特許第6460555号(P6460555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6460555ワッシャ付きホイールナット、並びに、ワッシャ付きホイールナット締付機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6460555
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ワッシャ付きホイールナット、並びに、ワッシャ付きホイールナット締付機
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20190121BHJP
   B60B 3/16 20060101ALI20190121BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20190121BHJP
   F16B 39/26 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   F16B43/00 Z
   B60B3/16 E
   F16B31/02 P
   F16B39/26 B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-38108(P2018-38108)
(22)【出願日】2018年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-173163(P2018-173163A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2017-72221(P2017-72221)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514096719
【氏名又は名称】増澤 彰善
(73)【特許権者】
【識別番号】512109585
【氏名又は名称】平野 一人
(74)【代理人】
【識別番号】100167081
【弁理士】
【氏名又は名称】本谷 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】増澤 彰善
(72)【発明者】
【氏名】平野 一人
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/176518(WO,A2)
【文献】 特開平06−010935(JP,A)
【文献】 特開2012−125910(JP,A)
【文献】 特表2017−508105(JP,A)
【文献】 実開平05−079029(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00− 43/02
B60B 3/16
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナット部(106)に対し付設され、平面視前記ナット部(106)の外周よりも外方にワッシャ上面(108S)が位置すると共に前記ナット部(106)と同一軸線周りに回転可能なワッシャ部(108)を備えるワッシャ付きホイールナットであって、前記ワッシャ上面(108S)には、ホイール側に位置する底壁(114B)、時計回り方向に位置する時計回り方向壁(114C)、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁(114CC)によって画定され、前記ワッシャ部(108)の上面側及び外周側が開口された凹部である反力受け部(114)が形成され、
前記反力受け部(114)は、前記ワッシャ部(108)の外周縁に対し僅か外側に位置する一点(c)を中心とし、所定の半径(r)の円(cr)上であって、時計回り方向に位置する前記時計回り方向壁(114C)、及び、反時計回り方向に位置する前記反力受け壁(114CC)によって画定された内側円弧側面(114i)、及び、前記底壁(114B)によって平面視底壁付の半円形に形成されていることを特徴とするワッシャ付きホイールナット。
【請求項2】
前記ナット部(106)は6角ナットであり、前記ワッシャ部(108)は円形であって、前記ナット部(106)の裏面(106B)から突出するワッシャ保持部(106W)に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載したワッシャ付きホイールナット。
【請求項3】
ナット部(106)に対し付設され、平面視前記ナット部(106)の外周よりも外方にワッシャ上面(108S)が位置すると共に前記ナット部(106)と同一軸線周りに回転可能なワッシャ部(108)を備えるワッシャ付きホイールナットであって、前記ナット部(106)は6角ナットであり、前記ワッシャ部(108)は円形であって、前記ナット部(106)の裏面(106B)から突出するワッシャ保持部(106W)に回転可能に支持されると共に、前記ワッシャ部(108)の外周縁に対し僅か外側に位置する一点(c)を中心とし、所定の半径(r)の円(cr)上であって、時計回り方向に位置する時計回り方向壁(114C)、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁(114CC)によって画定された内側円弧側面(114i)、及び、底壁114Bによって平面視底壁付の半円形に形成された反力受け部(114)が設けられていることを特徴とするワッシャ付きホイールナット。
【請求項4】
ナット部(106)に対し付設され、平面視前記ナット部(106)の外周よりも外方にワッシャ上面(108S)が位置し、当該ワッシャ上面(108S)にワッシャ部(108)の外周縁に対し僅か外側に位置する一点(c)を中心とし、所定の半径(r)の円(cr)上であって、時計回り方向に位置する時計回り方向壁(114C)、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁(114CC)によって画定された内側円弧側面(114i)、及び、底壁114Bによって平面視底壁付の半円形に形成され反力受け部(114)が形成されると共に、前記ナット部(106)と同一軸線周りに回転可能なワッシャ部(108)を備えるワッシャ付きホイールナットの締め付けに用いるホイールナット締付機であって、出力トルクを設定可能な駆動手段(128)によって軸線周りを回転駆動されると共に、前記ナット部(106)に嵌合されるナット締付体(124)と、前記ナット締付体(124)の外周側において、前記ナット締付体(124)と同軸、かつ、前記ナット締付体(124)とは逆方向に回転駆動され、前記ワッシャ上面(108S)の反力受け部(114)に位置する突っ張り部(116)を備えることを特徴とするワッシャ付きホイールナット締付機。
【請求項5】
前記駆動手段が直流電気モータ(138)であることを特徴とする請求項4に記載したワッシャ付きホイールナット締付機。
【請求項6】
前記駆動手段が空気圧モータであることを特徴とする請求項に記載したワッシャ付きホイールナット締付機。
【請求項7】
前記反力受け部(114)は、前記六角ナット部(106)の工具係止面(106P)の二倍の十二個が等間隔に形成されていることを特徴とする請求項3に記載したワッシャ付きホイールナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のワッシャ付きホイールナット、及び、ワッシャ付きホイールナット締付機に関する。
詳しくは、大型車両用のワッシャ付きホイールナット、及び、ワッシャ付きホイールナット締付機に関する。
さらに詳しくは、大型車両用のホイールナットを所定のトルクで締め付けることができるワッシャ付きホイールナット、及び、ワッシャ付きホイールナット締付機に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤTを車両に取り付ける構造は種々提案されているが、一般的には、図10図12に示すように、車軸部分2の一部を構成するブレーキドラムの側面に等ピッチで突設された8本又は10本のホイールボルト4をホイール6のディスクホイール6Dに穿孔されたボルト孔8に貫通させ、当該ホイールボルト4にテーパー付きナット12を螺合させ、所定のトルクで締め付けることにより固定されている。所定のトルクで締め付けるには、公知のトルクレンチ14が用いられる。大型トラックやバスなどの場合、締め付けトルクは、550〜600N・mになるため、トルクレンチ14は大型化と共に重くなって取り扱い性が低下すると共に、締め付けるために作用させる力も大きく、重労働である。さらに、大型トラックやバスは、ホイールボルト4が8本又は10本用いられるため、車輪が前後輪4本の場合であっても、一台当たり32本又は40本をトルクレンチで締め付けねばならず、過酷な重労働になっている。
ホイールナットが所定のトルクで締め付けられていない場合、走行中の車輪脱輪につながり、最悪、人命にかかわることから、毎運行前の目視や打音点検が推奨され、3ヶ月毎及び12ヶ月毎の定期点検が義務づけられている。
しかしながら、前述のように、トルクレンチ14を用いてのホイールナットの締め付け検査は重労働であるため、法令に則って実行されない場合があり、車輪脱落が希に発生することがある。例えば、空気圧モータ式のインパクトドライバを用いてホイールナットを締め付けた状態で、トルクレンチ14を用いること無く走行に供する場合である。
そのため、トルクレンチ14を用いなくとも所定のトルクでホイールナットが締め付けられるようにするため、以下の技術が提案されている。
第1の従来技術として、ボルトとナットにて、被締結体を締結する際、前記被締結体と前記ナットとの間にリング状の弾性体が配置されており、前記弾性体は外周端部の一定幅が内周側とは異なる色彩に色分けされていることを特徴とする軸力視認装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
第2の従来技術として、縦軸を有する本体を含むホイールナットにして、軸線方向ねじ山付き開口部および一組の端部を有する前記本体が、前記端部の一方における円錐状の外面および前記端部の他方におけるスパナ用平坦部、前記円錐状の外面の半径外方向に延びる前記本体上のストップ面を形成する手段、を有し、前記ストップ面が前記縦軸に対して実質的に垂直でありかつ前記円錐状の面と交差する平面に全体的に存在して、それにより前記ストップ面に係合し、前記ホイールナットの使用中に前記軸の長手方向の前記円錐状の面の運動を制限し、ホイールを自動車に取付けることができるホイールナットであって、該ホイールナットが、内側にねじ山を付けた部材、および該ねじ山付き部材と整合しかつ前記ねじ山付き部材と端と端とを接した関係にあるワッシャにして、該ワッシャ上に前記円錐状の面が位置されてなるワッシャ、を有することからなるホイールナットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
第3の従来技術として、マッシブ・フォーミング、たとえば冷間及び又は熱間押出し加工により製造されたナットであって、工具を係合させる作用部、たとえば多角度ヘッドと、付加成形又は付加結合された加圧ワッシャとを有しており、加圧ワッシャが、たとえばリムなど構成部分への接触面と、スリーブ状の締付区域とを備え、この締付区域は、作用部の、加圧ワッシャとは反対の側に付加形成され、縦方向のスリットを有し、この区域の少なくとも内側が、加圧ワッシャと反対方向に先端の位置する円錐形に構成されており、しかも、ナットの内ねじ山が作用部に沿って円筒形に延び、かつ円錐形締付区域に沿って円錐形に延びている形式のものにおいて、円錐形に延びる内面とスリットの双方がマッシブ・フォミングにより形成されていることを特徴とするナット、特にホイールナットが知られている(例えば、特許文献3参照)。
一方、ナットを所定のトルクで機械的に締め付ける機能を有する締付機として、第4の従来技術が知られている。概略的には、締付機本体と増力ユニットを、該本体及び該ユニットに着脱可能に嵌合する接続継手を介して連結した締付機であって、締付機本体は、遊星歯車機構に連繋され互いに逆方向の回転力が作用する外出力筒と内出力筒を同心に具えており、増力ユニットのケーシングには外向きに反力受けが突設され内面には遊星歯車機構の内歯が形成され、増力ユニットの入力側には遊星歯車機構に連繋され互いに逆方向に回転力が作用する外ボックスと内ボックスを同心に具え、出力側には遊星歯車機構に連繋した出力軸が突設され、接続継手は、筒部材と該筒部材に両端を臨出して回転可能に嵌まった軸部材とによって構成され、軸部材の入力側は締付機本体の内出力筒に軸方向にスライド可能且つ該内出力筒と一体回転可能に嵌まる係合部となり、軸部材の出力側は増力ユニットの内ボックスに該内ボックス一体に回転可能に嵌合する軸体となり、筒部材は締付機本体の外出力筒の先端に当接するフランジを有し、フランジから入力側は外出力筒に外出力筒と一体回転可能に嵌まる嵌込み筒部となり、フランジから出力側は増力ユニットの外ボックスに一体回転可能に嵌合する嵌合部となり、フランジには締付機本体の外出力筒に突設した爪片が嵌まる切欠が開設されていることを特徴とする増力ユニットを着脱可能に接続した締付機が知られている(例えば、特許文献4参照)。
同様に第5の従来技術として、構造物から突設されたボルトに嵌められた反力座金とナットを締め付けるボックスユニットを具えた締付機であって、ボックスユニットは、先端がナットに係合可能なインナーボックスと、該インナーボックスと同心に形成され、先端が反力座金に係合可能なアウターボックスとを有し、 互いに逆方向に回転可能なインナーボックスホルダと、インナーボックスホルダの外周に形成されたアウターボックスホルダを同心に具え、インナーボックスホルダにインナーボックスが着脱可能に係合し、アウターボックスホルダにアウターボックスが着脱可能に係合してなるボックスユニットを具えた締付機において、インナーボックスは、ナットに係合可能なナット側部材とインナーボックスホルダに係合するホルダ側部材を具え、ナット側部材は、ナットが係合する6条の溝部が周方向に等間隔に形成されたナット係合穴を具え、各溝部の底面は、円周方向に幅を具備して、ナットに対して周方向に遊びを有し、ホルダ側部材の先端には、ナットと同一外形の六角形状の嵌合部材が形成されており、ホルダ側部材の嵌合部材を、ナット側部材のナット係合穴に遊びをもって嵌めてなる、ことを特徴とするボックスユニットを具えた締付機が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181019(図1図7、段落0003〜0005)
【特許文献2】特許第3902708号(図1図6、段落0005〜0016)
【特許文献3】特開平6−10935(図1図3、段落0003〜0015)
【特許文献4】特許第3232291号(図1図6、段落0007〜0010)
【特許文献5】特許第5635897号(図1図16、段落0012〜0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の従来技術は、ナットと被締結体との間に外周端部の一定幅が内周側と異なる色彩に色分けされている弾性体が配置されるので、締めつけによって発生する軸力に対応して弾性体が圧縮される。この圧縮量(変形量)は弾性体の弾性特性に依存するため、適当な弾性特性を有する弾性体を選択して使用することにより、ボルトに発生している軸力を弾性体の変形量として、直接目視して測定することができ、また、あらかじめボルトの軸力と弾性体の変形量との関係を測定し、把握しておき、実際に弾性体を使用した時の弾性体の変形量を測定、変形量に対応するように、色分けされた外周端部の幅を決めておくことにより、軸力の程度を簡単に精度よく知ることができる利点がある。しかしながら、弾性体は常時高圧縮力が作用した状態にあると共に、走行時は作用する力が逐次変化するため、劣化が激しく、耐久性に問題がある。
第2の従来技術において、テーパー面とストップ面との関係を適当に定めることにより、ホイールナットに対し、過度に締め付け力を作用させないことができる。しかしながら、過度に締め付け力をさせないことは、ホイールナットが所定位置以上進行しないので、アルミニューム等の軟質材料で製造されたアルミホイールを傷つけ、変形させない利点はあるものの、所定のトルクでホイールナットが締め付けられていることを証明するものではない問題がある。
第3の従来技術においては、雌螺子が弾性を有するテーパー孔に形成されているため、繰り返して螺合着脱が行われた場合であっても、一定の締め付けトルクを維持出来る利点はあるものの、その締め付けトルクが所定値であることを証明できない問題がある。
第4の従来技術においては、ホイールナットの締め付けは、電気又は空気圧モータによって行えることから、力作業は大幅に軽減されるものの、締付機の内出力軸筒をホイールナットに、外出力軸をワッシャに係止した後、反力受けを他のホイールボルト又はホイールナットに係止しなければならず、作業が煩雑である問題がある。
第5の従来技術においては、第4の従来技術よりは操作しやすいものの、第4の従来技術と同様に、反力受けを隣のナットに係止させねばならず、作業が繁雑である問題がある。
【0005】
本発明の基本的目的たる第1の目的は、所定のトルクで容易に締め付けることができると共に、ホイールを傷つけることがないワッシャ付きホイールナットを提供することである。
本発明の従的目的たる第2の目的は、ホイールナットを所定のトルクで容易に締め付けることができるワッシャ付きホイールナットの締付機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、請求項1に係る第1の発明は以下のように構成されている。
ホイールナットに対し付設され、平面視前記ホイールナットの外周よりも外方にワッシャ上面が位置すると共に前記ホイールナットと同一軸線周りに回転可能なワッシャ部を備えるワッシャ付きホイールナットであって、前記ワッシャ上面には、ホイール側に位置する底壁、時計回り方向に位置する時計回り方向壁、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁によって画定され、前記ワッシャ部の上面側及び外周側が開口された凹部である反力受け部が形成され、前記反力受け部は、前記ワッシャ部の外周縁に対し僅か外側に位置する一点を中心とし、所定の半径の円上であって、時計回り方向に位置する前記時計回り方向壁、及び、反時計回り方向に位置する前記反力受け壁によって画定された内側円弧側面、及び、前記底壁によって平面視底壁付の半円形に形成されていることを特徴とするワッシャ付きホイールナットである。
【0008】
本発明に係る第の発明は、前記ナット部は6角ナットであり、前記ワッシャ部は円形であって、前記ナット部の裏面から突出するワッシャ保持部に回転可能に支持されていることを特徴とする第の発明のワッシャ付きホイールナットである。
【0009】
本発明に係る第の発明は、ナット部に対し付設され、平面視前記ナット部の外周よりも外方にワッシャ上面が位置すると共に前記ナット部と同一軸線周りに回転可能なワッシャ部を備えるワッシャ付きホイールナットであって、前記ナット部は6角ナットであり、前記ワッシャ部は円形であって、前記ナット部の裏面から突出するワッシャ保持部に回転可能に支持されると共に、前記ワッシャ部の外周縁に対し僅か外側に位置する一点を中心とし、所定の半径の円上であって、時計回り方向に位置する時計回り方向壁、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁によって画定された内側円弧側面、及び、底壁によって平面視底壁付の半円形に形成された反力受け部が設けられていることを特徴とするワッシャ付きホイールナットである。
【0010】
本発明に係る第の発明は、ナット部に対し付設され、平面視前記ナット部の外周よりも外方にワッシャ上面が位置し、当該ワッシャ上面にワッシャ部の外周縁に対し僅か外側に位置する一点を中心とし、所定の半径の円上であって、時計回り方向に位置する時計回り方向壁、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁によって画定された内側円弧側面、及び、底壁によって平面視底壁付の半円形に形成され反力受け部が形成されると共に前記ナット部と同一軸線周りに回転可能なワッシャ部を備えるワッシャ付きホイールナットの締め付けに用いるホイールナット締付機であって、出力トルクを設定可能な駆動手段によって軸線周りを回転駆動されると共に、前記ナット部に嵌合されるナット締付体と、前記ナット締付体の外周側において、前記ナット締付体と同軸、かつ、前記ナット締付体とは逆方向に回転駆動され、前記ワッシャ上面の反力受け部に位置する突っ張り部を備えることを特徴とするワッシャ付きホイールナット締付機である。
【0011】
本発明に係る第の発明は、前記駆動手段が直流電気モータであることを特徴とする第の発明のワッシャ付きホイールナットの締付機である。
【0012】
本発明に係る第の発明は、前記駆動手段が空気圧モータであることを特徴とする第の発明のワッシャ付きホイールナット締付機である。
【0013】
本発明に係る第の発明は、前記反力受け部は、前記六角ナット部の工具係止面数の二倍の十二個が等間隔に形成されていることを特徴とする第3の発明に記載したワッシャ付きホイールナットである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、平面視ナット部の外周よりも外方にワッシャ上面が位置すると共に、当該ナット部と同一軸線周りに回転可能なワッシャ部を備え、当該ワッシャ上面には、ワッシャ部の上面側及び外周側が開口された凹部である反力受け部が形成されている。すなわち、凹部たる反力受け部には所謂底壁を有する。したがって、ナット部にトルク調整可能な駆動手段のボックスを嵌合して所定のトルクでホイールボルトにねじ込み、ワッシャ部の反力受け部には突っ張り部を係合させる。突っ張り部は、凹部である反力受け部の底壁にあてがわれるため、ディスクホイールに接触することはなく、ホイールを傷つけることは無い。また、ワッシャ部はナット部と一体化されているものの、同一軸線周りにそれぞれ個別に回動可能である。換言すれば、ワッシャ部によって突っ張り部が静止された状態でナット締付体によって、ナット部を前述のように所定のトルクで回転させることができる。したがって、ナット部の締め付けによって、ワッシャ部はディスクホイールとの接触圧力が高まり、ワッシャ部の外周は、ナット部の外周面よりも周方向において外方まで延在していることから、ワッシャ部とディスクホイールとの間の摩擦力は、ナット部とワッシャ部との間の摩擦力よりも大きくなる。したがって、ナット部を締め込んでもワッシャ部は静止状態を保つため、ディスクホイールを傷つけることなくナット部を締め込むことができる。したがって、ワッシャ部に形成した反力受け部に反力受けを係止させてナット部を所定のトルクで回転させて当該ナット部が回転しない状態まで締め付けることにより、所定のトルクでナット部を締め込むことが出来る。よって、第1の発明によれば、本発明の基本的目的たる第1の目的を達成できる利点がある。
【0015】
さらに、本第1の発明においては、反力受け部は、ワッシャ部の外周縁に対し僅か外側に位置する一点を中心とし、所定の半径の円上であって、時計回り方向に位置する時計回り方向壁、及び、反時計回り方向に位置する反力受け壁によって画定された内側円弧側面、及び、底壁によって平面視底壁付の半円形に形成されている。したがって、突っ張り部を反力受け部よりも周方向において短く形成することにより、締付機をセットする場合、突っ張り部と反力受け部との位相が多少ずれていても突っ張り部を反力受け部に位置させることができるので、締付機の装着が容易である利点がある。
【0016】
の発明によれば、基本的構成は第1の発明と同一であることから本発明における基本的目的である第1の目的を達成することができる。さらに、本第3の発明においては、ナット部は6角ナットであり、前記ワッシャ部は円形であって、前記ナット部の裏面から突出するワッシャ保持部に回転可能に支持されている。したがって、構造が簡単であり、かつ、製造も容易であるので、安価である利点がある。
【0017】
の発明によれば、基本的構成は第1の発明と同一であることから本発明における基本的目的である第1の目的を達成することができる。さらに、本第4の発明においては、ナット部は6角ナットであり、ワッシャ部は円形であって、ナット部の裏面から突出するワッシャ保持部に回転可能に支持されると共に、ワッシャ部の上面側及び外周側が開口され、平面視周方向に所定の長さを有する凹部である反力受け部が形成されている。よって、突っ張り部を反力受け部よりも周方向において短く形成することにより、反力受け部との位相が多少ずれていても突っ張り部を反力受け部に位置させることができると共に、構造が簡単であり、かつ、製造も容易であるので、安価である利点がある。
【0018】
の発明によれば、ナット締付体をナット部に嵌め合わせ、突っ張り部をワッシャ上面の反力受け部に位置させて、駆動手段を駆動させると、ナット部とワッシャ部とは互いに逆方向へ回転され、ナット部がホイールボルトにねじ込まれる。ナット部のねじ込み量増加に伴って、ワッシャ部はディスクホイールとの接触圧力が高まり、それらの間の摩擦力が大きくなって静止状態になる。これによって、突っ張り部がワッシャ部の反力受け部に当接して突っ張り部の回動が阻止された状態において、ナット締付体がナット部を締め付けるので、駆動手段において設定された所定のトルクでナット部締め付けられることができる。換言すれば、ナット部が駆動手段によって回転されなくなったことを以て、駆動手段において設定されたトルクでナット部が締め付けられたと言える。したがって、第5の発明によれば、第2の目的を達成できる利点がある。
【0019】
の発明によれば、基本的構成は第の発明と同一であることから本発明における第2の目的を達成することができる。さらに、駆動手段が直流電気モータであることから、電流を制御することによりトルクを容易に変更することができる利点がある。
【0020】
の発明によれば、基本的構成は第の発明と同一であることから、本発明の基本的目的である第2の目的を達成することができる。さらに、駆動手段が空気圧モータであることから、空気圧を制御することによりトルクを容易に変更することができる利点がある。
【0021】
の発明によれば、基本的構成は第3の発明と同一であることから、本発明の基本的目的である第1の目的を達成することができる。さらに、反力受け部の数が六角ナット部の工具係止面数の二倍の十二個が等間隔に形成されていることから、ワッシャ付きホイールナットの締付機を用いてホイールナットを締め付ける際、突っ張り部と反力受け部との係合面積が大きいことから、大トルクで締め付けることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きナット部の正面上方からの斜視図である。
図2図2は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットの正面図である。
図3図3は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットの平面図である。
図4図4は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットの図3におけるA-A線に沿った半断面図である。
図5図5は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットの図3におけるB-B線断面図である。
図6図6は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットの締付機の断面図である。
図7図7は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットの締付機のボックスの正面図である。
図8図8は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットを用いてフロントホイール(シングルホイール)を固定した状態の断面図である。
図9図9は、本発明にかかる実施例1のワッシャ付きホイールナットを用いてリヤディスクホイール(ダブルホイール)を固定した状態の断面図である。
図10図10は、本発明にかかる実施例2のワッシャ付きホイールナットの平面図である。
図11図11は、従来のホイールナットの締付作業を説明するための斜視図である。
図12図12は、従来のホイールナットの構造を説明するための正面図である。
図13図13は、従来のホイールナットの構造を説明するための図12におけるX―X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るワッシャ付きホイールナットの最良の形態は、ホイールナットに対し付設され、平面視前記ナット部の外周よりも外方にワッシャ上面が位置すると共に前記ナット部と同一軸線周りに回転可能なワッシャを備えるワッシャ付きホイールナットであって、前記ナット部は6角ナットであり、前記ワッシャは円形であって、前記ナット部の裏面から突出するワッシャ保持部に回転可能に支持されると共に、前記ワッシャの上面側及び外周側が開口され、平面視周方向に所定の長さを有する半円形の凹部である反力受け部が前記6角ナットの工具係止面の二倍の12個が等間隔に形成されていることを特徴とするワッシャ付きホイールナットである。
また、ワッシャ付きホイールナットの締付機の最良の形態は、ナット部に対し付設され、平面視前記ナット部の外周よりも外方にワッシャ上面が位置し、当該ワッシャ上面に反力受け部が形成されると共に前記ナット部と同一軸線周りに回転可能なワッシャを備えるワッシャ付きホイールナットの締め付けに用いるホイールナット締付機であって、
出力トルクを設定可能な駆動手段によって軸線周りを回転駆動されると共に、前記ナット部に嵌合されるナット締付体と、前記ナット締付体の外周側において、前記ナット締付体と同軸、かつ、前記ナット締付体とは逆方向に回転駆動され、前記ワッシャ上面の反力受け部に位置する突っ張り部とを備え、前記駆動手段は、電気モータであることを特徴とするワッシャ付きホイールナット締付機である。
【実施例1】
【0024】
まず図1図5を参照して本発明に係るワッシャ付きホイールナット100を説明する。なお、従来例と同一部には同一符号を付して説明を省略する。
ワッシャ付きホイールナット100は、車両のタイヤが装着されたホイール6を車両の車軸部分2に固定する機能を有し、本実施例1においては、ナット部106、及び、ワッシャ部108を含んでいる。
【0025】
次にナット部106を説明する。
ナット部106は、少なくとも、ホイールボルト4に螺合されてワッシャ部108を介してホイール6の回転中心部に存するディスクホイール6Dを車軸部分2に押し付ける機能、及び、ワッシャ部108を回転自在に保持する機能を有し、本実施例1においては、工具係止部106Nとワッシャ保持部106Wとを有し、それらはステンレスにより一体に構成されている。
【0026】
次に工具係止部106Nを主に図2及び図3を参照して説明する。
工具係止部106Nは、工具、例えばボックスレンチが係合される機能を有し、本実施例においては、規格化された孔径dのネジ穴106H、並びに、二面幅s、対角距離e、及び、高さmを有する六角ナットに形成されている。当然ながらネジ穴106Hの内周面には所定の雌ねじが形成されている。
【0027】
次にワッシャ保持部106Wを主に図5を参照して説明する。
ワッシャ保持部106Wは、ワッシャ部108をナット部106と一体化すると共に、ナット部106の軸線SLと同軸に回転自在に保持する機能を有し、本実施例1においては、ナット部106の裏面106B(図4:ディスクホイール6D側)から下方へ所定長突出して形成された円筒形をし、製造時は図5に鎖線示するように、所定の外径を有する直状筒型に形成されているが、ワッシャ部108の透孔108Tが外側に嵌合された後、外径が拡径されるように塑性変形されることにより、裁頭円錐形に形成され、ワッシャ部108を軸線SL周りを回転可能に支持すると共に、ナット部106と一体を成すように構成されている。なお、ワッシャ保持部106Wは同様の機能を有する他の機構に変更することができ、本実施例に限定されない。
【0028】
次にワッシャ部108を説明する。
ワッシャ部108は、ワッシャ付きホイールナット100のねじ込み操作によって、ナット部106がディスクホイール6Dと摺接させない機能、及び、反力受け部材112としての機能、並びに、ナット部106に回転自在に保持される機能を有し、本実施例1においては、所定の厚みt(図4)、及び、所定の外径D(図3)を有する円形リング状に形成されることにより、平面視において、工具係止部106Nの外方にワッシャ上面108Sが位置し、当該ワッシャ上面108Sに反力受け部114が設けられ、中央に透孔108Tが設けられている。
【0029】
次に反力受け部114を説明する。
反力受け部114は、ナット部106を締め付けるボックスの反力を受け止めて不動の足場とする機能を有し、本実施例1においては、反力受け部材112としてのワッシャ部108に形成され、ワッシャ部108の周方向において所定の長さを有する凹部であり、ナット部106における6面の工具係止部106Nに相対して形成されている。これら反力受け部114は全て同一に形成され、平面視半円形に形成されている。しかし、反力受け部114の形状はこれに限らず、平面視において矩形、三角形等の角形、楕円形等であっても良い。反力受け部114は、図3に示すように、ワッシャ部108の外周縁に対し僅か外側に位置する一点cを中心とし、所定の半径rの円cr上に位置する内側円弧側面114i、及び、底壁114Bによって平面視半円形に形成され、内側円弧側面114iは時計回り方向壁114C、及び、反力受け壁114CCを含んでいる。
【0030】
まず底壁114Bを説明する。
底壁114Bは、突っ張り部116をディスクホイール6Dに当接させない機能を有し、本実施例1においては、反力受け部114の底である。したがってワッシャ部108は、反力受け部114が形成された部位においても、所定の厚みt1(図5参照)を有している。換言すれば、ワッシャ部108は、平面視円形である。
【0031】
次に時計回り方向壁114Cを説明する。
時計回り方向壁114Cは、締付機122の突っ張り部116が図3において時計方向に回転された場合、その先端部側面が係合する壁である。したがって、締付機122のナット部106締付用のナット締付体124がナット部106の締付のため、時計方向へ回転された場合、これと反対方向へ回転される突っ張り部116が係止される底壁114Bに相対して垂立する壁である。
【0032】
反力受け壁114CCを説明する。
反力受け壁114CCは、締付機122の突っ張り部116が図3において反時計方向に回転された場合、その先端部側面が係合する壁である。
したがって、ワッシャ部108が静止状態である場合において、突っ張り部116が反力受け壁114CCに係止された場合、ナット部106に対して、駆動手段128において設定された所定のトルクがナット部106に作用することになる。
【0033】
次に透孔108Tを説明する。
透孔108Tは、ワッシャ部108をナット部106に一体化するために、拡径される前のワッシャ保持部106Wが通過可能であると共に、拡径された後のワッシャ保持部106Wによってナット部106の軸線SLに沿う方向への移動が制限される機能を有し、本実施例1においては、ワッシャ部108の中央に形成された円孔であり、その断面形状は図5に示すように、倒立L型、詳細にはナット部106から離れるにしたがって軸線SLから離れる拡径孔部分108C、及び、拡径孔部分108Cに続いて形成された直状孔部分108Eによって構成されている。換言すれば、ナット部106に隣接する部位の内径idが最も小さく、その後、徐々に拡径した後、所定の直径pdに形成されている。なお、拡径孔部分108Cはナット部106に隣接する部位以外に配置することができる。これにより、前述したように、ワッシャ部108はナット部106に一体化されると共に、ナット部106に対して独立して、同一の軸線SL周りを回転することができる。
【0034】
次に締付機122を図6及び図7を参照して説明する。
締付機122は、ナット部106を締め付け方向に設定された所定のトルクで回転させると共に、ワッシャ部108をナット部106の締め付け方向とは逆方向へ回転させる機能を有し、本実施例1においては、回転軸線RSL周りに回転されるナット締付体124、回転軸線RSLと同軸に回転される反力ボックス126、駆動手段128、ナットボックス用減速機132、反力ボックス用減速機134、及び、電流制御器136によって構成されている。
【0035】
まずナット締付体124を説明する。
ナット締付体124は、駆動手段128によって回転軸線RSL周りに回転され、ナット部106に嵌めあわされ、当該ナット部106を締め付け方向又は緩め方向へ回転させる機能を有し、本実施例1においては正面視円筒形に形成され、正面視正六角形のナット孔124Hが形成されている。換言すれば、ナット孔124Hは六面が係合面124Pによって囲われた、正面視正六角形の穴である。したがって、このナット孔124Hにナット部106が嵌め合わされる。
【0036】
次に反力ボックス126を説明する。
反力ボックス126は、ナット締付体124の外側に配置され、駆動手段128によって回転軸線RSL周りをナット締付体124とは逆方向へ回転される機能を有し、本実施例1においては、円筒形に形成され、先端内周面に正面視半円形の突っ張り部116が反力受け部114に相対して形成されている。具体的には、反力ボックス126は、反力基部部分126Bと反力先端部分126Tとにより構成されている。
【0037】
次に反力基部部分126Bを説明する。
反力基部部分126Bは、ナット締付体124の外周を回転軸線RSLを中心として回転可能な機能を有し、本実施例1においては所定直径を有する円形の収納穴126BH及び所定の外径を有する筒状体によって構成され、先端面に段差部よりなる基部側結合部126BJが形成されている。
【0038】
次に反力先端部分126Tを説明する。
反力先端部分126Tは、ワッシャ部108と嵌まり合い、突っ張り部116を反力受け部114に位置させる機能を有し、本実施例1においては、反力基部部分126Bと同一の外径及び内径を有する円筒体によって構成され、先端部内周面に反力受け部114に対応して等間隔で突っ張り部116が複数、すなわち、6個が突出形成されている。すなわち、反力先端部分126Tは、大凡円形の受入開口126oを有している。反力受け部114は、ナット部106の工具係止部106Nに相対して形成されているので、6つの突っ張り部116が等間隔で形成されている。突っ張り部116は正面視半円形であって、反力受け部114の高さよりも僅かに長く形成され、その先端面は反力先端部分126Tの端面と一致している。したがって、突っ張り部116が反力受け部114に位置され、その先端が底壁114Bに突き当たった場合、反力先端部分126Tの端面とワッシャ部108の底壁114Bとの間には厚みt1の隙間が形成される。また、反力基部部分126B側端面には、基部側結合部126BJに嵌合される反力側結合部126TJが形成されている。突っ張り部116の幅は、換言すれば、反力ボックス126の周方向における長さは、反力受け部114の円周方向の長さよりも短く、その長さ比は、3分の1以下であることが好ましい。反力ボックス126の位置出しが容易だからである。また、本実施例1において、まずナット締付体124が収納穴126BHに収納されてナットボックス用減速機132に駆動接続された後、反力先端部分126Tの反力側結合部126TJが基部側結合部126BJに嵌め込まれて一体化され、固定手段(図示せず)によって、強固に固定される。この状態において、ナット締付体124の先端は、突っ張り部116の内側端面に近接しており、正面視受入開口126oの内側にナット孔124Hが位置する。反力ボックス126は積極的にナット締付体124に対し逆方向へ回転される必要はなく、ナット締付体124に対し相対的に逆方向へ回転されれば良い。換言すれば、ナット締付体124の回転に対し、静止され、又は、ナット締付体124と同方向へ回転されるが、相対的に低速であるため、結果として相対的に逆回転される場合をも、逆回転の概念に含まれる。突っ張り部116が反力受け部114に位置した状態において、突っ張り部116の先端は、底壁114Bに当接し、それ以上ディスクホイール6D側へ移動することができない。換言すれば、反力ボックス126の端面とディスクホイール6Dとの間に隙間が形成されることから、反力ボックス126が回転しても、ディスクホイール6Dに傷を付けることはない。
【0039】
次に駆動手段128を説明する。
駆動手段128は、ナット締付体124をナット部106の締め付け方向へ、反力ボックス126をナット締め付け方向とは逆方向へ所定のトルクで回転させる機能を有し、本実施例1においては直流電気モータ138が用いられている。直流電気モータ138のトルクは、単位時間当たりの電流値を変更することによって容易に変更することができるからである。しかし、駆動手段128として空気圧モータを使用することも出来る。空気圧モータも駆動源としての空気圧を変更することにより、容易にトルクを変更出来るからである。
【0040】
次にナットボックス用減速機132を説明する。
ナットボックス用減速機132は、駆動手段128の回転を減速し、所定の速度でナット締付体124をナット部106の締め付け方向へ回転させる機能を有し、本実施例1においては、機械的減速機が用いられている。
【0041】
次に反力ボックス用減速機134を説明する。
反力ボックス用減速機134は、駆動手段128からの回転を減速し、ナット締付体124の回転方向と反対方向へ反力ボックス126を所定の速度で回転させる機能を有し、本実施例1においては、ナットボックス用減速機132の回転をギヤ手段142によって逆方向へ所定の速度で回転されるように構成されている。しかし、同様の機能を有する他の機構に変更することができる。
【0042】
次に電流制御器136を説明する。
電流制御器136は、直流電気モータ138の回転トルクを調整する機能を有し、公知の電流制御器が用いられている。したがって、電流制御器136の他、トルクを制御できる他の装置を採用することができる。
【0043】
次に本実施例1の作用を図8及び図9をも参照して説明する。
まず、タイヤTを装着したホイール6を車両の車軸部分2に装着する場合、ホイール6に形成されたボルト孔8をホイールボルト4に嵌合させた後、本発明に係るワッシャ付きホイールナット100を全てのホイールボルト4に螺合し、空気圧モータ式のインパクトドライバ等を用いて所定の順番で仮締めする。次いで各ワッシャ付きホイールナット100を締付機122を用いて所定の順番で所定の締め付けトルクで締め付ける。すなわち、ナット締付体124によるワッシャ付きホイールナット100の締め付けトルクが550〜600N・mになるように直流電気モータ138に供給する電流値を調整した後、締付機122を用いてワッシャ付きホイールナット100を締め付ける。
図9は、車軸部分2の一端部に対しホイール6が1つ装着される例であり、ホイールボルト4に対し1つのホイール6、したがって、ディスクホイール6Dが装着され、ワッシャ付きホイールナット100によって仮止めされた状態である。図10は車軸部分2の一端部に対しホイール6が2つ装着される例であり、2つのディスクホイール6Dが隣接した状態でホイールボルト4が貫通し、ワッシャ付きホイールナット100によって仮止めされた状態である。この後、所定のトルクで本締めを行う。
具体的には、まず、締付機122を作動させ、図7に示すように、ナット孔124Hにおける係合面124Pの大凡中央に突っ張り部116を位置させた状態で停止させる。
次いで、ナット締付体124をワッシャ付きホイールナット100のナット部106に嵌め込む。このとき、反力ボックス126の突っ張り部116もワッシャ部108の反力受け部114へ挿入される。締付機122は、突っ張り部116の端面が底壁114Bに突き当たった以降、ディスクホイール6D側に進行することは出来ない。換言すれば、反力ボックス126がディスクホイール6Dと当接することは無い。
次いで、直流電気モータ138を作動させ、ナット締付体124をナット部106の締め付け方向、図6において矢印X方向へ回転させ、反力ボックス126を図6において矢印CX方向へ回動させる。これによって、ナット部106はワッシャ部108と共にディスクホイール6D側へ進行し、ワッシャ部108をディスクホイール6Dへ押し付ける。また、反力ボックス126を図6において矢印CX方向へ回動によって突っ張り部116が反力受け部114の反力受け壁114CCに当接することから、ディスクホイール6Dとワッシャ部108のワッシャ裏面108Bとの間の摩擦力が直流電気モータ138において設定されたトルクを上回る場合、反力ボックス126によってワッシャ部108を回転させることが出来なくなる。一方、ナット締付体124によるナット部106の締め付けによる進行抵抗、したがって、ナット部106の締め付けトルクが直流電気モータ138において設定されたトルクを超えた場合、ナット締付体124は回転されなくなる。そしてこの状況において、ナット締付体124と連動する反力ボックス126は、その突っ張り部116が反力受け部114に係止されて固定されている状態であるので、ナット締付体124は設定されたトルクで回転駆動されていると言える。したがって、ナット部106は所定のトルクで締め付けられる。
【実施例2】
【0044】
次に実施例2を図10を参照しつつ説明する。
実施例2は、実施例1に対し反力受け部114の数がナット部106における工具係止面106Pの2倍の数にした例である。しかし、反力受け部114の数は、工具係止面106Pの整数倍に限らない数とすることができる。実施例1と同一機能部には同一符号を付し、異なる構成を説明する。実施例2の反力受け部114は、ナット部106の工具係止面106Pの数に対し2倍の数が設けられている。すなわち、本実施例2のナット部106は六角ナットであるから、反力受け部114は12個設けられ、それらのピッチは同一である。換言すれば、12個の反力受け部114は等間隔に設けられている。反力受け部114は、実施例1に比し2倍となり、結果として反力ボックス126の突っ張り部116も2倍にすることができる。これによって、突っ張り部116及び反力受け部114の数が増加することから、突っ張り部116と反力受け部114の接触面積が大きくなり、突っ張り部116と反力受け部114との間での伝達力を増大させることができる。これによって、ナット締付体124による締め付け力を増大させることができる利点がる。
【符号の説明】
【0045】
SL 軸線
RSL 回転軸線
100 ワッシャ付きホイールナット。
106 ナット部
106W ワッシャ保持部
108 ワッシャ部
106B 裏面
108S ワッシャ上面
114 反力受け部
116 突っ張り部
122 締付機
124 ナット締付体
128 駆動手段
138 直流電気モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13