(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体を含む吸収性本体と、前記吸収性本体の外面側に設けられ、着用時に人体の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部を有するバックシートと、を備える吸収性物品において、
前記吸収性本体の幅方向の両端部にそれぞれ一端部が固定され、内側に折り返されることで上下方向に立ち上がる立ち上がり部を形成し、長手方向に延在する一対のギャザー部を備え、
前記一対のギャザー部は、
前記上下方向に伸縮可能な伸縮部と、前記伸縮部の伸長に伴い前記上下方向に延在した状態となり、前記伸縮部の収縮に伴い前記幅方向の中央側に延在した状態となる変形部と、
を備え、
前記変形部と前記吸収性本体との間にインナーパッドが挿入可能に構成されることを特徴とする吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、インナーパッドの位置を適切な位置に調整するために貼りなおす等の手間が発生し、インナーパッドの交換作業の負荷が大きいものであった。特に、高齢者や手が不自由な人にとっては、インナーパッドの交換作業は大変煩雑であって、固定機能が使用されない場合も多いのが実情であった。
【0006】
本発明の課題は、インナーパッドを容易に固定して装着できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、
請求項1に記載の発明は、
吸収体を含む吸収性本体と、前記吸収性本体の外面側に設けられ、着用時に人体の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部を有するバックシートと、を備える吸収性物品において、
前記吸収性本体の幅方向の両端部にそれぞれ一端部が固定され、内側に折り返されることで上下方向に立ち上がる立ち上がり部を形成し、長手方向に延在する一対のギャザー部を備え、
前記一対のギャザー部は、
前記上下方向に伸縮可能な伸縮部と、前記伸縮部の伸長に伴い前記上下方向に延在した状態となり、前記伸縮部の収縮に伴い前記幅方向の中央側に延在した状態となる変形部と、
を備え、
前記変形部と前記吸収性本体との間にインナーパッドが挿入可能に構成されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸収性物品において、
前記変形部の前記上下方向に延在した状態における前記上下方向の中央部は、前記上下方向の両端部より剛性が弱いことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の吸収性物品において、
前記一対のギャザー部を構成するギャザーシートを備え、
前記変形部は、両端部が折り返されて折り返しによる対向面がギャザーシートに接着されたシート材を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の吸収性物品において、
前記一対のギャザー部を構成するギャザーシートを備え、
前記変形部は、前記ギャザーシートの一部を複数回折り返してギャザーシート同士を接着することで形成される2つの接着部と、
前記2つの接着部の間に位置し、ギャザーシートが接着されていない非接着部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収性物品において、
前記変形部は、前記一対のギャザー部それぞれの両側において対称な形状に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インナーパッドを容易に固定して装着できる吸収性物品とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である吸収性物品を詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0015】
図1は、本実施形態における吸収性物品としてのパンツタイプの紙おむつ(以下、単に「紙おむつ」という。)を示す斜視図である。
図2は、
図1の紙おむつの内部側を示す展開図である。
図3は、
図2のIII−III線における断面図である。
なお、以下の説明において、
図2のように紙おむつを展開した状態の、当該紙おむつの長手方向(前後方向)及び短手方向(左右方向)に直交する方向を上下方向とする。
また、
図3においては、右側のギャザー部10を起立させた状態で示しているが、左右のギャザー部10、10は対称であって、通常は、左側のギャザー部10のように重なった状態となっている。
【0016】
図1に示すように、紙おむつ100は、例えば、着用時に人体の腹側に位置する腹側部F、背側に位置する背側部B、及び腹側部Fから背側部Bにかけて延在して着用時に人体の股間に位置する股間部Mを有するバックシート1と、バックシート1の内面に設けられた吸収性本体2と、吸収性本体2の両側部に設けられたギャザー部10、10と、を備えている。
【0017】
紙おむつ100は、バックシート1の腹側部Fの幅方向両端と背側部Bの幅方向両端とを固着して人体の脇側に位置する接合端部Jを形成することによって、パンツ型の形状に成形されている。
また、紙おむつ100においては、バックシート1の腹側部Fと背側部Bとが接合端部Jにおいて接合されることにより、腰周り開口部Wと、左右一対の脚周り開口部Lとが形成される。
【0018】
図2、3に示すように、バックシート1は、不織布からなる不透液性の外面シート1Aと内面シート1Bとを備え、吸収性本体2の裏面側(人体への装着時における外部側)を覆う形状に形成されている。
外面シート1A、内面シート1B、後述するトップシート23、及びギャザー部10等に用いる不織布の素材としては、天然繊維、合成繊維のいずれを用いてもよい。天然繊維の例としては、綿、セルロース(木材パルプ)、羊毛、絹等が挙げられる。また、合成繊維としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエステル(PET)、アクリル等が挙げられ、またPE/PP混合不織布、PE/PET混合不織布、また、上記素材を適宜組み合わせたバイコンポーネント繊維(混合繊維)も用いることができる。
【0019】
また、これらの繊維素材から不織布を製造する方法としては、公知の方法を適宜用いることができ、例えば、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンレース等のいずれの方法を用いてもよい。また合成繊維素材等では、スパンボンド法、メルトブロー法、またこれらと上記の接着方法を組み合わせるなど、いずれの方法を用いて製造してもよい。
【0020】
また、バックシート1における外面シート1Aと内面シート1Bとの間には、複数本の糸ゴム等の弾性部材3が挟み込まれ固着されている。
弾性部材3は、バックシート1における腰周り開口部Wと左右一対の脚周り開口部Lに相当する部分に設けられており、紙おむつ100の使用時に、この弾性部材3によって人体の腰周り及び脚周りで紙おむつ100が伸縮するようになっている。
【0021】
吸収性本体2は、バックシート1の腹側部Fから股間部Mを通って背側部B側に亘る長さに形成されており、バックシート1の内面に設けられている。
【0022】
吸収性本体2は、紙おむつ100の使用時に体液としての尿等の水様成分を吸収するものである。
図3に示すように、吸収性本体2は、例えば、綿やパルプ等の吸収性素材や、繊維或いはフィルム等のシート状基材と高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer)とが組み合わされて形成された吸収体20と、この吸収体20を包み込む透液性のクレープ紙21と、吸収体20の裏面側を覆う遮水性を有する防水フィルム22と、吸収体20の表面側(人体側)を覆う透液性を有するトップシート23等により構成されている。
この吸収性本体2は、防水フィルム22の外面がバックシート1の内面に接着されることで、バックシート1に固定されている。
【0023】
ギャザー部10、10は、紙おむつ100のトップシート23側において、吸収性本体2の両側部を長手方向(前後方向)に延在するように左右対称に設けられている。
このギャザー部10、10により、体液が吸収体20で吸収される前に紙おむつ100の外側に溢れ出るのが堰き止められ、吸収体20に向けて押し戻される。
【0024】
本実施形態のギャザー部10は、例えば、上方に起立可能な先端部11及びバックシート1側に固定される固定部12を備えるギャザーシート10Aと、先端部11と固定部12の間に配設された伸縮部13と、伸縮部13の伸縮に伴って変形する変形部14と、を備えて構成される。
【0025】
先端部11は、例えば、不透液性の不織布のシートを二つ折りにし、折り合わされた面を、例えば、ホットメルトや、ヒートシール、超音波シール等により固着させることにより形成されている。そして、その不織布シートが折り合わされた面の間に、複数本の長手方向に延在する弾性部材11aが挟み込まれて固着されている。
ギャザー部10が紙おむつ100に固着された状態において、この先端部11が上方に起立することにより立体ギャザーが形成される。また、先端部11の弾性部材11aにより、ギャザー部10は人体に合わせて伸縮自在に変形し、人体にフィットしやすい構造となっている。
【0026】
固定部12は、例えば、不透液性の二枚の不織布のシートを重ね合わせ、重ね合わせた面を、例えば、ホットメルトや、ヒートシール、超音波シール等により固着させることにより形成されている。
固定部12の一端部が、トップシート23と内面シート1Bとの間に挟まれるように固着されることで、ギャザー部10が吸収性本体2の側部に固定される。
また、固定部12の他端部は、上方に立ち上がるように折り曲げられ、これにより立体的な立ち上がりの起点である立ち上がり部12aが形成されている。
【0027】
伸縮部13は、例えば、糸ゴム、弾性フィルム、または弾性フィルムをシート層で挟んだ弾性伸縮シート等の弾性部材などが用いられ、長手方向の所定間隔毎に、上下方向に延在するように設けられている。
伸縮部13の上端部は先端部11に固定され、伸縮部13の下端部は固定部12に固定されることで、上下方向に伸縮可能に延在している。
【0028】
変形部14は、両端部が折り返されて折り返しによる対向面が接着されたシート材141、141を備えている。
シート材141、141は、ギャザー部10の両側において対称な形状となるように形成されている(
図3の右側のギャザー部10参照)。即ち、変形部14は、一対のギャザー部10、10それぞれの両側において対称な形状に設けられている。
【0029】
各シート材141は、例えば、不透液性の不織布であって、両端部141a、141aは折り返されて、例えば、ホットメルトや、ヒートシール、超音波シール等により接着されている。
これにより、シート材141の両端部141a、141aは、シート材141が重ねられて接着されることで剛度が高まることとなる。また、シート材141の中央部141bは、両端部141a、141aより薄くて剛度が低く、シート材141が折り曲げられる際の基点となる。
【0030】
また、シート材141は、その全長(折り曲げないときの全長)が、伸縮部13の全長(引っ張り力を加えないときの全長)よりも2〜5倍程度長くなるように設定されている。
【0031】
このようなシート材141は、その上下の両端部141a、141aが、先端部11の下端及び固定部12の他端にそれぞれ固定され、伸縮部13の伸縮に伴って変形するようになっている。
即ち、伸縮部13が収縮した状態(引っ張り力が加えられていない状態)においては、その中央部141bが折り曲げられて幅方向に延在する形状となり、伸縮部13が伸長した状態(引っ張り力が加えられた状態)においては、その中央部141bが伸ばされて上下方向に延在した形状に変形することとなる。
【0032】
次に、紙おむつ100へのインナーパッドPの装着手順等について説明する。
図4〜
図6は、
図2のIII−III線における断面図であって、インナーパッドPの装着時のギャザー部10、10の状態を説明するための図である。
【0033】
なお、通常、ギャザー部10、10は伸縮部13が収縮状態となっているため、通常状態において、変形部14は、
図3の左側のギャザー部10で示すように、幅方向に延在した形状である。
【0034】
インナーパッドPを装着する場合、使用者又は介護者は、ギャザー部10、10を上方に引っ張る動作を行う。
これにより、
図4に示すように、伸縮部13が伸長することで、変形部14のシート材141が徐々に引き伸ばされ、最終的に、
図5に示すように、上下方向に延在した形状となる。
このように変形部14のシート材141の形状が変形することで、吸収性本体2上の両側部に空間Sが形成され、インナーパッドPを吸収性本体2上に載置し易くなる。
【0035】
そして、使用者又は介護者は、インナーパッドPを吸収性本体2上に載置した後、上方に引っ張っていたギャザー部10、10を離す動作を行う。
これにより、
図6に示すように、伸縮部13が収縮することで、変形部14のシート材141が元の形状、即ち、幅方向に延在した形状となる。
このように変形部14のシート材141の形状が変形することで、吸収性本体2上に載置されたインナーパッドPの両側部がシート材141により抑えられた状態となる。
このとき、変形部14のシート材141の重みにより、インナーパッドPが吸収性本体2上に押し付けられるので、インナーパッドPがずれるのが防止できることとなる。
また、変形部14のシート材141が元の形状に戻る際、シート材141の中央部141bには、両端部141a、141aより剛度の低い領域が形成されているため、中央部141bから折り曲り易く、シート材141が元の形状に戻り易くなっている。これにより、インナーパッドPを繰り返し交換しても、変形部14がインナーパッドPを上方から抑える力を一定に維持することができる。
【0036】
なお、上記の説明においては、インナーパッドPの紙おむつ100への装着において使用者等がギャザー部10、10を上方に引っ張る動作を行うこととして説明したが、使用者が紙おむつ100を穿いた状態においてインナーパッドPを新しく入れたり、交換したりする場合には、
図1に示した状態の紙おむつ100の股間部Mを人体から離す方向に引っ張る動作が行われることで、即ち、下方に掛かる力により、ギャザー部10、10が先端部11の先端を起点として起立した状態となり、変形部14のシート材141は、
図4、
図5に示したように変形して空間Sが形成され、
図6に示したようにインナーパッドPを装着することが可能である。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、吸収体20を含む吸収性本体2と、吸収性本体2の外面側に設けられ、着用時に人体の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部を有するバックシート1と、を備える紙おむつ100において、吸収性本体2の幅方向の両端部にそれぞれ一端部が固定され、内側に折り返されることで上下方向に立ち上がる立ち上がり部12aを形成し、長手方向に延在する一対のギャザー部10、10を備え、一対のギャザー部10、10は、上下方向に伸縮可能な伸縮部13と、伸縮部13の伸長に伴い上下方向に延在した状態となり、伸縮部13の収縮に伴い幅方向の中央部側に延在した状態となる変形部14と、を備え、変形部14と吸収性本体2との間にインナーパッドPが挿入可能に構成される。
このため、一対のギャザー部10、10を上方に引っ張るだけで変形部14が変形してインナーパッドPを装着する空間Sが形成され、インナーパッドPを吸収性本体2上に載置した状態で引っ張っている一対のギャザー部10、10を離すと、変形部14が再度変形してインナーパッドPを上方から抑えることとなる。
よって、インナーパッドPを容易に固定して装着できる。
【0038】
また、本実施形態によれば、変形部14の上下方向に延在した状態における上下方向の中央部141bは、上下方向の両端部141a、141aより剛性が弱い。
このため、変形部14が変形する際に剛性の弱い上下方向の中央部141bが折り曲げられることとなり、変形部14が幅方向に延在した状態となった場合の形状を任意の形状にすることができる。これにより、インナーパッドPを繰り返し交換しても、変形部14がインナーパッドPを上方から抑える力を一定に維持することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、一対のギャザー部10、10を形成するギャザーシート10Aを備え、変形部14は、両端部が折り返されて折り返しによる対向面がギャザーシート10Aに接着されたシート材141を備える。
このため、両端部を折り返しその折り返しによる対向面を接着したシート材141を、一対のギャザー部10、10を形成するギャザーシート10Aに接着するだけなので、製造が容易である。
【0040】
また、本実施形態によれば、変形部14は、一対のギャザー部10、10それぞれの両側において対称な形状に設けられている。
このため、ギャザー部10の両側に均一な力が加えられることとなり、繰り返しの使用に際して変形部14の形状が崩れるのを防止することができる。
【0041】
なお、上記実施形態においては、変形部14に剛性の高い部分と剛性の低い部分が形成されている構成を例示して説明したが、変形部14は、全域に亘って同一の剛性であっても良い。例えば、変形部14を全体としてある程度剛性の高いシート材等で形成した場合、その中央部に折り線を設けることで、所望の形状に変形させることとしても良い。
【0042】
また、上記実施形態においては、変形部14をギャザーシート10Aと別体のシート材141とする構成を例示して説明したが、変形部14は、ギャザーシート10Aと一体に構成されることとしても良い。
この場合、例えば、
図7に示すように、ギャザーシート10Aの一部を複数回折り返してギャザーシート10A同士を接着することで形成される2つの接着部142a、142aを設けて剛性の高い部分を形成し、2つの接着部142a、142aの間に、接着されていない非接着部142bを備える構成とすることができる。
なお、剛性の高い部分を形成するためには、これ以外にも、剛性を高めたい部分に、シート材を貼りつける等の構成であっても良い。
また、変形部14とギャザーシート10Aを一体とした場合にも、変形部14を全域に亘って同一の剛性とする構成としても良い。
【0043】
また、上記実施形態においては、変形部14は、一対のギャザー部10、10それぞれの両側に対称な形状に設けられている構成を例示して説明したが、ギャザー部10の外側の側部は、ギャザー部10の上下の動きを邪魔しない形状であれば、対称な形状でなくとも良い。
【0044】
また、上記実施形態においては、パンツ型使い捨ておむつを例示して説明したが、パンツ型使い捨ておむつの代わりに止着式紙おむつであっても良い。