【実施例1】
【0024】
まず
図1〜
図5を参照して本発明に係るワッシャ付きホイールナット100を説明する。なお、従来例と同一部には同一符号を付して説明を省略する。
ワッシャ付きホイールナット100は、車両のタイヤが装着されたホイール6を車両の車軸部分2に固定する機能を有し、本実施例1においては、ナット部106、及び、ワッシャ部108を含んでいる。
【0025】
次にナット部106を説明する。
ナット部106は、少なくとも、ホイールボルト4に螺合されてワッシャ部108を介してホイール6の回転中心部に存するディスクホイール6Dを車軸部分2に押し付ける機能、及び、ワッシャ部108を回転自在に保持する機能を有し、本実施例1においては、工具係止部106Nとワッシャ保持部106Wとを有し、それらはステンレスにより一体に構成されている。
【0026】
次に工具係止部106Nを主に
図2及び
図3を参照して説明する。
工具係止部106Nは、工具、例えばボックスレンチが係合される機能を有し、本実施例においては、規格化された孔径dのネジ穴106H、並びに、二面幅s、対角距離e、及び、高さmを有する六角ナットに形成されている。当然ながらネジ穴106Hの内周面には所定の雌ねじが形成されている。
【0027】
次にワッシャ保持部106Wを主に
図5を参照して説明する。
ワッシャ保持部106Wは、ワッシャ部108をナット部106と一体化すると共に、ナット部106の軸線SLと同軸に回転自在に保持する機能を有し、本実施例1においては、ナット部106の裏面106B(
図4:ディスクホイール6D側)から下方へ所定長突出して形成された円筒形をし、製造時は
図5に鎖線示するように、所定の外径を有する直状筒型に形成されているが、ワッシャ部108の透孔108Tが外側に嵌合された後、外径が拡径されるように塑性変形されることにより、裁頭円錐形に形成され、ワッシャ部108を軸線SL周りを回転可能に支持すると共に、ナット部106と一体を成すように構成されている。なお、ワッシャ保持部106Wは同様の機能を有する他の機構に変更することができ、本実施例に限定されない。
【0028】
次にワッシャ部108を説明する。
ワッシャ部108は、ワッシャ付きホイールナット100のねじ込み操作によって、ナット部106がディスクホイール6Dと摺接させない機能、及び、反力受け部材112としての機能、並びに、ナット部106に回転自在に保持される機能を有し、本実施例1においては、所定の厚みt(
図4)、及び、所定の外径D(
図3)を有する円形リング状に形成されることにより、平面視において、工具係止部106Nの外方にワッシャ上面108Sが位置し、当該ワッシャ上面108Sに反力受け部114が設けられ、中央に透孔108Tが設けられている。
【0029】
次に反力受け部114を説明する。
反力受け部114は、ナット部106を締め付けるボックスの反力を受け止めて不動の足場とする機能を有し、本実施例1においては、反力受け部材112としてのワッシャ部108に形成され、ワッシャ部108の周方向において所定の長さを有する凹部であり、ナット部106における6面の工具係止部106Nに相対して形成されている。これら反力受け部114は全て同一に形成され、平面視半円形に形成されている。しかし、反力受け部114の形状はこれに限らず、平面視において矩形、三角形等の角形、楕円形等であっても良い。反力受け部114は、
図3に示すように、ワッシャ部108の外周縁に対し僅か外側に位置する一点cを中心とし、所定の半径rの円cr上に位置する内側円弧側面114i、及び、底壁114Bによって平面視半円形に形成され、内側円弧側面114iは時計回り方向壁114C、及び、反力受け壁114CCを含んでいる。
【0030】
まず底壁114Bを説明する。
底壁114Bは、突っ張り部116をディスクホイール6Dに当接させない機能を有し、本実施例1においては、反力受け部114の底である。したがってワッシャ部108は、反力受け部114が形成された部位においても、所定の厚みt1(
図5参照)を有している。換言すれば、ワッシャ部108は、平面視円形である。
【0031】
次に時計回り方向壁114Cを説明する。
時計回り方向壁114Cは、締付機122の突っ張り部116が
図3において時計方向に回転された場合、その先端部側面が係合する壁である。したがって、締付機122のナット部106締付用のナット締付体124がナット部106の締付のため、時計方向へ回転された場合、これと反対方向へ回転される突っ張り部116が係止される底壁114Bに相対して垂立する壁である。
【0032】
反力受け壁114CCを説明する。
反力受け壁114CCは、締付機122の突っ張り部116が
図3において反時計方向に回転された場合、その先端部側面が係合する壁である。
したがって、ワッシャ部108が静止状態である場合において、突っ張り部116が反力受け壁114CCに係止された場合、ナット部106に対して、駆動手段128において設定された所定のトルクがナット部106に作用することになる。
【0033】
次に透孔108Tを説明する。
透孔108Tは、ワッシャ部108をナット部106に一体化するために、拡径される前のワッシャ保持部106Wが通過可能であると共に、拡径された後のワッシャ保持部106Wによってナット部106の軸線SLに沿う方向への移動が制限される機能を有し、本実施例1においては、ワッシャ部108の中央に形成された円孔であり、その断面形状は
図5に示すように、倒立L型、詳細にはナット部106から離れるにしたがって軸線SLから離れる拡径孔部分108C、及び、拡径孔部分108Cに続いて形成された直状孔部分108Eによって構成されている。換言すれば、ナット部106に隣接する部位の内径idが最も小さく、その後、徐々に拡径した後、所定の直径pdに形成されている。なお、拡径孔部分108Cはナット部106に隣接する部位以外に配置することができる。これにより、前述したように、ワッシャ部108はナット部106に一体化されると共に、ナット部106に対して独立して、同一の軸線SL周りを回転することができる。
【0034】
次に締付機122を
図6及び
図7を参照して説明する。
締付機122は、ナット部106を締め付け方向に設定された所定のトルクで回転させると共に、ワッシャ部108をナット部106の締め付け方向とは逆方向へ回転させる機能を有し、本実施例1においては、回転軸線RSL周りに回転されるナット締付体124、回転軸線RSLと同軸に回転される反力ボックス126、駆動手段128、ナットボックス用減速機132、反力ボックス用減速機134、及び、電流制御器136によって構成されている。
【0035】
まずナット締付体124を説明する。
ナット締付体124は、駆動手段128によって回転軸線RSL周りに回転され、ナット部106に嵌めあわされ、当該ナット部106を締め付け方向又は緩め方向へ回転させる機能を有し、本実施例1においては正面視円筒形に形成され、正面視正六角形のナット孔124Hが形成されている。換言すれば、ナット孔124Hは六面が係合面124Pによって囲われた、正面視正六角形の穴である。したがって、このナット孔124Hにナット部106が嵌め合わされる。
【0036】
次に反力ボックス126を説明する。
反力ボックス126は、ナット締付体124の外側に配置され、駆動手段128によって回転軸線RSL周りをナット締付体124とは逆方向へ回転される機能を有し、本実施例1においては、円筒形に形成され、先端内周面に正面視半円形の突っ張り部116が反力受け部114に相対して形成されている。具体的には、反力ボックス126は、反力基部部分126Bと反力先端部分126Tとにより構成されている。
【0037】
次に反力基部部分126Bを説明する。
反力基部部分126Bは、ナット締付体124の外周を回転軸線RSLを中心として回転可能な機能を有し、本実施例1においては所定直径を有する円形の収納穴126BH及び所定の外径を有する筒状体によって構成され、先端面に段差部よりなる基部側結合部126BJが形成されている。
【0038】
次に反力先端部分126Tを説明する。
反力先端部分126Tは、ワッシャ部108と嵌まり合い、突っ張り部116を反力受け部114に位置させる機能を有し、本実施例1においては、反力基部部分126Bと同一の外径及び内径を有する円筒体によって構成され、先端部内周面に反力受け部114に対応して等間隔で突っ張り部116が複数、すなわち、6個が突出形成されている。すなわち、反力先端部分126Tは、大凡円形の受入開口126oを有している。反力受け部114は、ナット部106の工具係止部106Nに相対して形成されているので、6つの突っ張り部116が等間隔で形成されている。突っ張り部116は正面視半円形であって、反力受け部114の高さよりも僅かに長く形成され、その先端面は反力先端部分126Tの端面と一致している。したがって、突っ張り部116が反力受け部114に位置され、その先端が底壁114Bに突き当たった場合、反力先端部分126Tの端面とワッシャ部108の底壁114Bとの間には厚みt1の隙間が形成される。また、反力基部部分126B側端面には、基部側結合部126BJに嵌合される反力側結合部126TJが形成されている。突っ張り部116の幅は、換言すれば、反力ボックス126の周方向における長さは、反力受け部114の円周方向の長さよりも短く、その長さ比は、3分の1以下であることが好ましい。反力ボックス126の位置出しが容易だからである。また、本実施例1において、まずナット締付体124が収納穴126BHに収納されてナットボックス用減速機132に駆動接続された後、反力先端部分126Tの反力側結合部126TJが基部側結合部126BJに嵌め込まれて一体化され、固定手段(図示せず)によって、強固に固定される。この状態において、ナット締付体124の先端は、突っ張り部116の内側端面に近接しており、正面視受入開口126oの内側にナット孔124Hが位置する。反力ボックス126は積極的にナット締付体124に対し逆方向へ回転される必要はなく、ナット締付体124に対し相対的に逆方向へ回転されれば良い。換言すれば、ナット締付体124の回転に対し、静止され、又は、ナット締付体124と同方向へ回転されるが、相対的に低速であるため、結果として相対的に逆回転される場合をも、逆回転の概念に含まれる。突っ張り部116が反力受け部114に位置した状態において、突っ張り部116の先端は、底壁114Bに当接し、それ以上ディスクホイール6D側へ移動することができない。換言すれば、反力ボックス126の端面とディスクホイール6Dとの間に隙間が形成されることから、反力ボックス126が回転しても、ディスクホイール6Dに傷を付けることはない。
【0039】
次に駆動手段128を説明する。
駆動手段128は、ナット締付体124をナット部106の締め付け方向へ、反力ボックス126をナット締め付け方向とは逆方向へ所定のトルクで回転させる機能を有し、本実施例1においては直流電気モータ138が用いられている。直流電気モータ138のトルクは、単位時間当たりの電流値を変更することによって容易に変更することができるからである。しかし、駆動手段128として空気圧モータを使用することも出来る。空気圧モータも駆動源としての空気圧を変更することにより、容易にトルクを変更出来るからである。
【0040】
次にナットボックス用減速機132を説明する。
ナットボックス用減速機132は、駆動手段128の回転を減速し、所定の速度でナット締付体124をナット部106の締め付け方向へ回転させる機能を有し、本実施例1においては、機械的減速機が用いられている。
【0041】
次に反力ボックス用減速機134を説明する。
反力ボックス用減速機134は、駆動手段128からの回転を減速し、ナット締付体124の回転方向と反対方向へ反力ボックス126を所定の速度で回転させる機能を有し、本実施例1においては、ナットボックス用減速機132の回転をギヤ手段142によって逆方向へ所定の速度で回転されるように構成されている。しかし、同様の機能を有する他の機構に変更することができる。
【0042】
次に電流制御器136を説明する。
電流制御器136は、直流電気モータ138の回転トルクを調整する機能を有し、公知の電流制御器が用いられている。したがって、電流制御器136の他、トルクを制御できる他の装置を採用することができる。
【0043】
次に本実施例1の作用を
図8及び
図9をも参照して説明する。
まず、タイヤTを装着したホイール6を車両の車軸部分2に装着する場合、ホイール6に形成されたボルト孔8をホイールボルト4に嵌合させた後、本発明に係るワッシャ付きホイールナット100を全てのホイールボルト4に螺合し、空気圧モータ式のインパクトドライバ等を用いて所定の順番で仮締めする。次いで各ワッシャ付きホイールナット100を締付機122を用いて所定の順番で所定の締め付けトルクで締め付ける。すなわち、ナット締付体124によるワッシャ付きホイールナット100の締め付けトルクが550〜600N・mになるように直流電気モータ138に供給する電流値を調整した後、締付機122を用いてワッシャ付きホイールナット100を締め付ける。
図9は、車軸部分2の一端部に対しホイール6が1つ装着される例であり、ホイールボルト4に対し1つのホイール6、したがって、ディスクホイール6Dが装着され、ワッシャ付きホイールナット100によって仮止めされた状態である。
図10は車軸部分2の一端部に対しホイール6が2つ装着される例であり、2つのディスクホイール6Dが隣接した状態でホイールボルト4が貫通し、ワッシャ付きホイールナット100によって仮止めされた状態である。この後、所定のトルクで本締めを行う。
具体的には、まず、締付機122を作動させ、
図7に示すように、ナット孔124Hにおける係合面124Pの大凡中央に突っ張り部116を位置させた状態で停止させる。
次いで、ナット締付体124をワッシャ付きホイールナット100のナット部106に嵌め込む。このとき、反力ボックス126の突っ張り部116もワッシャ部108の反力受け部114へ挿入される。締付機122は、突っ張り部116の端面が底壁114Bに突き当たった以降、ディスクホイール6D側に進行することは出来ない。換言すれば、反力ボックス126がディスクホイール6Dと当接することは無い。
次いで、直流電気モータ138を作動させ、ナット締付体124をナット部106の締め付け方向、
図6において矢印X方向へ回転させ、反力ボックス126を
図6において矢印CX方向へ回動させる。これによって、ナット部106はワッシャ部108と共にディスクホイール6D側へ進行し、ワッシャ部108をディスクホイール6Dへ押し付ける。また、反力ボックス126を
図6において矢印CX方向へ回動によって突っ張り部116が反力受け部114の反力受け壁114CCに当接することから、ディスクホイール6Dとワッシャ部108のワッシャ裏面108Bとの間の摩擦力が直流電気モータ138において設定されたトルクを上回る場合、反力ボックス126によってワッシャ部108を回転させることが出来なくなる。一方、ナット締付体124によるナット部106の締め付けによる進行抵抗、したがって、ナット部106の締め付けトルクが直流電気モータ138において設定されたトルクを超えた場合、ナット締付体124は回転されなくなる。そしてこの状況において、ナット締付体124と連動する反力ボックス126は、その突っ張り部116が反力受け部114に係止されて固定されている状態であるので、ナット締付体124は設定されたトルクで回転駆動されていると言える。したがって、ナット部106は所定のトルクで締め付けられる。