(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成)
図1には、実施形態の眼科装置100が示されている。眼科装置100は、補償光学走査型レーザ検眼鏡(AO-SLO)である。眼科装置100は、光源101を備えている。光源101は、例えば、波長500nm〜1500nmの範囲から選ばれる指向性の高い光、すなわち拡がり角の小さい光を発するものが用いられる。光源101としては、固体レーザ、ガスレーザ、レーザダイオード(LD)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、レーザドリブンライトソース(LDLS)等が挙げられる。
【0014】
光源101には、光を導く光ファイバ102が接続されている。光ファイバ102としては、単一モード光ファイバが採用されている。光ファイバ102の先には、光ファイバ102から出射したレーザ光を平行光にするためのレンズ(コリメータレンズ)103が配置されている。光源101からの光は、レンズ103によって平行光とされ、ハーフミラー104に入射する。ハーフミラー104は、投光系と波面検出系とを分岐する光量分割ミラーである。ここで、投光系とは、被検眼300へ光を照射する光学系のことであり、光源101、光ファイバ102およびレンズ103の構成で得る平行光を、リレーレンズ115、116、118、119、121、122、124、128で中継し、対物レンズ131から被検眼の視度にあった光束を出射する光学系全体を指している。波面検出系とは、被検眼300の眼底301からの反射光(検出光)から波面の情報を検出するための光学系のことであり、波面検出部105および光学系109により構成されている。
【0015】
ハーフミラー104は、光源101からのレーザ光(投光)の一部を後述するハーフミラー110の側に透過すると共に、ハーフミラー110の側から入射する検出光の一部を波面検出部105の側に反射する。なお、ハーフミラー104の分岐比(分割される光量の比)は、1:1に限定されず、必要に応じて任意に設定可能である。なお、ハーフミラー104の代わりに偏光ビームスプリッターを用いることも可能である。
【0016】
波面検出部105は、撮像装置であるCCD107と、その手前のレンズアレイ106を有している。レンズアレイ106は、ハルトマン板であり、波面検出部105は、シャックハルトマンセンサーとして機能する。レンズアレイ106は、小さなレンズを格子状に配列したもので、入射光を多数の光束に分割しそれぞれ集光する。レンズアレイ106によって集光された光はCCD107により撮像され、各レンズの焦点位置を解析することで、レンズアレイ106に入射した光の波面収差を知ることができる。
【0017】
CCD107が撮像した画像は、後述する演算部203に送られる。演算部203では、CCD107が撮像した画像に基づいて眼底301の波面の乱れが解析され、更にこの解析の結果に基づく波面補正デバイスの制御が行われる。
【0018】
ハーフミラー104と波面検出部105との間には、一対のレンズと、その間のピンホール(光学絞り)を有した光学系109が配置されている。光学系109により、波面検出部105で検出される眼底301からの反射光束の深さ方向の位置を制限することができる。また、光学系109により、光学系及び被検眼300からの反射ノイズが軽減される。
【0019】
ハーフミラー104の被検眼300の側には、別のハーフミラー110が配置されている。ハーフミラー110は、投光系と網膜撮像系(眼底撮像系)とを分岐する光量分割ミラーである。網膜撮像系は、眼底301からの反射光(検出光)から、眼底301にある網膜の画像情報を検出する。
【0020】
網膜撮像系は、レンズ111、ピンホール(光学絞り)112および眼底反射光検出器113を備えている。眼底反射光検出器113は、眼底301からの微弱な反射光を検出する光検出素子であり、例えばAPD(アバランシュフォトダイオード)や光電子増倍管により構成されている。眼底反射光検出器113からの検出信号は、後述するADC(A/Dコンバータ)202を介して、演算部203に送られる。スキャンしながら眼底301に光源101からの光を照射することで、眼底反射光検出器113からは、反射光のスキャンデータが得られる。
【0021】
眼底反射光検出器113の前には、光学絞りとして機能するピンホール112が配置され、ピンホール112の前には、ピンホール112の光学絞り孔の部分に眼底共役位置がくるように光束を絞るレンズ111が配置されている。
【0022】
ハーフミラー110の被検眼300の側には、走査系を構成する第1スキャナ114、第2スキャナ120および第3スキャナ123が配置されている。各スキャナは、瞳共役位置に配置されている。第1スキャナ114は、縦方向(上下方向)のスキャンを行う。このスキャンは、第2スキャナおよび第3スキャナよりも高速で行われる。第1スキャナ114は、レゾナントスキャナにより構成されている。レゾナントスキャナ114(共振型スキャナ)は、ミラーを共振運動により往復回転させ、反射光の走査を行う光学素子である。レゾナントスキャナは、スキャン中心を動かすことができないが、走査を高速に行える優位性がある。
【0023】
第2スキャナ120は、横方向(左右方向)のスキャンを行うためのものであるが、第1スキャナ114のスキャン中心を横方向に移動するためにも用いる。第2スキャナ120は、ガルバノスキャナにより構成されている。ガルバノスキャナは、回転軸に取り付けたミラーをモータで駆動する構造を有している。ガルバノスキャナは、レゾナントスキャナに比較して高速動作は行えないが、スキャン中心を希望する位置に設定できる。
【0024】
第3スキャナ123は、第1スキャナ114のスキャン中心を縦方向に移動させるために用いられるものであり、第3スキャナ123は、第1スキャナ114よりも低速のスキャンを行う。第3スキャナ123は、第1スキャナ114のような高速スキャンの必要はないが、スキャン位置の制御が必要であるので、ガルバノスキャナが用いられる。符号115,116,118,119,121,122,124は、光路を形成するリレーレンズである。なお、各スキャナの動作については後述する。
【0025】
第1スキャナ114と第2スキャナ120の間には、波面補正デバイスであるデフォーマブルミラー117が配置されている。デフォーマブルミラー117は、波面補正を行うための可変形鏡である。デフォーマブルミラー117は、複数のアクチュエータによって表面の形状を変形させることが可能なミラーである。デフォーマブルミラー117は、演算部206により制御され、その反射面を変形させることで、反射する光の波面の補正を行う。波面補正デバイスとしては、空間位相変調器やバイモルフミラー等を用いることもできる。
【0026】
リレーレンズ124の被検眼300の側には、視度補正系125が設けられている。視度補正機構125は、眼底301の被観察点が光学系の焦点となるように調整を行う。すなわち、視度補正機構125は、レーザ光を眼底301上に略点像として照射するように調整を行う。視度補正機構125は、くの字形状の視度補正ミラー126,127を備えている。
【0027】
視度補正ミラー126を視度補正ミラー127に対して相対的に遠近させることで、眼底301に焦点がくるように調整が行われる。視度には、個人差や個体差があるが、この視度に違いがあっても、視度補正ミラー126の位置を動かすことで、眼底301に焦点がくるように、つまり眼底301上に照射光が略点像として集光して照射されるように調整が行われる。また、視度補正機構125により、観察対象となる特定の層への集光位置の微調整が行われる。
【0028】
視度補正機構125の被検眼300の側には、レンズ系128を介して、ダイクロイックミラー129,130が配置されている。ダイクロイックミラー129は、光源101からの光を反射し、図示しない近赤外光源から照明され前眼部から反射される近赤外光を透過する。例えば、ダイクロイックミラー129は、光源101からの波長840nmの光を反射し、図示しない近赤外光源により照明され前眼部から反射される波長950nm光を透過する。
【0029】
ダイクロイックミラー130は、光源101および図示しない光源から前眼部に照射され前眼部で反射された近赤外光を反射し、後述する固視標132からの光を透過する。例えば、ダイクロイックミラー130は、光源101からの波長840nmの光および前眼部で反射された波長950nmの光を反射し、後述する固視標132からの波長550nmの光を透過する。
【0030】
被検眼300の前には、対物レンズ131が配置されている。対物レンズ131は、収差を抑えるために複数のレンズを組み合わせた構造を有している(勿論、1枚のレンズで構成されていてもよい)。対物レンズ131により、被検眼300の瞳位置に光学系の瞳が合致するように設定される。
【0031】
被検眼300は、ダイクロイックミラー130を介して固視標132を視認する。固視標132は、被検眼300の向き(視線)を固定させるための視認目標である。固視標132は、被検眼300が視認できる波長の光(400nm〜600nm程度)を発光するフィルムや有機EL素子により構成され、光軸に垂直な方向に移動可能とされている。固視標132を移動させることで、被検眼300の視線の方向を観察者が意図する方向に誘導することができる。
【0032】
被検眼300の前眼部は、図示しない光源から近赤外光(例えば、波長950nm)が照射されており、被検眼300からの反射光はダイクロイックミラー130、129を介して、前眼部観察系の撮像素子133に結像される。撮像素子133によって被検眼の前眼部(瞳)の近赤外光による撮像が行われる。撮像素子133は、CCDやCMOSイメージセンサーにより構成されている。
【0033】
(基本動作)
まず、基本的な動作について説明する。光源101からのSLO測定光は、ハーフミラー110→第1スキャナ114→デフォーマブルミラー117→第2スキャナ120→第3スキャナ123→視度補正系125→対物レンズ131を経て、被検眼300の眼底301に集光した状態で照射される。眼底301に照射されたSLO測定光は、眼底301の集光点で反射される。この反射光は、SLO検出光として、上記と逆の経路をたどり、ハーフミラー110を透過して眼底反射光検出器113で検出される。
【0034】
また、SLO検出光の一部は、ハーフミラー110でハーフミラー104の側に反射され、更にハーフミラー104で反射されて波面検出部105で検出される。波面検出部105では、SLO検出光における波面の乱れが検出され、その検出信号は、演算部203に送られる。演算部203は、波面検出部105が検出した波面の乱れを抑えるようデフォーマブルミラー117を制御する。これにより、SLO検出光の波面の乱れが抑えられる。こうして、眼底からの反射光の検出を行いつつ検出光における波面の補正が行われる。
【0035】
また上記の過程において、以下のスキャン動作が行われる。まず、相対的に高速に行われる第1スキャナ114の縦スキャンと、相対的に低速で行われる第2スキャナ120の横スキャンの組み合わせにより、2次元領域のスキャンが行われる。このスキャンは、広域において行われる広域スキャンとなる。
図2(A)には広域スキャンの一例が示されている。
【0036】
この際、第1スキャナ114のスキャン中心(走査が行われる範囲の中心)は変更できないが、第3スキャナ123を動かすと、第1スキャナ114のスキャン範囲が全体として縦方向に平行移動する。すなわち、第3スキャナ123を動かすことで、第1スキャナ114のスキャン中心の位置が縦方向に移動する。この一例が
図2(C)に示されている。
【0037】
他方で、第2スキャナ120のスキャン中心は、希望する位置に移動可能である。よって、第2スキャナ120と第3スキャナ123を用いることで、第1スキャナ114と第2スキャナ120とによる2次元スキャンの中心を変更することが可能となる。ここで、スキャンの範囲を狭めることで、上記の広域スキャン領域内の特定の位置を中心としたより緻密なスキャンを行うことができる。そして、広域スキャンで得られた画像の一部を拡大した拡大画像を得ることができる。この一例が
図2(E)と(F)に示されている。
【0038】
以下、具体例に基づき、上記の拡大画像を得る原理について説明する。まず、
図2(A)には、縦方向の高速スキャンを行う第1スキャナ114と横方向の低速スキャンを行う第2スキャナ120の動作により、広い領域のスキャンが行われる様子が概念的に示されている。
【0039】
図2(A)に示す走査の状態において、第1スキャナ114の走査範囲を狭めた状態が
図2(B)に示されている。この場合、第1スキャナ114は、スキャン中心の位置を変更できないので、上下のスキャン範囲が狭まった状態となる。ここで、スキャン中心の位置を任意に設定できる第3スキャナ123の反射面を動かすと、
図2(B)の状態から例えば
図2(C)の状態とすることができる。つまり、スキャン範囲を上下方向で狭めた
図2(B)の状態において、第3スキャナ123の反射面を振ることで、スキャン範囲を上方に移動させ、
図2(C)の状態を得ることができる。
【0040】
図2(C)の状態において、第2スキャナ120のスキャン範囲を狭めると、横方向のスキャン幅が狭まり、
図2(D)の状態が得られる。更に第2スキャナ120のスキャン範囲を左右に振ると、
図2(D)から
図2(E)の状態、あるいは
図2(D)から
図2(F)の状態が得られる。ここで、第1スキャナ114のスキャン範囲と第2スキャナ120のスキャン範囲とを更に狭めれば、
図2(D)〜(F)に示す狭領域スキャンの範囲を更に縦横で狭めることができる。
【0041】
また、
図2(C)には、第3スキャナ123によるスキャン範囲を上方向に移動させた場合が示されているが、第3スキャナ123によるスキャン範囲を下方向に移動させることで、
図2(D)〜(F)における狭領域のスキャン範囲を、
図2(A)に示す領域におけるスキャン範囲の下側において設定できる。また、第1スキャナ114および第2スキャナ120のスキャン範囲は希望する範囲に狭めることができるので、結果として、
図2(A)に示すスキャン範囲の希望する位置で希望する範囲の狭領域スキャンを行うことができる。
【0042】
以上の原理により、第1スキャナ114、第2スキャナ120および第3スキャナ123を協働して用いることで、
図2(A)の最初の段階での広い領域でのスキャン範囲における希望する位置での狭領域スキャン、すなわち一部を拡大するスキャンを行うことができる。
【0043】
この狭領域スキャンにおいては、第1スキャナ114と第2スキャナ120とのスキャン範囲が狭められる。スキャン範囲が狭められると、より狭い範囲からの検出反射光のサンプリングが行われるので、情報密度が高くなり、分解能を高めたより精緻な画素情報が得られる。つまり、
図2(A)の場合に得られる眼底画像の一部を拡大した眼底画像を得ることができる。なお、スキャン密度は、測定光の集光範囲(例えば数μm径程度)によって制限されるので、眼底画像の拡大には、大凡の限界がある。
【0044】
他方、第1スキャナ114と第2スキャナ120による広域スキャン時のそれぞれのスキャン範囲を変更せずに、第3スキャナ123のスキャン中心位置を変更することで、投光系が広角に対応している場合においては、画像範囲を
図2(A)よりも更に広域化することもできる。
【0045】
(制御系)
以下、
図1に示す眼科装置の制御系の一例を説明する。
図3(A)には、
図1の眼科装置の制御系のブロック図が示されている。
図3(A)において、入力部220には、図示しない入力装置からの入力操作情報が入力される。入力装置は、キーボード装置、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を用いたもの、タッチパネルディスプレイを用いたもの等が利用可能である。また近年、GUIを利用可能な各種の携帯型情報処理端末が利用されているが、これら携帯型情報処理端末を利用して各種の操作を行い、その操作内容を入力部220で受け付ける構成も可能である。例えば、入力部220は、眼底画像の一部を拡大するユーザ(眼科装置の操作者)からの指定を受け付ける。
【0046】
演算部203は、CPUおよびその他のハードウェアを備え、各種の演算機能およびインターフェース機能を有したマイコンにより構成されている。
図3(B)には、演算部203を機能ブロックとして把握した場合の構成が示されている。
図3(B)に示す各機能部は、CPUの演算により所定の機能を発揮するようにソフトウェア的に構成されていてもよいし、少なくとも一部が専用のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0047】
図3(B)において、スキャナ制御部311は、眼底201への照射光(測定光)のスキャンを行うための処理を行う。スキャナ制御部311は、第1スキャナ114、第2スキャナ120および第3スキャナ123をどのように協働させて動作させるか係り、各スキャナの動作タイミング等を決める処理を行う。例えば、
図2に示すスキャンを行うため処理がスキャナ制御部311において行われる。スキャナ制御部311の出力は、第1スキャナ駆動部207、第2スキャナ駆動部208および第3スキャナ駆動部209に送られる。そして、これら駆動部により駆動され、スキャナ制御部311で決められた内容の動作が第1スキャナ114、第2スキャナ120および第3スキャナ123において行われる。
【0048】
第1スキャナ114の反射鏡の可変角度範囲と眼底画像中におけるスキャン範囲との関係、第2スキャナ120のスキャナ中心と眼底画像の座標との関係、第2スキャナ120の可変角度範囲と眼底画像中におけるスキャン範囲との関係、第3スキャナ123のスキャナ中心と眼底画像の座標との関係、第3スキャナ123の可変角度範囲と眼底画像中におけるスキャン範囲との関係は予め調べられており、その内容は、メモリ205に記憶されている。
【0049】
例えば、
図2(A)に示す広域の眼底画像を得、それが後述する表示部204に表示された状態とする。この状態において、上記の広域の眼底画像を当該眼科装置のユーザが観察し、その中において
図2(E)で示すスキャン部分の拡大表示を行う旨の操作を行ったとする。この場合、
図2(E)に示すスキャン範囲となるように、第1スキャナ114のスキャン幅の設定、第2スキャナ120のスキャン中心とスキャン幅の設定、第3スキャナ123の可変鏡の位置の設定がスキャナ制御部311において行われる。
【0050】
例えば、
図2(A)の状態から
図2(E)の状態を得る場合、第1スキャナ114のスキャン幅を
図2(A)の場合の半分に設定する処理、第2スキャナ120のスキャン中心を
図2(A)の状態から左に画像横寸法の1/4ずれるようにし、またそのスキャン幅を
図2(A)の場合の半分とする処理、第3スキャナ123の可変鏡の角度を第1スキャナのスキャン中心が
図2(A)の状態から上に画像縦寸法の1/4ずれるようにする処理がスキャナ制御部311において行われる。
【0051】
画像処理部315は、眼底画像に係る処理を行う。画像処理部315は、眼底画像作成部316を備えている。眼底画像作成部316は、眼底反射光検出器113が検出した反射光のスキャンデータに基づき、網膜の画像を作成する。この網膜の画像は、図示しないディスプレイに送られ、そこに表示される。すなわち、眼底反射光検出器113の出力は、ADC(A/Dコンバータ)202でデジタル信号に変換され、演算部203に送られる。眼底201(
図1参照)へは、光源101からの光が走査されつつ照射されるが、この際の照射点は、スキャナ制御部311において決められており、ある瞬間における照射点の位置は、演算部203の側で判明している。そこで、ADC202の出力をスキャン位置に対応させて割り当て画像の濃淡に変換することで、眼底の画像を得ることができる。この処理が眼底画像作成部316において行われる。また、画像処理部315は、眼底画像の拡大表示に係る処理を行う。
【0052】
波面収差検出部317は、ハルトマン撮像素子107が撮像した画像の解析(ゼルニケ解析)を行い、波面の収差の状態を検出する。補償光学制御部318は、波面補正処理部317で検出された波面の収差を抑えるようにデフォーマブルミラー111を変形させる制御を行う。その他、演算部203では、光源101のON/OFF制御のための処理、視度補正に係る処理等が行われる。
【0053】
表示部204は、
図1の眼科装置を操作するにあたって必要な各種の表示、および演算部203で得られた眼底画像の表示を行う。なお、表示部204として外部機器の表示機能を用いてもよい。この場合、図示しない表示制御部で表示させたい画像データに係る処理が行われ、それが当該外部機器に送信される。メモリ205は、演算部203で行う演算に必要な各種の情報および演算部203で行う演算の手順を決めるプログラムが格納されている。また、メモリ205には、各種の演算結果や得られた眼底画像の画像データが格納される。
【0054】
制御部206は、演算部203における処理の結果に基づき、スキャン動作の制御、光源101の制御、デフォーマブルミラー111の制御、視度補正ミラー126の位置制御等を行うための制御信号を生成する。
【0055】
第1スキャナ駆動部207は、第1スキャナ114を動かすためのモータとその駆動回路を備えている。第2スキャナ駆動部208は、第2スキャナ120を動かすためのモータとその駆動回路を備えている。第3スキャナ駆動部209は、第3スキャナ123を動かすためのモータとその駆動回路を備えている。視度補正ミラー駆動部210は、視度補正ミラー126の光軸上における位置を決めるモータとその駆動回路を備えている。
【0056】
(動作例)
図4は、
図3の制御系で行われる動作の一例を示すフローチャートである。動作が開始されると、まず眼のアライメントが行われる(ステップS101)。この処理では、被検眼300(
図1参照)と装置の光軸の位置合わせが行われる。次に、固視標132を用いて被検眼300の視線を固定し(ステップS102)、その後に眼底301の撮影が行われる(ステップS103)。
【0057】
ステップS103では、広角モードでの眼底の撮影を行う。この処理では、光源101からのレーザ光の照射を眼底にスキャンしつつ行い、その反射光を眼底反射光検出器113で検出する。この際、
図2(A)に示すようにレーザ光を眼底の広域に対してスキャンしつつ照射する。そしてこのスキャン光の眼底からの反射光に基づき、眼底の画像化が行われ、眼底の広角画像を得る。この眼底の広角画像は、撮像対象となる眼底のなるべく広い領域を撮影した画像である。以上の眼底画像を得る処理は、眼底画像作成部316において行われる。
【0058】
また、上記のスキャンと同時に検出光の波面補正が行われる。この処理では、波面検出系で検出光の波面の状態が検出され、波面の収差が抑えられるようにデフォーマブルミラー117の表面形状の変形が行われる。
【0059】
ステップS103の後、ステップS103で得た広角の眼底画像を
図1の表示部204に表示する(ステップS204)。
図5(A)には、広角の眼底画像が画面上に表示されている状態の一例が示されている。ここで、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を用いて、眼底画像と同時に画像の拡大を行うか否か、更に画像の拡大を行うとして視野サイズ(つまり拡大サイズ)をどのようにするのかの選択を促す表示が行われる。
【0060】
図5(A)の状態において、ユーザによるGUI操作により、画像の拡大および視野サイズが選択されると、拡大撮影モードへの移行が指示されたものと装置側に認識され、ステップS105の判定がYESとなる。なお、
図5(A)または(B)の状態において、「NO」がクリックされると、拡大撮影モードへの移行指示が行われなかったものと判定され、ステップS105からステップS106に進む。
【0061】
ステップS106に進んだ場合、予め定められた複数の部分の拡大撮影が行われる。
図6(B)には、
図6(A)に示す広角画像の中での4カ所の既定部分を拡大撮影した場合の例が示されている。この処理では、
図2に示す原理を用いて、決められた部分をスキャン中心とする拡大スキャン(
図2(E)または(F)参照)が行われ、例えば
図6(A)における特定部分の狭い領域の再スキャンが行われる。そして、当該再スキャンに基づき拡大画像が作成される。ここで、スキャン制御は、
図3(B)のスキャナ制御部311で行われ、眼底画像の画像化は、眼底画像作成部316において行われる。なお、ステップS106を実施している間、被検者の視線はステップS102で指定した位置に固定したままであり、移動する必要はない。
【0062】
ステップS106の後、広角眼底画像と同時に拡大眼底画像を表示する(ステップS111)。この場合の表示の一例が
図6(B)に示されている。
【0063】
ステップS105の判定がYESである場合、すなわちユーザによって拡大画像の撮影モードへの移行が指示された場合、
図5(B)でユーザによって指定された視野サイズを取得する(ステップS107)。そして、眼底の広角画像上に視野のサイズを示すカーソルを表示する(ステップS108)。この状態が、
図5(B)に示されている。また、
図6(C)には、既定の4カ所の拡大予定部分に加えて、ユーザが選択した拡大予定部分の視野の範囲を示すカーソルを眼底画像中に表示させた例が示されている。
【0064】
この視野の範囲を示すカーソルは、マウス操作やタッチパネル操作等の公知のGUIの操作によって、画面上で動かすことができる。このカーソルを移動させることで、ユーザが拡大させたい広角眼底画像中における位置が指定される。
【0065】
上記のカーソルによって拡大位置を指定した状態で
図5(B)の「OK」がクリックされると 拡大撮影が指示されたものと装置側(演算部203)が認識し、ステップS109の判定はYESとなり、指定された位置の拡大撮影が行われる(ステップS110)。この処理では、
図2に示す原理を用いて、ユーザにより指定された部分をスキャン中心とする拡大スキャン(
図2(E)または(F)参照)が行われる。そして、当該再スキャンに基づき拡大画像が作成される。ここで、スキャン制御は、
図3(B)のスキャナ制御部311で行われ、眼底画像の画像化は、眼底画像作成部316において行われる。また、この際、ユーザに指定された部分に加えて、既定部分の拡大撮影が行われる。なお、ステップS107からステップS110を実施している間においても、被検者の視線はステップS102で指定した位置に固定したままであり、移動する必要はない。
【0066】
ステップS110の後、ステップS111に進み、予め定められた部分の拡大眼底画像とユーザが指定した部分の拡大眼底画像とが表示部204の画面上に表示される(ステップS111)。この場合の画面表示の一例が
図6(C)に示されている。
【0067】
(例1)
図7には、広角眼底画像上にグリッドを設定し、このグリッドを第2スキャナ120による水平方向スキャン角度と第3スキャナ123による鉛直方向スキャン角度とに対応させた場合の例が示されている。この場合、広角画像内の任意の箇所がユーザにより指定されると、その指定箇所に最も近いグリッドの交点がスキャン中心となるようにスキャン中心とスキャン範囲が設定され、予め決められた視野角の拡大画像を得ることができる。
【0068】
(例2)
図8には、
図7の場合と同様に広角眼底画像上にグリッドを設定する構成において、ユーザが視野サイズを選択すると、視野サイズ相当の大きさのカーソルが広角画像中に現れ、そのカーソルを広角画像内でドラッグして拡大箇所を決定する例が示されている。この例では、指定された部分に最も近い位置のグリッドの交点を中心とした拡大画を得る。
【0069】
(その他)
第1スキャナと第2スキャナのスキャン方向とが直交しない関係であってもよい。この場合、スキャン範囲は平行四辺形となる。また、第1スキャナによる走査範囲を第1スキャナのスキャン方向に移動させることが可能であれば、第1スキャナと第3スキャナの可変方向が同じでなくてもよい。
【0070】
(優位性)
以上説明した眼科装置によれば、まず広角眼底画像を得、その中において被検者の視線を固定したままユーザが指定する位置の拡大画像を得ることができる。