(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような医療用デバイスでは、バスケットを構成するワイヤ間の隙間が大きいため、バスケット内に複数の結石片を取り込んだ後にバスケットを収縮させる際に、結石片がワイヤ間の隙間からこぼれやすい。このため、一度に複数の結石片を除去することが困難であり、煩雑な操作を要する。
【0006】
一方、結石片のこぼれを抑制するために、バスケットを特殊な形状(例えば、網目状)に形成することが考えられる。しかしながら、このような特殊形状のバスケットは、尿管の結石除去には有効であるが、腎杯の結石除去に対しては必ずしも適した形状になっているとはいえない。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、バスケット内からの対象物の抜けを抑制することで生体内から一度に複数個の対象物を除去でき、且つ、構造が異なる生体組織内の対象物に対して同一デバイスで効率よく対処することができる医療用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の医療用デバイスは、ハンドルと、前記ハンドルから延出し、生体管腔内に挿入される部分を有する長尺なシースと、前記シース内で収縮し、前記シースからの露出に伴って拡張する処置部と、を備え、前記処置部は、周方向に複数並設された第1脚部を有する第1バスケットと、周方向に複数並設され且つ前記複数の第1脚部とは周方向にずれて配置された複数の第2脚部を有する第2バスケットとを有し、前記第1バスケット及び前記第2バスケットの一方は、前記第1バスケット及び前記第2バスケットの他方が前記シースの前方で拡張しているとき前記シース内に収納可能であるとともに、前記他方とともに前記シースの前方で拡張可能である、ことを特徴とする。
【0009】
上記のように構成された医療用デバイスによれば、比較的大きい対象物を採取する場合には、バスケットを1つだけ使用することにより、処置部内に対象物を容易且つ簡単に取り込むことができる。一方、比較的小さい対象物を複数個採取する場合には、バスケットを2つ使用して、処置部を構成する脚部間の周方向の隙間を小さくすることにより、処置部内に取り込んだ複数の小さい対象物のこぼれを抑制することができる。また、医療用デバイスは、対象物を回収しようとする生体組織内の場所に応じて、バスケットを1つ使用する形態と、バスケットを2つ使用する形態とから、その場所での対象物の回収に適した方を選択することができる。従って、本発明の医療用デバイスによれば、効率的に治療を行うことができる。
【0010】
上記の医療用デバイスにおいて、前記ハンドルは、第1切替位置と第2切替位置とに選択的に切替可能な切替部を有し、前記切替部が前記第1切替位置に設定されている状態で、前記処置部を拡張操作すると、前記第1バスケット及び前記第2バスケットの前記他方のみが前記シースの前方で拡張し、前記切替部が前記第2切替位置に設定されている状態で、前記処置部を拡張操作すると、前記第1バスケット及び前記第2バスケットの両方が前記シースの前方で拡張してもよい。
【0011】
この構成により、ハンドルに設けられた切替部を切替操作することで、バスケットを1つ使用する形態と、バスケットを2つ使用する形態のいずれか一方に簡単に設定することができる。
【0012】
上記の医療用デバイスにおいて、前記シースに沿って前記第1バスケットから前記ハンドルまで延在する第1シャフトと、前記第1シャフト内に挿通され、前記シースに沿って前記第2バスケットから前記ハンドルまで延在する第2シャフトと、を備え、前記ハンドルは、把持部と、前記把持部に対して軸方向にスライド可能であり前記シースに連結されたスライド体とを有し、前記切替部は、前記第1切替位置に設定されている状態で、前記第2シャフトと前記スライド体との軸方向の相対移動を規制し且つ前記第2シャフトと前記把持部との軸方向の相対移動を許容し、前記第2切替位置に設定されている状態で、前記第2シャフトと前記把持部との軸方向の相対移動を規制し且つ前記第2シャフトと前記スライド体との軸方向の相対移動を許容してもよい。
【0013】
この構成により、切替部が第1切替位置に設定されている状態では、シースの位置に関わらず第2バスケットは常にシース内に収容されており、一方、第1バスケットはシースの後退時にシースから露出して拡張する、という機構を簡易に構築することができる。
【0014】
上記の医療用デバイスにおいて、前記ハンドルは、前記把持部内に配置され、前記第1シャフトに連結され、前記把持部に対して固定された第1シャフト基部と、前記第1シャフト基部内に配置され、前記第2シャフトに連結され、前記把持部に対して軸方向に変位可能な第2シャフト基部と、を有し、前記切替部は、前記第2シャフト基部に回動可能に支持されるとともに、前記把持部の外周面から突出し、前記把持部は、前記把持部に対する前記切替部の軸方向の相対移動を許容する第1軸方向路と、前記第1軸方向路に連通するとともに前記切替部に係合して前記把持部に対する前記切替部の軸方向の相対移動を規制する第1周方向路とを有し、前記スライド体は、前記スライド体に対する前記切替部の軸方向の相対移動を許容する第2軸方向路と、前記第2軸方向路に連通するとともに前記切替部に係合して前記スライド体に対する前記切替部の軸方向の相対移動を規制する第2周方向路とを有し、前記第1シャフト基部は、前記第1シャフト基部に対する前記切替部の軸方向の相対移動を許容する第3軸方向路と、前記第3軸方向路に連通する第3周方向路とを有してもよい。
【0015】
この構成によれば、第1シャフト基部内に配置された第2シャフト基部に切替部が回動可能に支持されるとともに、切替部を受容する軸方向路と周方向路が、把持部、スライド体及び第1シャフト基部の各々に形成されている。従って、切替部の位置によって、第1バスケットのみを使用する1バスケット使用形態と、第1バスケットと第2バスケットの両方を使用する2バスケット使用形態とを切り替える構成を確実に構築することができる。
【0016】
上記の医療用デバイスにおいて、前記シースに沿って前記第1バスケットから前記ハンドルまで延在する第1シャフトと、前記第1シャフト内に挿通され、前記シースに沿って前記第2バスケットから前記ハンドルまで延在する第2シャフトと、を備え、前記ハンドルは、把持部と、前記把持部に対して軸方向にスライド可能であり前記シースに連結されたスライド体とを有し、前記切替部は、前記第1切替位置に設定されている状態で、前記第1シャフトと前記スライド体との軸方向の相対移動を規制し且つ前記第1シャフトと前記把持部との軸方向の相対移動を許容し、前記第2切替位置に設定されている状態で、前記第1シャフトと前記把持部との軸方向の相対移動を規制し且つ前記第1シャフトと前記スライド体との軸方向の相対移動を許容してもよい。
【0017】
この構成により、切替部が第1切替位置に設定されている状態では、シースの位置に関わらず第1バスケットは常にシース内に収容されており、一方、第2バスケットはシースの後退時にシースから露出して拡張する、という機構を簡易に構築することができる。
【0018】
上記の医療用デバイスにおいて、前記ハンドルは、前記把持部内に配置され、前記第1シャフトに連結され、前記把持部に対して軸方向に変位可能な第1シャフト基部を有し、前記切替部は、前記第1シャフト基部に回動可能に支持されるとともに、前記把持部の外周面から突出し、前記把持部は、前記把持部に対する前記切替部の軸方向の相対移動を許容する第1軸方向路と、前記第1軸方向路に連通するとともに前記切替部に係合して前記把持部に対する前記切替部の軸方向の相対移動を規制する第1周方向路とを有し、前記スライド体は、前記スライド体に対する前記切替部の軸方向の相対移動を許容する第2軸方向路と、前記第2軸方向路に連通するとともに前記切替部に係合して前記スライド体に対する前記切替部の軸方向の相対移動を規制する第2周方向路とを有してもよい。
【0019】
この構成によれば、切替部を受容する軸方向路と周方向路が、把持部及びスライド体の各々に形成されているので、切替部の位置によって、第2バスケットのみを使用する1バスケット使用形態と、第1バスケットと第2バスケットの両方を使用する2バスケット使用形態とを切り替える構成を確実に構築することができる。
【0020】
上記の医療用デバイスにおいて、前記第1バスケットは、前記複数の第1脚部の先端部に連結されたリングを有し、前記第2バスケットは、前記リング内を通って前記シースの前方に露出可能であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、第2バスケットのみを使用して対象物を採取する場合に、第2バスケットは、第1バスケットを構成する複数の第1脚部の先端部に連結されたリングを通ってシースの前方に露出するので、第2バスケットの拡張が第1バスケットによって妨げられることがない。従って、第2バスケットを支障なく拡張させることができる。
【0022】
上記の医療用デバイスにおいて、前記リングは、前記シースの前記先端部に係合可能であり、前記シースは、前記第2バスケットに対して前進する際に、前記リングを先端方向に押してもよい。
【0023】
上記の構成によれば、第2バスケットをシース内に収納するためにシースを前進させる際に、シースが第1バスケットのリングを先端方向に押すので、第1バスケットがシース内の好ましくない位置まで入り込んでしまうことを有効に防止することができる。
【0024】
上記の医療用デバイスにおいて、前記第1バスケットの基端部から基端方向に延伸する複数の延伸ワイヤを保持する中空筒状の保持部材と、前記保持部材とともに前記延伸ワイヤを覆い、前記シース内で前記シースに沿って前記ハンドルまで延在するカバーチューブと、を備えてもよい。
【0025】
この構成により、第1バスケットのプッシャビリティを好適に確保することができる。
【0026】
上記の医療用デバイスにおいて、前記第1バスケットの基端部から基端方向に延伸する複数の延伸ワイヤに固定され、前記シース内で前記シースに沿って延在するシャフトチューブを備え、前記複数の延伸ワイヤは、前記シャフトチューブに埋設されていてもよい。
【0027】
この構成により、部品点数の増大を抑制しつつ、第1バスケットのプッシャビリティを好適に確保することができる。
【0028】
上記の医療用デバイスにおいて、前記第1バスケットの基端部から基端方向に延伸し、前記シース内で前記シースに沿って延在する複数の延伸ワイヤを備え、前記複数の延伸ワイヤは、前記シースに沿う所定長さに渡って、密巻きコイル状に形成されたコイル部を有していてもよい。
【0029】
この構成により、部品点数の増大を抑制しつつ、第1バスケットのプッシャビリティを好適に確保することができる。
【0030】
上記の医療用デバイスにおいて、前記ハンドルに設けられ、前記処置部を拡張及び収縮させる際に指で操作する操作部と、前記処置部を収縮させるように前記操作部を操作する際に、前記処置部が所定外径になる位置でクリック感を発生させるクリック感発生機構と、を備えてもよい。
【0031】
この構成により、処置部により対象物を把持した医療用デバイスを、生体管腔内に挿入したアクセス用シースから引き出す操作を実行する前に、処置部の大きさがアクセス用シースを通過できる状態になっていることを予め確認することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の医療用デバイスによれば、バスケット内からの対象物の抜けを抑制することで生体内から一度に複数個の対象物を除去でき、且つ、構造が異なる生体組織内の対象物に対して同一デバイスで効率よく対処することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る医療用デバイスについて、いくつかの好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、医療用デバイスに関する各図において、X方向は医療用デバイス及びその構成要素の軸方向を示し、X1方向は先端方向を示し、X2方向は基端方向を示す。
【0035】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療用デバイス10A(1バスケット拡張時)の一部省略斜視図である。
図1では、理解の容易のため、医療用デバイス10Aの先端部を拡大して示している。
図2は、医療用デバイス10A(2バスケット拡張時)の一部省略斜視図である。医療用デバイス10Aは、生体管腔である尿管、腎盂、腎杯等の泌尿器系に存在する結石(対象物)を回収する医療用機器として構成される。
【0036】
なお、医療用デバイス10Aは、結石を回収するためだけでなく、様々な生体管腔の治療に適用することができる。例えば、医療用デバイス10Aが適用される生体管腔としては、泌尿器系の他に、心臓血管系、内分泌系、リンパ系、呼吸器系、消化器系等の管腔或いはその他の臓器等が挙げられる。適用可能な対象は、後述する第2実施形態に係る医療用デバイス10Bについても同様である。
【0037】
医療用デバイス10Aは、ハンドル12と、ハンドル12から延出する長尺なシース14と、シース14の先端部から露出して拡張可能な処置部16とを備える。ハンドル12は、医療用デバイス10Aの使用時に術者が把持して、処置部16の動作を操作する機構部である。ハンドル12の構成についての詳細は後述する。
【0038】
シース14は、患者の外部から治療部位(尿管内の結石の存在箇所)に到達可能な軸方向長さと、適度の可撓性を有する。このシース14は、尿管鏡(内視鏡)の内部を通して尿管内に挿入するため、尿管鏡の尿管内に挿入される部分の外径よりも十分に細径に形成される。
【0039】
処置部16は、シース14内に収納可能であるとともに、少なくとも一部がシース14の先端部から露出可能であり、シース14内では収縮し、シース14からの露出に伴って拡張する。具体的には、処置部16は、アウタバスケット18(第1バスケット)と、インナバスケット20(第2バスケット)とを有する。
【0040】
医療用デバイス10Aは、アウタバスケット18とインナバスケット20のうちアウタバスケット18のみを拡張及び収縮させる1バスケット使用形態と、アウタバスケット18とインナバスケット20の両方を拡張及び収縮させる2バスケット使用形態とを切り替えて使用可能に構成されている。
【0041】
すなわち、インナバスケット20は、1バスケット使用形態ではアウタバスケット18がシース14の前方で拡張しているときシース14内に収納可能であるとともに、2バスケット使用形態ではアウタバスケット18とともにシース14の前方で拡張可能である。
図1では、アウタバスケット18のみを拡張させた状態を示しており、
図2では、アウタバスケット18とインナバスケット20の両方を拡張させた状態を示している。
【0042】
アウタバスケット18は、周方向に複数(本実施形態では4本)配設された線状のアウタ脚部19(第1脚部)を有する。各アウタ脚部19は、弾性変形可能な材料により構成されている。従って、アウタバスケット18は、シース14内に収納されているときは収縮状態を呈し、シース14の先端から露出したときには各アウタ脚部19がそれ自体の弾性復元力によって放射状に広がって拡張状態を呈する。
【0043】
図2に示すように、インナバスケット20は、周方向に複数(本実施形態では4本)配設された線状のインナ脚部21(第2脚部)を有する。各インナ脚部21は、弾性変形可能な材料により構成されている。従って、インナバスケット20は、シース14内に収納されているときは収縮状態を呈し、シース14の先端から露出したときには各インナ脚部21がそれ自体の弾性復元力によって放射状に広がって拡張状態を呈する。
【0044】
本実施形態の場合、アウタバスケット18が拡張した状態で、4本のアウタ脚部19は、正面視で周方向に90°の角度間隔で放射状に広がる。また、インナバスケット20が拡張した状態で、4本のインナ脚部21は、周方向に正面視で90°の角度間隔で放射状に広がる。複数のアウタ脚部19は、複数のインナ脚部21とは周方向にずれて配置されている。周方向に隣接するアウタ脚部19とインナ脚部21の角度間隔は正面視で45°である。
【0045】
本実施形態の場合、元々2本のワイヤから、4本のアウタ脚部19が形成されており、同様に、元々2本のワイヤから、4本のインナ脚部21が形成されている。
【0046】
すなわち、シース14の軸線を基準として互いに反対側に位置する2本のアウタ脚部19は、元々1本のワイヤを中間部分で曲げて輪状体に形成したものであり、このように形成した2つの輪状体を正面視で90°角度をずらして配置することによって、アウタバスケット18が構成されている。従って、アウタバスケット18は、正面視で十字状を呈する。
【0047】
なお、アウタバスケット18の先端には2つの小さい輪19a、19bが設けられ、一方の輪19aが一方のワイヤに固定されるとともに他方のワイヤが挿通され、他方の輪19bが他方のワイヤに固定されるとともに一方のワイヤが挿通されている。これにより、ワイヤ同士の結合位置のずれが防止されている。
【0048】
同様に、シース14の軸線を基準として互いに反対側に位置する2本のインナ脚部21は、元々1本のワイヤを中間部分で曲げて輪状体に形成したものであり、このように形成した2つの輪状体を正面視で90°角度をずらして配置することによって、インナバスケット20が構成されている。従って、インナバスケット20は、正面視で十字状を呈する。
【0049】
なお、インナバスケット20の先端には2つの小さい輪21a、21bが設けられ、一方の輪21aが一方のワイヤに固定されるとともに他方のワイヤが挿通され、他方の輪21bが他方のワイヤに固定されるとともに一方のワイヤが挿通されている。これにより、ワイヤ同士の結合位置のずれが防止されている。
【0050】
アウタバスケット18及びインナバスケット20は、それぞれ、シース14内に収納された状態から、シース14外へ露出した状態へと移行することに伴って、弾性復元力によって自己拡張できることが必要である。そのため、アウタ脚部19及びインナ脚部21の構成材料としては、例えば、Ni−Ti系合金のような擬弾性合金(超弾性合金を含む)や、形状記憶合金等が挙げられる。
【0051】
図3は、アウタバスケット18及びインナバスケット20がシース14の先端から露出して拡張した状態における、アウタバスケット18及びインナバスケット20の基端側の一部断面側面図である。
図3に示すように、シース14内には、シース14に沿ってアウタバスケット18からハンドル12まで延在するアウタシャフト24(第1シャフト)が挿通されている。
【0052】
本実施形態の場合、アウタシャフト24は、アウタバスケット18を構成する複数のアウタ脚部19の各々の基端部から基端方向に所定長さだけ延伸した複数の延伸ワイヤ26と、複数の延伸ワイヤ26を保持する中空筒状の保持部材28と、複数の延伸ワイヤ26及び保持部材28を覆い且つハンドル12まで延在するカバーチューブ29とを有する。保持部材28はカバーチューブ29に固定されている。
【0053】
本実施形態の場合、各延伸ワイヤ26は、各アウタ脚部19から連なる同一部材である。保持部材28の外周部には、軸方向に延在する保持溝30が周方向に間隔をおいて複数形成されている。保持溝30と延伸ワイヤ26は同数である。各保持溝30に、各延伸ワイヤ26が保持されている。また、各延伸ワイヤ26の基端部には、保持部材28の基端外周部に引っ掛かる膨出部31が形成されていることにより、保持部材28からの延伸ワイヤ26の先端方向への抜け止めがなされている。
【0054】
また、アウタシャフト24内には、シース14に沿ってインナバスケット20からハンドル12まで延在するインナシャフト32が挿通されている。本実施形態の場合、インナシャフト32は、インナバスケット20を構成する複数のインナ脚部21の各々の基端部から基端方向に延伸してハンドル12まで延びる複数の延伸ワイヤ33を有する。複数の延伸ワイヤ33は保持部材28内に挿通されている。
【0055】
保持部材28よりも基端側で、複数の延伸ワイヤ33の周囲には結束ワイヤ34が螺旋状に巻回されており、結束ワイヤ34により複数の延伸ワイヤ33がまとめて束ねられている。これにより、インナシャフト32及びインナバスケット20のプッシャビリティが確保されている。
【0056】
図4は、ハンドル12の縦断面図である。ハンドル12は、術者が握るための把持部36と、把持部36に対して軸方向にスライド可能なスライド体38と、スライド体38に設けられた操作部40(操作子)と、把持部36内に設けられたアウタシャフト基部42と、アウタシャフト基部42内に設けられたインナシャフト基部44と、インナシャフト基部44に回動可能に支持された切替部45とを有する。
【0057】
図6に示すように、把持部36は、軸方向に貫通する内腔36aを有する中空筒状に形成されており、その基端部は蓋部材46で閉じられている。把持部36の上部には、軸方向に延びる長孔47(第1軸方向路)と、この長孔47の中間部分から周方向に延びる切欠状の係合溝48(第1周方向路)とが形成されている。
図4に示すように、長孔47は、操作部40及び切替部45を受容するとともに、これらの軸方向移動を許容する。
図6において、係合溝48は、把持部36の側部で終端しており、切替部45を受容するとともに、切替部45に係合可能である。
【0058】
また、
図6に示すように、把持部36の外周面における長孔47の両側には、長孔47に沿って軸方向に延びる凸状の案内座49が形成されている。各案内座49の上面において、長孔47の先端と係合溝48との間の位置には、係合凹部50が設けられている。把持部36の内周面には、軸方向に延びる回転防止溝51が形成されている。
【0059】
図4に示すように、スライド体38は、把持部36にスライド可能に支持されたスライド筒52と、スライド筒52の先端部に固定された第1耐キンクチューブ53と、この第1耐キンクチューブ53の先端部に固定された第2耐キンクチューブ54とを有する。
【0060】
図7に示すように、スライド筒52は、軸方向に貫通した内腔52aを有する中空筒状に形成されており、その側部には、軸方向に延びる長孔55(第2軸方向路)と、この長孔55の基端部から周方向に延びる切欠状の係合溝56(第2周方向路)とが形成されている。この係合溝56は、スライド筒52の上部で終端している。長孔55は、切替部45を受容するとともに、スライド筒52の切替部45に対する軸方向移動を許容する(
図12B参照)。係合溝56は、切替部45を受容するとともに、切替部45に係合可能である。スライド筒52の係合溝56が長孔55から延びる周方向と、把持部36の係合溝48が長孔47から延びる周方向は、互いに逆方向である。
【0061】
また、
図7において、スライド筒52の外周面には、軸方向に延びる回転防止用リブ57が形成されている。この回転防止用リブ57が、把持部36に設けられた回転防止溝51(
図6)に挿入されることにより、把持部36に対するスライド筒52の回転が防止されている。
【0062】
第1耐キンクチューブ53及び第2耐キンクチューブ54は、シース14とスライド筒52との間に介在して、医療用デバイス10Aの使用においてシース14を押し込む際のシース14の折れ曲がりを抑制するための部材である。第2耐キンクチューブ54は、第1耐キンクチューブ53よりも細径に形成されており、その内側にシース14の基端部が固定されている。
【0063】
操作部40は、スライド筒52の上部に固定されており、把持部36の長孔47を介して把持部36から上方に突出している(
図4参照)。操作部40の上面には、スライド筒52側に向かって弧状に凹む指当て面40aが形成されており、これにより、ユーザによる操作部40の押し引き操作が容易となっている。
【0064】
この医療用デバイス10Aでは、操作部40が把持部36の長孔47の先端側に位置する状態(
図11A及び
図12A)では、スライド体38を介して操作部40に連結されたシース14は進出位置に位置し、アウタバスケット18及びインナバスケット20は両方ともシース14内に収納されて収縮状態を呈する。一方、この状態から操作部40を把持部36に対して基端方向に移動させると、スライド体38を介して操作部40に連結されたシース14は後退移動する。そして、シース14の後退移動に伴って、シース14の前方で処置部16が拡張する。このとき、アウタバスケット18のみが拡張するか、アウタバスケット18とインナバスケット20の両方が拡張するかは、切替部45の設定状態(切替位置)によって決まる。
【0065】
図5に示すように、操作部40の、案内座49に対向する部分には、案内座49側に突出する係合凸部58が形成されている。係合凸部58は、案内座49に形成された係合凹部50に係合可能である。係合凸部58と係合凹部50は、処置部16を収縮させるように操作部40を操作する際に、処置部16が所定外径になる位置でクリック感を発生させるクリック感発生機構60を構成している。
【0066】
処置部16により結石片を把持した医療用デバイス10Aを12Frサイズの尿管アクセスシースから引き出すためには、結石片を把持した処置部16の外径を4mm未満にする必要がある。そこで、医療用デバイス10Aでは、処置部16により結石片を把持した医療用デバイス10Aを尿管アクセスシースから引き出す操作を実行する前に、処置部16の大きさが尿管アクセスシースを通過できる状態になっていることを予め確認するために、処置部16の外径が4mm未満になる位置でクリック感が発生するように、係合凸部58と係合凹部50の位置関係が設定されている。
【0067】
すなわち、結石片を把持するために操作部40を先端方向に押す際、係合凸部58と係合凹部50との係合によってクリック感が発生した場合、クリック感発生位置よりも操作部40が先端側にあれば、結石片を把持した処置部16が尿管アクセスシースを通過できることを意味する。これにより、医療用デバイス10Aを尿管アクセスシースから引き出す操作を効率的に行うことができる。
【0068】
図8に示すように、アウタシャフト基部42は、中空筒状に形成されている。アウタシャフト基部42の先端部にアウタシャフト24が固定されている。アウタシャフト基部42の基端部は、蓋部材46に固定されている(
図4)。従って、アウタシャフト基部42は、蓋部材46を介して把持部36に固定されており、把持部36に対する軸方向変位及び回転が阻止されている。
【0069】
アウタシャフト基部42の上部には、軸方向に延びる長孔62(第3軸方向路)と、この長孔62の先端部から周方向に延びる切欠状の係合溝63(第3周方向路)とが形成されている。長孔62は、切替部45を受容するとともに、切替部45の軸方向移動を許容する。係合溝63は、切替部45を受容するとともに、切替部45に係合可能である。アウタシャフト基部42の係合溝63が長孔62から延びる周方向と、把持部36の係合溝48が長孔47から延びる周方向は、同じ方向である。
【0070】
図4において、インナシャフト基部44は、アウタシャフト基部42の内側でアウタシャフト基部42に対して軸方向にスライド可能である。インナシャフト32は、インナシャフト基部44に固定されている。本実施形態の場合、インナシャフト32は、インナシャフト基部44内に挿通されており、その基端部において、インナシャフト基部44に固定されている。
【0071】
図9及び
図10に示すように、インナシャフト基部44の外周部には、アウタシャフト基部42に対する径方向のガタツキを防止するリブ64が設けられている。インナシャフト基部44がアウタシャフト基部42に対して前進位置に位置している場合、インナシャフト基部44のリブ64の先端部がアウタシャフト基部42の先端側内周部に設けられた溝に入り込むことで、アウタシャフト基部42に対するインナシャフト基部44の回転が防止される。
【0072】
また、インナシャフト基部44には、インナシャフト32を補強する補強チューブ66が固定されている。補強チューブ66は、インナシャフト基部44から先端方向に突出しており、アウタシャフト基部42内でインナシャフト32を部分的に覆っている。
【0073】
切替部45は、処置部16の拡張操作に伴って第1バスケットのみをシース14の前方で拡張させる第1切替位置(
図11A参照)と、処置部16の拡張操作に伴ってアウタバスケット18及びインナバスケット20の両方をシース14の前方で拡張させる第2切替位置(
図12A参照)とに選択的に切替可能である。切替部45は、第1切替位置においてスライド体38に係合し、第2切替位置において把持部36に係合する。
【0074】
本実施形態の場合、切替部45は、インナシャフト基部44に対して、インナシャフト基部44の軸線を中心に回転可能に取り付けられており、把持部36の外周面から外方に突出している。具体的には、
図9及び
図10に示すように、切替部45は、指を当てる操作タブ68と、インナシャフト基部44に対して回転可能に接続する接続部70とを有する。接続部70は、C字状に形成されており、リブ64を切り欠いた箇所64a(
図10参照)を横断するように、インナシャフト基部44を部分的に囲んでいる。これにより、切替部45は、インナシャフト基部44に対して、軸方向移動が阻止され且つ回転が許容されている。
【0075】
本実施形態に係る医療用デバイス10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。
【0076】
医療用デバイス10Aは、例えば、経尿道的尿管砕石術に使用される。経尿道的尿管砕石術において、術者は、患者に麻酔をした後、尿管アクセスシースを尿管内に挿入する。次に、尿管鏡(内視鏡)を尿管アクセスシース内に挿入し、回収対象の結石を確認する。次に、尿管鏡のワーキングチャネル(挿通ルーメン)からレーザーファイバーを挿入して、結石を破砕する。このとき、結石は、例えば、数個から数十個の結石片に破砕される。なお、レーザーファイバーに代えて、他の結石破砕デバイス(鉗子、電気水圧衝撃波砕石装置等)により結石を破砕してもよい。
【0077】
次に、尿管鏡からレーザーファイバーを抜去し、代わりに、医療用デバイス10Aを尿管鏡のワーキングチャネルに挿入する。尿管鏡への挿入に際しては、医療用デバイス10Aは、予め、操作部40を把持部36の長孔47の先端側に位置させて、シース14を進出位置にしておくことにより、シース14内でアウタバスケット18及びインナバスケット20を収縮させた状態にしておく。そして、医療用デバイス10Aを尿管内に進入させ、医療用デバイス10Aの先端部を結石片の近傍まで到達させる。
【0078】
ここで、大きい結石片を回収(除去)する場合には、
図11Aに示すように、切替部45を第1切替位置に設定する。切替部45が第1切替位置に設定されている状態では、切替部45は、スライド筒52の係合溝56内に配置され且つ把持部36の係合溝48からは離脱している。このため、インナシャフト32とスライド体38との軸方向の相対移動が規制され、且つインナシャフト32と把持部36との軸方向の相対移動が許容されている。
【0079】
従って、操作部40を指で操作して基端方向に後退移動させると、
図11Bのように、シース14及びインナバスケット20はアウタバスケット18に対して一体的に後退する。このとき、
図1のように、アウタバスケット18はシース14からの露出に伴って拡張する一方、シース14と一緒に後退するインナバスケット20はシース14内に収納されたままである。結果として、アウタバスケット18のみが拡張する。
【0080】
そして、医療用デバイス10Aを操作して、アウタ脚部19間の隙間を介して、アウタバスケット18内に結石片を取り込む。この場合、使用するバスケットは、アウタバスケット18のみであり、脚部間の隙間が大きいため、大きな結石片を容易に取り込むことができる。結石片をアウタバスケット18内に取り込んだら、次に、術者は、操作部40を先端方向に押し、シース14をアウタバスケット18に対して前進させる。そうすると、アウタバスケット18が縮径を開始して結石片を掴む。次に、アウタバスケット18で結石片を掴んだ状態で、医療用デバイス10Aを尿管鏡ごと尿管アクセスシースから引き抜く。
【0081】
一方、小さい結石片を複数個回収(除去)する場合には、
図12Aに示すように、切替部45を第2切替位置に設定する。切替部45が第2切替位置に設定されている状態では、切替部45は、スライド筒52の係合溝56から離脱し且つ把持部36の係合溝48内に位置している。このため、インナシャフト32とスライド体38との軸方向の相対移動が許容され、且つインナシャフト32と把持部36との軸方向の相対移動が阻止されている。
【0082】
従って、操作部40を指で操作して基端方向に後退移動させると、
図12Bのように、シース14はアウタバスケット18及びインナバスケット20に対して後退する。このとき、
図2のように、アウタバスケット18及びインナバスケット20の両方がシース14からの露出に伴って拡張する。
【0083】
そして、医療用デバイス10Aを操作して、アウタ脚部19とインナ脚部21との間の隙間を介して、アウタバスケット18及びインナバスケット20内に複数個の結石片を取り込む。次に、術者は、操作部40を先端方向に押し、シース14をアウタバスケット18及びインナバスケット20に対して前進させる。そうすると、アウタバスケット18及びインナバスケット20の両方が縮径を開始して複数個の結石片を掴む。このとき、アウタバスケット18のみを使用する場合と比較して、使用する脚部の本数は2倍となっているため、結石片のこぼれが抑制され、複数個の結石片を掴んだ状態を容易に維持できる。次に、アウタバスケット18及びインナバスケット20で複数個の結石片を掴んだ状態で、医療用デバイス10Aを尿管鏡ごと尿管アクセスシースから引き抜く。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る医療用デバイス10Aによれば、大きい結石片を回収する場合には、バスケットを1つのみ(アウタバスケット18のみ)使用することにより、処置部16内に結石片を容易且つ簡単に取り込むことができる。一方、比較的小さい結石片を複数個回収する場合には、2つのバスケット(アウタバスケット18及びインナバスケット20)を使用して、処置部16を構成する脚部の本数を増やすことにより、処置部16内に取り込んだ複数の小さい結石片のこぼれを抑制することができる。よって、一度に複数個の結石片を容易に回収し、効率的に治療を行うことができる。
【0085】
また、医療用デバイス10Aは、結石を回収しようとする生体組織内の場所(尿管や腎杯)に応じて、アウタバスケット18のみを使用する1バスケット使用形態と、アウタバスケット18とインナバスケット20の両方を使用する2バスケット使用形態とから、その場所での結石の回収に適した方を選択することにより、効率的に治療を行うことができる。
【0086】
本実施形態の場合、ハンドル12に設けられた切替部45を切替操作することで、1バスケット使用形態と、2バスケット使用形態のいずれか一方に簡単に設定することができる。
【0087】
本実施形態の場合、切替部45は、第1切替位置に設定されている状態で、インナシャフト32とスライド体38との軸方向の相対移動を規制し且つインナシャフト32と把持部36との軸方向の相対移動を許容し、第2切替位置に設定されている状態で、インナシャフト32と把持部36との軸方向の相対移動を規制し且つインナシャフト32とスライド体38との軸方向の相対移動を許容する。この構成により、切替部45が第1切替位置に設定されている状態では、シース14の位置に関わらずインナバスケット20は常にシース14内に収容されており、一方、アウタバスケット18はシース14の後退時にシース14から露出して拡張する、という機構を簡易に構築することができる。
【0088】
本実施形態の場合、切替部45は、第1切替位置においてスライド体38に係合することにより、インナシャフト32とシース14との軸方向の相対移動を規制するので、確実にアウタバスケット18のみを拡張及び収縮させることができる。また、切替部45は、第2切替位置において把持部36に係合することにより、インナシャフト32と把持部36との軸方向の相対移動を規制するので、確実にアウタバスケット18とインナバスケット20の両方を拡張及び収縮させることができる。
【0089】
[第2実施形態]
図13は、本発明の第2実施形態に係る医療用デバイス10Bの一部省略斜視図である。
図13では、理解の容易のため、医療用デバイス10Bの先端部を拡大して示している。なお、第2実施形態に係る医療用デバイス10Bにおいて、第1実施形態に係る医療用デバイス10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0090】
医療用デバイス10Bは、ハンドル72と、ハンドル72から延出する長尺なシース14と、シース14の先端部から露出して拡張可能な処置部74とを備える。本実施形態に係る医療用デバイス10Bのシース14は、第1実施形態に係る医療用デバイス10Aのシース14と同様に構成されている。
【0091】
処置部74は、シース14内に収納可能であるとともに、少なくとも一部がシース14の先端部から露出可能であり、シース14内では収縮し、シース14からの露出に伴って拡張する。具体的には、処置部74は、アウタバスケット76(第1バスケット)と、インナバスケット78(第2バスケット)とを有する。
【0092】
医療用デバイス10Bは、アウタバスケット76とインナバスケット78のうちインナバスケット78のみを拡張及び収縮させる1バスケット使用形態と、アウタバスケット76とインナバスケット78の両方を拡張及び収縮させる2バスケット使用形態とを切り替えて使用可能に構成されている。
【0093】
すなわち、アウタバスケット76は、1バスケット使用形態ではインナバスケット78がシース14の前方で拡張しているときシース14内に収納可能であるとともに、2バスケット使用形態ではインナバスケット78とともにシース14の前方で拡張可能である。
図13では、インナバスケット78のみを拡張させた状態を示している。
【0094】
図15に示すように、アウタバスケット76は、周方向に複数(本実施形態では4本)配設された線状のアウタ脚部77(第1脚部)を有する。各アウタ脚部77は、弾性変形可能な材料により構成されている。従って、アウタバスケット76は、シース14内に収納されているときは収縮状態を呈し、シース14の先端から露出したときには各アウタ脚部77がそれ自体の弾性復元力によって放射状に広がって拡張状態を呈する。
【0095】
図15及び
図16に示すように、アウタバスケット76は、複数のアウタ脚部77の先端部に連結されたリング80を有する。リング80の外形は、シース14の先端開口の内径よりも大きいため、リング80は、シース14の先端部に係合可能である。シース14は、インナバスケット78に対して前進する際に、リング80を先端方向に押す。なお、
図16では、アウタバスケット76及びインナバスケット78はシース14内に収納され、収縮状態を呈している。
【0096】
図14に示すように、インナバスケット78は、周方向に複数(本実施形態では4本)配設された線状のインナ脚部79(第2脚部)を有する。各インナ脚部79は、弾性変形可能な材料により構成されている。従って、インナバスケット78は、シース14内に収納されているときは収縮状態を呈し、シース14の先端から露出したときには各インナ脚部79がそれ自体の弾性復元力によって放射状に広がって拡張状態を呈する。インナバスケット78は、アウタバスケット76のリング80内を通ってシース14の前方に露出可能である。
【0097】
本実施形態の場合、アウタバスケット76が拡張した状態で、4本のアウタ脚部77は、正面視で周方向に90°の角度間隔で放射状に広がる。また、インナバスケット78が拡張した状態で、4本のインナ脚部79は、正面視で周方向に90°の角度間隔で放射状に広がる。複数のアウタ脚部77は、複数のインナ脚部79とは周方向にずれて配置されている。周方向に隣接するアウタ脚部77とインナ脚部79の角度間隔は正面視で45°である。
【0098】
シース14内には、シース14に沿ってアウタバスケット76からハンドル72まで延在するアウタシャフト24(
図17参照)が挿通されている。アウタシャフト24は、第1実施形態に係る医療用デバイス10Aのアウタシャフト24(
図4参照)と同様に構成されている。アウタシャフト24内には、シース14に沿ってインナバスケット78からハンドル72まで延在するインナシャフト32a(
図17参照)が挿通されている。なお、
図17において、インナシャフト32aは、簡略的に1本の線状部材として示されているが、第1実施形態に係る医療用デバイス10Aのインナシャフト32と同様に、インナバスケット78を構成する複数のインナ脚部79の基端部から基端方向に延出する複数の延伸ワイヤ81からなる。
【0099】
図17に示すように、ハンドル72は、術者が握るための把持部36と、把持部36に対して軸方向にスライド可能なスライド体38と、スライド体38に設けられた操作部40(操作子)と、把持部36内に設けられたアウタシャフト基部82と、アウタシャフト基部82に回動可能に支持された切替部84とを有する。医療用デバイス10Bの把持部36及びスライド体38は、それぞれ、第1実施形態に係る医療用デバイス10Aの把持部36及びスライド体38と同様に構成されている。
【0100】
この医療用デバイス10Bでは、操作部40が把持部36の長孔47の先端側に位置する状態(
図19A及び
図20A)では、スライド体38を介して操作部40に連結されたシース14は進出位置に位置し、アウタバスケット76及びインナバスケット78は両方ともシース14内に収納されて収縮状態を呈する(
図16)。一方、この状態から操作部40を把持部36に対して基端方向に後退移動させると、スライド体38を介して操作部40に連結されたシース14が後退移動する。そして、シース14の後退移動に伴って、シース14の前方で処置部74が拡張する。このとき、インナバスケット78のみが拡張するか、アウタバスケット76とインナバスケット78の両方が拡張するかは、切替部84の設定状態(切替位置)によって決まる。
【0101】
図17において、アウタシャフト基部82は、スライド筒52内に軸方向にスライド可能に配置されている。
図18に示すように、アウタシャフト基部82の外周部には、軸方向に間隔をおいて、スライド筒52に対する径方向のガタツキを防止する環状リブ86が設けられている。また、アウタシャフト基部82の外周部には、軸方向に延びる軸方向リブ88が設けられている。アウタシャフト基部82がスライド筒52に対して前進位置に位置している場合、軸方向リブ88の先端部がスライド筒52の先端側内周部に設けられた溝に入り込むことで、スライド筒52に対するアウタシャフト基部82の回転が防止される。
【0102】
切替部84は、処置部74の拡張操作に伴ってインナバスケット78のみをシース14の前方で拡張させる第1切替位置(
図19A参照)と、処置部74の拡張操作に伴ってアウタバスケット76及びインナバスケット78の両方をシース14の前方で拡張させる第2切替位置(
図20A参照)とに選択的に切替可能である。切替部84は、第1切替位置においてスライド体38に係合し、第2切替位置において把持部36に係合する。
【0103】
本実施形態の場合、切替部84は、アウタシャフト基部82に対して、アウタシャフト基部82の軸線を中心に回転可能に取り付けられており、把持部36の外周面から外方に突出している。具体的には、切替部84は、指を当てる操作タブ90と、アウタシャフト基部82に対して回転可能に接続する接続部91とを有する。接続部91は、C字状に形成されており、軸方向リブ88を切り欠いた箇所88aを横断するように、アウタシャフト基部82を部分的に囲んでいる。これにより、切替部84は、アウタシャフト基部82に対して、軸方向移動が阻止され且つ回転が許容されている。
【0104】
図17に示すように、インナシャフト32aの基端部は、蓋部材46に固定されている。従って、インナシャフト32aは、蓋部材46を介して把持部36に固定されており、把持部36に対する軸方向変位及び回転が阻止されている。なお、インナシャフト32aを構成する複数の延伸ワイヤ81は、アウタシャフト基部82の先端付近から、蓋部材46までの範囲に亘って、結束チューブ92によって束ねられている。これにより、インナシャフト32aの剛性向上が図られ、インナバスケット78のプッシャビリティが確保されている。
【0105】
本実施形態に係る医療用デバイス10Bは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。
【0106】
この医療用デバイス10Bを例えば経尿道的尿管砕石術に使用する場合、上述した医療用デバイス10Aの使用時と同様に、尿管内で結石を破砕して多数の結石片にした後、医療用デバイス10Bを尿管鏡のワーキングチャネルに挿入する。尿管鏡への挿入に際しては、医療用デバイス10Bは、予め、操作部40を把持部36の長孔47の先端側に位置させて、シース14を進出位置にしておくことにより、
図16のように、シース14内でアウタバスケット76及びインナバスケット78を収縮させた状態にしておく。そして、医療用デバイス10Bを尿管内に進入させ、医療用デバイス10Bの先端部を結石片の近傍まで到達させる。
【0107】
ここで、大きい結石片を回収(除去)する場合には、
図19Aに示すように、切替部84を第1切替位置に設定する。切替部84が第1切替位置に設定されている状態では、切替部84は、スライド筒52の係合溝56内に配置され且つ把持部36の係合溝48からは離脱している。このため、アウタシャフト基部82とスライド体38との軸方向の相対移動が規制され、且つアウタシャフト基部82と把持部36との軸方向の相対移動が許容されている。
【0108】
従って、操作部40を指で操作して後退移動させると、
図19Bのように、シース14及びアウタバスケット76はインナバスケット78に対して一体的に後退する。このとき、
図14のように、インナバスケット78はシース14からの露出に伴って拡張する一方、アウタバスケット76はシース14内に収納されたままである。結果として、インナバスケット78のみが拡張する。
【0109】
そして、医療用デバイス10Bを操作して、インナ脚部79間の隙間を介して、インナバスケット78内に結石片を取り込む。この場合、使用するバスケットは、インナバスケット78のみであり、インナバスケット78の内外を連通する隙間(インナ脚部79間の隙間)が大きいため、大きな結石片を容易に取り込むことができる。結石片をインナバスケット78内に取り込んだら、次に、術者は、操作部40を先端方向に押し、シース14をインナバスケット78に対して前進させる。そうすると、インナバスケット78が縮径を開始して結石片を掴む。次に、インナバスケット78で結石片を掴んだ状態で、医療用デバイス10Bを尿管鏡ごと尿管アクセスシースから引き抜く。
【0110】
一方、小さい結石片を複数個回収(除去)する場合には、
図20Aに示すように、切替部84を第2切替位置に設定する。切替部84が第2切替位置に設定されている状態では、切替部84は、スライド筒52の係合溝56から離脱し且つ把持部36の係合溝48内に位置している。このため、アウタシャフト基部82とスライド体38との軸方向の相対移動が許容され、且つアウタシャフト基部82と把持部36との軸方向の相対移動が阻止されている。
【0111】
従って、操作部40を指で操作して後退移動させると、
図20Bのように、シース14はアウタバスケット76及びインナバスケット78に対して後退する。このとき、
図15のように、アウタバスケット76及びインナバスケット78の両方がシース14からの露出に伴って拡張する。
【0112】
そして、医療用デバイス10Bを操作して、アウタ脚部77とインナ脚部79との間の隙間を介して、アウタバスケット76及びインナバスケット78内に複数個の結石片を取り込む。次に、術者は、操作部40を先端方向に押し、シース14をアウタバスケット76及びインナバスケット78に対して前進させる。そうすると、アウタバスケット76及びインナバスケット78の両方が縮径を開始して複数個の結石片を掴む。このとき、アウタバスケット76のみを使用する場合と比較して、使用する脚部の本数は2倍となっているため、結石片のこぼれが抑制され、複数個の結石片を掴んだ状態を容易に維持できる。次に、アウタバスケット76及びインナバスケット78で複数個の結石片を掴んだ状態で、医療用デバイス10Bを尿管鏡ごと尿管アクセスシースから引き抜く。
【0113】
以上のように、本実施形態に係る医療用デバイス10Bによれば、大きい結石片を回収する場合には、バスケットを1つのみ(インナバスケット78のみ)使用することにより、処置部74内に結石片を容易且つ簡単に取り込むことができる。一方、比較的小さい結石片を複数個回収する場合には、2つのバスケット(アウタバスケット76及びインナバスケット78)を使用して、処置部74を構成する脚部の本数を増やすことにより、処置部74内に取り込んだ複数の小さい結石片のこぼれを抑制することができる。よって、一度に複数個の結石片を容易に回収し、効率的に治療を行うことができる。
【0114】
本実施形態の場合、切替部84は、第1切替位置に設定されている状態で、アウタシャフト24とスライド体38との軸方向の相対移動を規制し且つアウタシャフト24と把持部36との軸方向の相対移動を許容し、第2切替位置に設定されている状態で、アウタシャフト24と把持部36との軸方向の相対移動を規制し且つアウタシャフト24とスライド体38との軸方向の相対移動を許容する。この構成により、切替部84が第1切替位置に設定されている状態では、シース14の位置に関わらずアウタバスケット76は常にシース14内に収容されており、一方、インナバスケット78はシース14の後退時にシース14から露出して拡張する、という機構を簡易に構築することができる。
【0115】
本実施形態の場合、切替部84を受容する軸方向路と周方向路が、把持部36及びスライド体38の各々に形成されているので、切替部84の位置によって1バスケット使用形態と2バスケット使用形態とを切り替える構成を確実に構築することができる。
【0116】
本実施形態の場合、インナバスケット78のみを使用して結石を採取する場合に、インナバスケット78は、アウタバスケット76を構成する複数のアウタ脚部77の先端部に連結されたリング80を通ってシース14の前方に露出するので、インナバスケット78の拡張がアウタバスケット76によって妨げられることがない。従って、インナバスケット78を支障なく拡張させることができる。
【0117】
本実施形態の場合、インナバスケット78を収縮させるためにシース14を前進させる際に、シース14がアウタバスケット76のリング80を先端方向に押す。よって、アウタバスケット76がシース14内の好ましくない位置まで入り込んでしまうことを有効に防止することができる。
【0118】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0119】
上述した医療用デバイス10A、10Bにおいて、アウタシャフト24に代えて、
図21に示す第1変形例に係るアウタシャフト96が採用されてもよい。このアウタシャフト96は、アウタバスケット18(76)の基端部から基端方向に延伸しシース14内でシース14に沿って延在する複数の延伸ワイヤ98と、複数の延伸ワイヤ98に固定されシース14内でシース14に沿って延在する樹脂製のシャフトチューブ100とを有する。複数の延伸ワイヤ98はシャフトチューブ100に埋設されている。延伸ワイヤ98の基端部は、アウタシャフト基部42(82)に固定されている。
【0120】
上記のアウタシャフト96の構成により、部品点数の増大を抑制しつつ、アウタバスケット18(76)のプッシャビリティを好適に確保することができる。
【0121】
上述した医療用デバイス10A、10Bにおいて、アウタシャフト24に代えて、
図22に示す第2変形例に係るアウタシャフト102が採用されてもよい。このアウタシャフト102は、アウタバスケット18(76)の基端部から基端方向に延伸しシース14内でシース14に沿って延在する複数の延伸ワイヤ104を有する。複数の延伸ワイヤ104は、シース14に沿う所定長さに渡って、密巻きコイル状に形成されたコイル部106を有する。
【0122】
上記のアウタシャフト102の構成により、部品点数の増大を抑制しつつ、アウタバスケット18(76)のプッシャビリティを好適に確保することができる。
【0123】
上述した実施形態におけるハンドル12、72では、把持部36の外周面から突出するタブ状の切替部45、84が設けられたが、
図23に示すハンドル107のように、把持部36の軸線を中心に第1切替位置と第2切替位置とに回転可能な筒状の切替部108が把持部36の基端に設けられてもよい。
【0124】
なお、上述した実施形態において、2つのバスケットのうち最初に使用しないバスケットを予備として使用することもできる。すなわち、最初に使用する一方のバスケットの脚部(ワイヤ)が破損したり伸びて使用できなくなったりした場合、最初のバスケットを切断して破棄してから、切替部45、84、108の切替操作を行うと、収納されていた他方のバスケットを使用することができる。但し、この場合、最初のバスケットを破棄した後は、医療用デバイスを2バスケット使用形態で使用することができなくなる。
【0125】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。