特許第6460852号(P6460852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6460852
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】車両用ドラムブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/22 20060101AFI20190121BHJP
   F16D 51/22 20060101ALI20190121BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20190121BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20190121BHJP
【FI】
   F16D65/22
   F16D51/22
   F16D121:14
   F16D125:64
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-49020(P2015-49020)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-169780(P2016-169780A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 未幸
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−344833(JP,A)
【文献】 特開2001−081810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/22
F16D 51/22
F16D 121/14
F16D 125/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固設されるバックプレートの内部側に、基端部を回動中心として先端側が拡開可能な状態で一対の第1ブレーキシューと第2ブレーキシューとを対向配置し、第1ブレーキシューの先端拡開側とパーキングレバーの一端とを支軸にて回動可能に連結し、該パーキングレバーの他端に牽引手段を連結した車両用ドラムブレーキにおいて、
前記パーキングレバーは、バックプレート側に突出するとともに、バックプレート内周側端面からバックプレート外周側に向けて凸となる円弧状に形成された補強リブを備え、該補強リブ内に、作動時に応力が集中する応力集中部が設けられることを特徴とする車両用ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記第1ブレーキシューと第2ブレーキシューとは、シューホールドピンとシューホールドスプリングとによって前記バックプレートにそれぞれ弾持され、前記パーキングレバーは、前記シューホールドスプリングとの干渉を避けるために設けられた凹部に、前記応力集中部を有していることを特徴とする請求項1記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記パーキングレバーの前記支軸よりも牽引手段連結側と、前記第2ブレーキシューの先端拡開側との間には懸架部材が配置され、前記補強リブは、前記懸架部材の前記パーキングレバーと当接する第1当接点と前記第2ブレーキシューと当接する第2当接点とを繋ぐ長手方向の中心線と直交し、且つ、前記第1当接点を通る第1仮想線と、該第1仮想線と直交し、且つ、前記応力集中部を通る第2仮想線との交点を中心とした円弧状に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドラムブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪車等の車両に用いる内拡式の車両用ドラムブレーキに関し、詳しくは、ブレーキケーブル等の牽引手段によって牽引されて、バックプレートの内部側に配置された一対のブレーキシューを拡開させるパーキングレバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドラムブレーキでは、車体に固設されるバックプレートの内部側に、基端部を回動中心として先端側が拡開可能な状態で一対のブレーキシューを対向配置し、一方のブレーキシューの先端拡開側とパーキングレバーの一端とを支軸にて回動可能に連結し、パーキングレバーの他端に牽引手段を連結したものがあり、該牽引手段を牽引することによりパーキングレバーを介して一対のブレーキシューを拡開させ、ブレーキシューのライニングをブレーキドラムに摺接させて制動するものがあった(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−12763号公報
【特許文献2】特開2006−46385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1及び2に示されるパーキングレバーは、ブレーキシューの円弧に沿って略円弧状に形成され、作動時には外周側に引張り応力が、内周側に圧縮応力がそれぞれ掛かり、また、作動時に他の部品と干渉しないように、外周側には凹部が設けられていることから、応力が集中する箇所があった。このため、パーキングレバーの強度を高めることが望まれているが、パーキングレバーの断面係数を上げるために板厚を厚くすると重量が嵩むとともに、製造コストも上昇する虞があった。
【0005】
そこで本発明は、パーキングレバーの特定箇所に集中して掛かる応力を分散し、パーキングレバーの板厚を厚くすることなく強度を高めることができる車両用ドラムブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ドラムブレーキは、車体に固設されるバックプレートの内部側に、基端部を回動中心として先端側が拡開可能な状態で一対の第1ブレーキシューと第2ブレーキシューとを対向配置し、第1ブレーキシューの先端拡開側とパーキングレバーの一端とを支軸にて回動可能に連結し、該パーキングレバーの他端に牽引手段を連結した車両用ドラムブレーキにおいて、前記パーキングレバーは、バックプレート側に突出するとともに、バックプレート内周側端面からバックプレート外周側に向けて凸となる円弧状に形成された補強リブを備え、該補強リブ内に、作動時に応力が集中する応力集中部が設けられることを特徴としている。
【0007】
また、前記第1ブレーキシューと第2ブレーキシューとは、シューホールドピンとシューホールドスプリングとによって前記バックプレートにそれぞれ弾持され、前記パーキングレバーは、前記シューホールドスプリングとの干渉を避けるために設けられた凹部に、前記応力集中部を有していると好ましい。さらに、前記パーキングレバーの前記支軸よりも牽引手段連結側と、前記第2ブレーキシューの先端拡開側との間には懸架部材が配置され、前記補強リブは、前記懸架部材の前記パーキングレバーと当接する第1当接点と前記第2ブレーキシューと当接する第2当接点とを繋ぐ長手方向の中心線と直交し、且つ、前記第1当接点を通る第1仮想線と、該第1仮想線と直交し、且つ、前記応力集中部を通る第2仮想線との交点を中心とした円弧状に形成されると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ドラムブレーキによれば、パーキングレバー作動時に応力が集中する応力集中部及び、応力集中部の周辺部の断面係数を上げて応力を分散させ、パーキングレバーの板厚を厚くすることなく強度を上げることができる。
【0009】
また、一対のブレーキシューは、シューホールドピンとシューホールドスプリングとによってバックプレートにそれぞれ弾持され、パーキングレバーはシューホールドスプリングとの干渉を避けるために設けられた凹部に応力集中部を有していることにより、パーキングブレーキの作動を良好に維持しながら応力を分散させ、板厚を厚くすることなくパーキングレバーの強度の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、パーキングレバーの支軸よりも牽引手段連結側と、第2ブレーキシューの先端拡開側との間には懸架部材が配置され、補強リブは、懸架部材のパーキングレバーと当接する第1当接点と第2ブレーキシューと当接する第2当接点とを繋ぐ長手方向の中心線と直交し、且つ、第1当接点を通る第1仮想線と、第1仮想線と直交し、且つ、応力集中部を通る第2仮想線との交点を中心とした円弧状に形成されることにより、応力集中部の周辺部の断面係数を緩やかに変化させることができ、応力を良好に分散させることができ、パーキングレバーの強度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一形態例を示す車両用ドラムブレーキの正面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】本発明の一形態例を示すパーキングレバーの正面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図4は本発明の車両用ドラムブレーキの一形態例を示す図である。この車両用ドラムブレーキ1は、車体に固設されるバックプレート2の内面に弓側の一対の第1ブレーキシュー3と第2ブレーキシュー4とを配置し、両ブレーキシュー3,4の一端をホイルシリンダ5のピストンに、他端をアンカー6にそれぞれ当接させている。
【0013】
この車両用ドラムブレーキ1は、第1ブレーキシュー3と第2ブレーキシュー4とをバックプレート2の半径方向外側へ拡開して、外周のライニング3a,4aをブレーキドラムに摺動させて制動するリーディング・トレーディングタイプで、第1ブレーキシュー3には、パーキングレバー7の一端が支軸8にて枢支され、該パーキングレバー7の他端には、パーキングレバー7を牽引するためのブレーキケーブル9が連結されている。
【0014】
第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4は、それぞれバックプレート2と平行に配置されるウェブ3b,4bと、該ウェブ3b,4bの外縁に交差方向に固設されるリム3c,4cと、このリム3c,4cの外周面に貼着される前記ライニング3a,4aとから成っている。さらに、第1ブレーキシュー3と第2ブレーキシュー4とは、ウェブ3b,4bの略中間部がシューホールドピン10とシューホールドスプリング11とによってバックプレート2にそれぞれ弾持されている。また、両ウェブ3b,4bの間には、ホイルシリンダ5の内側とアンカー6の外側とにシュー戻しばね12,13が張設されていて、双方のブレーキシュー3,4を常時縮径方向へ付勢しており、さらに、ホイルシリンダ側のシュー戻しばね12のバックプレート中心側には、制動間隙自動調整装置14が配置されている。
【0015】
制動間隙自動調整装置14は、周知の構造を備えたもので、第2ブレーキシュー4に支軸15にて回動可能に軸支されるアジャストレバー16と、該アジャストレバー16とウェブ4bの他端部側に設けられるアジャストスプリング17と、第1ブレーキシュー3のウェブ3bとパーキングレバー7とに一端を嵌合し、第2ブレーキシュー4のウェブ4bとアジャストレバー16の基端側とに他端を嵌合するコネクティングロッド18(本発明の懸架部材)とを備えている。コネクティングロッド18は中間部にアジャストギア18aを備え、該アジャストギア18aにアジャストレバー16の爪片が係合した構成となっており、制動間隙が所定量以上広がった場合に、アジャストレバー16の回動により、アジャストギア18aを爪片で一方向へ回転させてコネクティングロッド18を伸長させ、バックプレート2の半径方向外側に拡開した第1ブレーキシュー3及び第2ブレーキシュー4の縮径位置を外側に規制することにより、制動間隙を自動的に調整するようにしている。
【0016】
アンカー6は、バックプレート2を内側に突出させて形成したアンカー部に直方体形状のアンカーブロック6aをリベット19,19で固着して形成されている。また、アンカーブロック6aのバックプレート中心側には、ブレーキケーブル9を案内するケーブルガイド20が設けられている。
【0017】
パーキングレバー7は、ウェブ3bのバックプレート側に、ウェブ3bに沿って配置され、一端側に支軸8の挿通孔7aが、他端側にブレーキケーブル9の連結部7bがそれぞれ形成されている。パーキングレバー7は、プレスによる打ち抜き加工で形成され、一端側はウェブ3bの湾曲に沿って湾曲して形成され、一端側のバックプレート内周側には、コネクティングロッド18との当接部P1が設けられている。また、パーキングレバー7の中間位置のバックプレート外周側には、シューホールドスプリング11との干渉を避けるために凹部7cが形成され、該凹部7cに、作動時に応力が集中する応力集中部P2が設けられる。
【0018】
また、パーキングレバー7の中間部には、バックプレート2側に突出するとともに、バックプレート内周側端面からバックプレート外周側に向けて凸となる円弧状に形成された補強リブ7dが形成され、該補強リブ7d内に、前記応力集中部P2が設けられている。補強リブ7dは、パーキングレバー7を打ち抜き加工する際に、同時にプレス加工して形成されるもので、コネクティングロッド18のパーキングレバー7と当接する第1当接点P1と第2ブレーキシュー4と当接する第2当接点P3とを繋ぐ長手方向の中心線CL1と直交し、且つ、第1当接点P1を通る第1仮想線L1と、該第1仮想線L1と直交し、且つ、応力集中部P2を通る第2仮想線L2との交点P4を中心とした円弧状に形成される。
【0019】
上述のように形成された本形態例の車両用ドラムブレーキ1は、ブレーキケーブル9を牽引するとブレーキケーブル9がケーブルガイド20にガイドされながらスライドして、パーキングレバー7を牽引する。パーキングレバー7は、支軸8を支点に回動し、コネクティングロッド18を第2ブレーキシュー4側へ押動し、第2ブレーキシュー4をアンカー6を支点に拡開し、ライニング4aをブレーキドラムに摺接させる。さらに、ブレーキケーブル9を牽引すると、反作用によりパーキングレバー7が回動支点をコネクティングロッド18との第1当接点P1に換えて回動し、第1ブレーキシュー3をアンカー6を支点に拡開させ、ライニング3aをブレーキドラムに摺接させて制動する。
【0020】
このとき、パーキングレバー7の外周側に引張り応力が、内周側に圧縮応力がそれぞれ掛かり、凹部7cに設けられた応力集中部P2に応力が集中するが、応力集中部P2が補強リブ7d内に設けられていることから、応力集中部P2及び、応力集中部P2の周辺部の断面係数を上げて応力を分散させることができる。これにより、パーキングレバー7の板厚を厚くすることなく強度を上げることができる。
【0021】
さらに、補強リブ7dは、コネクティングロッド18のパーキングレバー7と当接する第1当接点P1と第2ブレーキシュー4と当接する第2当接点P3とを繋ぐ長手方向の中心線CL1と直交し、且つ、第1当接点P1を通る第1仮想線L1と、該第1仮想線L1と直交し、且つ、応力集中部P2を通る第2仮想線L2との交点P4を中心とした円弧状に形成されることにより、応力集中部P2の周辺部の断面係数を緩やかに変化させることができ、応力を良好に分散させることができる。
【0022】
なお、本発明は上述の形態例に限るものではなく、制動間隙自動調整装置を備えずに、パーキングレバーと第1ブレーキシューの拡開側との間に、懸架部材としてストラットを配設したものでもよい。また、リーディング・トレーディングタイプのドラムブレーキに限らず、デュオサーボタイプやカム式のドラムブレーキ等、パーキングレバーを備えたどのようなタイプのドラムブレーキにも適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…車両用ドラムブレーキ、2…バックプレート、3…第1ブレーキシュー、4…第2ブレーキシュー、3a,4a…ライニング、3b,4b…ウェブ、3c,4c…リム、5…ホイルシリンダ、6…アンカー、7…パーキングレバー、7a…挿通孔、7b…連結部、7c…凹部、7d…補強リブ、8…支軸、8a…中心軸、9…ブレーキケーブル、10…シューホールドピン、11…シューホールドスプリング、12,13…シュー戻しばね、14…制動間隙自動調整装置、15…支軸、16…アジャストレバー、17…アジャストスプリング、18…コネクティングロッド、19…リベット、20…ケーブルガイド、P1…第1当接点、P2…応力集中部、P3…第2当接点、P4…交点
図1
図2
図3
図4