(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、光半導体装置における光半導体素子の封止材には、高温又は長時間の加熱や熱衝撃等の刺激が加えられた場合にも、光半導体装置のリードフレームや電極から剥離しないだけの高い密着性を有することが要求される。封止材が光半導体装置のリードフレームや電極から剥離してしまうと、光半導体装置の品質が著しく低下するためである。
【0006】
従って、本発明の目的は、高い透明性、耐熱性、及び耐光性を有し、特に密着性が高く、耐熱衝撃性(熱衝撃が加えられた場合にもクラック等の不具合を生じにくい特性)に優れた硬化物を形成でき、光半導体装置における封止剤として使用することにより、光半導体装置の耐久性を向上させることができる硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高い透明性、耐熱性、及び耐光性を有し、特に密着性が高く、耐熱衝撃性に優れた硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、熱衝撃や高温の熱が加えられた場合でも光度低下が生じにくい、耐久性に優れた光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、脂環式エポキシ化合物と、分子内に1個以上のオキシラン環を有するイソシアヌル酸誘導体と、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物とを必須成分として含有する硬化性エポキシ樹脂組成物が、高い透明性、耐熱性、及び耐光性を有し、特に密着性が高く、耐熱衝撃性に優れた硬化物を形成でき、光半導体装置における封止剤として使用することにより、光半導体装置の耐久性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、分子内に1個以上のオキシラン環を有するイソシアヌル酸誘導体(B)と、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物(C)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0009】
さらに、イソシアヌル酸誘導体(B)が、下記式(1−1)
【化1】
[式中、R
1、R
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
で表される化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0010】
さらに、オキセタン化合物(C)が、分子内に1個以上のオキセタン環及び1個の水酸基を有するオキセタン化合物(C1)である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0011】
さらに、脂環式エポキシ化合物(A)が、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0012】
さらに、脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I−1)
【化2】
で表される化合物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0013】
さらに、硬化触媒(D)を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0014】
さらに、硬化剤(E)及び硬化促進剤(F)を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0015】
さらに、無機フィラー(G)を含む前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0016】
さらに、無機フィラー(G)がガラスフィラーである前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を提供する。
【0018】
さらに、光半導体封止用樹脂組成物である前記の硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を提供する。
【0020】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)脂環式エポキシ化合物(A)と、分子内に1個以上のオキシラン環を有するイソシアヌル酸誘導体(B)と、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物(C)とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
(2)イソシアヌル酸誘導体(B)が、下記式(1−1)
【化3】
[式中、R
1、R
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
で表される化合物である(1)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(3)オキセタン化合物(C)が、分子内に1個以上のオキセタン環及び1個の水酸基を有するオキセタン化合物(C1)である(1)又は(2)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(4)脂環式エポキシ化合物(A)が、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物である(1)〜(3)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(5)脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I−1)
【化4】
で表される化合物である(1)〜(4)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(6)脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が、硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは15〜85重量%である(1)〜(5)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(7)硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量(全カチオン硬化性化合物)に対する脂環式エポキシ化合物(A)の割合が、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは30〜80重量%である(1)〜(6)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(8)イソシアヌル酸誘導体(B)の含有量が、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは8〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部である(1)〜(7)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(9)硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量(100重量%)に対するイソシアヌル酸誘導体(B)の割合が、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは8〜25重量%である(1)〜(8)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(10)オキセタン化合物(C)が、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、及び3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタンからなる群より選択される少なくとも1つである(1)〜(9)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(11)オキセタン化合物(C)が、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン及び3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンからなる群より選択される少なくとも1つである(1)〜(9)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(12)オキセタン化合物(C)の含有量が、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは15〜125重量部、さらに好ましくは20〜120重量部である(1)〜(11)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(13)さらに硬化触媒(D)を含む(1)〜(12)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(14)硬化触媒(D)が、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、ルイス酸・アミン錯体、ブレンステッド酸塩類、及びイミダゾール類からなる群より選択される少なくとも一つである(13)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(15)硬化触媒(D)の含有量が、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、好ましくは0.01〜15重量部、より好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.05〜8重量部である(13)又は(14)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(16)さらに硬化剤(E)及び硬化促進剤(F)を含む(1)〜(15)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(17)硬化剤(E)が、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、アミン類(アミン系硬化剤)、ポリアミド樹脂、イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)、ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、及び有機酸ヒドラジドからなる群より選択される少なくとも一つである(16)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(18)硬化剤(E)が、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)である(16)又は(17)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(19)硬化剤(E)の含有量が、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、好ましくは50〜200重量部、より好ましくは80〜150重量部である(16)〜(18)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(20)硬化促進剤(F)が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル;トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛などの有機金属塩;及びアルミニウムアセチルアセトン錯体などの金属キレートからなる群より選択される少なくとも一つである(16)〜(19)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(21)硬化促進剤(F)の含有量が、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.03〜3重量部、さらに好ましくは0.03〜2重量部である(16)〜(20)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(22)さらに無機フィラー(G)を含む(1)〜(21)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(23)無機フィラー(G)が、シリカフィラー及びガラスフィラーからなる群より選択される少なくとも一つである(22)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(24)無機フィラー(G)がガラスフィラーである(22)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(25)無機フィラー(G)の含有量が、カチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部である(22)〜(24)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(26)無機フィラー(G)の含有量が、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜40重量部、さらに好ましくは3〜30重量部である(22)〜(25)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(27)(1)〜(26)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
(28)光半導体封止用樹脂組成物である(1)〜(26)のいずれか一つに記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(29)(28)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は上記構成を有するため、硬化させることで高い透明性、耐熱性、及び耐光性を有し、特に密着性が高く、耐熱衝撃性に優れた硬化物を形成できる。このため、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を光半導体装置における封止剤(光半導体封止用樹脂組成物)として使用することにより、熱衝撃や高温の熱が加えられた場合でも光度低下が生じにくい、耐久性に優れた光半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)(「成分(A)」と称する場合がある)と、分子内に1個以上のオキシラン環を有するイソシアヌル酸誘導体(B)(「イソシアヌル酸誘導体(B)」や「成分(B)」と称する場合がある)と、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物(C)(「オキセタン化合物(C)」や「成分(C)」と称する場合がある)とを必須成分として含む組成物(硬化性組成物)である。
【0024】
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(一分子中)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを少なくとも有する化合物である。脂環式エポキシ化合物(A)としては、具体的には、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物などが挙げられる。但し、脂環式エポキシ化合物(A)には、後述のイソシアヌル酸誘導体(B)は含まれないものとする。
【0025】
上述の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましい。
【0026】
上述の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する化合物としては、硬化物の透明性、耐熱性の観点で、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
【化5】
【0027】
上記式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基などが挙げられる。
【0028】
上記式(I)中のXが単結合である化合物としては、3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0029】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基などの2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0030】
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基などの炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基などが挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0031】
上記連結基Xとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−、−O−CO−O−、−COO−、−O−、−CONH−、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0032】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−10)で表される化合物、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパンなどが挙げられる。なお、下記式(I−5)、(I−7)中のl、mは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(I−5)中のRは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I−9)、(I−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
【化6】
【化7】
【0033】
上述の(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0034】
式(II)中、R′は、構造式上、p価のアルコールからp個の−OHを除した基であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R′−(OH)
p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなど(炭素数1〜15のアルコール等)が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよいし、異なっていてもよい。上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」、(株)ダイセル製]などが挙げられる。
【0035】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において脂環式エポキシ化合物(A)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、脂環式エポキシ化合物(A)としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、(株)ダイセル製)などの市販品を使用することもできる。
【0036】
中でも、脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I−1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート[例えば、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)など]が特に好ましい。
【0037】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、5〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは15〜85重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0038】
硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物(例えば、成分(A)〜(C))の全量(全カチオン硬化性化合物)に対する脂環式エポキシ化合物(A)の割合は、特に限定されないが、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは30〜80重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0039】
[イソシアヌル酸誘導体(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるイソシアヌル酸誘導体(B)は、イソシアヌル酸の誘導体であって、分子内に1個以上のオキシラン環を少なくとも有する化合物である。イソシアヌル酸誘導体(B)が分子内に有するオキシラン環の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜3個である。
【0040】
イソシアヌル酸誘導体(B)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化9】
【0041】
式(1)中、R
X〜R
Zは、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。但し、R
X〜R
Zの少なくとも1個は、オキシラン環を含む一価の有機基である。上記一価の有機基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基等);一価の芳香族炭化水素基(例えば、アリール基等);一価の複素環式基;脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の2以上が結合して形成された一価の基等が挙げられる。なお、一価の有機基は置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等の置換基)を有していてもよい。オキシラン環を含む一価の有機基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、2−メチルエポキシプロピル基、シクロヘキセンオキシド基等のオキシラン環を有する基等が挙げられる。
【0042】
より具体的には、イソシアヌル酸誘導体(B)としては、下記式(1−1)で表される化合物(モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物)、下記式(1−2)で表される化合物(ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物)、下記式(1−3)で表される化合物(トリグリシジルイソシアヌレート化合物)等が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
【0043】
上記式(1−1)〜(1−3)中、R
1、R
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(1−1)〜(1−3)中のR
1及びR
2は、水素原子であることが特に好ましい。
【0044】
上記式(1−1)で表される化合物の代表的な例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0045】
上記式(1−2)で表される化合物の代表的な例としては、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0046】
上記式(1−3)で表される化合物の代表的な例としては、トリグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0047】
なお、イソシアヌル酸誘導体(B)は、アルコールや酸無水物などのオキシラン環と反応する化合物を加えてあらかじめ変性して用いてもよい。
【0048】
中でも、イソシアヌル酸誘導体(B)としては、上記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が好ましく、より好ましくは上記式(1−1)で表される化合物である。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においてイソシアヌル酸誘導体(B)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、イソシアヌル酸誘導体(B)としては市販品を使用することもでき、このような市販品として、例えば、商品名「TEPIC」(日産化学工業(株)製)、商品名「MA−DGIC」(四国化成工業(株)製)、商品名「DA−MGIC」(四国化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0049】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるイソシアヌル酸誘導体(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、より好ましくは8〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部である。イソシアヌル酸誘導体(B)の含有量を5重量部以上とすることにより、硬化物の密着性、耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。一方、イソシアヌル酸誘導体(B)の含有量が100重量部を超えると、イソシアヌル酸誘導体(B)の硬化性エポキシ樹脂組成物における溶解性が低下し、硬化物の物性に悪影響が及ぶ場合がある。
【0050】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン重合性化合物(カチオン硬化性化合物)の全量(100重量%)に対するイソシアヌル酸誘導体(B)の割合は、特に限定されないが、1〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは8〜25重量%である。イソシアヌル酸誘導体(B)の割合を1重量%以上とすることにより、硬化物の密着性、耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。一方、イソシアヌル酸誘導体(B)の割合が40重量%を超えると、イソシアヌル酸誘導体(B)の硬化性エポキシ樹脂組成物における溶解性が低下し、硬化物の物性に悪影響が及ぶ場合がある。
【0051】
[オキセタン化合物(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるオキセタン化合物(C)は、分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物である。オキセタン化合物(C)が分子内に有するオキセタン環の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜4個である。
【0052】
オキセタン化合物(C)としては、公知乃至慣用のオキセタン化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0053】
中でも、オキセタン化合物(C)としては、硬化物の密着性、耐熱衝撃性をいっそう向上させる点で、分子内に1個の水酸基を有する化合物(「オキセタン化合物(C1)」と称する場合がある;分子内に1個以上のオキセタン環及び1個の水酸基を有する化合物)が好ましい。オキセタン化合物(C1)としては、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においてオキセタン化合物(C)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、オキセタン化合物(C)としては市販品を使用することもでき、このような市販品として、例えば、商品名「アロンオキセタンOXT−101」、「アロンオキセタンOXT−221」(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0055】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるオキセタン化合物(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、10〜150重量部が好ましく、より好ましくは15〜125重量部、さらに好ましくは20〜120重量部である。オキセタン化合物(C)の含有量を10重量部以上とすることにより、硬化物の密着性、耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。一方、オキセタン化合物(C)の含有量を150重量部以下とすることにより、硬化物の透明性、耐熱性、耐候性がより向上する傾向がある。
【0056】
[硬化触媒(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに硬化触媒(D)を含んでいてもよい。硬化触媒(D)は、脂環式エポキシ化合物(A)、イソシアヌル酸誘導体(B)、オキセタン化合物(C)などのカチオン硬化性化合物の硬化反応(重合反応)を開始及び/又は促進させることにより、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化触媒(D)としては、特に限定されないが、例えば、光照射や加熱処理等を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させるカチオン重合開始剤(光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等)や、ルイス酸・アミン錯体、ブレンステッド酸塩類、イミダゾール類等が挙げられる。
【0057】
硬化触媒(D)としての光カチオン重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩などが挙げられ、より具体的には、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩(特に、トリアリールスルホニウム塩);ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;N−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート等のピリジニウム塩等が挙げられる。また、光カチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製);商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー製);商品名「イルガキュア264」(BASF製);商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製)などの市販品を好ましく使用することもできる。
【0058】
硬化触媒(D)としての熱カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などが挙げられ、商品名「PP−33」、「CP−66」、「CP−77」(以上(株)ADEKA製);商品名「FC−509」(スリーエム製);商品名「UVE1014」(G.E.製);商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」、「サンエイド SI−110L」、「サンエイド SI−150L」(以上、三新化学工業(株)製);商品名「CG−24−61」(BASF製)などの市販品を好ましく使用することができる。さらに、熱カチオン重合開始剤としては、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物等も挙げられる。
【0059】
硬化触媒(D)としてのルイス酸・アミン錯体としては、公知乃至慣用のルイス酸・アミン錯体系硬化触媒を使用することができ、特に限定されないが、例えば、BF
3・n−ヘキシルアミン、BF
3・モノエチルアミン、BF
3・ベンジルアミン、BF
3・ジエチルアミン、BF
3・ピペリジン、BF
3・トリエチルアミン、BF
3・アニリン、BF
4・n−ヘキシルアミン、BF
4・モノエチルアミン、BF
4・ベンジルアミン、BF
4・ジエチルアミン、BF
4・ピペリジン、BF
4・トリエチルアミン、BF
4・アニリン、PF
5・エチルアミン、PF
5・イソプロピルアミン、PF
5・ブチルアミン、PF
5・ラウリルアミン、PF
5・ベンジルアミン、AsF
5・ラウリルアミン等が挙げられる。
【0060】
硬化触媒(D)としてのブレンステッド酸塩類としては、公知乃至慣用のブレンステッド酸塩類を使用することができ、特に限定されないが、例えば、脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0061】
硬化触媒(D)としてのイミダゾール類としては、公知乃至慣用のイミダゾール類を使用することができ、特に限定されないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0062】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化触媒(D)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、上述のように、硬化触媒(D)としては市販品を使用することもできる。
【0063】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化触媒(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.05〜8重量部である。硬化触媒(D)を上記範囲内で使用することにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化速度が速くなり、硬化物の耐熱性及び透明性がバランスよく向上する傾向がある。
【0064】
[硬化剤(E)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに(例えば、硬化触媒(D)の代わりに)硬化剤(E)を含んでいてもよい。硬化剤(E)は、脂環式エポキシ化合物(A)、イソシアヌル酸誘導体(B)、オキセタン化合物(C)等のカチオン硬化性化合物と反応することにより、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化剤(E)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、アミン類(アミン系硬化剤)、ポリアミド樹脂、イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)、ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0065】
硬化剤(E)としての酸無水物類(酸無水物系硬化剤)としては、公知乃至慣用の酸無水物系硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。一方、25℃で固体状の酸無水物については、例えば、25℃で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(E)としての取り扱い性が向上する傾向がある。酸無水物系硬化剤としては、硬化物の耐熱性、透明性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
【0066】
硬化剤(E)としてのアミン類(アミン系硬化剤)としては、公知乃至慣用のアミン系硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−3,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0067】
硬化剤(E)としてのフェノール類(フェノール系硬化剤)としては、公知乃至慣用のフェノール系硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、パラキシリレン・メタキシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパンなどが挙げられる。
【0068】
硬化剤(E)としてのポリアミド樹脂としては、例えば、分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のいずれか一方又は両方を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0069】
硬化剤(E)としてのイミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)としては、公知乃至慣用のイミダゾール系硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0070】
硬化剤(E)としてのポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)としては、例えば、液状のポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0071】
硬化剤(E)としてのポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシル基含有ポリエステル等が挙げられる。
【0072】
中でも、硬化剤(E)としては、硬化物の耐熱性、透明性の観点で、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)が好ましい。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化剤(E)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、硬化剤(E)としては、市販品を使用することもできる。例えば、酸無水物系硬化剤の市販品としては、商品名「リカシッド MH−700」、「リカシッド MH−700F」(以上、新日本理化(株)製);商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0073】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは80〜150重量部である。より具体的には、硬化剤(E)として酸無水物類を使用する場合、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(E)の含有量を50重量部以上とすることにより、十分に硬化させることができ、硬化物の強靭性がより向上する傾向がある。一方、硬化剤(E)の含有量を200重量部以下とすることにより、着色が抑制され、色相に優れた硬化物が得られる傾向がある。
【0074】
[硬化促進剤(F)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、特に硬化剤(E)を含む場合には、さらに硬化促進剤(F)を含むことが好ましい。硬化促進剤(F)は、カチオン硬化性化合物(特に、エポキシ基を有する化合物)が硬化剤(E)と反応する際に、その反応速度を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤(F)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル;トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛などの有機金属塩;アルミニウムアセチルアセトン錯体などの金属キレートなどが挙げられる。
【0075】
なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化促進剤(F)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、硬化促進剤(F)としては、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「U−CAT 12XD」(開発品)(以上、サンアプロ(株)製);商品名「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製);商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0076】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化促進剤(F)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部、さらに好ましくは0.03〜2重量部である。硬化促進剤(F)の含有量を0.01重量部以上とすることにより、いっそう効率的な硬化促進効果が得られる傾向がある。一方、硬化促進剤(F)の含有量を5重量部以下とすることにより、着色が抑制され、色相に優れた硬化物が得られる傾向がある。
【0077】
[無機フィラー(G)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに無機フィラー(G)を含んでいてもよい。無機フィラー(G)としては、公知乃至慣用の無機フィラーを使用することができ、特に限定されないが、シリカフィラー(ナノシリカなど)、アルミナフィラー、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム(ナノジルコニアなど)、酸化チタン(ナノチタニアなど)、チタン酸バリウム、カオリン、ベントナイト、珪藻土、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、ガラスフィラー、ガラス繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、セルロースなどが挙げられる。
【0078】
無機フィラー(G)は、表面改質剤により表面が改質されたものであってもよい。上記表面改質剤としては、公知乃至慣用の表面改質剤が挙げられ、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜12の飽和又は不飽和モノ及びポリカルボン酸類;上記ポリカルボン酸類のエステル類;アミド類;β−ジカルボニル化合物;シランカップリング剤等が挙げられる。
【0079】
なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において無機フィラー(G)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、無機フィラー(G)としては、市販品を使用することもできる。
【0080】
無機フィラー(G)の中でも、硬化物の高い透明性と耐熱衝撃性の両立の観点で、シリカフィラー、ガラスフィラーが好ましく、より好ましくはガラスフィラーである。
【0081】
シリカフィラーとしては、公知乃至慣用のシリカフィラーを使用することができ、特に限定されないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、高純度合成シリカなどが挙げられる。
【0082】
シリカフィラーの形状は、特に限定されないが、球状、破砕状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカー状などが挙げられる。
【0083】
シリカフィラーは、公知乃至慣用の方法により製造することができる。また、シリカフィラーとしては、市販品を使用することもでき、例えば、商品名「ヒューズレックスRD−8」((株)龍森製)、商品名「HPS−0500」(東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0084】
ガラスフィラーとしては、公知乃至慣用のガラスフィラーを使用することができ、特に限定されないが、例えば、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラス、ガラス繊維、ガラス繊維布(例えば、ガラスクロス、ガラス不織布など)などが挙げられる。
【0085】
ガラスフィラーを構成するガラスの種類としては、特に限定されないが、例えば、Tガラス、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Lガラス、Dガラス、NEガラス、石英ガラス、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが挙げられる。中でも、イオン性不純物が少なく、耐熱性及び電気絶縁性に優れる点で、Eガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においてガラスフィラーは、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0086】
ガラスフィラーのナトリウムD線(波長589.29nmの光)の屈折率は、特に限定されないが、1.40〜2.10が好ましく、より好ましくは1.45〜1.60である。屈折率を上記範囲に制御することにより、硬化物の透明性が向上する傾向がある。なお、ガラスフィラーのナトリウムD線の屈折率は、例えば、アッベ屈折計(測定温度:25℃)を使用して測定することができる。
【0087】
ガラスフィラーは、各種の公知乃至慣用の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。上記表面処理剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、無機酸などが挙げられる。上記表面処理により、ガラスフィラーのその他の成分(例えば、カチオン硬化性化合物等)との界面における濡れ性、親和性、密着性が向上する場合がある。
【0088】
上記ガラスフィラーは、公知乃至慣用の方法により製造することができる。また、ガラスフィラーとしては、市販品を使用することもでき、例えば、商品名「ガラスビーズCF0018WB15C」(日本フリット(株)製)、商品名「ガラスビーズCF0018WB15」(日本フリット(株)製)、商品名「ガラス粉末L−BSL7」((株)オハラ製)、商品名「ガラス粉末L−LAH81」((株)オハラ製)などが挙げられる。
【0089】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における無機フィラー(G)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、カチオン硬化性化合物の全量100重量部に対して、1〜25重量部が好ましく、より好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部である。無機フィラー(G)の含有量を1重量部以上とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。一方、無機フィラー(G)の含有量を25重量部以下とすることにより、硬化物の透明性がより向上する傾向がある。
【0090】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における無機フィラー(G)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは2〜40重量部、さらに好ましくは3〜30重量部である。無機フィラー(G)の含有量を1重量部以上とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。一方、無機フィラー(G)の含有量を50重量部以下とすることにより、硬化物の透明性がより向上する傾向がある。
【0091】
[添加剤]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の水酸基を有する化合物を含有させると、反応を緩やかに進行させることができる。その他にも、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、硬化助剤、オルガノシロキサン化合物、金属酸化物粒子、ゴム粒子、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、シランカップリング剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、染料等の慣用の添加剤を使用することができる。
【0092】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、特に限定されないが、上述の各成分を、必要に応じて加熱した状態で、攪拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、2以上に分割された成分(各成分は2以上の成分の混合物であってもよい)を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。上記攪拌・混合の方法は、特に限定されず、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザーなどの各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式攪拌装置などの公知乃至慣用の攪拌・混合手段を使用できる。また、攪拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
【0093】
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、高い透明性、耐熱性、及び耐光性を有し、特に密着性が高く、耐熱衝撃性に優れた硬化物(本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を「本発明の硬化物」と称する場合がある)を得ることができる。硬化の手段としては、加熱処理や光照射処理等の公知乃至慣用の手段を利用できる。加熱により硬化させる際の温度(硬化温度)は、特に限定されないが、45〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜190℃、さらに好ましくは55〜180℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)は、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分である。硬化温度と硬化時間が上記範囲の下限値より低い場合は硬化が不十分となり、逆に上記範囲の上限値より高い場合は樹脂成分の分解が起きる場合があるので、いずれも好ましくない。硬化条件は種々の条件に依存するが、例えば、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。また、硬化は、一段階で行うこともできるし、二段階以上の多段階で行うこともできる。
【0094】
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、光半導体装置における光半導体(光半導体素子)を封止するための樹脂組成物、即ち、光半導体封止用樹脂組成物(光半導体装置における光半導体素子の封止剤)として好ましく使用できる。上記光半導体封止用樹脂組成物として用いることにより、高い透明性、耐熱性、耐光性を有し、耐熱衝撃性に優れた硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。上記光半導体装置は、熱衝撃や高温の熱が加えられた場合でも光度低下が生じにくく、耐久性が高い。
【0095】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置である。光半導体素子の封止は、上述の方法で調製した硬化性エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して行う。これにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。硬化温度と硬化時間は、硬化物の調製時と同様の範囲で適宜設定することができる。
【0096】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の光半導体素子の封止用途に限定されず、例えば、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリなどの用途にも使用することができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表1、2における「−」は、当該成分の配合を行わなかったことを意味する。
【0098】
実施例1
まず、表1に示す配合割合(単位:重量部)で、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)、及び商品名「TEPIC」(日産化学工業(株)製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合した。なお、上記混合は、80℃で1時間攪拌することにより実施した。冷却後、商品名「アロンオキセタンOXT−101」(東亞合成(株)製)、及び、商品名「サンエイド SI−100L」(硬化触媒、三新化学工業(株)製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を製造した。
さらに、上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を
図1に示す光半導体のリードフレーム(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、150℃のオーブン(樹脂硬化オーブン)で2時間加熱することで、上記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を得た。なお、
図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
【0099】
実施例2〜8、比較例1〜6
硬化性エポキシ樹脂組成物の組成を表1に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、イソシアヌル酸誘導体(B)を使用しない場合には、室温で混合を実施した。
また、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
【0100】
製造例1
(硬化剤組成物(K剤)の製造)
表2に示す配合割合(単位:重量部)で、商品名「リカシッド MH−700」(硬化剤、新日本理化(株)製)、商品名「U−CAT 18X」(硬化促進剤、サンアプロ(株)製)、及びエチレングリコール(添加剤、和光純薬工業(株)製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して硬化剤組成物(「K剤」と称する場合がある)を製造した。
【0101】
実施例9
まず、表2に示す配合割合(単位:重量部)で、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)、商品名「TEPIC」(日産化学工業(株)製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合した。なお、上記混合は、80℃で1時間攪拌することにより実施した。冷却後、商品名「アロンオキセタンOXT−101」(東亞合成(株)製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、混合物(カチオン硬化性化合物の混合物)を製造した。
次に、表2に示す配合割合(単位:重量部)となるように、上記で得た混合物と、製造例1で得た硬化剤組成物(K剤)とを自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
さらに、上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を
図1に示す光半導体のリードフレーム(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、120℃のオーブン(樹脂硬化オーブン)で5時間加熱することで、上記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を得た。
【0102】
実施例10〜16、比較例7〜12
硬化性エポキシ樹脂組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は実施例9と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、実施例15、16の場合、無機フィラー(G)はカチオン硬化性化合物の混合物と硬化剤組成物とを混合する際に配合した。
また、実施例9と同様にして光半導体装置を作製した。
【0103】
<評価>
実施例及び比較例で得られた光半導体装置について、下記の評価試験を実施した。
【0104】
[高温通電試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置の全光束を全光束測定機を用いて測定し、これを「0時間の全光束」とした。さらに、85℃の恒温槽内で100時間、光半導体装置に20mAの電流を流した後の全光束を測定し、これを「100時間後の全光束」とした。そして、次式から光度保持率を算出した。結果を表1、2の「光度保持率[%]」の欄に示す。
{光度保持率(%)}
={100時間後の全光束(lm)}/{0時間の全光束(lm)}×100
【0105】
[熱衝撃試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個ずつ用いた)に対し、−40℃の雰囲気下に30分曝露し、続いて、100℃の雰囲気下に30分曝露することを1サイクルとした熱衝撃を、熱衝撃試験機を用いて200サイクル分与えた。
その後、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を使用して光半導体装置を観察し、硬化物(封止材)に長さが90μm以上のクラックが発生したか否か、及び、電極剥離(電極表面からの硬化物(封止材)の剥離)が発生したか否かを確認した。光半導体装置2個のうち、硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数を表1、2の「熱衝撃試験[クラック数]」の欄に示し、電極剥離が発生した光半導体装置の個数を表1、2の「熱衝撃試験[剥離数]」の欄に示した。
【0106】
[総合判定]
各試験の結果、下記(1)〜(3)をいずれも満たすものを○(良好)と判定した。一方、下記(1)〜(3)のいずれかを満たさない場合には×(不良)と判定した。
(1)高温通電試験:光度保持率が90%以上
(2)熱衝撃試験:硬化物(封止材)に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数が0個
(3)熱衝撃試験:電極剥離が生じた光半導体装置の個数が0個
結果を表1、2の「総合判定」の欄に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
なお、実施例、比較例で使用した成分は、以下の通りである。
(脂環式エポキシ化合物(A))
セロキサイド2021P:商品名「セロキサイド2021P」[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート]、(株)ダイセル製
(イソシアヌル酸誘導体(B))
TEPIC:商品名「TEPIC」[トリグリシジルイソシアヌレート]、日産化学工業(株)製
MA−DGIC:商品名「MA−DGIC」[モノアリルジグリシジルイソシアヌレート]、四国化成工業(株)製
DA−MGIC:商品名「DA−MGIC」[ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート]、四国化成工業(株)製
(オキセタン化合物(C))
OXT−101:商品名「アロンオキセタンOXT−101」[3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン]、東亞合成(株)製
OXT−221:商品名「アロンオキセタンOXT−221」[3−エチル{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン]、東亞合成(株)製
(無機フィラー(G))
シリカフィラー:商品名「ヒューズレックスRD−8」[シリカフィラー]、(株)龍森製
ガラスフィラー:商品名「ガラスビーズCF0018WB15C」[ガラスビーズ、表面処理有り(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、屈折率1.52、平均粒子径20μm]、日本フリット(株)製
(硬化触媒(D))
サンエイド SI−100L:商品名「サンエイド SI−100L」、三新化学工業(株)製
(硬化物(E))
MH−700:商品名「リカシッド MH−700」[4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30]、新日本理化(株)製
(硬化促進剤(F))
U−CAT 18X:商品名「U−CAT 18X」、サンアプロ(株)製
(添加剤)
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
【0110】
試験機器
・樹脂硬化オーブン
エスペック(株)製 GPHH−201
・恒温槽
エスペック(株)製 小型高温チャンバー ST−120B1
・全光束測定機
オプトロニックラボラトリーズ社製 マルチ分光放射測定システム OL771
・熱衝撃試験機
エスペック(株)製 小型冷熱衝撃装置 TSE−11−A