特許第6460554号(P6460554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.の特許一覧

<>
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000002
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000003
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000004
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000005
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000006
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000007
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000008
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000009
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000010
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000011
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000012
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000013
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000014
  • 特許6460554-3D物体の生成 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6460554
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】3D物体の生成
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20190121BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190121BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190121BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20190121BHJP
   B29C 64/291 20170101ALI20190121BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20190121BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20190121BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20190121BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B29C64/165
   B29C64/291
   B33Y50/02
   B29C64/236
   B29C64/295
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-536528(P2017-536528)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公表番号】特表2018-501994(P2018-501994A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015051998
(87)【国際公開番号】WO2016119898
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】デ・ペナ,アレハンドロ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】コマス,エステベ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,フェルナンド
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−527481(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0306379(US,A1)
【文献】 米国特許第06217816(US,B1)
【文献】 特開2012−131094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0156516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B29C 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体を生成するための装置であって、
第1の走査キャリッジと、
第2の走査キャリッジとを含み、
前記第1の走査キャリッジは、前記第1の走査キャリッジが使用中に構築表面の上を移動する際に、前記構築表面の領域を予熱するための第1のエネルギー源を含み、
前記第2の走査キャリッジは、前記第2の走査キャリッジが使用中に構築表面の上を移動する際に、前記構築表面の領域を予熱するための第2のエネルギー源を含み、
前記第1の走査キャリッジ及び前記第2の走査キャリッジがそれぞれ、使用中に第1の走査軸および第2の走査軸の上を走査し、前記第1の走査軸が前記第2の走査軸に直交している、装置。
【請求項2】
前記第1のエネルギー源および前記第2のエネルギー源のそれぞれが、その個々の走査軸に直交する、構築表面の幅に広がる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の走査キャリッジが、構築表面の領域の上に薬剤を分配するための薬剤分配器を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のエネルギー源は、前記第1の走査キャリッジが使用中に如何にして構築表面を横切って移動するかに関して、前記薬剤分配器の上流側および/または下流側に配列される、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の走査キャリッジが、使用中に構築表面の領域の上に構築材料を分配するための構築材料分配器を含む、請求項1〜4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
前記第2のエネルギー源は、前記第2の走査キャリッジが使用中に如何にして構築表面を横切って移動するかに関して、前記構築材料分配器の上流側および/または下流側に配列される、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のエネルギー源は、前記第2の走査キャリッジが使用中に如何にして構築表面を横切って移動するかに関して、前記構築材料分配器の上流側および下流側に配列される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の走査キャリッジが使用中に構築表面を横切って移動する際に前記構築材料分配器の上流側に配列された第2のエネルギー源が、前記第2の走査キャリッジが前記構築表面を横切って走査する際に構築材料を予熱するように制御され、前記第2の走査キャリッジが使用中に前記構築表面を横切って移動する際に前記構築材料分配器の下流側に配列された第2のエネルギー源が、前記第2の走査キャリッジが使用中に前記構築表面を横切って走査する際に、薬剤が予め塗布された構築材料の任意の領域を溶解するように制御される、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のエネルギー源および前記第2のエネルギー源のそれぞれが、複数のエネルギー源セグメントを含む、請求項1〜8の何れかに記載の装置。
【請求項10】
3次元物体を生成するための方法であって、
第1の走査キャリッジが構築表面の上を走査される際に、前記第1の走査キャリッジ上に搭載された第1のエネルギー源を用いて、前記構築表面の領域を予熱し、
第2の走査キャリッジが構築表面の上を走査される際に、前記第2の走査キャリッジ上に搭載された第2のエネルギー源を用いて、前記構築表面の領域を予熱し、
第1の走査軸および第2の走査軸の上で前記第1の走査キャリッジ及び前記第2の走査キャリッジをそれぞれ走査することを含み、
前記第1の走査軸が前記第2の走査軸に直交している、方法。
【請求項11】
前記第1のエネルギー源および前記第2のエネルギー源のそれぞれが、その個々の走査軸に直交する、前記構築表面の幅に広がるエネルギー源を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1のエネルギー源および前記第2のエネルギー源のそれぞれが、単一のエネルギー源または複数のエネルギー源セグメントを含み、前記方法が、前記単一のエネルギー源または前記複数のエネルギー源セグメントが前記構築表面の上を移動する際に前記単一のエネルギー源または前記複数のエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のエネルギー源および前記第2のエネルギー源を、以下のこと、即ち、
エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、放物線型プロファイルに従って上がったり下がったりするように前記エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること、又は
エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、放物線型プロファイルに従って下がったり上がったりするように前記エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること、又は
エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、正弦曲線プロファイルに従って変化するように前記エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること、又は
エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、指数関数的に減衰するプロファイルに従って変化するように前記エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること、又は
エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、前記エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを一定になるように制御すること、からなる何らかの組み合わせにより制御することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
層毎に3次元物体を生成する積層造形システムは、3次元物体を作成するための潜在的に好都合な方式として提案されている。
【0002】
係る積層造形システムにおいて、エネルギー源が、構築材料および薬剤を加熱するために使用され得る。
【0003】
さて、本明細書で説明される例のより良い理解のために、及び当該例が如何にして実施され得るかをより明確に示すために、制限しない例として以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1a】本開示による、3次元物体を生成するための装置の一例を示す図である。
図1b】本開示による、3次元物体を生成するための装置の別の例を示す図である。
図2】本開示による、3次元物体を生成するための装置の別の例を示す図である。
図3a】3次元物体を生成するために図2の装置が如何にして使用され得るかの例を示す図である。
図3b】3次元物体を生成するために図2の装置が如何にして使用され得るかの例を示す図である。
図3c】3次元物体を生成するために図2の装置が如何にして使用され得るかの例を示す図である。
図3d】3次元物体を生成するために図2の装置が如何にして使用され得るかの例を示す図である。
図4】本開示による、方法の流れ図である。
図5】例えばエネルギー源が構築材料を横切って移動する際に放物線型プロファイルに従ってエネルギー源により放射されるエネルギーを制御することにより、構築表面に生成される例示的な加熱プロファイルを示す図である。
図6】例えばエネルギー源が構築材料を横切って移動する際に第1の軸上の放物線型プロファイル及び第2の軸上の逆放物線型プロファイルに従ってエネルギー源により放射されるエネルギーを制御することにより、構築表面に生成される例示的な加熱プロファイルを示す図である。
図7】例えばエネルギー源が構築材料を横切って移動する際に正弦曲線プロファイルに従ってエネルギー源により放射されるエネルギーを制御することにより、構築表面に生成される例示的な加熱プロファイルを示す図である。
図8】例えばエネルギー源が構築材料を横切って移動する際に第1の軸上の指数関数的に減衰するプロファイル及び第2の軸上の正弦曲線プロファイルに従ってエネルギー源により放射されるエネルギーを制御することにより、構築表面に生成される例示的な加熱プロファイルを示す図である。
図9】例えばエネルギー源が構築材料を横切って移動する際に振幅変調されて減衰するプロファイルに従ってエネルギー源により放射されるエネルギーを制御することにより、構築表面に生成される例示的な加熱プロファイルを示す図である。
図10】エネルギー源が複数のエネルギー源セグメントを含む例示的な装置を示す図である。
【0005】
詳細な説明
有形の3次元物体を生成するプロセスは、構築材料の層を形成し、構築材料の層の表面の少なくとも一部に薬剤(例えば、合体剤および/または合体改質剤、又は別の薬剤)を選択的に供給し、構築材料の層にエネルギーを一時的に印加することを含む一連の段階を含むことができる。エネルギーの一時的な印加により、構築材料および合体剤が合体し始める点の上で、薬剤が供給された又は浸透した構築材料の部分が熱くなることができる。この温度は、溶融温度と呼ばれ得る。冷却の結果、合体した部分は、固体になり、生成されている3次元物体の一部を形成する。次いで、これらの段階は繰り返されて、3次元物体を形成することができる。また、他の段階および手順も、このプロセスと共に使用され得る。
【0006】
本明細書で説明される例において、合体剤および合体改質剤は、任意の適切な流体供給機構(薬剤分配器とも呼ばれる)を用いて供給され得る流体を含むことができる。一例において、薬剤は小滴の形態で供給される。一例において、合体剤は、顔料着色剤のような強い光吸収剤とすることができる。
【0007】
本明細書で説明される幾つかの例による、薬剤分配器は、サーマルプリントヘッド又は圧電プリントヘッドのような、プリントヘッド(単数または複数)を含むことができる。一例において、市販のインクジェットプリンタで使用される適切なプリントヘッドのようなプリントヘッドが使用され得る。
【0008】
合体改質剤は、様々な目的に使用され得る。一例において、合体改質剤は、例えば溶解されることが意図されていない周囲の構築材料へ合体剤が染み込む横方向の合体のにじみの影響を低減することを支援するために、合体剤が供給される場所に隣接して供給され得る。例えば、これは、物体のエッジ又は表面の忠実度または精度を改善するために、及び/又は表面の粗さを低減するために使用され得る。別の例において、合体改質剤は、合体剤が点在した状態で供給されることができ、合体剤が付着されたばかりの物体の部分と比較して、物体の特性が変更されることを可能にするために使用され得る。
【0009】
本明細書で説明される例において、構築材料に対する言及は、例えば粉末ベースの構築材料である構築材料を含むことができる。本明細書で使用される限り、用語粉末ベースの材料は、乾燥および湿った粉末ベースの材料、微粒子材料、及び粒状材料を含むことが意図されている。一例において、構築材料は、標準的に弱光吸収ポリマー粉末媒体とすることができる。別の例において、構築材料は、熱可塑性物質とすることができる。
【0010】
本明細書で説明された例において、3次元物体は、構築材料の層を逐次的に重ねて溶解することにより構築され得る。構築材料の各層は、前の層の上に堆積されて、本明細書において構築表面と呼ばれる平坦な表面を形成する。
【0011】
本明細書で説明される例は、3次元物体を生成するための装置において温度を制御するための方法と装置に関係し、この場合、構築材料の層は、産物形成のために最適な温度に予熱される。次いで、溶解中に印加されるエネルギーの一時的な印加は、個体材料をその溶解した状態へひっくり返すために使用され、この場合、材料が結合して産物層として冷える。例えば、半結晶ポリマーの場合、最適な予熱温度は、溶融温度Tより僅かに低くすることができ、例えば、非晶質ポリマーの場合、最適な予熱温度は、ガラス転移温度Tに等しいか又は直下にあることができる。
【0012】
本開示および更に詳細に後述される例によれば、構築表面は、構築表面を横切ってエネルギー源を移動させることにより予熱され得る。エネルギー源は、例えばハロゲン放射エネルギー又は赤外線放射エネルギーによって、構築表面を加熱する加熱要素またはランプまたは放射線源とすることができる。
【0013】
幾つかの例において、エネルギー源は、構築表面の上を移動可能なキャリッジ(本明細書において第1の走査キャリッジと呼ばれる)に搭載され得る。第1の走査キャリッジは、本明細書において第1の走査軸と呼ばれる軸に沿って直線的に移動するようにエネルギー源を制限することができる。エネルギー源は、エネルギー源の主軸が走査軸に直交するように延ばされ且つ構成(配列)され得る。そういうものだから、装置は、第1の走査キャリッジが第1の走査軸に沿って移動する際、エネルギー源が構築表面の全領域を横切るように構成され得る。上述したような例において、エネルギー源(例えば、ランプ又は放射線源)を走査キャリッジに配置することにより、構築材料の領域は、第1の走査キャリッジ(別の理由で、例えば分散剤または構築材料のために設けられ得る)が構築表面の上を移動する際に加熱され得る。
【0014】
追加の機器が第1の走査キャリッジの部分に取り付けられる、又は第1の走査キャリッジの部分を形成することができる。例えば、第1の走査キャリッジは、薬剤を分配するための薬剤分配器を含む走査キャリッジとすることができる。幾つかの例において、薬剤は、上述したような合体剤および/または合体改質剤である。幾つかの例において、薬剤分配器は、プリントヘッドに類似するかもしれない。プリントヘッドは、第1の走査キャリッジの長さに広がるプリントヘッド(時としてページ幅プリントヘッドと呼ばれる)とすることができるか、又はプリントヘッドは、第1の走査軸に直交する軸に沿って移動可能とすることができる(即ち、プリントヘッドは第1の走査キャリッジの長さに沿って移動可能である)。
【0015】
幾つかの例において、第2のエネルギー源が第2の走査キャリッジに搭載されることができ、この場合、第2の走査キャリッジは、構築表面を横切って移動する。第2のキャリッジは、第2の走査軸に沿って移動するように制限され得る。第1のエネルギー源と同じように、第2のエネルギー源は、第2の走査キャリッジが第2の走査軸に沿って移動する際、第2のエネルギー源が構築表面の全領域を横切るように、第2の走査軸に垂直な方向に延ばされることができる。幾つかの例において、第1の走査軸は第2の走査軸に直交する。
【0016】
追加の機器が第2の走査キャリッジに搭載されてもよい。例えば、第2の走査キャリッジは、構築材料の次の層で構築表面を再塗布するための再塗布機構を含むことができる。この再塗布機構は、構築表面に構築材料の新たな層を与えるための構築材料分配器を含むことができる。適切な構築材料分配器は例えば、ワイパーブレード、ローラ又はスプレー機構を含むことができる。
【0017】
幾つかの例において、エネルギー源、薬剤分配器、及び再塗布機構は、異なる走査キャリッジ上にある。しかしながら、他の例において、薬剤分配器および再塗布機構は、同じ走査キャリッジ上にある。一例において、第1及び第2の走査キャリッジを横切るエネルギー源、分配器および再塗布機構の構成は、例えば、1つの走査キャリッジでの溶解および再塗布のような遅い機能、及び別の走査キャリッジでの薬剤分配機能のような他のより速い機能をグループ化することにより、製造プロセスの速度を最適化するために選択され得る。
【0018】
幾つかの例において、第1及び第2の走査キャリッジは、それらの上に搭載された追加の機器を有することができる。第1又は第2の走査キャリッジに追加として搭載され得る機器の例は、以下に限定されないが、予熱または溶解用の少なくとも1つの追加のエネルギー源、或いは構築表面またはその部分にわたる温度分布を求めるための熱センサを含む。
【0019】
図1aは、3次元物体を生成するための装置100の一例を示す。装置100は、第1の走査キャリッジ102を含む。第1の走査キャリッジ102は、使用中に第1の走査キャリッジが構築表面106の上を移動する際に、構築表面106の領域を予熱するための第1のエネルギー源104を含む。当該走査キャリッジは、矢印により示されるように、第1の走査軸108に沿って構築表面106の上を移動することができる。かくして、第1のエネルギー源104は、第1の走査キャリッジ102が第1の走査軸に沿って移動する際に構築表面106の上に引き寄せられ、構築材料、及び構築表面106上の、合体剤および/または合体改質剤のような任意の薬剤を最適な予熱温度まで予熱する。
【0020】
構築表面を横切って走査する走査キャリッジ上にエネルギー源(例えば、ランプ又は放射線源)を配置することによって、これにより、走査キャリッジが構築表面の上を移動する際、構築表面の領域が加熱されることが可能になる。一例において、これにより、例えば構築表面の上に存在する静止したエネルギー源により提供される予熱温度と比較して、より正確な予熱温度が提供されることを可能にすることができる。
【0021】
別の例において、図1bに示されるように、装置は、第2の走査キャリッジ202を含むことができ、この場合、第2の走査キャリッジ202は、第2のエネルギー源204を含む。第2のエネルギー源204は、第2の走査キャリッジ202が、例えば第2の走査軸2008に沿って構築表面106の上を移動する際、構築表面の領域を予熱する。
【0022】
図1bの例において、第1の走査キャリッジ102及び第2の走査キャリッジ202は、互いに直交して配置される。第1の走査キャリッジ102は、その長さに垂直に延びる第1の走査軸108に沿って、即ち図1bのx軸または水平軸に沿って移動する。第2の走査キャリッジ202は、第2の走査キャリッジ202の長さに垂直である第2の走査軸208に沿って、即ち図1のy軸または垂直軸に沿って移動する。一例において、第1及び第2の走査軸は互いに直交する。
【0023】
直交する走査軸に沿って移動する第1及び第2の走査キャリッジにエネルギー源を設けることにより、構築表面の加熱プロファイルは、双方向において制御されることができ、その結果、本明細書においてより詳細に後述されるように、所望の2次元温度プロファイルが構築表面の上に提供され得る。
【0024】
図2は、本開示による、3次元物体を生成するための装置200の別の例を示す。この例において、装置200は、第1の走査キャリッジ102及び第2の走査キャリッジ202を含む。第1の走査キャリッジ102は、少なくとも1つのエネルギー源104、及び薬剤分配器105を含む。薬剤分配器105は、例えば第1のプリントヘッドセグメント105及び第2のプリントヘッドセグメント105を含むプリントヘッドを含むことができ、それらは、第1の走査キャリッジ102が第1の走査軸108に沿って走査する際に、プリントヘッド105が構築表面の幅に広がるように部分的に重なることができる。また、構築表面106の全幅に広がる単一のプリントヘッドのような、他のプリントヘッド構成も使用され得る。薬剤分配器105は、合体剤および/または合体改質剤のような薬剤を構築表面上へ分配する。第2の走査キャリッジ202は、少なくとも1つのエネルギー源204、及び構築材料分配器(又は再塗布機構)205を含む。構築材料分配器205は上述したような特徴を有することができる。
【0025】
図2の例において、第1の走査キャリッジ102の第1のエネルギー源104は、第1のエネルギー源要素104、及び第2のエネルギー源要素104を含む。第1の走査キャリッジ102の第1のエネルギー源要素104及び第2のエネルギー源要素104は、例えば薬剤分配器105の両側に配置(配列)され得る。係る構成により、使用中に薬剤分配器105が第1の走査軸108に沿って行ったり来たり移動する際に、エネルギーが薬剤分配器105の上流および/または下流に選択的に印加されることが可能になり、それらの更なる詳細は図3a〜図3dで後述される。そういうものだから、第1のエネルギー源104は、第1の走査キャリッジ102が使用中に如何にして構築表面を横切って移動するかに関して、薬剤分配器105の上流側および/または下流側に配置される。
【0026】
図2の例において、第2の走査キャリッジ202の第2のエネルギー源204は、第1のエネルギー源要素204、及び第2のエネルギー源要素204を含む。第2の走査キャリッジ202の第1のエネルギー源要素204及び第2のエネルギー源要素204は、例えば構築材料分配器205の両側に配置され得る。係る構成により、使用中に構築材料分配器205が第2の走査軸208に沿って行ったり来たり移動する際に、エネルギーが構築材料分配器205の上流および/または下流に選択的に印加されることが可能になり、それらの更なる詳細も図3a〜図3dで後述される。そういうものだから、第2のエネルギー源204は、第2の走査キャリッジ202が使用中に如何にして構築表面を横切って移動するかに関して、構築材料分配器205の上流側および/または下流側に配置される。
【0027】
第1及び第2の走査キャリッジ102、202は使用中、構築表面106を横切って移動する。エネルギー源104、204は、それらの個々の走査キャリッジの全長に沿って延びて位置することができる。そういうものだから、各走査キャリッジがその走査軸に沿って構築表面の一方の側から他方へ移動する際に、個々のエネルギー源が、構築表面106の全体を通り過ぎて、それらが進む際に構築表面上の構築材料、及び合体剤および/または合体改質剤のような任意の薬剤を加熱する。一例において、構築表面を横切って移動しない場合、第1の走査キャリッジ102は、待機ステーション又はサービスステーション111又は111(例えば、薬剤分配器をサービス(保守)する)で静止することができる。同様に、構築表面を横切って移動しない場合、第2の走査キャリッジ202は、供給ステーション209又は209(例えば、構築材料を構築材料分配器に供給する)で静止することができる。
【0028】
第1及び第2の走査キャリッジ上のエネルギー源は、構築表面を同じ温度に加熱する、又は構築表面を異なる温度に加熱することができる。一例において、エネルギー源は、構築表面を横切って移動する際、一定量のエネルギーを生成することができる。別の例において、エネルギー源により放射されるエネルギーは、エネルギー源が構築表面を横切って移動する、又は構築表面の異なる走査の間に移動する際に変更され得る。エネルギーの出力は、エネルギー源が図5図9に関連して詳細に後述される放射率プロファイルのような、放射率プロファイルに従って構築表面を横切って移動する際に調整され得る。放射率プロファイルは、事前設定された放射率プロファイルとすることができる。一例において、装置は、追加として赤外線画像装置およびプロセッサを含むことができ、この場合、赤外線画像装置は、構築表面またはその一部の温度プロファイルを測定し、プロセッサは、測定された加熱プロファイルを処理して、測定された加熱プロファイル及び基準加熱プロファイルを考慮して、予熱エネルギー源の放射率プロファイルを計算する。放射率プロファイルは、均一な熱分布または所定の熱分布をもたらすために、構築表面の特定の領域を他の領域よりも優先的に選択的に加熱するために計算され得る。プロセッサは、第1及び第2の走査キャリッジ上のエネルギー源のそれぞれに対して異なるプロファイルを計算することができる。プロセッサは更に、構築表面を横切って走査する毎に新たなプロファイルを計算するように、反復の態様でエネルギー源の適切な放射率プロファイルを計算することができる。一例において、赤外線画像装置は、第1及び第2の走査キャリッジの一方または双方に搭載されることができ、又は別の例において、赤外線画像装置は、固定位置で構築表面の上に突き出ているように別個のマウントに搭載され得る。
【0029】
エネルギー源は、プロセスの第1の段階中に構築表面106を予熱するために第1の温度まで加熱され、プロセスの後続の段階中に構築材料の印刷された層を溶解するために第2の、より高い温度で加熱されることができる。エネルギー源は、加熱要素とすることができる。別の例において、エネルギー源は、ランプ又は他の形態の放射線源とすることができる。エネルギー源の加熱状況および放射率プロファイルに関する更なる詳細は、以下の詳細な例で提供される。
【0030】
図3a〜図3dは、図2に示されたような装置の動作の例を示す。図3aに示された第1段階において、第1の走査キャリッジ102が、サービスステーション111から外へ移動している途中で示される。構築動作のこの段階中、第1の走査キャリッジ102は、矢印により示されるように、第1の走査軸108に沿って右から左へ構築表面106を横切って移動する。第1の走査キャリッジ102がこの方向に移動する前に、構築表面106は、第2の走査キャリッジ202に搭載された構築材料分配器205によって以前に堆積された構築材料の新しい層を既に含む。第1の走査キャリッジ102が構築表面106を横切って移動する際、薬剤分配器105(例えば、第1及び第2のプリントヘッドセグメント105、105を含む)は、合体剤および/または合体改質剤のような少なくとも1つの薬剤を、構築表面106の特定の領域上へ、即ち生成されている特定の3D物体に従って特定の領域上へ付着または印刷する。一例において、第1のエネルギー源104の第1のエネルギー源要素104、即ち薬剤分配器105がこの走査動作中に第1の走査軸108に沿って右から左へ移動する際に薬剤分配器105の上流に位置するエネルギー源は、当該走査動作中に構築表面106を予熱し、それは、構築材料および新たに付着された薬剤(単数または複数)を予熱することを含む。この例において、エネルギーは、第1の走査キャリッジ102が右から左へ走査する際に第2のエネルギー源要素104から放出されていないが、留意すべきは、例えば、何らかの形態の予熱が薬剤を分配する前に要求される場合には、エネルギーは、このエネルギー源要素からも放射され得る。
【0031】
第1の走査キャリッジ102が構築表面106を通り過ぎて、左側に示されたサービスステーション111に到達する場合、図3bに示されるように、構築動作の第2段階において、第2の走査キャリッジ202は、当該ページの上部から当該ページの下部の方へ向けられた矢印により示されるように、第2の走査軸208に沿って構築材料106の上を移動する。この方向に移動する前に、第2の走査キャリッジ202は、構築材料供給ステーション209図3aに示されたような、ただし図3bにおいて第2の走査キャリッジ202の背後に隠されている)から追加の構築材料を入手することができる。
【0032】
この構築表面106を通り過ぎる間に、第2のキャリッジ204の第2のエネルギー源要素204が、処理される構築材料の溶融温度まで構築表面を加熱するために第1の温度に加熱される。この温度において、合体剤が図3aに従って付着されたばかりの領域は、第2のキャリッジ204の第2のエネルギー源要素204がそれらの上を通過する際に溶解するが、合体剤が付着されていない領域、即ち「生の」構築材料の領域は溶解せず、それよりむしろ溶解されない状態のままである。この構築表面を通り過ぎる間に、構築材料分配器205も構築材料の新たな層を分配することができる。更に、構築表面のこの通過中、第2の走査キャリッジ204の第1のエネルギー源要素204、即ち構築材料分配器205の上流に位置するエネルギー源要素は、構築材料の予熱温度に対応する第2の温度に加熱され得る。上述したように、最適な予熱温度は、例えば半結晶ポリマーの場合、溶融温度Tより僅かに低くすることができ、例えば、非晶質ポリマーの場合、ガラス転移温度の直下にあることができる。処理された又は処理されていない「生の」構築材料は、第1のエネルギー源要素204がこの温度で構築表面の上を通過する際に溶融せず、それどころか(上述したように)それは、構築材料を予熱するために使用され(例えば、構築材料を均一に予熱する)、この例において、不均一収縮現象の影響を低減することにより、良好な成形品の品質をもたらすことに役立つことができる。
【0033】
最適な溶融温度および予熱温度にそれぞれ加熱された、第2の走査キャリッジ202の第2のエネルギー源要素204及び第1のエネルギー源要素204を用いて、第2の走査キャリッジ202が構築表面106を横切って移動する際に、この例において3つの事象が生じる。最初に、第2のエネルギー源要素204が、構築材料の印刷された層を溶融温度まで加熱する。印刷された層は、図3aに示された段階において第1の走査キャリッジ102により印刷された際に、合体剤および/または合体改質剤のような薬剤を含み、結果として、第2の走査キャリッジ202の第2のエネルギー源要素204が構築表面の上を通過する際、薬剤と共に印刷された領域は、溶融温度まで加熱され、共に融解および溶融する。この時点で、構築材料のこの特定層のこの特定部分が、処理された。
【0034】
第2のエネルギー源要素204の上流へ、構築材料分配器205が、完了した層を横切って第2のエネルギー源要素204の後に続き、古い層の上に構築材料の新たな層を塗り重ねる。
【0035】
第3の動作において、構築材料分配器205の上流へ、第2の走査キャリッジ202の第1のエネルギー源要素204が、構築材料の新たに塗り重ねられた層を、例えば最適な予熱温度まで予熱し、印刷準備が整う。
【0036】
ひとたび第2の走査キャリッジ202が、当該ページの上部から下部へ図示されたように構築表面106を完全に通り過ぎると、それは構築表面の下側、例えば構築材料供給ステーション209の近くで停止し、構築プロセスは図3cに進む。
【0037】
図3cは、今度は左から右へ構築表面106を横切って戻るように移動する第1の走査キャリッジ102を示す。図3aに示されているように、第1の走査キャリッジ102が構築表面106を横切って移動する際、薬剤分配器105が構築表面の特定の部分上へ薬剤(例えば、合体剤および/または合体改質剤)を印刷または付着する。薬剤分配器105の両側に取り付けられた第1の走査キャリッジ104の第1のエネルギー源要素104及び/又は第2のエネルギー源要素104が、構築表面を予熱し、新たに付着された印刷薬剤を、例えば最適な予熱温度まで予熱する。
【0038】
図3dに示された構築プロセスの第4段階において、第2の走査キャリッジ202が印刷表面を横切って戻るように走査し、図3dにおいて当該ページを上方へ移動する第2の走査キャリッジ202により示される。この走査動作中、エネルギー源要素204及び204のエネルギー出力は、第1のエネルギー源要素204が構築表面を溶融温度まで加熱し、第2のエネルギー源要素204が構築表面を予熱温度まで加熱するように、図3bにおいて行われたものと逆にされる。これは、第2の走査キャリッジが図3bで行われたものと逆の方向に構築表面を横切って移動するという事実を反映するために行われ、かくして構築材料の各セグメントに対して、上述した溶解の段階、再塗布の段階および予熱の段階が、図3bに示されたものと同じ順序で依然として実行されることが確実にされる。このように温度の切り換えは、第2の走査キャリッジ202の進む方向に無関係に、構築材料分配器205の下流に配置されたエネルギー源204が溶融温度まで加熱されることを意味する。これは、印刷された構築材料の前の層が、構築材料の次の層が追加される前に溶解されることを確実にする。逆に、走査キャリッジの進む方向に対して構築材料分配器205の上流に配置されたエネルギー源204は、予熱温度まで加熱される。これにより、新たに塗り重ねられた構築材料の層が、構築表面に付着されるや否や予熱されることが可能になる。図3a〜図3dに説明されたプロセスは、生成されている3D産物の後続の層に対して繰り返され得る。
【0039】
留意されるべきは、図3a〜図3dで概説されたプロセスは、本開示による考えられるプロセスの一例として単に提供されており、他の例も想定され得る。例えば、構築材料分配器205、薬剤分配器105及びエネルギー源は、図3a〜図3dに提示されたものと異なるように構成されてもよい。更に、少なくとも1つの構成要素は、他の構成要素に対して独立したキャリッジに、又は図3a〜図3dに示されたものと異なるキャリッジに位置してもよい。例えば、薬剤分配器(プリントヘッド)の下流に配置されたエネルギー源は、印刷段階および溶解段階が単一のキャリッジ上の装置により実行されるように、溶融温度まで加熱され得る。その場合、第2の走査キャリッジ202上のエネルギー源は双方とも、予熱温度に設定され得る。
【0040】
更に、図3a〜図3dの例において、走査キャリッジは、第1の走査キャリッジが一方の側から別の側に通過するや否や、次のキャリッジが移動し始めるように、同じ平面で走査して、構築表面を横切って逐次に移動することができる。係る例において、これは、当該プロセスをスピードアップすることにより及び構築表面の掃引間で時間が無駄になることを防止することにより、プロセスを効率的にする。しかしながら、別の例において、走査キャリッジは、構築表面を通り過ぎて、第2のキャリッジが移動し始める前にその開始点に戻ることができる。係る例のシステムにおいて、構築材料分配器205、エネルギー源104、204、及び薬剤分配器105は、走査キャリッジが単一の方向で移動する間に、構築表面に作用し、それ故に第1の走査キャリッジ102及び/又は第2の走査キャリッジ202は、図2及び図3a〜図3dに示されたようなそれぞれの薬剤分配器および構築材料分配器の両側に予熱エネルギー源を含むのではなくて、それぞれの薬剤分配器または構築材料分配器の上流に単一の予熱エネルギー源を含むことができる。別の例において、第1及び第2の走査キャリッジは、異なる平面で構築表面を横切って走査することができる。
【0041】
さて、図4を参照すると、本開示による方法の例が提供される。当該方法は、第1の走査キャリッジが構築表面の上で走査される際に、第1の走査キャリッジに搭載された第1のエネルギー源を用いて構築表面の領域を予熱することを含む。走査キャリッジは、構築表面の全領域、又は選択された小区分のみを横切って走査することができる。同様に、構築表面の全領域、又は選択された小区分のみが、予熱中に予熱され得る。
【0042】
一例において、また、方法は、第2のエネルギー源を用いて構築表面の領域を予熱することも含むことができ、第2のエネルギー源は、構築表面を横切って走査される第2の走査キャリッジに搭載されている。第1の走査キャリッジと同様の方法で、第2の走査キャリッジは、構築表面の全領域、又は選択された小区分のみを横切って走査することができる。同様に、構築表面の全領域、又は選択された小区分のみが、予熱中に予熱され得るように、エネルギー源のエネルギー出力が変調され得る。
【0043】
方法は軸に沿って走査することを含み、第1及び第2の走査キャリッジは係る走査軸に沿って直線的に移動するように制約され得る。一例において、第1及び第2の走査キャリッジは、互いに直交する別個の軸に沿って移動するように制約される。
【0044】
本開示の幾つかの例において提案された構築材料(又は粉体層)予熱概念は、2つの直交する軸の上に配列されているエネルギー源から恩恵を受ける。これは、エネルギー源が直交する走査でもって産物へ組み込まれ得るという利点を有する。
【0045】
構築表面の全体にわたって均一な予熱を行うために、エネルギー源は、それが完全に構築表面の全幅に広がるように形作られ得る。例えば、エネルギー源は、それが取り付けられる個々の走査キャリッジの走査軸に垂直にその主軸が位置するように、伸長されて構成され得る。例えば、エネルギー源は、管状のランプとすることができる。幾つかの例において、エネルギー源は、セグメントへ分割されることができ、この場合、各セグメントの温度は、他のセグメントとは無関係に制御可能である。これは、図10に関連して本明細書で後述される。
【0046】
幾つかの例において、方法は、エネルギー源が構築表面を横切って移動する際にエネルギー源により放射されるエネルギーを制御することを更に含む。例えば、エネルギー源は、エッジ領域(より高いレベルの熱放散が生じる可能性がある)を加熱する際に温度がより高くなり且つ中央領域を加熱する際により冷たくなるように制御され得る。直交レイアウトにおいて、これは、構築表面上の温度分布が各エネルギー源の放射強度の時間的プロファイルを形作ることにより、2次元で制御され得ることを意味する。
【0047】
図5図9は、2つの直交するように配列された走査キャリッジ上の予熱エネルギー源(加熱要素)の放射率プロファイルを変調することにより、構築表面にわたって得られ得る温度分布の例を示す。図5図9のそれぞれの上側における曲線は、左から右に移動しながら粉体層を水平方向に走査する、図面のy軸に平行に位置合わせされたエネルギー源の放射率の漸進的な変化を示す。図5図9のそれぞれの左側にある曲線は、構築表面の上部と下部との間を垂直に移動する、図面のx軸に平行に配向されたエネルギー源により放出されたエネルギーを示す。次いで、温度地図は、双方(上側および左側)のプロファイルから結果として生じる組み合わせを示す。温度地図は、以下の機能的挙動に効果的に従う。即ち、
I(x,y)=I(t)+I(t)
ここで、I(t)及びI(t)はそれぞれ、上側および左側プロファイルに対応する。
【0048】
図5の例において、第1の走査キャリッジ上の第1のエネルギー源および第2の走査キャリッジ上の第2のエネルギー源の双方は、それぞれのエネルギー源が構築材料を横切って移動する際、放物線型プロファイルに従って上がったり下がったりするようにそれぞれ制御される。図5に示された結果としての分布は、高温領域53、及び冷たい領域51により示されるように、粉体層のかど及びエッジにおいて放射エネルギーを集中させ、伝導損失および対流損失を補償するために調整された入力分布に類似する。
【0049】
図6の例において、第1の走査キャリッジ上の第1のエネルギー源は、それぞれのエネルギー源が構築材料を横切って移動する際、放物線型プロファイルに従って上がったり下がったりするように制御されるのに対して、第2の走査キャリッジ上の第2のエネルギー源は、それぞれのエネルギー源が構築材料を横切って移動する際、放物線型プロファイル(逆放物線型プロファイルの形態)に従って上がったり下がったりするように制御される。高温領域は参照符号63により示され、冷たい領域は61により示される。
【0050】
図7の例において、第1の走査キャリッジ上の第1のエネルギー源および第2の走査キャリッジ上の第2のエネルギー源の双方は、エネルギー源が構築材料の上を移動する際、正弦曲線プロファイルに従って変化するように制御される。これは、交互になっている高温領域73及び冷たい領域71をもたらす。
【0051】
図8の例において、第1の走査キャリッジ上の第1のエネルギー源は、第1のエネルギー源が構築材料の上を移動する際、正弦曲線プロファイルに従って変化するように制御される一方で、第2の走査キャリッジ上の第2のエネルギー源は、第2のエネルギー源が構築材料を横切って移動する際、指数関数的に減衰するプロファイルに従って変化するように制御される。高温領域および冷たい領域はそれぞれ、符号83及び81により示される。
【0052】
図9の例において、第1の走査キャリッジ上の第1のエネルギー源および第2の走査キャリッジ上の第2のエネルギー源は、指数関数的ペデスタルで振幅変調される。高温領域および冷たい領域はそれぞれ、符号93及び91により示される。
【0053】
上記のことから、看取され得るように、適切な入力放射率関数および構築表面の結果としての加熱プロファイルは、以下に限定されないが、放物線型プロファイル及び逆放物線型プロファイル、正弦曲線プロファイル、正弦波的に変調されて指数関数的に減衰するプロファイル、又は幾つかの他の所定の特性を有するプロファイルを含む。
【0054】
放射率プロファイルは、例えば電圧の波形関数を用いて、又は入力電力のパルス幅変調(PWM)を通じて、時間と共に各エネルギー源で調整され得る。このように予熱エネルギー源の時間特性にわたって温度分布を制御することは、極めて高い空間分解能で擬似アナログ補償方式の設計を可能にする。分解能は、パルスの期間中のエネルギー源により網羅される距離、及びローパスフィルタとしての役割を果たすエネルギー源の熱慣性(応答関数)に関係する。
【0055】
幾つかの例において、第1の走査軸上のエネルギー源の温度プロファイルは、第1の走査軸に直交する第2の走査軸上の第2のエネルギー源の温度プロファイルに関連して制御され、第1の温度プロファイル及び第2の温度プロファイルが組み合わされて、構築表面の領域の上に所望の予熱プロファイルを提供するようになっている。
【0056】
一例において、また、本開示で提供される方法は、構築表面の温度プロファイルを測定し、測定された温度プロファイル及び基準プロファイルに基づいてエネルギー源の放射率プロファイルを求め、エネルギー源が構築表面を横切って走査される際に、求められた放射率プロファイルをエネルギー源に適用することを含むことができる。適用の段階は、例えばエネルギー源の両端の電圧を変化させることにより、達成され得る。
【0057】
構築表面にわたって達成された温度分布は、入力パラメータとして放射熱流速を用いて、基本熱収支方程式により調節され得る。
【0058】
さて、別の例において、エネルギー源に対する放射率プロファイルの使用が、図10に関連して説明され、図10は、図1a、図1b、図2又は図3の装置に類似するが、あらゆるエネルギー源またはエネルギー源要素が複数のエネルギー源セグメントへ(例えば、走査軸に直交する、エネルギー源の長さに沿って)分割されるように変更された装置を示す。エネルギー源の各セグメントの温度は、各セグメントがそれ自体の放射率プロファイルを有することができるように(図5図9に関連して上述されたように)、他のエネルギー源とは無関係に制御され得る。それ故に、この例において、構築表面は、独立してアドレス指定可能な区域へ分割される。
【0059】
一例による利点は、パワー分布プロファイルのアドレス指定可能な空間を改善し且つ更なる設計精度を可能にすることである。n及びmがそれぞれ、放出器アレイを水平方向に及び垂直方向に走査するセグメントの数である場合、粉体層の表面はn×mの独立して制御可能な区域へ分割され、この場合、これら区域のそれぞれの放射エネルギープロファイルは、上述した機能的関係を受けて形作られ得る。即ち、
Zone(x,y)=Ix,Zone(t)+Iy,Zone(t)。
【0060】
従って、本開示によれば、図1a、図1b、図2図3又は図10に関連して上述された例の何れかは、エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面の上を移動する際、エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーが制御されるように構成され得る。
【0061】
エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面の上を移動する際、エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーは、別のエネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面の上を移動する際、別のエネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーに関連して制御され得る。
【0062】
係る例において、別個の走査キャリッジ上のエネルギー源は、第1及び第2のキャリッジ上の第1及び第2のエネルギー源の放射率プロファイルを用いて、構築表面の特定の領域において又は構築表面の全領域にわたって所望の温度を提供するために組み合わせて動作する。
【0063】
更に、一例の方法によれば、エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面の上を移動する際、エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーは、以下のこと、即ち、エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、放物線型プロファイルに従って上がったり下がったりするようにエネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること;エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、放物線型プロファイルに従って下がったり上がったりするようにエネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること;エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、正弦曲線プロファイルに従って変化するようにエネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること;エネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築表面を横切って移動する際、指数関数的に減衰するプロファイルに従って変化するようにエネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを制御すること;又はエネルギー源またはエネルギー源セグメントが構築材料を横切って移動する際、エネルギー源またはエネルギー源セグメントにより放射されたエネルギーを一定になるように制御すること、からなる何らかの組み合わせにより、第1のエネルギー源および第2のエネルギー源を制御することを含む。
【0064】
上述した例により、構築材料の構築表面にわたる熱分布が、準連続空間プロファイルを用いて、経済的な方法で制御されることが可能になる。
【0065】
上述した例は、最適な予熱温度の摂動を低減することに役立つことができ、そうでなければ構築プロセスの完全性および一貫性が低減される可能性があり、その理由は、最終の部品の機械的特性および部品精度が不均一な収縮現象を通じて影響を受ける可能性があるからである。次から次に構築する部品の等しい特性およびシステム間での一貫性を達成することに役立つために、本明細書で説明された例により、構築表面上の予熱温度分布および漸進的変化が制御されることが可能になる。
【0066】
留意されるべきは、上述した例は、本開示を制限するのではなく、例証であり、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱せずに多くの代替の例を設計することを可能にすることができる。単語「含む」は、請求項に列挙されたもの以外の要素または段階の存在を排除せず、「a」又は「an」は複数を排除せず、単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に列挙された幾つかのユニットの機能を実現することができる。特許請求の範囲の任意の参照符号は、それらの範囲を制限するように解釈されるべきではない。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10