(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一定走行経路上を走行可能な搬送用走行体に、その走行方向と平行にラックギヤが付設され、このラックギヤを利用して搬送用走行体を推進させるラックギヤ駆動区間に、前記ラックギヤと咬合する駆動用ピニオンギヤが配設され、前記ラックギヤの前端側には、当該ラックギヤの前端より前方位置に被牽引用フックが配設され、ラックギヤ駆動区間の入り口に配設される駆動用ピニオンギヤには、前記被牽引用フックと係合して搬送用走行体を、前記ラックギヤの前端が前記駆動用ピニオンギヤに咬合する位置まで引き込む引込み用爪が併設されたラックギヤ駆動可能な搬送装置において、
前記引込み用爪は、前記駆動用ピニオンギヤの回転軸心の周りに一定範囲内で相対回転自在に支持され、この引込み用爪を、前記駆動用ピニオンギヤの回転方向とは逆方向に付勢して、当該駆動用ピニオンギヤに対する相対回転範囲の始端位置に保持する付勢手段が併設されている、ラックギヤ駆動可能な搬送装置。
前記駆動用ピニオンギヤの回転軸心の周りに回転自在な回転体が、前記駆動用ピニオンギヤに隣接して軸支され、この回転体に前記引込み用爪と、回転方向に沿った長孔が設けられ、前記付勢手段は、前記駆動用ピニオンギヤから突設されて前記長孔を貫通する支軸によって一端が軸支された揺動軸体と、前記回転体の側面から突設され且つ前記揺動軸体が摺動自在に貫通するバネ受け部材と、前記揺動軸体のバネ受け座と前記バネ受け部材との間で前記揺動軸体に遊嵌された圧縮コイルバネとから構成されている、請求項1に記載のラックギヤ駆動可能な搬送装置。
前記駆動用ピニオンギヤと前記回転体との互いに隣接する側面それぞれに、前記圧縮コイルバネの付勢力で前記長孔の一端部に前記支軸が位置するとき、互いに周方向に当接する当接部材が突設されている、請求項2に記載のラックギヤ駆動可能な搬送装置。
前記被牽引用フックは、その後方に延出する基端部が、前記ラックギヤの前端側部に一定範囲内上下揺動自在に軸支され、下向き付勢力で下限作用位置にある前記被牽引用フックが前記駆動用ピニオンギヤ側の引込み用爪によって突き上げられたとき、当該被牽引用フックが上動して前記引込み用爪の通過を許すように構成された、請求項1〜3の何れか1項に記載のラックギヤ駆動可能な搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成は、後述する本発明の前提要件である構成、即ち、ラックギヤの前端側に、当該ラックギヤの前端より前方位置に被牽引用フックが配設され、このラックギヤに咬合する駆動用ピニオンギヤには、前記被牽引用フックと係合して、前記ラックギヤの前端が前記駆動用ピニオンギヤに咬合する位置まで引き込む引込み用爪が設けられたものであると考えられるが、この特許文献1に記載の構成では、引込み用爪が駆動用ピニオンギヤと一体に回転するものであるから、ラックギヤ側の被牽引用フックを前記引込み用爪に係合させる段階では、当該引込み用爪を備えた駆動用ピニオンギヤを所定の位相で停止させておく必要があり、定速で連続回転させている駆動用ピニオンギヤにラックギヤを咬合させる手段としては利用出来ない。又、特許文献2に記載の構成は、ラックギヤの前端が駆動用ピニオンギヤに咬合開始するとき、当該ラックギヤの先頭のギア歯が、駆動用ピニオンギヤの外側へ揺動して逃げられるように構成したものであり、定速で連続回転させている駆動用ピニオンギヤにラックギヤを咬合させる手段として考えられたものであるが、ラックギヤが駆動用ピニオンギヤに咬合し始めるときには、必ず、駆動用ピニオンギヤのギア歯とラックギヤ側のギア歯とが相対的に押し合う構成であり、両者の咬合を円滑に行わせることが出来る構成ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるラックギヤ駆動可能な搬送装置を提案するものであって、本発明に係るラックギヤ駆動可能な搬送装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、一定走行経路上を走行可能な搬送用走行体(1)に、その走行方向と平行にラックギヤ(9)が付設され、このラックギヤ(9)を利用して搬送用走行体(1)を推進させるラックギヤ駆動区間(A2)に、前記ラックギヤ(9)と咬合する駆動用ピニオンギヤ(16A,16)が配設され、前記ラックギヤ(9)の前端側には、当該ラックギヤ(9)の前端より前方位置に被牽引用フック(17)が配設され、ラックギヤ駆動区間(A2)の入り口に配設される駆動用ピニオンギヤ(16A)には、前記被牽引用フック(17)と係合して搬送用走行体(1)を、前記ラックギヤ(9)の前端が前記駆動用ピニオンギヤ(16A)に咬合する位置まで引き込む引込み用爪(26)が設けられたラックギヤ駆動可能な搬送装置において、
前記引込み用爪(26)は、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)の回転軸心の周りに一定範囲内で相対回転自在に支持され、この引込み用爪(26)を、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)の回転方向とは逆方向に付勢して、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)に対する相対回転範囲の始端位置に保持する付勢手段(29)が併設された構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明の構成によれば、ラックギヤ駆動区間への搬送用走行体の送り込みのタイミングを、前記駆動用ピニオンギヤと一体に回転する前記引込み用爪の内、周方向に隣り合う2つの引込み用爪の間に、ラックギヤ側の被牽引用フックが進入する、好ましいタイミングとなるように考慮しておけば、当該被牽引用フックの後ろ側から接近するように回転する引込み用爪によって、当該被牽引用フックとラックギヤとを介して搬送用走行体をラックギヤ駆動区間内へ引き込み、この引込みの段階で、ラックギヤの先頭のギア歯を駆動用ピニオンギヤの歯間に導入させ、ラックギヤと駆動用ピニオンギヤとの咬合開始を極めて円滑且つ確実に行わせることが出来る。
【0007】
しかも、前記駆動用ピニオンギヤが連続回転させている場合、ラックギヤ駆動区間への搬送用走行体の送り込みのタイミングが、上記の好ましいタイミングからずれて、ラックギヤ側の被牽引用フックが駆動用ピニオンギヤ側の引込み用爪の後ろ側に衝突して、この被牽引用フックが駆動用ピニオンギヤを本来の速度より早い速度で回転させようとする状況が生じることも十分に考えられるところであるが、仮にこのような状況が生じても、駆動用ピニオンギヤに対して前記引込み用爪が前記付勢手段の付勢力に抗して先行回転し、被牽引用フックから受ける回転方向の力を吸収させることが出来る。従って、従来の特許文献1に記載のように、ラックギヤを駆動用ピニオンギヤに咬合開始させるときに、当該駆動用ピニオンギヤを所定の位相で停止待機させておく必要が無くなり、ラックギヤ駆動区間の駆動用ピニオンギヤを定速で連続回転させている状態でも、このラックギヤ駆動区間内への搬送用走行体の送り込みを容易に行うことが出来、最終的には、前記のようにラックギヤと駆動用ピニオンギヤとの咬合開始を極めて円滑且つ確実に行わせることが出来るのである。
【0008】
上記本発明を実施する場合、具体的には、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)の回転軸心の周りに回転自在な回転体(22)を、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)に隣接して軸支し、この回転体(22)に前記引込み用爪(26)と、回転方向に沿った長孔(28)を設け、前記付勢手段(29)は、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)から突設されて前記長孔(28)を貫通する支軸(27)によって一端が軸支された揺動軸体(31)と、前記回転体(22)の側面から突設され且つ前記揺動軸体(31)が摺動自在に貫通するバネ受け部材(30)と、前記揺動軸体(31)のバネ受け座部(31a)と前記バネ受け部材(30)との間で前記揺動軸体(31)に嵌合された圧縮コイルバネ(32)とから構成することが出来る。この構成によれば、引込み用爪の支持構造と前記付勢手段とを、容易且つコンパクトに構成実施することが出来る。
【0009】
又、前記駆動用ピニオンギヤ(16A)と前記回転(22)との互いに隣接する側面それぞれに、前記圧縮コイルバネ(32)の付勢力で前記長孔(28)の一端部に前記支軸(27)が位置するとき、互いに周方向に当接する当接部材(33,34)を突設しておくことが出来る。この構成によれば、前記付勢手段の付勢力によって前記長孔の一端に前記支軸が常時圧接している状況によって生じる不都合を回避出来、付勢手段の付勢力を大きくすることも容易になる。
【0010】
更に、前記被牽引用フック(17)は、その後方に延出する基端部を、前記ラックギヤ(9)の前端側部に一定範囲内上下揺動自在に軸支し、下向き付勢力で下限作用位置にある前記被牽引用フック(17)が前記駆動用ピニオンギヤ(16A)側の引込み用爪(26)によって突き上げられたとき、当該被牽引用フック(17)が上動して前記引込み用爪(26)の通過を許すように構成するのが望ましい。この構成を組み込むことにより、ラックギヤ駆動区間への搬送用走行体の送り込みのタイミングが、上記の好ましいタイミングからずれて、ラックギヤ側の被牽引用フックが駆動用ピニオンギヤ側の引込み用爪の上端に乗るような状況になっても、被牽引用フックが上動して、両者間の無理な押し合いを回避出来るので、一層、ラックギヤ駆動区間への搬送用走行体の送り込みが容易に行える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜
図3において、1は搬送用走行体であって、複数のトロリー2〜5、これらトロリー2〜5によって支持された、全長長さRLのロードバー6、このロードバー6に支持された前後一対の被搬送物支持体7,8、及びラックギヤ9から構成されている。ロードバー6は、トロリー2〜5の内の中間に位置する前後一対のロードトロリー2,3間を連結する中央ロードバー単体6a、前後両端のフリートロリー4,5に支持された前後両端ロードバー単体6b,6c、及び中央ロードバー単体6aと前後両端ロードバー単体6b,6cを連結する前後一対の連結用ロードバー単体6d,6eから構成され、その全長にわたって連続する側面が、摩擦駆動用の摩擦面となっている。
【0013】
又、中央ロードバー単体6aと連結用ロードバー単体6d,6eとの間には、ロードトロリー2,3とその真上の被搬送物支持体7,8とを連結する垂直支軸の周りの水平揺動を許す水平動関節部10a,10bと、左右水平支軸の周りの上下揺動を許す上下動関節部10c,10dが介装され、連結用ロードバー単体6d,6eと前後両端ロードバー単体6b,6cとの間には、垂直支軸の周りの水平揺動を許す水平動関節部10e,10fが介装され、各トロリー2〜5を案内するトロリーガイドレール11によって構成される搬送用走行体1の走行経路中に、水平カーブ経路部や上下方向の勾配経路部を組み込むことが出来る構成になっている。尚、図に示す被搬送物Wは、前後一対の被搬送物支持体7,8によって水平に支持される自動車車体を示しているが、如何なる被搬送物Wであっても良いし、この被搬送物Wに適合した被搬送物支持体7,8が採用される。
【0014】
前後一対の被搬送物支持体7,8は、ロードバー6よりも上側に立設された柱状部材12aと、この柱状部材12aの上端に連設された被搬送物支持部材12bから構成されたもので、柱状部材12aの下端部から左右両側に水平に延出する張出しアーム材13aが連設され、この張出しアーム材13aの左右両端に水平支軸の周りで自転可能な振れ止め用ローラー13bが軸支され、被搬送物Wの振れ止めが必要な経路部には、前記振れ止め用ローラー13bが転動自在に支持される、左右一対の振れ止め用ガイドレール14が架設される。前記ラックギヤ9は、平面視(
図2参照)においては、中央ロードバー単体6aの片側に位置し、側面視(
図1参照)においては、中央ロードバー単体6aより高く位置するように、当該中央ロードバー単体6aと平行な状態で、前後両端近くを前記張出しアーム材13aの下側に取り付けたものであって、板面が垂直向きとなる帯状板の下側辺にラックギヤ歯を形成したものであり、両端部が中央ロードバー単体6aより前後に少し延出する全長長さGLを有する。
【0015】
上記構成の搬送用走行体1の走行経路中には、
図1及び
図2に示すように、摩擦駆動区間A1と、この摩擦駆動区間A1の終端につながるラックギヤ駆動区間A2が設けられている。摩擦駆動区間A1には、従来周知のように、ロードバー6の側面に圧接する摩擦駆動輪15aと、この摩擦駆動輪15aを回転駆動する駆動手段15bを備えた摩擦駆動ユニット15が、例えばロードバー6の全長長さRLより長くない間隔で配設される。従って、この摩擦駆動区間A1では、各搬送用走行体1のロードバー6の側面に圧接する摩擦駆動輪15aにより、各搬送用走行体1を任意の間隔で定速走行させることが出来る。一方、ラックギヤ駆動区間A2には、前記ラックギヤ9に咬合する駆動用ピニオンギヤ16A,16(
図2参照)が、例えばラックギヤ9の全長長さGLより長くない間隔で配設される。従って、このラックギヤ駆動区間A2においても、駆動用ピニオンギヤ16A,16が各搬送用走行体1のラックギヤ9に咬合することにより、各搬送用走行体1を任意の間隔で定速走行させることが出来る。
【0016】
図4〜
図6に示すように、前記ラックギヤ9の前端には、被牽引用フック17が取り付けられている。この被牽引用フック17は、ラックギヤ9の高さの半分程度の巾の帯状板17aの前端下側にフック部17bが一体に連設され、ラックギヤ9の前端部一側面には、その下側辺のラックギヤ歯から上方に離れた上半部に、2本のボルトとスペーサーを介して座板18が取り付けられている。前記被牽引用フック17は、その帯状板17aの基端部(後端部)が、前記座板18に左右水平向きの支軸19により上下揺動自在に軸支され、この支軸19よりも前方で前記帯状板17aに、支軸19を中心する円弧形又はこれに近い直線状の長孔20が設けられ、この長孔20を貫通するピン21が前記座板18から突設されている。従って、被牽引用フック17は、支軸19の周りで下向きに作用する付勢力(重力)により、前記ピン21に長孔20の上端が受け止められる下限作用位置に保持されており、下向き付勢力(重力)に抗して被牽引用フック17を、前記ピン21に長孔20の下端が当接する上限退避位置まで上動させることが出来る。被牽引用フック17が前記下限作用位置にあるとき、側面視(
図4A参照)において、前記フック部17bがラックギヤ9の歯部の延長領域と重なる位置にある。尚、被牽引用フック17を下向きに付勢する付勢力として、この被牽引用フック17に作用する重力のみを使用しているが、必要に応じてバネ力を併用することも出来る。
【0017】
図4〜
図6に示すように、ラックギヤ駆動区間A2の入り口に配設される搬送用走行体引込み用の駆動用ピニオンギヤ16Aには、平面視(
図4B参照)において、前記ラックギヤ9に付設された被牽引用フック17の延長領域と重なるように、当該駆動用ピニオンギヤ16Aと同心状に回転体22が設けられている。全ての駆動用ピニオンギヤ16A,16は、それぞれウオームギヤユニット23の左右横向きで片側に突出する駆動軸23aの先端に取り付けられ、前記回転体22は、駆動用ピニオンギヤ16Aと並列するように、前記駆動軸23aの基部に軸受23dを介して相対回転自在に支持されている。各ウオームギヤユニット23は、前記駆動軸23a、両端が入出力軸部23c,23dとなっている前後向きの1本の伝動軸、及びこの1本の伝動軸と前記駆動軸23aとを互いに連動連結するウオームギヤを備えており、ラックギヤ駆動区間A2内に所要間隔おきに配設される複数の駆動用ピニオンギヤ16A,16は、
図2に示すように、これら各駆動用ピニオンギヤ16A,16を備えたウオームギヤユニット23と、その入出力軸部23c,23dどうしを連結する連動軸24によって構成される連動機構により、互いに同一方向に連動回転するように連動連結され、この連動機構中の連動軸24間に介装したウオームギヤユニット23A(前記ウオームギヤユニット23を左右逆向きに使用)の駆動軸23aに接続させた1つのモーター25によって、複数の駆動用ピニオンギヤ16A,16を同期させて連動駆動出来るように構成されている。
【0018】
前記回転体22には、その周縁から周方向等間隔おきに複数本の引込み用爪26が突設されている。この各引込み用爪26は、その回転軌跡が、側面視(
図4A参照)において、前記ラックギヤ9の前端の被牽引用フック17におけるフック部17bの移動経路と重なるように設けられている。この回転体22には、
図5及び
図6に示すように、駆動用ピニオンギヤ16Aから、その回転軸心と平行に突設された支軸27が貫通する長孔28が設けられている。この長孔28は、回転体22の回転軸心(駆動軸23aの軸心)を中心とする円弧形又はこれに近い直線状のものである。前記支軸27と長孔28とにより、前記回転体22(引込み用爪26)と駆動用ピニオンギヤ16Aとが、その回転軸心の周りに一定範囲内(長孔28と支軸27との間の周方向相対移動経路長さの範囲内)で相対回転自在になっている。又、引込み用爪26を、前記駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向とは逆方向に付勢して、当該駆動用ピニオンギヤ16Aに対する相対回転範囲の始端位置に保持する付勢手段29が併設されている。
【0019】
前記付勢手段29は、前記回転体22側のバネ受け部材30、揺動軸体31、及び圧縮コイルバネ32から構成されている。バネ受け部材30は、取付け板30aから突設され、この取付け板30aが、長孔28から支軸27が突出する側の回転体22の側面に、ボルトにより取り付けられている。揺動軸体31は、その基端バネ受け座部31aが、前記長孔28から突出する支軸27に、当該支軸27の周りに揺動自在に支承され、この揺動軸体31の遊端部が、前記バネ受け部材30に設けられた貫通孔を貫通している。前記圧縮コイルバネ32は、揺動軸体31の基端バネ受け座部31aと前記バネ受け部材30との間で前記揺動軸体31に嵌合され、この圧縮コイルバネ32の初期圧縮応力によって、回転体22が駆動用ピニオンギヤ16Aに対して、当該駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向とは逆方向に付勢されるように構成している。
【0020】
上記構成により、回転体22側の長孔28の、駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向側の端部に、駆動用ピニオンギヤ16A側の支軸27が当接することによって、駆動用ピニオンギヤ16Aに対する回転体22の相対回転が制止されるが、長孔28の端部に支軸27が圧接する直前に、互いに当接して駆動用ピニオンギヤ16Aに対する回転体22の相対回転を制止させる当接部材33,34を、駆動用ピニオンギヤ16Aと回転体22の互いに対面する側面それぞれにボルト止めしている。従って、圧縮コイルバネ32の初期圧縮応力によって、回転体22が駆動用ピニオンギヤ16Aに対して、当該駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向とは逆方向に一定角度相対回転したとき、当接部材33,34が互いに当接して、回転体22が駆動用ピニオンギヤ16Aに対する初期位置に保持され、このとき、回転体22側の長孔28の、駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向側の端部に、駆動用ピニオンギヤ16A側の支軸27が隣接する状態にあって、両者が圧縮コイルバネ32の初期圧縮応力によって強く圧接し合うことは避けられている。
【0021】
以上のように構成されたラックギヤ駆動可能な搬送装置において、走行経路上の各搬送用走行体1は、摩擦駆動区間A1内を、摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15aによる摩擦駆動力を受けて定速で走行した後、摩擦駆動区間A1の出口手前に配設された搬送用走行体送り出し用の摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15aによって、下手のラックギヤ駆動区間A2内に所定のタイミングで送り込まれる。即ち、
図6Aに示すように、ラックギヤ駆動区間A2の入り口に配設された搬送用走行体引込み用の駆動用ピニオンギヤ16Aと一体に回転している回転体22の、周方向に隣り合う2つの引込み用爪26の間に向かって、ラックギヤ9の前端の被牽引用フック17が入ってゆくようなタイミングで、搬送用走行体1がラックギヤ駆動区間A2内に送り込まれ、
図6Bに示すように、その搬送用走行体1のラックギヤ9の前端が駆動用ピニオンギヤ16Aに咬合し始める位置より手前の定位置に到達した時点で、この搬送用走行体1の送り込みが終了する。このとき、搬送用走行体送り出し用の摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15a(
図1及び
図2参照)は、前記定位置に停止した搬送用走行体1のロードバー6の側面から後方には外れておらず、当該ロードバー6の側面に圧接しているが、回転自由の状態にあって、搬送用走行体1の走行に伴って自転することが出来る。
【0022】
搬送用走行体1が、搬送用走行体引込み用の駆動用ピニオンギヤ16Aに対する前記定位置に達して停止したとき、この搬送用走行体1側のラックギヤ9の前端の被牽引用フック17は、
図6Bに示すように、当該駆動用ピニオンギヤ16Aと共に回転している回転体22の真上付近で、引込み用爪26の回転軌跡内に位置している。従って、当該回転体22の回転に伴って、前記被牽引用フック17の後方にあった引込み用爪26の1つが、
図7Aに示すように、被牽引用フック17に係合して、この被牽引用フック17を前端に備えたラックギヤ9を介して搬送用走行体1をラックギヤ駆動区間A2内に引き込むことになる。このとき、
図7Aに示すように、ラックギヤ9の先頭の歯が、前記回転体22と一体に回転している駆動用ピニオンギヤ16Aの歯間に円滑に入り込むように、即ち、ラックギヤ9と駆動用ピニオンギヤ16Aとの咬合が円滑に開始されるように、ラックギヤ9に対する被牽引用フック17の位置が決められている。従ってこの後は、
図7Bに示すように、ラックギヤ9に咬合した駆動用ピニオンギヤ16Aの回転により、搬送用走行体1をラックギヤ駆動区間A2内に向けて推進させることになり、当該ラックギヤ9の前端の被牽引用フック17は、回転体22の周囲の引込み用爪26の回転軌跡から前方に脱出することになる。
【0023】
上記のように、摩擦駆動区間A1の出口手前に配設された搬送用走行体送り出し用の摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15aによって、下手のラックギヤ駆動区間A2内に送り込まれた搬送用走行体1が、搬送用走行体引込み用の駆動用ピニオンギヤ16Aと当該搬送用走行体1のラックギヤ9との円滑な咬合によるラックギヤ駆動によって、ラックギヤ駆動区間A2内での定速走行を開始することになるが、この動作は、摩擦駆動区間A1の出口手前に配設された搬送用走行体送り出し用の摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15aによって、下手のラックギヤ駆動区間A2内に、
図6に示したように、搬送用走行体1が所定のタイミングで正常に送り込まれることが条件となる。そしてこの正常な動作が行われているときは、駆動用ピニオンギヤ16Aに対して回転体22(引込み用爪26)は、回転体22側の長孔28の、駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向側の端に、駆動用ピニオンギヤ16A側の支軸27が隣接する状態、換言すれば、駆動用ピニオンギヤ16Aの当接部材33と回転体22側の当接部材34とが互いに当接する初期位置に、付勢手段29の付勢力で付勢保持されている。
【0024】
しかし、搬送用走行体送り出し用の摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15aによる、搬送用走行体1のラックギヤ駆動区間A2内への送り込みのタイミングが早くなって、ラックギヤ9側の被牽引用フック17が、回転体22側の引込み用爪26に後ろ側から衝突して、引込み用爪26を後ろ側から押すような状況になることが考えられる。一方、ラックギヤ駆動区間A2内の全ての駆動用ピニオンギヤ16A,16は、このラックギヤ駆動区間A2内の全ての搬送用走行体1を定速で同期走行させることが出来るように、駆動系に介在しているウオームギヤユニット23,23Aを介して連動連結されており、駆動用ピニオンギヤ16Aが、ラックギヤ9側の被牽引用フック17によって押し込まれる引込み用爪26(回転体22)と一体に、高速回転することは出来ない。
【0025】
従って、前記のように、被牽引用フック17が、回転体22側の引込み用爪26を後ろ側から押すような状況になったときは、
図8に示すように、定速以上の回転が不能な駆動用ピニオンギヤ16Aに対し、引込み用爪26と一体の回転体22が、被牽引用フック17から受ける押し込み力により、付勢手段29の圧縮コイルバネ32の付勢力に抗して先行するように回転することになり、被牽引用フック17から受ける押し込み力を吸収することになる。この駆動用ピニオンギヤ16Aに対する回転体22の先行回転動作は、
図8に示すように、回転体22側の長孔28の、駆動用ピニオンギヤ16Aの回転方向側とは反対側の端に、駆動用ピニオンギヤ16A側の支軸27が到達するまでの間だけ許容されるので、それまでに、ラックギヤ駆動区間A2内の前記定位置に搬送用走行体1が到達して、被牽引用フック17が引込み用爪26を後ろ側から押す動作が完了するように構成している。この機能によって、前記のように、被牽引用フック17が、回転体22側の引込み用爪26を後ろ側から押すような状況になったときでも、被牽引用フック17と引込み用爪26との間に過大な押し付け力が働いて、これら被牽引用フック17や引込み用爪26が損傷し、或いはラックギヤ9に対する被牽引用フック17の取付け部が損傷するなどの事態にはならない。
【0026】
更に、搬送用走行体送り出し用の摩擦駆動ユニット15の摩擦駆動輪15aによる、搬送用走行体1のラックギヤ駆動区間A2内への送り込みが、所定のタイミングで行われなかったために、
図9Aに示すように、ラックギヤ駆動区間A2内へ送り込まれる搬送用走行体1の被牽引用フック17に対して、下から上向きに回転している引込み用爪26が上向きに衝突することも考えられる。このような状況になったときは、
図9Bに示すように、引込み用爪26によって押し上げ力を受ける被牽引用フック17が、当該被牽引用フック17に作用している下向きの付勢力(この実施例では重力)に抗して、ラックギヤ9側の支軸19を支点に上方に揺動して、引込み用爪26から受ける押し上げ力を吸収し、両者間で過大な上下方向の押し付け力が生じることは無い。この場合、被牽引用フック17に対する押し上げ量が最大になるのは、引込み用爪26が回転体22の回転軸心の真上に達したときであるから、回転体22の回転軸心の真上に位置する引込み用爪26の上端に被牽引用フック17が乗る角度まで、支軸19を支点に当該被牽引用フック17が上動出来るように、この被牽引用フック17の上下揺動範囲を定めている長孔20の周方向長さが決められている。
【0027】
尚、上記実施例では、摩擦駆動区間A1からラックギヤ駆動区間A2へ搬送用走行体1を送り込むレイアウトを採用したが、ラックギヤ駆動区間A2の上手での搬送用走行体1の駆動形式は、摩擦駆動に限られるものでない。換言すれば、ラックギヤ駆動区間A2へ搬送用走行体1を送り込む手段は、どのようなものであっても良い。又、回転体22の周辺から突設される引込み用爪26の本数は、周方向に隣り合う2本の引込み用爪26間にラックギヤ9側の被牽引用フック17を容易に進入させることが出来、しかも所定位置まで被牽引用フック17が進入した時点から、当該被牽引用フック17に引込み用爪26が係合して引込みを開始するまでの待ち時間が、短くなるように決められるが、駆動用ピニオンギヤ16Aの回転速度にもよるが、駆動用ピニオンギヤ16Aの回転半径と引込み用爪26の回転半径とが殆ど同じである場合、120度間隔の3本から、60度間隔の6本程度までが実用的である。