(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461094
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】中性子検出器によって検出された信号を処理するためのデバイス及びそれに関連する制御デバイス
(51)【国際特許分類】
G21C 17/10 20060101AFI20190121BHJP
G01T 3/00 20060101ALI20190121BHJP
G01T 1/185 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
G21C17/10 200
G01T3/00 A
G01T1/185 B
G01T3/00 D
G01T3/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-506848(P2016-506848)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公表番号】特表2016-516207(P2016-516207A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014056452
(87)【国際公開番号】WO2014166776
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】1353197
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ムニール・バッカリ
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・クロン
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ノルマン
【審査官】
道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−125725(JP,A)
【文献】
特公昭49−047465(JP,B1)
【文献】
特開平09−080159(JP,A)
【文献】
米国特許第06335958(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/10
G01T 1/185
G01T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個の中性子検出器(CFi)によって検出された信号(iCFi(t))を処理するためのデバイスであって、
それぞれ入力部及び出力部を有するn個のスイッチ(Ki)であって、各スイッチが入力部において異なる検出器からの検出信号を受信し、n個のスイッチの出力部が互いに接続されている、n個のスイッチ(Ki)と、
クロック回路(H)と、前記クロック回路によって制御され且つ複数のパルス列を伝える連動式カウンタ(Hi)とを備えたクロック発生器とを備え、
前記複数のパルス列のうちの各パルス列が異なるスイッチの制御信号を構成し、前記複数のパルス列のうち任意の二つのパルス列のパルスが分離される、デバイス。
【請求項2】
前記クロック発生器が、少なくとも一つの第一のパルス列のパルスの幅を少なくとも一つの第二のパルス列のパルスの幅に対して広げるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記中性子検出器の高直流電圧に対して前記スイッチ(Ki)を絶縁するための手段を更に備えた請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
複数の中性子検出器を備えた原子炉炉心を制御するためのデバイスであって、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出された信号を処理するためのデバイスを備えたデバイス。
【請求項5】
前記中性子検出器が核分裂電離箱である、請求項4に記載の原子炉炉心を制御するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子検出器によって検出された信号を処理するためのデバイス、及び原子炉炉心を制御(コマンドコントロール)するための関連デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
民間の発電用原子炉の炉心の制御及び保護は、現状では、複数の中性子検出器を用いることで保証されており、それら中性子検出器は、中性子束と、原子炉炉心によって放出されるパワーの軸方向分布とを測定するために炉心の高さをカバーする連続的信号を提供する。各中性子検出器は、制御室に送信される検出信号を提供する。
【0003】
制御室に検出信号を送信する電子システムは、複数のワイヤで形成される(検出器と同じ数だけの多数のワイヤが存在する)。このようなシステムは複雑な構造を有し、そのメンテナンスを行うことが難しくなることが多い。また、特定の接続部のインピーダンス整合が良好ではないと、特定の電気リンクの品質が良好なものではなくなり得る。そして、検出信号が部分的に反射され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の送信システムは、このような欠点を有さない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一組n個の中性子検出器によって検出された信号を処理するためのデバイスに関し、そのデバイスは、
‐ それぞれ入力部及び出力部を有するn個のスイッチであって、各スイッチがその入力部において異なる検出器からの検出信号を受信し、n個のスイッチの出力部が互いに接続されている、n個のスイッチと、
‐ クロック回路、及びそのクロック回路によって制御され且つ複数のパルス列を同時に伝える連動式カウンタを備えたクロック発生器とを備え、複数のパルス列のうちの各パルス列が異なるスイッチの制御信号を構成し、複数のパルス列のうち任意の二つのパルス列のパルスは時間的に分離される。
【0006】
本発明の更なる特徴によると、信号を処理するためのデバイスは、少なくとも一つの第一のパルス列のパルスの幅を少なくとも一つの第二のパルス列のパルスの幅に対して広げるための手段を有する。
【0007】
本発明の更に他の特徴によると、信号を処理するためのデバイスは、中性子検出器の高直流(DC)電圧に対してスイッチを絶縁するための手段を更に備える。本発明のこの特徴は、検出信号が取り出される箇所に中性子検出器の高直流電圧が存在する場合に実施される。
【0008】
また、本発明は、複数の中性子検出器と、本発明に係る信号を処理するためのデバイスとを備えた原子炉炉心を制御するためのデバイスにも関する。
【0009】
本発明の更なる特徴によると、中性子検出器は核分裂電離箱である。
【0010】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面を参照して好適な実施形態の説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る検出信号を送信するためのシステムを備えた制御デバイスの一例の概略図を表す。
【
図2】本発明に係る検出信号を送信するためのシステムの一例の概略図を表す。
【
図3A】
図2の送信システムに関連するクロック信号を表す。
【
図3B】
図2の送信システムに関連するクロック信号を表す。
【
図3C】
図2の送信システムに関連するクロック信号を表す。
【
図3D】
図2の送信システムに関連するクロック信号を表す。
【
図4】本発明の検出信号を送信するためのシステムの一例の二つの異なる動作モードを示す。
【
図5】本発明の検出信号を送信するためのシステムの一例の二つの異なる動作モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
全ての図面において、同じ参照番号は同じ要素を指称する。
【0013】
図1は、本発明の検出信号を処理するためのデバイスを備えた制御デバイスの一例の概略図を表す。
【0014】
制御デバイスは、検出信号を伝える一組n個の核分裂電離箱CF
iと、核分裂電離箱によって伝えられた検出信号をシリアル変換する信号処理デバイスDとを備える。核分裂電離箱CF
i(i=1,2,…,n)は原子炉炉心1に沿って配置される。原子炉炉心1、核分裂電離箱CF
i(i=1,2,…,n)及び処理デバイスDは、建物B内に配置される。送信線L及び電気的貫通部Tが、処理デバイスDによって伝えられた信号を建物Bから取り出すことを可能にする。
【0015】
図1に示される本発明の実施形態によると、制御デバイスの中性子検出器は核分裂電離箱である。本発明の他の実施形態によると、例えば、中性子検出器は、ガンマ線を補償する又は補償しないホウ素で内側が覆われた(ライニングされた)電離箱、ホウ素で内側が覆われた比例カウンタ等である。
【0016】
図2は、本発明の検出信号を処理するためのデバイスの一例の概略図を表す。
【0017】
図2の例では、処理デバイスDは、二つのアナログスイッチK
i(i=1,2)と、クロック回路Hと、連動式カウンタSqとを備える。より一般的には、本発明の処理デバイスDは、n個のアナログスイッチを備える。
【0018】
各アナログスイッチK
iは、その入力部において、核分裂電離箱CF
iから伝えられた電流i
CFi(t)を受信する。連動式カウンタSqは、三つのカスケードクロック回路H
1、H
2、H
3を備える。クロック回路Hは、非安定状態において自律的に動作することが好ましい。クロック回路Hによって伝えられるクロック信号は、連動式カウンタのクロック回路H
1を制御する。クロック回路H
1によって伝えらえるクロック信号C
1は、連動式カウンタのクロック回路H
2を制御し、また、スイッチK
1の制御信号を構成する。クロック回路H
2によって伝えられるクロック信号は、スイッチK
2の制御信号C
2を構成するクロック信号を伝えるクロック回路H
3を制御する。既知の方法で各種構成要素を用いて、クロック回路H
1、H
2、H
3によって伝えられるクロック信号の周波数及びデューティサイクルを調整することができる。
【0019】
スイッチの制御パルスの時間間隔を適切に空けるため、クロック回路H
2によって伝えられるクロック信号は、制御信号としては用いられない。より一般的には、連動式カウンタSqがn個のクロック回路を備える場合、一連のクロック回路H
k(k=2,4,6,…,n+(n−2))によって伝えられるクロック信号は、スイッチ制御信号を構成するのに用いられない。
【0020】
非限定的な例として、
図3Aは、クロック回路Hによって伝えられるクロック信号hを表し、
図3B、
図3C、
図3Dは、それぞれクロック回路H
1、H
2、H
3によって伝えられるクロック信号h
1、h
2、h
3を表す。クロック信号h
2は、スイッチ制御信号としては用いられない。クロック信号h
1、h
3はそれぞれスイッチK
1、K
2の制御信号C
1、C
2を構成する。
【0021】
クロック回路H
i(i=1,2,3)を制御するパルスの立ち下がりが、クロック回路H
i+1によって伝えられるクロック信号の立ち上がりを生じさせるように、連動式カウンタは動作する。クロック回路H
2によって伝えらえる信号の高レベル期間が、クロック回路H
1の出力とクロック回路H
3の出力との間の低レベル期間を定めることを可能にする。低レベル期間が信号C
2と信号C
1との間及び信号C
1と信号C
2との間で同一になるように、連動式カウンタの入力信号の周波数及びデューティサイクルは定められる。
【0022】
各アナログスイッチK
i(i=1,2)は、その入力部において、核分裂電離箱CF
iによって伝えられた電流i
CFi(t)を受信し、制御信号C
iの比率で分割された電流i
i(t)を伝える。異なる複数の電流i
i(t)が、処理デバイスDの出力部において集められて、それら電流i
i(t)の和である全電流i
T(t)を形成する。
【0023】
図4及び
図5は、非限定的な例として、二つの送信チャネルで構成された本発明の検出信号を送信するためのシステムの二つの異なる動作モードを示す。
【0024】
第一の動作モード(
図4を参照)では、制御信号C
1、C
2はそれぞれ同じ周波数及び同じ幅を有する二つのパルス列で構成される。制御信号C
1を構成するパルス列のパルスは、信号C
2を構成する二つの連続したパルスと同じ時間間隔にされ、その逆も同様である。本発明の第一の実施形態によると、電流パルスi
T(t)の中から、電流パルスi
1(t)と電流パルスi
2(t)とを区別することはできない。二つの核分裂電離箱のうち一方のみにおいて故障が生じると、制御デバイスは、故障が発生したことを認識することができるが、故障が生じている核分裂電離箱を識別することはできない。
【0025】
有利には、本発明の他の動作モード(
図5を参照)によると、電流パルスi
1(t)の幅が、電流パルスi
2(t)の幅と異なるように調整される。図示される例では、電流パルスi
2(t)の幅は、電流パルスi
1(t)の幅よりも大きくなるように調整される。これは、スイッチK
1及びK
2の制御信号を構成するクロック信号を注意深く選択することによって達成可能である。そして、異なる核分裂電離箱によって伝えられる電流を選択するための時間が、核分裂チャンバの一方と他方とで異なるように定められる。
【0026】
そして、電流i
1(t)及びi
2(t)で構成される電流i
T(t)がデジタル化される。電流i
T(t)をデジタル化することで、各核分裂電離箱について異なる数のデジタルサンプルが得られる。従って、複数の核分裂電離箱を識別することができる。核分裂電離箱で故障が生じると直ぐに、その故障の影響を受けている電離箱を識別することができる。
【符号の説明】
【0027】
B 建物
C 制御信号
CF 核分裂電離箱
D 信号処理デバイス
H クロック回路
K アナログスイッチ
Sq 連動式カウンタ