞への導入については、リン酸カルシウム共沈殿法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE-デキストラン法などが用いられ得る。あるいは、ベクターとしてレトロウイルスやレンチウイルスなどを用いる場合には、初期胚やES細胞にウイルスを添加して1〜2日培養し、該細胞を該ウイルスに感染させることにより、簡便に遺伝子導入を達成し得る場合がある。ES細胞からの個体再生(ファウンダーの樹立)、継代(ホモ接合体の作製)等は、本発明のKO動物において上記したと同様の方法により行うことができる。
【0096】
好ましい一実施態様においては、AIMのアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAを含む発現ベクターは、マイクロインジェクション法により対象となる非ヒト哺乳動物の初期胚(受精卵)に導入される。
【0097】
受精卵へのDNAの顕微注入は、マイクロマニピュレーター等の公知の装置を用いて常法に従って実施することができる。簡潔に言えば、胚培養用培地の微小滴中に入れた受精卵をホールディングピペットで吸引して固定し、インジェクションピペットを用いてDNA溶液を雄性もしくは雌性前核、好ましくは雄性前核内に直接注入する。導入DNAはCsCl密度勾配超遠心または陰イオン交換樹脂カラム等で高度に精製したものを用いることが好ましい。また、導入DNAは制限酵素を用いてベクター部分を切断し、直鎖状にしておくことが好ましい。
【0098】
DNA導入後の受精卵は胚培養用培地中で微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で1細胞期〜胚盤胞期まで培養した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の卵管または子宮内に移植される。受胚用雌非ヒト哺乳動物は移植される初期胚が由来する動物と同種のものであればよく、例えば、マウス初期胚を移植する場合は、ICR系の雌マウス(好ましくは約8〜約10週齢)などが好ましく用いられる。受胚用雌非ヒト哺乳動物を偽妊娠状態にする方法としては、例えば、同種の精管切除(結紮)雄非ヒト哺乳動物(例えば、マウスの場合、ICR系の雄マウス(好ましくは約2ヶ月齢以上))と交配させて、膣栓の存在が確認されたものを選択する方法が知られている。
【0099】
受胚用雌は自然排卵のものを用いてもよいし、あるいは精管切除(結紮)雄との交配に先立って、黄体形成ホルモン放出ホルモン(一般にLHRHと略する)もしくはその類縁体を投与し、受精能を誘起させたものを用いてもよい。LHRH類縁体としては、例えば、[3, 5-DiI-Tyr
5]-LH-RH、[Gln
8]-LH-RH、[D-Ala
6]-LH-RH、[des-Gly
10]-LH-RH、[D-His(Bzl)
6]-LH-RHおよびそれらのEthylamideなどが挙げられる。LHRHもしくはその類縁体の投与量、ならびにその投与後に雄非ヒト哺乳動物と交配させる時期は、非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス(好ましくはICR系のマウスなど)の場合には、通常、LHRHもしくはその類縁体を投与した後、約4日目に雄マウスと交配させることが好ましく、LHRHあるいはその類縁体の投与量は、通常、約10〜60μg/個体、好ましくは約40μg/個体である。
【0100】
通常、移植される初期胚が桑実胚期以後の場合は受胚用雌の子宮に、それより前(例えば、1細胞期〜8細胞期胚)であれば卵管に胚移植される。受胚用雌は、移植胚の発生段階に応じて偽妊娠からある日数が経過したものが適宜使用される。例えばマウスの場合、2細胞期胚を移植するには偽妊娠後約0.5日の雌マウスが、胚盤胞期胚を移植するには偽妊娠後約2.5日の雌マウスが好ましい。受胚用雌を麻酔(好ましくはAvertin、ネンブタール等が使用される)後、切開して卵巣を引き出し、胚培養用培地に懸濁した初期胚(約5〜約10個)を胚移植用ピペットを用いて、卵管腹腔口もしくは子宮角の卵管接合部付近に注入する。
【0101】
移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開により仔非ヒト哺乳動物が得られる。自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌(例えばマウスの場合、通常に交配・分娩した雌マウス(好ましくはICR系の雌マウス等))に哺乳させることができる。
【0102】
受精卵細胞段階におけるAIMのアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAの導入は、導入DNAが対象非ヒト哺乳動物の生殖系列細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。導入DNAが染色体DNAに組み込まれているか否かは、例えば、産仔の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることにより検定することができる。上記のようにして得られる仔非ヒト哺乳動物(F
0)の生殖系列細胞において発現ベクターが存在することは、その後代(F
1)の動物全てが、その生殖系列細胞および体細胞のすべてに発現ベクターが存在することを意味する。
通常、F
0動物は相同染色体の一方にのみ導入DNAを有するヘテロ接合体として得られる。また、個々のF
0個体は相同組換えによらない限り異なる染色体上にランダムに挿入される。相同染色体の両方に発現ベクターを有するホモ接合体を得るためには、F
0動物と非トランスジェニック動物とを交雑してF
1動物を作製し、相同染色体の一方にのみ導入DNAを有するヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。1遺伝子座にのみ導入DNAが組み込まれていれば、得られるF
2動物の1/4がホモ接合体となる。
【0103】
ベクターとしてウイルスを用いる場合の別の好ましい一実施態様として、上記KO動物の場合と同様に、AIMのアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAを含むウイルスで、非ヒト哺乳動物の初期胚もしくはES細胞を感染させる方法が挙げられる。細胞として受精卵を用いる場合は、感染に先立って透明帯を除いておくことが好ましい。ウイルスベクターを感染させて1〜2日間培養後、初期胚であれば、上述のように偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の卵管または子宮内に移植し、ES細胞であれば、上述のように選択薬剤を添加して培養を続け、ベクターが組み込まれた細胞を選択する。
【0104】
さらに、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)第98巻,第13090-13095頁,2001年に記載されるように、雄非ヒト哺乳動物から採取した精原細胞をSTOフィーダー細胞と共培養する間にウイルスベクターに感染させた後、雄性不妊非ヒト哺乳動物の精細管に注入して雌非ヒト哺乳動物と交配させることにより、効率よくAIMのアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAのへテロTg(+/-)産仔を得ることができる。
【0105】
Miyazaki T. et al.(J. Exp. Med., 189, 413-422, 1999、またはWO2013/162021)に記載された、あるいは上記の手法によって取得されうる本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物は、片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下において、以下の特性:
(1)対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において壊死した尿細管細胞が蓄積し、腎実質が線維化する、
(2)対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において糸球体構造が崩壊し、糸球体が線維化する、
(3) 対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において炎症性サイトカインの発現が亢進する、
(4) 対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓においてマクロファージの浸潤が亢進する、
(5)対照非ヒト哺乳動物と比較して、AIM発現不全非ヒト哺乳動物の血中BUN値が高い、
(6)対照非ヒト哺乳動物と比較して、AIM発現不全非ヒト哺乳動物の生存率が低い、
(7)AIM投与によって、前記(1)〜(6)が改善する、
を有する。これらの表現型は、従来公知のAIM KOマウスにおいては、少なくとも報告されていない。特に、尿管結石、上行性尿路感染症、あるいは腫瘍等による尿管の圧迫・閉塞を引金とした急性腎障害(急性腎不全)に伴う慢性的な腎障害、および、腫瘤、血栓、あるいは糖尿病、高血圧等による腎血管狭窄・閉塞による虚血性腎障害に伴う慢性的な腎障害の病態と近似したものであることは新たな発見である。
【0106】
(1)対照腎臓(正常腎臓、あるいは尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行っていない腎臓をいう。以下同様。)と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において壊死した尿細管細胞が蓄積し、腎実質が線維化するとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって、対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において、壊死した尿細管細胞の蓄積、および腎実質の広範な線維化が認められることをいう。壊死した尿細管細胞の蓄積は、例えば、腎組織片をヘマトキシリン・エオジン染色によって確認することができ、腎実質の線維化はAzan染色およびヘマトキシリン染色の同時染色によって確認することができる。後述する実施例においては、AIMノックアウトマウスでは、尿管結紮後14日目から対照腎臓と比べて有意な差が認められた。また、一過性腎虚血再灌流後7日目から対照腎臓と比べて有意な差が認められた。
(2)対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において糸球体構造が崩壊し、糸球体が線維化するとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって、対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において糸球体構造の崩壊と糸球体の線維化が認められることをいう。糸球体構造の崩壊は、例えば、腎組織片をヘマトキシリン・エオジン染色によって確認することができ、糸球体の線維化はAzan染色およびヘマトキシリン染色の同時染色によって確認することができる。後述する実施例においては、AIMノックアウトマウスでは、尿管結紮後14日目から正常腎臓と比べて有意な差が認められた。また、AIMノックアウトマウスでは、一過性腎虚血再灌流後7日目から正常腎臓と比べて有意な差が認められた。
(3) 対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓において炎症性サイトカインの発現が亢進するとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって、対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓においてMCP-1、IL-1βおよびIL-6の発現が亢進することをいう。発現の亢進は、例えば、定量的RT-PCRやノーザンブロット法などによって確認することができる。後述する実施例においては、AIMノックアウトマウスでは、MCP-1およびIL-6は正常腎臓と比べて有意な差が認められ、IL-1βについても、発現が高い傾向が認められた。
(4) 対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓においてマクロファージの浸潤が亢進するとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって、対照腎臓と比較して、尿管結紮または一過性腎虚血再灌流を行った腎臓においてマクロファージ(Mac-1陽性細胞)の数が多いことをいう。細胞数のカウントは、例えば、フローサイトメーターなどによってMac-1陽性細胞を識別することによって確認することができる。後述する実施例においては、AIMノックアウトマウスでは、正常腎臓と比べてマクロファージの割合が高いことが確認された。
(5)対照非ヒト哺乳動物と比較して、AIM発現不全非ヒト哺乳動の血中BUN値が高値であるとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって、対照非ヒト哺乳動物と比較して、AIM発現不全非ヒト哺乳動の血中BUN値が高いことをいう。
(6)対照非ヒト哺乳動物と比較して、AIM発現不全非ヒト哺乳動物の生存率が低いとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことによって、対照非ヒト哺乳動物と比較して、生存率が低くなることをいう。
(7)AIM投与によって、前記(1)〜(6)が改善するとは、本発明のAIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行った後、AIM投与によってBUN値に有意な低下が認められることと、壊死した尿細管細胞の蓄積と糸球体構造の崩壊、またそれらに伴う腎実質および糸球体の線維化が、明瞭に改善すること、炎症性サイトカインの発現が低下すること、生存率が改善すること、マクロファージの浸潤を抑制することをいう。
【0107】
これらの知見は、AIM発現不全非ヒト哺乳動物を片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うことで、腎疾患のモデル動物として有用であることを示し、さらに腎疾患の予防・治療薬のスクリーニングに用いることができることを示す。具体的には、本発明のスクリーニング方法は、以下の工程を含む。
(1)片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下、AIM発現不全非ヒト哺乳動物に被検物質を投与する工程、
(2)被検物質を投与されたAIM発現不全非ヒト哺乳動物の下記特性のいずれか一項目以上を観察する工程:
(i)壊死した尿細管細胞の蓄積と腎実質の線維化、
(ii)糸球体構造の崩壊と線維化、
(iii)腎臓における炎症性サイトカインの発現量、
(iv)腎臓におけるマクロファージの割合、
(v)BUN値、
(vi)生存率、
(3)被検物質非投与の場合と比較して、前記特性のいずれか一項目以上が改善される被検物質を選択する工程。
【0108】
本発明のスクリーニング方法で、片側尿管結紮とは、片側の腎臓の尿管を結紮することをいう。尿管結紮により、結紮を施した腎臓の腎実質の尿細管および糸球体の壊死を誘導し、それに引き続いて炎症や線維化を生じさせ、最終的にその腎臓を機能不全にすることができる。また、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流とは、あらかじめ一方の腎臓を摘出し、2週間後に残った腎臓側の腎動脈を結紮することによって虚血を誘導し、30分後結紮を解除し血流の再灌流を行うことをいう。この一過性の虚血のために尿細管の壊死が軽度の線維化を伴い3日間程度進行し、それに伴い腎機能が悪化する。また、両側性の一過性腎虚血再灌流とは、一方の腎臓を摘出せずに、両方の腎臓の腎動脈を結紮することによって虚血を誘導し、30分後結紮を解除し血流の再灌流を行うことをいう。
【0109】
AIM発現不全非ヒト哺乳動物に投与される被験物質としては、蛋白質、ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが用いられてよい。被検物質を投与する時期は、片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流の前であっても、同時であってもよいし、あるいはAIM発現不全非ヒト哺乳動物が片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流が行われて、前記した特性が観察されるようになってからでもよい。投与の方法としては、経口的であっても非経口的であってもよい。経口的投与としては飼料や飲料水に混ぜて投与することができる。非経口的投与としては、腹腔内投与、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射、点滴注射等による投与、坐剤による直腸投与などが挙げられる。また、投与は単回投与であっても複数回投与であってもよい。
【0110】
被検物質を投与されたAIM発現不全非ヒト哺乳動物の特性は、被検物質の投与後、通常3または4日目以降、好ましくは7日目以降、より好ましくは14日目以降に観察する。壊死した尿細管細胞の蓄積およびそれに伴う腎実質の線維化については、前記哺乳動物から摘出した腎臓の腎組織片をヘマトキシリン・エオジン染色、またはAzan染色およびヘマトキシリン染色し、その染色程度を数値化することで観察することができる。糸球体構造の崩壊ならびに糸球体の線維化の程度については、上記と同様に、前記摘出した腎臓の腎組織片をヘマトキシリン・エオジン染色またはAzan染色およびヘマトキシリン染色し、その染色程度を数値化することで観察することができる。腎臓における炎症性サイトカインの発現量については、定量的RT-PCRなどで測定することができる。ここで、測定する炎症性サイトカインとしては、例えば、MCP-1、IL-1βおよびIL-6が挙げられる。腎臓におけるマクロファージの割合については、フローサイトメーターなどによってMac-1陽性細胞を識別することによって確認することができる。BUN値については、血中尿素窒素(blood urea nitrogen)濃度を測定することによって観察することができる。
【0111】
上記のようにして得られた前記特性の観察結果について、被検物質非投与の場合と比較する。あるいは、前記特性について腎疾患の有無との相関図をあらかじめ作成しておき、得られた前記特性の観察結果をその相関図と比較してもよい。比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0112】
そして、得られた前記特性の観察結果が、被検物質非投与の場合に比べて改善される場合には、該被検物質を腎疾患の予防・治療剤として選択することができる。ここで改善されるとは、(i)壊死した尿細管細胞の蓄積の程度(ヘマトキシリン・エオジン染色、またはAzan染色およびヘマトキシリン染色の程度)が被検物質非投与の場合に比べて有意に低いこと、(ii)糸球体構造の崩壊の程度(ヘマトキシリン・エオジン染色、またはAzan染色およびヘマトキシリン染色の程度)が被検物質非投与の場合に比べて有意に低いこと、(iii)腎臓における炎症性サイトカインの発現量が被験物質非投与の場合に比べて有意に低いこと、(iv)腎臓におけるマクロファージの割合が被験物質非投与の場合に比べて有意に低いこと、(v)BUN値が被検物質非投与の場合に比べて有意に低いこと、(vi)生存率が被験物質非投与の場合に比べて有意に高いことをいう。
【0113】
前記選択された被検物質を腎疾患の予防・治療剤として用いる場合、本発明のAIM類と同様に製剤化され、同様の投与経路・用量で投与することができる。該予防・治療剤の対象となる腎疾患についても、前記と同様でありうる。
【0114】
また、AIM発現不全非ヒト哺乳動物は片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下、腎疾患のモデル動物として有用であることから、該哺乳動物は、腎疾患の予防・治療薬の評価方法に用いることができる。従って、本発明はまた、AIM発現不全非ヒト哺乳動物に片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行うすることによって得られる動物を用いる、腎疾患予防・治療剤の予防治療効果の評価方法を提供する。具体的には、本発明の評価方法は、以下の工程を含む。
(1)片側尿管結紮、一側性腎摘出後の一過性腎虚血再灌流または両側性の一過性腎虚血再灌流を行う条件下、AIM発現不全非ヒト哺乳動物に腎疾患予防・治療剤を投与する工程、
(2)腎疾患予防・治療剤を投与されたAIM発現不全非ヒト哺乳動物の下記特性のいずれか一項目以上を観察する工程:
(i)壊死した尿細管細胞の蓄積と腎実質の線維化、
(ii)糸球体構造の崩壊と線維化、
(iii)腎臓における炎症性サイトカインの発現量、
(iv)腎臓におけるマクロファージの割合、
(v)BUN値、
(vi)生存率、
(3)前記特性のいずれか一項目以上を腎疾患予防・治療剤非投与の場合と比較して、腎疾患予防・治療剤の効果を評価する工程。
【0115】
本発明の評価方法で、AIM発現不全非ヒト哺乳動物に投与される腎疾患予防・治療剤としては、公知の腎疾患予防・治療剤であってよく、たとえば、降圧薬(例、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬、レニン阻害薬、α遮断薬、β遮断薬等);利尿薬(例、炭酸脱水素酵素阻害薬、ループ利尿剤、サイアザイド系利尿薬、抗アルドステロン薬、カリウム保持利尿薬等);活性型ビタミンD3製剤(例、カルシトリオール、アルファカシルドール、マキサカルシトール、ファレカルシトリオール等);経口吸着炭素製剤(例、活性炭等);カリウム補正薬(例、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等);リン吸着薬(例、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩酸セベラマー、炭酸ランタン等)、赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent;ESA)(例、エリスロポエチン製剤)、アミノ酸輸液製剤等が挙げられるが、それらに制限されない。腎疾患予防・治療剤の投与時期、投与方法、投与回数などは前記のスクリーニング方法と同様であってよい。
【0116】
本発明の評価方法で観察される特性の観察方法は、前記スクリーニング方法における記載に従って実施してよい。また、その評価方法について、得られた前記特性の観察結果が、腎疾患予防・治療剤非投与の場合に比べて改善される程度が大きい程、該被検物質を腎疾患の予防・治療剤として予防・治療効果が高いと評価することができる。ここで改善されるとは前記と同様であってよい。
【0117】
また、本発明の後述する実施例において、慢性腎疾患患者の血中AIM濃度が腎機能(eGFR:糸球体濾過量)と相関していることが確認された。特に、血中AIM濃度が一定量より低い慢性腎疾患患者は、2〜3年後において腎機能の悪化が確認された。以上のことから、被験者の血中AIM濃度を測定することによって、慢性腎疾患患者の予後を予測できることが示唆される。従って、本発明は、被検者の試料中のAIM濃度を測定することを含む、腎疾患患者の予後の予測方法を提供する。
【0118】
本発明の予測方法が適用できる被験者は特に制限されないが、例えば、急性腎不全または慢性腎疾患を発症するおそれがあるか、もしくは発症していることが疑われる被験者が挙げられる。慢性腎疾患としては、限定されるものではないが、例えば、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症またはIgM腎症などが含まれる。
【0119】
本発明の予測方法に用いられる試料としては、上記被験者から採取されるものであって、測定対象であるAIM遺伝子産物(例、RNA、蛋白質、その分解産物など)を含有するものであれば特に制限されない。例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、汗、唾液、関節液等の体液もしくはそのフラクション、あるいはそれらに含まれる細胞、特にマクロファージなどが挙げられ、好ましくは、血液、血漿、血清が挙げられる。
【0120】
被験者から採取した試料におけるAIM濃度の測定は、前記試料からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれるAIM遺伝子の転写産物を測定することにより調べることができる。RNA画分の調製は、グアニジン-CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができるが、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit;QIAGEN製等)を用いて、微量のマクロファージから迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。RNA画分中のAIM遺伝子の転写産物を検出する手段としては、例えば、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット、ドットブロット、DNAチップ解析等)を用いる方法、あるいはPCR(RT−PCR、競合PCR、リアルタイムPCR等)を用いる方法などが挙げられる。微量のマクロファージから迅速且つ簡便に定量性よくAIM遺伝子の発現変動を検出できる点で競合PCRやリアルタイムPCRなどの定量的PCR法が好ましい。
【0121】
ノーザンブロットまたはドットブロットハイブリダイゼーションによる場合、AIM遺伝子の転写産物の測定は、該遺伝子の転写産物とハイブリダイズし得る核酸(プローブ)を用いて行うことができる。そのような核酸としては、AIM遺伝子の転写産物に示される塩基配列(例えば、配列番号:1に示される塩基配列)を含む核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸が挙げられる。ハイストリンジェントな条件とは、前記した条件などが挙げられる。より好ましくは、AIM遺伝子の転写産物に示される塩基配列(例えば、配列番号:1に示される塩基配列)と相補的な塩基配列を含む核酸が挙げられる。
【0122】
プローブとして用いられる核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、アンチセンス鎖を用いることができる。該核酸の長さは標的核酸と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はなく、例えば約15塩基以上、好ましくは約30塩基以上である。該核酸は、標的核酸の検出・定量を可能とするために、標識剤により標識されていることが好ましい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔
32P〕、〔
3H〕、〔
14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジンを用いることもできる。
【0123】
ノーザンハイブリダイゼーションによる場合は、上記のようにして調製したRNA画分をゲル電気泳動にて分離した後、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等のメンブレンに転写し、上記のようにして調製された標識プローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中、上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションさせた後、適当な方法でメンブレンに結合した標識量をバンド毎に測定することにより、AIM遺伝子の発現量を測定することができる。ドットブロットの場合も、RNA画分をスポットしたメンブレンを同様にハイブリダイゼーション反応に付し、スポットの標識量を測定することにより、AIM遺伝子の発現量を測定することができる。
【0124】
別の好ましい実施態様によれば、AIM濃度を測定する方法として定量的PCR法が用いられる。定量的PCRとしては、例えば、競合PCRやリアルタイムPCRなどがある。
PCRにおいてプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのセットとしては、AIM遺伝子転写産物のセンス鎖(コード鎖)およびアンチセンス鎖(非コード鎖)とそれぞれ特異的にハイブリダイズすることができ、それらに挟まれるDNA断片を増幅し得るものであれば特に制限はなく、例えば、各々約15〜約100塩基、好ましくは各々約15〜約50塩基の長さを有し、約100bp〜1kbpのDNA断片を増幅するようにデザインされたオリゴDNAのセットが挙げられる。より具体的には、プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのセットとしては、配列番号:1に示される塩基配列を含む核酸(センス鎖)とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸、及び前記の塩基配列に相補的な塩基配列を含む核酸(アンチセンス鎖)とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸が挙げられる。ここでハイストリンジェントな条件とは前記と同義である。より好ましくは、配列番号:1に示される塩基配列と相補的な塩基配列を含む核酸、及び該核酸の塩基配列に相補的な塩基配列を含む核酸が挙げられる。
【0125】
競合RT-PCRとは、目的のDNAを増幅し得るプライマーのセットにより増幅され得る既知量の他の鋳型核酸をcompetitorとして反応液中に共存させて競合的に増幅反応を起こさせ、増幅産物の量を比較することにより、目的DNAの量を算出する方法をいう。したがって、競合RT−PCRによる場合、上記したプライマーセットに加えて、該プライマーセットで増幅でき、増幅後に標的核酸(すなわち、AIM遺伝子の転写産物)の増幅産物と区別することができる(例えば、増幅サイズが異なる、制限酵素処理断片の泳動パターンが異なるなど)既知量のcompetitor核酸が用いられる。標的核酸とcompetitor核酸とはプライマーを奪い合って増幅が競合的に起こるので、増幅産物の量比が元の鋳型の量比を反映することになる。competitor核酸はDNAでもRNAでもよい。DNAの場合、上記のようにして調製されるRNA画分から逆転写反応によりcDNAを合成した後に、上記プライマーセットおよびcompetitorの共存下でPCRを行えばよく、RNAの場合は、RNA画分にcompetitorを添加して逆転写反応を行い、さらに上記プライマーセットを添加してPCRを実施すればよい。後者の場合、逆転写反応の効率も考慮に入れているので、元のmRNAの絶対量を推定することができる。
【0126】
一方、リアルタイムPCRは、蛍光試薬を用いて増幅量をリアルタイムでモニタリングする方法であり、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した装置を必要とする。このような装置は市販されている。用いる蛍光試薬によりいくつかの方法があり、例えば、インターカレンター法、TaqMan
TMプローブ法、Molecular Beacon法等が挙げられる。いずれも、上記のようにして調製されるRNA画分から逆転写反応によりcDNAを合成した後に、上記プライマーセットとSYBR Green I、エチジウムブロマイド等の二本鎖DNAに結合することにより蛍光を発する試薬(インターカレーター)、上記プローブとして用いることができる核酸(但し、該核酸は増幅領域内で標的核酸にハイブリダイズする)の両端をそれぞれ蛍光物質(例:FAM、HEX、TET、FITC等)および消光物質(例:TAMRA、DABCYL等)で修飾したもの(TaqMan
TMプローブまたはMolecular Beaconプローブ)などの蛍光試薬(プローブ)とを、それぞれPCR反応系に添加するというものである。インターカレーターは合成された二本鎖DNAに結合して励起光の照射により蛍光を発するので、蛍光強度を測定することにより増幅産物の生成量をモニタリングすることができ、それによって元の鋳型cDNA量を推定することができる。TaqMan
TMプローブは両端を蛍光物質と消光物質でそれぞれ修飾した、標的核酸の増幅領域にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドであり、アニーリング時に標的核酸にハイブリダイズするが消光物質の存在により蛍光を発せず、伸長反応時にDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により分解されて蛍光物質が遊離することにより蛍光を発する。従って、蛍光強度を測定することにより増幅産物の生成量をモニタリングすることができ、それによって元の鋳型cDNA量を推定することができる。Molecular Beaconプローブは両端を蛍光物質と消光物質をそれぞれで修飾した、標的核酸の増幅領域にハイブリダイズし得るとともにヘアピン型二次構造をとり得るオリゴヌクレオチドであり、ヘアピン構造をとっている時は消光物質の存在により蛍光を発せず、アニーリング時に標的核酸にハイブリダイズして蛍光物質と消光物質との距離が広がることにより蛍光を発する。従って、蛍光強度を測定することにより増幅産物の生成量をモニタリングすることができ、それによって元の鋳型cDNA量を推定することができる。リアルタイムRT-PCRは、PCRの増幅量をリアルタイムでモニタリングできるので、電気泳動が不要で、より迅速にAIM遺伝子の発現を解析可能である。
【0127】
別の態様では、被験者から採取した試料におけるAIM濃度の測定は、該試料から蛋白質画分を調製し、該画分中に含まれるAIMを検出することにより調べることができる。AIMの検出は、AIMに対する抗体を用いて、免疫学的測定法(例:ELISA、FIA、RIA、ウエスタンブロット等)によって行うことができる。あるいはまた、AIMの検出は、MALDI-TOFMS等の質量分析法を用いても行うことができる。
尚、AIMに対する抗体は、配列番号:2または配列番号:4に示されるアミノ酸配列と、同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列もしくは部分アミノ酸配列を含む蛋白質を感作抗原として、通常使用されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体作製技術に従って取得することができる。
【0128】
個々の免疫学的測定法を本発明の診断方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてAIMの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。例えば、入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol.70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書Vol.73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書Vol.74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書Vol.84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書Vol.92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書Vol.121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
【0129】
本発明の予測方法において、具体的には、以下の工程を含む方法であってよい。
(1)健常者および被験者の試料中のAIM濃度を測定する工程、
(2)健常者で測定されたAIM濃度と被験者で測定されたAIM濃度を比較する工程。
【0130】
前述のとおり、本発明のAIMは、慢性腎疾患患者において血中濃度が一定水準より低い慢性腎疾患患者は、2〜3年後において腎機能が悪化する。したがって、上記のようにして、AIM濃度を測定した結果、健常者または一定水準と比べて低下していた場合、被験者の慢性腎疾患が将来的に悪化する可能性が高いと判定することができる。あるいは、慢性腎疾患の悪化とAIM濃度との相関図をあらかじめ作成しておき、得られた測定結果をその相関図と比較してもよい。比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0131】
また、本発明の予測方法は、上記(1)、(2)の工程に加えて、(3)被験者においてAIM濃度が、健常者に比べて有意に
低かった場合には、被験者の慢性腎疾患が将来的に悪化する可能性が高いと判断する工程を含んでもよい。
【0132】
さらに、本発明の後述する実施例において、急性腎不全患者や両側性の一過性腎虚血再灌流を実施したマウスにおいて、健常個体と比較して、尿中に有意に高い濃度のAIMを認めた。以上のことから、被験者の尿中AIM濃度を測定することによって、急性腎不全を検査できることが示唆される。従って、本発明は、被検者の試料中のAIM濃度を測定することを含む、急性腎不全の検査方法を提供する。
【0133】
本発明の検査方法が適用できる被験者は特に制限されないが、例えば、急性腎不全を発症するおそれがあるか、もしくは発症していることが疑われる被験者が挙げられる。また、本発明の検査方法に用いられる試料としては、本発明の腎疾患患者の予後の予測方法において記載された通りであるが、好ましくは、尿が挙げられる。また、被験者から採取した試料におけるAIM濃度の測定は、本発明の腎疾患患者の予後の予測方法において記載された通りである。
【0134】
本発明の検査方法において、具体的には、以下の工程を含む方法であってよい。
(1)健常者および被験者の試料中のAIM濃度を測定する工程、
(2)健常者で測定されたAIM濃度と被験者で測定されたAIM濃度を比較する工程。
【0135】
前述のとおり、本発明のAIMは、急性腎不全患者において尿中濃度が、健常者より有意に高い。したがって、上記のようにして、AIM濃度を測定した結果、健常者と比べて有意に高い場合、被験者が急性腎不全に罹患していると判定することができる。あるいは、急性腎不全とAIM濃度との相関図をあらかじめ作成しておき、得られた測定結果をその相関図と比較してもよい。比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0136】
また、本発明の検査方法は、上記(1)、(2)の工程に加えて、(3)被験者においてAIM濃度が、健常者に比べて有意に高かった場合には、被験者が急性腎不全に罹患していると判断する工程を含んでもよい。
【0137】
さらに、本発明は、腎疾患の診断または予後の予測キットにも及ぶ。該キットは、上述の本発明の検査方法または予測方法を簡便に実施するためのキットであればよく、特に限定されない。該キットは、
(a)AIM遺伝子の転写産物とハイブリダイズし得る核酸プローブまたは核酸プライマー、および/または
(b)AIMに対する抗体
を含有してなる。該キットが2以上の上記核酸および/または抗体を含む場合、各核酸または抗体は互いにAIM遺伝子の塩基配列上の異なる部分を特異的に認識、またはAIM遺伝子の翻訳産物の異なるエピトープを特異的に認識し得るものである。
【0138】
本発明のキットが前記(a)の核酸を含有する試薬を構成として含む場合、該核酸としては、本発明の検査方法または予測方法において前記したプローブ用核酸もしくはプライマー用オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0139】
AIM遺伝子の発現を検出し得る核酸は、乾燥した状態もしくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水もしくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、該核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。
あるいは、該核酸は、適当な固相に固定化された状態で提供することもできる。固相としては、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。また、固定化手段としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
該キットに含有される核酸は、同一の方法(例:ノーザンブロット、ドットブロット、DNAアレイ技術、定量RT-PCR等)によりAIM遺伝子の発現を検出し得るように構築されていることが特に好ましい。
【0141】
本発明のキットが前記(b)の抗体を含有する試薬を構成として含む場合、該抗体としては、本発明の検査方法または予測方法において前記した抗体が挙げられる。
【0142】
本発明のキットを構成する試薬は、AIM遺伝子の発現を検出し得る核酸や抗体に加えて、該遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質であって、共存状態で保存することにより反応に悪影響を及ぼさない物質をさらに含有することができる。あるいは、該試薬は、AIM遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質を含有する別個の試薬とともに提供されてもよい。例えば、AIM遺伝子の発現を検出するための反応がPCRの場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、dNTPs、耐熱性DNAポリメラーゼ等が挙げられる。競合PCRやリアルタイムPCRを用いる場合は、competitor核酸や蛍光試薬(上記インターカレーターや蛍光プローブ等)などをさらに含むことができる。また、AIM遺伝子の発現を検出するための反応が抗原抗体反応の場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、competitor抗体、標識された二次抗体(例えば、一次抗体がウサギ抗ヒトAIM抗体の場合、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等で標識されたマウス抗ウサギIgGなど)、ブロッキング液等が挙げられる。
【0143】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトAIMの塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
ヒトAIMのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ネコAIMの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
ネコAIMのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ネコAIMの転写産物の相補的配列を示す。
〔配列番号:6〕
マウスAIMのアミノ酸配列を示す。
【実施例】
【0144】
以下において、実施例および参考例により本発明をより具体的にするが、この発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
実施例1:AIMによる慢性腎不全または腎線維化の進行抑制
動物を用いた、多用される腎疾患モデルの一つに片側尿管結紮術(UUO)モデルがある。これは、片側の尿管を結紮することにより、結紮を施した腎実質の尿細管および糸球体が、徐々に壊死し、それに引き続き炎症や線維化が生じ、最終的にはその腎臓は機能不全となる。AIM欠損マウス(AIM-KO)と野生型マウス(WT)にそれぞれUUOを施術し、経過を観察した(n=6 for each)(
図1A)。正常腎の構造はWT、AIM-KOとも全く差異はなかった。しかし、14日目のUUO腎において、線維を染色するAzan染色と、ヘマトキシリン染色を同時に行うと、WTでは線維化の広がりが見られるが、相当数の糸球体および尿細管は未だ正常構造を保ち、壊死に陥っていない尿細管も多くみられた。それに対してAIM-KOでは、壊死した尿細管細胞が広範囲に蓄積し、糸球体構造も破壊されており、腎実質の構造がもはや崩壊していた。観察した全てのマウスで同様の結果が得られた。
また同様に、AIM-KOとWTマウスにそれぞれUUOを施術し、14日目でHE、PAS、Azan染色によって腎臓を観察した(n=6 for each)(
図1B)。WTでは線維化の広がりが見られるが、相当数の糸球体および尿細管は未だ正常構造を保っていた(HE、Azan染色)。一方AIM-KOでは、線維化が進行し、糸球体構造は破壊されており、腎実質の構造がもはや崩壊していた。PAS染色では、AIM-KOマウスで尿細管内外に壊死した細胞塊(PAS陽性)が広範囲に蓄積していた。観察した全てのマウスで同様の結果が得られた。
【0146】
実施例2:AIMによる急性腎不全(day7まで)から腎障害の慢性化(慢性腎不全化)(day14)の進行抑制
別の腎疾患モデルに一過性腎虚血再灌流(IR)モデルがある。一過性腎虚血再灌流では、あらかじめ一方の腎臓を摘出しておき、残った腎臓側の腎動脈を結紮し虚血にする。30分後結紮を解除し血流の再灌流を行うが、この一過性の虚血のために尿細管の壊死が軽度の線維化を伴い3日間程度進行し、それに伴い腎機能が悪化する。AIM欠損マウス(AIM-KO)と野生型マウス(WT)にそれぞれIRを施術し、経過を観察した(
図2)。WTでは、腎機能の悪化後、壊死した細胞が除去され、壊死しなかった尿細管が急速に分裂し、14日後には、ほぼ正常の尿細管構造を回復した。それと並行して、腎機能も正常化した。ところが、AIM-KOでは、初期の尿細管のダメージの程度はWTと差異は見られないが、壊死した細胞の除去が進まず、壊死細胞が蓄積した。壊死細胞の除去が進行しないため、新しい尿細管細胞の分裂は抑制され、二次的な炎症や線維化が進行した。N=6で実験を行ったが、全てのマウスで同様の結果が得られた。すなわち、実施例1と実施例2の結果から、AIMがないと壊死した尿細管細胞が蓄積し、腎臓の構造・機能修復が著しく損なわれることが明らかとなった。
【0147】
実施例3:AIMによる急性腎不全後の炎症の遷延(腎障害の慢性化)抑制
実施例2で行った一過性腎虚血再灌流(IR)を野生型マウス(WT)およびAIM欠損マウス(AIM-KO)に施し、術後の炎症性マクロファージの浸潤をマクロファージマーカーであるF4/80の免疫染色によって観察した(
図3A)。術後3日目ではWTに比べAIM KOマウスでは、F4/80陽性のマクロファージの浸潤が明らかに亢進した。また、術後14日目でWTでは、マクロファージの浸潤は軽減したが、AIM KOマウスでは更に増悪した。このマクロファージ浸潤の経過に伴い、炎症性サイトカインの一つであるMCP-1の発現も同様にAIM KOマウス腎臓で有意に増加していることが、quantitative RT-PCRの実験により明らかになった(
図3B)。N=6で実験を行ったが、全てのマウスで同様の結果が得られた。
【0148】
実施例4:AIMによる急性腎不全の回復
AIM-KOマウスに実施例2で行ったIRを施し、腎機能が一過性に最も悪化する3日目、および4日目、7日目にそれぞれ組換えAIM(rAIM)またはPBSを100μg腹腔内投与し(n=6 for each)、経過を観察した(
図4)。PBSを投与した群では、実施例2の結果と同様に、その後壊死細胞の蓄積や糸球体の破壊など進行し、腎機能(BUN値)も、3日目よりはある程度改善するものの正常値に復旧することはなく、後半徐々に悪化の傾向を見せた。しかし、rAIMを投与した群では、3日目のrAIM投与後にBUN値は有意に改善し、7日目には既に正常範囲に戻り、その後もさらに低下した。組織学的にも、7日目には壊死した尿細管細胞は除去されており、腎実質の構造も正常化した。すなわち、AIM投与は壊死細胞の除去を亢進させ、尿細管の再生を促し、腎機能を回復できることが明らかとなった。
【0149】
実施例5:急性腎不全により壊死した尿細管上皮細胞塊へのAIMの付着と壊死巣の除去
AIM-KOマウスに実施例2で行ったIRを施し、術後rAIM (100μg)を静脈投与し、3、6、12時間後に腎臓の切片を抗AIM抗体で染色した。AIM投与後3時間で、尿細管の壊死部分にAIMが強く付着していることが確認された(
図5上段:phase-contrastによる写真中、壊死巣をNで指している。
図5下段:AIMシグナル(矢頭)は壊死巣と重なって観察された)。また、時間経過と共に、壊死巣部分は縮小し、12時間後にはほぼ痕跡程度しか確認されなかった。すなわち、AIMによるIR後の腎機能回復(実施例4)は、壊死巣にAIMが付着することによって、その除去を促し、それに伴い炎症の抑制ひいては組織再生が進行していたと考えられる。
【0150】
実施例6:急性腎不全後の尿中AIMの出現
一方の腎臓を摘出せず、両方の腎臓の腎動脈を結紮し虚血にする、両側性の一過性腎虚血再灌流(IR)を施した野生型マウス(WT)の尿をIR後1日目、7日目にELISA法によって検出した(
図6)。通常状態のマウスの尿にはAIMはほとんど検出されなかった(IR前)が、腎障害が最も激しいIR後一日目では尿中に多量のAIMが検出された。腎障害の回復と共に尿中AIMは減少した(IR後7日目)。なお、IRによる腎障害時は排出される尿は希釈尿となるため、尿中AIM値は尿中クレアチニン値でnormalizationした。
【0151】
実施例7:AIM欠損による急性腎不全の増悪(生存率)
WTおよびAIM-KOマウスに両側性のIRを施し、生存率をみた(n=8 each)(
図7)。IR後7日目で、WTは80%以上生存している条件でAIM-KOは30%以下の生存率であり、死亡したマウスのほとんどはIR後3日目までに死亡していた。
【0152】
実施例8:クリニカルスコア
WTおよびAIM-KOマウスに両側性のIRを施し、経時的にクリニカルスコアを解析した(
図8)。クリニカルスコアは、動きの機敏さの欠如、目の混濁、尾における痛み刺激に対する反応性の低下、毛並の悪さ、についてそれぞれ加点(0:異常なし、1:軽度の症状有、2:中等度の症状有、3:重度の症状有)し、その合計をグラフ化した。WTではIR後一日目にスコアが最大値を示し徐々に軽減したが、AIM-KO ではスコアは高値のままであった。
【0153】
実施例9:急性腎不全に伴う腎機能障害(BUN値)
WTおよびAIM-KOマウスに両側性のIRを施し、腎機能のマーカーであるBUNを継時的に計測した(n=8)(
図9)。実施例8のクリニカルスコアと同様に、BUNはWTでは一日目がピークでその後低下するが、AIM-KOでは2日目まで上昇しその後も著明な低下は認められなかった。
【0154】
実施例10: 急性腎不全に伴う腎機能障害(腎組織:PAS染色)
WTおよびAIM-KOマウスに両側性のIRを施し、腎組織を継時的にPAS染色で解析した(
図10)。実施例8のクリニカルスコアや実施例9のBUN値と同様に、腎機能障害は、WTでは一日目がピークでその後回復し、7日目には正常な尿細管構造とbrush border(冊子縁;矢頭)を持った近位尿細管上皮が再生した。しかしAIM-KOでは、障害は継続し、近位尿細管中にPAS陽性の死細胞塊が蓄積しており7日目に至っても除去されなかった。
【0155】
実施例11:急性腎不全により壊死した尿細管上皮細胞塊の定量化
図10で認められる近位尿細管中の上皮細胞の死細胞塊の面積を、1切片辺りの全面積に対する割合として算出することによって定量化した(n=3〜5)(
図11)。実施例8〜10から得られる知見と同様の推移を示しており、AIM-KOでは死細胞塊の蓄積・残留が明らかであった。
【0156】
実施例12: AIMによる急性腎不全後の炎症の遷延(炎症性サイトカイン)
WTおよびAIM-KOマウスに両側性のIRを施し、IR前およびIR後7日目の腎臓からRNAを抽出し、炎症性サイトカインであるIL-1βおよびIL-6について定量的RT-PCRで解析を行った(n=3 each)(
図12)。両方のマーカーについてAIM-KOではWTに比べて高値であり、IRによる腎組織破壊に伴う炎症の遷延が示唆された。
【0157】
実施例13: AIMによる急性腎不全後の炎症の遷延(浸潤マクロファージ)
WTおよびAIM-KOマウスに両側性のIRを施し、IR後7日目の腎臓をコラゲナーゼ処理したのちフローサイトメーターで解析することによって、マクロファージ(Mac-1陽性細胞)の割合を調べた(
図13)。実施例12の結果と同様に、AIM-KOでは腎臓内のマクロファージの割合がWTに比べ高かった。それぞれ3匹のマウスについて解析を行い、同様の結果を得た。
図13は、representative resultを提示している。
【0158】
実施例14:急性腎不全により壊死したマウス尿細管内上皮細胞塊へのAIMの集積
両側性のIRを施したWTマウスの腎臓連続切片について、PAS染色(左)と抗AIM抗体による免疫染色(右)を行った(
図14)。多くの死細胞塊にAIM(白)が集積していることが認められた。
【0159】
実施例15:急性腎不全患者の壊死した尿細管内上皮細胞塊へのAIMの集積
腎梗塞による急性腎不全で死亡したヒト患者の腎臓連続切片について、PAS染色(左)と抗AIM抗体による免疫染色(右)を行った(
図15)。実施例14のIRマウス同様、多くの死細胞塊にAIM(白)が集積していることが認められる。
【0160】
実施例16:急性腎不全患者及び急性腎不全マウスにおける尿中AIMの検出
急性腎不全(AKI)で病院に搬送された患者および健常人を3名ずつ、また両側性のIRを施したWTマウス5匹について、IR前、IR1日後、および7日後の尿について、AIM濃度をELISAによって解析した(
図16)。健常人の尿にはAIMはほとんど認められないが、AKI患者の尿には認められた。マウスにおいても、IR前には認められないが、腎障害が著しいIR1日後では有意な量のAIMが尿中に認められ、腎障害が改善した7日目ではAIMの量が減少していた。
【0161】
実施例17:AIM集積による尿細管内上皮細胞塊の縮小
AIM-KOマウスに両側性のIRを施し、IR後3日目に200μgのrAIMを投与して経時的に取得した腎臓切片について、PAS染色および抗AIM抗体による免疫染色を行った(
図17)。AIMが集積した死細胞塊は速やかに縮小した。
【0162】
実施例18:in vitro phagocytosis assay(腎由来マクロファージを用いた実験)
AIM-KOマウスに両側性のIRを施し、IR後3日目の腎臓をコラゲナーゼ処理し、F4/80陽性のマクロファージをFACSソーターを用いて単離した後、その貪食能を解析した(
図18)。貪食の標的として、ヒト尿細管細胞株であるHK2細胞を熱処理で壊死させFITCでラベルした後、リコンビナントAIM(rAIM)またはbovine serum albumin (BSA)でコートしたHK2死細胞を用いた。Noneとしては、rAIMでもBSAでもコートしていないHK2死細胞を用いた。マクロファージと上記3種類のHK2死細胞をincubateし、マクロファージ内に取り込まれたFITC陽性のHK2死細胞をフローサイトメーター(FACS)で経時的に解析した。BSAでコートしたHK2死細胞、あるいはコートしていないHK2死細胞に対してrAIMでコートしたHK2死細胞はより高効率にマクロファージに貪食されることが示された。
【0163】
実施例19:in vitro phagocytosis assay(骨髄由来マクロファージを用いた実験)
実施例18と同様の実験を、貪食細胞としてAIM-KO由来の骨髄細胞をM-CSFによって分化させたマクロファージを用いて行った(
図19)。実施例18では、BSAでコートしたHK2死細胞とコートしていないHK2死細胞では貪食のされ方に差がなかったので、本実施例ではコートしていないHK2死細胞は使用しなかった。実施例18の結果と同様に、rAIMでコートしたHK2死細胞の貪食が上昇した。
【0164】
実施例20:AIM投与によるAIM-KOマウスの急性腎不全治療
AIM-KOマウスに両側性のIRを施した後、1日目から3日目までrAIM 200μg/マウスまたは等容量のPBSを静脈注射した(n=5−6)。PBSを打ったマウスの生存率は7日目で40%以下であったが、rAIMを投与したマウスでは100%に回復した(
図20)。
【0165】
実施例21:AIM投与によるクリニカルスコアの回復
実施例20のマウスについて、実施例8と同様にクリニカルスコアを検討した(
図21)。rAIM投与後からクリニカルスコアの著しい回復を認めた。
【0166】
実施例22:AIM投与による腎機能回復
実施例20のマウスについて、実施例9と同様に経時的にBUNを測定した(
図22)。rAIM投与によりBUN値の有意な低下を認めた。
【0167】
実施例23:AIM投与による壊死した尿細管内上皮細胞塊の除去
AIM-KOマウスに両側性のIRを施した後、1日目から3日目までrAIM 200 μg/マウスまたは等容量のPBSを静脈注射し、3日目と7日目の腎臓の状態をPAS染色で解析した(
図23)。PBS投与では近位尿細管内死細胞が蓄積しているが、rAIMを投与したマウスでは著しい除去が認められ、7日目にはbrush border (冊子縁)を持つ尿細管細胞が回復した。
【0168】
実施例24:AIM投与後の壊死した尿細管内上皮細胞塊の定量化
IR後7日目の腎臓で、
図23で認められるような近位尿細管中の死細胞塊の面積を、1切片辺りの全面積に対する割合として算出することによって定量化した(n=3 each)(
図24)。rAIM投与群では死細胞塊の著しい減少が認められた。
【0169】
実施例25:AIM投与による炎症反応の低下(炎症性サイトカイン)
実施例20のマウスについて、IR後7日目の腎臓からRNAを抽出し、炎症性サイトカインであるIL-1βおよびIL-6について定量的RT-PCRで解析を行った(
図25)。rAIM投与群ではIL-1β、IL-6ともPBS投与群に比較して低下しており、急性腎不全に伴う炎症反応もrAIM投与によって抑制されたことが示唆された。
【0170】
実施例26:非致死性(マイルド)のIRによる急性腎不全に対するAIMの効果
実施例6〜25で実施した両側性のIRでは、虚血を30分間実施し、AIM-KOに対し致死率の高い程度の急性腎不全を誘導した。本実施例では、虚血時間を短くし(30分→25分)、AIM-KOでも7日目での生存率が100%ある程度の腎不全をAIM-KOマウスに誘導し、実施例20と同様に1日目から3日目までrAIMまたはPBSを頸静脈に注射投与した。このようなマイルドな条件のIRにおいても、rAIM投与によってBUNの改善をより加速させることが出来た(n=5 each)(
図26)。
【0171】
実施例27:WTマウスに対するAIMの治療効果
もともと内因性のAIMを持っているWTマウスに対し両側性のIR(虚血30分間)を施し、実施例20と同様に、rAIMまたはPBSを投与した(n=5〜6)。WTではもともと内因性のAIMによって腎障害は回復するが、rAIMによってその改善をさらに加速できた(
図27)。rAIM投与によって、2日目まで上昇していたBUN値が既に低下していることが分かった。
【0172】
実施例28:AIM欠損による腎不全の慢性化
実施例26と同様のマイルドなIRをWTおよびAIM-KO マウスに施し、IR後28日目の腎臓の状態をPAS染色(死細胞塊をみるため)とAzan染色(線維化をみるため)によって解析した(
図28)。28日目でもAIM-KOではPAS陽性の死細胞塊がWTに比べて多少残っていた。またAIM-KOでは著明な線維化(Azan陽性)が認められ、尿細管の構造もWTに比べていびつであった。
【0173】
実施例29:AIM欠損による腎線維化の亢進
実施例28のマウスについて、IR後28日後の腎臓からRNAを抽出し、定量的RT-PCRで4種類の線維化マーカーについて解析した(n=4 each)(
図29)。AIM-KOではWTに比べ、線維化マーカーが全て上昇した。
【0174】
実施例30:ヒト糖尿病性慢性腎不全患者での血中AIM値
年齢がほぼ等しい、(1)健常者(男142、女:54)、(2)腎障害のない(Cre<1.0 mg/dl)糖尿病患者(男:70、女:57)、(3)糖尿病性の慢性腎不全患者(男:146、女:54)、について男女分けて血中AIM濃度を計測した(
図30)。男女とも、(1)と(2)ではAIM値に有意差はなかったが、(3)では有意に低かった。
【0175】
実施例31:ヒト慢性腎臓病患者おける腎機能と血中AIMの相関
慢性腎臓疾患(CKD)患者の血中AIM値を解析し、個々の腎機能のマーカーであるeGFR(糸球体濾過量)および血中クレアチニン値との相関を調べた(n=55)。CKDの原因疾患としては、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、高血圧性腎症、IgA腎症などが挙げられる。また男女混合で患者年齢は60歳以下である。
図31Aのように、血中AIM値と腎機能は有意な相関関係を示した。さらに、この解析の時点で比較的AIM値が高い人は、2−3年後の追跡調査で腎機能が改善しており、逆にAIMが低値だった患者は腎機能が悪化していた(
図31B)。すなわち、AIMはCKD患者において、現在の腎機能のみならず予後を予測する有用なマーカーとなり得る。
【0176】
実施例32:ネコにおける血中AIMの欠損(あるいは著しい低下)
イヌ(3匹)、ネコ(3匹)およびマウスのそれぞれの血清を抗AIM抗体(Rab2:マウスrAIMをウサギに免疫して作製したポリクローナル抗体。これまでマウスおよびヒトAIMを検出することが分かっている)を用い、還元条件で免疫ブロットを行った(
図32A)。その結果、イヌ血清にはシグナルが確認できたが、ネコでは3匹ともほとんどシグナルが検出できなかった。これは抗体の問題ではなく、ネコAIM cDNAをクローニングし(実施例36参照)、pCAGGS発現ベクターにC末端にHAタグを付けた形で組み込み、HEK293T細胞に発現させた培養上清から抗HA抗体カラムを用いて精製したネコrAIM蛋白質は、マウスrAIMと同程度に本抗体を用いた還元条件での免疫ブロットで検出することが出来た(
図32B)。これらの結果から、本実施例で検討を行ったネコは機能的なAIM mRNAを発現しているが、血中にAIM蛋白質としてほとんど存在していないことが分かった。
【0177】
実施例33:ネコ血中におけるネコAIMとIgMの結合性
図35に示すネコAIM cDNAを発現ベクターに挿入したプラスミドを、HEK293T細胞にトランスフェクションし、その培養上清から精製した組換えネコAIM(1 mg)をネコ(雑種、オス2歳3か月齢)に静注し1時間後に採血し、血清分離した。血清を、ゲルによるサイズ分画を行い、各分画についてAIMとIgMについてウエスタンブロット法により解析した。
図33Aに示すように、AIMの存在する分画とIgMの存在する分画は明らかに異なっている。この結果は、マウスAIMをAIM KOマウスに静注した血清を同様に分画解析した結果(
図33B、比較例)(IgMとAIMの分画が完全に一致している)とは異なっている。すなわち、本来AIMは、血液中でIgMと結合し、その安定性が保たれる(先行文献:Arai et al., Cell Reports 3: 1187-1198, 2013)結果、AIMの血中濃度が維持される。しかし、ネコではAIMがIgMと結合できないため、血中におけるAIMの安定性が保てず、その結果、AIMの血中濃度が維持できないと考えられる。
【0178】
実施例34:ネコ血中におけるマウスAIMとIgMの結合性
マウスAIMを用いて、実施例33と同様な試験を実施した。組換えマウスAIM(1 mg)をネコ(雑種、オス2歳3か月齢)に静注し1時間後に採血し、血清分離した。血清を、ゲルによるサイズ分画を行い、各分画についてAIMとIgMについてウエスタンブロット法により解析した。
図34に示すように、マウスAIMの存在する分画とネコIgMの存在する分画は完全に一致した。したがって、ネコAIMと異なり、マウスAIMはIgMと結合し、血中で安定すると考えられる。
【0179】
実施例35:マウスAIMのIgMへの結合部位
C末端を欠損した組換え改変マウスAIMを複数作製した。これらの改変マウスAIMとIgMの結合をin vitroで確認した。その結果、SRCR3ドメインの一部を欠損した改変マウスAIMは、IgMとの結合が著しく低下した。よって、マウスAIMのSRCR3ドメインがIgMとの結合に重要であることがわかった。
【0180】
実施例36:ネコAIM cDNA配列
NCBI Resourcesに公開されているネコCD5L(=AIM)の予想配列(GenBank Accession No.:XM_003999688.1)をもとにプライマーを複数設計し、ネコ脾臓のcDNAプールからネコAIM cDNAの全長(配列番号:5)を単離した(
図35)。配列上、特にリーダーペプチドをコードする配列が、公開されている配列と大きく異なっていた。
【0181】
実施例37:リーダーペプチドの疎水性
ネコ、ヒト、マウス、イヌ、それぞれのAIM蛋白質のリーダーペプチド配列の疎水性を示す(
図36〜39)。いずれも十分な疎水性を持ち、分泌蛋白質としての条件を満たした。なお、ネコは我々が単離したcDNAから、イヌAIMに関しては、NCBI Resourcesに公開されている予想配列(GenBank Accession No.:XM_846487.2)からリーダーペプチドについて解析した。
【0182】
実施例38:ヒト、ネコ、マウスのAIMアミノ酸配列の比較
リーダーペプチド(LS)、各SRCR、およびヒンジ部分について3者でアミノ酸配列の比較を示す(
図40)。図中、3者で共通しているアミノ酸を“*”で、ヒトとネコのみで共通しているものは“.”で、ヒトとマウスでのみ共通しているものは“:”で示した。
【0183】
実施例39:ネコの血中AIMの解析
実施例32においては、抗マウスAIM抗体を使用してネコAIMの検出を試みたが、本実施例においては、ネコAIMのcDNAにHAタグを連結したDNAを発現ベクターに組み込み、HEK293T細胞に遺伝子導入することによってC末端にHAペプチドを負荷したリコンビナント・ネコAIMタンパク質(rcAIM-HA)を産生した。それをマウスに免疫して、抗ネコAIMモノクローナル抗体を樹立した。その抗体を用いて、様々な系統のネコ(48個体)について血中AIM濃度を還元型のウエスタンブロッティング法により解析した(
図41)。濃度のコントロールとしてrcAIM-HAを用いた。その結果、系統に関わらず、AIMが検出される個体と、AIMが検出されない個体がいることが分かった。AIMが検出される個体のうち、代表的な4個体の血中AIM濃度の平均値は16.8μg/mlであり、これはマウスやヒトの約5μg/mlよりも著しく高値であった。
【0184】
実施例40:ネコに対するIR法の確立
血中AIM濃度が高いネコでIRによる急性腎不全誘導法を確立した。全身麻酔下で腹腔鏡下で両側腎動脈をクランプで1時間結紮したのち開放した。その後血液及び尿を経時的に採取し、腎機能を検討した。
図42に血中BUN値とCre値の推移を示す。IR後12時間でBUN値、Cre値は共にピークとなったが、その後7日目まで改善しなかった。すなわちAIM-KOマウスと同じように急性腎不全からの回復が障害されている可能性が高いことが示唆された。
【0185】
実施例41: IR後のネコにおける血中および尿中AIMの解析
マウスではIR後尿中にAIMが検出され、それが尿細管中に詰まった死細胞塊に集積すると考えられる。IR後のネコの血清および尿を抗ネコAIM抗体を用いて還元型ウエスタンブロッティング法によって解析した結果、ネコではIR後尿中にAIMは検出されなかった(
図43)。また血中AIMの量にも明らかな変化は起こらなかった。
【0186】
実施例42:急性腎不全を誘導されたネコの近位尿細管内の死細胞塊におけるAIM集積の有無
ネコに両側性のIRを施し3日目の腎臓について、尿細管内壊死細胞塊にAIMが集積しているかについて免疫染色によって解析した(
図44)。近位尿細管内に壊死細胞塊は検出された(白矢印部)が、同箇所にAIMの集積は認められなかった。実施例41において、IR後尿中にAIMは検出されなかったことを示したが、その結果、尿細管中の死細胞塊にAIMが達しなかったことが示唆された。
【0187】
実施例43:急性腎不全を誘導されたネコに対するAIM投与の効果
実施例40の記載の方法と同様に、ネコ(メス5歳)に両側性のIRを施し、24時間後に麻酔下で動脈カテーテルを鼠蹊部動脈より挿入し、腎動脈までカテーテル先端を進め、rAIM 50mgをPBS50mlに溶解した溶液を片側腎動脈にそれぞれ25ml(rAIM:25mg)ずつ注入した。別のネコ(同じくメス5歳)に同様にIRおよびカテーテル挿入を行い、PBSのみを片側腎動脈にそれぞれ25mlずつ注入した。IR前とrAIMまたはPBS注入後24時間(IR後48時間)での体表面積で標準化したGFR(Glomerular Filtration Rate;糸球体濾過量)を示す(
図45)。PBSのみ注入したネコでは、GFRが低下し腎機能が低下していたが、rAIMを注入したネコではGFRの低下は見られず、腎機能の低下が起きなかった。
【0188】
実施例44:急性腎不全を誘導されたネコに対するAIM投与の効果
実施例43の記載の方法と同様に、両側性のIRを施し、rAIMまたはPBS注入後24時間(IR後48時間)で腎組織をPAS染色で解析した(
図46)。PBSを注入したネコでは尿細管上皮細胞の壊死と脱落、尿細管構造の破壊および間質の増殖が認められたが、rAIM注入したネコでは尿細管上皮細胞は既に回復しており冊子縁も復活し、構造も復元していた。また間質もPBSを注入したネコに比べて薄く、増殖は認められなかった。組織学的にもrAIMによる腎不全の治癒は明らかである。
【0189】
実施例45:ネコに対するAIM投与の効果
6〜8歳のネコに、AIMまたはvehicleを連日投与する。投与2〜4週後に腎機能(BUN値)を測定する。AIM投与群では、vehicle投与群で観察される腎機能の悪化が抑制される。従って、AIMがネコの腎機能悪化、腎不全の予防に有用であることがわかる。また、AIMの代わりに、AIMの機能をアゴニスティックに調節できる薬剤(AIM活性を有するAIMの部分ペプチドを含む)やAIMの発現を誘導する薬剤を使用しても同様の結果が得られる。
【0190】
実施例46:ネコに対する改変AIM投与の効果
ネコAIMのSRCR3ドメインをマウスAIMのSRCR3ドメインに改変し、IgMと結合する改変ネコAIMを作製する。6〜8歳のネコに、改変AIMまたはvehicleを連日投与する。投与2〜4週後に腎機能(BUN値)を測定する。改変AIM投与群では、vehicle投与群で観察される腎機能の悪化が抑制される。従って、AIMがネコの腎機能悪化、腎不全の予防に有用であることがわかる。また、改変ネコAIMは血中のIgMと結合し、安定化することから、ネコAIMを投与するよりも低用量の改変ネコAIM投与で有効性が得られる。改変ネコAIMは、ネコIgMと結合すれば良く、限定されない。