(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1インジェクション通路(14a)および前記第2インジェクション通路(14b)の少なくとも一方は、通路断面積が変化する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
前記延長通路(14d)は、前記第1インジェクション通路(14a)および前記第2インジェクション通路(14b)を連通させる形状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の圧縮機。
前記延長通路は、前記第1インジェクション通路(14a)を延長させる第1延長通路(14e)、および前記第2インジェクション通路(14b)を延長させる第2延長通路(14f)によって構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の圧縮機。
前記第1延長通路(14e)および前記第2延長通路(14f)は、互いに円弧状に形成されており、径方向から見たときに、少なくとも一部が重合して配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の圧縮機。
前記第1延長通路(14e)および前記第2延長通路(14f)は、互いに円弧状に形成されており、径方向から見たときに、少なくとも一部が重合して配置されていることを特徴とする請求項8に記載の圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1〜
図3により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る圧縮機1を、ヒートポンプ式給湯機にて給湯水を加熱するヒートポンプサイクル(蒸気圧縮式の冷凍サイクル)100に適用している。従って、本実施形態の圧縮機1にて圧縮される流体は、ヒートポンプサイクルの冷媒である。
【0021】
また、ヒートポンプサイクル100は、圧縮機1の圧縮室にて昇圧過程の冷媒に、サイクルの中間圧気相冷媒を合流させるガスインジェクションサイクル(エコノマイザ式冷凍サイクル)として構成されている。より具体的には、本実施形態のヒートポンプサイクル100は、
図1に示すように、圧縮機1、水−冷媒熱交換器2、第1膨張弁3、気液分離器4、第2膨張弁5、室外熱交換器6等を有している。
【0022】
水−冷媒熱交換器2は、圧縮機1の吐出ポート40aから吐出された冷媒と給湯水とを熱交換させて給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。第1膨張弁3は、水−冷媒熱交換器2から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧手段であって、図示しない制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される電気式膨張弁である。
【0023】
気液分離器4は、第1膨張弁3にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離手段である。第2膨張弁5は、気液分離器4の液相冷媒流出口から流出した中間圧液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧手段であって、その基本的構成は第1膨張弁3と同様である。室外熱交換器6は、第2膨張弁5にて減圧された低圧冷媒を外気と熱交換させて蒸発させる吸熱用熱交換器である。
【0024】
室外熱交換器6の冷媒出口側には、圧縮機1の吸入ポート30aが接続され、気液分離器4の気相冷媒流出口には、圧縮機1の中間圧吸入ポート30bが接続されている。従って、本実施形態では、気液分離器4にて分離された中間圧気相冷媒が圧縮機1の圧縮室にて昇圧過程の冷媒にインジェクション(注入)される。
【0025】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル100では、冷媒として二酸化炭素を採用しており、圧縮機1の吐出ポートから第1膨張弁3入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒の圧力が臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には、圧縮機1内部の各摺動部位を潤滑するオイル(冷凍機油)が混入されており、このオイルの一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0026】
なお、ヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプサイクル100の他に、水−冷媒熱交換器2にて加熱された給湯水を貯湯する貯湯タンク、貯湯タンクと水−冷媒熱交換器2との間で給湯水を循環させる給湯水循環回路、および給湯水循環回路に配置されて給湯水を圧送する水ポンプ(いずれも図示せず)等を備えている。
【0027】
次に、
図2、
図3を用いて、圧縮機1の詳細構成を説明する。なお、
図2における上下の各矢印は、圧縮機1をヒートポンプ式給湯機に搭載した状態における上下の各方向を示している。本実施形態の圧縮機1は、いわゆるスクロール型の圧縮機であり、圧縮機構部10、電動機部(電動モータ部)20、ハウジング30、および油分離器40等を有している。
【0028】
圧縮機構部10は、圧縮対象流体である冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。電動機部20は、圧縮機構部10を駆動する回転駆動力を出力するものである。ハウジング30は、圧縮機1の外殻を形成するとともに、その内部に圧縮機構部10および電動機部20等を収容するものである。油分離器40は、ハウジング30の外部に配置されて圧縮機構部10にて圧縮された高圧冷媒からオイルを分離するものである。
【0029】
また、本実施形態の圧縮機1は、
図2に示すように、電動機部20から圧縮機構部10へ回転駆動力を伝達するシャフト(回転軸)25が鉛直方向(上下方向)に延びて、圧縮機構部10と電動機部20が鉛直方向に配置された、いわゆる縦置きタイプに構成されている。より具体的には、この圧縮機1では、圧縮機構部10が電動機部20の下方側に配置されている。
【0030】
ハウジング30は、中心軸が鉛直方向に延びる筒状部材31、筒状部材31の上端部を塞ぐ椀状の上蓋部材32および筒状部材31の下端部を塞ぐ椀状の下蓋部材33を有し、これらを一体に接合して密閉容器構造としたものである。筒状部材31、上蓋部材32および下蓋部材33は、いずれも鉄あるいは鉄系金属で形成されており、これらの部材は溶接にて接合されている。
【0031】
ハウジング30には、吸入ポート30a、中間圧吸入ポート30b、図示しない高圧冷媒流出口が形成されている。
【0032】
吸入ポート30aは、室外熱交換器6から流出した低圧冷媒を圧縮機構部10へ吸入させるための冷媒吸入口である。中間圧吸入ポート30bは、気液分離器4の気相冷媒流出口から流出した中間圧気相冷媒を圧縮機構部10の圧縮室(本実施形態では、
図2に示す第1、第2圧縮室Va、Vb)にて圧縮過程の冷媒に合流させるための中間圧冷媒吸入口である。高圧冷媒流出口は、圧縮機構部10から吐出された高圧冷媒をハウジング30の外部に配置された油分離器40側へ流出させるための冷媒流出口である。
【0033】
電動機部20は、固定子をなすコイルステータ21と回転子をなすロータ22とを有して構成されている。このロータ22の軸中心穴にはシャフト25が圧入により固定されている。従って、制御装置からコイルステータ21のコイルへ電力が供給されて回転磁界が発生すると、ロータ22およびシャフト25が一体となって回転する。
【0034】
シャフト25は、略円筒状に形成されており、その両端部は、それぞれすべり軸受けにて構成された第1軸受部26、第2軸受部27に回転可能に支持されている。また、シャフト25の内部には、シャフト25の外表面と第1、第2軸受部26、27との摺動部位にオイルを供給するための油供給通路25aが形成されている。
【0035】
第1軸受部26は、ハウジング30内の空間を電動機部20が配置される空間と圧縮機構部10が配置される空間とに仕切るように固定されたミドルハウジング28に形成されており、シャフト25の下端側(圧縮機構部10側)を回転可能に支持している。第2軸受部27は、介在部材を介してハウジング30の筒状部材31に固定されており、シャフト25の上端側(圧縮機構部10の反対側)を回転可能に支持している。
【0036】
圧縮機構部10は、それぞれ渦巻き状の歯部が形成された可動スクロール11および固定スクロール12によって構成されるスクロール型の圧縮機構部である。
【0037】
可動スクロール11は、円板状の可動側基板部111、および可動側基板部111から固定スクロール12側へ向かって突出する渦巻き状の可動側歯部112を有している。固定スクロール12は、円板状の固定側基板部121および固定側基板部121から可動スクロール11側へ向かって突出する渦巻き状の固定側歯部122を有している。
【0038】
さらに、固定スクロール12は、固定側基板部121の外周側面がハウジング30の筒状部材31の内周側面に圧入されていることによって、ミドルハウジング28の下方側に固定されている。可動スクロール11は、ミドルハウジング28と固定スクロール12との間に形成される空間に配置されている。
【0039】
可動スクロール11および固定スクロール12は、それぞれの基板部111、121の板面が対向するように配置されているとともに、それぞれの歯部112、122同士が噛み合わされて、一方のスクロールの歯部の先端部が他方のスクロールの基板部に当接するように配置されている。
【0040】
これにより、それぞれの歯部112、122同士が複数箇所で接触し、それぞれの歯部112、122同士の間には、シャフト25の中心軸の軸方向から見たときに三日月形状に形成される圧縮室が複数個形成される。
【0041】
図2では、図示の明確化のため、中間圧吸入ポート30bを介して流入した中間圧冷媒がインジェクション(注入)される第1圧縮室Vaおよび第2圧縮室Vbを模式的に図示している。これらの第1圧縮室Vaおよび第2圧縮室Vbは、シャフト25の中心軸に対して対称となる位置に形成されている。さらに、第1圧縮室Va内の冷媒圧力と第2圧縮室Vb内の冷媒圧力は同等となる。
【0042】
また、可動スクロール11の可動側基板部111の上面側の中心部には、シャフト25の下端部(圧縮機構部10側の端部)が挿入される円筒状のボス部113が形成されている。一方、シャフト25の下端部は、シャフト25の回転中心に対して偏心した偏心部25bになっている。従って、可動スクロール11の可動側基板部111のボス部113には、シャフト25の偏心部25bが挿入される。
【0043】
さらに、可動スクロール11およびミドルハウジング28の間には、可動スクロール11が偏心部25b周りに自転することを防止する図示しない自転防止機構が設けられている。このため、シャフト25が回転すると、可動スクロール11は偏心部25b周りに自転することなく、シャフト25の回転中心を公転中心として旋回(公転運動)する。
【0044】
そして、この公転運動により、前述した圧縮室が容積を縮小させながら、シャフト25回りに、外周側から中心側へ変位する。さらに、本実施形態では、それぞれのスクロールの歯部112、122の先端部に、チップシールを配置することにより、圧縮室の機密性を向上させている。このようなチップシールとしては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂で形成されたものを採用することができる。
【0045】
また、ハウジング30に形成された吸入ポート30aは、固定スクロール12の内部に形成された吸入用通路を介して、圧縮室のうち最外周側に位置付けられて容積が最も大きくなる吸入側の圧縮室に連通している。従って、本実施形態の固定スクロール12は、ハウジング30内に冷媒を流通させる通路を形成する通路形成部材としての機能を兼ね備えている。
【0046】
中間圧吸入ポート30bは、固定スクロール12および通路形成プレート14に形成された第1、第2インジェクション通路14a、14bを介して、圧縮室のうち最外周側から中心側へ変位する過程の中間位置に位置付けられる第1圧縮室Va、第2圧縮室Vbに連通している。従って、本実施形態の通路形成プレート14は、固定スクロール12とともに、通路形成部材を構成している。
【0047】
この通路形成プレート14は、円板状の金属部材で形成されており、固定スクロール12の下方側の面にボルト締め等の固定手段によって固定されている。さらに、通路形成プレート14には、固定スクロール12側の面を凹ませること等によって、
図3に示すように、分岐部14c、第1インジェクション通路14a、第2インジェクション通路14b、並びに、延長通路14dが形成されている。
【0048】
なお、第1インジェクション通路14a、第2インジェクション通路14b、分岐部14c、吸入ポート30a、中間圧吸入ポート30b等の位置関係は、
図3に示す通りである。つまり、
図2では、説明の明確化のために、第1インジェクション通路14a、第2インジェクション通路14b、分岐部14c、吸入ポート30a、中間圧吸入ポート30b等を模式的に一つの断面図上に図示している。
【0049】
分岐部14cは、中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧冷媒の流れを分岐する部位である。第1インジェクション通路14aは、分岐部14cにて分岐された一方の中間圧冷媒を第1圧縮室Va側へ導く冷媒通路である。第2インジェクション通路14bは、分岐部14cにて分岐された他方の中間圧冷媒を第2圧縮室Vb側へ導く冷媒通路である。
【0050】
延長通路14dは、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bを分岐部14cから離れる側へ延長させる冷媒通路である。さらに、本実施形態の延長通路14dは、シャフト25の中心軸方向から見たときに、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bを連通させるように半円弧状に形成されている。
【0051】
このため、本実施形態の第1インジェクション通路14a、第2インジェクション通路14b、および延長通路14dは、
図3に示すように、シャフト25の中心軸の軸方向から見たときに、環状に接続される。なお、本実施形態では、通路形成プレート14における第1インジェクション通路14a、第2インジェクション通路14b、および延長通路14dの上下方向の深さ寸法(紙面裏表方向の凹み量)を、一定としている。
【0052】
また、固定スクロール12の内部には、中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧冷媒が第1インジェクション通路14a側(分岐部14c側)から第1圧縮室Va側へ流れることのみを許容する第1逆止弁51が配置されている。さらに、固定スクロール12の内部には、中間圧冷媒が第2インジェクション通路14b側(分岐部14c側)から第2圧縮室Vb側へ流れることのみを許容する第2逆止弁52が配置されている。
【0053】
第1、第2逆止弁51、52は、板状部材で形成されたリード弁、およびリード弁が開閉する通路が形成されたシート部材によって構成されている。このようなリード弁方式の逆止弁は、比較的小さな収容空間内に収容することができるので、第1、第2逆止弁51、52から下流側の冷媒通路の内容積(デッドボリューム)を不必要に拡大させない点で有効である。
【0054】
また、固定スクロール12の固定側基板部121の中心部には、圧縮室で圧縮された冷媒が吐出される吐出孔123が形成されている。さらに、吐出孔123の下方側には、吐出孔123と連通する吐出室124が形成されている。吐出室124には、吐出室124側から圧縮室Vc側への冷媒の逆流を防止する吐出弁(リード弁)と、吐出弁の最大開度を規制するストッパ16が配置されている。
【0055】
ハウジング30の内部には、吐出室124からハウジング30に形成された冷媒流出口へ導く図示しない冷媒通路が形成されている。さらに、この冷媒流出口には油分離器40の冷媒流入口40bが接続されている。油分離器40は、鉛直方向に延びる筒状部材41を有し、その内部に形成された空間で圧縮機構部10にて昇圧された冷媒を旋回させ、遠心力の作用によって気相冷媒とオイルとを分離するものである。
【0056】
油分離器40にて分離された高圧気相冷媒は、油分離器40の上方側に形成された吐出ポート40aから水−冷媒熱交換器2側へ吐出される。一方、油分離器40にて分離されたオイルは、油分離器40の下方側の部位に蓄えられ、図示しない油通路を介してハウジング30内の圧縮機構部10やシャフト25と第1、第2軸受部26、27との摺動部等へ供給される。
【0057】
次に、上記構成における本実施形態の圧縮機1の作動について説明する。圧縮機1の電動機部20に電力が供給されてロータ22およびシャフト25が回転すると、可動スクロール11がシャフト25に対して旋回(公転運動)する。これにより、可動スクロール11の可動側歯部112と固定スクロール12の固定側歯部122との間に形成された三日月状の圧縮室が外周側から中心側へシャフト25回りに旋回しながら移動していく。
【0058】
この際、最外周側に位置付けられて吸入ポート30aに連通する吸入側の圧縮室には、吸入ポート30aを介して室外熱交換器6から流出した低圧冷媒が吸入される。低圧冷媒が流入した圧縮室は、シャフト25の回転に伴って、その容積を縮小させながら下流側冷媒通路51に連通する中間位置へ移動する。
【0059】
圧縮室が中間位置へ移動し、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1よりも中間圧吸入ポート30b側の中間圧気相冷媒の圧力P2が高くなっている状態では、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1と中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2との圧力差によって、第1、第2逆止弁51、52が開く。これにより、気液分離器4にて分離されて中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧気相冷媒が、第1、第2圧縮室Va、Vbへインジェクション(注入)される。
【0060】
さらに、シャフト25の回転に伴って圧縮室の容積が縮小し、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1が中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2を上回ると、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1と中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2との圧力差によって、第1、第2逆止弁51、52が閉じる。これにより、圧縮室Vc側から中間圧吸入ポート30b側へ冷媒が逆流してしまうことが防止される。
【0061】
さらに、シャフト25の回転に伴って圧縮室が中心側の固定スクロール12の吐出孔123へ連通する位置に移動し、作動室Vc内の高圧冷媒の圧力が吐出弁の開弁圧を超えると吐出弁が開く。これにより、高圧冷媒が吐出室124へ吐出される。吐出室124へ吐出された高圧冷媒は、油分離器40にてオイルが分離されて吐出ポート40aから水−冷媒熱交換器2側へ吐出される。
【0062】
以上の如く、本実施形態の圧縮機1では、ヒートポンプサイクル100において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出することができる。
【0063】
ここで、本実施形態の圧縮機1のように、圧縮室にて圧縮過程の流体に、外部から吸入された中間圧流体を合流させる圧縮機では、中間圧吸入ポートと圧縮室が断続的に接続され
るため、インジェクション通路(本実施形態では、第1、第2インジェクション通路14a、14b)内の中間圧冷媒に圧力脈動が生じやすい。さらに、このような圧力脈動は、圧縮機全体としての騒音や振動を増加させる原因となる。
【0064】
これに対して、本実施形態の圧縮機1では、延長通路14dが形成されているので、この延長通路14dの内部空間を、第1、第2インジェクション通路14a、14b内の中間圧冷媒の圧力脈動を減衰させるマフラー空間として機能させることができる。
【0065】
さらに、延長通路14dを、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bを分岐部14cから離れる側へ延長させるように形成している。これによれば、通路形成プレート14のうち第1、第2インジェクション通路14a、14bが形成されない部位を有効に活用して、延長通路14dの内部容積(通路容積)を容易に拡大させることができる。
【0066】
従って、延長通路14dの通路容積として、狙いの周波数の圧力脈動を充分に減衰可能な容積を確保しやすい。その結果、本実施形態の圧縮機1では、第1、第2インジェクション通路14a、14bが形成されていても、騒音および振動の増加を充分に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、延長通路14dを、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bを連通させるように形成している。従って、延長通路14dの通路容積をより一層容易に拡大させることができる。
【0068】
さらに、延長通路14dの通路長さや通路断面積を、第1インジェクション通路14a側の圧力脈動と第2インジェクション通路14b側の圧力脈動が互いに打ち消し合って減衰するように調整することで、より一層効果的に、圧縮機の騒音や振動の増加を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の圧縮機1のように、インジェクション通路14a、14bに逆止弁51、52が配置される構成では、逆止弁51、52の開閉作動によって、インジェクション通路14a、14b内の冷媒に圧力脈動が生じやすい。従って、本実施形態のように騒音および振動の増加を抑制できることは、インジェクション通路に逆止弁が配置される圧縮機において極めて有効である。
【0070】
(第2実施形態)
本実施形態では、
図4に示すように、延長通路を、第1インジェクション通路14aを延長させる第1延長通路14e、および第2インジェクション通路14bを延長させる第2延長通路14fによって構成した例を説明する。
図4から明らかなように、第1、第2延長通路14e、14fは、シャフト25の中心軸方向から見たときに、いずれも円弧状の先止まり形状となっており、先端部同士が連通していない。
【0071】
なお、
図4は、第1実施形態の
図3に対応する図面であって、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
【0072】
その他の構成および作動については、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の圧縮機1を作動させると、第1、第2延長通路14e、14fが形成されているので、第1実施形態と同様に、圧縮機1の騒音および振動の増加を充分に抑制することができる。
【0073】
さらに、本実施形態の圧縮機1では、第1、第2延長通路14e、14fが先止まり形状となっている。このため、第1、第2インジェクション通路14a、14b内の冷媒の脈動波と第1、第2延長通路14e、14fの先端部で反射した脈動波が互いに打ち消し合うように、第1、第2延長通路14e、14fの通路長さ等を調整することで、より一層効果的に、圧縮機の騒音や振動の増加を抑制することができる。
【0074】
また、本発明者らの検討によれば、第1、第2延長通路14e、14fの通路長さを、脈動波の波長λに対して、1/8λ以上、かつ、3/8λ以下程度とすることで、効果的に圧縮機の騒音や振動の増加を抑制可能であることが確認されている。
【0075】
なお、第1延長通路14eの長さとしては、
図4の破線で示すように、第1延長通路14eの中心線の長さを採用すればよい。より詳細には、第1逆止弁51の第1圧縮室Vaへの連通を起点として、第1延長通路14eの分岐部14cの先端部へ至る通路の中心線の長さを採用すればよい。第2延長通路14fの長さについても同様である。
【0076】
さらに、第1、第2延長通路14e、14fの通路長さを所望の長さとするために、例えば、
図5の変形例に示すように、シャフト25の径方向から見たときに、第1延長通路14eおよび第2延長通路14fが、少なくとも一部が重合するように配置されていてもよい。
【0077】
(第3実施形態)
本実施形態では、
図6に示すように、第1実施形態で説明した延長通路14dを通路断面積が変化する形状に形成した例を説明する。
【0078】
より具体的には、本実施形態の延長通路14dは、第1、第2インジェクション通路14a、14bから離れるに伴って、徐々に通路幅寸法を縮小させることにより、通路断面積を縮小させている。その他の構成および作動については、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の圧縮機1を作動させると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
さらに、本実施形態の圧縮機1によれば、第1、第2インジェクション通路14a、14bから離れるに伴って、延長通路14d内に通路断面積が徐々に変化する形状としているので、延長通路14d内にて減衰可能な圧力脈動の周波数についても徐々に変化させることができる。従って、広範囲の周波数帯の圧力脈動を減衰させることができ、より一層効果的に、圧縮機1の騒音および振動の増加を抑制することができる。
【0080】
(第4実施形態)
本実施形態では、
図7に示すように、第2実施形態で説明した第1延長通路14eの通路長さ、および第2延長通路14fの通路長さを、互いに異なる長さとしている。その他の構成および作動については、第2実施形態と同様である。従って、本実施形態の圧縮機1を作動させると、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
さらに、本実施形態の圧縮機1によれば、第1延長通路14eの通路長さ、および第2延長通路14fの通路長さが異なっているので、それぞれの第1、第2延長通路14e、14fにて減衰可能な圧力脈動の周波数を異なる値とすることができる。従って、減衰可能な圧力脈動の周波数帯の範囲を拡大させることができ、より一層効果的に、圧縮機1の騒音および振動の増加を抑制することができる。
【0082】
例えば、本実施形態の圧縮機1を、二種類の異なる回転数で回転させるシステムに適用し、第1延長通路14eの通路長さを一方の回転数で回転させた際に生じる圧力脈動を減衰させるように決定し、第2延長通路14fの通路長さを他方の回転数で回転させた際に生じる圧力脈動を減衰させるように決定してもよい。これによれば、いずれの回転数で作動させた際にも、圧縮機1の騒音および振動の増加を抑制することができる。
【0083】
(第5実施形態)
本実施形態では、
図8に示すように、第2実施形態に対して、第1インジェクション通路14aの通路形状および第2インジェクション通路14bの通路形状を異なる形状とした例を説明する。
【0084】
具体的には、本実施形態の圧縮機1では、第2実施形態に対して、中間圧吸入ポート30bおよび分岐部14cの位置を変化させることによって、第1インジェクション通路14aの通路の通路長さを第2インジェクション通路14bの通路長さよりも短くしている。その他の構成および作動については、第2実施形態と同様である。従って、本実施形態の圧縮機1を作動させると、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
さらに、本実施形態の圧縮機1によれば、第1インジェクション通路14aの通路形状および第2インジェクション通路14bの通路形状を異なる形状としているので、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bにて異なる周波数の圧力脈動を減衰させることができる。
【0086】
より詳細には、第1、第2インジェクション通路14a、14bの内部空間は、それぞれマフラー空間としての機能を果たす。従って、第1、第2インジェクション通路14a、14bの通路形状を異なる形状として、第1、第2インジェクション通路14a、14bの通路容積を異なる値とすれば、第1、第2インジェクション通路14a、14bにて、それぞれ異なる周波数の圧力脈動を減衰させることができる。
【0087】
また、第1インジェクション通路14aの通路形状および第2インジェクション通路14bの通路形状を異なる形状とする手段は、それぞれの通路の通路長さを変えることに限定されない。
【0088】
例えば、
図9の変形例に示すように、第1インジェクション通路14aの通路幅寸法を、第2インジェクション通路14bの通路幅寸法よりも拡大させてもよいし、
図10の変形例に示すように、第1インジェクション通路14aの通路幅寸法を、第2インジェクション通路14bの通路幅寸法よりも縮小させてもよい。
【0089】
(第6実施形態)
本実施形態では、
図11に示すように、第5実施形態と同様に、第1インジェクション通路14aの通路形状および第2インジェクション通路14bの通路形状を異なる形状とし、さらに、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bを通路断面積が変化する形状に形成した例を説明する。
【0090】
より具体的には、第1インジェクション通路14aは分岐部14cから通路断面積が徐々に拡大する形状に形成されている。第2インジェクション通路14bには、通路断面積を縮小させる絞り部14gが形成されている。また、本実施形態では、第1延長通路14eを廃止している。その他の構成および作動は第5実施形態と同様である。従って、本実施形態の圧縮機1を作動させると、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
ここで、第5実施形態で説明したように、第1、第2インジェクション通路14a、14bの内部空間は、それぞれマフラー空間としての機能を果たす。このため、第1、第2インジェクション通路14a、14bの通路容積を拡大することで、中間圧冷媒の圧力脈動減衰効果を向上させることができる。その一方で、第1、第2インジェクション通路14a、14bの通路容積を拡大すると、圧縮機1全体としての大型化を招きやすい。
【0092】
また、第1、第2インジェクション通路14a、14bに、絞り部14g等を形成して、第1、第2インジェクション通路14a、14bを流通する冷媒流量を減少させることで、中間圧冷媒の圧力脈動のエネルギを減少させることができる。その一方で、第1、第2インジェクション通路14a、14bを流通する冷媒流量を減少させると、圧縮室にて圧縮過程の冷媒に適切な流量の中間圧冷媒を合流させることができなくなってしまう。
【0093】
そして、ガスインジェクションサイクルにおいて、圧縮室にて圧縮過程の冷媒に適切な流量の中間圧冷媒を合流させることができなくなってしまうと、ガスインジェクションサイクルを構成することによる、サイクルの成績係数(COP)の向上効果を得にくくなってしまう。
【0094】
これに対して、本実施形態では、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bを通路断面積が変化する形状にし、絞り部14等を形成している。これによれば、狙いの周波数の圧力脈動を減衰できるように、第1、第2インジェクション通路14a、14bの通路容積および第1、第2インジェクション通路14a、14bを流通する冷媒流量を調整することができる。
【0095】
より詳細には、第1、第2インジェクション通路14a、14bの通路容積を調整することによって、第1、第2インジェクション通路14a、14bの容量成分Cを調整することができる。また、1、第2インジェクション通路14a、14bを流通する冷媒流量を調整することによって、第1、第2インジェクション通路14a、14bの抵抗成分Rを調整することができる。
【0096】
従って、電気回路におけるローパスフィルタのように、狙いの周波数の圧力脈動を減衰できるように、第1インジェクション通路14aおよび第2インジェクション通路14bの形状を調整できる。その結果、より一層効果的に、圧縮機1の騒音および振動の増加を抑制することができる。
【0097】
ところで、本実施形態では、第1、第2インジェクション通路14a、14b等を形成するために、固定スクロール12の下方側の面にボルト締めによって、通路形成プレート14を固定している。このため、固定スクロール12の下方側の面と通路形成プレート14との隙間からの冷媒漏れを防止するため、固定スクロール12と通路形成プレート14との隙間に平板状のシール部材であるガスケット15を配置している。
【0098】
より具体的には、本実施形態では、
図12の網掛けハッチング領域に示す範囲に、ガスケット15を配置している。さらに、ガスケット15には、固定スクロール12側および通路形成プレート14側の少なくとも一方に突出した第1、第2リブ15a、15bが形成されている。第1、第2リブ15a、15bは、通路形成プレート14が固定スクロール12に固定された際に押し潰されて、シール性を向上させる機能を果たす。
【0099】
また、ガスケット15では、
図12の太実線で示すように、吐出室124の周囲に環状の第1リブ15aを形成し、第1、第2インジェクション通路14a、14bおよび第2延長通路14fの外周側に第2リブ15bを形成している。つまり、第1、第2リブ15a、15bは、ガスケット15を押しつぶす方向(本実施形態では、シャフト25の中心軸方向)から見たときに、二重の環状に形成されている。
【0100】
さらに、第2リブ15bを内周側に凹ませる形状とし、締結用のボルトを挿入する内周側ボルト穴151を第1リブ15aの周囲に略等角度間隔(約90°間隔)で4つ配置し、外周側ボルト穴152を第2リブ15bの周囲に略等角度間隔(約60°間隔)で6つ配置している。
【0101】
このように、第1、第2リブ15a、15bを環状に形成するとともに、内周側ボルト穴151、外周側ボルト152穴を環状に配置することで、通路形成プレート14を固定スクロール12の下方側の面に取り付けた際に、ガスケット15の第1、第2リブ15a、15bを均等に押し潰すことができ、良好なシール性を得ることができる。さらに、良好なシール性を得るためには、
図12の太実線で示すように、内周側ボルト穴151の周囲にもリブを設けることが望ましい。
【0102】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0103】
上述の各実施形態では、通路形成プレート14に延長通路14d〜14fを形成した例を説明したが、例えば、第5、第6実施形態のように、第1インジェクション通路14aの通路形状および第2インジェクション通路14bの通路形状を異なる形状とする場合には、延長通路14d〜14fは必須の構成ではない。さらに、第1、第2延長通路14e、14fは、必ずしも双方同時に形成する必要はなく、第6実施形態のように、狙いの周波数の圧力脈動を減衰可能であれば、いずれか一方を形成してもよい。
【0104】
上述の各実施形態では、第1、第2インジェクション通路14a、14bおよび延長通路14d〜14fの通路断面積を変化させるために、各通路14a〜14fの通路幅寸法を変化させた例を説明したが、通路断面積を変化させる手段はこれに限定されない。例えば、通路形成プレート14における各通路14a〜14fの上下方向の深さ寸法(凹み量)を変化させることによって通路断面積を変化させてもよい。
【0105】
さらに、第1、第2インジェクション通路14a、14bおよび延長通路14d〜14fは、必ずしも全ての通路断面積を変更する必要はなく、狙いの周波数の圧力脈動を減衰可能であれば、各通路14a〜14fの少なくとも一つの通路断面積を変更すればよい。
【0106】
上述の各実施形態では、圧縮機構部10としてスクロール型の圧縮機構部を採用した例を説明したが、圧縮機構部10はこれに限定されない。つまり、圧縮機構部10としては、圧縮過程の流体に中間圧流体を合流させることのできる第1、第2圧縮室Va、Vbが形成されるものであれば、いずれの形式のものを採用してもよい。
【0107】
例えば、断面楕円形状の柱状空間を形成するシリンダ、柱状空間の内部に配置される円柱状のロータ、およびロータの外周面側からシリンダの内周面に当接するように突出する複数のベーンを有し、圧縮室が、シリンダの内周面、ロータの外周面およびベーンによって仕切られた空間によって形成される、いわゆるインナーベーン型の圧縮機構部であってもよい。
【0108】
上述の各実施形態では、本発明に係る圧縮機1をヒートポンプ式給湯機のヒートポンプサイクル100に適用した例を説明したが、本発明に係る圧縮機1の適用はこれに限定されない。つまり、本発明に係る圧縮機1は、種々の流体を圧縮する圧縮機として幅広い用途に適用可能である。
【0109】
さらに、本発明に係る圧縮機1は、
圧縮機から吐出された高圧冷媒と加熱対象流体(あるいは外気)とを熱交換させる放熱器と、
放熱器から流出した高圧冷媒の流れを分岐する分岐部と、
分岐部にて分岐された一方の高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側膨張弁と、
分岐部にて分岐された他方の高圧冷媒と高段側膨張弁にて減圧された中間圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換器と、
内部熱交換器から流出した高圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側膨張弁と、
低段側膨張弁から流出した低圧冷媒と外気(あるいは冷却対象流体)とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、
内部熱交換器から流出した中間圧冷媒を圧縮機1の中間圧吸入ポート30bへ吸入させ、蒸発器から流出した低圧冷媒を圧縮機1の吸入ポート30aへ吸入させるように構成されたガスインジェクションサイクルに適用してもよい。
【0110】
上述の実施形態では、縦置きタイプの圧縮機1について説明したが、もちろん、シャフト(回転軸)25が水平方向に延びて、圧縮機構部10と電動機部20が水平方向(横方向)に配置された横置きタイプの圧縮機として構成されていてもよい。
【0111】
上述の実施形態では、第1、第2逆止弁51、52として、リード弁を採用した例を説明したが、第1、第2逆止弁51、52はこれに限定されない。例えば、圧縮室Vc側の冷媒圧力P1と中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2との差圧に応じて変位するフリーバルブ(スプール弁)を採用してもよい。
【0112】
また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、第4実施形態の第1、第2延長通路14e、14fに第2実施形態の変形例を適用してもよい。つまり、シャフト25の径方向から見たときに、互いに長さの異なる第1、第2延長通路14e、14fが、少なくとも一部が重合するように配置されていてもよい。