特許第6460612号(P6460612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6460612レーザー記録用インキ組成物、レーザー記録用積層体、レーザー記録用積層体の製造方法および記録体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6460612
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】レーザー記録用インキ組成物、レーザー記録用積層体、レーザー記録用積層体の製造方法および記録体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20190121BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20190121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190121BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20190121BHJP
   B41M 5/333 20060101ALI20190121BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20190121BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C09D11/10
   C09D11/037
   B32B27/00 E
   B41M5/26
   B41M5/333 210
   B41M5/42 210
   B41M5/46 210
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-139891(P2018-139891)
(22)【出願日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-146184(P2017-146184)
(32)【優先日】2017年7月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】中舘 郁也
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/068207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B41M 5/26
B41M 5/36−5/395
B41M 5/40−5/52
B41M 5/035
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方にレーザー印字層を備えるレーザー記録用積層体に用いられるレーザー記録用インキ組成物であって、
前記レーザー記録用インキ組成物は、デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有し、
前記レーザー記録用インキ組成物中の固形分の平均粒子径が0.1〜10μmであることを特徴とするレーザー記録用インキ組成物。
【請求項2】
デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有する混合液を分散する分散工程を含み、
前記分散工程により、レーザー記録用インキ組成物中の固形分の平均粒子径を0.1〜10μmの範囲にすることを特徴とするレーザー記録用インキ組成物の製造方法。
【請求項3】
基材層と、該基材層の少なくとも一方に請求項1に記載のレーザー記録用インキ組成物を用いて作成するレーザー印字層を有するレーザー記録用積層体であって、
前記レーザー印字層が、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式から選ばれる少なくとも1つによる形成層であることを特徴とするレーザー記録用積層体。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザー記録用積層体において、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層を有することを特徴とするレーザー記録用積層体。
【請求項5】
前記レーザー印字層が、グラビア印刷方式による形成層であることを特徴とする請求項3または4に記載のレーザー記録用積層体。
【請求項6】
基材層と、該基材層の少なくとも一方に請求項1に記載のレーザー記録用インキ組成物を含むレーザー印字層を形成する印刷工程を含むレーザー記録用積層体の製造方法であって、
前記印刷工程が、グラビア印刷工程、オフセット印刷工程、フレキソ印刷工程から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とするレーザー記録用積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザー記録用積層体の製造方法において、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層の形成工程を含むことを特徴とするレーザー記録用積層体の製造方法。
【請求項8】
前記レーザー印字層を形成する印刷工程が、グラビア印刷工程であることを特徴とする請求項6または7に記載のレーザー記録用積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載のレーザー記録用積層体において、前記レーザー印字層に向けて、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射したときにマーキングして得られることを特徴とする記録体。
【請求項10】
請求項4に記載のレーザー記録用積層体に、前記レーザー印字層側から、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射したときにマーキングして得られることを特徴とする記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー照射により発色するレーザー記録用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
包装や容器、電子部品、自動車部品、カード、ラベルなどの表面にはロット番号、シリアル番号、賞味期限、品質保証期限、バーコードなどの種々のマーキングが施されている。コストや利便性などから、スタンプ、インクジェット、刻印などが利用されている。しかしながら、スタンプやインクジェットは表面にマーキングが施されるため、擦れによって、読めなくなることや、剥がれたインキが食品などに付着するなどの衛生上の問題や汚染の問題になることがある。一方、刻印は衛生上の問題はないものの、視認性に乏しく、使用しづらい問題がある。
【0003】
近年、レーザーマーキングの技術が発展してきている。レーザーマーキングはレーザー光を利用して、印字対象物の表面において熱分解、気化、あるいは剥離などにより、直接、文字、数字、登録商標、バーコードなどの印字や画像を施すものである。インクジェットやスタンプのように溶剤を使わない印字方法であり、擦れや剥がれのない耐久性に優れ、さらに、非接触印字であることから、文字の歪み、バラツキ、文字欠けなどがない安定した印字が得られ、インクジェットインクやインクリボンなどの消耗品が不要であるなどの特徴がある。
【0004】
現在行われているレーザーマーキングは、主に10600nmの波長をもつ炭酸レーザー、1064nmの波長をもつYAGレーザーやYVO4レーザー、1090nmの波長をもつファイバレーザーなどが使用されている。そのなかで、炭酸レーザーはPETやナイロンなどに対しては、対象体の表面基材を貫通させたり、焼けカスを発生させたりするなどのダメージを与えてしまうが、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系の安価な基材にダメージを与えない。また、炭酸レーザー装置は、YAGレーザー装置に比べ、安価であるため、広く利用されている。しかし、視認性が十分でないといった問題がある。
【0005】
特許文献1には、結合剤と、多価金属のオキシアニオンとを備えるレーザーマーキング用組成物が記載され、高いコントラストが得られるものが提案されている。
【0006】
特許文献2には、発色剤とモリブデン酸、タングステン酸またはバナジウム酸のアミンと水または有機溶媒と、場合によりポリマーバインダーとを含有するコーティング組成物が記載され、透明性と耐水性を付与したものが提案されている。
【0007】
特許文献3には、発色剤と水性ベースの溶媒を含有する無色透明の水性コーティング組成物が記載され、透明で高いコントラストが得られるものが提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1は、発色剤としてオクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(AHM)およびジモリブデン酸アンモニウム(ADM)が使用され、非常に微細な粉末の発色剤を均一な分散が得られるまで撹拌し、混合液を作製した、とされている。しかし、前記AOMなどの発色剤は有機溶媒に不溶であり、混合液中にどの程度で分散したのかまったく不明であるため、前記記載の通り撹拌しただけでは、混合液となったときに発色剤が沈降しやすく、分離してしまう(経時安定性が劣る)おそれがある。
【0009】
また、特許文献2は、有機溶媒に可溶性を持たせ、透明なコーティング組成物とするために、モリブデン酸、タングステン酸またはバナジウム酸のアミン塩としているが、例示されている通り、酸化モリブデン、モリブデン酸、ジモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムなどは有機溶媒には溶解しない発色剤であるため、わざわざアミン化合物とを反応させ、アミン塩とし、有機溶媒に可溶化させたものである。このため、反応のための設備が必要であり、ろ過、洗浄が必須となってしまう。また、有機溶媒として例示されているものとしては、実施例の2−ブタノンしかなく、他の有機溶媒への適用は不明である。さらに、ポリマーバインダーとして例示されているものとしては、アクリルポリマーが使用可能との記載に留まり、実施例でもメタクリル酸樹脂しかなく、他のポリマーバインダー、特に熱可塑性樹脂への適用が不明である。
【0010】
特許文献3も、前記特許文献2と同様に透明なコーティング組成物とするためのものであるが、さらに塩基を添加することが好ましく、エタノールアミンが例示され、実施例としてはN,N−ジメチルエタノールアミンが記載されている。しかしこれらのアミンは、皮膚腐食性や皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性、水性環境有害性などの危険有害性を有する物が多い。さらに、発色剤を水性エマルジョンや水溶性樹脂に撹拌し、混合して混合液を作製していることから、水和性を有するものであることが明確で、無水物ではないと考えられる。また、特許文献1と同様に、発色剤が混合液中にどの程度で分散したのかまったく不明で、撹拌混合することにより混合液を作製しているのみであるため、混合液中で沈降しやすく、経時安定性が劣るおそれがある。
【0011】
さらに、特許文献1〜3は、どれも紙やフィルムなどの基材にコーティングにより、コーティング層を作製しているため、膜厚が厚くなり、薄膜にすることは困難である。また、印字後に濃度低下が起こるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2004−522631号公報
【特許文献2】特表2006−506259号公報
【特許文献3】特表2009−503170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、経時安定性が良好で、印字層が薄膜でもレーザー光の照射後の印字濃度が高く、印字後の濃度低下が起こらない保存性を有するレーザー記録用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有するレーザー記録用インキ組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)基材と、該基材の少なくとも一方にレーザー印字層を備えるレーザー記録用積層体に用いられるレーザー記録用インキ組成物であって、
前記レーザー記録用インキ組成物は、デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有し、
前記レーザー記録用インキ組成物中の固形分の平均粒子径が0.1〜10μmであることを特徴とするレーザー記録用インキ組成物、
(2)デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有する混合液を分散する工程を含み、
前記分散工程により、レーザー記録用インキ組成物中の固形分の平均粒子径を0.1〜10μmの範囲にすることを特徴とするレーザー記録用インキ組成物の製造方法、
(3)基材層と、該基材層の少なくとも一方に(1)に記載のレーザー記録用インキ組成物を用いて作成するレーザー印字層を有するレーザー記録用積層体であって、
前記レーザー印字層が、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つによる形成層であることを特徴とするレーザー記録用積層体、
(4)(3)に記載のレーザー記録用積層体において、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層を有することを特徴とするレーザー記録用積層体、
(5)前記レーザー印字層が、グラビア印刷方式による形成層であることを特徴とする(3)または(4)に記載のレーザー記録用積層体、
(6)基材層と、該基材層の少なくとも一方に(1)に記載のレーザー記録用インキ組成物を含むレーザー印字層を形成する印刷工程を含むレーザー記録用積層体の製造方法であって、
前記印刷工程が、グラビア印刷工程、オフセット印刷工程、およびフレキソ印刷工程のなかから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とするレーザー記録用積層体の製造方法ることを特徴とするレーザー記録用積層体の製造方法、
(7)(6)に記載のレーザー記録用積層体の製造方法において、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層の形成工程を含むことを特徴とするレーザー記録用積層体の製造方法、
(8)前記レーザー印字層を形成する印刷工程が、グラビア印刷工程であることを特徴とする(6)または(7)に記載のレーザー記録用積層体の製造方法、
(9)(3)に記載のレーザー記録用積層体において、前記レーザー印字層に向けて、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射したときにマーキングして得られることを特徴とする記録体、
(10)(4)に記載のレーザー記録用積層体に、前記レーザー印字層側から、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射したときにマーキングして得られることを特徴とする記録体、
に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、経時で発色剤の沈降などが起こらないレーザー記録用インキ組成物が得られ、該レーザー記録用インキ組成物からなるレーザー印字層を薄膜にでき、かつレーザー光の照射後の印字濃度が高く、印字後の濃度低下が起こらない保存性を有するレーザー記録用積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。
【0018】
本発明のレーザー記録用インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」ともいう。)は、基材と、該基材の少なくとも一方にレーザー印字層を備えるレーザー記録用積層体に用いられるものであって、デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有することが好ましい。
【0019】
前記デカモリブデン酸アンモニウム無水物は、遷移金属であるモリブデン、特に6価のモリブデンに酸素が結合したモリブデン酸が直鎖状に10個結合し、アンモニウム塩となったもので、かつ無水物であることが必要である。モリブデン酸アニオンが10個結合したことにより、レーザー光の照射により濃度の高い像を形成することができ、かつ無水物であることにより有機溶媒に分散が可能となる。前記デカモリブデン酸アンモニウム無水物は、試薬として入手可能である。
【0020】
デカモリブデン酸アンモニウム無水物の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜8μmであることがより好ましい。平均粒子径が0.1〜10μmであることにより、発色剤としての効果が維持できるとともに、経時で発色剤が沈降するおそれはない。平均粒子径が0.1μmより小さいと、版カブリ性が劣り、印刷適性が悪くなる。平均粒子径が10μmより大きいと、発色剤が沈降しやすい(経時安定性が劣る)。ここでいう平均粒子径は、レーザ回折法により測定された粒度分布測定データにおける小粒子側からの粒子数の累積量50質量%の粒径値である。例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)やMICROTRAC 9320−X100(Honeywell社製)などが挙げられる。
【0021】
前記デカモリブデン酸アンモニウム無水物は、レーザー記録用インキ組成物中に、固形分で1〜90質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましい。1質量%より少ないと、発色性が劣り、90質量%より多いと、インキ化が困難である。
【0022】
前記熱可塑性樹脂は、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂、アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、ポリ乳酸などが好ましい。なかでも、硝化綿、セルロースアセチルプロピオネート、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンなどがより好ましい。これらの樹脂は、一種類または二種類以上であってもよい。
市販品としては、LG−NT Rメジウム、LG−FK Rメジウム、TPHメジウム、VESTAメジウム、LRC−NTメジウム、KCNTメジウム、SYNA−Sメジウム、LAMREKメジウム(以上、東京インキ(株)製)などを用いることができる。
【0023】
前記熱可塑性樹脂は、レーザー記録用インキ組成物中に、固形分で0.1〜70質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。0.1質量%より少ないと、塗布が困難となり、70質量%より多いと、流動性の確保が困難である。
【0024】
前記溶媒は、前記デカモリブデン酸アンモニウム無水物と前記熱可塑性樹脂とを該溶媒中に分散させるものである。グラビア印刷で通常使用される水、有機溶剤型または水性型の溶媒を用いることができる。前記溶媒としては、例えば水、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0025】
前記溶媒は、レーザー記録用インキ組成物中に、30〜98質量%であることが好ましく、35〜90質量%であることがより好ましい。30質量%より少ないと、塗布が困難となり、98質量%より多いと、印刷適性が劣る。
【0026】
インキ組成物中には、デザイン性、用途、色相などの要求物性や、インキ安定性、印刷適性の向上を目的として、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤、溶剤、水などを含有することもできる。公知慣用のものであれば如何なるものも、その印字性、インキ組成物の特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0027】
前記色材としては、顔料または染料あるいはその混合物を含有することができる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、弁柄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パール、アルミニウム、カーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系などの有機顔料、その他各種蛍光顔料、金属粉顔料、体質顔料などが挙げられる。これらの顔料は、一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。染料としては、溶媒に溶解または分散するものが好ましく、一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、耐久性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
【0028】
本発明のレーザー記録用積層体は、基材層と、該基材層の少なくとも一方に前記レーザー記録用インキ組成物を用いて作成するレーザー印字層を有し、該レーザー印字層が、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、およびフレキソ印刷方式のなかから選ばれる少なくとも1つによる形成層であることが好ましい。
【0029】
前記レーザー印字層は、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光の照射により、明瞭で印字濃度が高い黒色発色することに加え、印字後に濃度低下が起こらない高い保存性を有する記録体が得られる。特に、レーザー印字層に黒色発色した印字物を作製させた状態のまま保管などをしておいても、印字物の印字濃度の変化がない。また、レーザー印字層は、必ずしも全面に設ける必要はなく、印字したい部分だけに設けてあってもよい。前記レーザー印字層を有する基材層が、レーザー光の透過を阻害しない透明もしくはレーザー光の透過を阻害せず、かつ視認性を有するものである範囲で不透明なものである場合、レーザー印字層側あるいは基材層側のどちらからでもレーザー光の照射により、記録体が得られる。
【0030】
さらに、本発明のレーザー記録用積層体は、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層を有することが好ましい。白色下地層は、前記レーザー印字層に入射した9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を反射させて、前記レーザー光を再度レーザー印字層に導いてマーキングさせる機能を有する層となり、このことによって、レーザー光の照射後の印字濃度が高くなり、視認性が向上して好ましい。すなわち、前記レーザー印字層に9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射することによって、該エネルギーによりレーザー印字層のインキ組成物を発色させるとともに、該層を透過した前記レーザー光が白色下地層で反射され、再度レーザー印字層にエネルギーを加えることで、エネルギー効率が向上し、かつ十分なレーザー光の照射が行われ、レーザー光の照射後の印字濃度が高くなり、視認性が向上すると考えられる。白色下地層としては、白色インキを塗布した塗布層、白色フィルム、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム(アルミ蒸着PET、アルミ蒸着CPP、アルミ蒸着PEなど)、アルミ貼合紙、発泡ポリスチレンシートなどが好ましい。
【0031】
白色下地層を前記白色インキを塗布した塗布層とする場合、白色インキは、前記熱可塑性樹脂と白色色材とを含有したものであることが好ましく、白色色材としては、無機顔料であることがより好ましい。白色の無機顔料としては、特に酸化チタンが好ましく、アナタース型でもルチル型でもよい。酸化チタンは、コストや汎用性、反射効率の観点からもっとも好ましく、白色インキ中の含有率が十分にあり、分散性が良好なものであればよい。市販の白色インキも使用でき、例えば、LG−FK630R白C、TPH630白、NT−VESTA630白(以上、東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0032】
アルミ蒸着フィルム、アルミ貼合紙、発泡ポリスチレンシートなどを白色下地層として使用する場合、ドライラミネート法や押出ラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法などによって、白色下地層を形成することが好ましい。
【0033】
前記押出ラミネート法に使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は一種類または二種類以上を積層していてもよい。
【0034】
本発明のレーザー記録用積層体のうち、少なくともレーザー印字層は、品質および生産性の高さからグラビア印刷、フレキソ印刷またはオフセット印刷のいずれかの印刷方式による形成層であることが好ましく、グラビア印刷方式による形成層であることがさらに好ましい。グラビア印刷方式の場合、レーザー印字層のほかに、前記白色下地層も同時に形成することができる。また、絵柄などの他の情報として印刷インキ層を同時に形成することができる。印刷インキ層として、例えば、メーカーの社名、ブランド名、製品名、記号、マーク、商標、内容物や成分表示、販売促進などのデザインなどが付加できる。したがって、グラビア印刷方式であることにより、インラインで、レーザー印字層、白色下地層、印刷インキ層などを形成できる。
【0035】
前記レーザー印字層は、前記インキ組成物の塗工量(EC)が、固形分で0.1g/m≦EC≦3g/mで形成されることが好ましく、0.5g/m≦EC≦2.5g/mであることがより好ましい。0.1g/mより少ないと、濃度が出にくく、3g/mより多いと、耐ブロッキング性が劣る。
【0036】
前記白色インキの塗布による白色下地層は、白色インキの塗工量(UC)が、固形分で0.3g/m≦UC≦10g/mで形成されることが好ましく、0.6g/m≦UC≦8g/mであることがより好ましい。0.3g/mより少ないと、反射層としての機能を発揮せず、十分な濃度が得られず、10g/mより多いと、反射層としては十分であるが、レーザー印字層を形成した積層体の耐ブロッキング性が低下する。
【0037】
フィルムまたはシートによる白色下地層は、レーザー光を反射するのに十分な厚みがあれば、特に制限はない。印刷に適する厚さの白いグラビア用紙や1〜1000μm程度のアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、アルミ貼合紙、0.03〜3mm程度の発泡ポリスチレンシートなどが好ましい。
【0038】
前記基材層は、紙、アルミ箔、プラスチックフィルムまたはシートならびにこれらの積層体などが好ましい。
【0039】
前記基材層として用いる紙は、印刷に適していればよく、出版印刷用紙、包装印刷用紙、板紙印刷用紙などが挙げられる。出版印刷用紙としては、上質紙やグラビア紙などの非塗工紙、アート紙やコート紙、微塗工紙などの塗工紙が挙げられる。包装印刷用紙としては、純白ロール紙や晒クラフト紙などが挙げられる。また、板紙印刷用紙としては、塗工または非塗工の白ボール、塗工または非塗工のマニラボール、ポリエチレンを押し出したポリエチレンコート紙などが挙げられる。さらには、ポリエチレン系やポリプロピレン系などの合成紙であってもよい。基材層として、白色度が高い紙を用いると、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を反射する白色下地層としても利用できる。
【0040】
前記プラスチックフィルムまたはシートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、PETフィルムまたはポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどにアルミニウムを蒸着させたアルミ蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、さらに異樹脂と共に共押出した共押出フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、単独または2種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、インキ組成物の形成面には密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。
【0041】
前記基材層は、紙、アルミ箔、プラスチックフィルムまたはシートなどを、ドライラミネートや押出ラミネート、接着剤などを介して貼り合せるなどをすることによって、適宜組み合わせて得られる積層体であってもよい。例えば、白色フィルム、アルミ蒸着フィルム(アルミ蒸着PET、アルミ蒸着CPP、アルミ蒸着PEなど)、アルミ貼合紙なども利用できる。
【0042】
前記基材層の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、1〜1000μmが好ましく、3〜100μmがより好ましい。
【0043】
本発明のレーザー記録用積層体は、前記レーザー印字層の一方の面側に被覆層を設けることが好ましい。前記被覆層は、白色下地層がある場合、該白色下地層に対し、レーザー印字層の他方の面側に設けることが好ましく、レーザー印字層に直接または接着剤やアンカーコート剤を介して形成してもよい。被覆層を設けることによって、レーザー光の照射によって得られる印字物を書き換えたり、容易に消去したりすることができない。また、印字物の表面保護層的な役割を持ち、機械的あるいは物理的耐性(例えば、耐摩擦性、耐擦過性、曲げ耐性)を保持することができる。
【0044】
前記被覆層は、レーザー光の透過を阻害しない透明もしくはレーザー光の透過を阻害せず、かつ視認性を有する範囲で不透明な有機系ニス、有機・無機ハイブリッド系ニス、紫外線やEBなどの放射線硬化型ニス、プレスニスなどをオーバーコートする方法、樹脂を溶融押し出しする押出ラミネート法、フィルムを貼り合わせるドライラミネート法やウェットラミネート法、ノンソルベントラミネート法、熱ラミネート法などによって形成する。
【0045】
前記オーバーコート法に用いられるニスとしては例えば、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂などを含むモノが好ましい。これらの樹脂の一種類または二種類以上の混合物であってもよい。
【0046】
また、紫外線やEBなどの放射線硬化型ニスとしては、エチレン性不飽和結合を一つ以上有するモノマーやオリゴマーを使用できる。例えば、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能モノマー、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能モノマー、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能モノマー、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能モノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能モノマーなどが挙げられる。
【0047】
押出ラミネート法に使用できる樹脂は、前述したものと同等のものを使用することができる。ドライラミネート法やノンソルベントラミネート法などは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、さらに異樹脂と共に共押出した共押出フィルムなどを使用することができる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。
【0048】
前記被覆層の厚さは、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光の照射を阻害しない範囲内であれば、特に制限はないが、0.01〜300μmが好ましい。フィルムでは5〜300μm、押出ラミネートによる樹脂コーティングでは1〜100μm、ニスの塗工では0.01〜100μmであることが好ましい。
【0049】
本発明のレーザー記録用積層体の製造方法は、基材層と、該基材層の少なくとも一方に前記レーザー記録用インキ組成物を含むレーザー印字層を形成する印刷工程を含み、前記印刷工程が、グラビア印刷工程、オフセット印刷工程、およびフレキソ印刷工程のなかから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。なかでも、品質および生産性の高さからグラビア印刷工程により形成する印刷工程が好ましく用いられる。また、レーザー印字層を形成する印刷工程では、必ずしも全面に設ける印刷工程である必要はなく、印字したい部分だけに設ける印刷工程であってもよい。
【0050】
グラビア印刷工程の場合、レーザー印字層を形成する印刷工程のほかに、前記白色インキの塗布による白色下地層の形成工程も同時に行なうことができる。また、絵柄などの他の情報として印刷インキ層の形成工程を同時に行なうことができる。印刷インキ層の形成工程により、例えば、メーカーの社名、ブランド名、製品名、記号、マーク、商標、内容物や成分表示、販売促進などのデザインなどが付加できる。さらに、オーバープリントニスなどの塗布による被覆層の形成工程も同時に行なうことができる。
したがって、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷工程であることにより、インラインで、1パスでレーザー印字層、白色下地層、印刷インキ層、被覆層などを形成できる。
【0051】
さらに、本発明のレーザー記録用積層体の製造方法は、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層の形成工程を含むことが好ましい。前記白色下地層の形成工程は、前記レーザー印字層に入射した9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を反射させて、前記レーザー光を再度レーザー印字層に導くように設けることが好ましい。
【0052】
白色下地層の形成工程を、前記白色インキの塗布によって形成する印刷工程とする場合、白色インキは、印刷工程に適用できるものであればよく、前記熱可塑性樹脂と白色色材とを含有したものであることが好ましく、白色色材としては、無機顔料であることがより好ましい。白色の無機顔料としては、特に酸化チタンが好ましく、アナタース型でもルチル型でもよい。酸化チタンは、コストや汎用性、反射効率の観点からもっとも好ましく、白色インキ中の含有率が十分にあり、分散性が良好なものであればよい。印刷工程に適用できるものであれば、市販の白色インキも使用でき、例えば、LG−FK630R白C、TPH630白、NT−VESTA630白(以上、東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0053】
前記白色下地層の形成工程を、前記白色フィルム、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム(アルミ蒸着PET、アルミ蒸着CPP、アルミ蒸着PEなど)、アルミ貼合紙、発泡ポリスチレンシートなどのフィルムまたはシートにより形成する場合、レーザー印字層にレーザー光を入射することによって、該エネルギーによりレーザー印字層のインキ組成物を発色させるとともに、該層を透過した前記レーザー光が白色下地層で反射され、再度レーザー印字層にエネルギーを加えることができるように配置する工程であることが好ましい。アルミ蒸着フィルム、アルミ貼合紙、発泡ポリスチレンシートなどを白色下地層として形成する場合、ドライラミネート法や押出ラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法などのラミネート工程によって設けることが好ましい。
【0054】
前記被覆層の形成工程は、レーザー光の透過を阻害しない透明もしくはレーザー光の透過を阻害せず、かつ視認性を有する範囲で不透明な有機系ニス、有機・無機ハイブリッド系ニス、紫外線やEBなどの放射線硬化型ニス、プレスニスなどのオーバーコート工程により設けたり、樹脂を溶融押し出しする押出ラミネート、フィルムを貼り合わせるドライラミネートやウェットラミネート、ノンソルベントラミネート、熱ラミネートなどのラミネート工程によって設けることが好ましい。
【0055】
前記被覆層の形成工程は、白色下地層がある場合、該白色下地層に対し、レーザー印字層の他方の面側への形成工程であることが好ましく、レーザー印字層に直接設ける工程または接着剤やアンカーコート剤を介する形成工程としてもよい。
【0056】
本発明のレーザー記録用積層体は、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光に対する吸収を有するものである。なかでも、10.6μm(10640nm)の波長を有する炭酸レーザーに好適に使用できる。
レーザー光の照射には市販のレーザーマーカーを用いることができる。例えば、炭酸レーザーとしてはML−Z9510((株)キーエンス製)などが挙げられる。
【0057】
炭酸レーザーについては、以下のレーザー照射条件に依存して、異なる印字濃度が得られる。
条件1=スキャンスピード:レーザー照射する速度、mm/sec
条件2=レーザーパワー:最大出力に対する割合、%
本発明のレーザー記録用積層体は、以下のレーザー照射条件において、良好な印字結果が得られる。
すなわち、スキャンスピード=50〜5000mm/sec、
レーザーパワー=3〜95%である。
スキャンスピードが、50mm/secより遅いと生産性が悪くなり、5000mm/secより速いと印字濃度が不十分となる。レーザーパワーが、3%より低いと印字濃度が不十分となり、95%より大きいと被覆層あるいは最外層や印刷基材へのダメージが大きくなりやすい。
【0058】
本発明の記録体は、レーザー記録用積層体において、前記レーザー印字層に向けて、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射したときにマーキングして得られるものであることが好ましい。基材層がレーザー光の透過を阻害、かつ視認性を阻害しない透明または半透明のプラスチックフィルムまたはシートである場合、前記レーザー印字層が形成してある面に向かって前記レーザー光を入射して得てもよいが、前記レーザー印字層が形成してある面とは反対の面から前記レーザー光を入射して得てもよい。得られる記録体は、印字濃度が高く、視認性も良好で、印字後の濃度低下が起こらない保存性を有するものである。
【0059】
また、本発明の記録体は、前記基材層と前記レーザー印字層との間に白色下地層を有するレーザー記録用積層体において、前記レーザー印字層側から、9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射したときにマーキングして得られるものであることが好ましい。レーザー印字層側から9.3〜10.8μmの波長のレーザー光を入射することによって、該エネルギーによりレーザー印字層のインキ組成物を発色させるとともに、該層を透過した前記レーザー光が白色下地層で反射され、再度レーザー印字層にエネルギーが加えられることで、エネルギー効率が向上し、かつ十分なレーザー光の照射が行われ、レーザー光の照射後の印字濃度が高くなり、視認性が向上する記録体となる。
【0060】
本発明のレーザー記録用インキ組成物の製造方法は、デカモリブデン酸アンモニウム無水物、熱可塑性樹脂、溶媒、その他の無機化合物、各種添加剤などを含有した混合液を均一に分散する分散工程により公知の方法で製造できる。分散工程は、ディゾルバー、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機などを使用する工程である。分散工程は、これらの装置は単独または2種類以上組み合せて使用する工程であってもよい。当該インキ組成物中に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機や遠心分離機などを用いて、取り除く工程を設けてもよい。
【0061】
前記分散工程により、レーザー記録用インキ組成物中の固形分の平均粒子径を0.1〜10μmの範囲にすることが好ましく、0.2〜8μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。平均粒子径を0.1〜10μmの範囲にすることにより、製造装置に過大な負荷と過度な分散時間を与えることない分散工程が可能となる。平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)やMICROTRAC 9320−X100(Honeywell社製)などにより測定することができる。
【0062】
レーザー記録用インキ組成物の粘度は、印刷に支障のない範囲であれば、特に制限はない。インキ組成物の製造適性、取扱いなどを考慮すれば、25℃において10〜1,000mPa・sであることが好ましい。
【0063】
前記粘度は、ブルックフィールド型粘度計などの市販の粘度計を用いて測定した値である。
【0064】
レーザー記録用インキ組成物は、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、25℃において10〜40秒であることが好ましい。
【0065】
前記希釈溶剤は、インキ組成物の粘度を調整可能なものであれば、いずれでもよく、有機溶剤、水などが挙げられ、市販のものも使用できる。市販品としては、TA52(アルコール系溶剤)、WA735(アルコール系溶剤)、PU515(ノントルエン系溶剤)、SL9155(ノントルエン系溶剤)、AC372(ノントルエン系溶剤)、TH−12(含トルエン系溶剤)、PA463(含トルエン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0066】
インキ組成物は、希釈溶剤などにより粘度を調整した後に印刷する一液での使用条件でも印刷できるが、ポリイソシアネート系硬化剤を添加する二液での使用条件でも印刷できる。二液での印刷においては、その印刷物の耐熱性、耐水性、密着性などが向上するためボイルやレトルト殺菌などの条件下でも耐性のある記録体が得られる。
【0067】
前記ポリイソシアネート系硬化剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などが挙げられ、これらを一種類または二種類以上を併用して使用できる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は質量%を表す。
【0069】
[レーザー記録用インキ組成物の作製]
(実施例1)
熱可塑性樹脂メジウム(LG−FK Rメジウム、東京インキ(株)製)50部、デカモリブデン酸アンモニウム無水物25部、酢酸n−プロピル10部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール5部を仕込み、ペイントシェーカーにて練肉して、均一に分散し、レーザー記録用インキ組成物1(略称:インキ組成物1)を作製した。このインキ組成物1中の固形分の平均粒子径は2μmであった。
【0070】
(実施例2)
実施例1と同様にして、レーザー記録用インキ組成物2(略称:インキ組成物2)を作製した。このインキ組成物2中の固形分の平均粒子径は0.5μmであった。
【0071】
(実施例3)
実施例1と同様にして、レーザー記録用インキ組成物3(略称:インキ組成物3)を作製した。このインキ組成物3中の固形分の平均粒子径は1μmであった。
【0072】
(比較例1)
熱可塑性樹脂メジウム(LG−FK Rメジウム、東京インキ(株)製)50部、デカモリブデン酸アンモニウム無水物25部、酢酸n−プロピル10部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール5部を仕込み、ペイントシェーカーにて練肉して、均一に分散し、レーザー記録用インキ組成物4(略称:インキ組成物4)を作製した。このインキ組成物4中の固形分の平均粒子径は12μmであった。
【0073】
(比較例2)
酢酸エチル14部、エタノール47部の撹拌溶液に、ニトロセルロース樹脂(RS1/16 70部とイソプロピルアルコール30部の混合物(固形分70%)、TNC社製)24部を徐々に添加し、混合した。混合終了後、オクタモリブデン酸アンモニウム(Prime100、DataLase社製)15部、エタノール47部、酢酸エチル14部を仕込み、ディゾルバーにて均一に分散するまで撹拌して、レーザー記録用インキ組成物5(略称:インキ組成物5)を作製した。このインキ組成物5中の固形分の平均粒子径は15μmであった。
【0074】
(比較例3)
熱可塑性樹脂メジウム(LG−FK Rメジウム、東京インキ(株)製)42.6部、ヘプタモリブデン酸アンモニウム無水物33部、酢酸n−プロピル8.4部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール6部を仕込み、ペイントシェーカーにて練肉して、均一に分散し、レーザー記録用インキ組成物6(略称:インキ組成物6)を作製した。このインキ組成物6中の固形分の平均粒子径は2μmであった。
【0075】
(比較例4)
熱可塑性樹脂メジウム(LG−FK Rメジウム、東京インキ(株)製)42.6部、オクタモリブデン酸アンモニウム(Prime100、DataLase社製)33部、酢酸n−プロピル8.4部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール6部を仕込み、ペイントシェーカーにて練肉して、均一に分散し、レーザー記録用インキ組成物7(略称:インキ組成物7)を作製した。このインキ組成物7中の固形分の平均粒子径は5μmであった。
【0076】
前記レーザー記録用インキ組成物1〜7の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)により測定した。また、前記レーザー記録用インキ組成物1〜7について、経時安定性を評価し、表1に示した。
【0077】
<経時安定性>
レーザー記録用インキ組成物1〜7を、ガラス瓶に入れ密閉し、25℃の恒温槽内に静置し、48時間後に沈降の状態を目視により確認し、経時安定性を評価した。沈降物が多いほど、経時安定性が劣る。経時安定性について、○:まったく沈降していない、△:やや沈降物がみられる(実用上問題ない)、×:沈降物がはっきり確認でき、分離している、の3段階で評価した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1によると、レーザー記録用インキ組成物1〜3は、平均粒子径が適切な範囲にあり、これによって経時安定性が良好であった。レーザー記録用インキ組成物4は、練肉は行なったものの、分散が不十分であったと考えられ、インキ中のデカモリブデン酸アンモニウム無水物の平均粒子径が大きいため、静置した際に沈降してしまい、経時安定性が不良であった。引用文献1に類似のレーザー記録用インキ組成物5は、撹拌のみで作製した混合液であり、均一な分散をしたが、静置しておくと沈降物が認められ、経時安定性が劣ることが明らかであった。レーザー記録用インキ組成物6および7は、発色剤は異なるものの本発明の製造方法により作製したものであり、適切な範囲内の平均粒子径を有するため、経時安定性は良好であった。
【0080】
[レーザー記録用積層体の作製]
(実施例4)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、略称:OPP)に、第一ユニットで、PU515溶剤(東京インキ(株)製)にて粘度を16秒(25℃、ザーンカップ#3)に調整したインキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白C(略称:白インキ、東京インキ(株)製)を印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、30μmのCPPフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム、略称:CPP)をドライラミネート法(略称:DL)により積層して、40℃にて、3日間エージングして、レーザー記録用積層体1を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.3g/m、1.5g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/白インキ/DL/CPP」となった。
【0081】
(実施例5)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルムに、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白Cを印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、40μmのLLDPEフィルム(リニア低密度ポリエチレンフィルム、略称:LLDPE)をドライラミネート法により積層して、40℃にて、3日間エージングして、レーザー記録用積層体2を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1g/m、1.3g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/白インキ/DL/LLDPE」となった。
【0082】
(実施例6)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルムに、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1を印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、30μmのアルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(略称:VM−CPP)をドライラミネート法により積層して、40℃にて、3日間エージングして、レーザー記録用積層体3を得た。インキ組成物1の塗工量は、1.6g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/DL/VM−CPP」となった。
【0083】
(実施例7)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルムに、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白Cを印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、40μmのイージーピールフィルム(略称:EP)をドライラミネート法により積層して、40℃にて、3日間エージングして、レーザー記録用積層体4を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.8g/m、1.2g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/白インキ/DL/EP」となった。
【0084】
(実施例8)
5色機グラビア印刷機を用いて、15μmのナイロンフィルム(略称:NY)に、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白Cを印刷した。次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、130μmのLLDPEフィルムをドライラミネート法により積層して、40℃にて、3日間エージングして、レーザー記録用積層体5を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.8g/m、1.8g/mであった。この積層体の構成は、「NY/インキ組成物1/白インキ/DL/LLDPE」となった。
【0085】
(実施例9)
8色機グラビア印刷機を用いて、40μmのヒートシーラブルOPPフィルム(ヒートシール性二軸延伸ポリプロピレンフィルム、略称:HS−OPP)に、第一ユニットで、NT−VESTA630白インキ(略称:白インキ、東京インキ(株)製)、第二ユニットでNT−VESTA黄インキ(略称:黄、東京インキ(株)製)、第三ユニットでNT−VESTA紅インキ(略称:紅、東京インキ(株)製)、第四ユニットでNT−VESTA藍インキ(略称:藍、東京インキ(株)製)、第五ユニットでNT−VESTA墨インキ(略称:墨、東京インキ(株)製)、第六ユニットでPU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第七ユニットで、FC1165(略称:OPニス、東京インキ(株)製)を印刷し、レーザー記録用積層体6を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.7g/m、1.8g/mであった。この積層体の構成は、「OPニス/インキ組成物1/墨・藍・紅・黄/白インキ/HS−OPP」となった。
【0086】
(実施例10)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルムに、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白Cを印刷した。次いで、白インキ層上にアンカーコート剤(略称:AC)を塗布し、さらに低密度ポリエチレン樹脂(略称:LD)を厚さ15μm、リニア低密度ポリエチレン樹脂(略称:LL)を厚さ20μmとなるように押出ラミネートして、レーザー記録用積層体7を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.8g/m、1.2g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/白インキ/AC/LD/LL」となった。
【0087】
(実施例11)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルムに、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白Cを印刷した。次いで、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤にて、25μmのCPPフィルムをノンソルベントラミネート法(略称:NS)により積層して、40℃にて、1日間エージングして、レーザー記録用積層体8を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.8g/m、1.5g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/白インキ/NS/CPP」となった。
【0088】
(実施例12)
インキ組成物1をインキ組成物2に変更した以外は、実施例4と同様にして、レーザー記録用積層体9を得た。インキ組成物2および白インキの塗工量は、それぞれ1.5g/m、1.6g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物2/白インキ/DL/CPP」となった。
【0089】
(実施例13)
インキ組成物1をインキ組成物3に変更した以外は、実施例4と同様にして、レーザー記録用積層体10を得た。インキ組成物3および白インキの塗工量は、それぞれ1.2g/m、1.4g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物3/白インキ/DL/CPP」となった。
【0090】
(比較例5)
インキ組成物5を振とうし、均一な分散状態とした後、ドクターバーにて、カートンボードにコーティングにより塗布後、別途乾燥させ、レーザー記録用積層体11を得た。インキ組成物5の塗工量は、2.8g/mであった。この積層体の構成は、「インキ組成物5/カートンボード」となった。
【0091】
(比較例6)
インキ組成物1をインキ組成物6に変更した以外は、実施例4と同様にして、レーザー記録用積層体12を得た。インキ組成物6および白インキの塗工量は、それぞれ1.3g/m、1.2g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物6/白インキ/DL/CPP」となった。
【0092】
(比較例7)
インキ組成物1をインキ組成物7に変更した以外は、実施例4と同様にして、レーザー記録用積層体13を得た。インキ組成物7および白インキの塗工量は、それぞれ1g/m、1.1g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物7/白インキ/DL/CPP」となった。
【0093】
前記レーザー記録用積層体1〜13について、視認性を評価し、表2に示した。
【0094】
<視認性>
前記レーザー記録用積層体1〜13について、炭酸レーザー(レーザーマーカー「ML−Z9510」、(株)キーエンス製)によるレーザー光の照射(10.6μm)を行ない、レーザー光照射後の記録体の視認性を評価した。
なお、白色下地層を有する積層体1〜5および7〜13については、レーザー印字層側の面からレーザー光を入射し、記録体を得た。積層体6については、OPニスを塗布した側の面からレーザー光を入射し、記録体を得た。
レーザー光の照射条件は、以下の通りとした。
スキャンスピード:2000mm/sec
レーザーパワー:50%
記録体の視認性について、○:非常に良好、△:良好、×:発色しない、の3段階で評価した。
【0095】
【表2】
【0096】
表2によると、レーザー記録用インキ組成物1を用いた実施例4〜11の記録体1〜8は、インキの経時安定性が良好であるため、問題なく印刷に使用でき、薄膜でも、視認性が良好となった。平均粒子径を変更したレーザー記録用インキ組成物2および3を用いた実施例12および13の記録体9および10も、インキの経時安定性が良好であり、問題なく印刷に使用でき、薄膜でも、視認性が良好となった。引用文献1に類似のレーザー記録用インキ組成物5を用いた比較例5の記録体11は、視認性は良好であったが、前記した通りインキ組成物としての経時安定性が劣るため、沈降物が認められ、振とう作業を行なった後にコーティングしなければ、レーザー記録用積層体が得られなかった。また、該積層体は、コーティングによる作製であるため、塗布工程が別途必要で、塗工量が大きくなってしまい乾燥工程が必要となった。ヘプタモリブデン酸アンモニウム無水物を使用したレーザー記録用インキ組成物6を用いた比較例6の記録体12は、視認性が劣る。レーザー記録用インキ組成物7を用いた比較例7の記録体13は、視認性がやや劣る。
【0097】
(実施例14)
5色機グラビア印刷機を用いて、20μmのOPPフィルムに、第一ユニットで、PU515溶剤にて粘度を16秒に調整した前記インキ組成物1、第二ユニットで、LG−FK630R白C(略称:白インキ、東京インキ(株)製)を印刷し、レーザー記録用積層体14を得た。インキ組成物1および白インキの塗工量は、それぞれ1.4g/m、1.2g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物1/白インキ」となった。
【0098】
(実施例15)
インキ組成物1をインキ組成物2に変更した以外は、実施例14と同様にして、レーザー記録用積層体15を得た。インキ組成物2および白インキの塗工量は、それぞれ1.7g/m、1.3g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物2/白インキ」となった。
【0099】
(実施例16)
インキ組成物1をインキ組成物3に変更した以外は、実施例14と同様にして、レーザー記録用積層体16を得た。インキ組成物3および白インキの塗工量は、それぞれ1.5g/m、1.3g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物3/白インキ」となった。
【0100】
(比較例8)
インキ組成物1をインキ組成物6に変更した以外は、実施例14と同様にして、レーザー記録用積層体17を得た。インキ組成物6および白インキの塗工量は、それぞれ1.5g/m、1.2g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物6/白インキ」となった。
【0101】
(比較例9)
インキ組成物1をインキ組成物7に変更した以外は、実施例14と同様にして、レーザー記録用積層体18を得た。インキ組成物7および白インキの塗工量は、それぞれ1.6g/m、1g/mであった。この積層体の構成は、「OPP/インキ組成物7/白インキ」となった。
【0102】
前記レーザー記録用積層体14〜18について、保存性を評価し、表3に示した。
【0103】
<保存性>
前記レーザー記録用積層体14〜18について、炭酸レーザー(レーザーマーカー「ML−Z9510」、(株)キーエンス製)によるレーザー印字層側の面からレーザー光の照射(10.6μm)を行ない、レーザー光照射後の記録体を作製後、40℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿槽内に静置し、24時間後の印字濃度の変化の状態を確認し、保存性を評価した。濃度の変化がないものほど、保存性が優れる。保存性について、○:まったく濃度変化なし、×:濃度変化あり、の2段階で評価した。
【0104】
【表3】
【0105】
表3によると、レーザー記録用インキ組成物1〜3を用いた実施例14〜16の記録体14〜16は、まったく濃度変化がなく、保存性が良好であった。ヘプタモリブデン酸アンモニウム無水物を使用したレーザー記録用インキ組成物6を用いた比較例8の記録体17およびレーザー記録用インキ組成物7を用いた比較例9の記録体18は、濃度が低下してしまい、保存性が劣ることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のレーザー記録用インキ組成物は、経時安定性が高いため、発色剤が沈降することによって印刷前に振とうや撹拌作業などを行なう必要がないため、印刷作業がしやすくなる。また、本発明のレーザー記録用積層体は、グラビア印刷で行なうことができるため、余計な塗布工程、特別な乾燥工程が不要で、かつ薄膜で行なえるため、作業性改善やコストダウンが図られることに加え、レーザー光を照射した際に印字濃度が高く、印字後の濃度低下が起こらない保存性の高い記録体を得ることができる、さらに、安価なポリオレフィン系やポリアミド系の基材が使用でき、これらの基材にダメージを与えない9.3〜10.8μmの波長を照射できる安価な炭酸レーザー光照射装置を使用できることから食品用途、日用品用途、医療医薬品用途および自動車や家電のような産業資材用途などの各種レーザーマーキング用フィルム、シール、ラベル、シート、さらにそれを利用した包装体に広く適用できる。
【要約】
【課題】経時安定性が良好で、印字層が薄膜でもレーザー光の照射後の印字濃度が高く、印字後の濃度低下が起こらない保存性を有するレーザー記録用積層体を提供する。
【解決手段】基材と、該基材の少なくとも一方にレーザー印字層を備えるレーザー記録用積層体に用いられるレーザー記録用インキ組成物であって、前記レーザー記録用インキ組成物は、デカモリブデン酸アンモニウム無水物と、熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有し、前記レーザー記録用インキ組成物中の固形分の平均粒子径が0.1〜10μmであることを特徴とするレーザー記録用インキ組成物。
【選択図】なし