特許第6461100号(P6461100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6461100アピコンプレクサ病原体に対する新規ワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461100
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】アピコンプレクサ病原体に対する新規ワクチン
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20190121BHJP
   C07K 14/445 20060101ALI20190121BHJP
   C12N 15/30 20060101ALI20190121BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20190121BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20190121BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20190121BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20190121BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20190121BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20190121BHJP
【FI】
   C07K19/00ZNA
   C07K14/445
   C12N15/30
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/02 C
   A61P37/04
   A61P33/06
   A61K39/002
   A61K38/00
   A61K47/42
【請求項の数】10
【全頁数】87
(21)【出願番号】特願2016-509477(P2016-509477)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公表番号】特表2016-523821(P2016-523821A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】EP2014058409
(87)【国際公開番号】WO2014174054
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/815,486
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13165161.4
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597159765
【氏名又は名称】フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブース,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シュピーゲル,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】グベン,エドグ
(72)【発明者】
【氏名】ベイス,ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】サック,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】レイマン,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ライナー
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/047679(WO,A1)
【文献】 特表2009−505680(JP,A)
【文献】 Journal of Pharmaceutical Sciences, 2003, Vol. 92, No. 2, pp. 218-231
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した組換え融合タンパク質であって、前記寄生生物の少なくとも2種の異なる生活環の主な段階において、前記寄生生物の表面に提示される少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する複数の単離された熱安定性断片を含み、各断片が少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含み、
前記組換え融合タンパク質は、配列番号197の配列またはその配列の相同ポリペプチドを含み、前記相同ポリペプチドは、配列番号197に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、組換え融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項3】
請求項2に記載のヌクレオチド分子を含むベクター。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項5】
前記細胞が、酵母細胞または植物細胞である、請求項4に記載の宿主細胞。
【請求項6】
前記酵母がピキア・パストリス(Pichia pastoris)であり、かつ、前記植物がベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)またはタバコ(Nicotiana tabacum)である、請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
請求項1に記載の組換え融合タンパク質を精製する方法であって、
a)pH<8で前記融合タンパク質を発現する宿主細胞を懸濁し、55〜70℃の間の温度で前記懸濁液をインキュベートするステップ、
b)分離するステップ、
c)前記組換え融合タンパク質を含有する前記懸濁液の可溶性画分を集めるステップ、および
d)前記組換え融合タンパク質を精製するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
工程d)が、前記組換え融合タンパク質を処理するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
宿主細胞が、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)、カラシナ(Brassica juncea)、アブラナ(Brassica napus)、クロガラシ(Brassica nigra)、ブラシカ・オレラセアエ(Brassica oleraceae)、ブラシカ・トウルムフォルチー(Brassica tourmfortii)、シロガラシ(Smapis alba)およびダイコン(Raphanus sativus)からなる群から選択される種に由来する植物細胞である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対して感受性哺乳動物を免疫処置するためのワクチン組成物であって、有効成分として請求項1に記載の組換え融合タンパク質を含む、ワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本明細書に提供される技術は、概して、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物または病原体に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した新規融合タンパク質に関する。特に、本開示は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)および二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)を含むプラスモジウム属(Plasmodium)寄生生物に対するワクチンの基剤(basis)としての新規融合タンパク質に関する。前記組換え融合タンパク質をコードする核酸分子、核酸を含有するベクター、宿主細胞ならびにこのような融合タンパク質を調製および生成するための方法、前記融合タンパク質または前記融合タンパク質をコードする前記核酸分子の使用によって誘導または作製される抗体ならびに受動免疫療法のためのこのような抗体または組換え誘導体の使用、このような融合タンパク質を生成するための方法、マラリアの予防および治療のためのこのような融合タンパク質を使用するための組成物および方法も、本開示によって包含される。
【背景技術】
【0002】
背景
アピコンプレクサ門(Apicomplexa)は、軟体動物から哺乳動物までの広範囲に感染する、今日功を奏した、壊滅的な病原体に属する寄生生物を含む、およそ5000種の真核細胞原虫門である。アピコンプレクサ門(Apicomplexa)の多数の種が、医学的および獣医学的に重要な疾患を引き起こし、相当な経済的負担および健康管理全体の課題に相当する。この門のメンバーとして以下が挙げられる:
− プラスモジウム属(Plasmodium)、世界人口の10〜40%を苦しめ、アフリカでは5歳未満の小児の中では5人に1人の死亡の原因となっているマラリアの病因因子
− トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、トキソプラズマ症の原因物質。世界の人口の1/3〜半分がトキソプラズマ感染を保持すると推定されている。AIDS患者または妊娠中の女性などの免疫系の弱ったヒトにとって主要な病原体である
− クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、通常、健常なヒトでは重篤な疾病を引き起こさないが、免疫無防備状態のヒトには大きな健康問題である飲用水媒介性病原体、ならびに
− 農業的寄生生物エイメリア属(Eimeria)(家禽に感染し、100万ドル近くにも及ぶ収入の年間損失を引き起こす)、ネオスポラ属(Neospora)(ウシおよびイヌにおいて重要な病原体)、バベシア属(Babesia)(哺乳動物の第2の最も一般的な血液寄生生物であると考えられており、家畜に対して大きな健康上の影響を有する)およびタイレリア属(Theileria)(タイレリア症、ウシ、ヒツジおよびヤギの疾患の原因物質)。
【0003】
アピコンプレクサの生活環(life cycle)は複雑であり、3つの主な段階に分割され得、最初の2つは病原体の無性生殖(スポロゾイトおよびメロゾイトと呼ばれるこれらの原性生物のより正確な侵襲段階)のために働き、第3の段階は寄生生物の有性生殖を規定する。全般的な生活環はアピコンプレクサ(Apicomplexa)門に共通であるが、種間で著しい相違がある。
【0004】
図1は、アピコンプレクサの生活環を示す。上記のように、アピコンプレクサ門(Apicomplexa)のメンバーは、全般的な生活環を共有するが、各種はその自身の分化(specialization)を有する。プラスモジウム属(Plasmodium)の種およびタイレリア属(Theileria)の種はそれぞれ、昆虫ベクターであるハマダラカ属(Anopheles)の蚊およびコイタマダニ属(Rhipicephalus)のマダニにおいて伝達され、有性生殖による組換えを受ける。クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)はその宿主に自己感染でき、オーシストが同宿主において胞子形成し、脱嚢でき、数カ月から数年の間感染を維持する。コクシジウム寄生生物は、この図ではトキソプラズマ属(Toxoplasma)によって表され、温血動物の大部分に感染できる。トキソプラズマタキゾイトのガメトサイトへの分化は、ネコ科(ネコ科(Felidae))のメンバーが感染したときにのみ引き起こされる(Wasmuth et al., 2009)。
【0005】
いくつかのアピコンプレクサ門(Apicomplexa)は単一の宿主を必要とするが(例えばクリプトスポリジウム属(Cryptosporidium))、その他のものはより複雑であり、伝達のためにベクター種における有性生殖を必要とする(例えばタイレリア属(Theileria)およびプラスモジウム属(Plasmodium);図2を参照のこと)。
【0006】
アピコンプレクサ門(Apicomplexa)のメンバーは種々の宿主および細胞型に感染するが、それらは宿主細胞接着、侵襲および宿主細胞内での細胞内寄生体胞の確立に関与している、同様の数の特徴的なオルガネラを有する。オルガネラの蓄積は、種の間で変わるが、通常、ロブトリー、ミクロネームおよび密顆粒を含む。新規抗寄生生物化合物を開発するために、またアピコンプレクサの生物学の理解を進めるために、いくつかの大規模配列決定プロフェクトが開始され、15種のゲノムデータセットを利用できることが、門内で、上記のプロセスにおいて保存されたタンパク質ファミリーおよびその機能の同定への道を開いた。ドメイン解析も、アピコンプレクサのドメインの分類学的分布ならびにアピコンプレクサ門(Apicomplexa)に特徴的なドメインアーキテクチャの両方を同定した。
【0007】
マラリアは、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門原生動物の寄生生物、すなわちプラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物による感染によって引き起こされる疾患であり、全世界で毎年2億人以上の新規感染、および70万人以上の死亡を引き起こす。マラリアは、アフリカでは特に深刻な問題であり、5人に1人(20%)の小児の死亡はこの疾患の影響によるものである。アフリカの小児は毎年、平均して1.6から5.4の間のマラリア発熱のエピソードを有する。
【0008】
ヒトでは、マラリア疾患はプラスモジウム属(Plasmodium)寄生生物のうち5種:熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)および二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)によって引き起こされ、中でも最も蔓延しているのは熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)および三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)である。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)によって引き起こされるマラリア(悪性マラリア、熱帯熱マラリアまたは熱帯性マラリアとも呼ばれる)は最も危険な形態のマラリアであり、最高割合の合併症および死亡率を有する。ほとんどすべてのマラリアによる死亡は熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)によって引き起こされる。
【0009】
手短には、ヒトにおけるマラリア原虫の生活環は、ハマダラカ属(Anopheles)の蚊に刺されることによる2、3のスポロゾイトの播種で開始する。数分でスポロゾイトは肝細胞に侵入してその発達を開始し、シゾゴニーによって増殖する。三日熱マラリア原虫(P. vivax)および卵形マラリア原虫(P. ovale)の場合、いくつかのスポロゾイトがヒプノゾイトに分化し得、感染の遅発性再発の原因となる。マラリア原虫の種に応じて5〜14日の期間の後、シゾントは何千ものメロゾイトに発達し、これが血流中に放出され、赤血球(RBC)に侵入する。RBC内で各メロゾイトが、マラリア原虫の種に応じて、42〜72時間以内にトロホゾイトに発達し、これが成熟、分裂し、シゾントが生じ、これが十分に成熟した後、最大32個のメロゾイトを生じさせる。血流中に放出されたメロゾイトは他のRBCに侵入し、その生活環を維持する。いくつかのメロゾイトはRBCに侵入した後、有性型−雄または雌ガメトサイトに発達し、これも成熟および赤血球破裂後に血流に入る。雌のハマダラカ属(Anopheles)の蚊は、その吸血の際ガメトサイトを摂取し、感染することとなる。蚊の腸では雄ガメトサイトが雌ガメトサイトと融合し、腸壁と結合し、それを通過するオーキネートを形成し、その外面と結合したままオーシストに変換する。オーシストはスポロゴニーによって分裂し、数千ものスポロゾイトが生じ、それらが蚊の体腔中に放出され、最終的にその唾液腺に移動し、ここでそれらは成熟し、吸血のために宿主を刺すときにヒトにおいて新規感染を開始できるようになる。
【0010】
既存の抗マラリア薬クロロキンに対する熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の耐性は1960年代に出現し、それから蔓延した。さらにマラリア原虫は、過去数十年かけてほとんどのその他の抗マラリア薬に対する耐性を発達させた。これは熱帯諸国における公衆衛生および旅行者を大きく脅かす。抗マラリア薬耐性の蔓延および程度は増大し続けると考える十分な根拠がある。殺虫剤耐性ベクターおよび薬剤耐性寄生生物の数の増大が、有効なマラリアワクチンの需要をさらに増大する。マラリアワクチンは単一の作用様式に限定されず、マラリアによる負担を劇的に軽減する可能性がある。
【0011】
マラリアワクチンを開発する困難の一部は、上記のような寄生生物の多段階の生活環およびその宿主に起因する。寄生生物発達の各段階は、異なる種類の免疫応答を誘発する異なるセットの表面抗原を特徴とする。提示されるさまざまな表面抗原にもかかわらず、それらに対する免疫応答は有効でないことが多い。理由の1つはマラリア原虫抗原の大規模な配列多形であり、これが種々の分離株の免疫回避を促進する。
【0012】
最も顕著な血液段階(blood-stage)ワクチン候補の一部MSP1、MSP2、AMA1およびRESAが、前臨床動物モデルにおける増殖阻害抗体を誘導する能力のために、主に臨床試験のために選択された。しかし、これらの有望な最初のデータにもかかわらず、それらは概してヒトボランティアでは不十分な免疫原性を証明し、誘導された抗体の大部分は熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のin vitro増殖を阻害できなかった。
【0013】
前赤内期のワクチン(pre-erythrocytic vaccine)は、蚊によって注入される感染性形態(スポロゾイト)から保護する、および/または肝臓における寄生生物発達を阻害する。これまでに曝露されていない個体では、2、3の寄生生物が前赤内期のワクチンによって誘導された免疫防御を逃れた場合、それらは最終的に血液段階に入り、赤血球内で増殖し、最も悪化した疾患を確立する。
【0014】
赤血球または無性血液段階ワクチン(erythrocytic or asexual vaccine)は、赤血球における寄生生物の侵襲および増殖を阻害し、したがって血液感染の間の重症疾患症状を防ぐ(または減少させる)。しかし、寄生生物の伝達を防ぐことはない。
【0015】
有性段階(sexual-stage)ワクチンはワクチン接種されているヒトを保護しないが、代わりに、寄生生物が蚊によって取り込まれると、ワクチンに応じて生じた抗体とともに、寄生生物の発達を阻害することによって伝達のサイクルを妨げる。伝達阻止ワクチンは、寄生生物排出および抗前赤内期または赤血球治療に対する耐性全体の低減に向けられた多角的戦略の一部であり得る。
【0016】
マラリア原虫の前述の複数段階生活環は、相乗的ワクチンアプローチについて独特の課題を示す。マラリア原虫に対する免疫性は段階依存的であり、種依存的である。多数のマラリア研究者および教本の記述は、生活環の1段階のみに対応する単一抗原ワクチンは十分ではなく、有効な免疫性を誘導するには、寄生生物発達の異なる段階を標的とする複数抗原、複数段階ワクチンが必要であると考え結論づけている(Mahajan,Berzofsky et al. 2010)。複数抗原ワクチンの構築(可能性のある熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)エスケープ変異体を包囲しようという、ワクチンによって誘導される免疫応答の幅を増大する目的とした)は、(フルサイズ)抗原を一緒に遺伝子連結することによって、組換えタンパク質の混合物によって、または異なる寄生生物タンパク質および段階に由来するいくつかのペプチドを含有する、合成ペプチドベースの(15〜25マー)化学合成ワクチンによってのいずれかで達成され得る。
【0017】
いくつかの異なる抗原または単一抗原のいくつかの異なる対立遺伝子からなるポリタンパク質アプローチ(寄生生物に対して相乗的活性を有する抗体を誘導するための)は、抗原多様性および免疫回避のための熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の能力によって妨げられる(Richards,Beeson, 2009)。可能性のあるワクチン候補として多数の抗原が評価されたが、ほとんどの臨床治験は臨床マラリアを防ぐことに対して有意な影響を示さなかったものの、それらのうち一部は寄生生物増殖を低減させるとわかった。得られた融合タンパク質/ワクチン候補の大きさは、2、3の選択された抗原の組合せのみを許可する、選択された抗原が自然免疫の標的でないこと、および/または相当な遺伝的多形性を示すことを排除しない別の制限因子である。複対立遺伝子を有する高度に可変性の抗原が、自然なチャレンジ下での免疫応答の明白な標的であり、AMA1およびMSP2のワクチン研究は対立遺伝子特異的効果が達成され得ることを示唆する(Schwartz, 2012)。実施上の検討事項は多段階ワクチン、特にいくつかの抗原を含む多成分ワクチンに関連して増大した製造費用に対して、これらが単一生成ステップおよび単一送達技術によって包含され得る場合を除いて論じている(Hill, 2011)。現在組合せワクチンのみ(CSPおよびAMA1からなる)が、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の前赤内期および無性血液段階を標的とする臨床治験を受けている(Schwartz, 2012)。プラスモジウム属(Plasmodium)の3種の生活環の主な段階すべてを標的とする複数抗原ワクチン候補(ハマダラカ属(Anopheles)の蚊の有性段階を含み、したがって寄生生物伝達を妨げる)は、いまだ臨床治験で試験されていない。
【0018】
いわゆるSPf66ワクチンは、先駆的複数エピトープ、複数段階ペプチドベースのマラリアワクチンであった。まずコロンビアで製剤化され試験された(Patarroyo, 1988)後に、米国においても製造された。SPf66はミョウバンを用いてアジュバント添加され、最近になってQS−21を用いて試験された、スポロゾイト周囲のタンパク質(CSP)のNANP反復配列に由来するペプチドによって連結されたメロゾイト表面タンパク質1(MSP1)のエピトープからなる(Schwartz, 2012)。以来いくつかの合成ペプチドワクチンは、マウスマラリア(P.ベルゲイ(berghei)およびP.ヨエリ(yoelii))およびヒト(熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および三日熱マラリア原虫(P. vivax))マラリア両方のために生成され、免疫原性または免疫原性および有効性について試験されている。しかし初期の機運にもかかわらず、いくつかの理論的検討事項および技術的諸問題がこのワクチン開発アプローチの進捗を減速させてきた。ペプチドベースのワクチンアプローチの主要な欠点は、3次元タンパク質構造(例えば、フォールディングされたドメイン)および複雑な立体構造エピトープに必要とされることが多い周囲の配列状況を欠く、短い線形エピトープへのその制限にある。
【0019】
したがって、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対する新規および改善された複数段階ワクチンを利用できることは、高度に有利となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
開示の要旨
本開示は、寄生生物の少なくとも2つの異なる生活環の主な段階において、寄生生物の表面に提示される少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)の表面タンパク質に由来する複数の単離された熱安定性断片を含む、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対する、特に熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した新規融合タンパク質、特に組換え融合タンパク質に関し、ここで各断片は少なくとも1つのフォールティングされたドメインを含有する。
【0021】
一態様では、本開示の実施形態は、本開示の組換え融合タンパク質を生成および/または精製する方法を提供し、
a)本開示の融合タンパク質をコードする核酸を含む核酸構築物を提供するステップと、
b)核酸構築物を宿主細胞に導入するステップと、
c)融合タンパク質の発現を可能にする条件下で宿主細胞を維持するステップと、
d)細胞培養上清または抽出物の熱処理を含む、宿主細胞から融合タンパク質を精製するステップと、
e)任意選択で、融合タンパク質をさらに処理するステップと
を含む。
【0022】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、活性ウイルスを実質的に含まない、生物学的に活性な治療薬を調製する方法に関し、ここで本開示の所与の融合タンパク質および/またはワクチンの供給源は、特に熱処理および/または酸性処理によって、存在する任意のウイルスを不活性化するのに十分な条件下でウイルス不活性化ステップに付される。
【0023】
別の態様では、本開示の実施形態は、本開示の組換え融合タンパク質を精製する方法に関し、
a)pH<8で前記融合タンパク質を発現する宿主細胞を懸濁し、前記懸濁液を55〜70℃の間の温度でインキュベートするステップと、
b)分離するステップと、
c)組換え融合タンパク質を含有する懸濁液の可溶性画分を集めるステップと、
d)前記組換え融合タンパク質を精製し、任意選択でそれをさらに処理するステップと
を含む。
【0024】
別の態様では、本開示の実施形態は、本開示の組換え融合タンパク質を精製する方法に関し、
a)前記融合タンパク質を発現する宿主細胞の細胞培養物を回収する(havesting)ステップと
b)pH<8で前記宿主細胞を再懸濁し、前記懸濁液を55〜70℃の間の温度でインキュベートするステップと、
c)分離するステップと、
d)組換え融合タンパク質を含有する懸濁液の可溶性画分を集めるステップと、
e)前記組換え融合タンパク質を精製し、任意選択でそれをさらに処理するステップと
を含む。
【0025】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、本開示の1種または複数の組換え融合タンパク質と結合する単離された抗体またはその断片を含む抗体組成物に関する。
【0026】
別の態様では、本開示の実施形態は、本開示の組換え融合タンパク質および/または配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択されるアミノ酸配列またはその相同ポリペプチドを含む組成物に関し、ここで組成物は好ましくは医薬組成物および/または診断用組成物である。
【0027】
本開示のさらなる態様は、本開示の組換え融合タンパク質および/または配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択されるアミノ酸配列またはその相同ポリペプチドと、医薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関連する。
【0028】
別の態様では、本開示の実施形態は、本開示の組換え融合タンパク質を含む医薬組成物および/または診断用組成物に関する。
【0029】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、生理学的に許容される培地中に有効成分として本開示の組換え融合タンパク質と担体とを含む、マラリアに対して感受性哺乳動物を免疫処置するためのワクチン組成物に関する。
【0030】
さらに別の態様では、本開示の実施形態は、生理学的に許容される培地中に有効成分として本開示の組換え融合タンパク質および/または配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択されるアミノ酸配列またはその相同ポリペプチドと担体とを含む、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対して感受性哺乳動物を免疫処置するためのワクチン組成物に関する。
【0031】
さらに別の態様では、本開示の実施形態は、前記組換え融合タンパク質をコードする核酸ならびにこのような核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。
【0032】
その他の態様では、本開示は、熱帯性マラリア(malaria tropica)の予防における本開示の組換え融合タンパク質の使用に関する。
【0033】
さらに、有効量の本開示の融合タンパク質、本開示の組換え融合タンパク質を含む組成物または本開示のワクチン組成物を投与するステップを含む、アピコンプレクサ門(Apicomplexa)感染に対して、特に熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に対してヒトを免疫処置する方法が開示される。
【0034】
別の重要な態様では、本開示は、寄生生物の生活環において少なくとも2つの異なる段階において寄生生物の表面に提示される、少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する複数の、特に少なくとも4種の単離された熱安定性断片を含むアピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適したワクチン組成物に関し、ここで各断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有する。
【0035】
さらにもう1つの態様では、本開示の実施形態は、細胞培養上清または抽出物の熱処理によって、真核細胞発現宿主から本開示の組換え融合タンパク質を精製するための方法に関する。
【0036】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、熱処理による下流処理の間の組換えタンパク質生成物のウイルス不活性化に関する。
【0037】
本開示が詳細に記載される前に、記載される装置の特定の成分部分または記載される方法のプロセスステップは変わり得るので、本開示は、このような装置および方法に限定されないということが理解されるべきである。また、本明細書において使用される技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであり、限定とする意図がないということも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は文脈が明確に他のものを示さない限り、単数および/または複数の言及を含むということに留意されなければならない。数値によって範囲が定められるパラメータ範囲が与えられる場合には、範囲はこれらの限界値を含むと見なされるということがさらに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、種々のアピコンプレクサの寄生生物の一般的な生活環のスキームを示す図である(Wasmuth et al., 2009)。
図2図2は、種々のアピコンプレクサの寄生生物の中間宿主および終宿主の要約を示す図である(Wasmuth et al., 2009)。
図3図3は、本開示の熱安定性融合タンパク質の有利な実施形態の時間制御された熱処理を示す図である。
図4図4は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)EGF9_Ripr(配列番号16)および種々のアピコンプレクサの種におけるそのオルソログの例示的配列アラインメントを示す図である。
図5図5は、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)における、種々の熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)表面タンパク質の熱安定性断片をベースとする、本開示の複数段階、複数断片マラリアワクチン候補(配列番号198)およびさらなる融合タンパク質構築物の一時的な生成を示す、クマシー染色されたゲル(A)および免疫ブロット解析(B)を示す図である。
図6図6は、本開示のタンパク質精製プロセスの模式的フローチャートを示す図である。
図7図7は、本開示の複数段階、複数断片ワクチン候補(配列番号197)に対して産生された精製ポリクローナルウサギ抗体を使用する、種々の熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)段階の免疫蛍光アッセイの結果を示す図である。
図8図8は、本開示の熱安定性複数段階複数断片融合タンパク質の有利な実施形態の模式図である。
図9図9は、通常のEGFドメインの配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の詳細な説明
本開示は、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対する、特に熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のようなプラスモジウム(Plasmodium)属の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、治療上のおよび診断用融合タンパク質、組成物および抗体に関する。
【0040】
有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質および組成物は、寄生生物発達の種々の段階からの種々のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質由来の熱安定性断片を組み合わせ、ここで各熱安定性断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含む。
【0041】
全長抗原タンパク質の代わりにフォールディングされたドメインを有する熱安定性断片を使用することの1つの利点は、タンパク質の大きさの制限を避けること、より良好な融合タンパク質熱安定性を可能にすること、およびタンパク質発現能力を改善することである。
【0042】
驚くべきことに、本発明者らは、ワクチンの製造のための構成要素(building block)としてフォールディングされたドメインを有する単離された熱安定性断片を使用することがいくつかの利点を有すると見出した。
【0043】
例えば、融合タンパク質の熱安定性は、細胞培養上清または細胞抽出物を加熱することによる効率的な精製ステップを可能にする。多数の宿主細胞タンパク質はそのステップの間に変性され、沈殿する(図3を参照のこと)。したがって、それらは遠心分離または濾過によって容易に回収され得る。さらに、多数の宿主細胞プロテアーゼは熱不活性化され、その結果、下流の処理の間の標的組換え融合タンパク質の安定性が増大する。
【0044】
さらに、熱安定性はワクチン製造における下流処理の際のウイルス不活性化ステップにはさらに極めて有用な特性である。このようなステップは製剤の安全性を確実にするために必須であるが、常に標的タンパク質の活性と適合するわけではない。このような場合には冗長で費用のかかるプロセス検証を含む高価な限外/ナノ濾過手順が使用されなければならない。製剤の簡単な熱処理を使用できることによって、プロセス全体がより安価でより効率的になり、結果としてより安全な製剤が得られる。これらの特性は発展途上国にとって特に有用であり、適用可能であるワクチンを作製するために高度に重要である。
【0045】
さらに、熱安定性は、生成物の製剤化(例えば凍結乾燥)および貯蔵の際の重要な特徴である。特にサハラ以南のアフリカの発展途上国に向けたワクチンは、一般にコールドチェーンを利用することができず、したがって多数の潜在的に有望なワクチンを完全に役に立たないものにする。
【0046】
本開示の融合タンパク質の熱安定性はまた、ワクチンのより長い有効期間をもたらし、その結果、保健制度のための総費用をさらに低減する。
【0047】
驚くべきことに、本発明者らは、フォールディングされたドメインを有するこのような熱安定性断片に向けられた免疫応答はより頑強であり、特にすべての表された成分に対して平衡が保たれた免疫応答をもたらすことも見出した。免疫優性および免疫サイレント領域は、多数の異なるドメインを含む候補を考えても見出されていない。
【0048】
さらに、本発明者らは、これらの熱安定性断片の選択は種々の(実質的にすべての)組合せを可能にする、すなわちドメインは全般的に自由に組み合され得、その結果、同一成分を含むが異なる順序で含む(例えば、A−B−C対B−C−A)組換え融合タンパク質が得られるということを見出した。やはり誘導される免疫応答は、熱安定性断片の実際の順序に関わらず平衡が保たれる。この可能性は(i)生産性の増大した特定の候補を開発することおよび(ii)プライム−ブーストレジメンを可能にする、または(iii)ドメイン接合部に対する免疫応答が最小化される、または防がれる組合せワクチンの素晴らしい利点を有する。
【0049】
単一ポリペプチドから構成されるワクチン候補の切望は、再現性があり、頑強な費用効率の高い生成に対する、実際の技術的で経済的な需要から主に起こっている。しかし当業者には、組換え発現されるタンパク質には大きさの制限があるということも明確である。タンパク質特有の相違も同様に考慮されなければならないが、ポリペプチドの長さが増大するにつれ、発現レベルおよび収率の大きな低下がある。複数の課題が大きさによって比例する以上に増大し、大きなタンパク質の全体的な特性は小さいタンパク質、ドメインまたは断片のものよりも大幅に最適化を受け入れにくい。これらの問題すべては今まで、アピコンプレクサ寄生生物に対する効率的なワクチンの開発の大きなボトルネックであり、その結果複数の線形エピトープ、1種または2種の生活環段階に由来する1種または2種の抗原のみを含む最適以下の、圧倒的な数のワクチン候補が得られてきた。代替法として、化学的または遺伝的に弱毒化された、または不活性化された生ワクチンが提案されているが(例えば照射されたスポロゾイト)、このようなアプローチは、バッチ間一貫性、スケールアップ生成および最も重要な生成物の安全性に取り組まなければならない。
【0050】
したがって本開示の極めて需要な態様は、熱安定性断片が、例えば同一の、好ましくは異なる生活環段階からの異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来するいくつかの(特に≧4)熱安定性断片を含む組換え融合タンパク質中で構成要素として組み合され得、効率的に生成され得るということである。有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質は少なくとも4種、特に少なくとも6種の熱安定性断片を含む。熱安定性構成要素は、単離された小さい線形エピトープとは根本的に異なるフォールディングされたタンパク質ドメインを含むということも強調されなければならない。このような線形エピトープは、T−細胞応答にとって高度に効率的であるが、全般的に中和抗体を誘導するための免疫原として適していない。全く逆に、アピコンプレクサの寄生生物、特にプラスモジウム(Plasmodium)属の寄生生物は、反復線形配列を含有する多数のタンパク質を有し、その役割は液性免疫応答をかわすことである。したがって別の特定の態様は、本開示の融合タンパク質がこれらの反復線形エピトープのみを含まないということである。
【0051】
重要なことに、本開示の融合タンパク質は(i)異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来するドメインを含み(ii)熱安定性(温度耐性)と実験的に同定および検証されている構成要素(ドメイン)を使用して設計された。
【0052】
要約すると、本開示の組換え融合タンパク質は異なる発現系において十分に発現され得、熱安定性であり、高度に免疫学的な関連を有し、改善された免疫原性を有する。有利な実施形態では、ワクチンとして使用される本開示の組換え融合タンパク質は、感染を阻止し、ならびに病状を防ぎ、寄生生物の伝達を妨げる感染防御免疫を誘発する能力を有し、異なる寄生生物段階から得られたサブユニットから構成される組合せワクチンである可能性が高い。
【0053】
上記のように、単離された熱安定性断片は、例えば先行技術において使用された特異的に選択されたプラスモジウム属(Plasmodium)線形T/B−細胞エピトープとは対照的に、保存された、安定したタンパク質フォールディングを有する小さいタンパク質断片(上皮成長因子様ドメイン(EGF)およびトロンボスポンジン1型反復配列(TSR)ドメインのような)であるという利点を有する。既知線形B−およびT−細胞エピトープ配列の代わりに大きなフォールディングされたタンパク質ドメインを使用することで、多数の立体構造、および重複するB−細胞エピトープ、ならびに多数のT−細胞エピトープの提示が可能となり、それによってより広い、より持続した免疫応答を誘発する機会が増強される。
【0054】
免疫系によって、より詳しくは抗体、B細胞またはT細胞によって認識される抗原の部分/断片は、エピトープまたは抗原決定基として定義される。3次元構造(例えばフォールディングされたドメイン)にまとまったアミノ酸から構成されるこのようなタンパク質構造は、立体構造エピトープとして公知である。対照的に、二次構造を欠く単一ペプチド鎖は線形エピトープと呼ばれる。いくつかの抗体は抗原の線形ペプチド断片と結合するものの、ほとんどのB細胞エピトープは立体構造である。T細胞エピトープは、抗原提示細胞の表面上に提示される線形ペプチドであり、ここでそれらはMHC分子と結合される。MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは、通常8から11アミノ酸の間の長さのペプチドであるのに対し、MHCクラスII分子は少なくとも13アミノ酸長であるが、かなり長い場合もある。MHCクラスI分子中のペプチドの2つの末端と結合する保存された残基のクラスターはMHCクラスII分子中には見られず、ペプチドの末端は結合されない。代わりに、ペプチドはMHCクラスIIペプチド結合ポケットに沿って延長されたコンフォメーション中にある。既知結合ペプチドの配列を比較することによって、通常MHCクラスII分子の種々の対立遺伝子の各々の許容的アミノ酸のパターンを検出し、このペプチド配列モチーフのアミノ酸が、結合ポケットを構成するアミノ酸と相互作用する方法をモデル化することが可能である。
【0055】
現在、ヒト熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および三日熱マラリア原虫(P. vivax)マラリア由来のものを含む、プラスモジウム属(Plasmodium)タンパク質由来の独特なB−細胞およびT−細胞エピトープの合理的に大きなデータベースが利用可能になった。プラスモジウム属(Plasmodium)免疫エピトープの利用可能なデータの包括的メタ解析を実施することによって、Vaughanらはマラリア原虫の5,000種超の独特なB−細胞およびT−細胞エピトープを同定した。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および三日熱マラリア原虫(P. vivax)エピトープのいくつかは過去20年にわたって実施された広範な現地調査において、またゲノムおよびプロテオミクスデータベースの解析による免疫エピトープのコンピュータによる予測によって同定され、これらの予測のうちいくつかはHLA−ペプチド結合研究(T細胞エピトープ)において、およびin vitro免疫学的研究(B細胞エピトープ)において検証された。
【0056】
本開示の有利な実施形態は、少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する複数の単離された熱安定性断片を含む、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した組換え融合タンパク質に関連し、ここで各断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有し、単離された熱安定性断片は、寄生生物の生活環における少なくとも2つの異なる段階において寄生生物の表面に提示されるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する。
【0057】
用語「組換え融合タンパク質」および「融合タンパク質」は本明細書において同義的に使用され、例えば異なるタンパク質または異なる生物などの異種供給源に由来するセグメント、すなわちアミノ酸配列を含む組換え技術によって生成されるタンパク質を指す。セグメントは、ペプチド結合によって互いに直接的または間接的のいずれかで接合される。間接的接合とは、ペプチドリンカーなどの介在するアミノ酸配列が、融合タンパク質を形成するセグメント間に並置されることを意味する。組換え融合タンパク質は、1種の遺伝子の異なる領域に由来するヌクレオチド配列を遺伝子的に接合することによって、および/または2種以上の別個の遺伝子に由来するヌクレオチド配列を接合することによって得られるヌクレオチド配列によってコードされる。これらのヌクレオチド配列は、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に由来し得、特に熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)に由来し得るが、それらはまたその他の生物に、クローニング手順のために使用されるプラスミドに、またはその他のヌクレオチド配列に由来する場合もある。
【0058】
さらに、コードするヌクレオチド配列は、例えばデジタル遺伝子配列からのオリゴヌクレオチド合成および得られた断片のその後のアニーリングによって最初の鋳型DNAサンプルを必要とせずに、in vitroで合成され得る。所望のタンパク質配列は、例えば適当なソフトウェアツールを使用して「逆翻訳」され得る。ユニバーサルな遺伝暗号の縮重のために、オープンリーディングフレーム(すなわち組換えタンパク質コーディング領域)内の同義のコドンは、例えばシス作用性不安定性エレメント(例えばAUUUA)を除去し、二次および三次mRNA構造(例えばシュードノット、ステム−ループ、…)を除去、導入または改変するよう、転写後遺伝子サイレンシング(PGTS)を引き起こし得る自己相補性領域を避けるよう、全体的なAT:GC含量を変更するよう、または発現宿主にコドン使用を調整するよう、種々の方法で交換されてもよい。このような変更は手作業で、または適当なソフトウェアツールを使用して、またはその組み合わせによって設計され得る。
【0059】
アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する、特にプラスモジウム属(Plasmodium)表面タンパク質に由来する熱安定性断片を含む組換え融合タンパク質は、当技術分野で公知であるように、組換えDNA法および適した宿主細胞における発現を使用して調製された組換え生成物であり得る(例えばSambrook et al., (2001) Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Yを参照のこと)。特定の単離されたタンパク質ドメインをコードするヌクレオチド配列は、例えば単離に必要なドメインの5’および3’領域に対応する適当なオリゴヌクレオチドプライマー、および鋳型としての単離されるタンパク質ドメイン配列の全長コーディングを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって好都合に調製され得る。全長コーディングタンパク質配列の供給源は、例えば寄生生物細胞またはクローニングされた全長遺伝子を含有するプラスミドベクターから抽出されたDNAであり得る。あるいは、タンパク質コード配列はin vitroで部分的に、もしくは完全に合成され得るか、種々のアプローチの組合せが使用され得る。本開示の融合タンパク質の特性の限定されない例は、熱安定性およびpH安定性である。特に、フォールディングされたドメインを含む熱安定性断片による改善された免疫原性と組み合わせた融合タンパク質の熱的性能は、本開示の融合タンパク質の重要な特徴と考えられる。熱安定性は、例えば実施例4に記載されるように決定され得る。
【0060】
アピコンプレクサ門(Apicomplexa)(Apicomplexiaとも呼ばれる)は、原性生物の大きな群であり、そのほとんどはアピコプラストと呼ばれる独特のオルガネラ、および宿主の細胞への透過に関与する先端の複雑な構造を有する。それらはコクジウム、グレガリナ、ピロプラズマ、ヘモグレガリナおよびマラリア原虫(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi))などの生物を含む多様な群である。アピコンプレクサの生物によって引き起こされる疾患として、これらに限らないが、バベシア症(バベシア属(Babesia))、マラリア(プラスモジウム属(Plasmodium))、クリプトスポリジウム症(クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)を含むコクシジウム症、シクロスポラ症(シクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis))、イソスポーラ症(イソスポーラ・ベリ(Isospora belli))およびトキソプラズマ症(トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii))が挙げられる。
【0061】
有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質ならびに組成物は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)および/または卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)を含むプラスモジウム(Plasmodium)属の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適している。有利な実施形態では、寄生生物は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)である。
【0062】
アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質は、好ましくは、膜結合型または関連タンパク質または分泌されることがわかっているタンパク質である。これらのタンパク質は、例えば一般に利用可能なソフトウェアツールを使用して、N末端シグナルペプチドの存在、PEXELモチーフの存在、GPIアンカーモチーフの存在、または1種もしくは複数の膜貫通ドメインの存在についてゲノムまたは公知の遺伝子を解析することによって同定され得る。これらのタンパク質およびその相同体(homologue)として、例えば、これらに限らないが、
−CelTOS(オーキネートおよびスポロゾイトのための細胞通過タンパク質)、抗原2(PfAg2、PvAg2、PoAg2など)
−CSP(スポロゾイト周囲のタンパク質)
−EBA175(赤血球結合抗原175)
−EXP1(排出されるタンパク質1);同義語:CRA1(スポロゾイト周囲の関連抗原−1/交差反応性抗原−1)、AG5.1(排出された抗原5.1)、QF119
−MSP1(メロゾイト表面タンパク質1);同義語:MSA1(メロゾイト表面抗原1)、PMMSA、p190、p195、gp190、gp195
−MSP3(メロゾイト表面タンパク質3);同義語:SPAM(メロゾイトと関連する分泌型多形抗原)
−MSP4(メロゾイト表面タンパク質4)
−MSP8(メロゾイト表面タンパク質8)
−MSP10(メロゾイト表面タンパク質10)
−MTRAP(メロゾイトTRAP相同体(homologue)、メロゾイトTRAP相同体(homolog)、メロゾイトTRAP様タンパク質)
−Pf38;同義語:6−システインタンパク質
−PfRh2a、Rh2a(網状赤血球結合タンパク質2相同体(homolog)a、網状赤血球結合タンパク質2相同体(homologue)a)
−PfRh2b、Rh2b(網状赤血球結合タンパク質2相同体(homolog)b、網状赤血球結合タンパク質2相同体(homologue)b)
−PfRh4、Rh4(網状赤血球結合タンパク質相同体(homolog)4、網状赤血球結合タンパク質相同体(homologue)4)
−PfRh5、Rh5(網状赤血球結合タンパク質相同体(homolog)5、網状赤血球結合タンパク質相同体(homologue)5)
−PfRipr、Ripr(Rh5相互作用タンパク質)
−Pfs25(25kDaオーキネート表面抗原、有性段階抗原pfs25)
−Pfs230、S230(伝達阻止標的抗原Pfs230、伝達阻止標的抗原S230)
−Pfs48/45(プラスモジウム属(Plasmodium)生殖体およびガメトサイト上の45/48kDa二重タンパク質)
−Ron2(ロブトリーネックタンパク質2)
−TRAMP(トロンボスポンジン関連頂端膜タンパク質);同義語:PTRAMP
−TRAP(トロンボスポンジン関連匿名タンパク質);同義語:SSP2(スポロゾイト表面タンパク質2)
が挙げられる。
【0063】
本開示の組換え融合タンパク質中の、またはワクチン組成物中の熱安定性断片は、同一アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に、特に同一プラスモジウム属(Plasmodium)表面タンパク質に、または好ましくは異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来し得る。
【0064】
有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質またはワクチン組成物は、少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する複数の単離された熱安定性断片を含み、ここで各断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有する。
【0065】
いくつかの有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質または組成物は、異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する2種以上、特に少なくとも3種の、より特には少なくとも4種の単離された熱安定性断片を含む。有利な実施形態では、組換え融合タンパク質は少なくとも4種の異なる単離された熱安定性断片を含む。アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質は、寄生生物の生活環における少なくとも2種の異なる段階において寄生生物の表面に提示されることが好ましい。
【0066】
有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質またはワクチン組成物は、寄生生物の生活環における少なくとも2種の異なる段階において、寄生生物の表面に提示される少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する、少なくとも4種の異なる単離された熱安定性断片を含む。アピコンプレクサ門(Apicomplexa)寄生生物は、その侵襲プロセスのために単一生活段階の代替抗原を使用できるので、ワクチン候補が生活段階あたり少なくとも2種の異なる抗原断片を対象とすることが有利である。ワクチン有効性をさらに増大するために、2種以上の寄生生物生活段階が標的とされなければならない。これは最小ワクチンあたり4種の抗原断片および2種の生活段階に等しいであろう。
【0067】
しかし、有利な実施形態では、1種のワクチンの対象とされる抗原および生活段階の数は、補完的ワクチンとともに組成物として使用される場合には少ないものであり得、その結果両ワクチンの合計は、少なくとも4種の抗原断片および2種の生活段階に等しい。
【0068】
したがって、本開示はまた、複数の、特に寄生生物の生活環における少なくとも2種の異なる段階において、寄生生物の表面に提示される少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する、少なくとも4種の単離された熱安定性断片を含む、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適したワクチン組成物を対象とし、ここで各断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示のワクチン組成物中の単離された熱安定性断片は、少なくとも2種の異なる組換え融合タンパク質中に含まれ、ここで有利な実施形態では、1種の組換え融合タンパク質は、寄生生物の生活環の単一の段階において寄生生物の表面に提示される少なくとも1種のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する2種以上の熱安定性断片を含み、ここでその他の組換え融合タンパク質は、生活環の異なる段階において寄生生物の表面に提示される少なくとも1種のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する2種以上の熱安定性断片を含む。
【0070】
言い換えれば、本開示のワクチン組成物は、寄生生物の生活環の2種以上の段階における寄生生物に向かわせるために、異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する熱安定性断片を有する異なる融合タンパク質を含み得る。
【0071】
本開示のさらなる実施形態では、寄生生物の生活環の少なくとも1種の段階において寄生生物表面に提示される、少なくとも1種のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する1種または複数の熱安定性断片が、本開示の融合タンパク質内で数回反復される。反復された断片は、例えば結合価を増大するために100%同一である場合もあり、または反復された断片は全長表面タンパク質の同一領域に相当するが、実際には異なる株、異なる種、もしくは異なる属に由来する配列を含む場合もある。
【0072】
用語「断片」は本明細書において、変異を有する、または有さない、全長アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質から分離されており、それとの関連にはない天然全長タンパク質の連続部分を指す。それは全長または完全タンパク質の構造的/組織分布的または機能的サブユニットであり得る。用語「断片」は、アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質の全長アミノ酸配列に対応するポリペプチドを明確に排除するが、ドメインにフォールディングしないアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する短いペプチドも排除する。例えば本開示のいくつかの実施形態では、親全長表面タンパク質の90%未満のアミノ酸配列を有する断片が使用される。
【0073】
有利な実施形態では、熱安定性断片は単離された熱安定性断片である。用語「単離された」は、核酸またはタンパク質(例えばタンパク質ドメイン)との関連で使用される場合には、その天然供給源において通常関連している少なくとも1種の混入物(それぞれ核酸またはタンパク質)から同定、および分離された核酸配列、またはタンパク質を指す。単離された核酸またはタンパク質は、天然に見られるものとは異なる形態または状況で存在する。対照的に、単離されていない核酸またはタンパク質は天然に存在する状態で見られる。
【0074】
用語「熱安定性」は本明細書において、特にタンパク質断片または融合タンパク質の、立体構造エピトープを認識する少なくとも1種の抗体に対して少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、最も好ましくは90%の結合活性を保持し、少なくとも70%の回収率を有しながら、少なくとも50℃で5分間の、好ましくは、60℃で5分間の、より好ましくは、65℃で5分間の、最も好ましくは、70℃で5分間の温度処理に耐える能力を指す。有利な実施形態では、本開示のタンパク質断片または融合タンパク質は、立体構造エピトープを認識する少なくとも1種の抗体に対して、少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、最も好ましくは90%の結合活性を保持し、少なくとも60%の回収率を有しながら、少なくとも80℃で5分間の温度処理に耐えることができる。別の有利な実施形態では、本開示のタンパク質断片または融合タンパク質は、立体構造エピトープを認識する少なくとも1種の抗体に対して、少なくとも60%、好ましくは、70%、より好ましくは、80%、最も好ましくは、90%の結合活性を保持し、少なくとも50%の回収率を有しながら、少なくとも90℃で5分間の温度処理に耐えることができる。
【0075】
このような熱安定性タンパク質断片または融合タンパク質はその他のタンパク質よりも頑強であるので、幅広い適用を有する。これらの適用の1つとして熱沈殿が、本明細書の方法および実施例部分の項目4に例示的に記載されている。さらに、図3は本開示の時間制御された熱処理を示す。
【0076】
さらに、用語「pH安定性の」は本明細書において、特にタンパク質断片または融合タンパク質が低および/または高pH、少なくともpH5未満および/またはpH8超、好ましくはpH4未満および/またはpH9超、より好ましくはpH3未満および/またはpH10超で少なくとも5分間のインキュベーションに耐える能力を指し、ここでタンパク質断片または融合タンパク質の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%が溶液中のままであり、立体構造エピトープを認識する少なくとも1種の抗体に対して、少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、最も好ましくは90%の結合活性が保持されている。根本的なpH安定性は、本明細書の方法および実施例部分の項目9にイムノアフィニティークロマトグラフィー(IAC)について例示的に記載されている。
【0077】
用語「立体構造エピトープ」は本明細書において、ジスルフィド架橋の還元後の、またはタンパク質断片もしくは融合タンパク質を、タンパク質を変性させることが公知である試薬、例えば8M尿素、6M塩化グアニジウムもしくは1%SDSを用いて処理することによる、対応する抗体に対する結合活性の喪失、または対応する抗体に対する、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の結合活性の低減を特徴とする、タンパク質断片または融合タンパク質のエピトープを指す。
【0078】
用語「結合活性」は本明細書において、タンパク質断片または融合タンパク質が、立体構造エピトープまたは結合領域を認識する抗体または別のリガンド(例えば天然の相互作用タンパク質)とともにインキュベートされ、定量的読み取り情報が作製されるアッセイを指す。作製された読み取り情報は抗体またはその他のリガンドと結合したタンパク質断片または融合タンパク質の量に比例し、逆もまた同様である。適した方法として、これらに限らないが、ELISA、RIAなどの免疫アッセイ、表面プラズモン共鳴分光法ベースのアッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、サイズ排除クロマトグラフィーベースのシフトアッセイ、蛍光偏光、光散乱などの分光技術、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)およびアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。
【0079】
本開示によれば、種々の熱安定性断片は互いに連結される。「連結された」とは、2種以上の分子間の非共有または共有結合を指す。連結は直接である場合も間接である場合もある。2種の分子は、2種の分子が接続分子(リンカー)を介して連結される場合には間接的に連結される。2種の分子は、それらを連結する介在分子がない場合には直接的に連結される。上記のように、単離されたタンパク質ドメインは、好ましくはペプチド結合またはジスルフィド結合によって、直接的または間接的のいずれかで互いに連結される。間接関節共有連結の一例は、ペプチドリンカーなどの介在するアミノ酸配列が、融合タンパク質を形成するセグメントの間に並置されるものである。
【0080】
いくつかの実施形態では、熱安定性断片は互いに直接的に連結される。その他の実施形態では、熱安定性断片はリンカーを介して互いに間接的に連結され、ここでいくつかの実施例では、リンカーは20個以下のアミノ酸、特に2〜6個のアミノ酸の大きさを有するポリペプチドである。
【0081】
いくつかの有利な実施形態では、各熱安定性断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有する。
【0082】
用語「フォールディングされたドメイン」は本明細書において、少なくとも1つの立体構造エピトープを含む、既知構造クラス、フォールディング、またはスーパーファミリーの構造的に別個の3次元構造に適応することが公知である、または予測されるタンパク質配列を指す。したがってフォールディングされたドメインは、全長または完全タンパク質の構造的/組織分布的または機能的サブユニットの一部である。それは全長または完全タンパク質の関連内で維持され得るか、または単離されたドメインにおけるようにそれから分離され得る。構造的/組織分布的サブユニットに対応するドメインは、例えば、細胞質ドメイン、細胞外ドメイン、または膜貫通ドメインを含む。機能的サブユニットに対応するドメインは、例えば受容体結合ドメイン、または特に抗体結合ドメインを含む。
【0083】
例えば小さい線形ペプチドとは対照的に、本発明のフォールディングされたドメインは高度な構造次元を示す。さらに本発明のフォールディングされたドメインは、生理学的条件下でフォールディングされたドメイン内の立体構造エピトープと結合する、少なくとも1種のペプチド、タンパク質、またはモノクローナル抗体の存在を特徴とする(例えばPBS pH7.4)。さらに、このようなフォールディングされたドメインを含むタンパク質断片または融合タンパク質の8M尿素、6M塩化グアニジウムもしくは1%SDSまたは還元条件を用いる処理は単独で、または組み合わせて、フォールディングされたドメイン内の立体構造エピトープを認識するペプチド、タンパク質、またはモノクローナル抗体の結合活性の喪失、または少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の結合活性の低減をもたらす。
【0084】
いくつかの有利な実施形態では、フォールディングされたドメインは、さまざまなタンパク質において見られ得るEGF様モチーフ、ならびに血液凝固カスケードに関与しているものを含むEGFおよびNotchおよびNotchリガンドである「EGF様ドメイン」である(Furie and Furie, 1988, Cell 53: 505-518)。例えばこのモチーフは、血液凝固因子IXおよびXなどの細胞外タンパク質において(Rees et al., 1988, EMBO J. 7:2053-2061; Furie and Furie, 1988, Cell 53: 505-518)、その他のショウジョウバエ(Drosophila)遺伝子において(Knust et al., 1987 EMBO J. 761-766; Rothberg et al., 1988, Cell 55:1047-1059)、またトロンボモジュリンなどのいくつかの細胞表面受容体タンパク質(Suzuki et al., 1987, EMBO J. 6:1891-1897)およびLDL受容体(Sudhof et al., 1985, Science 228:815-822)において見出されている。トロンボモジュリンおよびウロキナーゼにおいて、タンパク質結合部位はEGF反復ドメインにマッピングされている(Kurosawa et al., 1988, J. Biol. Chem 263:5993-5996; Appella et al., 1987, J. Biol. Chem. 262:4437-4440)。
【0085】
PROSITEによって報告されるように、通常のEGFドメインはジスルフィド結合に関与していることが公知である(EGFにおいて)6個のシステイン残基を含み得る。二本鎖βシートとそれに続くC末端の短い二本鎖シートへのループであるという主な構造が提案されているが、これは必ずしも必要ではない。図9に示されるように、保存されたシステイン間のサブドメインは、長さが大きく変わり、ここで「C」はジスルフィド結合に関与している保存されたシステインを表し、「G」は保存されることが多いグリシンを表し、「a」は保存されることが多い芳香族アミノ酸を表し、「x」は任意の残基を表す。
【0086】
5番目と6番目のシステインの間の領域は2個の保存されたグリシンを含有し、そのうち少なくとも1個は、通常ほとんどのEGF様ドメイン中に存在し、いくつかの明確に定義される不連続のエピトープのアセンブリーを強制する(Farley and Long, 1995, Exp. Parasitol. 80, 328-332; McBride and Heidrich, 1987, 前掲; Uthaipibull et al, 2001, J. Mol. Biol. 307,1381 1394)。
【0087】
本開示の組換え融合タンパク質または組成物において使用されるEGF様ドメインは、例えば前赤内期段階、血液段階および有性段階を含む任意の生活環段階において発現された、任意の適したアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来し得る。表面タンパク質はアピコンプレクサの寄生生物、特に熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の種々の形態で生じ得る。
【0088】
好ましくはEGF様ドメインは、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)および/または熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に由来する。用語「EGF様ドメイン」は本明細書において、天然に存在するドメインに対応する活性を有する配列変異体、断片、誘導体、およびミメティクスを含む。
【0089】
「TSRドメイン」は、免疫性、細胞接着、細胞間相互作用および神経細胞発達に関与している、細胞外タンパク質中または膜貫通タンパク質の細胞外部分中に見られる、小さな約60残基のドメインである(Tucker, 2004)。トロンボスポンジン−1(TSP−1; Tan et al. 2002)およびF−スポンジン(PDBコード1SZLおよび1VEX)由来のTSRドメインの構造は解明されている。これらは、TSRドメインが逆平行3本鎖β−シートからなる長い構造を有することを示す。ドメインコアは保存されたトリプトファン、アルギニンおよびシステインの側鎖の積み重ねられたアレイによって形成される。いくつかのタンパク質のTSRは、グリコサミノグリカン(GAG)結合を媒介すると報告されている。例えばプラスモジウム属(plasmodium)表面タンパク質プラスモジウム属(plasmodium)CSおよびTRAPは両方とも、接着性トロンボスポンジン1型ドメイン、TSRを含有する。
【0090】
有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質およびワクチン組成物は、少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する少なくとも2つのフォールディングされたドメインを含み、ここで第1のフォールディングされたタンパク質ドメインは単離されたEGF様ドメインであり、第2のドメインは単離されたEGF様ドメイン、または単離されたTSRドメインである。
【0091】
別の実施形態では、組換え融合タンパク質またはワクチン組成物中の熱安定性の単離された断片は、1種または複数のさらなるフォールディングされたドメインを含み得る。有利な実施形態では、熱安定性の単離された断片は2〜12種の異なるフォールディングされたタンパク質ドメイン、特に4〜10種の、特に6〜8種の異なるフォールディングされたドメインを含み得、ここで少なくとも1種のフォールディングされたドメインはEGF様ドメインである。
【0092】
上記のように、EGF様ドメインならびにTSRドメインは高いシステイン含量を示す。さらなる実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質は少なくとも5%の、特に少なくとも7.5%の、より特には少なくとも10%のシステイン含量を有する。
【0093】
本発明の1つのさらなる利点は、例えば高度に免疫原性である非熱安定性の単離された断片もまた複数の単離された熱安定性断片を有する融合タンパク質中に組み込まれ得、ここで融合タンパク質全体(entire fusion protein)は依然として熱安定性であるということである。したがっていくつかの実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質はアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する少なくとも1種の非熱安定性の単離された断片を含み得、ここで融合タンパク質全体は熱安定性である。
【0094】
いくつかの有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質およびワクチン中の断片のフォールディングされたドメインは、少なくとも1つの立体構造エピトープを含む。
【0095】
用語「エピトープ」は本明細書において、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域を指す。特に「エピトープ」は、タンパク質の表面に沿って整列された3〜20個のアミノ酸のアレイと定義され得る。線形エピトープでは、アミノ酸は連続して接合されており、タンパク質の一次構造をとる。「立体構造エピトープ」では、アミノ酸は関連依存的に特定の3次元構造に配置される(例えばフォールディングされたドメイン)。立体構造エピトープに関して、エピトープを規定する配列の長さは幅広い変動を受け得る。エピトープを規定する残基の間の抗原の一次構造の部分は、立体構造エピトープの構造にとって絶対不可欠ではない場合もある。例えば、エピトープコンフォメーションに絶対不可欠な配列が維持されるという条件で、これらの介在する配列の欠失または置換は、必ずしも立体構造エピトープに影響を及ぼさないこともある(例えばジスルフィド結合、グリコシル化部位などに関与しているシステイン)。立体構造エピトープはまた、2つ以上のサブユニットのホモへの、またはヘテロオリゴマーへの会合によって形成され得る。立体構造エピトープは、免疫系によって認識され免疫応答を誘発することができる、フォールディングされたドメインまたはその到達可能な部分であり得る。
【0096】
上記のように、本開示の組換え融合タンパク質の利点の1つは、特に融合タンパク質が異なる生活環段階から得られた表面タンパク質に向けられる場合には、全長表面タンパク質を含むワクチン構築物と対照的に、異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来するフォールディングされたドメインの数に関連する比較的小さなタンパク質の大きさである。したがっていくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質は、融合タンパク質がプラスモジウム属(plasmodium)生活環のすべての段階において、寄生生物の表面に提示される複数のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する熱安定性断片を含む場合、または融合タンパク質が、120kDa以下の選択された段階から得られたアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する熱安定性断片を含む場合に、160kDa以下の分子量を有する。
【0097】
アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した組換え融合タンパク質および/またはワクチン組成物は、寄生生物発達の異なる段階から得られた熱安定性断片を組み合わせ、保護のいくつかの機序を誘導し得る。一実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質および/またはワクチン組成物は、前赤内期および血液段階を対象とするための熱安定性断片を含み、予防用および/または治療用ワクチンのために使用され得る。別の有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質および/またはワクチン組成物は、前赤内期および血液段階を対象とするための熱安定性断片ならびに有性段階を対象とするための熱安定性断片を含む。
【0098】
上記のように、いくつかの実施形態では、熱安定性断片はアピコンプレクサ門(Apicomplexa)生活環の同一段階において、特に血液段階において発現される異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する。有利な実施形態では、熱安定性断片はアピコンプレクサ門(Apicomplexa)生活環の異なる段階において、特に血液段階において、および前赤内期段階において発現される異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する。さらなる実施形態では、熱安定性断片はアピコンプレクサ門(Apicomplexa) 生活環の異なる段階において、特に血液段階、有性段階および前赤内期段階において発現される異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質抗原に由来する。
【0099】
有利な実施形態では、熱安定性断片はプラスモジウム属(Plasmodium)生活環の同一段階において、特に血液段階において発現される異なる熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)表面タンパク質に由来する。有利な実施形態では、熱安定性断片は熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)生活環の異なる段階において、特に血液段階において、および前赤内期段階において発現される異なる熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)表面タンパク質に由来する。さらなる実施形態では、熱安定性断片は熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)生活環の異なる段階において、特に血液段階、有性段階および前赤内期段階において発現される熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)表面タンパク質抗原に由来する。
【0100】
さらに、単離された熱安定性断片は、異なるプラスモジウム属(Plasmodium)生活環の主な段階において発現される異なるプラスモジウム属(Plasmodium)表面タンパク質に由来し得る:
【0101】
前赤内期の主な段階:
a)スポロゾイト
スポロゾイトは、肝細胞に侵入する前の極めて短い期間に血流中にある。スポロゾイト中に発現されるプラスモジウム属(Plasmodium)タンパク質抗原の例として、スポロゾイト周囲タンパク質(CSP)、スポロゾイトの外膜の主成分がある(Nussenzweig et al., 1989)。誘導された抗体は、スポロゾイトの肝細胞への結合および入ることを遮断できる可能性がある。
【0102】
b)肝臓段階
この段階の間、免疫性は、大部分はCD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびγδT細胞を含む細胞依存性機序によって媒介される。CSPはスポロゾイト中、および肝臓段階の間の両方で発現される。そのためCSPを含む研究の多くは、液性応答を誘導する免疫優性反復配列から、細胞毒性T−細胞応答を誘導できる領域に切り替えた。その他の同定された肝臓段階抗原は、中でも肝臓段階抗原−1(LSA−1)、LSA−2、LSA−3、SALSAおよびSTARPを含む(Hoffman et al., 1996;)。
【0103】
無性血液の主段階:
c)メロゾイト
スポロゾイトに加え、メロゾイトは、マラリア原虫が細胞外であるヒト宿主における唯一の段階である。スポロゾイトとは対照的に、メロゾイト放出のいくつかの周期がマラリア感染の間に起こり、それらを利用可能にする。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)における主なリガンドは、ミクロネーム中に位置する赤血球結合性抗原−175(EBA−175)である(Chitnis et al., 1994)。いくつかのメロゾイト表面タンパク質(MSP)が同定されているが、それらのほとんどについて、なおもその機能はさらに解明されなければならない。MSP−1と名付けられた主なMSPの場合には、RBCとのメロゾイト結合において、侵入と関連するその後の生化学的機序において役割が仮定されている。このタンパク質は、後期シゾント段階において185〜210kDaの前駆体として合成され、分子量の変動するいくつかのポリペプチドを生成するようプロセシングされる。42kDaのポリペプチド(MSP1−42)はメロゾイト膜と結合されて維持され、19kDaのポリペプチド(MSP1−19)を生成するようさらにプロセシングされ、宿主細胞中に入る。MSP−1に加え、少なくとも8種のその他のMSPが熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)において記載されている:MSP−2、MSP−3、MSP−4、MSP−5、MSP−6、MSP−7、MSP−8およびMSP−10。別のメロゾイト表面関連抗原として、酸性塩基性反復抗原(ABRA)がある。メロゾイト頂端オルガネラ中に位置するタンパク質も同定されている(例えばロブトリータンパク質頂端膜抗原−1(AMA−1)、ロブトリー関連タンパク質−1(RAP−1)およびRAP−2)。
【0104】
d)感染RBC
寄生生物は一度RBCに侵入すると、留まるためにより安全な場所を見つけるとされている。最も研究された分子の1つとして、リング型赤血球表面抗原(RESA)がある。さらにセリンリッチタンパク質(SERPまたはSERA)はシゾント段階において発現され、寄生体胞中に分泌される可溶性タンパク質である。RBC膜上に位置するその他のタンパク質として、赤血球膜タンパク質−1(EMP−1)、EMP−2およびEMP−3がある。内皮中のCD36などの受容体と結合するPfEMP−1は、いわゆるvar遺伝子によってコードされるタンパク質のファミリーである。
【0105】
有性主段階
e)胞子形成サイクル
その他のプラスモジウム属(Plasmodium)タンパク質抗原は、Ps25、Ps28、Ps48/45またはPs230などの性的に分化した寄生生物段階において発現される。これらの有性段階タンパク質に対する抗体は、蚊における寄生生物の発達を遮断し得る。
【0106】
有利な実施形態では、熱安定性断片の各々は、プラスモジウム属(Plasmodium)生活環の少なくとも2つの異なる段階において発現される異なるプラスモジウム属(Plasmodium)表面タンパク質に由来する。
【0107】
有利な実施形態では、熱安定性断片は、MSP1、MSP4、MSP8、MSP10、PfRiprおよびPfs25に由来するEGF様ドメインを含む熱安定性断片からなる群から選択される。
【0108】
さらなる有利な実施形態では、熱安定性断片は、CSP、mTRAP、TRAPおよびTRAMPから選択されるTSRドメインを含む熱安定性断片からなる群から選択される。
【0109】
その他の有利な実施形態では、熱安定性断片は、Pfs230、Pfs45/48、CelTosおよびRon2、MSP3およびEXP1由来の熱安定性断片からなる群から選択される。
【0110】
有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれる熱安定性断片は、表1に列挙される群から選択される。
【0111】
【表1】
【0112】
表1中で使用される略語は以下のとおりである:Aglyc/GKO:非グリコシル化/グリコシル化部位ノックアウト、FKO:全グリコシル化部位ノックアウト。
【0113】
さらなる有利な実施形態では、本開示の組換え融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれる熱安定性断片は、表2に列挙された群から選択される。
【0114】
表2は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)抗原およびその他のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)様トキソプラズマ、タイレリア属(Theileria)、ネオスポラ属(Neospora)、バベシア属(Babesia)およびクリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)中のそのオルソログの配列を示す。アピコンプレクサ門(Apicomplexa)ワクチン候補のベースとしての種々の融合タンパク質の作製のための、これらの抗原断片配列の例示的使用および組合せは表3に示されている。有利な実施形態では、1種のメンバーに由来する、好ましくはアピコンプレクサ門(Apicomplexa)の1種の株に由来する表面タンパク質の熱安定性断片が、本開示の融合タンパク質中で使用される。しかしいくつかの実施形態では、異なるメンバーに由来する、また異なる株に由来する表面タンパク質の熱安定性断片も、一般的なワクチンとして有用である本開示の融合タンパク質中で使用される。
【0115】
http://plasmodb.org(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)/三日熱マラリア原虫(vivax)/二日熱マラリア原虫(knowlesi)(Pf 3D7/Pv Sal−1/Pk H))、http://www.ncbi.nlm.nih.govおよびhttp://uniprot.org(四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)/卵形マラリア原虫(ovale)(Pm/ Pol/CDC))ならびにhttp://orthomcl.org(トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)(Tgon)、タイレリア・アヌラタ(Theileria annulata)/パルバ(parva)(Tann/Tpar)、ネオスポラ・カニナム(Neospora caninum)(Ncan)、バベシア・ボビス(Babesia bovis)(Bbov)およびクリプトスポリジウム・ホミニス(Cryptosporidium hominis)/パルバム(parvum)/ムリス(muris)(Chom/Cpar/Cmur))などのいくつかのオンラインツールが配列検索のために使用された。
【0116】
表2に使用された略語は以下のとおりである:
Pf 3D7 熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)3D7株
Pv Sal−1 三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)Sal−1株
Pk H 二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)H株
Pol/CDC 卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)l/CDC株
Pm 四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)
Tgon トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)
Ncan ネオスポラ・カニナム(Neospora caninum)
Cpar クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)
Cmur クリプトスポリジウム・ムリス(Cryptosporidium muris)
Chom クリプトスポリジウム・ホミニス(Cryptosporidium hominis)
Bbov バベシア・ボビス(Babesia bovis)
Tann タイレリア・アヌラタ(Theileria annulata)
Tpar タイレリア・パルバ(Theileria parva)
Aglyc/GKO:非グリコシル化/グリコシル化部位ノックアウト
FKO:全グリコシル化部位ノックアウト
【0117】
【表2】
【0118】
図4は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)EGF9_Ripr(配列番号16)および種々のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)の種(三日熱マラリア原虫(P. vivax)、二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ネオスポラ・カニナム(Neospora caninum)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、クリプトスポリジウム・ムリス(Cryptosporidium muris)、クリプトスポリジウム・ホミニス(Cryptosporidium hominis)におけるそのオルソログの例示的配列アラインメントを示す。
【0119】
表2からのアピコンプレクサ門(Apicomplexa)熱安定性断片配列に基づき、アピコンプレクサの病原体に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した組成物中に含まれる組換え融合タンパク質および/または断片の有利な実施形態が、以下の表3に列挙されている。
【0120】
【表3】
【0121】
さらに、異なるアピコンプレクサの表面タンパク質の熱安定性断片に基づき、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)における本開示の複数段階、複数断片融合タンパク質(配列番号198)およびその他の異なる組換え融合タンパク質の一時的な生成が、図5に示されている。
【0122】
有利な実施形態では、組換え融合タンパク質は、MSP4由来の25FKO単離されたEGF様ドメイン、CSP由来の単離されたTSRドメイン、Pfs25由来の単離されたEGF様ドメイン、MSP1−19由来の単離されたEGF様ドメイン、MSP8由来の2種の単離されたEGF様ドメインおよびMSP10由来の2種の単離されたEGF様ドメインを含む。
【0123】
さらなる有利な実施形態では、組換え融合タンパク質は、MSP1_19、MSP1_8、MSP2_8、MSP−4、Pfs25FKOおよびCSP_TSR由来の熱安定性断片を含む(図8を参照のこと)。
【0124】
さらなる実施形態では、組換え融合タンパク質および/またはワクチン組成物は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202および配列番号205からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される配列を含む。
【0125】
有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれる単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号1〜配列番号192からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0126】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号1〜配列番号34からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0127】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/または組成物中に含まれ、三日熱マラリア原虫(P. vivax)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号35〜配列番号67からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0128】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号68〜配列番号108からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0129】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、卵形マラリア原虫(P. ovale)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号109〜配列番号110からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0130】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、四日熱マラリア原虫(P. malariae)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号111〜配列番号113からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0131】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号114〜配列番号135からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0132】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、ネオスポラ・カニヌム(Neospara caninum)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号136〜配列番号157からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0133】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号158〜配列番号167からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0134】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、クリプトスポリジウム・ムリス(Cryptosporidium muris)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号168〜配列番号177からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0135】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、クリプトスポリジウム・ホミニス(Cryptosporidium hominis)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号178〜配列番号187からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0136】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、バベシア・ボビス(Babesia bovis)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号188〜配列番号189からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0137】
別の有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/またはワクチン組成物中に含まれ、タイレリア・アヌラタ(Theileria annulata)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号190〜配列番号191からなる群(これらの配列の相同ポリペプチドを含む)から選択される。
【0138】
別の有利な実施形態、本開示の融合タンパク質または組成物中に含まれ、タイレリア・パルバ(Theileria parva)寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した、単離された熱安定性断片は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、アミノ酸配列 配列番号192を有するポリペプチド(この配列の相同ポリペプチドを含む)である。
【0139】
有利な実施形態では、組換え融合タンパク質は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号197またはその誘導体および変異体(variant)(この配列の相同ポリペプチドを含む)を有する。
【0140】
有利な実施形態では、組換え融合タンパク質は、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号198またはその誘導体および変異体(この配列の相同ポリペプチドを含む)を有する。
【0141】
用語「誘導体」は本明細書において、断片、キメラタンパク質、融合タンパク質、変異体(mutant)、相同体(homolog)およびペプチドミメティクスを含むタンパク質またはポリペプチド変異体(variant)を指す。
【0142】
用語「改変された形態(modified form)」または「変異体(variant)」は、融合タンパク質が改変されているが、同一の機能的特徴、特に熱安定性および免疫原性を保持することを意味する。
【0143】
本開示の用語「相同ポリペプチド」または「相同体(homolog)」は、親アミノ酸配列に対して少なくとも70%、または好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0144】
相同性は、本開示の融合タンパク質の類似体または変異体として規定される。融合タンパク質は特定のアミノ酸を特徴とし、特定の核酸配列によってコードされる。このような配列は組換えまたは合成法によって生成される類似体および変異体を含み、このようなポリペプチド配列は組換えポリペプチド中の1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって改変されており、本明細書において記載される生物学的アッセイのいずれかにおいて依然として免疫原性であると理解される。置換は、好ましくは「保存的」である。置換は、好ましくはアミノ酸配列の何らかの変更につながらないが、タンパク質の発現を増強するよう導入され得るコドン使用におけるサイレント置換である。表4によれば、第2列の同一ブロック中の、好ましくは第4列の同一の並び中のアミノ酸は互いに置換され得る。第2および第4列中のアミノ酸は1文字コードで示されている。
【0145】
有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質および/または組成物を用いる処理は、少なくとも70%の有性段階を含む、2種のアピコンプレクサの生活段階において累積的阻害をもたらす(表6を参照のこと)。
【0146】
さらなる実施形態は、特に無作為法による、または部位指定カップリング法の使用による、組換え融合タンパク質をそれ自身またはその他の分子、タンパク質または担体とコンジュゲートするための方法に関する。特に部位指定カップリングは、組換え融合タンパク質内に特異的に保持される、または導入されるN−グリコシル化部位に収容され得る。
【0147】
本開示は、本開示のポリヌクレオチドに由来するすべての分子、および遺伝的にコードされるアミノ酸配列と比較した、翻訳後プロセシングによる本願に記載されるそのすべての変異体を含むということも理解される。これらの翻訳後改変は、天然宿主または任意の適した発現宿主による生成/発現の際に起こるとき、これらに限らないが、リーダーおよび/またはプロ配列などのN末端配列のタンパク質分解による切断、C末端伸長のタンパク質分解による除去、N−および/またはO−グリコシル化または脱グリコシル化、脂質化、アシル化、脱アミド化、ピログルタミン酸形成、リン酸化および/またはその他、またはそれらの任意の組合せを含む。これらの翻訳後改変は、本明細書において調査されたように酵素の物理的または酵素的特性に影響を有する場合も有さない場合もある。
【0148】
用語「改変(modification)」は本明細書において、例えばアミノ酸配列中の特定の位置でのアミノ酸残基の置換、挿入または欠失、ならびにポリペプチド状の特定の位置のリン酸化、パルミトイル化のようなアセチル化、メチル化、硫酸化、グリコシル化、イソプレニル化のような脂質化、ファルネシル化、脂肪酸部分の結合、グリピエーション(glypiation)および/もしくはユビキチン化、またはそれらの組合せを指す。
【0149】
用語「改変すること(modifying)」は本明細書において、抗体またはその抗原結合部分中の1個または複数のアミノ酸を変更することを含む。これらの変更は、1つまたは複数の位置でアミノ酸を付加、置換または欠失することによってもたらされ得る。変更は、PCR突然変異誘発などの既知技術を使用してもたらされ得る。
【0150】
別の態様では、本開示は、
a)本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子、
b)好ましくは1個もしくは複数のアミノ酸残基が保存的に置換されている、本開示の融合タンパク質の改変された形態をコードする核酸分子、
c)ストリンジェントな条件下でa)〜b)核酸分子のいずれかとハイブリダイズできる核酸分子、
d)ストリンジェントな条件下でa)〜c)の核酸分子のいずれかの相補体とハイブリダイズできる核酸分子、
e)a)〜d)の核酸分子のいずれかと少なくとも85%の配列同一性を有し、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の1種もしくは複数の寄生生物に対するヒトおよび/もしくは動物ワクチンとして適した熱安定性融合タンパク質をコードする核酸分子
f)またはa)〜e)の核酸分子のいずれかの相補体
からなる群から選択される単離された核酸分子に関連する。
【0151】
用語「核酸分子」または「核酸」は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはRNA、ペプチド核酸(PNA)またはLNA起源の任意の一本鎖または二本鎖核酸分子を示すよう意図される。
【0152】
用語「保存的変異」または「保存的置換」はそれぞれ、当業者が第1の変異に対して保存的と考えるアミノ酸変異を指す。この関連で「保存的」は、アミノ酸の特徴の点で同様のアミノ酸を意味する。例えば、変異が、特定の位置で、非脂肪族アミノ酸残基(例えばSer)の脂肪族アミノ酸残基(例えばLeu)との置換につながる場合、異なる脂肪族アミノ酸(例えばIleまたはVal)との同一位置における置換は保存的変異と呼ばれる。さらなるアミノ酸の特徴として、残基の大きさ、疎水性、極性、電荷、pK値およびその他の当技術分野で公知のアミノ酸の特徴が挙げられる。したがって保存的変異は、塩基性と塩基性の置換、酸性と酸性の置換、極性と極性の置換などの置換を含み得る。このように導かれたアミノ酸のセットは構造的理由のために保存される可能性が高い。これらのセットはベン図の形で記載され得る。保存的置換は、例えばアミノ酸をグループ分けする、一般に認められているベン図を説明する以下の表4に従って行われ得る。
【0153】
【表4】
【0154】
「配列同一性パーセント」は、2種のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に関して、配列が最適にアラインされる場合に2種の配列において同一である残基のパーセンテージを指す。したがって、80%のアミノ酸配列同一性は、2種の最適にアラインされたポリペプチド配列中のアミノ酸の80%が同一であることを意味する。同一性パーセントは、例えば、配列をアラインすること、2種のアラインされた配列間の正確なマッチ数を計数すること、短い方の配列の長さによって除すること、および結果に100を乗することによる2種の分子間の配列情報の直接比較によって決定され得る。ペプチド解析のためのSmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズムに適応するALIGN14、米国生物医学研究基金(National Biomedical Research Foundation)、Washington、DCなどの容易に入手可能なコンピュータプログラムが解析に役立つよう使用され得る。15。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムはWisconsin Sequence Analysis Package、バージョン8(Genetics Computer Group、Madison、WIから入手可能)において入手可能である。例えば、同様に、SmithおよびWatermanアルゴリズムを利用するBESTFIT、FASTAおよびGAPプログラム。これらのプログラムは、製造業者によって推奨され上記で言及されるWisconsin Sequence Analysis Packageにおいて記載されるデフォルトパラメータ5を用いて容易に利用される。配列類似性を決定するのに適しているアルゴリズムの一例として、上記で記載されたBLASTアルゴリズムがある。16。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって市販されている。同様に、相同性パーセントを決定するためのコンピュータプログラムも容易に入手可能である。
【0155】
用語「変異」は、所望のタンパク質をコードするポリ核酸配列をもたらす、単一または複数のヌクレオチドトリプレットの置換または置き換える、1つもしくは複数のコドンの挿入もしくは欠失、異なる遺伝子間の相同もしくは異種組換え、コード配列のいずれかの末端でのさらなるコード配列の融合、またはさらなるコード配列の挿入、またはこれらの方法のいずれかの組合せを指す。したがって用語「変異」はまた、上記の変更のうち1つまたは複数によって改変されたポリ核酸配列によってコードされるポリペプチド配列における変更のすべてを指す。
【0156】
本開示はまた、本開示のヌクレオチド分子を含むベクターを対象とする。用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を含む。ある種のベクターは、さらなるDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の種類のベクターは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲーションされ得るウイルスベクターである。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製できる(例えば細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに特定のベクターは、作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターは本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることが多い。本明細書において「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最もよく使用される形態であるので同義的に使用され得る。しかし本開示は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)など発現ベクターの、このようなその他の形態を含むことを意図する。
【0157】
有利な実施形態では、単離されたタンパク質ドメインの配列はNcolおよびNotl断片として植物発現ベクターpTRAkc中に挿入された。pTRAkcはアグロバクテリア(agrobacteria)中にエレクトロポレーションされ、その後タバコ属(Nicotiana)植物に浸潤され得る植物発現ベクターの一例である(Boes, A. et al. 2011)。その他のタンパク質発現系も当技術分野で公知であり、本明細書において考慮される。
【0158】
本開示はまた、本開示の組換え融合タンパク質を含むベクターを有する宿主細胞を対象とする。語句「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を含む。このような用語は特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も指すことを意図することは理解されなければならない。変異または環境の影響のいずれかによって、続いて起こる世代において特定の改変が起こり得るので、このような後代は実際親細胞と同一でない場合もあるが、なおも本明細書における用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0159】
宿主細胞は単一の宿主細胞の後代を含み、後代は天然の、偶発的または計画的な変異および/または変更により、元の親細胞と必ずしも完全に同一でない場合もある(形態において、または全DNA相補体において)。宿主細胞は本開示の組換えベクターまたはポリヌクレオチドを用いて、in vivoまたはin vitroでトランスフェクトされた、または感染した細胞を含む。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は「組換え宿主細胞」とも呼ばれることもある。
【0160】
用語「宿主細胞(単数または複数)」は、本開示に従って組換えタンパク質を精製するプロセスにおいて使用され得る細胞(単数または複数)を指す。このような宿主細胞は対象のタンパク質(POI)を保持する。宿主細胞はタンパク質発現細胞とも呼ばれ得る。本発明の宿主細胞は、これらに限らないが、原核細胞、真核細胞、古細菌、細菌細胞、昆虫細胞、酵母、哺乳動物細胞および/または植物細胞であり得る。宿主細胞として想定される細菌はグラム陰性またはグラム陽性のいずれか、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、エルウィニア(Erwinia)種、クレブジエラ(Klebsellia)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種または枯草菌(Bacillus subtilis)であり得る。通常の酵母宿主細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)からなる群から選択される。
【0161】
有利な実施形態では、宿主細胞はベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物細胞またはタバコ(Nicotiana tabacum)植物細胞である。哺乳動物の場合には、好ましくはCHO、COS、NSOまたは293細胞であり、酵母の場合は、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0162】
本開示に従って使用するための植物として、被子植物、コケ植物(例えばゼニゴケ類、スギゴケ類など)、シダ植物(Ptepdophytes)(例えばシダ類、ツクシ、ヒゲノカズラ)、裸子植物(例えば針葉樹、サイカセ(cycase)、銀杏、グネツム目(Gnetales))および藻類(例えば緑藻類、褐藻類、紅藻類、藍藻類、黄緑藻類およびユーグレナ藻類)が挙げられる。例示的植物は、マメ科(Leguminosae)(マメ科(Fabaceae)、例えばエンドウマメ、アルファルファ、ダイズ)、イネ科(Gramineae)(イネ科(Poaceae)、例えばトウモロコシ、コムギ、ニー(nee))、ナス科(Solanaceae)、特にトマト属(Lycopersicon)(例えばトマト)、ナス属(Solarium)(例えばジャガイモ、ナス)、トウガラシ属(Capsium)(例えばコショウ)またはタバコ属(Nicotiana)(例えばタバコ)、セリ科(Umbelhferae)、特にニンジン属(Daucus)(例えばニンジン)、オランダミツバ属(Apium)(例えばセロリ)、またはミカン科(Rutaceae)(例えばオレンジ)、キク科(Compositae)、特にアキノノゲシ属(Lactuca)(例えばレタス)のもの、アブラナ科(Brassicaceae)(アブラナ科(Cruciferae))、特にアブラナ属(Brassica)またはシロガラシ属(Sinapis)のメンバーである。特定の態様では、本発明に従う植物はアブラナ属(Brassica)またはシロイヌナズナ属(Arabidopsis)の種であり得る。いくつかの例示的アブラナ科(Brassicaceae)のメンバーとして、ブラシカ・カンペストンス(Brassica campestns)、Bカンナタ(cannata)、Bカラシナ(juncea)、Bアブラナ(napus)、Bクロガラシ(nigra)、Bオレラセアエ(oleraceae)、Bトウニフォルツ(tournifortu)、シロガラシ(Sinapis alba)およびダイコン(Raphanus sativus)が挙げられる。形質転換を受け入れられ(amendable)発芽実生として食用できるいくつかの適した植物として、アルファルファ、リョクトウ、ラディッシュ、コムギ、マスタード、ホウレンソウ、ニンジン、ビート、タマネギ、ニンニク、セロリ、ダイオウ、キャベツまたはレタスなどの葉物植物、オランダカラシまたはクレス、パセリ、ミントまたはクローバーなどのハーブ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイズ、レンティル、ヒマワリなど食用花などが挙げられる。
【0163】
本開示の融合タンパク質を発現するために、融合タンパク質またはその一部をコードするDNAは、遺伝子が転写および翻訳制御配列と作動可能に連結されるよう発現ベクター中に挿入され得る。この関連で、用語「作動可能に連結された」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、タンパク質遺伝子の転写および翻訳を調節するその意図される機能を果たすよう、タンパク質遺伝子がベクター中にライゲーションされることを意味する。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するよう選択される。単離されたタンパク質ドメイン配列は通常、同一発現ベクター中に挿入される。タンパク質遺伝子は、標準法によって発現ベクター中に挿入される。さらに組換え発現ベクターは、新生ポリペプチド鎖の小胞体(ER)への同時翻訳的転位置を促進するシグナルペプチドをコードし得る。フォールディングされたポリペプチド(本開示の組換え融合タンパク質)は宿主細胞から分泌され得るか、または宿主細胞内に保持され得る。細胞内保持またはターゲッティングは、ER検索のためのC末端KDELタグなどの適当なターゲッティングペプチドの使用によって達成され得る。
【0164】
一般に当業者はベクターを十分に構築し、組換え遺伝子発現のためのプロトコールを設計できる。さらなる詳細については、例えば参照により本明細書において組み込まれるMolecular Cloning : a Laboratory Manual : 2nd edition, Sambrook et al, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press(またはこの研究の後の版)およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992を参照のこと。
【0165】
有利な実施形態では、発現ベクターは既知技術に従って植物に送達され得る。例えば、ベクター自体が植物に直接適用され得る(例えばこすりつけ接種(abrasive inoculations)、機械化された噴霧接種、真空浸潤、微粒子銃またはエレクトロポレーションによって)。あるいは、またはさらに、バイロンは調製され得(例えばすでに感染した植物から)、既知技術によってその他の植物に適用され得る。種々の植物種に感染するさまざまなウイルスが公知であり、本発明によるポリヌクレオチド発現のために使用され得る(例えばThe Classification and Nomenclature of Viruses中、"Sixth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses"(Ed Murphy et al), Springer Verlag New York, 1995, Grierson et al, Plant Molecular Biology, Blackie, London, pp 126-146, 1984, Gluzman er al, Communications in Molecular Biology Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, pp 172-189, 1988およびMathew, Plant Viruses Onlineを参照のこと、それらのすべては参照により本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、植物細胞に単一ウイルスベクターを送達することよりも、ウイルスベクター(単数または複数)の複製(任意選択で、細胞から細胞および/または長距離移動)を可能にする複数の異なるベクターが一緒に送達される。タンパク質の一部またはすべては、トランスジェニック植物のゲノムによってコードされ得る。さらに本明細書に詳細に記載される特定の態様では、これらの系は1種または複数のウイルスベクター成分を含む。
【0166】
本開示のさらなる態様は、本明細書において記載される核酸分子から本明細書において記載されるように組換え融合タンパク質を宿主細胞において発現する方法、前記融合タンパク質を生成するための適当な培養条件において本明細書において記載される融合タンパク質を発現できる宿主細胞、適当な条件下でこのような宿主細胞を培養することを含む融合タンパク質を生成する方法に関し、この方法は細胞培養から前記融合タンパク質を単離することをさらに含み得、単離された融合タンパク質を適したさらなる成分(例えば別のタンパク質または賦形剤または担体であり得る)と混合することをさらに含み得る。
【0167】
したがって、いくつかの有利な実施形態は本開示の組換え融合タンパク質を生成する方法に関連し、方法は、
a)融合タンパク質をコードする核酸を含む核酸構築物を提供するステップと、
b)核酸構築物を宿主細胞中に導入するステップと、
c)融合タンパク質の発現を可能にする条件下で宿主細胞を維持するステップと、
d)細胞培養上清または抽出物の熱処理を含む、宿主細胞から融合タンパク質を精製するステップと、
e)任意選択で前記融合タンパク質をさらに処理するステップと
を含む。
【0168】
さらなる実施形態は、本開示の所与の融合タンパク質の供給源が、特に熱処理および/または酸性処理によって、存在する任意のウイルスを不活性化するのに十分な条件下でウイルス不活性化ステップに付される、活性ウイルスを実質的に含まない、生物学的に活性な治療薬を調製する方法に関する。
【0169】
さらなる実施形態は、
a)pH<8で前記融合タンパク質を発現する宿主細胞を懸濁し、55〜70℃の間の温度で前記懸濁液をインキュベートするステップと、
b)分離するステップと、
c)組換え融合タンパク質を含有する懸濁液の可溶性画分を集めるステップと、
d)前記組換え融合タンパク質を精製し、任意選択でそれをさらに処理するステップと
を含む、本開示の組換え融合タンパク質を精製する方法に関連する。
【0170】
別の実施形態は、
a)前記融合タンパク質を発現する宿主細胞の細胞培養物を回収するステップと、
b)pH<8で前記宿主細胞を再懸濁し、55〜70℃の間の温度で前記懸濁液をインキュベートするステップと、
c)分離するステップと、
d)組換えタンパク質を含有する懸濁液の可溶性画分を集めるステップと、
e)前記組換え融合タンパク質を精製し、任意選択でそれをさらに処理するステップと
を含む、本開示の組換え融合タンパク質を精製するための方法に関する。
【0171】
上記で論じたように、本開示に従って、組換え融合ポリペプチドは任意の望ましい系において生成され得る。ベクター構築物および発現系は当技術分野で公知であり、本明細書において提供される組換え融合ポリペプチドの使用を組み込むよう適応され得る。例えばトランスジェニック植物生成は公知であり、構築物の作製および植物生成は当技術分野で公知の技術に従って適応され得る。いくつかの実施形態では、植物における一時的な発現系が望ましい(国際特許出願WO10037063A2を参照のこと)。
【0172】
組換えポリペプチドの生成のために、本発明に従って、植物、植物細胞および/または植物組織(例えばクローン植物、クローン植物細胞、クローン根、クローン根株、スプラウト、発芽実生、植物など)を培養または増殖させるために、概して当技術分野で公知の標準法が使用され得る。毛根細胞、根細胞系統および植物細胞を培養するために、さまざまな培養培地およびバイオリアクターが使用された(例えばRao et al, 2002, Biotechnol Adv, 20 101を参照のこと)。
【0173】
特定の実施形態では、本明細書に従う組換え融合ポリペプチドは任意の既知方法によって生成され得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は植物またはその一部において発現される。タンパク質は、当技術分野で公知の従来の条件および技術に従って単離および精製され得る。これらは抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動などといった方法を含む。本発明は、当技術分野で公知であり、本明細書において提供されるさまざまな植物発現系のいずれかを使用する、組換え融合ポリペプチド(単数または複数)の生成物の精製および手頃なスケールアップを含む。
【0174】
本開示のいくつかの実施形態では、ワクチン生成物のために組換えポリペプチド(単数または複数)を単離することが望ましいであろう。植物組織(単数または複数)またはその一部、例えば、それらを発現する根、根細胞、植物、植物細胞から本開示に従ってタンパク質が生成される場合には、植物材料からの部分または完全単離のいずれかのために、当技術分野で公知の方法が使用され得る。発現産物を発現する植物細胞または組織の一部、またはすべてから発現産物を単離することが望ましい場合には、任意の利用可能な精製技術が使用され得る。当業者は幅広い分画および分離手順に精通している(例えばScopes et al, Protein Purification Principles and Practice, 3 rd Ed, Janson et al, 1993, Protein Purification Principles High Resolution Methods, and Applications, Wiley- VCH, 1998, Springer-Verlag, NY, 1993およびRoe, Protein Purification Techniques, Oxford University Press, 2001を参照のこと、それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)。当業者ならば、所望の組換え融合ポリペプチド産物(単数または複数)を得る方法が抽出によることを理解するであろう。植物材料(例えば根、葉など)は、残りのバイオマスから目的生成物を回収するために抽出され得、それによって濃度を高め生成物を精製する。植物は緩衝溶液中で抽出され得る。例えば植物材料は、例えばリン酸バッファーで緩衝されている一定量の氷冷水中に、重量で1対1の割合で移され得る。必要に応じて、プロテアーゼ阻害剤が添加され得る。植物材料は、バッファー溶液中に懸濁されながら、勢いよく混ぜるまたはすりつぶすことによって破壊され、抽出され、濾過または遠心分離によってバイオマスが除去され得る。溶液中の得られた生成物は、さらなるステップによってさらに精製されるか、または凍結乾燥または沈殿によって乾燥粉末に変換され得る。抽出物は圧搾機中で植物または根を圧搾することによって、または密接した間隔のローラーを通されるときに潰されることによって得られる。潰された植物または根から得られた流体が集められ、当技術分野で公知の方法に従って処理される。圧搾による抽出によって、より濃縮された形態での生成物の放出が可能となる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、これらに限らないが、陰イオン交換クロマトグラフィー(Qカラム)または限外濾過を含むクロマトグラフィー法によってさらに精製され得る。Hisタグを含有するポリペプチドは、標準法に従うニッケル交換クロマトグラフィーを使用して精製され得る。いくつかの実施形態では、生成されたタンパク質またはポリペプチドは植物組織から単離されず、むしろ生存植物(例えば発芽実生)の関連で提供される。いくつかの実施形態では、植物が食用である場合には、発現されたタンパク質またはポリペプチドを含有する植物組織は消費のために直接的に提供される。したがって本開示は、発現されたタンパク質またはポリペプチドを含有する食用の若い植物バイオマス(例えば食用発芽実生)を提供する。
【0175】
上記のように断片の熱安定性、したがって本開示の融合タンパク質の熱安定性によって、細胞培養上清および/または細胞抽出物を加熱することによる効率的な精製ステップが可能となる。多数の宿主細胞タンパク質がそのステップの間に変性され、沈殿する。したがってそれらは遠心分離、または濾過によって容易に除去され得る。さらに多数の宿主細胞プロテアーゼが熱的に不活性化され、その結果、下流処理の間の標的組換え融合タンパク質の安定性が増大する。熱安定性はさらに、ワクチン製造における下流処理の間のウイルス不活性化ステップにとって極めて有用な特性である。このようなステップは生成物の安全性を確実にするために必須であるが、常に標的タンパク質の活性と適合するわけではない。このような場合には、冗長で費用のかかるプロセス検証を含む高価な限外/ナノ濾過手順が使用されなければならない。生成物の簡単な熱処理を使用できることによって、プロセス全体がより安価でより効率的になり、結果としてより安全な生成物が得られる。これらの特性は、発展途上国にとって特に有用であり適用可能であるワクチンを作製するために、高度に重要である。
【0176】
一実施形態によれば、発現される対象の生成物は宿主細胞を破壊することによって得られ得る。融合タンパク質は、例えば培養培地中に分泌されて発現され、それから得ることができることが好ましい。この目的のために、対象のポリペプチド中に適当なリーダーペプチドが提供される。分泌を達成するためのリーダー配列および発現カセット設計は、先行技術において公知である。また、それぞれの方法の組合せがあり得る。それによって、融合タンパク質が、生成され、高収率で効率的に得られ/単離され得る。
【0177】
本開示の生成された融合タンパク質は、当技術分野で公知の方法によって回収され、さらに精製され、単離され、処理され、および/または改変され得る。例えば、ポリペプチドは、これらに限らないが、遠心分離、濾過、限外濾過、抽出または沈殿を含む、従来手順によって栄養培地から回収され得る。
【0178】
精製ステップなどのさらなる処理ステップは、これらに限らないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシングおよびサイズ排除)、電気泳動手順(例えば分取等電点電気泳動)、差次的溶解度(例えば硫酸アンモニウム沈殿)または抽出を含む当技術分野で公知のさまざまな手順によって実施され得る。
【0179】
さらに、単離され精製された対象のポリペプチドはさらに処理され、例えば組成物、例えば医薬組成物に製剤化され得る。
【0180】
本開示によれば、図6にタンパク質精製プロセスの模式的フローチャートが示されており、ここで熱処理のためのあり得るステップおよび/または高pHもしくは低pH持続ステップが右側に示されている。技術効果ならびに技術的利点が右側に列挙されている。本開示の熱安定性および/または酸性耐性組換え融合タンパク質の精製は、比較的少ない手順ステップを含む簡単な方法によってこのように実施され得、ここでタンパク質を発現する細胞(すなわち宿主細胞)は熱処理および/または低pH溶液中に付される。この組み合されたプロセスはそれ自体、混入する宿主細胞タンパク質、特にウイルス粒子および/またはウイルスタンパク質のものを事実上含まないタンパク質を作製する。この方法の簡潔さ、容易さおよび速度が、それを、ワクチンの基剤としての組換え融合タンパク質の生成における魅力的な代替法にするはずである。さらに、最初の精製の前に細胞片を必ずしも除去しなくてもよく、全プロセスは1つの容器中で実施され得る。結果として上記のように、本開示の一態様は、宿主細胞から異種タンパク質を放出すること、異種タンパク質から宿主細胞タンパク質を分離すること、およびタンパク質溶液から混入物を除去することを含む、高純度の本開示の組換え融合タンパク質を回収するための、費用効率が高い簡単なプロセスを提供することにある。このような方法は、本明細書において記載される融合タンパク質ワクチン候補のための新規に組み合わされた細胞破壊および精製ステップを含むことを特徴とする。
【0181】
したがって本開示の実施形態は、本開示の組換え融合タンパク質を精製するためのプロセスに関し、このプロセスは前記融合タンパク質を発現する宿主細胞を、例えば酢酸中に懸濁すること、および前記懸濁液を50〜90℃の間の温度でインキュベートすること、組換え融合タンパク質を含有する懸濁液の可溶性画分を分離することおよび集めることを含む。
【0182】
この関連では、用語「プロセス」は用語「方法」または「手順」と同義的に使用され得、特に組換えによって生成される本開示の融合タンパク質を精製するための手順ステップの任意の組み立ておよびまたは順序を指す。
【0183】
用語「複数ステップ」プロセスはこの関連において、一連の費用のかかる、および/または手のかかる、および/または時間のかかる、および/または技術的に複雑な精製ステップを含む、タンパク質および/またはペプチドを精製するためのプロセスを記載するために使用される。原則として、複数ステッププロセスは、1つまたは2、3のステップのみを有する本開示の方法に記載されるプロセスとは対照的に、宿主細胞の最初の破壊のための、および宿主細胞タンパク質および混入物からの異種タンパク質の第1の粗分離のための少なくとも2つの明確に分離された手順ステップを含む。通常これらのステップに、やはり少なくとも1つの精製ステップが続く。複数ステッププロセスおよび本開示において関連するプロセスの両方がいくつかのさらなる精製ステップをさらに含み得るが、さらにより高純度の対象のタンパク質が必要な場合には、これは本開示に記載されるプロセスにとって必須ではない。混入する宿主細胞タンパク質を事実上含まない実質的に純粋な組換え融合タンパク質を作製する本開示のプロセスは、好ましくは本質的に単一の手順ステップで実施され得る。
【0184】
前記宿主細胞が本開示に従って、懸濁および/または再懸濁される懸濁液は、1、2、3、4または5以下など、5以下であるpHを示し得る。あるいは本発明の懸濁液は、約0.5;1.5;1.75;2.5;2.75または3など、3以下のpHを示し得る。通常、前記懸濁液において使用されるpHの範囲は、1〜4.5;1.5〜3.5;3〜5または1〜3など、0.5〜5である。
【0185】
一実施形態では、本開示の組換えタンパク質を精製するプロセスのための好ましい酸は、酢酸である。これは、タンパク質精製の方法を酢酸の特定の使用自体に制限すると理解されてはならない。当業者には明らかであるはずであるが、前記宿主細胞が懸濁および/または再懸濁される溶液の特定のpHを達成するのに好ましい酸は、異なる実験設定によって異なり、任意の十分な酸を含むと解釈されなければならない。
【0186】
さらに、本開示の組換えタンパク質を精製するためのプロセスにおいて使用するための懸濁液は、最初の精製が起こることを可能にするために高温を用いる条件を使用してインキュベートされる。本発明のプロセスに適したインキュベーション期間は、約5〜10分、10〜20分、10〜30分、5〜35分などの約5〜40分、または約5、10、15、18、20、25、30、35または40分などの約30〜40分であり得る。このようなインキュベーション期間はまた、約30〜60分と長い場合もある。前記インキュベーション時間は最適な結果を達成するために選択され、したがって精製のプロセスの際に使用されるその他の条件(温度変動など)のために変わり得るということが当業者には明らかであろう。本発明の1つの好ましい実施形態では、前記インキュベーションは少なくとも5〜35分間実施される。本発明の別の同等に好ましい実施形態では、インキュベーションは少なくとも20分間実施される。
【0187】
本開示の宿主細胞を含む懸濁液は、約50〜60℃、60〜70℃、65〜75℃、70〜80℃、75〜85℃または80〜90℃など約50〜90℃、例えば約65、70、75、77、79、80、82、84、86、88および/または90℃から選択される温度での熱処理ステップでインキュベートされ得る。本開示の1つの好ましい実施形態では、前記インキュベーションは70〜90℃で実施される。本開示の別の同等に好ましい実施形態では、インキュベーションはおよそ70℃で実施される。当業者には明らかであるように、温度は実験設定によってわずかに変わり得る。
【0188】
本関連では、用語「細胞破壊」は、宿主細胞の細胞壁および細胞膜を分解して細胞内産物の放出を達成し、したがってその後の回収を可能にすることを記載するために使用される。一般にこの用語は、細胞膜を破壊することによる細胞の破裂の結果、細胞内容物が喪失することを説明するために本技術分野で使用される溶解を含むよう理解されなければならない。この用語は、相当なおよび/またはわずかな量の細胞質物質が放出されることをもたらす手順に関するよう使用され得る。細胞破壊の出現は、例えば細菌作用を測定する生細胞カウントによって示され得る。グラム陰性生物の細胞破壊に関して、これは、もちろんその他の膜の破裂も含む。
【0189】
本開示のプロセスの間に、宿主細胞に関連する細胞片からの対象のタンパク質の「分離」および/または「分離すること」は、遠心分離または濾過によって、および/またはこれらに限らないが、Sjoquist、米国特許第3,850,798号(1974)によって記載される、対象のタンパク質の固定された免疫グロブリンへの吸収、イオン交換、親和性またはゲルクロマトグラフィー、沈殿(例えば硫酸アンモニウムを用いる)、透析、濾過などの任意のその他の標準手順を使用することによって、および/またはこれらの方法の組合せなどによって、任意の適した手段によって実施され得る。
【0190】
本開示のプロセスの間に可溶性画分を「集めること」は、プロセスにおいて使用された容器から対象のタンパク質を含む上清を得るのに適した大きさのピペットを使用することによって、または単に、デカントすることなどによって、任意の適した手段よって実施され得る。
【0191】
本開示の「可溶性画分」は、タンパク質が容器中の宿主細胞に起因する細胞片からの対象のタンパク質の直接分離を可能にするために、選択された温度およびpHなど、プロセスの間に使用される特定の条件によって可溶性にされる、対象のタンパク質を含む画分を指す。
【0192】
有利な実施形態では、本開示は、前記タンパク質を発現する宿主細胞の細胞培養物を回収するステップ、前記宿主細胞を酢酸中に再懸濁するステップ、および前記懸濁液を50〜90℃でインキュベートするステップ、分離するステップ、および組換え融合タンパク質を含有する懸濁液の可溶性画分を集めるステップを含む、本開示の組換え融合タンパク質を精製するためのプロセスに関する。
【0193】
本関連において、対象の(宿主)細胞を「回収すること(harvesting)」または「回収する(harvest)」という用語は、細胞培養物から細胞を得る手順を指し、この細胞はこれまで培地中または培地上で成長することが可能とされており、この培地には細胞の増殖を促進するよう栄養分および/またはその他の成分が提供されている。細胞培養物から細胞は、遠心分離、または振盪、および/もしくは掻きとることによって、または特定のカラムを使用するなど分離の任意の手段によってそれらを培地から取り出すこと、好ましくは細胞を洗浄し、あるいは細胞を次の手順ステップに適した別の溶液に再懸濁することによって回収され得る。
【0194】
さらに本開示は、熱処理を含む上記の方法を使用する熱処理による下流処理の間の、組換えタンパク質生成物のウイルス不活性化のための方法も対象とする。
【0195】
本開示はまた、本開示の融合タンパク質を含むワクチン組成物に関連する。このようなワクチン組成物の最適性能を確実にするために、免疫学的に、医薬上許容される担体、媒体またはアジュバントを含むことが好ましい。ワクチン組成物および担体は、生理学的に許容される培地中にあり得る。
【0196】
さらに本開示は、異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する少なくとも4種の単離された熱安定性断片を含む、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の1種または複数の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適したワクチン組成物に関連し、ここで各断片は少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有し、単離された熱安定性断片は、寄生生物の生活環における少なくとも2種の異なる段階において寄生生物の表面に提示されるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する。
【0197】
本開示の融合タンパク質が動物によって認識される有効なワクチンは、動物モデルにおいて血液および標的臓器中の寄生生物負荷を低減し、生存時間を延長し、および/またはマラリアの寄生生物を用いてチャレンジした後の体重減少を非ワクチン接種動物と比較して縮小することができる。
【0198】
さらに本発明の融合タンパク質は、炭水化物または脂質部分、例えば担体と連結され得る、またはその他の方法で改変され、例えばアセチル化され得る。
【0199】
適した担体は、プラスチック、例えばポリスチレンなどのポリペプチド(単数または複数)が疎水性非共有結合相互作用によって結合されているポリマーまたは多糖またはポリペプチド、例えばウシ血清アルブミン、オボアルブミンまたはキーホールリンペットヘマトシアニンなどのポリペプチド(単数または複数)が共有結合によって結合されているポリマーからなる群から選択される。適した媒体は、希釈剤および懸濁剤からなる群から選択される。アジュバントは、好ましくはジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、Quil A、ポリI:C、水酸化アルミニウム、フロイントの不完全アジュバント、IFN−γ、IL−2、IL−12、モノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコール酸(TDM)、トレハロースジベヘナートおよびムラミルジペプチド(MDP)からなる群から選択される。
【0200】
有効成分としてペプチド配列を含有するワクチンの調製は、参照によってすべて本明細書に組み込まれる、米国特許第4,608,251号、同4,601,903号、同4,599,231号および同4,599,230号によって例示されるように、一般に当技術分野で十分に理解されている。
【0201】
ワクチンのアジュバント効果を達成するその他の方法として、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム(ミョウバン)などの薬剤の使用、糖の合成ポリマー(Carbopol)、熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集、アルブミンに対するペプシン処理された(Fab)抗体を用いる再活性化による凝集、C.パルバム(parvum)などの細菌細胞またはグラム陰性菌の内毒素もしくはリポ多糖類成分との混合物が挙げられ、モノオレイン酸マンニド(Aracel A)などの生理学的に許容されるオイル媒体中のエマルジョンまたはブロック代用物として使用されるパーフルオロカーボン(Fluosol−DA)の20%溶液を有するエマルジョンも使用され得る。その他の可能性は、上記のアジュバントと組み合わせたサイトカインまたはポリI:Cなどの合成IFN−γ誘導因子などの免疫調節物質の使用を含む。
【0202】
アジュバント効果を達成するための別の可能性は、Gosselin et al, 1992に記載される技術を使用することである。手短には、本発明の抗原などの関連抗原は、単球/マクロファージ上のFc受容体に対する抗体(または抗原結合抗体断片)とコンジュゲートされ得る。
【0203】
ワクチンは、投与製剤(dosage formulation)と適合する方法で、治療上有効であり免疫原性であるような量で投与される。投与されるべき量は、例えば免疫応答を開始する(mount)個体の免疫系の能力および所望の保護の程度を含み、治療されるべき対象に応じて変わる。適した投与量範囲(dosage range)は約0.1マイクロg〜1000マイクロgの好ましい範囲、例えば約1マイクロg〜300マイクロgの範囲の、特に約10マイクロg〜50マイクロgの範囲の、ワクチン接種あたりほぼ数百マイクログラム程度の有効成分のものである。最初の投与およびブースターショットのための適したレジメンも可変性であるが、それは最初の投与と、それに続くその後の接種またはその他の投与によって典型的に表される。適用の方法は広く変わり得る。ワクチンの投与のための従来法のいずれも適用可能である。これらは、固体の生理学的に許容される基剤での、または生理学的に許容される分散物中での経口投与、注射などによる非経口的投与を含むと考えられている。ワクチンの投与量は投与経路に応じて変わり、ワクチン接種されるべきヒトの年齢、より少ない程度であるがワクチン接種されるヒトの大きさに従って変わる。
【0204】
ワクチンは注射、例えば皮下注射または筋肉内注射のいずれかによって従来的に非経口的に投与される。その他の投与様式に適しているさらなる製剤として、坐剤が挙げられ、いくつかの場合には、経口製剤が挙げられる。坐剤については、従来の結合剤および担体として、例えばポリアルカレングリコールまたはトリグリセリドを挙げることができ、このような坐剤は0.5パーセント〜10パーセント、好ましくは1〜2パーセントの範囲の有効成分を含有する混合物から形成され得る。経口製剤は、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど通常使用される賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤または散剤の形態をとり、有利には10〜95パーセントの有効成分、好ましくは25〜70%の有効成分を含有する。
【0205】
多数の例では、ワクチンの複数の投与を有することが必要であろう。特にワクチンはマラリアの感染を防ぐために、および/または確定的なマラリア感染を治療するために投与され得る。感染を防ぐために投与される場合には、ワクチンは感染の決定的な臨床徴候または感染症状が存在する前に予防的に与えられる。
【0206】
遺伝的変動のために、異なる個体は同一タンパク質に対して変動する強度の免疫応答を有して反応し得る。したがって、本開示のワクチンは免疫応答を増大するために、本開示のいくつかの異なる融合タンパク質を含み得る。ワクチンは2種以上の融合タンパク質または免疫原性部分を含み得、そこでタンパク質のすべては上記で定義されるとおりであり、またはペプチドのすべてではない一部は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)またはプラスモジウム属(Plasmodium)由来のその他の寄生生物に由来し得、後の実施例では、ポリペプチドについて上記で示される判定基準を必ずしも満たさないポリペプチドは、その自身の免疫原性ゆえ作用し得るか、または単にアジュバントとして作用し得る。ワクチンは、1〜20種、例えば2〜20種またはさらに3〜20種の異なるタンパク質または融合タンパク質、例えば3〜10種の異なるタンパク質または融合タンパク質を含み得る。
【0207】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は前記担体に吸着されるか、または共有結合によって結合される。別の実施形態では、担体は担体タンパク質である。
【0208】
本開示はまた、本開示の組換え融合タンパク質と結合する単離された抗体またはその断片を含む抗体組成物に関連する。
【0209】
本開示によれば、用語「抗体」は、これらに限らないが、組換え抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、ミニボディー、ダイアボディー、トリボディーならびにFab’、Fab、F(ab’)および上述の単一ドメイン抗体などの本開示の抗体の抗原結合部分を含む抗体断片を含む。
【0210】
本開示は、本明細書において記載される組換え融合タンパク質を含む組成物にさらに関連し、ここで組成物は、好ましくは医薬および/または診断用組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は組換え融合タンパク質および医薬上許容される担体を含む。
【0211】
用語「医薬上許容される担体」は、当業者には公知であるように、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化物質、保存料(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張性物質、吸収遅延物質、塩、保存料、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味物質、香味剤、色素、同様のこのような物質、およびこれらの組合せを含む。
【0212】
医薬上許容される担体は、好ましくはヒトへの投与のために製剤化されるが、特定の実施形態では、イヌなどの非ヒト動物への投与のために製剤化され、ヒトへの投与のためには許容されない(例えば政府の規制のために)医薬上許容される担体を使用することが望ましいものであり得る。任意の従来の担体が有効成分と不適合である場合を除いて、治療用または医薬組成物におけるその使用が考慮される。
【0213】
対象に投与される本開示の組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、治療されている疾患の種類、これまでのまたは同時発生的治療的介入、患者の特発性および投与経路などに関する物理的および生理学的因子によって決定され得る。投与に責任のある医師がいかなる事象においても、組成物中の有効成分(単数または複数)の濃度および個々の対象に適当な用量を決定する。
【0214】
有利な実施形態では、本開示の融合タンパク質はマラリア、特に熱帯性マラリアを予防または治療するための医薬を調製するために使用される。
【0215】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はさらなる薬剤、特に治療薬をさらに含む。
【0216】
以下の方法および実施例は例示目的で提供され、決して本開示の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0217】
方法および実施例
以下の実施例では、本開示の材料および方法が提供される。これらの実施例は単に例示目的であって、決して本開示を限定すると解釈されてはならないということが理解されなければならない。本明細書において引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、すべての目的でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。
【0218】
1.発現構築物のクローニング
表1に列挙される抗原断片配列を、可能性のあるN−グリコシル化部位(NetNGlyc 1.0)について分析した。点変異によって可能性のあるN−グリコシル化部位を排除し、植物発現のために最適化した(GeneArt)。最適化された配列を、NcoIおよびNotI断片として植物発現ベクターpTRAkc中に挿入した。抗原融合タンパク質またはDsRed融合物(赤色蛍光タンパク質)の作製のために、抗原またはDsRedのいずれかを含有する植物発現ベクターを、NotIによって線形化し、5’リン酸基をウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)によって除去し、抗原ドメインをEagI断片として挿入した。すべての構築物は、精製のためのC末端His−タグおよびER検索のためのSEKDEL−タグを保持していた(Pelham, 1990)。任意のタグ(hisおよびSEKDEL)を含まない融合タンパク質を、NcoIおよびXbaI断片として挿入した。pTRAkcプラスミドの詳細な説明が、Boes et al (Boes et al. 2011)に報告されている。すべての組換え遺伝子を、配列決定することによって検証し、エレクトロポレーションによってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株GV3101中に導入した(pMP90RK)。組換えアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)をこれまでに記載されたように培養した(Sack et al. 2007; Vaquero et al. 1999)。培養物の光学濃度(OD)を決定し、発現株をサイレンシングサプレッサーp19を保持するアグロバクテリウム(agrobacterium)株(Plant Bioscience Limited, Norwich, England)と5:1の比で混合し、1の最終ODとした。
【0219】
図8は、以下の熱安定性断片を含む配列番号197の複数段階、複数ドメイン融合タンパク質の模式図を示す。
【0220】
1_19:熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のMSP1の19kDa断片由来のEGF1;1_8:熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のMSP8由来のEGF1;2_8:熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のMSP8由来のEGF2;4:熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のMSP4由来のEGF;pfs25FKO:表面タンパク質Pfs25。可能性のあるN−グリカン部位のすべてを点変異によって排除した;CSP_TSR:熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のCSP由来のTSR−ドメイン。
【0221】
(EGF:上皮成長因子(EGF)様ドメイン;TSR:トロンボスポンジン関連(TSR)様ドメイン)
【0222】
2.一時的な発現
発現カセットを含有する組換え細菌を、ロックウール中で成長した6〜8週齢のベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物中に手作業で注射した。植物組織サンプルを浸潤(dpi)後3〜5日で採取し、標的タンパク質の蓄積および完全性を決定した。真空浸潤によって対象のタンパク質の大規模浸潤が実施された。浸潤されたベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物を16時間の光周期を用い、22℃で3〜5日間インキュベートした。
【0223】
3.タンパク質抽出
エレクトロピスチル(electropistill)を使用して葉のディスクアンプルをホモジナイズし、可溶性タンパク質を1gの葉材料あたり2mlのPBSを用いて抽出した。不溶性材料を遠心分離(16000xg、20分、4℃)によって除去し、清澄な上清を解析に直接使用した。精製のために、十分に浸潤した植物から得た葉材料をブレンダー中、1gの葉材料あたり3mlのPBSを用いてホモジナイズした。熱沈殿後、不溶性材料を一連の遠心分離および濾過ステップによって除去した。清澄化された上清を組換えタンパク質の精製のために使用した。
【0224】
4.熱沈殿
融合タンパク質の熱安定性を評価するために、清澄な上清のアリコート(100μl〜1ml)を500rpmのサーモブロック(Thermoblock)中、70℃で5分間インキュベートした。配列番号197を有する融合タンパク質の詳細な解析を、20℃(参照)から10℃刻みで最大90℃のさまざまな温度で実施した(図3)。熱処理後、サンプルを氷上で冷却し、遠心分離(16000xg、5分)によって不溶性材料を除去し、清澄な上清を解析に直接使用した。熱処理後の上清中のTSP含量をブラッドフォード(Bradford)アッセイによって決定し、立体呼応増特異的抗体を使用するサンドイッチELISAまたは表面プラズモン共鳴分光法によって、融合タンパク質の存在および完全性を検証した。精製の場合には、熱沈殿を70℃に設定した水浴中で、抽出物をガラス瓶の内側に入れて実施した。熱処理の間、ガラス瓶を手作業によって振盪した。温度をモニタリングし、抽出物の温度が65℃に達した後、熱沈殿を停止した。一連の遠心分離および濾過ステップによって不溶性材料を再度除去し、組換えタンパク質のさらなる精製のために使用した。
【0225】
5.ブラッドフォード(Bradford)による総可溶性タンパク質(TSP)の決定
総可溶性タンパク質の濃度を、分光学的ブラッドフォード(Bradford)アッセイによって測定した。サンプルを希釈せずに、またはPBSを用いる段階希釈で使用した。10μlのサンプルを200μlの1x Roti−Quant(Carl Roth、K015.1)と混合し、室温で5分間インキュベートし、最後に595nmでODを測定した。アッセイは96ウェル形式で実施した。TSPは、参照物質としてNew England Labs(NEB)から得たBSAを使用して作成した標準曲線を使用して算出した。
【0226】
6.イムノアフィニティークロマトグラフィーのためのマウス抗体生成
MSP19のEGF1に特異的な抗体を生成するハイブリドーマ細胞を、Malaria Research and Reference Reagent Resource Center MR4で発注した。細胞を血清不含の完全合成培地に適応させた。抗体生成のために、細胞をCellineバイオリアクター(Sartorius)中、37℃、および5%COで培養した。cellineバイオリアクター中では、細胞を透析メンブレンによって栄養区画から分けられている小さい培養区画中で培養した。透析メンブレンにより栄養分が培養区間に入ることを可能とするが、抗体が培養区間から漏れ出ることは可能ではない。ハイブリドーマ細胞は血清不含培地で増殖し、複合培地で満たされた栄養区画によって与えられた。回収時点で小さい培養区画から培地を採取し、遠心分離によって細胞を除去し、上清をMEP HyperCelによる抗体精製のために使用した。
【0227】
7.マウス抗体のMEP HyperCel精製
抗体を含有する細胞培養上清のpHを7.5〜8.0に調整し、NaEDTAを10mMの最終濃度に添加した。上清を遠心分離し、MEP HyperCel(Pall)による精製に先立って0.45μm濾過した。細胞培養上清をMEP HyderCelに添加し、pH7の第1の洗浄ステップとそれに続くpH5のステップで、結合していない不純物を洗浄した。結合している抗体をpH4で溶出し、抗体含有溶出画分を、PBSまたはカップリングバッファーのいずれかに対して透析した。すべてのステップは、記載されたpH値の50mMクエン酸バッファーを用いて実施した。
【0228】
8.イムノアフィニティークロマトグラフィーのためのNHS活性化セファロースとの抗体カップリング
NHS活性化セファロース(GE healthcare、17−0906−01)を、少なくとも10〜15マトリックス容積(mv)の氷冷1mM HClを用いて洗浄した。マトリックスを遠心分離によって沈殿させ、HClを除去し、マトリックスをカップリングバッファーで洗浄した。カップリングバッファーを遠心分離によって再度除去し、マトリックスを、カップリングバッファーに対してこれまでに透析された抗体と混合した。抗体を4mg/mlで2:1の抗体溶液/マトリックス比で使用した。カップリングステップを室温で45分間実施した。カップリング後、マトリックスを遠心分離によって再度沈殿させ、3mvのブロッキング溶液中で一晩インキュベートした。最後にブロッキング溶液を除去し、マトリックスを1mvの洗浄バッファー1とそれに続く1mvの洗浄バッファー2を用いて洗浄した。これらの洗浄ステップを3回反復した。最終マトリックスは、PBS中4℃で保存した。
【0229】
カップリングバッファー、pH8,3 0.2M NaHCO3、0,5 M NaCl
ブロッキングおよび洗浄バッファー1、pH8,5 0.1M Tris−HCl
洗浄バッファー2、pH4.0 0.1M酢酸、0.5M NaCl
【0230】
9.タンパク質精製
Hisタグをつけた対象の組換えタンパク質を、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。手短には、抽出物のpHをpH8.0に調整し、NaClを500mMの最終濃度に添加した。標的タンパク質は、ニッケルを充填したキレーティングセファロース上に捕獲された。pH8.0に調整したPBSを用いる洗浄ステップ後に、標的タンパク質をpH8.0のPBSに溶解した15mM、50mMおよび250mMイミダゾールの段階勾配で溶出した。IMAC溶出物を、MonoQ樹脂を使用するイオン交換クロマトグラフィー(IEX)による標的タンパク質のさらなるポリッシングに適したバッファーに、透析によってバッファー交換した。組換えタンパク質の溶出は、増大する濃度のNaClを用いて実施した。組換えタンパク質を含有する溶出画分を、PBSに対して透析した。
【0231】
タグのついていない組換えタンパク質を、イムノアフィニティークロマトグラフィー(IAC)によって精製した。手短には、抽出物をpH7.5に調整した。捕獲ステップは、MSP19のEGF1に特異的な固定化された抗体に基づいている。PBSを用いる洗浄ステップ後、標的タンパク質をpH2.5の100mMグリシンを用いて溶出した。溶出画分を1M TRIS pH8.8を用いて直接中和し、PBSに対して透析した。
【0232】
10.ウサギの免疫処置
「完全で容易な提案(complete and Easy offer)」およびその対応する免疫処置プロトコールに従うウサギの免疫処置のために、精製タンパク質をBiogenes(Berlin、Germany)に送った。
【0233】
11.ウサギ血清から得られた抗体のプロテインA精製
免疫処置後、ウサギ抗血清から得られた抗体を、プロテインAクロマトグラフィーによって精製した。手短には、血清サンプルをPBSを用いて1:5希釈し、精製に先立って0.45μmフィルターを通して濾過した。抗体をプロテインA樹脂上に結合させ、結合していない不純物をPBSを用いる洗浄ステップによって除去した。結合している抗体を100mMグリシンpH3.0を用いて溶出し、1M TRIS pH8.8を用いて直接中和した。RPMI 1640+GlutaMaxに対するバッファー交換をHiPrep脱塩カラムを使用して実施し、抗体を遠心性濃縮装置によって12mg/mlを超える濃度に濃縮し、滅菌濾過した。300μlのアリコートを−20℃で保存した。その後のすべての機能アッセイのために、300μlの滅菌HOを用いて抗体を再構築した。
【0234】
12.SDS−PAGEおよび免疫ブロット解析
タンパク質を、還元および非還元条件下で新たに調製された12%(w/v)ポリアクリルアミドゲルで、または市販の4〜12%(w/v)勾配ゲル(Invitrogen)で分離し、フェアバンクス(Fairbanks)プロトコール(Wong et al. 2000)に従ってクマシーR−250で染色した。分離されたタンパク質をニトロセルロースメンブレン(Whatman、Dassel、Germany)上にブロッティングし、PBSに溶解した5%(w/v)脱脂粉乳を用いてブロッキングした。タンパク質を、以下の1:5000の希釈の一次抗体を用いてプロービングした:ウサギ抗His−タグまたはmab5.2(MSP19のEGF1に特異的なモノクローナルマウス抗体)。二次抗体は、アルカリホスファターゼ標識されたヤギ抗ウサギH+Lまたはアルカリホスファターゼ標識されたヤギ抗マウスIgG Fcとした。バンドをNBT/BCIP(基質バッファー:150mM NaCl、2mM MgCl、50mM Tris−HCl、pH9.6中、1mg・ml−1)を用いて可視化した。インキュベーションステップの間に、メンブランを0.05%(v/v)Tween−20を補給したPBSを用いて3回洗浄した。
【0235】
図5は、本開示の種々の組換え融合タンパク質の蓄積解析を示す。上記のように、葉のディスクサンプルを5dpiで採取し、タンパク質を抽出し、熱沈殿した。タンパク質を還元条件下で分離した。図5Aはクマシー染色されたゲルを示す;図5Bは免疫ブロット解析である。組換えタンパク質を、ウサギ抗His抗体とそれに続くヤギ抗ウサギH+Lアルカリホスファターゼ標識された抗体を用いて検出した。分子量標準は左側に示されている。その小さいサイズおよび選択されたトランスファー条件による構築物番号1を除いて、組換え融合タンパク質のすべてが検出され得る。
【0236】
図5中の略語は以下のとおりである:
wt:非形質転換野生型ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物材料の抽出物
1〜8:種々の複雑性を有するマラリアワクチン候補を用いて形質転換されたベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物材料の抽出物
【数1】
【0237】
免疫ブロット検出:
ウサギ抗His抗体と、それに続くヤギ抗ウサギH+Lアルカリホスファターゼ標識抗体
【0238】
13.ELISA
融合タンパク質の熱安定性を、従来のサンドイッチELISAによって解析した。配列番号198を有する融合タンパク質に特異的なウサギ血清を、PBSを用いて1:5000希釈し、室温で1時間コーティングした。ウェルを、PBS中5%(w/v)脱脂粉乳を用いてブロッキングし、再度室温で1時間インキュベートした。熱処理されたサンプルの段階希釈を適用し、室温で1時間インキュベートし、1:5000希釈の融合タンパク質に特異的な立体構造マウス抗体に続けた。室温で1時間インキュベートした後、HRPO標識されたヤギ抗マウスFc抗体を添加した。組換え融合タンパク質を、ABTS基質を用いて405nmで検出した。各ステップの間に、プレートを0.05%(v/v)Tween−20を補給したPBSを用いて3回洗浄した。融合タンパク質の量は、100%に設定された参照サンプル(20℃)における量のパーセンテージとして表された。
【0239】
免疫処置のために使用されたタンパク質に対する血清における特異的抗体(IgG)力価、ならびにすべてのサブユニット/ドメインに対する反応性を、全長タンパク質を用いて、ならびに室温で1時間インキュベートした後、1μg/mlの濃度のDsRed融合物として単一抗原を用いてコーディングされた高結合性96ウェルプレート(Greiner bio−one、Frickenhausen、Germany)を使用するELISAによって測定した。ウェルをPBS中、5%(w/v)脱脂粉乳を用いてブロッキングし、再度室温で1時間インキュベートした。血清ならびに免疫前血清の段階希釈を96ウェルプレートに適用し、室温で1時間インキュベートした。抗原が結合している抗体をHRPO標識ヤギ抗ウサギIgG Fcを用いてプロービングし、45分後に405nmでABTS基質を用いて検出した。各ステップの間に、プレートを0.05%(v/v)Tween−20を補給したPBSを用いて3回洗浄した。特異的IgG力価を、免疫前血清の値の2倍のOD405nmをもたらす希釈として規定した。本開示の複数段階、複数断片ワクチン候補(配列番号197)に対して誘導されたウサギ抗体力価が、以下の表5に示されている。
【0240】
【表5】
【0241】
14.免疫蛍光アッセイ(IFA)
熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)寄生生物の異なる段階を可視化するために、間接IFAの大部分をこれまでに記載されるように(Pradel et al, 2004)実施した。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)株NF54の無性段階およびガメトサイトの培養を、これまでに記載されるように(Ifediba and Vanderberg, 1981)実施した。寄生生物調製物を8ウェル診断用スライド(Heat scientific)上で風乾させ、−80℃のメタノールを用いて10分間固定化した。非特異的結合をブロックしメンブランを透過処理するために、固定化された細胞を、PBS中0.5%BSA、0.01%サポニン中、室温で30分間、続いてPBS中0.5%BSA、0.01%サポニン、1%中性ヤギ血清中、室温で30分間インキュベートした。サンプルを、ヤギ血清を含まないブロッキング溶液で希釈された対応する複数段階、複数断片ワクチン候補に対する精製された抗体とともに、37℃で1時間インキュベートした。精製された抗体を15μg/mlの最終濃度で使用した。異なる熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)生活環段階の対比染色のために、CSP(スポロザイトの対比染色)、MSP1−19(シゾントの対比染色)またはPfs25(マクロガメートおよび接合子の対比染色)に由来する単一熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)抗原断片に対するマウス抗血清をフラウンホーファー(Fraunhofer)IMEによって作製し、1/200の最終濃度で使用した。ヤギ血清を含まないブロッキング溶液中1/1000の希釈の蛍光コンジュゲートAlexa Fluor 488ヤギ抗マウスまたはAlexa Fluor 594ヤギ抗ウサギ抗体(Invitrogen)とともに細胞をインキュベートすることによって、一次抗体を可視化した。Alexa Fluor 594がカップリングした抗体が生じる寄生生物の標識がない場合には、PBS中0.05%エバンスブルーを用いて細胞を対比染色した。核を強調するために、サンプルをPBS中0.01%サポニン中のヘキストとともにインキュベートした。最後に、細胞を抗退色溶液AF2(Citifluor Ltd.)とともにマウントし、マニキュア液で密閉した。ライカsp5共焦点顕微鏡を使用して標識された細胞の検査およびイメージのスキャニングを実施した。本開示の複数段階、複数断片ワクチン候補(配列番号197)に対して作製され精製されたウサギ抗体を用いる、異なる熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)段階の例示的免疫蛍光アッセイが図7に示されている。この図(図7A、7Bおよび7C)の各切片では、左側にヘキスト核染色、中央に陽性対照染色(マウス対照pAb、Alexa488を用いて標識された抗マウスpAbを用いて検出)、および右側に配列番号197を有する融合タンパク質に対して作製され精製されたウサギpAbを用いる染色(Alexa594を用いて標識された抗ウサギpAbを用いて検出)が示されている。
【0242】
15.スポロザイト結合/侵襲の阻害(ISI)
熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)抗原に対する抗血清の、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)NF54スポロザイトのヒト肝臓細胞への結合および侵襲を阻止する能力を評価するために、Rathore et al. (2003)およびMcCormick et al. (2008)に提示されるプロトコールに従って、スポロザイト結合/侵襲の阻害アッセイを実施した。HepG2細胞を、10%FBSを含有するRPMI培地で60000/mlの濃度に希釈した。この懸濁液の400μlを、E−C−L細胞結合マトリックス(Millipore)でコーティングされた8ウェルLab−Tek permanoxチャンバースライド(Heat Scientific)の各ウェルに添加した。細胞を37℃、5%COで48時間インキュベートして、閉じた単層を形成した。HepG2細胞の播種後2日目に、人工感染性吸血の19〜21日後のアノフェレス・ステフェンシ(Anopheles stephensi)蚊から熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)NF54スポロザイトを単離し、PBS中0.0001%FBS中に集めた。スポロザイトをノイバウエル血球算定器を使用してカウントし、300μlのRPMI/10% FBS中20000個のスポロザイトを、事前にRPMIを用いて3回洗浄したHepG2細胞の各ウェルに添加した。RPMI中に溶解した、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)抗原に対するウサギ抗血清から得られた精製されたポリクローナル抗体を600μg/mlの濃度で使用し、細胞をその後37℃、5%COで3時間インキュベートした。細胞外および細胞内スポロザイト間を区別するために、これまでに記載されたプロトコールに従い(Hugel et al. 1996, Pradel and Frevert 2001)いくつかの改変を用いて二重標識を実施した。細胞外スポロザイトを標識するために、HepG2細胞をRPMI培地を用いて3回洗浄した。RPMIで1/200希釈したウサギ抗CSP(MRA−24、ATCC)との、37℃で1時間のインキュベーションの次に、RPMIを用いる3回の洗浄ステップ、およびRPMIで1/1000希釈したalexa 488コンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体(Invitrogen)との、37℃で1時間のインキュベーションを続けた。細胞をPBSを用いて3回洗浄し、風乾し、メタノールを用いて−80℃で10分間固定化した。PBS中0.5%BSA、0.01%サポニンとともにインキュベートすることによるブロッキングおよび細胞膜の透過処理を、4℃で一晩実施した。続いてすべてのスポロザイトを標識するために、ブロッキング溶液で1/200希釈したウサギ抗CSP(MRA−24、ATCC)との、37℃で1時間のインキュベーションの次に、ブロッキング溶液を用いる3回の洗浄ステップ、およびブロッキング溶液で1/1000希釈したalexa 594コンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体(Invitrogen)との、37℃で1時間のインキュベーションを続けた。核を強調するために、サンプルをPBS中ヘキストとともにインキュベートした。最後に、細胞を抗退色溶液AF2(Citifluor Ltd.)とともにマウントし、マニキュア液で密閉した。細胞外(赤色および緑色蛍光)および細胞内(赤色のみの蛍光)のカウントを、Zeiss LSM510共焦点顕微鏡を使用して実施した。本開示の複数段階、複数断片ワクチン候補(配列番号197)に対して作製された精製されたウサギ抗体のISI結果が、以下の表6に列挙されている。
【0243】
【表6】
【0244】
16.成長阻害アッセイ(GIA)
プラスモジウム属(Plasmodium)寄生生物に対する成長阻害の可能性を、標準化されたプロトコールを使用して実施した。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)寄生生物株3D7A(MR4によって提供された)を、37℃で5%CO、5%Oおよび90%Nで、10%Albumax II(Invitrogen)、25mM Hepes、12μg/mlのゲンタマイシンおよび100μΜのヒポキサンチンを補給したRPMI培地中、4%のヘマトクリットで、5%未満の寄生虫症で培養物中に維持した。培養物を日常的なルーチンで維持し、ギムザ染色によって寄生中症を推定した。アッセイに使用される赤血球は15人のマラリア無感作血液ドナーから混合し、それらは3週間以内のものだった。赤血球はSAG−マンニトール中、4℃で保存した。寄生生物を、侵襲後1〜16時間の時間ウィンドウ内の10%ソルビトール処理によって同調させた。アッセイには、侵襲後36〜40時間の高度に同調した培養物のみを使用した。
【0245】
寄生生物および新鮮なRBCおよび抗体を、およそ、0.1%の最終寄生中症および2%の最終ヘマトクリットを有するよう96ウェルプレート中で混合した。RPMI1640+GlutaMaxに対して透析された精製されウサギ抗体を有する場合には、HEPESを25mMの最終濃度に添加した。バックグラウンド対照のために、寄生生物を含まないRBCのみを寄生生物と同一条件下で培養物中に維持した。添加を行わずに熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)寄生生物を培養することによって、寄生生物成長をモニタリングするための成長制御を実施した。すべてのサンプルを3連で測定した。陰性対照として、マラリア無感作ウサギおよびヒト血漿を得、精製された抗体を試験した。完全侵襲阻害の陽性対照として、EDTA(4mM最終濃度)およびBG98ウサギ抗AMA−1ポリクローナル抗体を使用した。プレートは37℃、95%湿度、5%CO、5%Oおよび90%Nで40〜44時間インキュベートした。回収時に、冷PBSを用いて1回ウェルを洗浄し、凍結した。寄生生物成長をMalstat(商標)アッセイ32によって推定した。吸光度を分光光度計を使用して655nmの波長で30分後に測定した。阻害能は以下の式によって推定した:
【0246】
【数2】
【0247】
上記のように、成長阻害アッセイは抗体の阻害の可能性を評価するための標準のin vitroアッセイである。アッセイは無性段階/血液段階をシミュレートする。本開示の複数段階、複数断片ワクチン候補(配列番号197)に対して作製され精製されたウサギ抗体のGIA結果は、表6に列挙されている。
【0248】
17.伝達阻止アッセイ(TBA)
熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)抗原に対する抗血清の、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)NF54のヒトから蚊への伝達を阻止する能力を評価するために膜飼育アッセイを実施した(Bishop and Gilchrist, 1946)。手短には、パーコール密度勾配遠心分離によって相当な鞭毛放出を示す成熟段階Vガメトサイトを培養物から精製し(Kariuki et al, 1998)、等量の新鮮なA−赤血球と混合する。次いで細胞を、試験のためにそれぞれの抗血清を補給した、等量の活性ヒトA−血清と混合した。未精製の試験血清を1/10の濃度まで、精製された試験血清を1mg/mlの濃度まで使用した。サンプルを、38℃に加熱したガラスフィーダーの底に広げたパラフィルムの薄層を介して、3〜5日齢のA.ステフェンシ(Stephensi)蚊に直接与えた。感染に使用した蚊は、これまでは脱脂綿パッドに浸した5%サッカロース、0.05%パラアミノ安息香酸、40μg/mlゲンタマイシンの溶液で与えられた。ゲンタマイシンは感染率全体を増強するための食事の一部であった(Beier MS et al, 1994)。蚊は、吸血で20分間摂食することが許可され、その後、80%湿度で26℃の安全な昆虫実験室中で維持された。翌日以降、摂食は上記の溶液を使用して行われた。異なる吸血の感染性を測定するために、血液を与えられた蚊の20個の中腸の各サンプルを感染の9〜12日後に解剖し、オーシストのカウントを容易にするために、PBS中0.2%マーキュロクロムを用いて染色した。オーシストのカウントを、100倍の倍率を使用して光学顕微鏡で実施した。本開示の複数段階、複数断片ワクチン候補(配列番号197)に対して作製された精製されウサギ抗体のTBA結果が、表6に列挙されている。
【0249】
結果は、少なくとも2種の異なるプラスモジウム属(Plasmodium)生活環段階の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)表面タンパク質に由来する少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有する熱安定性断片に基づいて、本開示の複数段階、複数断片融合タンパク質を生成する実現可能性を実証する。生成は異なる生成システムで達成された。植物ベースの生成については、抽出後に熱処理ステップを使用することによって、タバコ宿主細胞タンパク質を含有するものの80%超が、組換え融合タンパク質の大幅な喪失を伴わずに排除された。融合タンパク質は、熱処理後にその正しいタンパク質フォールディングを保持していた。同一のことがイムノアフィニティークロマトグラフィーの際の厳しい酸性溶出後にも当てはまる。熱安定性ならびにpH安定性は、例えば混入する宿主細胞タンパク質の効率的な除去、プロテアーゼの不活性化、病原性ウイルスの不活性化、および長期の貯蔵を可能にする本開示の好ましい利点である。精製後、組換えタンパク質は1x10−6超の力価を有する動物において平衡が保たれた抗体反応を誘発した。免疫蛍光アッセイによって、誘導された抗体は天然プラスモジウム属(Plasmodium)抗原と特異的に結合すると確認された。さらに機能アッセイによって、対応するプラスモジウム属(Plasmodium)生活環段階すべてにおいて30〜100%の範囲の特異的寄生生物阻害が実証された。
【0250】
参考文献
本明細書を通じて引用される文献参考文献、発行された特許および公開された特許出願を含むすべての引用された参考文献の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0251】
【表7】

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適した組換え融合タンパク質であって、前記寄生生物の少なくとも2種の異なる生活環の主な段階において、前記寄生生物の表面に提示される少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する複数の単離された熱安定性断片を含み、各断片が少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含む、組換え融合タンパク質。
[2]
前記融合タンパク質が、少なくとも4種の異なる単離された熱安定性断片を含む、上記[1]に記載の組換え融合タンパク質。
[3]
前記フォールディングされたドメインが、EGF様ドメインまたはTSRドメインである、上記[1]から[2]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[4]
前記組換え融合タンパク質が、アピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する少なくとも1種の非熱安定性の単離された断片をさらに含み、ここで融合タンパク質全体が熱安定性である、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[5]
前記融合タンパク質が、少なくとも5%、特に少なくとも7.5%の、より特には少なくとも10%のシステイン含量を有する、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[6]
前記単離されたタンパク質ドメインが互いに直接的に連結される、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[7]
前記単離されたタンパク質ドメインがリンカーを介して互いに間接的に連結される、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[8]
前記リンカーが20個以下のアミノ酸、特に2〜6個のアミノ酸の大きさを有するポリペプチドである、上記[7]に記載の組換え融合タンパク質。
[9]
前記異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)生活環段階が、前赤内期段階、血液段階および有性段階を含む、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[10]
前記アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物がプラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物である、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[11]
前記プラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物が、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)および四日熱マラリア原虫(P. malariae)からなる群から選択される、上記[10]に記載の組換え融合タンパク質。
[12]
前記プラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物が熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)である、上記[10]に記載の組換え融合タンパク質。
[13]
前記熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)表面タンパク質が、前赤内期段階および血液段階において前記寄生生物の表面に提示される、上記[12]に記載の組換え融合タンパク質。
[14]
前記熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)表面タンパク質が、前赤内期段階、血液段階、および有性段階において前記寄生生物の表面に提示される、上記[12]に記載の組換え融合タンパク質。
[15]
前記単離された熱安定性断片が、CelTos、CSP、EXP1、MSP1、MSP3、MSP4、MSP8、MSP10、mTRAP、Pfs230、Pfs25、Pfs45/48、Ripr、Ron2、TRAMPおよびTRAPからなる群から選択されるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[16]
前記単離された熱安定性断片が、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号1〜配列番号192またはこれらの配列の相同ポリペプチドからなる群から選択される、上記[1]から[15]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[17]
前記組換え融合タンパク質が、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号196〜配列番号201またはこれらの配列の相同ポリペプチドからなる群から選択される配列を含む、上記[1]から[16]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[18]
前記組換え融合タンパク質が、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号197の配列またはこれらの配列の相同ポリペプチドを含む、上記[1]から[17]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[19]
前組換え融合タンパク質全体が熱安定性および/またはpH安定性である、上記[1]から[18]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
[20]
単離された核酸分子であって、
a)上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子、
b)好ましくは1個もしくは複数のアミノ酸残基が保存的に置換されている、上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の融合タンパク質の改変された形態をコードする核酸分子、
c)ストリンジェントな条件下でa)〜b)の核酸分子のいずれかとハイブリダイズできる核酸分子、
d)ストリンジェントな条件下でa)〜c)の核酸分子のいずれかの相補体とハイブリダイズできる核酸分子、
e)a)〜d)の核酸分子のいずれかと少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の1種もしくは複数の寄生生物に対する、特に熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)に対するヒトおよび/もしくは動物ワクチンとして適した熱安定性融合タンパク質をコードする核酸分子、または
f)a)〜e)の核酸分子のいずれかの相補体
からなる群から選択される、単離された核酸分子。
[21]
上記[20]に記載のヌクレオチド分子を含むベクター。
[22]
上記[21]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[23]
前記細胞が、酵母または植物細胞である、上記[22]に記載の宿主細胞。
[24]
前記酵母がピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、上記[23]に記載の宿主細胞。
[25]
前記植物がベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)またはタバコ(Nicotiana tabacum)である、上記[23]に記載の宿主細胞。
[26]
上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質を生成する方法であって、
a)前記融合タンパク質をコードする核酸を含む核酸構築物を提供するステップ、
b)前記核酸構築物を宿主細胞中に導入するステップ、および
c)前記融合タンパク質の発現を可能にする条件下で前記宿主細胞を維持するステップ、
d)前記細胞培養上清または抽出物の熱処理を含む、前記宿主細胞から前記融合タンパク質を精製するステップ、および
e)任意選択で前記融合タンパク質をさらに処理するステップ
を含む、方法。
[27]
活性ウイルスを実質的に含まない、生物学的に活性な治療薬を調製する方法であって、上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の所与の融合タンパク質の供給源が、特に熱処理および/または酸性処理によって、存在する任意のウイルスを不活性化するのに十分な条件下でウイルス不活性化ステップに付される、方法。
[28]
上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質を精製する方法であって、
a)pH<8で前記融合タンパク質を発現する宿主細胞を懸濁し、55〜70℃の間の温度で前記懸濁液をインキュベートするステップ、
b)分離するステップ、
c)前記組換え融合タンパク質を含有する前記懸濁液の可溶性画分を集めるステップ、
および
d)前記組換え融合タンパク質を精製するステップ、および任意選択でそれをさらに処理するステップ
を含む、方法。
[29]
上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質を精製する方法であって、
a)前記融合タンパク質を発現する宿主細胞の細胞培養物を回収するステップ、
b)pH<8で前記宿主細胞を再懸濁し、55〜70℃の間の温度で前記懸濁液をインキュベートするステップ、
c)分離するステップ、および
d)前記組換えタンパク質を含有する前記懸濁液の可溶性画分を集めるステップ、
e)前記組換え融合タンパク質を精製するステップ、および任意選択でそれをさらに処理するステップ
を含む、方法。
[30]
前記宿主細胞が植物細胞である、上記[26]から[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
前記植物が、アブラナ属(Brassica)、タバコ属(Nicotiana)、ペチュニア属(Petunia)、トマト属(Lycopersicon)、ナス属(Solarium)、トウガラシ属(Capsium)、ニンジン属(Daucus)、オランダミツバ属(Apium)、アキノノゲシ属(Lactuca)、シロガラシ属(Sinapis)またはシロイヌナズナ属(Arabidopsis)からなる群から選択される属に由来する、上記[30]に記載の方法。
[32]
前記植物が、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)、カラシナ(Brassica juncea)、アブラナ(Brassica napus)、クロガラシ(Brassica nigra)、ブラシカ・オレラセアエ(Brassica oleraceae)、ブラシカ・トウルムフォルチー(Brassica tourmfortii)、シロガラシ(Smapis alba)およびダイコン(Raphanus sativus)からなる群から選択される種に由来する、上記[31]に記載の方法。
[33]
前記植物がベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)またはタバコ(Nicotiana tabacum)である、上記[32]に記載の方法。
[34]
生理学的に許容される培地中に、有効成分として上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質、および/または配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択されるアミノ酸配列もしくはそれらの相同ポリペプチドと、担体とを含む、アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対して感受性哺乳動物を免疫処置するためのワクチン組成物。
[35]
前記融合タンパク質が前記担体に吸着される、または共有結合によって結合される、上記[34]に記載のワクチン組成物。
[36]
前記担体が担体タンパク質である、上記[35]に記載のワクチン組成物。
[37]
上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質と結合する単離された抗体またはその断片を含む抗体組成物。
[38]
上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質、および/または配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択されるアミノ酸配列もしくはそれらの相同ポリペプチドを含み、前記組成物は、好ましくは医薬および/または診断用組成物である、組成物。
[39]
上記[1]から[19]のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質、および/または配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択されるアミノ酸配列もしくはそれらの相同ポリペプチドと、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
[40]
さらなる薬剤をさらに含む、上記[39]に記載の医薬組成物。
[41]
前記さらなる薬剤が治療薬である、上記[40]に記載の医薬組成物。
[42]
アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物に対するヒトおよび/または動物ワクチンとして適したワクチン組成物であって、少なくとも2種の異なるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する複数の単離された熱安定性断片を含み、各断片が少なくとも1つのフォールディングされたドメインを含有し、前記単離された熱安定性断片が、前記寄生生物の生活環における少なくとも2種の異なる段階において、前記寄生生物の表面に提示されるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する、ワクチン組成物。
[43]
前記ワクチン組成物が、少なくとも4種の異なる単離された熱安定性断片を含む、上記[42]に記載のワクチン組成物。
[44]
前記単離された熱安定性断片が、CelTos、CSP、EXP1、MSP1、MSP3、MSP4、MSP8、MSP10、mTRAP、Pfs230、Pfs25、Pfs45/48、Ripr、Ron2、TRAMPおよびTRAPからなる群から選択されるアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する、上記[42]から[43]のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
[45]
前記単離された熱安定性断片が、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号1〜配列番号192からなる群またはこれらの配列の相同ポリペプチドから選択される、上記[42]から[44]のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
[46]
前記熱安定性断片が、少なくとも2種の異なる組換え融合タンパク質中に含まれ、前記組換え融合タンパク質の一方が、前記寄生生物の生活環の単一の段階において前記寄生生物の表面に提示される少なくとも1種のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する2種以上の熱安定性断片を含み、他方の組換え融合タンパク質が、生活環の異なる段階において前記寄生生物の表面に提示される少なくとも1種のアピコンプレクサ門(Apicomplexa)表面タンパク質に由来する2種以上の熱安定性断片を含む、上記[42]から[45]のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
[47]
前記組換え融合タンパク質が熱安定性および/またはpH安定性である、上記[46]に記載のワクチン組成物。
[48]
前記組換え融合タンパク質が、1個または複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失によって組換えまたは合成法によって生成される、配列番号193〜配列番号195、配列番号202および配列番号205からなる群から選択される配列またはこれらの配列の相同ポリペプチドを含む、上記[46]から[47]のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
[49]
前記アピコンプレクサ(Apicomplexa)門の寄生生物がプラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物である、上記[42]から[48]のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
[50]
前記プラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物が、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)および四日熱マラリア原虫(P. malariae)からなる群から選択される、上記[49]に記載のワクチン組成物。
[51]
前記プラスモジウム属(Plasmodium)の寄生生物が熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)である、上記[49]に記載のワクチン組成物。
[52]
前記熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)生活環の生活環中の異なる段階が、前赤内期段階および血液段階である、上記[51]に記載のワクチン組成物。
[53]
前記熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)生活環の異なる段階が、前赤内期段階、血液段階および有性段階である、上記[51]に記載の組換え融合タンパク質。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]