(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に装備される電子機器として、表示パネルなどを有する機器本体が、ダッシュボードの内部に収納される収納姿勢から、外部に露出する突出姿勢へ向かって移動するものがある。
【0003】
以下の特許文献1に記載されている車載用ディスプレイ装置は、上下に延びる一対のガイド軸がベースに固定されており、このガイド軸でディスプレイが昇降自在に案内されている。ベースには、ディスプレイの昇降方向と直交する水平方向に間隔を空けて一対のギヤが回転自在に支持されており、モータの動力で2個のギヤが同じ方向へ回転駆動される。
【0004】
それぞれのギヤにはピンが固定され、ディスプレイには水平方向に延びる長溝が形成されて、それぞれのピンがディスクプレイに摺動自在に挿入されている。
【0005】
この車載用ディスクプレイ装置は、モータの力で一対のギヤが同じ方向へ回転させられると、ピンが長溝内を摺動し、ディスクプレイが持ち上げられる。ディスプレイを収納するときは、ギヤが上昇時と同じ方向へ回転し、ディスプレイが下降させられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された車載用ディスプレイ装置は、ギヤに設けられたピンと、ディスプレイに形成された長溝との間にがたつきが生じやすく、さらに、一対のガイド軸とディスプレイとの間にもがたつきが生じやすい。そのため、車体振動などが与えられるとがたつき音が発生しやすい課題がある。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、がたつき発生部を少なくし、機器本体が停止しているときと移動しているときの双方において振動ノイズを抑制できるようにした車載用電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガイド部と、前記ガイド部に沿って往復移動する機器本体とを有する車載用電子機器において、
前記機器本体の移動方向と
直交する水平方向に間隔を空けて配置された第1の駆動歯車および第2の駆動歯車と、前記第1の駆動歯車と前記第2の駆動歯車に同じ方向への回転力を与える動力伝達部とを有し、
前記機器本体に、前記水平方向に延びる第1のカム部および第2のカム部が設けられ、前記第1の駆動歯車に、前記第1のカム部を移動する移動体が、前記第2の駆動歯車に、前記第2のカム部を移動する移動体が、それぞれ設けられて、前記第1の駆動歯車と前記第2の駆動歯車から、前記機器本体に移動力が与えられ、
前記動力伝達部には、前記第1の駆動歯車と噛み合う第1の伝達歯車と、前記第2の駆動歯車と噛み合う第2の伝達歯車とが同軸に支持されて、前記第1の伝達歯車と前記第2の伝達歯車を互いに逆向きに付勢するばね部材が設けられ
て、前記ばね部材によって、前記第1の駆動歯車と前記第2の駆動歯車に互いに逆回転方向の付勢力が作用し、前記第1の駆動歯車と前記第2の駆動歯車から、前記機器本体に対して、回転モーメントが与えられており、
前記第1の伝達歯車と前記第2の伝達歯車のいずれか一方にモータからの回転力が伝達されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の車載用電子機器は、前記機器本体が一方へ移動するときと他方へ移動するときとで、前記第1の駆動歯車と前記第2の駆動歯車が同じ方向へ回転駆動されるものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車載用電子機器は、一対の駆動歯車のそれぞれに噛み合う一対の伝達歯車が設けられ、一対の伝達歯車は同軸に支持されてばね部材で互いに逆回転方向へ付勢されている。
【0014】
その結果、2つの駆動歯車に逆回転方向の付勢力が与えられ、それぞれの駆動歯車と機器本体とのカム係合部にがたつきが発生しにくくなる。また機器本体に対して、常に回転モーメントが与えられるため、機器本体と一対のガイド軸との間にもがたつきが生じにくくなる。
その結果、車体振動が与えられたときに振動ノイズが発生しにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3に示すように、車載用電子機器1は、自動車のフロントガラスの手前に位置するダッシュボード7の内部に設置される。ダッシュボード7には上方に向けて開口する細長い形状の開口部8が設けられている。
【0017】
車載用電子機器1は機器本体10を有しており、機器本体10は、
図3に示すように、ダッシュボード7の内部に格納された収納姿勢(i)から、ダッシュボード7の上方へ突出する突出姿勢(iii)との間で移動する。
【0018】
図1に示すように、機器本体10は、合成樹脂製の本体ケース11を有し、本体ケース11に表示パネル5が搭載されている。表示パネル5はカラー液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンス表示パネルである。表示パネル5の表示画面5aは車両の内方(X1方向)に向けられている。X1方向は自動車の運転席と助手席の中間に対面する方向である。
【0019】
ダッシュボードの内部に、
図1に示すシャーシ2が収納されている。シャーシ2は金属板を折り曲げて形成されている。シャーシ2には、Y1側に第1のガイド部である第1のガイド軸3が、Y2側に第2のガイド部である第2のガイド軸4が固定されている。第1のガイド軸3と第2のガイド軸4は共に金属製であり、断面が円形である。第1のガイド軸3と第2のガイド軸4は互いに平行であり、機器本体10の移動方向であるY1−Y2方向へ延びている。Y1−Y2方向はほぼ重力方向に向けられている。
【0020】
機器本体10の左側(Y1側)に、左上軸受け部12aと左下軸受け部12bが一体に形成され、右側(Y2側)に、右上軸受け部13aと右下軸受け部13bが一体に形成されている。各軸受け部12a,12b,13a,13bは、機器本体10の本体ケース11と共に合成樹脂材料で形成されている。左上軸受け部12aと左下軸受け部12bは、第1のガイド軸3に摺動自在に挿通されており、右上軸受け部13a右下軸受け部13bは第2のガイド軸4に摺動自在に挿通されている。
【0021】
シャーシ2に、機器本体10を移動させる(昇降させる)昇降駆動機構20が搭載されている。
【0022】
昇降駆動機構20は、第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22を有している。第1の駆動歯車21は、シャーシ2に固定された支持軸21aに回転自在に支持され、第2の駆動歯車22は、シャーシ2に固定された支持軸22aに回転自在に支持されている。支持軸21aと支持軸22aは、機器本体10の移動方向(Z方向)と直交する水平方向(Y方向)に間隔を空けて配置されている。
【0023】
第1の駆動歯車21には、X1方向へ突出する移動体23が設けられ。第2の駆動歯車22には、X1方向へ突出する移動体24が設けられている。移動体23,24は、断面が円形の移動軸(フォロワー軸)である。移動体23,24には、必要に応じて、移動軸の外周に合成ゴム製のローラが回転自在に装着される。
昇降駆動機構20には、
図2に示す動力伝達部30が設けられている。
【0024】
動力伝達部30には、モータ31が設けられており、その出力軸31aにウオーム32が固定されている。シャーシ2に支持軸33が固定されて、支持軸33に二段歯車34が回転自在に支持されている。二段歯車34はウオーム歯車34aと平歯車34bとが一体化されている。前記ウオーム32はウオーム歯車34aに噛み合っている。シャーシ2に固定された支持軸35に二段歯車36が回転自在に支持されている。二段歯車36は共に平歯車である大径歯車36aと小径歯車36bが一体化されている。前記平歯車34bは大径歯車36aに噛み合っている。
【0025】
第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22との間に、伝達歯車群40が設けられている。伝達歯車群40では、シャーシ2に支持軸41が固定されており、支持軸41に第1の伝達歯車42と第2の伝達歯車43が同軸でそれぞれが個別に回転できるように支持されている。第1の伝達歯車42と第2の伝達歯車43との間では、支持軸41の外周にばね部材としてトーションばね44が装着されている。トーションばね44の一方のばね端部44aは第1の伝達歯車42に掛止され、他方のばね端部44bは第2の伝達歯車43に掛止されている。
【0026】
トーションばね44の弾性力により、第1の伝達歯車42と第2の伝達歯車43は互いに反発する方向に付勢されており、第1の伝達歯車42が時計方向αへ回転付勢され、第2の伝達歯車43が反時計方向βへ回転付勢されている。
【0027】
第1の伝達歯車42は第1の駆動歯車21に噛み合い、第2の伝達歯車43は第2の駆動歯車22に常に噛み合っている。
【0028】
第1の伝達歯車42と第2の伝達歯車43のピッチ円の直径は互いに同じであり、第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22のピッチ円の直径も互いに同じである。
【0029】
図1と
図3に示すように、機器本体10の本体ケース11に第1のカム部15と第2のカム部16が形成されている。なお、第1のカム部15と第2のカム部16が、本体ケース11に固定された別部材のカム板に形成されていてもよい。
【0030】
第1のカム部15は、水平方向であるY方向に直線的に延びる左直線溝15aと右直線溝15bを有している。左直線溝15aと右直線溝15bとの間に、上側円弧部15cと下側円弧面15dが上下に対向して形成されている。上側円弧部15cは凹面が下向きであり、下側円弧部15dは凹面が上向きである。第2のカム部16は第1のカム部15と同じ形状で同じ寸法で形成されており、第2のカム部16も、左直線溝16aと右直線溝16bおよび上側円弧部16cと下側円弧部16dを有している。
【0031】
車載用電子機器1が組み立てられた状態では、第1の駆動歯車21に設けられた移動体23が第1のカム部15に挿入され、第2の駆動歯車22に設けられた移動体24が第2のカム部16に挿入されている。
【0032】
次に、前記車載用電子機器1の動作について説明する。
図3には、機器本体10がダッシュボード2の内部に格納された収納姿勢(i)と、ダッシュボード2の上方へ突出する突出姿勢(iii)が破線で示されており、収納姿勢(i)と突出姿勢(iii)との中間の移動途中姿勢(ii)が実線で示されている。
【0033】
図2に示すように、伝達歯車群40に設けられたトーションばね44の弾性力は、第1の伝達歯車42から第1の駆動歯車21に伝達され、第2の伝達歯車43から第2の駆動歯車22に伝達されるため、第1の駆動歯車21は反時計方向βへ付勢され、第2の駆動歯車22は時計方向αへ付勢されている。よって、第1の駆動歯車21に設けられた移動体23と第2の駆動歯車22に設けられた移動体24から、機器本体10に対して互いに逆向きの付勢力が作用している。
【0034】
機器本体10が収納姿勢(i)で停止しているとき、第1のカム部15と第2のカム部16は
図3に示す下降位置Dにある。第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22はトーションばね44の弾性力で互いに反発する方向へ回動付勢されているため、第1の駆動歯車21の反時計方向βへの付勢力によって、移動体23が第1のカム部15の下側円弧部15dを下向きに押し、第2の駆動歯車21の時計方向αへの付勢力によって、移動体24が第2のカム部16の上側円弧部16cを上向きに押し、または左直線溝16aの内部を上向きに押している。
【0035】
移動体23と移動体24とが機器本体10を上下逆方向に押しているため、それぞれのカム部15,16と移動体23,24との間でのがたつきの発生が抑制されている。また、第1のカム部15の下側円弧部15dは、このときの移動体23の回転軌跡に一致しているため、機器本体10は収納姿勢(i)で所定の高さ位置に位置決めされる。
【0036】
また、それぞれの移動体23,24から機器本体10に与えられる付勢力によって、収納姿勢(i)にある機器本体10に対して、反時計回りの回転モーメントM1が作用している。この回転モーメントM1によって、機器本体10の軸受け部12a,12b,13a,13bとガイド軸3,4との間のがたつきも抑制されている。
【0037】
機器本体10が収納姿勢(i)のときに、モータ31を始動すると、その回転力は、ウオーム32からそれぞれの二段歯車34,36を介して、第2の伝達歯車43に動力が減速して与えられ、第2の伝達歯車43が反時計方向へ回転させられる。第2の伝達歯車43の回転力は第2の駆動歯車22に直接に伝達され、第2の駆動歯車22が時計方向CWへ回転駆動される。伝達歯車群40では、第2の伝達歯車43が駆動されると、トーションばね44で連結されている第1の伝達歯車42が追従して回転する。
【0038】
機器本体10が上昇している移動途中姿勢(ii)にあるとき、トーションばね44の弾性力により、移動体24から第2のカム部16の左直線溝16aに上向きの付勢力F2が与えられ、移動体23から第1のカム部15の左直線溝15aに下向きの付勢力F2が与えられる。そのため、移動体23,24とカム部15,16とのがたつきが防止されている。
【0039】
機器本体10が移動途中姿勢(ii)のときにも、付勢力F1,F2から機器本体10に反時計回りの回転モーメントM1が作用し続けているため、機器本体10の軸受け部12a,12b,13a,13bとガイド軸3,4との間のがたつきを抑制できる。
【0040】
機器本体10が突出姿勢(iii)まで移動してモータ31が停止すると、上昇位置Uにある第2のカム部16では、第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22の互いに反発する回転付勢力によって、移動体24が第2のカム部16の上側円弧部16cを上向きに押圧し、移動体23が、第1のカム部15の下側円弧部15dを下向きに押し、または移動体23が左直線溝15a内に位置して下向きに押圧する。
【0041】
この反発付勢力によって、移動体23,24とカム部15,16とのがたつきを防止できる。
【0042】
このときも、前記付勢力によって機器本体10に対して反時計方向の回転モーメントM1が作用しているため、機器本体10の軸受け部12a,12b,13a,13b,とガイド軸3,4とのがたつきを抑制できる。
【0043】
突出姿勢(iii)の機器本体10を下降させるには、モータ31を上昇時とは逆方向に駆動し、第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22を反時計方向へ回転させる。機器本体10は突出姿勢(iii)から移動途中姿勢(ii)を経て収納姿勢(i)に戻るが、この間、第1のカム部15と移動体23との位置関係と、第2のカム部16と移動体24との位置関係は、
図3と同じであり、この間、機器本体10には常に反時計方向の回転モーメントM1が作用している。
【0044】
ただし、機器本体10が突出姿勢(iii)にあるときに、モータ31を逆転させて下降させると、モータ31の出力軸31aに上昇動作時とは逆向きのスラスト力が作用し、この力で出力軸31aが軸方向へ動き、これが動作切換えノイズとなる。
【0045】
この動作切換えノイズの発生を防止するために、機器本体10が突出姿勢(iii)にあるとき、モータ31を上昇時と同じ方向に回転させ、第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22を時計方向CWへ回転させて、機器本体10を下降させることが好ましい。
【0046】
突出姿勢(iii)から第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22が時計方向CWへ回転すると、移動体23は第1のカム部15の右直線溝15bに入り、移動体24は第2のカム部16の右直線溝16bに入る。そして、第1の駆動歯車21と第2の駆動歯車22の回転力により機器本体10が下降させられる。
【0047】
このときは、トーションばね44のばね力により、移動体24から第2のカム部16の右直線溝16bに下向きの付勢力が作用し、移動体23から第1のカム部15の右直線溝15bに上向きの付勢力が作用することになり、機器本体10に時計回りの回転モーメントM2が作用する。この回転モーメントM2によっても、機器本体10の軸受け部12a,12b,13a,13b,とガイド軸3,4とのがたつきを防止できる。
【0048】
なお、本発明では、機器本体10に一対の移動体23,24が設けられ、第1の駆動歯車21に前記移動体23を移動させる第1のカム部が形成され、第2の駆動歯車22に前記移動体24を移動させる第2のカム部が形成されていてもよい。
【0049】
また、モータ21の動力が、第2の伝達歯車43ではなく、第1の伝達歯車42に伝達されていてもよい。