特許第6460741号(P6460741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6460741
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】製紙用ストレーナ及び製紙用異物分離装置
(51)【国際特許分類】
   D21D 5/04 20060101AFI20190121BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   D21D5/04
   B03B5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-236091(P2014-236091)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-37693(P2016-37693A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-160063(P2014-160063)
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202235
【氏名又は名称】相川鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【弁理士】
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】相 川 雅 紀
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0053874(US,A1)
【文献】 特開平04−308294(JP,A)
【文献】 特開昭63−275789(JP,A)
【文献】 特表平11−506505(JP,A)
【文献】 特開平06−025987(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第19719482(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B1/00−13/06
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するローターに近接して配備され、離解された紙料を篩い分けする製紙用ストレ
ーナにおいて、
前記ローターに対向するストレーナの表面に複数のストレーナ孔を設け、
前記ストレーナ孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成し、
記周囲壁は、直線状の平行な複数の第1の突起直線からなる第1の突起直線群と、
この第1の突起直線群に交差し、直線状の平行な複数の第2の突起直線からなる第2の突
起直線群とを有している
ことを特徴とする製紙用ストレーナ。
【請求項2】
回転するローターに近接して複数の孔を有した平板状又は筒状の分離体を設け、前記
孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離する製紙用異物分離装置であって、
前記分離体の前記孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成し、
記周囲壁は、直線状の平行な複数の第1の突起直線からなる第1の突起直線群と、
この第1の突起直線群に交差し、直線状の平行な複数の第2の突起直線からなる第2の突
起直線群とを有している
ことを特徴とする製紙用異物分離装置。
【請求項3】
回転するローターに近接して配備され、離解された紙料を篩い分けする製紙用ストレ
ーナにおいて、
前記ローターに対向するストレーナの表面に複数のストレーナ孔を設け、
複数の前記ストレーナ孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成するか、または、複数
の前記ストレーナ孔の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部を複数形成するものであり、
前記周囲壁は、前記周囲壁の内側のみならず、前記周囲壁の外側にも複数の前記スト
レーナ孔があり、
前記周囲凹状溝部は、前記周囲凹状溝部の内側のみならず、前記周囲凹状溝部の外側
にも複数の前記ストレーナ孔がある
ことを特徴とする製紙用ストレーナ。
【請求項4】
回転するローターに近接して複数の孔を有した平板状又は筒状の分離体を設け、前記
孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離する製紙用異物分離装置であって、
前記分離体の複数の前記孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成するか、または、前
記分離体の複数の前記孔の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部を複数形成するものであり、
前記周囲壁は、前記周囲壁の内側のみならず、前記周囲壁の外側にも複数の前記孔が
あり、
前記周囲凹状溝部は、前記周囲凹状溝部の内側のみならず、前記周囲凹状溝部の外側
にも複数の前記孔がある
ことを特徴とする製紙用異物分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用ストレーナ及び製紙用異物分離装置に係り、特に、紙料の離解が促進される製紙用ストレーナ及び製紙用異物分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するローターに近接して配備され、離解された紙料を篩分する製紙用スト
レーナとして、図7(a)(b)記載のものがある。
この製紙用ストレーナは、ローターに対向する略ドーナツ形状のストレーナ面に、略
ドーナツ形状の内周部から外周部に至る凹溝Xが複数設けられ、複数の凹溝Xの内、隣接
する凹溝Xの間に多数のストレーナ孔Yが設けられたものである(通称「デフ溝タイプ」
という。)。
また、凹溝Xの代わりに図7(C)に示す突起Zを設けたものもある(通称「カッタ
ータイプ」という。例えば、特許文献1、特許文献2記載のもの)。
上述したデフ溝タイプ、カッタータイプのパルパーの離解能力を更に上げるものとし
て、特許文献3記載の製紙用ストレーナがある(通称「丸孔溝タイプ」という。)。
この特許文献3記載の製紙用ストレーナは、ローターに対向するストレーナ面に、複
数個の凹部を大きさを異ならせて形成するとともに、多数のストレーナ孔を前記凹部を含
む全面に分散開口させて穿設したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−71989号公報
【特許文献2】特開昭62−132759号公報
【特許文献3】実用新案登録第2515808号公報の第2図参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献3記載の製紙用ストレーナでも離解能力が十分でないため、
カッティングレングス、交差回数を多く取る形状等が求められているのが実情である。
【0005】
本発明は、上記実情を考慮してなされたもので、紙料の離解が促進される製紙用ストレーナ及び製紙用異物分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の製紙用ストレーナは、回転するローターに近接して配備され、離解された紙料を篩い分けする製紙用ストレーナにおいて、前記ローターに対向するストレーナの表面に複数のストレーナ孔を設け、前記ストレーナ孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成し、前記周囲壁は、直線状の平行な複数の第1の突起直線からなる第1の突起直線群と、この第1の突起直線群に交差し、直線状の平行な複数の第2の突起直線からなる第2の突起直線群とを有しているものである。
【0007】
また、請求項2記載の製紙用異物分離装置は、回転するローターに近接して複数の孔を有した平板状又は筒状の分離体を設け、前記孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離する製紙用異物分離装置であって、前記分離体の前記孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成し、前記周囲壁は、直線状の平行な複数の第1の突起直線からなる第1の突起直線群と、この第1の突起直線群に交差し、直線状の平行な複数の第2の突起直線からなる第2の突起直線群とを有しているものである。
【0008】
また、請求項3記載の製紙用ストレーナは、回転するローターに近接して配備され、離解された紙料を篩い分けする製紙用ストレーナにおいて、前記ローターに対向するストレーナの表面に複数のストレーナ孔を設け、複数の前記ストレーナ孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成するか、または、複数の前記ストレーナ孔の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部を複数形成するものであり、前記周囲壁は、前記周囲壁の内側のみならず、前記周囲壁の外側にも複数の前記ストレーナ孔があり、前記周囲凹状溝部は、前記周囲凹状溝部の内側のみならず、前記周囲凹状溝部の外側にも複数の前記ストレーナ孔がある
また、請求項4記載の製紙用異物分離装置は、回転するローターに近接して複数の孔を有した平板状又は筒状の分離体を設け、前記孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離する製紙用異物分離装置であって、前記分離体の複数の前記孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成するか、または、前記分離体の複数の前記孔の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部を複数形成するものであり、前記周囲壁は、前記周囲壁の内側のみならず、前記周囲壁の外側にも複数の前記孔があり、前記周囲凹状溝部は、前記周囲凹状溝部の内側のみならず、前記周囲凹状溝部の外側にも複数の前記孔がある
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施例の製紙用ストレーナを採用したパルパーの概略的断面図である。
図2図2(a)は、図1の製紙用ストレーナの概略的拡大断面図であり、図2(b)は、図2(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大断面図である。
図3図3(a)は、図1の製紙用ストレーナの一部を示す概略的一部平面図であり、図3(b)は、図3(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大平面図である。
図4図4(a)は、図3(a)の製紙用ストレーナの他の実施例の概略的一部平面図であり、図4(b)は、図4(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大平面図である。
図5図5は、図4(b)の製紙用ストレーナの他の実施例の概略的一部平面図である。
図6図6は、図5の製紙用ストレーナの他の実施例の概略的一部平面図である。
図7図7(a)は、従来の製紙用ストレーナの概略的一部拡大平面図であり、図7(b)は、図7(a)のA−A線による概略的断面図であり、図7(c)は、図7(b)と異なる従来の製紙用ストレーナの概略的断面図である。
図8図8は、本発明の一実施例の製紙用ストレーナを採用したパルパーの概略的断面図である。
図9図9(a)は、図8の製紙用ストレーナの概略的拡大断面図であり、図9(b)は、図8(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大断面図であり、図9(c)は、図8(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大斜視図であり、図9(d)は、9(c)の概略的断面図である。
図10図10(a)は、図8の製紙用ストレーナの一部を示す概略的一部平面図であり、図10(b)は、図10(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大平面図である。
図11図11(a)は、図10(a)の製紙用ストレーナの他の実施例の概略的一部平面図であり、図11(b)は、図11(a)の一部を拡大して示す製紙用ストレーナの概略的一部拡大平面図である。
図12図12は、図11(b)の製紙用ストレーナの他の実施例の概略的一部平面図である。
図13図13は、図12の製紙用ストレーナの他の実施例の概略的一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施例の製紙用ストレーナを図面を参照して説明する。
図1において、1は古紙等の製紙原料(以下「紙料」という。)を離解するパルパ−
で、パルパ−1は、槽2の中で回転するロ−タ−3により、水に渦流を起こし、その作用
により離解するものである。
【0021】
離解された製紙原料中の有用繊維は、ロ−タ−3に近接して設けられた製紙用ストレ
−ナ4を通過し、排出口5より槽2の外へと導かれるようになっている。
つまり、製紙用ストレ−ナ4は、回転するロータ−3に近接して配備され、離解され
た紙料を篩い分けするものである。
【0022】
ロータ−3に対向するストレーナ41の表面には、図2に示すように、複数のストレ
ーナ孔42が設けられている。ストレーナ41は、例えば、ステンレス鋳鋼で形成され、
ストレーナ孔42の周囲を突起で囲む周囲壁6が形成されている[図3(a)(b)参照
]。
上述した製紙用ストレーナ4によれば、周囲壁6内に紙料を留まらせて、紙料を離解
させることができ、しかも、周囲壁6に紙料が衝突し、周囲壁6の近傍で乱流が生じる。
即ち、周囲壁6からもたらせれるバッフリング効果から紙料の原料濃度が高くても離
解し易くなる。
その為、高い原料濃度を通す事が出来るようになり、通過量(処理量)を増やすことが
出来る。
つまり、単位処理量が増え動力原単位が良好となり省エネ効果が期待できる。
周囲壁6により従来技術のものより原料が離解される為、ストレーナ孔42の径を小
径化する事が可能となる。
【0023】
その結果、原料がストレーナ孔42を通過する際に原料に含まれるゴミ等の不純物を
より多く除去することができ、製紙用ストレ−ナ4の精選効果が向上する。
従来技術と同量の処理量を処理する場合は、ローター3等の回転数を低速にする事が
可能となり省エネ効果が期待できる。
また、回転が遅くなった分、ローター3等の回転刃物の寿命を延ばすことが可能とな
り使用者の経済的コストを削減する事が出来る。
製紙用ストレーナ4に複数の周囲壁6があること、加えて、細幅の周囲壁6の周囲長
さを長く形成することにより、従来よりもローター3との交差長を多くする事が出来る。
また、周囲壁6を細かく形成する事によりローター3との交差回数を増やす事が出来
る。その為、従来技術のものよりも離解能力を向上する事が出来る。
また、周囲壁6を細幅(例えば、平面視で周囲壁6の幅寸法を製紙用ストレーナ4の
直径より小とする。)で形成できる分、製紙用ストレーナ4の製造コストをも軽減するこ
とができる。
また、周囲壁6の長手方向を横断する断面形状に鋭利なエッジ部、又は、直角なコー
ナー部(図2参照)を形成して、紙料をカッティングすることもできる。
【0024】
周囲壁6は、ストレーナ41より硬度が柔らかい又は同じ材料で形成されていても良
いが、望ましくは、ストレーナ41より硬度が硬い材料(例えば、タングステンカーバイ
ト)で複数形成されているのが良い。周囲壁6をストレーナ41より硬度が硬い材料で形
成するため、ローター3により送り出される紙料による損傷を防ぐことができる。
周囲壁6は、例えば、図3に示すように、平面視で環状に形成され、ストレーナ41
の表面に周囲壁6の内側のみならず、外側にもストレーナ孔42が複数形成されている。
その結果、ストレーナ孔42を多く設けることができ、しかも、周囲壁6の内側のみ
ならず、周囲壁6の外側でも乱流が生じ、つまり、乱流領域が拡大して、紙料の離解をよ
り促進させることができる。
【0025】
なお、本実施例においては、平面視で円[図3(a)(b)参照]としたが、本願発
明にあっては、これに限らず、楕円でも、矩形形状でも良く、また、図4(a)(b)に
示すように、ストレーナ孔42の周囲を直線状の突起で囲んで周囲壁6を形成しても良い

また、周囲壁6の幅は、周囲壁6の周囲長さより細いものとなっている。周囲壁6の
幅は、適宜の値であり、例えば、周囲壁6の幅は、望ましくは、0.5mm〜10mm、より望ましくは、2mm前後である。
なお、周囲壁6の幅は、ストレーナ孔42の直径より小となっているが[図3(a)
(b)、図4(a)(b)、図5参照]、本願発明は、これに限らず、図6に示すように
、周囲壁6の幅は、ストレーナ孔42の直径より大としても良い。
また、周囲壁6は、複数形成されているため、周囲壁6に紙料が衝突し、隣接する周
囲壁6の間で乱流が生じ、紙料の離解がより促進されることとなる。
【0026】
上述した実施例においては、周囲壁6で囲むストレーナ孔42は、複数としたが(図
3、図4図6参照)、本願発明にあっては、これに限らず、図5に示すように1個のス
トレーナ孔42の周囲を周囲壁6で囲むようにしても良い。
【0027】
上述した製紙用ストレーナ4は、下記のようにして製造することができる。
ストレーナ(例えば、ステンレス鋳鋼)4の表面に複数のストレーナ孔42を穿孔す
る(穿孔工程)。
この穿孔工程の後、ストレーナ孔42の周囲にストレーナ4より硬度が硬い材料(例
えば、タングステンカーバイト)をストレーナ4の表面に付着(付着は、例えば、肉盛溶
接)させて周囲壁6を複数形成(周囲壁形成工程)して、製紙用ストレーナ4を製造する
ことができる。
【0028】
上述した製紙用ストレーナの製造方法によれば、ストレーナ孔42の周囲に設ける周
囲壁6をストレーナ4より硬度が硬い材料で形成するため、ローター3により送り出され
る紙料による損傷を防ぐことができると共に、周囲壁6の近傍で乱流が生じ、紙料の離解
が促進され、しかも、周囲壁6を細幅で形成できる分、製造コストをも軽減した製紙用ス
トレーナ4を製造することができる。
【0029】
上述した製紙用ストレーナの製造方法においては、穿孔工程の後、周囲壁形成工程と
したが、本願発明にあっては、逆の構成としても、上述したと同様な効果を有する。
即ち、ストレーナ(例えば、ステンレス鋳鋼)41の表面にストレーナ41より硬度
が硬い材料(例えば、タングステンカーバイト)をストレーナ41の表面に付着(付着は
、例えば、肉盛溶接)させて細幅の周囲壁6を複数形成する(周囲壁形成工程)。
この周囲壁形成工程の後、ストレーナ41面に周囲壁6を避けて、周囲壁6の内方に
単数又は複数のストレーナ孔42を穿孔(穿孔工程)して、製紙用ストレーナ4を製造す
ることができる。
【0030】
なお、本実施例においては、製紙用ストレーナ4をパルパーに採用した場合について
説明したが、本願発明の製紙用ストレーナ4は、これに限らず、未離解片、異物(金属片
、石、プラスチック片)を含む製紙用原料を処理し、精選された有用繊維を得るためのス
クリーン等の製紙用異物分離装置にも適用することができるものである。
製紙用異物分離装置は、回転する回転体に近接して複数の孔を有した平板状又は筒状
の分離体を設け、前記孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離するもので、回転体は
、上述した実施例で言えば、例えば、ローター3であり、平板状の分離体は、例えば、ス
トレーナ41であり、筒状の分離体は、例えば、特許第4909693号の円筒形状のス
クリーン2である。
上記分離体の前記複数の孔の周囲に上述と同様な細幅の周囲壁6を形成し、細幅の周
囲壁6は、上述と同様、分離体より硬度が硬い材料で複数形成され、前記細幅の周囲壁が
直線状に形成されている場合、前記周囲壁の幅は、前記周囲壁の周囲の長さより細いもの
であり、又は、前記細幅の周囲壁が略環状に形成されている場合、前記周囲壁の幅は、前
記周囲壁の略環状の長手方向の長さより細いものとしても良い。
上記の製紙用異物分離装置においても、周囲壁内に紙料を留まらせて、紙料を離解さ
せることができ、しかも、ローターに対向する分離体の表面に複数の孔を設けると共に、
前記孔の周囲を突起で囲む周囲壁を複数形成するため、従来よりもローターと周囲壁との
交差長を多くすると共に、周囲壁を細かく形成する事によりローターとの交差回数を増や
して、離解能力を向上する事が出来る。
【0031】
上述した実施例においては、ストレーナ孔42の周囲を突起で囲む周囲壁6を単一又は複数形成するようにしたが、本願発明にあっては、これに限らず、ストレーナ孔42の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部6’を単一又は複数形成するようにしても良い。
【0032】
即ち、図8において、1は古紙等の製紙原料(以下「紙料」という。)を離解するパルパ−で、パルパ−1は、槽2の中で回転するロ−タ−3により、水に渦流を起こし、その作用により離解するものである。
【0033】
離解された製紙原料中の有用繊維は、ロ−タ−3に近接して設けられた製紙用ストレ
−ナ4を通過し、排出口5より槽2の外へと導かれるようになっている。
つまり、製紙用ストレ−ナ4は、回転するロータ−3に近接して配備され、離解され
た紙料を篩い分けするものである。
【0034】
ロータ−3に対向するストレーナ41の表面には、図9に示すように、複数のストレ
ーナ孔42が設けられている。ストレーナ41は、例えば、ステンレス鋳鋼で形成され、
ストレーナ孔42の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部6’が形成されている[図9(a)(b)(c)(d)参照]。
上述した製紙用ストレーナ4によれば、周囲凹状溝部6’をローター3が横切る時に周囲凹状溝部6’近傍で乱流が生じ、多くの乱流により、紙料の離解を促進させることができ、しかも、ローター3に対向するストレーナ41の表面に複数のストレーナ孔42を設けると共に、ストレーナ孔42の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部6’を複数形成するため、従来よりもローター3と周囲凹状溝部6’との交差長を多くすると共に、周囲凹状溝部6’を細かく形成する事によりローター3との交差回数を増やして、離解能力を向上する事が出来る。
即ち、周囲凹状溝部6’からもたらせれるバッフリング効果から紙料の原料濃度が高くても離解し易くなる。
その為、高い原料濃度を通す事が出来るようになり、通過量(処理量)を増やすことが
出来る。
つまり、単位処理量が増え動力原単位が良好となり省エネ効果が期待できる。
周囲凹状溝部6’により従来技術のものより原料が離解される為、ストレーナ孔42の径を小径化する事が可能となる。
【0035】
その結果、原料がストレーナ孔42を通過する際に原料に含まれるゴミ等の不純物を
より多く除去することができ、製紙用ストレ−ナ4の精選効果が向上する。
従来技術と同量の処理量を処理する場合は、ローター3等の回転数を低速にする事が
可能となり省エネ効果が期待できる。
また、回転が遅くなった分、ローター3等の回転刃物の寿命を延ばすことが可能とな
り使用者の経済的コストを削減する事が出来る。
製紙用ストレーナ4に複数の周囲凹状溝部6’があること、加えて、細幅の周囲凹状溝部6’の周囲長さを長く形成することにより、従来よりもローター3との交差長を多くする事が出来る。
また、周囲凹状溝部6’を細かく形成する事によりローター3との交差回数を増やす事が出来る。その為、従来技術のものよりも離解能力を向上する事が出来る。
また、周囲凹状溝部6’を細幅(例えば、平面視で周囲凹状溝部6’の幅寸法を製紙用ストレーナ4の直径より小とする。)で形成できる分、製紙用ストレーナ4の製造コストをも軽減することができる。
また、周囲凹状溝部6’の長手方向を横断する断面形状に鋭利なエッジ部、又は、直角なコーナー部(図2参照)を形成して、紙料をカッティングすることもできる。
【0036】
周囲凹状溝部6’は、例えば、図10に示すように、平面視で環状に形成され、ストレーナ41の表面に周囲凹状溝部6’の内側のみならず、外側にもストレーナ孔42が複数形成されている。
その結果、ストレーナ孔42を多く設けることができ、しかも、周囲凹状溝部6’の内側のみならず、周囲凹状溝部6’の外側でも乱流が生じ、つまり、乱流領域が拡大して、紙料の離解をより促進させることができる。
【0037】
なお、本実施例においては、平面視で円[図9(a)(b)(c)(d)参照]としたが、本願発明にあっては、これに限らず、楕円でも、矩形形状でも良く、また、図11(a)(b)に示すように、ストレーナ孔42の周囲を直線状の凹状溝で囲んで周囲凹状溝部6’を形成しても良い。
また、周囲凹状溝部6’の溝の長手方向を横断する幅は、周囲凹状溝部6’の周囲長さより細いものとなっている。周囲凹状溝部6’の幅は、適宜の値であり、例えば、周囲凹状溝部6’の幅は、望ましくは、0.5mm〜10mm、より望ましくは、2mm前後である。
なお、周囲凹状溝部6’の幅は、ストレーナ孔42の直径より小となっているが[図9(a)(b)(c)(d)、図11(a)(b)、図12参照]、本願発明は、これに限らず、図13に示すように、周囲凹状溝部6の幅は、ストレーナ孔42の直径より大としても良い。
また、周囲凹状溝部6’は、複数形成されているため、周囲凹状溝部6’近傍で乱流が生じ、紙料の離解がより促進されることとなる。
【0038】
なお、本実施例(図8乃至図13)においては、製紙用ストレーナ4をパルパーに採用した場合について説明したが、本願発明の製紙用ストレーナ4は、これに限らず、未離解片、異物(金属片、石、プラスチック片)を含む製紙用原料を処理し、精選された有用繊維を得るためのスクリーン等の製紙用異物分離装置にも適用することができるものである。
製紙用異物分離装置は、回転する回転体に近接して複数の孔を有した平板状又は筒状
の分離体を設け、前記孔を通過する紙料と通過しない異物とに分離するもので、回転体は
、上述した実施例で言えば、例えば、ローター3であり、平板状の分離体は、例えば、ス
トレーナ41であり、筒状の分離体は、例えば、特許第4909693号の円筒形状のス
クリーン2である。
上記分離体の前記複数の孔の周囲に上述と同様な細幅の周囲凹状溝部6’を形成し、細幅の周囲凹状溝部6’が直線状に形成されている場合、前記周囲凹状溝部の幅は、前記周囲凹状溝部の周囲の長さより細いものであり、又は、前記細幅の周囲凹状溝部が略環状に形成されている場合、前記周囲凹状溝部の幅は、前記周囲凹状溝部の略環状の長手方向の長さより細いものとしても良い。
上記の製紙用異物分離装置においても、周囲凹状溝部をローターが横切る時に乱流が生じ、多くの乱流により、紙料の離解を促進させることができ、しかも、ローターに対向する分離体の表面に複数の孔を設けると共に、前記孔の周囲を凹状溝で囲む周囲凹状溝部を複数形成するため、従来よりもローターと周囲凹状溝部との交差長を多くすると共に、周囲凹状溝部を細かく形成する事によりローターとの交差回数を増やして、離解能力を向上する事が出来る。
【符号の説明】
【0039】
3 ローター
4 製紙用ストレーナ
41 ストレーナ
42 ストレーナ孔
6 周囲壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12
図13