特許第6460714号(P6460714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6460714硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに半導体装置
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  • 特許6460714-硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに半導体装置 図000044
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6460714
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20190121BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20190121BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20190121BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08K5/3477
   C08L83/05
   H01L33/56
【請求項の数】11
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-209307(P2014-209307)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-79219(P2016-79219A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰伸
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/094625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08K 5/3477
C08L 83/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A)と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B)と、下記式(1)
【化1】
[式(1)中、Ra、Rb、及びRcは、同一又は異なって、式(1a)で表される基である。
【化2】
[式(1a)中、Rdは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。sは2〜10の整数を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物(C)と、を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、ヒドロシリル化触媒を含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン及び下記式(2)
【化3】
[式(2)中、Rf、Rg、及びRhは、同一又は異なって、式(2a)で表される基、又は式(2b)で表される基を示す。但し、Rf、Rg、及びRhのうち少なくとも1個は、式(2b)で表される基である。]
【化4】
[式(2a)中、Riは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
【化5】
[式(2b)中、Rjは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物(D)からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとして、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、下記式(V)
【化6】
[式(V)中、R6は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を示す。]
で表される単位構造及び下記式(VI)
【化7】
[式(VI)中、R7は、同一又は異なって、炭化水素基を示す。]
で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基を有するラダー型シルセスキオキサン(F)を含む請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとして、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、下記式(VII)
【化8】
[式(VII)中、Xは単結合、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、又は、これらが複数個連結した基を示す。R8及びR9は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、スルホ基、アミノ基若しくは置換アミノ基、メルカプト基、スルホ基、又は下記式(s)
【化9】
[式(s)中、R51は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、スルホ基、アミノ基若しくは置換アミノ基、メルカプト基、又はスルホ基を示す。]
で表される基を示す。nは1〜100の整数を示す。]
で表される単位構造及び下記式(VIII)
【化10】
[式(VIII)中、R10は、同一又は異なって、炭化水素基を示す。]
で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基を有するラダー型シルセスキオキサン(G)を含む請求項3又は4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンが、側鎖の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンである請求項3〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、シランカップリング剤(E)を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物硬化物。
【請求項9】
封止剤である請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
半導体素子と、該半導体素子を封止する封止材とを有する半導体装置であって、
前記封止材が、請求項9に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
光半導体装置である請求項10に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、上記硬化性樹脂組成物を使用した封止剤、並びに上記封止剤を使用して半導体素子(特に光半導体素子)を封止して得られる半導体装置(特に光半導体装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において半導体素子を被覆して保護するための封止材としては、各種の樹脂材料が使用されている。特に、光半導体装置における封止材には、SOXやH2S等の硫黄化合物を代表とする腐食性ガスに対するバリア性に優れることが求められる。
【0003】
現在、光半導体装置における封止材としては、腐食性ガスに対するバリア性が比較的良好なフェニルシリコーン(フェニルシリコーン系封止材)が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4409160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フェニルシリコーン系封止材は、従来使用されていたメチルシリコーン系封止材に比べると腐食性ガスに対するバリア性は高いものの、その特性は未だ不十分である。実際に、フェニルシリコーン系封止材を使用した場合であっても、光半導体装置において腐食性ガスによる電極の腐食が経時で進行し、通電特性が悪化するという問題が生じていた。
【0006】
封止材の腐食性ガスに対するバリア性を高めるために、特定の成分を封止剤(封止材を形成するための硬化性組成物)に配合する手法も存在する。本発明者らは、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート及びトリグリシジルイソシアヌレートの添加が上述のバリア性向上の効果を奏することを既に見出している。しかしながら、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートは室温で固体であり、加熱しながら混合しない限り均一な封止剤を得ることができない。また、配合量を増量すると、封止剤においてモノアリルジグリシジルイソシアヌレートの固体が析出するという問題が生じていた。一方、トリグリシジルイソシアヌレートも同様に室温で固体であり、特に封止剤における溶解性が低いために、加熱によっても均一な封止剤を得にくい。また、いったんは溶解させた場合であっても、封止剤を室温に戻すとトリグリシジルイソシアヌレートの固体が析出するという問題が生じていた。このように、封止材の腐食性ガスに対するバリア性を効率的に高めることができる成分であって上述の固体析出の問題を生じさせないものは、現状見出されていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、上述の固体析出の問題が生じることなく、硬化させることにより特に腐食性ガス(例えば、SOxガス)に対するバリア性に優れた材料(硬化物)を形成できる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、特に腐食性ガスに対するバリア性に優れた材料(硬化物)を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記硬化性樹脂組成物を使用した封止剤、及び該封止剤を使用して半導体素子(特に光半導体素子)を封止することにより得られる、品質と耐久性に優れた半導体装置(特に光半導体装置)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、分子内に2個以上のアルケニル基を有する特定の成分と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有する特定の成分と、特定の構造を有するイソシアヌレート化合物とを必須成分として含む硬化性樹脂組成物によると、上述の固体析出の問題が生じることなく、さらに、硬化させることにより特に腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A)と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B)と、下記式(1)
【化1】
[式(1)中、Ra、Rb、及びRcは、同一又は異なって、式(1a)で表される基、式(1b)で表される基、水素原子、又はアルキル基を示す。但し、Ra、Rb、及びRcのうち少なくとも1個は、式(1a)で表される基である。
【化2】
[式(1a)中、Rdは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。sは2〜10の整数を示す。]
【化3】
[式(1b)中、Reは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。tは1〜10の整数を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物(C)と、を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
さらに、ヒドロシリル化触媒を含む前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0011】
さらに、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン及び下記式(2)
【化4】
[式(2)中、Rf、Rg、及びRhは、同一又は異なって、式(2a)で表される基、又は式(2b)で表される基を示す。但し、Rf、Rg、及びRhのうち少なくとも1個は、式(2b)で表される基である。]
【化5】
[式(2a)中、Riは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]
【化6】
[式(2b)中、Rjは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物(D)からなる群より選択される少なくとも1種を含む前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0012】
さらに、前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとして、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、下記式(V)
【化7】
[式(V)中、R6は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を示す。]
で表される単位構造及び下記式(VI)
【化8】
[式(VI)中、R7は、同一又は異なって、炭化水素基を示す。]
で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基を有するラダー型シルセスキオキサン(F)を含む前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0013】
さらに、前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとして、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、下記式(VII)
【化9】
[式(VII)中、Xは単結合、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、又は、これらが複数個連結した基を示す。R8及びR9は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、スルホ基、アミノ基若しくは置換アミノ基、メルカプト基、スルホ基、又は下記式(s)
【化10】
[式(s)中、R51は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、スルホ基、アミノ基若しくは置換アミノ基、メルカプト基、又はスルホ基を示す。]
で表される基を示す。nは1〜100の整数を示す。]
で表される単位構造及び下記式(VIII)
【化11】
[式(VIII)中、R10は、同一又は異なって、炭化水素基を示す。]
で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基を有するラダー型シルセスキオキサン(G)を含む前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0014】
さらに、前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンが、側鎖の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンである前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、シランカップリング剤(E)を含む前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物を提供する。
【0017】
さらに、封止剤である前記の硬化性樹脂組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、半導体素子と、該半導体素子を封止する封止材とを有する半導体装置であって、
前記封止材が、前記の硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0019】
さらに、光半導体装置である前記の半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は上記構成を有するため、硬化性樹脂組成物(例えば、室温に調温した硬化性樹脂組成物等)において固体が析出する問題が生じない。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、その調製が容易であり、取り扱いやすい。また、本発明の硬化性樹脂組成物は上記構成を有するため、硬化させることによって、特に腐食性ガス(例えば、SOxガス)に対するバリア性に優れた硬化物を形成できる。このため、上記硬化物を半導体装置における半導体素子の封止材として使用した場合、上記半導体装置の電極の腐食が高度に抑制され、上記半導体装置の耐久性が著しく向上する。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、特に光半導体装置における光半導体素子(LED素子)の封止材を形成するための材料(封止剤)として好ましく使用することができる。本発明の硬化性樹脂組成物を封止剤として使用して得られる光半導体装置は、優れた品質と耐久性とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置の一実施形態を示す概略図である。左側の図(a)は斜視図であり、右側の図(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A)(単に「ポリオルガノシロキサン(A)」と称する場合がある)と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B)(単に「ポリオルガノシロキサン(B)」と称する場合がある)と、下記式(1)で表されるイソシアヌレート化合物(C)(単に「イソシアヌレート化合物(C)」と称する場合がある)とを必須成分として含むことを特徴とする硬化性組成物である。本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の必須成分以外にも、さらに例えば、後述のヒドロシリル化触媒等のその他の成分を含んでいてもよい。
【化12】
【0023】
[ポリオルガノシロキサン(A)]
本発明の硬化性樹脂組成物の必須成分であるポリオルガノシロキサン(A)は、上述のように、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンである。即ち、ポリオルガノシロキサン(A)は、アルケニル基を有するポリシロキサンであり、ヒドロシリル基を有する成分(例えば、後述のポリオルガノシロキサン(B)等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。但し、ポリオルガノシロキサン(A)には、後述の「ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン」に当たるものは含まれない。
【0024】
ポリオルガノシロキサン(A)としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状の分子構造を有するものが挙げられる。なお、ポリオルガノシロキサン(A)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。具体的には、分子構造が異なるポリオルガノシロキサン(A)の2種以上を併用することができ、例えば、直鎖状のポリオルガノシロキサン(A)と分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(A)とを併用することもできる。
【0025】
ポリオルガノシロキサン(A)が分子内に有するアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の置換又は無置換アルケニル基が挙げられる。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。中でも、ビニル基が好ましい。また、ポリオルガノシロキサン(A)は、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。ポリオルガノシロキサン(A)が有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
【0026】
ポリオルガノシロキサン(A)が有するアルケニル基以外の基は、特に限定されないが、例えば、水素原子、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等]、シクロアルキル基[例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等]、アリール基[例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等]、シクロアルキル−アルキル基[例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等]、アラルキル基[例えば、ベンジル基、フェネチル基等]、炭化水素基における1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化炭化水素基[例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等]等の一価の置換又は無置換炭化水素基等が挙げられる。なお、本明細書において「ケイ素原子に結合した基」とは、通常、ケイ素原子を含まない基を指すものとする。
【0027】
また、ポリオルガノシロキサン(A)は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0028】
ポリオルガノシロキサン(A)の性状は、特に限定されず、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0029】
ポリオルガノシロキサン(A)としては、下記平均単位式:
(R1SiO3/2a1(R12SiO2/2a2(R13SiO1/2a3(SiO4/2a4(X11/2a5
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式中、R1は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、上述の具体例(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基等)が挙げられる。但し、R1の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R1の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、アルケニル基以外のR1としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0030】
上記平均単位式中、X1は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
【0031】
上記平均単位式中、a1は0又は正数、a2は0又は正数、a3は0又は正数、a4は0又は正数、a5は0又は正数であり、かつ、(a1+a2+a3)は正数である。
【0032】
ポリオルガノシロキサン(A)の一例としては、例えば、分子内に2個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。この直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述の具体例が挙げられるが、中でもビニル基が好ましい。なお、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0033】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、1〜20モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、30〜90モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜80モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0034】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(I−1)で表される。
【化13】
[上記式中、R11は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基である。但し、R11の少なくとも2個はアルケニル基である。m1は、5〜1000の整数である。]
【0035】
ポリオルガノシロキサン(A)の他の例としては、分子内に2個以上のアルケニル基を有し、RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。但し、上述のように、当該分岐鎖状ポリオルガノシロキサンには、後述の「ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン」に当たるものは含まれない。なお、Rは、一価の置換又は無置換炭化水素基である。この分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述の具体例が挙げられるが、中でもビニル基が好ましい。なお、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のRとしては、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0036】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の硬化性の観点で、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、10〜40モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、5〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜60モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、60〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0037】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、a1が正数である上記平均単位式で表すことができる。この場合、特に限定されないが、a2/a1は0〜10の数、a3/a1は0〜0.5の数、a4/(a1+a2+a3+a4)は0〜0.3の数、a5/(a1+a2+a3+a4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、より好ましくは700〜3000である。
【0038】
ポリオルガノシロキサン(A)のさらに他の例としては、例えば、上記平均単位式中、a1及びa2が0であり、X1が水素原子である下記平均単位式:
(R1a21bSiO1/2a6(R1a3SiO1/2a7(SiO4/2a8(HO1/2a9
で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記平均単位式中、R1aは、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基(C1-10アルキル基)を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。また、R1bは、同一又は異なって、アルケニル基を示し、中でもビニル基が好ましい。さらに、a6、a7、a8及びa9はいずれも、a6+a7+a8=1、a6/(a6+a7)=0.15〜0.35、a8/(a6+a7+a8)=0.53〜0.62、a9/(a6+a7+a8)=0.005〜0.03を満たす正数である。但し、a7は0であってもよい。硬化性樹脂組成物の硬化性の観点で、a6/(a6+a7)は0.2〜0.3であることが好ましい。また、硬化物の硬度や機械強度の観点で、a8/(a6+a7+a8)は0.55〜0.60であることが好ましい。さらに、硬化物の接着性や機械強度の観点で、a9/(a6+a7+a8)は0.01〜0.025であることが好ましい。このようなポリオルガノシロキサンとしては、例えば、SiO4/2単位と(CH32(CH2=CH)SiO1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン、SiO4/2単位と(CH32(CH2=CH)SiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0039】
なお、ポリオルガノシロキサン(A)は、分子内に2個以上のアルケニル基を有していればよく、さらにヒドロシリル基を有していてもよい。この場合、ポリオルガノシロキサン(A)は、後述のポリオルガノシロキサン(B)でもあり得る。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(A)の含有量(配合量)(総量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%である。含有量を50重量%以上とすることにより、硬化物の強靭性、透明性がより向上する傾向がある。
【0041】
[ポリオルガノシロキサン(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物の必須成分であるポリオルガノシロキサン(B)は、上述のように、分子内に2個以上のヒドロシリル基(Si−H)を有するポリオルガノシロキサンである。即ち、ポリオルガノシロキサン(B)は、ヒドロシリル基を有するポリシロキサンであり、アルケニル基を有する成分(例えば、ポリオルガノシロキサン(A)等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。但し、ポリオルガノシロキサン(B)には、後述の「ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン」に当たるものは含まれない。
【0042】
ポリオルガノシロキサン(B)としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状の分子構造を有するものが挙げられる。なお、ポリオルガノシロキサン(B)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。具体的には、分子構造が異なるポリオルガノシロキサン(B)の2種以上を併用することができ、例えば、直鎖状のポリオルガノシロキサン(B)と分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(B)とを併用することもできる。
【0043】
ポリオルガノシロキサン(B)が有するケイ素原子に結合した基の中でも水素原子以外の基は、特に限定されないが、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基、より詳しくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。また、ポリオルガノシロキサン(B)は、水素原子以外のケイ素原子に結合した基として、アルケニル基(例えばビニル基)を有していてもよい。
【0044】
ポリオルガノシロキサン(B)の性状は、特に限定されず、液状であってもよいし、固体状であってもよい。中でも液状であることが好ましく、25℃における粘度が0.1〜1000000000mPa・sの液状であることがより好ましい。
【0045】
ポリオルガノシロキサン(B)としては、下記平均単位式:
(R2SiO3/2b1(R22SiO2/2b2(R23SiO1/2b3(SiO4/2b4(X21/2b5
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式中、R2は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基であり、水素原子、上述の具体例(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等)が挙げられる。但し、R2の一部は水素原子(ヒドロシリル基を構成する水素原子)であり、その割合は、ヒドロシリル基が分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R2の全量(100モル%)に対する水素原子の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。水素原子の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、水素原子以外のR2としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0046】
上記平均単位式中、X2は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
【0047】
上記平均単位式中、b1は0又は正数、b2は0又は正数、b3は0又は正数、b4は0又は正数、b5は0又は正数であり、かつ、(b1+b2+b3)は正数である。
【0048】
ポリオルガノシロキサン(B)の一例としては、例えば、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0049】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対する水素原子(ケイ素原子に結合した水素原子)の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、20〜99モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、40〜80モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0050】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(III−1)で表される。
【化14】
[上記式中、R31は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。但し、R31の少なくとも2個は水素原子である。m2は、5〜1000の整数である。]
【0051】
ポリオルガノシロキサン(B)の他の例としては、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有し、RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。但し、上述のように、当該分岐鎖状ポリオルガノシロキサンには、後述の「ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン」に当たるものは含まれない。なお、Rは、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のRとしては、水素原子、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。上記T単位中のRの全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、30モル%以上が好ましい。
【0052】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、70〜95モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、10〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が10モル%以上(例えば、10〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、50〜90モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0053】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、b1が正数である上記平均単位式で表すことができる。この場合、特に限定されないが、b2/b1は0〜10の数、b3/b1は0〜0.5の数、b4/(b1+b2+b3+b4)は0〜0.3の数、b5/(b1+b2+b3+b4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が300〜10000であることが好ましく、より好ましくは500〜3000である。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン(A)の全量100重量部に対して、1〜200重量部が好ましい。ポリオルガノシロキサン(B)の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性がより向上し、効率的に硬化物を形成することができる傾向がある。ポリオルガノシロキサン(B)の含有量が上記範囲を外れると、硬化反応が十分に進行しない等の理由により、硬化物の耐熱性、耐熱衝撃性、耐リフロー性等の特性が低下する傾向がある。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物(100重量%)におけるポリオルガノシロキサン(A)とポリオルガノシロキサン(B)の含有量の合計(合計含有量)は、特に限定されないが、60〜99重量%が好ましく、より好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは80〜90重量%である。上記合計含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の強靭性、耐熱性、透明性がより向上する傾向がある。
【0056】
[イソシアヌレート化合物(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物の必須成分であるイソシアヌレート化合物(C)は、上記式(1)で表される化合物である。本発明の硬化性樹脂組成物はイソシアヌレート化合物(C)を必須成分として含むことにより、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物を形成できる。また、イソシアヌレート化合物(C)は、本発明の硬化性樹脂組成物における溶解性が良好であるためと考えられるが、増量した場合や硬化性樹脂組成物を加熱しない場合にも、固体として析出を生じない。このため、本発明の硬化性樹脂組成物は、固体析出の問題が生じないことと、硬化物の腐食性ガスに対する優れたバリア性とが、非常に高いレベルで両立される。従来、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の向上効果を有する成分は、上記バリア性を向上させるために増量すると固体析出の問題を生じるため、上述の両特性の両立をすることは困難であった。
【0057】
式(1)中、Ra、Rb、及びRcは、同一又は異なって、式(1a)で表される基、式(1b)で表される基、水素原子、又はアルキル基を示す。但し、Ra、Rb、及びRcのうち少なくとも1個は、式(1a)で表される基である。
【化15】
【化16】
【0058】
式(1a)中、Rdは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基(直鎖又は分岐鎖状のC1-8アルキル基)を示す。直鎖又は分岐鎖状のC1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖又は分岐鎖状のC1-3アルキル基が好ましい。中でもRdとしては、水素原子が特に好ましい。
【0059】
式(1a)中、sは、2〜10の整数を示す。中でも、2〜8の整数が好ましく、より好ましくは2〜6の整数、さらに好ましくは2〜4の整数である。sが上記範囲にあることにより、硬化性樹脂組成物における固体析出の抑制と、硬化物の腐食性ガスに対する優れたバリア性とが、より高いレベルで両立される傾向がある。
【0060】
なお、式(1)におけるRa、Rb、及びRcのうち2個又は3個が式(1a)で表される基である場合、これらの式(1a)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
式(1b)中、Reは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基(直鎖又は分岐鎖状のC1-8アルキル基)を示す。直鎖又は分岐鎖状のC1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖又は分岐鎖状のC1-3アルキル基が好ましい。中でもReとしては、水素原子が特に好ましい。
【0062】
式(1b)におけるtは、1〜10の整数を示す。中でも1〜6の整数が好ましい。
【0063】
なお、式(1)におけるRa、Rb、及びRcのうち2個が式(1b)で表される基である場合、これらの式(1b)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、イソシアヌレート化合物(C)は、式(1b)で表される基を有していなくてもよい。
【0064】
a、Rb、及びRcとしてのアルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれであってもよく、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基(例えば、直鎖又は分岐鎖状のC1-8アルキル基);シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等の環状のアルキル基(シクロアルキル基)等が挙げられる。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物がイソシアヌレート化合物(C)を含むことにより、その硬化物が腐食性ガスに対するバリア性を発揮できるのは、他の成分と反応した状態及び未反応の状態に関わらず、硬化物中でイソシアヌレート化合物(C)におけるイソシアヌレート骨格がSOxガス等の腐食性ガスをトラップするためであると推測される。
【0066】
イソシアヌレート化合物(C)としては、例えば、式(1)におけるRa、Rb、及びRcのうち1個が式(1a)で表される基である化合物、式(1)におけるRa、Rb、及びRcのうち2個が式(1a)で表される基である化合物、式(1)におけるRa、Rb、及びRcの全てが式(1a)で表される基である化合物が挙げられる。特に固体析出の問題が生じにくい点で、式(1)におけるRa、Rb、及びRcのうち2個又は3個が式(1a)で表される基である化合物が好ましく、より好ましくは式(1)におけるRa、Rb、及びRcの全てが式(1a)で表される基である化合物である。
【0067】
イソシアヌレート化合物(C)は、分子内に上述の式(1a)で表される基を必須の基として有するものであるためと推測されるが、当該基を有しないもの(例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等)と同等以上の腐食性ガスに対するバリア性の向上効果を有しながら、上記基を有しないものに比べて、本発明の硬化性樹脂組成物における他の成分(特に、ポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノシロキサン(B))との相溶性が非常に良好であり、その結果、硬化性樹脂組成物における固体析出の問題が生じることなく、また、調製時にも他の成分に対して容易に溶解させることができる。このため、硬化性樹脂組成物の生産性が向上する。また、イソシアヌレート化合物(C)の含有量を多くした場合であっても上述の固体析出の問題が生じないため、イソシアヌレート化合物(C)の増量による硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の著しい向上が可能となる。
【0068】
イソシアヌレート化合物(C)は、例えば、アルコールや酸無水物等のエポキシ基と反応する化合物と反応させて、変性した上で使用することもできる。
【0069】
イソシアヌレート化合物(C)が式(1b)で表される基を有するものである場合は、例えば、ヒドロシリル基を有する化合物とあらかじめ反応(ヒドロシリル化反応)させた上で使用することもできる。例えば、後述のラダー型シルセスキオキサン(G)とともにヒドロシリル化触媒の存在下で反応させたものを、本発明の硬化性樹脂組成物の構成成分として使用することもできる。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物においてイソシアヌレート化合物(C)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、イソシアヌレート化合物(C)は、商品名「TEPIC−VL」(日産化学工業(株)製)等の市販品を入手することもできる。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるイソシアヌレート化合物(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.03〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜3重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%である。イソシアヌレート化合物(C)の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。一方、イソシアヌレート化合物(C)の含有量を10重量%以下とすることにより、耐熱性、強靭性、透明性等により優れる硬化物が得られる傾向がある。
【0072】
[イソシアヌレート化合物(D)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記式(2)で表されるイソシアヌレート化合物(「イソシアヌレート化合物(D)」と称する場合がある)を含んでいてもよい。本発明の硬化性樹脂組成物がイソシアヌレート化合物(D)を含む場合には、硬化物の被着体に対する密着性がいっそう向上し、さらに、腐食性ガスに対するバリア性がより高くなる傾向がある。
【化17】
【0073】
式(2)中、Rf、Rg、及びRhは、同一又は異なって、式(2a)で表される基、又は式(2b)で表される基を示す。但し、Rf、Rg、及びRhのうち少なくとも1個は、式(2b)で表される基である。
【化18】
【化19】
【0074】
式(2a)中、Riは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基(直鎖若しくは分岐鎖状のC1-8アルキル基)を示す。直鎖若しくは分岐鎖状のC1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖若しくは分岐鎖状のC1-3アルキル基が好ましい。中でもRiとしては、水素原子が特に好ましい。
【0075】
なお、式(2)におけるRf、Rg、及びRhのうち2個が式(2a)で表される基である場合、これらの式(2a)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、イソシアヌレート化合物(D)は、式(2a)で表される基を有していなくてもよい。
【0076】
式(2b)中、Rjは、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基(直鎖若しくは分岐鎖状のC1-8アルキル基)を示す。直鎖若しくは分岐鎖状のC1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖若しくは分岐鎖状のC1-3アルキル基が好ましい。中でもRjとしては、水素原子が特に好ましい。
【0077】
なお、式(2)におけるRf、Rg、及びRhのうち2個又は3個が式(2b)で表される基である場合、これらの式(2b)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
イソシアヌレート化合物(D)としては、例えば、式(2)におけるRf、Rg、及びRhのうち1個が式(2b)で表される基である化合物(「モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物」と称する場合がある)、式(2)におけるRf、Rg、及びRhのうち2個が式(2b)で表される化合物(「ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物」と称する場合がある)、式(2)におけるRf、Rg、及びRhの全てが式(2b)で表される化合物(「トリアリルイソシアヌレート化合物」と称する場合がある)が挙げられる。
【0079】
上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物としては、具体的には、例えば、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0080】
上記ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物としては、具体的には、例えば、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0081】
上記トリアリルイソシアヌレート化合物としては、具体的には、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2−メチルプロペニル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物においてイソシアヌレート化合物(D)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、イソシアヌレート化合物(D)は、例えば、市販品として入手することが可能である。
【0083】
イソシアヌレート化合物(D)が式(2a)で表される基を有するものである場合は、例えば、アルコールや酸無水物等のエポキシ基と反応する化合物と反応させて、変性した上で使用することもできる。
【0084】
イソシアヌレート化合物(D)は式(2b)で表される基を有するため、例えば、ヒドロシリル基を有する化合物とあらかじめ反応(ヒドロシリル化反応)させた上で使用することもできる。例えば、上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物と後述のラダー型シルセスキオキサン(G)とをヒドロシリル化触媒の存在下で反応させたものを、本発明の硬化性樹脂組成物の構成成分として使用することもできる。
【0085】
イソシアヌレート化合物(D)は、他の成分との相溶性を向上させる観点から、後述のように、シランカップリング剤(E)とあらかじめ混合してから、他の成分に配合することもできる。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるイソシアヌレート化合物(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜6重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。イソシアヌレート化合物(D)の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性、被着体に対する密着性がより向上する傾向がある。一方、イソシアヌレート化合物(D)の含有量を6重量%以下とすることにより、硬化性樹脂組成物における固体析出の問題が抑制される傾向がある。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物がイソシアヌレート化合物(D)を含む場合、イソシアヌレート化合物(C)とイソシアヌレート化合物(D)の含有量の合計(合計含有量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物に対して、0.01〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.2〜3重量%、特に好ましくは0.4〜2重量%である。上記合計含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上する傾向がある。一方、上記合計含有量の含有量を15重量%以下とすることにより、硬化性樹脂組成物における固体析出の問題がより抑制される傾向がある。
【0088】
[シランカップリング剤(E)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤(E)を含んでいてもよい。シランカップリング剤(E)を含む場合には、特に、硬化物の被着体に対する密着性がいっそう向上する傾向がある。さらに、シランカップリング剤(E)は、イソシアヌレート化合物(D)(特に、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物)やラダー型シルセスキオキサン(G)等との相溶性が良好であるため、特に、イソシアヌレート化合物(D)等のその他の成分に対する相溶性を向上させることを可能とする。具体的には、例えば、イソシアヌレート化合物(D)を使用する場合には、あらかじめイソシアヌレート化合物(D)とシランカップリング剤(E)との組成物を形成した上で、その他の成分と配合させると、均一な硬化性樹脂組成物が得られやすい。
【0089】
シランカップリング剤(E)としては、公知乃至慣用のシランカップリング剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシラン、アルコキシオリゴマー(例えば、商品名「X−41−1053」、「X−41−1059A」、「X−41−1056」、「X−41−1085」、「X−41−1818」、「X−41−1810」、「X−40−2651」、「X−40−2665A」、「KR−513」、「KC−89S」、「KR−500」、「X−40−9225」、「X−40−9246」、「X−40−9250」;以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤(特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を好ましく使用できる。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物においてシランカップリング剤(E)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、シランカップリング剤(E)としては、市販品を使用することもできる。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるシランカップリング剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。シランカップリング剤(E)の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の被着体に対する密着性がより向上する傾向がある。また、イソシアヌレート化合物(D)の硬化性樹脂組成物中での溶解性を向上させることができるため、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性のさらなる向上が可能となる場合がある。一方、シランカップリング剤(E)の含有量を15重量%以下とすることにより、十分に硬化反応が進行し、硬化物の靱性、耐熱性、腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。
【0092】
[ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを含んでいてもよい。本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを含む場合には、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより高くなる傾向がある。上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、実験式(基本構造式)RSiO1.5で表されるポリシロキサンであって、分子内にラダー状のSi−O−Si構造(ラダー構造)を少なくとも含むポリオルガノシルセスキオキサンである。
【0093】
上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、上記構造を有する公知乃至慣用のポリオルガノシルセスキオキサンを使用することができ、特に限定されないが、分子内に1以上(特に2以上)の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するもの、分子内に1以上(特に2以上)のヒドロシリル基を有するものが好ましい。また、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、側鎖[主骨格(主鎖)であるラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン骨格(Si−O結合で形成された骨格)から枝分かれしている部分]の一部又は全部が、置換若しくは無置換のアリール基(芳香族炭化水素基)であるものが好ましい。置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、後述のR5として例示する置換若しくは無置換のアリール基等が挙げられる。
【0094】
中でも、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性、機械強度等の観点で、以下に説明するラダー型シルセスキオキサン(F)、ラダー型シルセスキオキサン(G)が特に好ましい。
【0095】
・ラダー型シルセスキオキサン(F)
上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとしてのラダー型シルセスキオキサン(F)は、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン骨格)の分子鎖末端の一部又は全部に、後述の式(V)で表される単位構造及び式(VI)で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基(「ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)」と称する場合がある)を有するポリオルガノシルセスキオキサンである。
【0096】
ラダー型シルセスキオキサン(F)におけるポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン骨格)は、実験式(基本構造式)R5SiO1.5で表されるポリシロキサンである。なお、R5は、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示し、R5(上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のR5)の少なくとも一部は、一価の有機基である。上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のR5は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0097】
上記R5におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上記R5における一価の有機基としては、例えば、置換又は無置換の炭化水素基(一価の炭化水素基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基等が挙げられる。
【0098】
上記R5における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。
【0099】
上記R5における脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基)等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)等が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-20アルキニル基(好ましくはC2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)等が挙げられる。
【0100】
上記R5における脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
【0101】
上記R5における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基(例えば、C6-14アリール基、特にC6-10アリール基)等が挙げられる。
【0102】
また、上記R5における脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基等が挙げられる。
【0103】
上記R5における炭化水素基は置換基を有する炭化水素基(置換炭化水素基)であってもよい。上記置換炭化水素基における置換基の炭素数は0〜20が好ましく、より好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基、より好ましくはC1-4アルコキシ基);アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基(好ましくはC2-6アルケニルオキシ基、より好ましくはC2-4アルケニルオキシ基);フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくはC6-14アリールオキシ基);ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基(好ましくはC7-18アラルキルオキシ基);アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(好ましくはC1-12アシルオキシ基);メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基(好ましくはC1-6アルキルチオ基、より好ましくはC1-4アルキルチオ基);アリルチオ基等のアルケニルチオ基(好ましくはC2-6アルケニルチオ基、より好ましくはC2-4アルケニルチオ基);フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくはC6-14アリールチオ基);ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基(好ましくはC7-18アラルキルチオ基);カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(好ましくはC1-6アルコキシ−カルボニル基);フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(好ましくはC6-14アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(好ましくはC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基);アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基(好ましくはモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基);アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基(好ましくはC1-11アシルアミノ基);グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基等が挙げられる。置換炭化水素基が有する置換基の数は、特に限定されない。
【0104】
上記R5における一価の酸素原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、イソシアナート基、スルホ基、カルバモイル基等が挙げられる。上記一価の窒素原子含有基としては、例えば、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、シアノ基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、カルバモイル基等が挙げられる。また、上記一価の硫黄原子含有基としては、例えば、メルカプト基(チオール基)、スルホ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、イソチオシアナート基等が挙げられる。なお、上述の一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、一価の硫黄原子含有基は、相互に重複し得る。
【0105】
さらに、上記R5としては、下記式(s)で表される基が挙げられる。
【化20】
【0106】
上記式(s)中のR51(3つのR51)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示し、これらの基としては、上記R5として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0107】
上記式(s)で表される基において、各R51としては、それぞれ、水素原子;C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基);C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルケニル基);C3-12シクロアルキル基;C3-12シクロアルケニル基;芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリール基;C7-18アラルキル基;C6-10アリール−C2-6アルケニル基;ヒドロキシ基;C1-6アルコキシ基;ハロゲン原子が好ましい。
【0108】
上記の中でも、R5としては、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(特に、アルキル基)、芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)である。
【0109】
一般に、ポリオルガノシルセスキオキサンの構造としては、ラダー状のSi−O−Si構造(ラダー構造)、カゴ状のSi−O−Si構造(カゴ構造)、ランダム状のSi−O−Si構造(ランダム構造)等が挙げられるが、ラダー型シルセスキオキサン(F)におけるポリオルガノシルセスキオキサンは、上記ラダー構造を少なくとも含むポリオルガノシルセスキオキサン(ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン)である。
【0110】
ラダー型シルセスキオキサン(F)におけるポリオルガノシルセスキオキサンは、例えば、下記式(L)で表される。
【化21】
【0111】
上記式(L)において、vは1以上の整数(例えば、1〜5000)を表し、好ましくは1〜2000の整数、さらに好ましくは1〜1000の整数である。式(L)中のR5は、上記R5と同じものを示す。Tは末端基を示す。
【0112】
ラダー型シルセスキオキサン(F)におけるポリオルガノシルセスキオキサン中のケイ素原子に直接結合した基(上記実験式におけるR5、例えば、式(L)におけるR5(側鎖))は、特に限定されないが、上記基の全量(100モル%)に対する置換又は無置換の炭化水素基の占める割合が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。特に、上記基の全量(100モル%)に対する、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖状のC1-10アルキル基(特に、メチル基、エチル基等の直鎖又は分岐鎖状のC1-4アルキル基)、置換又は無置換のC6-10アリール基(特に、フェニル基)、置換又は無置換のC7-10アラルキル基(特に、ベンジル基)の合計量が、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0113】
特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、ラダー型シルセスキオキサン(F)は、側鎖[主骨格(主鎖)であるラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン骨格から枝分かれしている部分、例えば、上記式(L)におけるR5]の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基(芳香族炭化水素基)であることが好ましい。
【0114】
ラダー型シルセスキオキサン(F)は、上記ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を少なくとも有する。上記ポリオルガノシルセスキオキサンが上記式(L)で表される場合、ラダー型シルセスキオキサン(F)は、式(L)中のTの一部又は全部が以下のポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)で置換された構造を有する。
【0115】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)は、下記式(V)
【化22】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)及び下記式(VI)
【化23】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)を少なくとも含む残基である。
【0116】
上記式(V)中のR6は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を示す。上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基等のC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基等のC4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基等が挙げられる。なお、上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基には、上記式(s)で表される基において、3つのR51のうち少なくとも1つが上記のC2-20アルケニル基、C3-12のシクロアルケニル基、C4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基等である基も含まれる。中でも、R6としては、アルケニル基が好ましく、より好ましくはC2-20アルケニル基、さらに好ましくはビニル基である。
【0117】
上記式(VI)中のR7は、同一又は異なって、炭化水素基(一価の炭化水素基)を示す。上記炭化水素基としては、上記R5として例示したものと同様の炭化水素基が例示される。中でも、R7としては、C1-20アルキル基が好ましく、より好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特に好ましくはメチル基である。特に、式(VI)中のR7がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0118】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)は、式(V)で表される単位構造と式(VI)で表される単位構造以外にも、例えば、下記式(V′)
【化24】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)を有していてもよい。
【0119】
上記式(V′)中のR6′は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く一価の基を示す。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基等が挙げられる。
【0120】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)における式(V)に表された3つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜80モル%が好ましく、より好ましくは25〜60モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(F)が有する脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。一方、含有量が80モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(F)中にシラノール基や加水分解性シリル基が多く残存するため、ラダー型シルセスキオキサン(F)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。
【0121】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)における式(VI)に表された1つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜85モル%が好ましく、より好ましくは30〜75モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(F)中にシラノール基や加水分解性シリル基が残存しやすく、ラダー型シルセスキオキサン(F)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。一方、含有量が85モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(F)が有する脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。
【0122】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)が有するSi−O−Si構造(骨格)としては、特に限定されず、例えば、ラダー構造、カゴ構造、ランダム構造等が挙げられる。
【0123】
ポリオルガノシルセスキオキサン(F)は、例えば、下記式(La)で表すことができる。式(La)中のv、R5としては、上記式(L)と同様のものが例示される。式(La)中のAは、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)、又は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、若しくはアシルオキシ基を示し、Aの一部又は全部はポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)である。なお、式(La)中の複数(2〜4個)のAがポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)である場合、それぞれのAは互いに又は他の式(La)で表される分子が有するAと1以上のSi−O−Si結合を介して結合していてもよい。
【化25】
【0124】
なお、ラダー型シルセスキオキサン(F)におけるポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)は、さらに、後述のラダー型シルセスキオキサン(G)における式(VII)で表される単位構造を有するものであってもよい。この場合、ラダー型シルセスキオキサン(F)は、ラダー型シルセスキオキサン(G)として使用することも可能な場合がある。
【0125】
ラダー型シルセスキオキサン(F)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラダー構造を有し、分子鎖末端にシラノール基及び/又は加水分解性シリル基(シラノール基及び加水分解性シリル基のいずれか一方又は両方)を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端に対して、上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を形成する方法が挙げられる。具体的には、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
【0126】
ラダー型シルセスキオキサン(F)における、分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲で脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)を有することにより、耐熱性等の各種物性、耐クラック性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。
【0127】
ラダー型シルセスキオキサン(F)中の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、特に限定されないが、0.7〜5.5mmol/gが好ましく、より好ましくは1.1〜4.4mmol/gである。また、ラダー型シルセスキオキサン(F)に含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合の割合(重量基準)は、特に限定されないが、ビニル基換算で、2.0〜15.0重量%が好ましく、より好ましくは3.0〜12.0重量%である。
【0128】
ラダー型シルセスキオキサン(F)の分子量は、特に限定されないが、100〜800000が好ましく、より好ましくは200〜100000、さらに好ましくは300〜10000、特に好ましくは500〜8000である。ラダー型シルセスキオキサン(F)の分子量がこの範囲にあると、室温で液体となりやすく、なおかつその粘度が比較的低くなりやすいため、取り扱いが容易となる場合がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(F)は、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であってもよい。なお、上記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量として測定される。
【0129】
ラダー型シルセスキオキサン(F)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、100〜800000が好ましく、より好ましくは200〜100000、さらに好ましくは300〜10000、特に好ましくは500〜8000である。重量平均分子量が100未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、分子量が800000を超えると、他の成分との相溶性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0130】
ラダー型シルセスキオキサン(F)は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、ラダー型シルセスキオキサン(F)の23℃における粘度は、100〜100000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が100mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が100000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となる場合がある。なお、23℃における粘度は、レオーメーター(商品名「PhysicaUDS−200」、AntonPaar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で測定される。
【0131】
本発明の硬化性樹脂組成物においてラダー型シルセスキオキサン(F)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0132】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型シルセスキオキサン(F)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。含有量を1重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。一方、含有量を40重量%以下とすることにより、硬化物が硬くなりすぎず、柔軟性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
【0133】
・ラダー型シルセスキオキサン(G)
本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型シルセスキオキサン(G)は、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン骨格)の分子鎖末端の一部又は全部に、後述の式(VII)で表される単位構造及び式(VIII)で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基(「ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)」と称する場合がある)を有するポリオルガノシルセスキオキサンである。
【0134】
ラダー型シルセスキオキサン(G)におけるポリオルガノシルセスキオキサンは、実験式(基本構造式)R5SiO1.5で表されるポリシロキサンである。ラダー型シルセスキオキサン(G)におけるポリオルガノシルセスキオキサンとしては、ラダー型シルセスキオキサン(F)におけるポリオルガノシルセスキオキサン(例えば、上記式(L)で表されるポリオルガノシルセスキオキサン)と同様のものが例示される。
【0135】
ラダー型シルセスキオキサン(G)は、ラダー型シルセスキオキサン(F)と同様に、特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、側鎖の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基であることが好ましい。
【0136】
上記ポリオルガノシルセスキオキサンが上記式(L)で表される場合、ラダー型シルセスキオキサン(G)は、式(L)中のTの一部又は全部が以下のポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)で置換された構造を有する。
【0137】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)は、下記式(VII)
【化26】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)及び下記式(VIII)
【化27】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)を少なくとも含む残基である。なお、上記式(VII)で表される単位構造中の有機基(−X−CHR8−CR82−[SiR92−O−]n−SiHR92)を、「SiH含有基」と称する場合がある。
【0138】
上記式(VII)中、Xは、単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、これらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0139】
上記二価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0140】
上記式(VII)におけるR8は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示す。R8としては、上記R5として例示したものと同様の基が挙げられる。中でも、R8としては、それぞれ、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0141】
上記式(VII)におけるR9は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示す。R9としては、上記R5として例示したものと同様の基が挙げられる。なお、式(VII)中のnが2以上の整数の場合、nが付された各括弧内におけるR9は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0142】
上記の中でも、R9としては、それぞれ、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(特に、メチル基)、芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)である。
【0143】
上記式(VII)におけるnは、1〜100の整数を示し、好ましくは1〜30の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。nが大きすぎる場合、硬化物のガス(特に、腐食性ガス)に対するバリア性が低下する傾向があるため、例えば、光半導体素子の封止剤としては適さない場合がある。
【0144】
上記式(VIII)におけるR10は、同一又は異なって、炭化水素基(一価の炭化水素基)を示す。上記炭化水素基としては、上記R5において例示したものと同様の炭化水素基が例示される。中でも、R10としては、C1-20アルキル基が好ましく、より好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特に好ましくはメチル基である。特に、式(VIII)中のR10がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0145】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)は、式(VII)で表される単位構造と式(VIII)で表される単位構造以外にも、例えば、上記式(V′)で表される単位構造等を有していてもよい。
【0146】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)における式(VII)中の3つの酸素原子が結合したケイ素原子(SiH含有基中のケイ素原子は含まない)の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜80モル%が好ましく、より好ましくは25〜60モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(G)が有するヒドロシリル基の量が不十分となって、硬化物の十分な硬度が得られない場合がある。一方、含有量が80モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(G)中にシラノール基や加水分解性シリル基が多く残存するため、ラダー型シルセスキオキサン(G)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。
【0147】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)における式(VIII)中の1つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜85モル%が好ましく、より好ましくは30〜75モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(G)中にシラノール基や加水分解性シリル基が残存しやすく、ラダー型シルセスキオキサン(G)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。一方、含有量が85モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(G)が有するヒドロシリル基の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。
【0148】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)が有するSi−O−Si構造(骨格)としては、特に限定されず、例えば、ラダー構造、カゴ構造、ランダム構造等が挙げられる。
【0149】
ポリオルガノシルセスキオキサン(G)は、例えば、下記式(Lb)で表すことができる。式(Lb)中のv、R5としては、上記式(L)と同様のものが例示される。式(Lb)中のBは、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)、又は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、若しくはアシルオキシ基を示し、式(Lb)中のBの一部又は全部はポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)である。なお、式(Lb)中の複数(2〜4個)のRbがポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)である場合、それぞれのBは互いに又は他の式(Lb)で表される分子が有するBと1以上のSi−O−Si結合を介して結合していてもよい。
【化28】
【0150】
なお、ラダー型シルセスキオキサン(G)におけるポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)は、さらに、上述のラダー型シルセスキオキサン(F)における式(V)で表される単位構造を有するものであってもよい。この場合、ラダー型シルセスキオキサン(G)は、ラダー型シルセスキオキサン(F)として使用することも可能な場合がある。
【0151】
ラダー型シルセスキオキサン(G)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラダー構造を有し、分子鎖末端にシラノール基及び/又は加水分解性シリル基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(原料ラダーポリマー)の分子鎖末端に対して、上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)を形成する方法が挙げられる。具体的には、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
【0152】
ラダー型シルセスキオキサン(G)における、分子内(一分子中)の上記SiH含有基の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲で上記SiH含有基を有することにより、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
【0153】
ラダー型シルセスキオキサン(G)が有するヒドロシリル基の含有量は、特に限定されないが、0.01〜0.5mmol/gが好ましく、より好ましくは0.08〜0.28mmol/gである。また、ラダー型シルセスキオキサン(G)が有するヒドロシリル基の重量基準の含有量は、特に限定されないが、ヒドロシリル基におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)で、0.01〜0.50重量%が好ましく、より好ましくは0.08〜0.28重量%である。ヒドロシリル基の含有量が少なすぎると(例えば、0.01mmol/g未満、H換算で0.01重量%未満の場合)、硬化性樹脂組成物の硬化が進行しない場合がある。一方、ヒドロシリル基の含有量が多すぎると(例えば、0.50mmol/gを超える、H換算で0.50重量%を超える場合)、硬化物の硬度が高くなり、割れやすくなる場合がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(G)におけるヒドロシリル基の含有量は、例えば、1H−NMRスペクトル測定等により算出することができる。
【0154】
なお、ラダー型シルセスキオキサン(G)が有するヒドロシリル基の全量(100モル%)に対するSiH含有基の割合は、特に限定されないが、硬化度の観点で、50〜100モル%が好ましく、より好ましくは80〜100モル%である。
【0155】
ラダー型シルセスキオキサン(G)の分子量は、特に限定されないが、100〜800000が好ましく、より好ましくは200〜100000、さらに好ましくは300〜10000、特に好ましくは500〜9000である。ラダー型シルセスキオキサン(G)の分子量がこの範囲にあると、室温で液体となりやすく、なおかつその粘度が比較的低くなりやすいため、取り扱いが容易となる場合がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(G)は、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であってもよい。なお、上記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量として測定される。
【0156】
ラダー型シルセスキオキサン(G)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、100〜800000が好ましく、より好ましくは200〜100000、さらに好ましくは300〜10000、特に好ましくは500〜9000である。重量平均分子量が100未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、分子量が800000を超えると、他の成分との相溶性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0157】
ラダー型シルセスキオキサン(G)は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、ラダー型シルセスキオキサン(G)の23℃における粘度は、100〜100000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が100mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が100000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となる場合がある。なお、23℃における粘度は、ラダー型シルセスキオキサン(F)の粘度と同様の方法により測定される。
【0158】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においてラダー型シルセスキオキサン(G)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0159】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型シルセスキオキサン(G)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。含有量を1重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル基の量が多くなり、硬化反応が十分に進行することでより硬度の高い硬化物が得られる傾向がある。一方、含有量を30重量%以下とすることにより、硬化物が硬くなりすぎず、柔軟性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
【0160】
・その他のラダー型シルセスキオキサン
上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、上述のラダー型シルセスキオキサン(F)、ラダー型シルセスキオキサン(G)以外のラダー型シルセスキオキサン(「その他のラダー型シルセスキオキサン」と称する場合がある)を使用することもできる。特に、上記その他のラダー型シルセスキオキサンは、ラダー型シルセスキオキサン(F)やラダー型シルセスキオキサン(G)と併用することが好ましい。
【0161】
上記その他のラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、25℃において固体であり、なおかつ脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)を有するラダー型シルセスキオキサン(「ラダー型シルセスキオキサン(S1)」と称する場合がある);25℃において固体であり、なおかつヒドロシリル基を有するラダー型シルセスキオキサン(「ラダー型シルセスキオキサン(S2)」と称する場合がある)が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型シルセスキオキサン(S1)及び/又は(S2)を含む場合には、特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、さらに、強靭性(特に、耐クラック性)が向上する傾向がある。
【0162】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)における、分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。また、ラダー型シルセスキオキサン(S1)における脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の位置は、特に限定されず、側鎖であってもよいし、末端であってもよい。
【0163】
ラダー型シルセスキオキサン(S2)における、分子内のヒドロシリル基の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。また、ラダー型シルセスキオキサン(S2)におけるヒドロシリル基の位置は、特に限定されず、側鎖であってもよいし、末端であってもよい。
【0164】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)、(S2)のそれぞれの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、2000〜800000が好ましく、より好ましくは6000〜100000である。重量平均分子量が2000未満であると、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が低下する場合がある。一方、分子量が800000を超えると、他の成分との相溶性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0165】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)、(S2)は、公知乃至慣用のラダー型シルセスキオキサンの製造方法(例えば、3官能シラン化合物を原料としたゾルゲル法)により製造することができる。
【0166】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)の含有量は、特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜30重量%の範囲で適宜調整可能である。また、ラダー型シルセスキオキサン(S2)の含有量も、特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜30重量%の範囲で適宜調整可能である。
【0167】
上記その他のラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、国際公開第2013/176238号に開示された、分子内に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)又は分子内に2個以上のヒドロシリル基を有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜1.40であるラダー型シルセスキオキサン等も使用できる。このようなラダー型シルセスキオキサンを使用することによって、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上する傾向がある。上記ラダー型シルセスキオキサンの含有量は、特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜15重量%の範囲で適宜調整可能である。
【0168】
本発明の硬化性樹脂組成物においてラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、ラダー型シルセスキオキサン(F)及びラダー型シルセスキオキサン(G)を併用することが好ましい。
【0169】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(F)の含有量を1重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。一方、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの含有量を50重量%以下とすることにより、硬化物の靱性等の機械強度がより向上する傾向がある。
【0170】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に硬化物の腐食性ガスに対するバリア性を著しく高くする観点で、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン及びイソシアヌレート化合物(D)からなる群より選択される少なくとも1種(上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン及び/又はイソシアヌレート化合物(D))を含むことが好ましい。
【0171】
[ヒドロシリル化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化触媒を含んでいてもよい。本発明の硬化性樹脂組成物がヒドロシリル化触媒を含むことにより、加熱することで、硬化性樹脂組成物中の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)とヒドロシリル基の間のヒドロシリル化反応をより効率的に進行させることができる傾向がある。
【0172】
上記ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示され、具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体等の白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体等の白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、並びに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。中でも、ヒドロシリル化触媒としては、白金−ビニルメチルシロキサン錯体や白金−カルボニルビニルメチル錯体や塩化白金酸とアルコール、アルデヒドとの錯体が、反応速度が良好であるため好ましい。
【0173】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においてヒドロシリル化触媒は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0174】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物に含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の全量1モルに対して、1×10-8〜1×10-2モルが好ましく、より好ましくは1.0×10-6〜1.0×10-3モルである。含有量を1×10-8モル以上とすることにより、より効率的に硬化物を形成させることができる傾向がある。一方、含有量を1×10-2モル以下とすることにより、より色相に優れた(着色の少ない)硬化物を得ることができる傾向がある。
【0175】
また、本発明の硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量(配合量)は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で、0.01〜1000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒の含有量がこのような範囲にあると、より効率的に硬化物を形成させることができ、また、より色相に優れた硬化物を得ることができる傾向がある。
【0176】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の成分以外の成分(「その他の成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリオルガノシロキサン(A)及び(B)以外のシロキサン化合物(例えば、環状シロキサン化合物、低分子量直鎖又は分岐鎖状シロキサン化合物等)、シランカップリング剤、ヒドロシリル化反応抑制剤、溶媒、各種添加剤等が挙げられる。添加剤としては、例えば、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;上述以外のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、蛍光体等が挙げられる。これらのその他の成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、その他の成分の含有量(配合量)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することが可能である。
【0177】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に存在するヒドロシリル基1モルに対して、脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)が0.2〜4モルとなるような組成(配合組成)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.0モル、さらに好ましくは0.8〜2.0モルである。ヒドロシリル基と脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)との割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱性、透明性、耐熱衝撃性及び耐リフロー性、並びに腐食性ガス(例えば、SOxガス等)に対するバリア性がより向上する傾向がある。
【0178】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を室温で撹拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
【0179】
本発明の硬化性樹脂組成物は、固体、液体のいずれの状態を有するものであってもよく、特に限定されないが、通常、常温(約25℃)で液体である。本発明の硬化性樹脂組成物は上述のように主に硬化物の腐食性ガスのバリア性を向上させる成分としてイソシアヌレート化合物(C)を含むものであるため、固体析出の問題を生じることなく、イソシアヌレート化合物(C)の増量によって腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上した硬化物を得ることが可能である。
【0180】
本発明の硬化性樹脂組成物の23℃における粘度は、特に限定されないが、300〜20000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。上記粘度を300mPa・s以上とすることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、上記粘度を20000mPa・s以下とすることにより、硬化性樹脂組成物の調製がしやすく、その生産性や取り扱い性がより向上し、また、硬化物に気泡が残存しにくくなるため、硬化物(特に、封止材)の生産性や品質がより向上する傾向がある。なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、上述のラダー型シルセスキオキサン(F)の粘度と同じ方法によって測定される。
【0181】
<硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化(特に、ヒドロシリル化反応により硬化)させることによって、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)が得られる。硬化(特に、ヒドロシリル化反応による硬化)の際の条件は、特に限定されず、従来公知の条件より適宜選択することができるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は25〜180℃(より好ましくは60〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は5〜720分が好ましい。なお、硬化は一段階で実施することもできるし、多段階で実施することもできる。本発明の硬化物は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有するのみならず、特に、腐食性ガス(例えば、SOxガス等)に対するバリア性に優れる。
【0182】
<封止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体装置における半導体素子の封止用の組成物(封止剤)(「本発明の封止剤」と称する場合がある)として好ましく使用することができる。具体的には、本発明の封止剤は、光半導体装置における光半導体素子(LED素子)の封止用途に(即ち、光半導体用封止剤として)特に好ましく使用できる。本発明の封止剤を硬化させることにより得られる封止材(硬化物)は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有するのみならず、特に、腐食性ガス(例えば、SOxガス等)に対するバリア性に優れる。このため、本発明の封止剤は、特に、高輝度、短波長の光半導体素子の封止剤等として好ましく使用できる。
【0183】
<半導体装置>
本発明の封止剤を使用して半導体素子を封止することにより、半導体装置(「本発明の半導体装置」と称する場合がある)が得られる。即ち、本発明の半導体装置は、半導体素子とこれを封止する封止材とを少なくとも有する半導体装置であって、上記封止材が本発明の封止剤の硬化物である半導体装置である。本発明の半導体装置の製造は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、本発明の封止剤を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して実施できる。硬化温度と硬化時間は、特に限定されないが、硬化物の調製時と同様の範囲で設定することができる。本発明の封止剤は、上記半導体装置が光半導体装置である場合、即ち、光半導体装置における光半導体素子の封止剤(光半導体用封止剤)として使用する場合には、特に上述の有利な効果を効果的に発揮できる。本発明の封止剤を光半導体用封止剤として使用することにより、光半導体装置(「本発明の光半導体装置」と称する場合がある)が得られる。本発明の光半導体装置の一例を図1に示す。図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線(電極)、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
【0184】
特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高輝度・短波長の光半導体装置において光半導体素子を被覆する封止材を形成するための封止剤、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆する封止材を形成するための封止剤等の用途に好ましく使用できる。
【0185】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の封止剤用途(特に、光半導体素子の封止剤用途)に限定されず、例えば、機能性コーティング剤、耐熱プラスチックレンズ、透明機器、接着剤(耐熱透明接着剤等)、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の光学関連や半導体関連の用途にも好ましく使用できる。
【実施例】
【0186】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0187】
生成物及び製品の1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。また、生成物並びに製品の数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、により行った。
【0188】
製造例1
[末端にビニル基とトリメチルシリル基(TMS基)とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの合成]
200ml四つ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)40.10g、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)3.38g、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)17.69gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水240ミリモル(4.33g)及び5Nの塩酸0.48g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて同時に滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを80.0g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で水606ミリモル(10.91g)を添加し、同温度で重縮合反応を窒素下で9時間行った。さらに、ビニルトリエトキシシラン6.25gを添加し、同温度で3時間反応(熟成)を行った。
続いて、得られた反応溶液にヘキサメチルジシロキサン15.0gを添加して、シリル化反応を70℃で3時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、当該上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを無色透明の液状の生成物として19.0g得た。なお、製造例1で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、上述のラダー型シルセスキオキサン(F)にあたる。
上記末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は3000、1分子当たりのビニル基の含有量(平均含有量)は4.00重量%であり、フェニル基/メチル基/ビニル基(モル比)は5/80/15であった。
(末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3)):δ−0.3−0.3ppm(br)、5.7−6.2ppm(br)、7.1−7.7ppm(br)
【0189】
製造例2
[末端にSiH含有基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの合成]
反応容器に、製造例1で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン12gと、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)24gと、2.0%白金−シクロビニルシロキサン錯体ビニルシクロシロキサン溶液(和光純薬工業(株)製)10μLとを仕込んだ。次いで、70℃で8時間加熱して、反応終了とした。続いて、エバポレーターで濃縮した後、真空ポンプを用いて0.2Torrで3時間減圧し、末端にSiH含有基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを液状の生成物として得た。なお、製造例2で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、上述のラダー型シルセスキオキサン(G)にあたる。
上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は3300、1分子当たりのヒドロシリル基の含有量(平均含有量)は、ヒドロシリル基におけるH(ヒドリド)の重量換算で0.12重量%であった。
(末端にSiH含有基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl3)):δ−0.3−0.3ppm(br)、4.7ppm(s)、7.1−7.7ppm(br)
【0190】
ポリオルガノシロキサン(A)、ポリオルガノシロキサン(B)としては、次の製品を使用した。
KER−2500A:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量1.53重量%、フェニル基含有量0重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0.03重量%、数平均分子量4453、重量平均分子量19355、ヒドロシリル化触媒を含む。
KER−2500B:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量1.08重量%、フェニル基含有量0重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0.13重量%、数平均分子量4636、重量平均分子量18814
ETERLED GD1012A:長興材料工業製、ビニル基含有量1.33重量%、フェニル基含有量0重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量5108、重量平均分子量23385、ヒドロシリル化触媒を含む。
ETERLED GD1012B:長興材料工業製、ビニル基含有量1.65重量%、フェニル基含有量0重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0.19重量%、数平均分子量4563、重量平均分子量21873
【0191】
イソシアヌレート化合物(C)としては、次の化合物を使用した。
TEPIC−VL:日産化学工業(株)製、下記式で表される化合物
【化29】
【0192】
イソシアヌレート化合物(D)としては、次の化合物を使用した。
MA−DGIC:四国化成工業(株)製、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(下記式で表される化合物)
【化30】
【0193】
さらに、下記のイソシアヌレート化合物も使用した。
TEPIC:日産化学工業(株)製、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(下記式で表される化合物)
【化31】
【0194】
シランカップリング剤としては、商品名「XIAMETER OFS−6040」(XIAMETER社製)を使用した。
【0195】
実施例1
[硬化性樹脂組成物の製造]
まず、表1に示すように、ETERLED GD1012A(50重量部)、及びTEPIC−VL(0.3重量部)を混合し、80℃で1時間撹拌して、A剤を調製した。なお、A剤は均一な液体であって、A剤中に固体(不溶物)は存在していなかった。
次に、上記で得たA剤(50.3重量部)に対して、B剤としてのETERLED GD1012B(50重量部)を混合し、室温で1時間撹拌したところ、均一な液体である硬化性樹脂組成物が得られた。
【0196】
[光半導体装置の製造]
図1に示す態様のLEDパッケージ(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に、上記で得られた硬化性樹脂組成物を注入し、100℃で1時間、続いて150℃で5時間加熱することで、上記硬化性樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を製造した。
【0197】
実施例2〜6、比較例1〜3
[硬化性樹脂組成物の製造]
硬化性樹脂組成物の配合組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物を製造した。
【0198】
なお、実施例2〜6、並びに比較例1及び2においては、均一な液体である硬化性樹脂組成物が得られた。また、実施例2〜6、並びに比較例1及び2で調製した各A剤はいずれも均一な液体であって、各A剤中に固体(不溶物)は存在していなかった。一方、比較例3においては、硬化性樹脂組成物中に固体の不溶物があり、均一な液体である硬化性樹脂組成物は得られなかった。
【0199】
[光半導体装置の製造]
また、上記で得られた各硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光半導体装置を製造した。
【0200】
(評価)
上記で得られた光半導体装置について、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、比較例3については、硬化性樹脂組成物中に不溶物が存在しており、封止剤としては適さないものであったため、光半導体装置を用いた下記の評価は実施しなかった。
【0201】
[硫黄腐食試験]
上記で製造した各光半導体装置を試料として用いた。
まず、上記試料について、全光束測定機(オプトロニックラボラトリーズ社製、マルチ分光放射測定システム「OL771」)を用いて、20mAの電流を流した際の全光束(単位:lm)を測定し、これを「試験前の全光束」とした。
次に、上記試料と硫黄粉末(キシダ化学(株)製)0.3gとを450mlのガラス瓶に入れ、さらに上記ガラス瓶をアルミ製の箱の中に入れた。続いて、上記アルミ製の箱を80℃のオーブン(ヤマト科学(株)製、型番「DN−64」)に入れ、8時間後に取り出した。このようにして得られた試料について、上記と同様に全光束(単位:lm)を測定し、これを「試験後の全光束」とした。
上記で測定した全光束の値から、次式に従って光度維持率を算出した。
光度維持率(%)=(試験後の全光束/試験前の全光束)×100
光度維持率が高いほど、硬化物(封止材)が腐食性ガスに対するバリア性に優れることを示す。
なお、硬化性樹脂組成物ごとに(各実施例・比較例ごとに)10個の光半導体装置について光度維持率を測定・算出し、表1にはこれらの光度維持率の平均値(N=10)を示した。
【0202】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明の硬化性樹脂組成物は、腐食性ガスに対するバリア性が求められる接着剤、コーティング剤、封止剤等の用途に有用である。特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、光半導体素子(LED素子)の封止剤として好ましく使用できる。
【符号の説明】
【0204】
100:リフレクター(光反射用樹脂組成物)
101:金属配線(電極)
102:光半導体素子
103:ボンディングワイヤ
104:硬化物(封止材)
図1