特許第6461002号(P6461002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461002
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】口腔局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20190121BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190121BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/34
   A61K8/44
   A61K8/60
   A61K8/24
   A61K8/21
   A61K8/81
   A61K8/365
   A61K8/02
   A61Q11/00
   A61K31/047
   A61K31/198
   A61K31/185
   A61K31/255
   A61K31/728
   A61P1/02
   A61K9/68
   A61K9/70
   A61K9/12
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-546975(P2015-546975)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2016-510308(P2016-510308A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】EP2013076080
(87)【国際公開番号】WO2014095489
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】12197696.3
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503109640
【氏名又は名称】サンスター スイス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】森 茂樹
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−153677(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/158580(WO,A2)
【文献】 特開2012−097034(JP,A)
【文献】 特表2004−520341(JP,A)
【文献】 特表2008−525475(JP,A)
【文献】 特開昭63−132820(JP,A)
【文献】 特表2010−519279(JP,A)
【文献】 特開平11−130644(JP,A)
【文献】 特表2003−519167(JP,A)
【文献】 特表平11−502527(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/121081(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0104128(US,A1)
【文献】 特開平03−083920(JP,A)
【文献】 特表2005−504109(JP,A)
【文献】 国際公開第00/056344(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/00
A61P 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウリン又はその塩、キシリトール及びプロパン−1,3−ジオール、ならびにベタインを含む口腔局所用組成物であって、タウリン又はその塩の濃度が0.01〜5.0重量%であり、キシリトールの濃度が0.1〜10.0重量%であり、プロパン−1,3−ジオールの濃度が0.1〜30.0重量%であり、そしてベタインの濃度が0.5〜5.0重量%である口腔局所用組成物(但し、当該口腔局所用組成物は、疎水変性ポリエーテルウレタンを含まない)
【請求項2】
ヒアルロン酸ナトリウムをさらに含む、請求項1記載の口腔局所用組成物。
【請求項3】
ミネラル補給剤をさらに含む、請求項1〜2のいずれか一項記載の口腔局所用組成物。
【請求項4】
前記ミネラル補給剤が、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、アミンフッ化物(ヘキサデシルアミンヒドロフルオリド、ビス−(ヒドロキシエチル)アミノプロピル−N−ヒドロキシエチル−オクタデシルアミンジヒドロフルオリド、N−N’,N’−トリ(ポリオキシエチレン)−N−ヘキサデシル−プロピレンジアミンジヒドロフルオリド又はオクタデセニルアミンヒドロフルオリド)、リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸三カリウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム及び炭酸カルシウムなどの、フッ化物アニオン、リン酸アニオン、ナトリウムカチオン及びカリウムカチオンからなる群より選択される、請求項3記載の口腔局所用組成物。
【請求項5】
前記ミネラル補給剤がモノフルオロリン酸ナトリウム又はフッ化ナトリウムである、請求項4記載の口腔局所用組成物。
【請求項6】
潤滑剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の口腔局所用組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤がポリビニルピロリドンである、請求項6記載の口腔局所用組成物。
【請求項8】
唾液の流れを刺激するための化合物をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の口腔局所用組成物。
【請求項9】
唾液の流れを刺激するための前記化合物がクエン酸塩又はクエン酸である、請求項8記載の口腔局所用組成物。
【請求項10】
ゲル、スプレー、練り歯磨き、洗口剤、口腔パッチ剤、チューインガム又は錠剤の形態である、請求項1〜9のいずれか一項記載の口腔局所用組成物。
【請求項11】
口内乾燥の症候を緩和又は解消するための、請求項1〜10のいずれか一項記載の口腔局所用組成物。
【請求項12】
口腔潰瘍を予防又は治療するための、請求項1〜10のいずれか一項記載の口腔局所用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウリン、プロパンジオール及びキシリトールを含む口腔局所用組成物、並びに口内乾燥の症候を緩和若しくは解消するため、及び/又は口内炎を予防若しくは治療するための、その使用に関する。
【0002】
背景技術
口内乾燥又は口内乾燥症は、唾液腺の活性の低下によって引き起こされる。唾液の流れの減少は、不快感をもたらし、発話及び嚥下を妨げ、義歯の装着を困難にし、口臭を引き起こし、また口腔pHの低下と細菌増殖の増加とを引き起こすことによって口腔衛生を損なう可能性がある。長期間にわたる口内乾燥は、重度の虫歯及び口腔カンジダ症をもたらす可能性がある。口内乾燥は高齢者に共通の愁訴であり、老人の約20%は口内乾燥に冒されている。
【0003】
口内乾燥の原因は種々相違し、ストレス、唾液腺の感染、若しくは抗コリン作動薬、抗パーキンソン薬、抗新生物薬などの薬物の使用、頭頸部への放射線(ガン処置のため)などの多くの因子が関わり、又はシェーグレン症候群及びHIV/AIDSなどの特定の疾患、コントロール不良の糖尿病、並びに他の障害にも関連しうる。
【0004】
口内乾燥は現在、洗口液、局所塗布剤、代用唾液、又はシュガーレスキャンディ及びチューインガムなどの唾液の刺激薬で処置される。唾液刺激薬は、いくつか市販されている。現在の処置は、症候を軽減すること、及びう蝕を予防することが中心になっている。人工唾液製品は、口内乾燥症患者に多くの場合に選択される処置である。
【0005】
口内乾燥によって、口腔粘膜、歯肉組織及び舌上の味蕾などの口腔軟組織が、身体的に、物理化学的に、及び生物学的に、より損傷を受けやすくなる可能性がある。しかしながら、現存の処置/製品は、軟組織不調の問題を解決するものではない。本発明の組成物は、口腔軟組織の保護及び修復促進の効果によって当該問題を解決する。
【0006】
口内炎及び口腔病変は、口腔粘膜に起こる炎症形態であって火傷及び外傷に類似の紅斑性病変を伴い、このような有痛性の潰瘍のために咀嚼及び嚥下が困難になり、その患者の生活の質が損なわれてしまう。口腔粘膜の層が除去され、下方の神経終末部が曝されるので、それら口内炎及び口腔病変は痛みを伴う。
【0007】
矯正用ブリッジ及び義歯の適合不良、物理的又は化学的外傷、口内乾燥、免疫抑制薬物の摂取、熱傷、アレルギー、微生物又はウイルス感染を含め、多くの様々な原因が挙げられる。一旦形成されると、潰瘍は炎症及び/又は二次感染によって維持されうる。二種の一般的な口腔潰瘍の類型は、アフター性潰瘍(口内靡爛)と、口唇ヘルペスである。口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)によって引き起こされる可能性がある。
【0008】
口内炎は、局所用リンス剤、局所用ゲル及び液剤、行動の改変、鎮痛剤及び予防的措置で管理される。
【0009】
発明の概要
本発明によって、タウリン、キシリトール及びプロパン−1,3−ジオールを含有する組成物を口の粘膜に局所的に適用すると口内乾燥に有益な効果を奏し、且つ口腔粘膜の再生を促進することが見出されている。
【0010】
本発明は、タウリン又はその塩、キシリトール及びプロパン−1,3−ジオールを含む口腔局所用組成物を提供する。
【0011】
タウリン(2−アミノエタンスルホン酸)は、動物組織内に広く分布する有機酸である。タウリンは、哺乳類の血漿及び細胞に高濃度で存在し、多くの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。タウリンは浸透圧調節性、抗酸化性、抗アポトーシス性、抗炎症性及び抗脂肪性活性を有することが示されている。
【0012】
キシリトールはポリオールに分類され、「無糖」甘味料と考えられる。キシリトールは、虫歯の危険性を低減することが知られている。
【0013】
プロパン−1,3−ジオールは、Zemea(登録商標)の商標名にて市販されており、皮膚軟化薬、湿潤剤、感触改変剤又は溶媒であることが知られている。
【0014】
本発明の組成物は、口腔軟組織を保護し、またそれらの修復を促進することや、口腔軟組織の炎症を軽減することや、味蕾の保護によって味覚障害を予防すること、そして湿潤剤機能によって乾燥による損傷から保護することができる。
【0015】
組成物中のタウリンの濃度は、0.01から5.0重量%までで変動し、その濃度は、好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0016】
組成物中のキシリトールの濃度は、0.1から10.0重量%までで変動し、その濃度は、好ましくは0.5〜5.0重量%である。
【0017】
組成物中のプロパン(propone)−1,3−ジオールの濃度は、0.1から30.0重量%までで変動し、その濃度は、好ましくは2.0〜20.0重量%である。
【0018】
前記組成物は、ヒアルロン酸ナトリウムをさらに含んでもよい。
【0019】
ヒアルロン酸ナトリウムは、0.01〜1.0重量%の濃度で存在し、その濃度は、好ましくは0.05〜0.3重量%である。ヒアルロン酸ナトリウムの分子量(MW)は、好ましくは1.0〜1.5×10である。
【0020】
本発明の組成物は、ミネラル補給剤、浸透圧保護剤、潤滑剤、唾液の流れを刺激するための化合物などの成分をさらに含んでもよい。
【0021】
ミネラル補給剤は、好ましくは、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、アミンフッ化物(ヘキサデシルアミンヒドロフルオリド、ビス−(ヒドロキシエチル)アミノプロピル−N−ヒドロキシエチル−オクタデシルアミンジヒドロフルオリド、N−N’,N’−トリ(ポリオキシエチレン)−N−ヘキサデシル−プロピレンジアミンジヒドロフルオリド又はオクタデセニルアミンヒドロフルオリド)、リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸三カリウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム及び炭酸カルシウムなどの、フッ化物アニオン、リン酸アニオン、ナトリウムカチオン及びカリウムカチオンの中から選択される。
【0022】
好ましいミネラル補給剤は、モノフルオロリン酸ナトリウムであり、これは好ましくは0.10〜1.14重量%の濃度で存在する。
【0023】
浸透圧保護剤は、好ましくはベタインであり、これは好ましくは0.5〜5.0重量%の濃度で存在する。
【0024】
好ましい潤滑剤は、ポリビニルピロリドンであり、これは好ましくは0.01〜5.0重量%の濃度で存在する。
【0025】
唾液の流れを刺激するための化合物は、クエン酸塩又はクエン酸であってもよい。唾液の流れを刺激するための好ましい化合物は、クエン酸ナトリウム/クエン酸であり、これは好ましくは0.5〜5.0重量%の濃度で存在する。本発明の組成物は、必要な官能及び流動学的特性を得るために、当業者に公知の必要な含有物すべてを、その都度含むことができる。
【0026】
本願請求項にかかる口腔局所用組成物は、ゲル、スプレー、練り歯磨き、洗口剤、口腔パッチ剤、チューインガム及び錠剤の形態とされうる。
【0027】
実施例
実施例1
【表1】
【0028】
実施例2
【表2】
【0029】
実施例3
【表3】
【0030】
実施例4
【表4】