(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461135
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】色変換を符号化する方法及び復号する方法並びに対応機器
(51)【国際特許分類】
H04N 19/70 20140101AFI20190121BHJP
H04N 19/85 20140101ALI20190121BHJP
【FI】
H04N19/70
H04N19/85
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-526535(P2016-526535)
(86)(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公表番号】特表2016-529787(P2016-529787A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2014064783
(87)【国際公開番号】WO2015007599
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】13306010.3
(32)【優先日】2013年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13306068.1
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13306291.9
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13306707.4
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100123629
【弁理士】
【氏名又は名称】吹田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】アンドリボン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ボルデ,フイリツプ
(72)【発明者】
【氏名】ジヨリー,エマニユエル
【審査官】
岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/205363(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/193538(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/008170(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/128962(WO,A1)
【文献】
Philippe Bordes, Pierre Andrivon and Roshanak Zakizadeh,AHG14: Color Gamut Scalable Video Coding using 3D LUT,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,13th Meeting: Incheon, KR,2013年 4月,JCTVC-M0197-r2,pp.1-10
【文献】
Philippe Bordes, Pierre Andrivon and Franck Hiron,Color Mapping SEI message,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,14th Meeting: Vienna, AT,2013年 7月15日,JCTVC-N0180,pp.1-11
【文献】
Philippe Bordes,Colour Mapping SEI message,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,15th Meeting: Geneva, CH,2013年10月,JCTVC-O0363_r1,pp.1-7
【文献】
Pierre Andrivon, Philippe Bordes and Edouard Francois,SEI message for Colour Mapping Information,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,16th Meeting: San Jose, US,2014年 1月,JCTVC-P0126r1,pp.1-9
【文献】
Pierre Andrivon, Philippe Bordes and Edouard Francois,SEI message for Colour Mapping Information,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,17th Meeting: Valencia, ES,2014年 4月,JCTVC-Q0074-r3,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 − 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの色変換を含む色マッピング情報を符号化する方法であって、
前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを符号化することと、
前記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを符号化することと、
を含み、
前記ビデオ信号特性を表す第1のパラメータが、次のシンタックス要素、すなわち、
第1のシンタックス要素(colour_map_video_full_range_flag)であって、該第1のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のビデオ全範囲フラグのシンタックス要素(video_full_range_flag)と同じセマンティクスを有している前記第1のシンタックス要素と、
第2シンタックス要素(colour_map_primaries)であって、該第2のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の原色のシンタックス要素(colour_primaries)と同じセマンティクスを有している前記第2のシンタックス要素と、
第3のシンタックス要素(colour_map_transfer_characteristics)であって、該第3のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の伝達特性のシンタックス要素(transfer_characteristics)と同じセマンティクスを有している前記第3のシンタックス要素と、
第4のシンタックス要素(colour_map_matrix_coeffs)であって、該第4のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のマトリクス係数のシンタックス要素(matrix_coeffs)と同じセマンティクスを有している前記第4のシンタックス要素と、
のうちの少なくとも1つのシンタックス要素を含んでいる、前記方法。
【請求項2】
色マッピングの目的を識別するための第5のシンタックス要素(colour_map_id)を符号化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータがSupplement Enhancement Information(補足強化情報)メッセージ内で符号化される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第6のシンタックス要素(colour_map_cancel_flag)が1に等しい場合に、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージが、出力順において先行するあらゆる、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を取り消すことを示し、前記第6のシンタックス要素が0に等しい場合に、色マッピング情報が続くことを示す前記第6のシンタックス要素を符号化することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を規定する第7のシンタックス要素(color_map_repetition_period)を符号化することを更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの色変換を含む色マッピング情報を復号する方法であって、
前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを復号することと、
前記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを復号することと、
を含み、
前記ビデオ信号特性を表す第1のパラメータが、次のシンタックス要素、すなわち、
第1のシンタックス要素(colour_map_video_full_range_flag)であって、該第1のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のビデオ全範囲フラグのシンタックス要素(video_full_range_flag)と同じセマンティクスを有している前記第1のシンタックス要素と、
第2シンタックス要素(colour_map_primaries)であって、該第2のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の原色のシンタックス要素(colour_primaries)と同じセマンティクスを有している前記第2のシンタックス要素と、
第3のシンタックス要素(colour_map_transfer_characteristics)であって、該第3のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の伝達特性のシンタックス要素(transfer_characteristics)と同じセマンティクスを有している前記第3のシンタックス要素と、
第4のシンタックス要素(colour_map_matrix_coeffs)であって、該第4のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のマトリクス係数のシンタックス要素(matrix_coeffs)と同じセマンティクスを有している前記第4のシンタックス要素と、
のうちの少なくとも1つのシンタックス要素を含んでいる、前記方法。
【請求項7】
色マッピングの目的を識別するための第5のシンタックス要素(colour_map_id)を復号することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータがSupplement Enhancement Information(補足強化情報)メッセージから復号される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
第6のシンタックス要素(colour_map_cancel_flag)が1に等しい場合に、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージが、出力順において先行するあらゆる、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を取り消すことを示し、前記第6のシンタックス要素が0に等しい場合に、色マッピング情報が続くことを示す前記第6のシンタックス要素を復号することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を規定する第7のシンタックス要素(color_map_repetition_period)を復号することを更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの色変換を含む色マッピング情報を符号化するように構成された符号化器であって、
前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを符号化する手段と、
前記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを符号化する手段と、
を備え、
前記ビデオ信号特性を表す第1のパラメータが、次のシンタックス要素、すなわち、
第1のシンタックス要素(colour_map_video_full_range_flag)であって、該第1のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のビデオ全範囲フラグのシンタックス要素(video_full_range_flag)と同じセマンティクスを有している前記第1のシンタックス要素と、
第2シンタックス要素(colour_map_primaries)であって、該第2のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の原色のシンタックス要素(colour_primaries)と同じセマンティクスを有している前記第2のシンタックス要素と、
第3のシンタックス要素(colour_map_transfer_characteristics)であって、該第3のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の伝達特性のシンタックス要素(transfer_characteristics)と同じセマンティクスを有している前記第3のシンタックス要素と、
第4のシンタックス要素(colour_map_matrix_coeffs)であって、該第4のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のマトリクス係数のシンタックス要素(matrix_coeffs)と同じセマンティクスを有している前記第4のシンタックス要素と、
のうちの少なくとも1つのシンタックス要素を含んでいる、前記符号化器。
【請求項12】
色マッピングの目的を識別するための第5のシンタックス要素(colour_map_id)を符号化する手段を更に備える、請求項11に記載の符号化器。
【請求項13】
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータがSupplement Enhancement Information(補足強化情報)メッセージ内で符号化される、請求項11又は12に記載の符号化器。
【請求項14】
第6のシンタックス要素(colour_map_cancel_flag)が1に等しい場合に、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージが、出力順において先行するあらゆる、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を取り消すことを示し、前記第6のシンタックス要素が0に等しい場合に、色マッピング情報が続くことを示す前記第6のシンタックス要素を符号化する手段を更に備える、請求項13に記載の符号化器。
【請求項15】
色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を規定する第7のシンタックス要素(color_map_repetition_period)を符号化する手段を更に備える、請求項13又は14に記載の符号化器。
【請求項16】
少なくとも1つの色変換を含む色マッピング情報を復号するように構成された復号器であって、
前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを復号する手段と、
前記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを復号する手段と、
を備え、
前記ビデオ信号特性を表す第1のパラメータが、次のシンタックス要素、すなわち、
第1のシンタックス要素(colour_map_video_full_range_flag)であって、該第1のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のビデオ全範囲フラグのシンタックス要素(video_full_range_flag)と同じセマンティクスを有している前記第1のシンタックス要素と、
第2シンタックス要素(colour_map_primaries)であって、該第2のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の原色のシンタックス要素(colour_primaries)と同じセマンティクスを有している前記第2のシンタックス要素と、
第3のシンタックス要素(colour_map_transfer_characteristics)であって、該第3のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)の伝達特性のシンタックス要素(transfer_characteristics)と同じセマンティクスを有している前記第3のシンタックス要素と、
第4のシンタックス要素(colour_map_matrix_coeffs)であって、該第4のシンタックス要素が前記少なくとも1つの色変換によって色マップされた復号ピクチャを記述していることを除いて、Video Usability Information(ビデオ・ユーザビリティ情報)のマトリクス係数のシンタックス要素(matrix_coeffs)と同じセマンティクスを有している前記第4のシンタックス要素と、
のうちの少なくとも1つのシンタックス要素を含んでいる、前記復号器。
【請求項17】
色マッピングの目的を識別するための第5のシンタックス要素(colour_map_id)を復号する手段を更に備える、請求項16に記載の復号器。
【請求項18】
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータがSupplement Enhancement Information(補足強化情報)メッセージから復号される、請求項16又は17に記載の復号器。
【請求項19】
第6のシンタックス要素(colour_map_cancel_flag)が1に等しい場合に、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージが、出力順において先行するあらゆる、色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を取り消すことを示し、前記第6のシンタックス要素が0に等しい場合に、色マッピング情報が続くことを示す前記第6のシンタックス要素を復号する手段を更に備える、請求項18に記載の復号器。
【請求項20】
色マッピング情報のSupplement Enhancement Informationメッセージの持続的な有効性を規定する第7のシンタックス要素(color_map_repetition_period)を復号する手段を更に備える、請求項18又は19に記載の復号器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換符号化に関する。具体的には、色変換を符号化する方法、それに対応する復号方法、符号化機器、及び、復号機器を開示する。
【背景技術】
【0002】
復元画像を端末機器のディスプレイに描画することは、終端間サービスの品質を保証するために極めて重要である。しかしながら、これは、色フォーマット、撮像機能、及び、ディスプレイ特性が広範囲に及ぶので、容易な作業ではない。最近、ITU(国際電気通信連合)によって、2012年4月に公開された「Parameter values for UHDTV systems for production and international programme exchange(再生及び国際番組交換のためのUHDTVシステム用パラメータ値)」という表題のドキュメントITU―R勧告BT.2020(Rec.2020として周知されている)において、新たな、より広いカラー・スペース(色空間)フォーマットが提案されている。したがって、従来型機器との互換性を検討する必要がある。全ての描画機器が、任意の色空間に適合する機能を備えているわけではなく、また、最適な色変換を行うために必要な情報を有しているわけでもない。実際、色をクリッピングする(
図1の左部分)よりも、例えば
図1の右部分に例示されているような適切なカラー・シェーディング(colour shading)が好まれるであろう。色変換関数の決定は簡単明瞭ではなく、その理由は、コンテンツ作成ワークフローには、決定論的処理(色空間1から色空間2への変換)も含まれるが、また、例えばカラー・グレーディング(colour grading)のような非決定論的作業も含まれることがあるためである。特性の異なる2つの対象ディスプレイ(例えば、UHDTVディスプレイとRec.709HDTVディスプレイ)を使用する場合、美術的意図とカラー・グレーディングの両方が異なることがある。カラー・グレーディングは、コンテンツ特性と参照ディスプレイの両方に依存する。
【0003】
図2に示されているように、ビデオ・コンテンツ配信において、色変換は、通常、マップ済み復号ピクチャが端末機器の描画機能に適応するように、復号ピクチャに適用される。
【0004】
Colour Mapping Function(CMF)(色マッピング関数)としても知られているこの色変換は、例えば、3×3ゲイン・マトリクス・プラス・オフセット(Gain―Offset model(ゲイン−オフセット・モデル))によって、あるいは、3D Colour LUT(3D色LUT)によって概算される。
【0005】
したがって、色変換を、帯域外で送信される可能性のあるビット・ストリーム内において、例えば3DColourLUTの形態に、符号化する必要がある。これによって、必要な柔軟性と更なる特徴を、HEVC及びSHVCビデオ符号化規格に加えて各種アプリケーション及びサービスに、提供できる。
【0006】
1つのソリューションは、色変換、すなわち、更に一般的に言えば、カラー・メタデータをプライベート・ストリームにおけるトランスポート・システム・レベルで送信することである。しかしながら、送信システムの大部分は、それらのメタデータの解釈の仕方を知らないので、それらを破棄している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを解消することである。
【0008】
少なくとも1つの色変換を符号化する方法を開示する。この方法は、該少なくとも1つの色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを符号化するステップと、上記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを符号化するステップと、を含む。
【0009】
少なくとも1つの色変換を符号化する符号化器であって、該少なくとも1つの色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを符号化する手段と、上記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを符号化する手段と、を備えた符号化器を開示する。
【0010】
少なくとも1つの色変換を復号する復号器であって、該少なくとも1つの色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータを復号する手段と、上記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータを復号する手段と、を備えた復号器を開示する。
【0011】
少なくとも1つの色変換を表す符号化ビデオ信号は、該少なくとも1つの色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を表す第1のパラメータと上記少なくとも1つの色変換を表す第2のパラメータとを含む。
【0012】
利点として、第1及び第2のパラメータは、補足強化情報メッセージ内において符号化され、該補足強化情報メッセージから復号される。
【0013】
一変形実施形態に従えば、少なくとも第1及び第2の組の第2のパラメータが符号化され、上記第1の組は第1の色変換を表し、上記第2の組は第2の色変換を表し、上記第1のパラメータは、上記第1の色変換によってリマップされ、その後に上記第2の色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を表す。
【0014】
コンピュータのプログラムの製品を開示する。該コンピュータ・プログラム製品は、該プログラムがコンピュータ上で実行される際に、上記符号化の方法、あるいは、上記復号の方法の全ステップを実行するためのプログラム・コード命令を含む。
【0015】
上記符号化の方法、あるいは、上記復号の方法の少なくとも全ステップをプロセッサに行わせるための命令を記憶したプロセッサ可読媒体を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のその他の特徴と利点は、下記の図面に関連して為された、本発明の一部の実施形態の以下の説明により明らかになるであろう。
【
図1】クリッピング(左側)による又は全範囲圧縮(右側)による第1の色空間から第2の色空間への色変換を例示する図である。
【
図2】従来技術に従う描画表示特性に適合する色変換を備えたビデオ復号器のアーキテクチャ(構成)を例示する図である。
【
図3】本発明の代表的な実施形態に従う符号化方法のフローチャートを表す図である。
【
図4】1つのオクタントの8つの頂点の位置を示す図である。
【
図5】1つのオクタント(layer_id)を灰色で、その親オクタント(layer_id−1)を黒色で示す図である。
【
図6A】本発明の種々の実施形態に従う復号方法のフローチャートを表す図である。
【
図6B】本発明の種々の実施形態に従う復号方法のフローチャートを表す図である。
【
図7】本発明に従って色変換を符号化する符号化器を概略的に示す図である。
【
図8】本発明に従って色変換を復号する復号器を概略的に示す図である。
【
図9】本発明の代表的な実施形態に従うビデオ符号化/復号システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、色変換を符号化する方法に関する。更に正確に述べると、本発明に従う方法には、復号器側において特定のディスプレイ(表示)環境へのカスタマイゼーションのために出力復号ピクチャの色サンプルをリマップすることを可能にする色マッピング情報を符号化することが含まれる。リマップとマップは、同義語として使用される。リマッピング処理は、RGB色空間における復号サンプル値を目標サンプル値にマップする/リマップすることである。典型的には、マッピングは、ルマ(輝度)/クロマ(色度)色空間領域とRGB色空間領域のいずれにおいても表現され、復号ピクチャの色空間変換によって生成されたルマ/クロマ成分と各RGB成分のいずれにも適用される。
【0018】
図3は、本発明の代表的な且つ本発明を限定しない実施形態に従う符号化方法のフローチャートを表している。
【0019】
ステップ100において、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号特性を記述する第1のパラメータが、ストリーム内において、例えば後述のSEIメッセージ内において、符号化される。
【0020】
ステップ102において、色変換を記述する第2のパラメータが、ストリーム内において、例えばSEIメッセージ内において、符号化される。
【0021】
このような色変換メタデータを符号化することによって、美術的な意図(固有で独自のTVセットの後処理の使用に代わる、あるいは、その使用に追加される、いわゆる「ディレクタのモード/ビジョン」)を保持することが可能になり、また、(例えば、UHDTV Rec.2020のような品質の等級がより高いコンテンツについて)送信符号化ビデオを高度化することが可能になるが、後者は、ディスプレイがこのような高度化データとビークル・コンテンツ色情報とを表示できる場合であり、且つ、取り組む/対象とする原色が、実際のコンテンツ全領域よりも遥かに広い(例えばRec.2020の)全領域を使用可能にする場合である。また、美術的な意図を保持しながら、広い色全領域等級のコンテンツ(例えばRec.2020カラリスト・グレード(色等級))を優美に(例えばRec.709カラリスト・グレードに)劣化させることも可能になる。
【0022】
代表的な実施形態を、ITU―T SG16 WP3及びISO/IEC JTC1/SC29/WG11のビデオ符号化に関する合同共同チーム(Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC))のドキュメントJCTVC―L1003に規定されたHEVC符号化規格のフレームワーク内で、あるいは、ITU―T SG16 WP3及びISO/IEC JTC1/SC29/WG11のビデオ符号化に関する合同共同チームのドキュメントJCTVC―L1008に規定されたHEVC符号化規格のスケーラブル拡張であるSHVC符号化規格のフレームワーク内で、あるいは、ITU―T SG16 WP3及びISO/IEC JTC1/SC29/WG11のビデオ符号化に関する合同共同チームのドキュメントJCTVC―L1005に規定されたHEVC符号化規格のレンジ拡張であるRExtのフレームワーク内で、提案する。1つの規格は、符号化データの任意のストリームが、この規格に対して互換性を有するために、準拠すべきシンタックスを規定している。このシンタックスは、特に、種々の項目の情報(例えば、シーケンス内に含まれるピクチャ、動きベクトルなどに関するデータ)をどのように符号化するかを規定している。SHVC符号化規格に関して述べると、色変換は、PPS、VPS、あるいは、SEIメッセージ(SEIは「Supplemental Enhancement Information(補足強化情報)」を表す)内において符号化できる。RExt符号化規格に関して述べると、色変換は、SEIメッセージ(SEIは「Supplemental Enhancement Information」を表す)内において符号化できる。
【0023】
別の有益な実施形態に従えば、色変換は、SEIメッセージ(SEIは「Supplemental Enhancement Information」を表す)内において符号化される。具体的な代表例として、HEVC規格は、そのAnnex Dにおいて、SEIと称される付加的情報を符号化する方法を規定している。この付加的情報は、シンタックスにおいて、payloadTypeと呼ばれるフィールドによって参照される。SEIメッセージは、例えば表示に関する処理に役立つ。尚、復号機器がその使用に必要な機能を所有していない場合、この情報は無視される。本発明の特定の実施形態に従えば、色変換に関する付加的情報を符号化するために、新たなタイプのSEIメッセージが規定される。この目的のために、フィールドpayloadTypeについての新たな値が、未使用の値の中から規定される(例えば、payloadTypeは24とされる)。
【0024】
SEIデータ(すなわち、sei_payload)のシンタックスは、次のように拡張される。
【表1】
この場合、SEIメッセージには、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号特性を記述する第1のパラメータと、色変換を記述する第2のパラメータと、が含まれている。色マップ済み出力復号ピクチャは、色変換によってリマップされた/マップされた/変換されたピクチャである。利点として、SEIメッセージには、色変換のタイプ(3D LUT、マトリクス付き3つの1D LUT、マトリクス・・・など)を指示する付加的シンタックス要素colour_map_model_idが含まれている。下の表1Bは、そのような指示の一例である。
【表1B】
このシンタックス要素は、例えば、次のSEIメッセージ内におけるようにcolor_map_id要素の後に符号化されたcolour_map_model_idである。一変形実施形態では、シンタックス要素colour_map_model_idは、colour_transform ()内の最初の要素である。
【0025】
利点として、シンタックス要素colour_map_model_idと、場合によってはcolour_map_idとは、レンダラがカラー・メタデータを使用できるか、すなわち、レンダラが、SEIメッセージにおいて送信された色変換を適用できるかを調べるために使用される。レンダラがSEIメッセージにおいて送信されたカラー・メタデータを使用できない場合、このSEIメッセージは破棄される。各々が相異なる色変換を記述した複数のSEIメッセージが送信される場合、それらのSEIメッセージの一部が破棄され、その他のSEIメッセージはレンダラによって使用されることがある。
【0026】
色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号特性を記述する第1のパラメータは、例えば、colour_map_video_signal_type_present_flag、colour_map_video_format、colour_map_video_full_range_flag、colour_map_description_present_flag、colour_map_primaries、colour_map_transfer_characteristics、colour_map_matrix_coeffsである。colour_map_primariesは、例えば、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号の原色のCIE1931座標を示す。第2のパラメータ(colour_transform)は、色変換を記述しており、3×3ゲイン・マトリクス・プラス・3オフセット、あるいは、3DLUT、あるいは、色変換を記述するその他の任意のパラメータとすることができる。
【0027】
レンダラは、それが表示できる1組のビデオ・フォーマットによって特徴付けられる。このSEIメッセージの第1のパラメータは、レンダラによって使用されて、そのサポートされた出力ビデオ・フォーマットに対応する適切な信号変換が行われる。colour_map_primariesがRec.709色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号を示す場合、レンダラは、Rec.709に対応する適切な描画ビデオ・フォーマットを選択する。
【0028】
利点として、複数のSEIメッセージが、
図9に示されているように、符号化器Encによって、ビデオ・ビットストリーム内においてビデオ信号Iencと共に符号化される。一例として、元のビデオ信号Iと、したがって出力復号ピクチャ・ビデオ信号とは、Rec.709に準拠しており、第1のSEIメッセージSEI1が、このRec.709出力復号ピクチャ・ビデオ信号をRec.2020(すなわち、ITU-R BT2020)マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号に変換するための適切な変換T1と共に符号化され、また、第2のSEIメッセージSEI2が、このRec.709出力復号ピクチャ・ビデオ信号をRec.601色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号に変換するための適切な変換T2と共に符号化される。符号化信号(Ienc+SEI1+SEI2)は、復号器Decに送られる。復号器Decは、ビデオ信号を出力復号ピクチャ・ビデオ信号Idecと第1のSEIメッセージSEI1と第2のSEIメッセージSEI2とに復号する。この情報によって、Rec.709に準拠するレンダラDisp1が、Rec.709出力復号ピクチャ・ビデオ信号Idecを表示し、したがってSEIメッセージを破棄する。Rec.2020に準拠するレンダラDisp2が、Rec.2020色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号を表示することになっており、したがって第1のSEIメッセージSEI1を使用する。このレンダラDisp2は、第1のSEIメッセージSEI1から復号された変換T1を適用して、Rec.709出力復号ピクチャ・ビデオ信号Idecの色をマップして、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号T1(Idec)を表示する。もしこのレンダラが、ほぼRec.2020に準拠するディスプレイであるならば、更に、このRec.2020色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号を自己の特性に適応化してもよい。
【0029】
Rec.601に準拠するレンダラDisp3が、Rec.601色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号を表示することになっており、したがって第2のSEIメッセージSEI2を使用する。このレンダラDisp3は、第2のSEIメッセージSEI2から復号された変換を適用してRec.709出力復号ピクチャ・ビデオ信号Idecの色をマップして、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号T2(Idec)を表示する。
【0030】
図9では、1台の復号器Decが代表例として示されている。一変形実施形態に従えば、数台の復号器、例えば、各々のレンダラについて1台ずつが使用される。
【0031】
このSEIメッセージは、出力復号ピクチャの色サンプルをリマップして個別のディスプレイ環境に合うようにカスタマイズすることを可能にする情報を提供する。このリマップ処理は、RGB色空間における符号化サンプル値を目標サンプル値にマップする。マッピング(マップ処理)は、ルマ(輝度)、あるいは、RGB色空間の領域で表現され、したがって、ルマ成分、あるいは、復号ピクチャの色空間変換によって生成された各々のRGB成分に適用されるべきである。
【0032】
復号色変換は、例えば(ITU-T SG16 WP3のJoint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)のドキュメントJCTVC-L1003 のセクション7.3.1.2に規定された)NAL Unit Headerのインデックスnuh_layer_idによって識別されるレイヤに属する復号ピクチャに適用される。
【0033】
colour_map_idには、色マッピング・モデルの目的を識別するために使用してもよい識別番号が含まれている。colour_map_idの値は、アプリケーションによって決定されるように、使用してもよい。colour_map_idは、相異なるディスプレイ・シナリオ(表示状況)に適した色マッピング作業をサポートするために使用できる。例えば、colour_map_idの相異なる値が、相異なるディスプレイ・ビット・デプス(表示ビット深度)に対応することがある。
【0034】
1に等しいcolour_map_cancel_flagは、その色マッピング情報SEIメッセージが出力順序における以前のあらゆる色マッピング情報SEIメッセージの持続的な有効性をキャンセルすることを示す。0に等しいcolour_map_cancel_flagは、色マッピング情報が持続することを示す。
【0035】
colour_map_repetition_periodは、色マッピング情報SEIメッセージの持続的な有効性を規定するが、colour_map_idの同じ値を有する別の色マッピング情報SEIメッセージか、あるいは、符号化ビデオ・シーケンスの終了かがビット・ストリーム内に存在すべきピクチャ・オーダ・カウント(ピクチャ順序カウント)期間を規定してもよい。0に等しいcolour_map_repetition_periodは、色マッピング情報が現在の復号ピクチャのみに適用されることを規定する。
【0036】
1に等しいcolour_map_repetition_periodは、色マッピング情報が、下記の条件のいずれかが真である時まで、出力順序において持続的に有効であることを規定する。
・新たな符号化ビデオ・シーケンスが始まる。
・colour_map_idの同じ値を有する色マッピング情報SEIメッセージを含むアクセス・ユニット内のピクチャが、あるピクチャ・オーダ・カウント(POCとして知られている)を有する出力であって、そのPOCが、PicOrderCnt(CurrPic)として示される現在の復号ピクチャのPOCよりも大きい出力である。
【0037】
0に等しい、あるいは、1に等しいcolour_map_repetition_periodは、colour_map_idの同じ値を有する別の色マッピング情報SEIメッセージが存在するかもしれない、あるいは、存在しないかもしれないことを示す。
【0038】
1よりも大きいcolour_map_repetition_periodは、色マッピング情報が、下記の条件のいずれかが真である時まで、持続的に有効であることを規定する。
・新たな符号化ビデオ・シーケンスが始まる。
・colour_map_idの同じ値を有する色マッピング情報SEIメッセージを含むアクセス・ユニット内のピクチャが、PicOrderCnt(CurrPic)よりも大きく、且つ、PicOrderCnt(CurrPic)+colour_map_repetition_periodよりも小さいか、あるいは、それに等しいPOCを有する出力である。
【0039】
1よりも大きいcolour_map_repetition_periodは、colour_map_idの同じ値を有する別の色マッピング情報SEIメッセージが、PicOrderCnt(CurrPic)よりも大きく、且つ、PicOrderCnt(CurrPic)+colour_map_repetition_periodよりも小さいか、あるいは、それに等しいPOCを有する出力であるアクセス・ユニット内のピクチャについて、存在すべきであることを示すが、但し、これは、ビット・ストリームが終了しない場合、あるいは、新たな符号化ビデオ・シーケンスがそのようなピクチャの出力なしでは始まらない場合である。
【0040】
colour_map_video_signal_type_present_flag、colour_map_video_format、colour_map_video_full_range_flag、colour_map_description_present_flag、colour_map_primaries、colour_map_transfer_characteristics、colour_map_matrix_coeffsのセマンティック(意味)は、それぞれ、(ITU-T H.265のAnnex Eで規定された)VUIにおけるシンタックス要素video_signal_type_present_flag、video_format、video_full_range_flag、colour_description_present_flag、colour_primaries、transfer_characteristics、matrix_coeffsのセマンティック(意味)と同じである。これらのシンタックス要素は、VUIにおいては入力ビデオ信号特性を記述するために使用されるが、しかしながら、本発明においては、利点として、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号特性を記述するために使用される。
【0041】
一変形実施形態に従えば、複数の(すなわち、少なくとも2つの)色変換が、1つの同じSEIメッセージ内において符号化される。この場合、第1のパラメータは、連続する色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャ・ビデオ信号特性を記述する。一例として、表2A内において、3つの色変換が符号化される。これらの色変換は、連続的に適用される。第1のパラメータは、color_transform1()によってリマップされ、その後に続くcolor_transform2 ()によってリマップされ、更にその後に続くcolor_transform3 ()によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述する。
【表2A】
【0042】
一例として、連続的に適用される4つの色変換が符号化される。3つの第1の色変換は3つの1D LUTであり、4番目の色変換は関数Matrix_Gain_Offset ()である。具体的な代表例として、色出力復号ピクチャは3つの成分y’CbCr又はR'G'B'から成り、各々の1D色LUTは1つの色成分に関する。3DLUTを色出力復号ピクチャの成分に適用する代わりに、1つの1DLUTを別個に各々の色成分に適用する。このソリューションによって、補間がより簡単になり、したがって、所要メモリ量が低減する。しかしながら、これによって、成分マッピング相関性が壊される。3つの1D色LUTの後に関数Matrix_Gain_Offset ()、例えば、3つのオフセットを有する3×3マトリクスを適用することによって、成分相関性及びオフセットを再導入して成分相互間の非相関性を補償することが可能になる。
【0043】
一変形実施形態に従えば、第1組の第1のパラメータが、color_transform1 ()によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述し、第2組の第1のパラメータが、color_transform2 ()によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述し、第3組の第1のパラメータが、color_transform3 ()によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述する。したがって、レンダラは、連続的に3つの変換、あるいは、最初の2つの変換のみ、あるいは、最初の1つの変換のみを適用できる。
【0044】
更にもう1つの変形実施形態に従えば、第1組の第1のパラメータが、複数の色変換によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述する。具体的には、第1のパラメータが、color_transform1()によって、あるいは、color_transform2 ()によって、あるいは、color_transform3()によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述する。すなわち、相異なる色変換が、色出力復号ピクチャを同じ色空間に向けてリマップする。レンダラは、これらの複数の色変換のうちの1つだけを適用する。適用される色変換の選択は、レンダラによって、例えば、その演算アーキテクチャの能力及び/又はその組込み回路構成に従って、行われる。一例として、下記の表2B内において、2つの色変換が符号化される。一方は3DLUTによって代表されており、他方は、表9に規定されているようなマトリクス及びオフセットによって代表されている。レンダラは、この2つの変換を連続的に適用する代わりに、それらのうちの一方のみを適用する。この場合、第1のパラメータは、3D_LUT_colour_data ( )によって、あるいは、Matrix_Gain_Offset ()によってリマップされる色出力復号ピクチャのビデオ信号特性を記述する。
【表2B】
【0045】
表1におけるcolour_transform ()、表2Aにおけるcolor_transform1 ()、color_transform2 ()、あるいは、colour_transform3 ()は、例えば、表3又は4の関数3D_LUT_colour_data ()によって、あるいは、表9の関数Matrix_Gain_Offset ()によって規定される。
【0046】
表2B内における色変換は、例えば、表3、4及び9の色変換から導出される。しかしながら、変換のタイプ(3DLUT、マトリクスを有する1DLUT、マトリクス・・・など)を示す追加のシンタックス要素colour_map_model_idが符号化される。シンタックス要素colour_map_model_idは、例えば、一般的なcolour_transform ()における最初の要素である。
【表3】
【0047】
nbpCodeは、表5において該nbpCodeの所与の値について一覧表示されているような3DLUTのサイズを示す。
【0048】
一変形実施形態に従えば、3D_LUT_colour_data ()は、以下のように表4において規定される。
【表4】
【0049】
nbpCodeは、表5において該nbpCodeの所与の値について一覧表示されているような3DLUTのサイズを示す。量子化値(quantizer value)は、3D_LUT_colour_data ()関数によって符号化できる。
【0050】
NbitsPerSampleは、色値を表すために使用されるビット数、すなわち、3DLUTサンプルのビット深度を示す。
【表5】
【0051】
3DLUT復号の出力は、サイズnbp×nbp×nbpの3次元アレイLUTである。各々のLUTアレイ要素は、頂点(vertex)と呼ばれて、(NbitsPerSample)に等しいビット深度の3つの復元サンプル値(recSamplesY、recSamplesU、recSamplesV)に対応付けられる。頂点lut [i][j][k]は、もしi%(nbp>>layer_id)、j%(nbp>>layer_id)、k%(nbp>>layer_id)の値がゼロに等しいならば、レイヤlayer_idに属していると言う。1つの頂点が複数のレイヤに属していることがある。レイヤlayer_idのオクタント(octant)は、layer_idに属している8つの隣接する頂点によって構成される(
図4)。
【0052】
オクタント(layer_id, y,u,v)の復号は、表6に示されているような帰納関数である。
【表6】
【0053】
split_flagは、1つのオクタントが、半分の水平方向及び垂直方向のサイズを有する複数のオクタントに分割されるか否かを規定する。値(y,u,v)は、3DLUTにおける最初の頂点の位置を規定する。
【0054】
各々のオクタントは、残差成分値(resY[i]、resU[i]、resV[i])が符号化されるか、あるいは、全てがゼロであると推測されるかを示すフラグ(encoded_flag[i])に対応付けられた8つの頂点(i=0、・・・7)から構成される。成分値は、成分値の予測に残差を加算することによって復元される。成分値の予測は、例えば、layer_id-1(
図5)の8つの隣接する頂点のトリリニア補間(tri-linear interpolation)を用いて算出される。頂点は、一旦復元されると、復元済みとして記される。
【表7】
【0055】
layer=layer_idのオクタントに属する頂点((y+dy [i])、(u+du [i])、(v+dv [i]))についての復元3D色LUTサンプル(recSamplesY[i]、recSamplesU[i]、recSamplesV[i])は、
recSamplesY [i] =resY [i]+predSamplesY [i]
recSamplesU [i] =resU [i]+predSamplesU [i]
recSamplesV [i] =resV [i]+predSamplesV [i]
によって与えられ、ここで、predSampleY[i]、predSamplesU [i]及びpredSamplesV [i] の値は、現在のオクタントを含むlayer=layer_id-1のオクタントの8つの頂点についてトリリニア補間を用いて導出される。
【0056】
第1の一変形実施形態に従えば、利点として、上述のSEIメッセージ内の3D_LUT_colour_data()は、3つの1DLUTを記述するパラメータThree_1D_LUT_colour_data()によって取って代わられる。
【0057】
第2の一変形実施形態に従えば、利点として、上述のSEIメッセージ内の3D_LUT_colour_data()は、表8及び表9に示されたような3×3ゲイン・マトリクス・プラス・3オフセットのような色変換を記述するパラメータによって取って代わられる。表1内のcolour_transform ()、表2b内のcolor_transform1 ()、color_transform2 ()、あるいは、colour_transform3 ()は、例えば、表8の関数Matrix_Gain_Offset ()によって規定される。
【表8】
【表9】
【0058】
Gain[i]はマトリクス係数の値を表し、Offset[i]はオフセットの値を表す。
【0059】
図6Aは、本発明の代表的で非限定的な実施形態に従う復号方法のフローチャートを表している。
【0060】
ステップ200において、色マップ済み出力復号ピクチャ・ビデオ信号特性を記述する第1のパラメータが、ストリームから、例えば、上述の如く開示されたようなSEIメッセージから復号される。
【0061】
ステップ202において、色変換を記述する第2のパラメータが、ストリームから、例えば、SEIメッセージから復号される。
【0062】
図6Bに示された一変形実施形態において、本方法には、更に、ストリームから色ピクチャを復号すること(ステップ204)と、色変換を用いて復号色ピクチャを色マップ済み出力復号ピクチャにリマップすること(ステップ206)と、が含まれている。次に、色マップ済み出力復号ピクチャが表示されてもよい。
【0063】
具体的な非限定的な実施形態に従えば、色マップ済み出力復号ピクチャと第1のパラメータがディスプレイに送信される。第1のパラメータは、ディスプレイによって、色マップ済み出力復号ピクチャを解釈するために使用されてもよい。
【0064】
図7は、ストリーム内において第1及び第2のパラメータを符号化するように構成された符号化器1の代表的なアーキテクチャ(構成)を表している。符号化器1には、データ及びアドレス・バス64によって互いにリンクされた構成要素、すなわち、
・マイクロプロセッサ61(すなわち、CPU)、例えばDSP(すなわち、デジタル信号プロセッサ)と、
・ROM(すなわち、リード・オンリ・メモリ)62と、
・RAM(すなわち、ランダム・アクセス・メモリ)63と、
・1つ又は複数のI/O(入出力)機器65、例えばキーボード、マウス、ウェブカメラと、
・電力供給源66と、
が含まれている。
【0065】
一変形実施形態に従えば、電力供給源66は符号化器の外側にある。
図7のこれらの構成要素の各々は、当業者に周知であり、これ以上は説明しない。上述のメモリの各々について本明細書で用いられる「レジスタ」という用語は、上述のメモリの各々において、小容量(一部のバイナリ・データ)のメモリ領域と大容量の(プログラム全体の記憶を可能にする、あるいは、演算されたデータを表すデータの全部又は一部分の表示を可能にする)メモリ領域の両方を意味している。ROM62は、プログラムと符号化パラメータを備えている。本発明に従う符号化方法のアルゴリズムは、ROM62に記憶されている。電源が投入されると、CPU61は、プログラム620をRAMにアップロードして、対応する命令を実行する。
【0066】
RAM63は、符号化器1の電源投入後にアップロードされてCPU61によって実行されるプログラムをレジスタに備え、入力データを別のレジスタに備え、符号化方法の異なる状態における符号化データを更に別のレジスタに備え、符号化に用いられるその他の変数をまた更に別のレジスタに備える。
【0067】
図8は、ストリームから得られる第1のパラメータと第2のパラメータとを復号するように構成された復号器2の代表的なアーキテクチャを表している。復号器2には、データ及びアドレス・バス74によって互いにリンクされた構成要素、すなわち、
・マイクロプロセッサ71(すなわち、CPU)、例えばDSP(すなわち、デジタル信号プロセッサ)と、
・ROM(すなわち、リード・オンリ・メモリ)72と、
・RAM(すなわち、ランダム・アクセス・メモリ)73と、
・データをアプリケーションから受信して送信するI/Oインタフェース75と、
・バッテリ76と、
が含まれている。
【0068】
一変形実施形態に従えば、バッテリ76は復号器の外側にある。
図8のこれらの構成要素の各々は、当業者に周知であり、これ以上は説明しない。上述のメモリの各々について本明細書で用いられる「レジスタ」という用語は、小容量(数ビット)の領域、あるいは、非常に大きい領域(例えば、プログラム全体、あるいは、大量の受信データ又は復号データ)に対応し得る。ROM72は、少なくとも1つのプログラムと、復号器パラメータとを備えている。本発明に従う復号方法のアルゴリズムは、ROM72に記憶されている。電源が投入されると、CPU71は、プログラム720をRAMにアップロードして、対応する命令を実行する。
【0069】
RAM73は、復号器2の電源投入後にアップロードされてCPU71によって実行されるプログラムをレジスタに備え、入力データを別のレジスタに備え、復号方法の異なる状態における復号データを更に別のレジスタに備え、復号に用いられるその他の変数をまた更に別のレジスタに備える。
【0070】
第1及び第2のパラメータの復号の後、色変換を用いた復号色ピクチャのリマップは、セットトップ・ボックス又はブルーレイ・プレーヤ内の復号器よって行われてもよい。この場合、色マップ済み出力復号ピクチャと第1のパラメータ又はその一部とは、(例えば、HDMI(登録商標)、SDI、Display Port、DVIを用いて)ディスプレイに送信されてもよい。次に、ディスプレイは、第1のパラメータを用いて色マップ済み出力復号ピクチャを解釈して描画してもよい。一変形実施形態においては、色変換を用いた復号色ピクチャのリマップは、TVセット内、具体的には、内蔵復号器内で行われる。この場合、第1のパラメータを用いて色マップ済み出力復号ピクチャを解釈して描画を行う。
【0071】
本明細書において説明された実施形態は、例えば、方法、プロセス、装置、ソフトウェア・プログラム、データ・ストリーム、あるいは、信号において、実施されてもよい。説明された特徴の実施は、それがたとえ単一の形の実施形態のコンテキスト(文脈)のみで説明されたとしても(例えば、方法又は機器としてのみ説明されたとしても)、その他の形(例えば、プログラム)でも実施されてもよい。装置は、例えば、適切なハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアを用いて、実施してもよい。方法は、例えば、装置を用いて、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、あるいは、プログラマブル・ロジック・デバイスを含む処理機器を一般的に意味する例えばプロセッサを用いて、実施してもよい。プロセッサには、例えば、コンピュータ、セル・フォン、ポータブル/パーソナル・ディジタル・アシスタント(「PDA」)のような通信機器、及び、エンドユーザ相互間の情報の通信を容易にするその他の機器も含まれる。
【0072】
本明細書に説明された種々のプロセス及び特徴の実施は、様々な相異なる装置又はアプリケーションにおいて、特に、例えば、装置又はアプリケーションにおいて、具現化されてもよい。そのような装置の例には、符号化器、復号器、復号器からの出力を処理するポスト・プロセッサ、符号化器に入力を供給するプレ・プロセッサ、ビデオ・コーダ、ビデオ・デコーダ、ビデオ・コーデック、ウェブ・サーバ、セットトップ・ボックス、ラップトップ、パーソナル・コンピュータ、セル・フォン、PDA、及び、その他の通信機器が含まれる。明らかなことであるが、これらの装置は、可動性を有してもよく、移動車両に搭載することさえも可能である。
【0073】
更に、方法は、プロセッサによって行われる命令によって実施されてもよく、そのような命令(及び/又は、実施形態によって生成されるデータ値)は、プロセッサ可読媒体に記憶されてもよく、そのようなプロセッサ可読媒体は、例えば、集積回路、ソフトウェア搬送又はその他の記憶機器、例えば、ハード・ディスク、コンパクト・ディスケット(「CD」)、光ディスク(例えば、しばしばデジタル多用途ディスク又はデジタル・ビデオ・ディスクと呼ばれるDVD)、ランダム・アクセス・メモリ(「RAM」)、あるいは、リード・オンリ・メモリ(「ROM」)である。命令は、プロセッサ可読媒体に明確に組み入れられたアプリケーション・プログラムを構成してもよい。命令は、例えば、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、あるいは、それらの組み合わせの中に入れられてもよい。命令は、例えば、オペレーティング・システム、個別のアプリケーション、あるいは、両者の組み合わせの中に存在してもよい。したがって、プロセッサは、例えば、プロセスを実行するように構成されたデバイスと、プロセスを実行するための命令を有する(記憶装置のような)プロセッサ可読媒体を備えたデバイスとの両方を兼ねたものとして見なされてもよい。更に、プロセッサ可読媒体は、実施形態によって生成されたデータ値を、命令に加えて又は命令の代わりに、記憶してもよい。
【0074】
当業者には明らかであろうが、実施形態は、例えば、記憶又は送信可能な情報を搬送するようにフォーマット化された種々の信号を生成してもよい。この情報には、例えば、方法を実施するための命令、あるいは、説明された実施形態の1つによって生成されたデータが含まれてもよい。例えば、信号は、説明された実施形態のシンタックスを書く又は読むための規則をデータとして搬送するように、あるいは、説明された実施形態によって書かれた実際のシンタックス値をデータとして搬送するようにフォーマット化されてもよい。そのような信号は、例えば、(例えば、スペクトルの無線周波数部分を用いて)電磁波として、あるいは、ベースバンド信号としてフォーマット化されてもよい。このフォーマット化には、例えば、データ・ストリームを符号化すること、及び、搬送波を符号化データ・ストリームで変調することが含まれてもよい。この信号が搬送する情報は、例えば、アナログ情報又はデジタル情報であってもよい。この信号は、周知の如く、種々の相異なる有線又は無線リンクを介して送信されてもよい。この信号は、プロセッサ可読媒体に記憶されてもよい。
【0075】
以上、いくつかの実施形態を説明した。しかしながら、種々の修正を加えてもよいことが理解されるであろう。例えば、相異なる実施形態の構成要素を組み合わせる、補う、修正する、あるいは、取り去ることによって別の実施形態を実現してもよい。更に、当業者であれば、ここに開示された構成及びプロセスの代わりに別のものを用いてもよく、その結果得られる実施形態が、少なくとも実質的に同じ機能を、少なくとも実質的に同じやり方で、果たして、開示された実施形態と少なくとも実質的に同じ成果を実現できることが理解できるであろう。これに従って、本願は、これらの実施形態及びその他の実施形態を熟慮している。