(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施例の製紙用ストレー
ナを図面を参照して説明する。
図1において、1は古紙等の製紙原料(以下「紙料」という。)を離解するパルパ−
で、パルパ−1は、槽2の中で回転するロ−タ−3により、水に渦流を起こし、その作用
により離解するものである。
【0021】
離解された製紙原料中の有用繊維は、ロ−タ−3に近接して設けられた製紙用ストレ
−ナ4を通過し、排出口5より槽2の外へと導かれるようになっている。
つまり、製紙用ストレ−ナ4は、回転するロータ−3に近接して配備され、離解され
た紙料を篩い分けするものである。
【0022】
ロータ−3に対向するストレーナ41の表面には、
図2に示すように、複数のストレ
ーナ孔42が設けられている。ストレーナ41は、例えば、ステンレス鋳鋼で形成され、
ストレーナ孔42の周囲を突起で囲む周囲壁6が形成されている[
図3(a)(b)参照
]。
上述した製紙用ストレーナ4によれば、周囲壁6内に紙料を留まらせて、紙料を離解
させることができ、しかも、周囲壁6に紙料が衝突し、周囲壁6の近傍で乱流が生じる。
即ち、周囲壁6からもたらせれるバッフリング効果から紙料の原料濃度が高くても離
解し易くなる。
その為、高い原料濃度を通す事が出来るようになり、通過量(処理量)を増やすことが
出来る。
つまり、単位処理量が増え動力原単位が良好となり省エネ効果が期待できる。
周囲壁6により従来技術のものより原料が離解される為、ストレーナ孔42の径を小
径化する事が可能となる。
【0023】
その結果、原料がストレーナ孔42を通過する際に原料に含まれるゴミ等の不純物を
より多く除去することができ、製紙用ストレ−ナ4の精選効果が向上する。
従来技術と同量の処理量を処理する場合は、ローター3等の回転数を低速にする事が
可能となり省エネ効果が期待できる。
また、回転が遅くなった分、ローター3等の回転刃物の寿命を延ばすことが可能とな
り使用者の経済的コストを削減する事が出来る。
製紙用ストレーナ4に複数の周囲壁6があること、加えて、細幅の周囲壁6の周囲長
さを長く形成することにより、従来よりもローター3との交差長を多くする事が出来る。
また、周囲壁6を細かく形成する事によりローター3との交差回数を増やす事が出来
る。その為、従来技術のものよりも離解能力を向上する事が出来る。
また、周囲壁6を細幅(例えば、平面視で周囲壁6の幅寸法を製紙用ストレーナ4の
直径より小とする。)で形成できる分、製紙用ストレーナ4の製造コストをも軽減するこ
とができる。
また、周囲壁6の長手方向を横断する断面形状に鋭利なエッジ部、又は、直角なコー
ナー部(
図2参照)を形成して、紙料をカッティングすることもできる。
【0024】
周囲壁6は、ストレーナ41より硬度が柔らかい又は同じ材料で形成されていても良
いが、望ましくは、ストレーナ41より硬度が硬い材料(例えば、タングステンカーバイ
ト)で複数形成されているのが良い。周囲壁6をストレーナ41より硬度が硬い材料で形
成するため、ローター3により送り出される紙料による損傷を防ぐことができる。
周囲壁6は、例えば、
図3に示すように、平面視で環状に形成され、ストレーナ41
の表面に周囲壁6の内側のみならず、外側にもストレーナ孔42が複数形成されている。
その結果、ストレーナ孔42を多く設けることができ、しかも、周囲壁6の内側のみ
ならず、周囲壁6の外側でも乱流が生じ、つまり、乱流領域が拡大して、紙料の離解をよ
り促進させることができる。
【0025】
なお、本実施例においては、平面視で円[
図3(a)(b)参照]としたが、本願発
明にあっては、これに限らず、楕円でも、矩形形状でも良く、また、
図4(a)(b)に
示すように、ストレーナ孔42の周囲を直線状の突起で囲んで周囲壁6を形成しても良い
。
また、周囲壁6の幅は、周囲壁6の周囲長さより細いものとなっている。周囲壁6の
幅は、適宜の値であり、例えば、周囲壁6の幅は、望ましくは、0.5mm〜10mm、より望ましくは、2mm前後である。
なお、周囲壁6の幅は、ストレーナ孔42の直径より小となっているが[
図3(a)
(b)、
図4(a)(b)、
図5参照]、本願発明は、これに限らず、
図6に示すように
、周囲壁6の幅は、ストレーナ孔42の直径より大としても良い。
また、周囲壁6は、複数形成されているため、周囲壁6に紙料が衝突し、隣接する周
囲壁6の間で乱流が生じ、紙料の離解がより促進されることとなる。
【0026】
上述した実施例においては、周囲壁6で囲むストレーナ孔42は、複数としたが(図
3、
図4、
図6参照)、本願発明にあっては、これに限らず、
図5に示すように1個のス
トレーナ孔42の周囲を周囲壁6で囲むようにしても良い。
【0027】
上述した製紙用ストレーナ4は、下記のようにして製造することができる。
ストレーナ(例えば、ステンレス鋳鋼)4の表面に複数のストレーナ孔42を穿孔す
る(穿孔工程)。
この穿孔工程の後、ストレーナ孔42の周囲にストレーナ4より硬度が硬い材料(例
えば、タングステンカーバイト)をストレーナ4の表面に付着(付着は、例えば、肉盛溶
接)させて周囲壁6を複数形成(周囲壁形成工程)して、製紙用ストレーナ4を製造する
ことができる。
【0028】
上述した製紙用ストレーナの製造方法によれば、ストレーナ孔42の周囲に設ける周
囲壁6をストレーナ4より硬度が硬い材料で形成するため、ローター3により送り出され
る紙料による損傷を防ぐことができると共に、周囲壁6の近傍で乱流が生じ、紙料の離解
が促進され、しかも、周囲壁6を細幅で形成できる分、製造コストをも軽減した製紙用ス
トレーナ4を製造することができる。
【0029】
上述した製紙用ストレーナの製造方法においては、穿孔工程の後、周囲壁形成工程と
したが、本願発明にあっては、逆の構成としても、上述したと同様な効果を有する。
即ち、ストレーナ(例えば、ステンレス鋳鋼)41の表面にストレーナ41より硬度
が硬い材料(例えば、タングステンカーバイト)をストレーナ41の表面に付着(付着は
、例えば、肉盛溶接)させて細幅の周囲壁6を複数形成する(周囲壁形成工程)。
この周囲壁形成工程の後、ストレーナ41面に周囲壁6を避けて、周囲壁6の内方に
単数又は複数のストレーナ孔42を穿孔(穿孔工程)して、製紙用ストレーナ4を製造す
ることができる。
【0030】
なお、本実施例においては、製紙用ストレーナ4をパルパーに採用した場合について
説明したが、本願発明の製紙用ストレーナ4は、これに限らず、未離解片、異物(金属片
、石、プラスチック片)を含む製紙用原料を処理し、精選された有用繊維を得るためのス
クリーン等の製紙用異物分離装置にも適用することができるものである。
製紙用異物分離装置は、回転する回転体に近接して複数の孔を有した平板状又は筒状
の分離体を設け、前記孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離するもので、回転体は
、上述した実施例で言えば、例えば、ローター3であり、平板状の分離体は、例えば、ス
トレーナ41であり、筒状の分離体は、例えば、特許第4909693号の円筒形状のス
クリーン2である。
上記分離体の前記複数の孔の周囲に上述と同様な細幅の周囲壁6を形成し、細幅の周
囲壁6は、上述と同様、分離体より硬度が硬い材料で複数形成され、前記細幅の周囲壁が
直線状に形成されている場合、前記周囲壁の幅は、前記周囲壁の周囲の長さより細いもの
であり、又は、前記細幅の周囲壁が略環状に形成されている場合、前記周囲壁の幅は、前
記周囲壁の略環状の長手方向の長さより細いものとしても良い。
上記の製紙用異物分離装置においても、周囲壁内に紙料を留まらせて、紙料を離解さ
せることができ、しかも、ローターに対向する分離体の表面に複数の孔を設けると共に、
前記孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成するため、従来よりもローターと周囲壁との
交差長を多くすると共に、周囲壁を細かく形成する事によりローターとの交差回数を増や
して、離解能力を向上する事が出来る。
【0031】
上述した実施例においては、ストレーナ孔42の周囲を突起で囲む周囲壁6を単一又は複数形成するようにしたが、本願発明にあっては、これに限らず、ストレーナ孔42の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部6’を単一又は複数形成するようにしても良い。
【0032】
即ち、
図8において、1は古紙等の製紙原料(以下「紙料」という。)を離解するパルパ−で、パルパ−1は、槽2の中で回転するロ−タ−3により、水に渦流を起こし、その作用により離解するものである。
【0033】
離解された製紙原料中の有用繊維は、ロ−タ−3に近接して設けられた製紙用ストレ
−ナ4を通過し、排出口5より槽2の外へと導かれるようになっている。
つまり、製紙用ストレ−ナ4は、回転するロータ−3に近接して配備され、離解され
た紙料を篩い分けするものである。
【0034】
ロータ−3に対向するストレーナ41の表面には、
図9に示すように、複数のストレ
ーナ孔42が設けられている。ストレーナ41は、例えば、ステンレス鋳鋼で形成され、
ストレーナ孔42の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部6’が形成されている[
図9(a)(b)(c)(d)参照]。
上述した製紙用ストレーナ4によれば、周囲凹状溝部6’をローター3が横切る時に周囲凹状溝部6’近傍で乱流が生じ、多くの乱流により、紙料の離解を促進させることができ、しかも、ローター3に対向するストレーナ41の表面に複数のストレーナ孔42を設けると共に、ストレーナ孔42の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部6’を複数形成するため、従来よりもローター3と周囲凹状溝部6’との交差長を多くすると共に、周囲凹状溝部6’を細かく形成する事によりローター3との交差回数を増やして、離解能力を向上する事が出来る。
即ち、周囲凹状溝部6’からもたらせれるバッフリング効果から紙料の原料濃度が高くても離解し易くなる。
その為、高い原料濃度を通す事が出来るようになり、通過量(処理量)を増やすことが
出来る。
つまり、単位処理量が増え動力原単位が良好となり省エネ効果が期待できる。
周囲凹状溝部6’により従来技術のものより原料が離解される為、ストレーナ孔42の径を小径化する事が可能となる。
【0035】
その結果、原料がストレーナ孔42を通過する際に原料に含まれるゴミ等の不純物を
より多く除去することができ、製紙用ストレ−ナ4の精選効果が向上する。
従来技術と同量の処理量を処理する場合は、ローター3等の回転数を低速にする事が
可能となり省エネ効果が期待できる。
また、回転が遅くなった分、ローター3等の回転刃物の寿命を延ばすことが可能とな
り使用者の経済的コストを削減する事が出来る。
製紙用ストレーナ4に複数の周囲凹状溝部6’があること、加えて、細幅の周囲凹状溝部6’の周囲長さを長く形成することにより、従来よりもローター3との交差長を多くする事が出来る。
また、周囲凹状溝部6’を細かく形成する事によりローター3との交差回数を増やす事が出来る。その為、従来技術のものよりも離解能力を向上する事が出来る。
また、周囲凹状溝部6’を細幅(例えば、平面視で周囲凹状溝部6’の幅寸法を製紙用ストレーナ4の直径より小とする。)で形成できる分、製紙用ストレーナ4の製造コストをも軽減することができる。
また、周囲凹状溝部6’の長手方向を横断する断面形状に鋭利なエッジ部、又は、直角なコーナー部(
図2参照)を形成して、紙料をカッティングすることもできる。
【0036】
周囲凹状溝部6’は、例えば、
図10に示すように、平面視で環状に形成され、ストレーナ41の表面に周囲凹状溝部6’の内側のみならず、外側にもストレーナ孔42が複数形成されている。
その結果、ストレーナ孔42を多く設けることができ、しかも、周囲凹状溝部6’の内側のみならず、周囲凹状溝部6’の外側でも乱流が生じ、つまり、乱流領域が拡大して、紙料の離解をより促進させることができる。
【0037】
なお、本実施例においては、平面視で円[
図9(a)(b)(c)(d)参照]としたが、本願発明にあっては、これに限らず、楕円でも、矩形形状でも良く、また、
図11(a)(b)に示すように、ストレーナ孔42の周囲を直線状の凹状溝で囲んで周囲凹状溝部6’を形成しても良い。
また、周囲凹状溝部6’の溝の長手方向を横断する幅は、周囲凹状溝部6’の周囲長さより細いものとなっている。周囲凹状溝部6’の幅は、適宜の値であり、例えば、周囲凹状溝部6’の幅は、望ましくは、0.5mm〜10mm、より望ましくは、2mm前後である。
なお、周囲凹状溝部6’の幅は、ストレーナ孔42の直径より小となっているが[
図9(a)(b)(c)(d)、
図11(a)(b)、
図12参照]、本願発明は、これに限らず、
図13に示すように、周囲凹状溝部6の幅は、ストレーナ孔42の直径より大としても良い。
また、周囲凹状溝部6’は、複数形成されているため、周囲凹状溝部6’近傍で乱流が生じ、紙料の離解がより促進されることとなる。
【0038】
なお、本実施例(
図8乃至
図13)においては、製紙用ストレーナ4をパルパーに採用した場合について説明したが、本願発明の製紙用ストレーナ4は、これに限らず、未離解片、異物(金属片、石、プラスチック片)を含む製紙用原料を処理し、精選された有用繊維を得るためのスクリーン等の製紙用異物分離装置にも適用することができるものである。
製紙用異物分離装置は、回転する回転体に近接して複数の孔を有した平板状又は筒状
の分離体を設け、前記孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離するもので、回転体は
、上述した実施例で言えば、例えば、ローター3であり、平板状の分離体は、例えば、ス
トレーナ41であり、筒状の分離体は、例えば、特許第4909693号の円筒形状のス
クリーン2である。
上記分離体の前記複数の孔の周囲に上述と同様な細幅の周囲凹状溝部6’を形成し、細幅の周囲凹状溝部6’が直線状に形成されている場合、前記周囲凹状溝部の幅は、前記周囲凹状溝部の周囲の長さより細いものであり、又は、前記細幅の周囲凹状溝部が略環状に形成されている場合、前記周囲凹状溝部の幅は、前記周囲凹状溝部の略環状の長手方向の長さより細いものとしても良い。
上記の製紙用異物分離装置においても、周囲凹状溝部をローターが横切る時に乱流が生じ、多くの乱流により、紙料の離解を促進させることができ、しかも、ローターに対向する分離体の表面に複数の孔を設けると共に、前記孔の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部を複数形成するため、従来よりもローターと周囲凹状溝部との交差長を多くすると共に、周囲凹状溝部を細かく形成する事によりローターとの交差回数を増やして、離解能力を向上する事が出来る。