特許第6461165号(P6461165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461165
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】画像の逆トーンマッピングの方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/20 20060101AFI20190121BHJP
   H04N 9/68 20060101ALI20190121BHJP
   H04N 5/56 20060101ALI20190121BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20190121BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H04N5/20
   H04N9/68 101
   H04N5/56
   G06T5/00 735
   H04N1/407
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-543050(P2016-543050)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-502602(P2017-502602A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014076183
(87)【国際公開番号】WO2015096955
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】13306876.7
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ポーリ,タニア
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,エリック
(72)【発明者】
【氏名】シャマレ,クリステル
【審査官】 西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−511326(JP,A)
【文献】 特表2013−507674(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0188744(US,A1)
【文献】 特開2004−173065(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0104533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/20
G06T 5/00
H04N 1/407
H04N 5/56
H04N 9/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングの方法であって:
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル拡張指数値E'(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)のルミナンスY(p)を、前記ピクセルのルミナンスY(p)の、このピクセルについて得られたピクセル拡張指数値E'(p)乗と、前記ピクセルについて得られたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスYexp(p)に逆トーンマッピングするステップとを含む、
画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項2】
前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、得られる画像の平均拡張ルミナンスがもとの画像の平均ルミナンスにほぼ等しくなるようこれらの値が分布し直されるように再整形することにもよって得られる、請求項1記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項3】
所与のピーク・ルミナンスDmaxをもつ表示装置上で再現されるよう適応された請求項1または2記載の画像の逆トーンマッピングの方法であって、前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記画像のピクセルにわたる最大ルミナンスmax(Y)の、この最大ルミナンスmax(Y)をもつピクセルについて得られたピクセル拡張指数値乗が、前記ピーク・ルミナンスDmaxほぼ等しくなるよう、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を再スケーリングすることにもよって得られる、画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項4】
前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、これらの値に適用される二次関数を通じて再整形することによって得られる、請求項1または2記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項5】
各ピクセルのピクセル拡張指数値を計算するために、前記低域通過フィルタリングは、前記ピクセルの前記空間的近傍において適用される第一のガウス関数および前記ピクセルの色のルミナンス値の近傍において適用される第二のガウス関数の積を計算することによって実行される、請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項6】
ピクセル・ルミナンス向上値を計算するために、ルミナンス値の高周波数の前記抽出は、第二の低域通過フィルタリングを第三の低域通過フィルタリングで割った比を計算することによって実行され、前記第三の低域通過フィルタリングは、前記第二の低域通過フィルタリングより画像中のより多くの詳細を除去するよう構成される、請求項5記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項7】
前記色のルミナンスはウェーブレット分解の増大していく諸レベルにエンコードされており、各レベルは少なくとも高周波数係数(LH)および低周波数係数(LL)をもち、
各ピクセルのピクセル拡張指数値は、前記ピクセル(p)の色のルミナンスをエンコードする最高レベルの低周波数係数A(p)=LLに等しいとし、次いで前記ピクセルの前記空間的近傍において前記低域通過フィルタリングを実行して計算される、請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項8】
ピクセルのピクセル・ルミナンス向上値の前記計算のために、前記ピクセルの前記近傍に位置されるピクセルのルミナンス値の高周波数の前記抽出は、前記ピクセルのルミナンスY(p)と前記ピクセルの前記低周波数係数A(p)との間の差を計算することによって実行される、請求項7記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
【請求項9】
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングのための画像処理装置であって:
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル拡張指数値を、このピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るよう構成された低域通過フィルタリング・モジュールと、
・前記低域通過フィルタリング・モジュールによって与えられる前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、再整形/再スケーリングするよう構成された再整形/再スケーリング・モジュールと、
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル・ルミナンス向上値を、このピクセルのルミナンス近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るよう構成された高周波抽出モジュールと、
・前記画像の各ピクセルのルミナンスを、前記ピクセルのルミナンスの、前記再整形/再スケーリング・モジュールによってこのピクセルについて与えられたピクセル拡張指数値乗と、前記高周波抽出モジュールによって前記ピクセルについて与えられたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスに逆トーンマッピングするよう構成された逆トーンマッピング・モジュールとを有する、
画像処理装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像処理装置を有する電子装置。
【請求項11】
所与のピーク・ルミナンスDmaxをもち、前記逆トーンマッピングされた画像を表示するよう構成された表示装置と、前記ピクセル拡張指数値E'(p)を、前記画像のピクセルにわたる最大ルミナンスmax(Y)の、この最大ルミナンスmax(Y)をもつピクセルについて得られたピクセル拡張指数値乗が、前記ピーク・ルミナンスDmaxにほぼ等しくなるよう、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を再スケーリングすることによって得るよう構成されたモジュールとをさらに有する、請求項10記載の電子装置。
【請求項12】
プロセッサによって実行されたときに請求項1ないし8のうちいずれか一項記載の方法の段階を実行するためのプログラム・コード命令を有するコンピュータ・プログラム・プロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ダイナミックレンジ・イメージングの分野に関し、特に、低ダイナミックレンジ・コンテンツのダイナミックレンジを拡張して特に高いピーク・ルミナンスをもつ表示装置のためのコンテンツを用意することの問題を扱う。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術における近年の進歩は、拡大された範囲の色、ルミナンスおよびコントラストが表示されることを許容しはじめている。
【0003】
画像コンテンツのルミナンスまたは輝度範囲における拡大を許容する技術は高ダイナミックレンジ・イメージング(high dynamic range imaging)として知られており、しばしばHDRと略称される。HDR技術は、より広いダイナミックレンジのコンテンツを捕捉すること、処理すること、表示することに焦点を当てる。
【0004】
いくつかのHDR表示装置が出現しており、増大したダイナミックレンジで画像を捕捉できる画像カメラが開発されつつあるが、まだ利用可能なHDRコンテンツは非常に限られている。近年の進展は、近い将来におけるHDRコンテンツのネイティブな捕捉を約束しているが、既存のコンテンツに対処するものではない。
【0005】
従来の(以下では低ダイナミックレンジ(low dynamic range)を略してLDRと称される)コンテンツをHDR表示装置のために準備するために、リバースまたは逆トーンマッピング演算子(iTMO: inverse tone mapping operators)を用いることができる。そのようなアルゴリズムは、もとのシーンの見え方を復元または再生成することをねらいとして、画像コンテンツにおける色のルミナンス情報を処理する。典型的には、iTMOは従来の(すなわちLDR)画像を入力として取り、この画像の色のルミナンス・レンジをグローバルな仕方で拡張し、その後、ハイライトまたは明るい領域をローカルに処理して画像における色のHDRでの見え方を向上させる。
【0006】
いくつかのiTMO解決策が存在しているが、それらはもとのシーンの見え方を知覚的に再現することに焦点を当てており、コンテンツについての厳しい仮定に依拠している。さらに、文献で提案されているたいていの拡張方法は、ダイナミックレンジの極端な増大に向けて最適化されている。
【0007】
典型的には、HDRイメージングは、色のルミナンスの暗い値と明るい値との間のダイナミックレンジの拡大を、量子化ステップの数の増大と組み合わせたものによって定義される。ダイナミックレンジにおいてより極端な増大を達成するために、多くの方法は、グローバルな拡張を、ハイライトおよび画像の他の明るい領域の見え方を向上させるローカルな処理ステップと組み合わせる。文献において提案されている既知のグローバル拡張ステップは、逆シグモイドから線形または区分線形まで多様である。
【0008】
画像における明るい局所的特徴を向上させるために、ルミナンス拡張マップを生成することが知られている。ここで、画像の各ピクセルは、このピクセルのルミナンスに適用する拡張値に関連付けられる。最も単純な場合には、画像中のクリッピングされた領域が検出され、次いでより急峻な拡張曲線を使って拡張されることができる。しかしながら、そのような解決策は、画像の見え方に対して十分な制御をもたらさない。
【0009】
画像の色のルミナンスおよびコントラスト範囲を選択的かつ動的に再マッピングすることによって、画像の視覚的な魅力を向上させることをねらいとする新規なiTMOが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
画像の色のルミナンスおよびコントラスト範囲を選択的かつ動的に再マッピングすることによって、画像の視覚的な魅力を向上させることが本発明の目的である。基本的に、画像の異なる部分について異なるルミナンス処理が必要とされると考えられる。ディスプレイ側ダイナミックレンジ拡張のコンテキストにおいてシーン基準の(scene-referred)データが利用可能でないときは、いかなるルミナンス拡張解決策でも、圧縮アーチファクトやノイズが増幅されないことを保証しつつできるだけもとのシーンの見え方を再現することの間のトレードオフにならざるをえない。よって、下記で提案される画像の逆トーンマッピングの方法では、レンジ拡張は空間的に変動し、よって画像コンテンツに完全に適合される。
【0011】
したがって、本発明の主題は、ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングの方法であって:
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル拡張指数値(E'(p))を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル・ルミナンス向上値(Yenhance(p))を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)のルミナンスY(p)を、前記ピクセルのルミナンスY(p)の、このピクセルについて得られたピクセル拡張指数値E'(p)乗と、前記ピクセルについて得られたピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスYexp(p)に逆トーンマッピングするステップとを含む方法である。
【0012】
つまり、Yexp(p)=Y(p)E'(p)×[Yenhance(p)]c
である。
【0013】
指数パラメータcは、ピクセル・ルミナンス向上値によってもたらされる詳細の向上の量を制御する。したがって、cの値が大きくなるほど画像エッジのコントラストは徐々に増大する。c=1.5の値が使われることが好ましい。
【0014】
ピクセル拡張指数値を得るためにピクセルの空間的近傍においてルミナンス値の低域通過フィルタリングが実行されるので、各ピクセルは独自の拡張指数を得ることになる。したがって、この方法によって得られるルミナンス・レンジの拡張は空間的に変動し、画像コンテンツに適合される。
【0015】
ピクセル・ルミナンス向上値を得るためにピクセルの空間的近傍においてルミナンス値の高周波数の抽出が実行されるので、各ピクセルは独自のルミナンス向上を得ることになり、そのようなルミナンス向上は有利には、ルミナンスを拡張するために実行されるルミナンス値の低域通過フィルタリングの空間的コンポーネントによって引き起こされる、画像の詳細の平滑化を少なくとも部分的に補償するよう適応される。
【0016】
好ましくは、低域通過フィルタリングは、画像の明るいエリア内でのピクセルの色が、この画像のより暗いエリア内でのピクセルの色よりも向上されるよう、実行される。
【0017】
好ましくは、前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、得られる画像の平均拡張ルミナンスがもとの画像の平均ルミナンスにほぼ等しくなるようこれらの値が分布し直されるように再整形することによっても得られる。
【0018】
第一の変形では、逆トーンマッピングされた画像が所与のピーク・ルミナンスDmaxをもつ表示装置上で再現されることが意図される場合、前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、好ましくは、前記画像のピクセルにわたる最大ルミナンスmax(Y)の、この最大ルミナンスmax(Y)をもつピクセルについて得られたピクセル拡張指数値乗が、前記ピーク・ルミナンスDmaxに等しくなるよう、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を再スケーリングすることによっても得られる。
【0019】
つまり、たとえば、
【0020】
【数1】
である。ここで、E(p)はこのピクセルの空間的近傍においてピクセル(p)の色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって直接得られる値であり、αは全体的なルミナンス拡張を制御するために使用できる再スケーリング・パラメータである。したがって、項Dmaxにより、画像のルミナンス処理は、この画像を表示するために使われるHDR表示装置の機能、特にそのピーク・ルミナンスに依存する。
【0021】
よって、本方法は、有利なことに、コンテンツ自身および表示装置のルミナンス・レンジの両方に適合し、ダイナミックレンジの控えめな増大が使用されるときの表示装置でさえ、コンテンツのHDR見え方の向上を許容する。
【0022】
第二の変形では、前記ピクセル拡張指数値(E'(p))は好ましくは、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、これらの値に適用される二次関数を通じて再整形することによって得られる。
【0023】
好ましくは、各ピクセルのピクセル拡張指数値を計算するために、前記低域通過フィルタリングは、第一の変形では、前記ピクセルの前記空間的近傍において適用される第一のガウス関数および前記ピクセルの色のルミナンス値の近傍において適用される第二のガウス関数の積を計算することによって実行される。
【0024】
つまり、該フィルタリングは、前記画像の空間領域で適用される第一のガウス関数と、ルミナンス・レンジ領域で適用される第二のガウス関数とを使って実行される。
【0025】
好ましくは、第一のガウス関数の標準偏差σSの値は3以上である。
【0026】
第二のガウス関数の標準偏差σrの値は、好ましくはテクスチャーおよびノイズをならすために十分大きい一方、画像のオブジェクト間のエッジにまたがることを避けるために十分小さいべきである。標準偏差σrの値は好ましくは0.1max(Y)から0.5max(Y)までの間で選ばれる。ここで、max(Y)はもとの画像の全ピクセルにわたる最大ルミナンスである。
【0027】
好ましくは、ピクセル・ルミナンス向上値を計算するために、ルミナンス値の高周波数の前記抽出は、第二の低域通過フィルタリングを第三の低域通過フィルタリングで割った比を計算することによって実行される。ここで、第三の低域通過フィルタリングは、第二の低域通過フィルタリングより画像中のより多くの詳細を除去するよう構成される。
【0028】
好ましくは、ピクセルのピクセル・ルミナンス向上値を計算するために、前記第二の低域通過フィルタリングは、第一の標準偏差をもち、前記ピクセルの近傍において適用される第三のガウス関数と、前記ピクセルの色のルミナンスの近傍で適用される第四のガウス関数との積を計算することによって実行され、前記第三の低域通過フィルタリングは、前記第三のガウス関数についての前記第一の標準偏差より高い第二の標準偏差をもって前記第二の低域通過フィルタリングを再び適用することによって得られる。
【0029】
二度目に適用するときに第三のガウス関数の標準偏差のより高い値を使うことによって、第三の低域通過フィルタリングは、第二の低域通過フィルタリングより画像中の多くの詳細を除去する。したがって、得られた比は高域通過フィルタリングに対応する。
【0030】
好ましくは、前記諸色のルミナンスはウェーブレット分解の増大していく諸レベルにエンコードされ、各レベルは少なくとも高周波数係数(LH)および低周波数係数(LL)をもち、各ピクセルのピクセル拡張指数値は、第二の変形では、前記ピクセル(p)の色のルミナンスをエンコードする最高レベルの低周波数係数A(p)=LLに等しいとし、次いで前記ピクセルの前記空間的近傍において前記低域通過フィルタリングを実行して計算される。
【0031】
好ましくは、ピクセルのピクセル・ルミナンス向上値の前記計算のために、前記ピクセルの前記近傍に位置されるピクセルのルミナンス値の高周波数の前記抽出は、前記ピクセルのルミナンスY(p)と前記ピクセルの前記低周波数係数A(p)との間の差を計算することによって実行される。
【0032】
このように、ルミナンスのウェーブレット分解の前記(最高の)レベルの最低周波数サブバンドから除去される高周波数のみが、画像の詳細の向上のために保持される。
【0033】
好ましくは、前記計算は、この差への指数係数の前記適用を含む。この指数係数は好ましくは2に等しい。
【0034】
本発明の主題は、ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングのための画像処理装置であって:
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル拡張指数値を、このピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るよう構成された低域通過フィルタリング・モジュールと、
・前記低域通過フィルタリング・モジュールによって与えられる前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、再整形/再スケーリングするよう構成された再整形/再スケーリング・モジュールと、
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル・ルミナンス向上値を、このピクセルのルミナンス近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るよう構成された高周波抽出モジュールと、
・前記画像の各ピクセルのルミナンスを、前記ピクセルのルミナンスの、前記再整形/再スケーリング・モジュールによってこのピクセルについて与えられたピクセル拡張指数値乗と、前記高周波抽出モジュールによって前記ピクセルについて与えられたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスに逆トーンマッピングするよう構成された逆トーンマッピング・モジュールとを有する装置でもある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、付属の図面を参照し、限定しない例として与えられる以下の記述を読めばより明瞭に理解されるであろう。
図1】本発明の第一および第二の実施形態に基づく種々のステップを示す図である。
図2】逆トーンマッピングされる画像の色のYUV座標のウェーブレット分解を示す図である。
図3】この画像のウェーブレット分解を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面に示されるさまざまな要素の機能は、専用のハードウェアを通じて提供されても、適切なソフトウェアとの関連でソフトウェアを実行できるハードウェアを通じて提供されてもよい。
【0037】
本発明は、さまざまな形のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、特殊目的プロセッサまたはそれらの組み合わせで実装されうる。用語「プロセッサ」は、ソフトウェアを実行できるハードウェアのみを指すものと解釈するべきではなく、暗黙的に、限定するものではないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ソフトウェアを記憶するための読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および不揮発性記憶を含んでいてもよい。本発明は、特に、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして実装されてもよい。さらに、ソフトウェアは、プログラム記憶ユニット上に有体に具現されたアプリケーション・プログラムとして実装されてもよい。そのようなソフトウェアは、別のソフトウェアに統合されるプラグインの形を取ってもよい。アプリケーション・プログラムは、任意の好適なアーキテクチャを有する画像処理装置にアップロードされ、実行されてもよい。好ましくは、画像処理装置は、一つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および入出力(I/O)インターフェースといったハードウェアを有するコンピュータ・プラットフォーム上で実装される。コンピュータ・プラットフォームは、オペレーティング・システムおよびマイクロ命令コードをも含んでいてもよい。本稿に記載されるさまざまなプロセスおよび機能は、マイクロ命令コードの一部またはアプリケーション・プログラムの一部またはその任意の組み合わせであってもよく、CPUによって実行されてもよい。さらに、追加的なデータ記憶ユニット、表示装置、印刷ユニットなどといったさまざまな他の周辺ユニットがコンピュータ・プラットフォームに接続されてもよい。本発明に基づく方法の実施形態を実装する画像処理装置は、画像を受領できる任意の電子装置、たとえばテレビ・セット、セットトップボックス、ゲートウェイ、携帯電話、タブレットの一部であってもよい。
【0038】
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングのための本画像処理装置は:
・この画像の各ピクセルについてのピクセル拡張指数値を、このピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るよう構成された低域通過フィルタリング・モジュールと、
・前記低域通過フィルタリング・モジュールによって与えられる前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、再整形/再スケーリングするよう構成された再整形/再スケーリング・モジュールと、
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル・ルミナンス向上値を、このピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るよう構成された高周波抽出モジュールと、
・前記画像の各ピクセルのルミナンスを、前記ピクセルのルミナンスの、前記再整形/再スケーリング・モジュールによってこのピクセルについて与えられたピクセル拡張指数値乗と、前記高周波抽出モジュールによって前記ピクセルについて与えられたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスに逆トーンマッピングするよう構成された逆トーンマッピング・モジュールとを有する。
【実施例1】
【0039】
画像の逆トーンマッピングの方法の第一の実施形態について、上記の画像処理装置を使って、ここで図1を参照して述べる。
【0040】
たとえば画像受領器を使って、各ピクセルの色に関係したすべてのデータをもつ画像が受領される。ここで、この画像の各ピクセルに関連する色は三つの色座標、すなわち各色チャネルR、G、Bについて一つの色座標、にエンコードされている。
【0041】
この実施形態の第一の準備段階(図1には示さず)では、これらの色の受領されたRGB色座標が、必要であれば、それ自身としては既知の仕方で、規格化され、任意的には線形化され、それにより、受領された画像の色は表示装置のRGB色空間で表現される。このRGB色空間は標準化されることができ、対応する表示装置は仮想的な表示装置である。次いで、これらの色は、ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間、たとえばYUV色空間に変換される。RGB色空間からYUV色空間へのこの変換はそれ自身としては既知であり、よって詳細には述べない。ルミナンスをクロミナンスから分離する他の任意の色空間、たとえばXYZ、Yxy、CIE Labが代わりに使用されることができる。したがって、受領された画像の任意のピクセルpの色にルミナンス値Y(p)および二つのクロミナンス値U(p)、V(p)が関連付けられる。これから述べる逆トーンマッピングの方法の実施形態のねらいは、これらのルミナンス値Y(p)のそれぞれに指数値E'(p)を適用することによって、これらのルミナンス値を拡張されたルミナンス値に拡張することである。
【0042】
この実施形態の第二段階では、低域通過フィルタリング・モジュールを使って、ルミナンス値Y(p)をもつ画像の各ピクセルpについて、中間的なピクセル拡張指数値E(p)が得られる。これは、ピクセルpの空間的近傍内および任意的にはルミナンス値Y(p)の近傍内でもある諸ピクセルのルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによる。この低域通過フィルタリング段階は好ましくはガウス関数を使う。E(p)はたとえば次式を通じて得られる。
【0043】
【数2】
ここで、fsは画像の空間領域で適用される第一のガウス関数であり、frはルミナンス・レンジ領域で適用される第二のガウス関数であり、
Ωはピクセルpを中心とする前記画像の窓のサイズであり、
piはこの窓内のピクセルである。窓サイズはたとえば5または7であることができる。窓サイズの同様の値が計算効率のためには好ましい。
【0044】
本発明に基づく方法のこの第一の実施形態では、低域通過フィルタリングは二側面フィルタ〔バイラテラル・フィルタ〕である。「二側面」〔バイラテラル〕という語は、ここではフィルタリングが空間領域およびルミナンス・レンジ領域の両方で実行されるという事実をいう。
【0045】
好ましくは第一のガウス関数fsの標準偏差σsの値は2以上である。
【0046】
第二のガウス関数frの標準偏差σrの値は好ましくは、もとの画像におけるテクスチャーおよびノイズをならすのに十分大きいが、この画像のオブジェクト間のエッジを横断するのを避けるには十分小さいべきである。標準偏差σrの値は好ましくは0.1max(Y)から0.5max(Y)までの間で選ばれる。ここで、max(Y)は、もとの画像の全ピクセルにわたる最大ルミナンス値である。
【0047】
この第一の実施形態の特定の実装では、第一のガウス関数fsについての標準偏差はσs=3に設定され、ルミナンス・レンジ・ガウス関数frについての標準偏差はσr=0.3×max(Y)に設定された。
【0048】
ここで、この低域通過フィルタリングを通じて得られるすべての中間的なピクセル拡張指数値は、中間的な拡張指数マップE(p)をなす。
【0049】
再整形/再スケーリング・モジュールを使って、この実施形態の第三段階では、中間的な拡張指数マップは、当該画像にわたるピクセル拡張指数値の分布に依存するシグモイド関数を使って最終的な拡張指数マップに再整形される、および/または拡張された画像を再現するために使われる表示装置のピーク・ルミナンスに基づいて再スケーリングされる。
【0050】
上記で計算されたピクセル拡張指数値は相対スケールでピクセル毎の拡張を示すが、これらの拡張値は、一組の制約条件に従うよう再スケーリングされる必要がある。逆トーンマッピング方法によって与えられるHDR画像を再現するために使用できるHDR表示装置の増大した能力にもかかわらず、この方法によって得られる拡張されたHDR画像における平均ルミナンスは好ましくは、もとのLDR画像のものと匹敵するレベルに維持されるべきである。同時に、ルミナンスの拡張は、ハイライトを適切に拡張するために、拡張されたHDR画像を再現するために使用される表示装置のピーク・ルミナンスDmaxを考慮に入れるべきである。したがって、この第三段階を通じて、再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値E'(p)が次式を通じて得られる。
【0051】
【数3】
ここで、パラメータαはルミナンス拡張の全体的な挙動を制御するために使用されることができ、
E(p)は上記の第二段階で計算された中間的なピクセル拡張指数値であり、
max(E)は画像の全ピクセルにわたるE(p)の最大値であり、
項log(Dmax)/log(max(Y))はY(p)=max(Y)であるときにY(p)E'(p)=Dmaxとなることを許容する。
【0052】
パラメータαの目的は、ルミナンス拡張がどのくらい「平坦」であるかを制御することである。これは、空間的に変動する拡張と一定の指数との間のバランスを取る重みである。αについての値が大きいほどルミナンス拡張は局所的になり、よってより極端な結果につながる。一方、αについての値が小さいほど、よりグローバルに近い拡張につながる。値α=0.1が実際に、ハイライト拡張と中間トーンの効果的な管理との間の良好なトレードオフをもたらした。
【0053】
この第一の実施形態のある特定の実装では、パラメータαは値α=0.1に設定された。この値はハイライト拡張と中間トーンの効果的な管理との間の良好なトレードオフをもたらすからである。
【0054】
ここで、すべての再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値は最終的な拡張指数マップE'(p)をなす。
【0055】
この実施形態の第四段階では、高周波抽出モジュールを使って、ルミナンス値Y(p)をもつ前記画像の各ピクセルpについてのピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)を得るために、もとの画像におけるルミナンス値の高空間周波数が抽出される。この段階はたとえば、以下のような三つのサブステップを通じて実行される。
【0056】
フィルタリングの第一サブステップでは、画像のルミナンスにおける大きな変動を含むがノイズまたは他の小さな特徴は除外する基本層Ybaseが、第一はピクセルpの空間的近傍におけるもの、第二はルミナンス値Y(p)の近傍におけるものである上記と同じガウス関数f's、f'rを使って、次のように計算される:
【0057】
【数4】
ここで、Ω'は、好ましくは上記と同じサイズをもつピクセルpを中心とする前記画像の窓のサイズであり、
piはこの窓内のピクセルである。
【0058】
この第一の実施形態のこの特定の実装では、空間的ガウス関数f'sについての標準偏差は今やσ's=10に設定され、ルミナンス・レンジ・ガウス関数f'rについての標準偏差はσ'r=0.1×max(Y)に設定される。
【0059】
フィルタリングの第二サブステップでは、第一サブステップによって得られた基本層Ybaseがやはりガウス関数を使って、だが画像中のより多くのルミナンス詳細を除去するためにルミナンス・レンジにおけるより大きな標準偏差を用いて、二度目にフィルタリングされ、次のようにY'baseを得る:
【0060】
【数5】
ここで、f"s、f"rは、第一はピクセルpの空間的近傍における、第二はルミナンス値Y(p)の近傍における上記と同じガウス関数であり、
ここで、Ω"は、好ましくは上記と同じサイズをもつピクセルpを中心とする前記画像の窓のサイズであり、
piはこの窓内のピクセルである。
【0061】
任意的に、Y'base(p)は、最終的なHDR画像におけるノイズを最小にするために、上記で定義したE(p)に等しく設定されることができる。
【0062】
この第一の実施形態のある特定の実装では、空間的ガウス関数f"sについての標準偏差は今やσ"s=σ'sに設定され、ルミナンス・レンジ・ガウス関数f"rについての標準偏差は画像中のより多くのルミナンス詳細を除去するよう、すなわちσ"r>σ'rとなるよう設定される。たとえば、σ"r=0.3×max(Y)である。
【0063】
画像中のルミナンス値の高周波数の抽出の第三にして最後のサブステップでは、画像の各ピクセルについて、ピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)が、第一サブステップの結果Ybase(p)を第二サブステップの結果Y'base(p)で割った比として計算される。よって、Yenhance(p)=Ybase(p)/Y'base(p)である。σ"r>σ'rなので、この比は、画像中のルミナンス値の高空間周波数の抽出に対応する。本発明から外れることなく、画像中のルミナンス値の高空間周波数の抽出の他の方法が使用できる。
【0064】
ここで、すべての最終的なピクセル・ルミナンス向上値は、ルミナンス値の高周波数の上記抽出のため、画像のルミナンス値に適用されたときにその詳細を向上させるルミナンス向上マップをなす。
【0065】
この実施形態の第五段階では、逆トーンマッピング・モジュールを使って、画像の各ピクセルpのルミナンスY(p)は、このピクセルのルミナンスの、上記の第三段階からこのピクセルについて得られた最終的なピクセル拡張指数値E'(p)乗と、上記の第四段階からこのピクセルについて得られたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスYexp(p)に逆トーンマッピングされる。つまり、Yexp(p)=Y(p)E'(p)×[Yenhance(p)]cである。
【0066】
指数パラメータcは、ピクセル・ルミナンス向上値によってもたらされる詳細の向上の量を制御する。したがって、cの値が大きくなるほど画像エッジのコントラストは徐々に増大する。c=1.5の値が使われることが好ましい。
【0067】
上記のように画像のルミナンスを拡張するとき、ルミナンスおよびコントラストの変化が画像中の色の見え方および飽和度に影響することがある。そのルミナンス・レンジを拡張する間、画像の芸術的意図を保存するために、画像の色情報が、第六の任意的な段階において管理されてもよい。好ましくは、色の飽和度が、前記拡張指数値をガイドとして使って、向上される。より具体的には、各ピクセルの色の飽和度は、このピクセルの拡張指数に等しい因子によって向上される。ピクセルpの色の飽和度はたとえば、YUV空間の円筒バージョンにおいて次のように計算される、このピクセルのクロマ値C(p)を調整することによって向上される。
【0068】
C(p)=√(U(p)2+V(p)2
調整されたクロマ値C'(p)は、このピクセルpの拡張指数E'(p)とこのピクセルのクロマ値C(p)の積として、
C'(p)=E'(p)×C(p)
のように計算される。
【0069】
この実施形態の上記特定の実装では、C(p)をC'(p)に変換するクロマ・スケーリングは、ハイライトを過剰飽和させるのを避けるために、たとえば光の爆発および明るい光を避けるために、好ましくは1.5の因子に制限される。
【0070】
C'(p)のこれらの新たな値を用いて、クロミナンスU'(p)、V'(p)の新たな値が、ここではLCHのような円筒形の色空間からYUV空間への変換の通常の仕方を使って、計算される。
【0071】
U'(p)=cos[H(p)]×C'(p)
V'(p)=sin[H(p)]×C'(p)
ここで、H(p)はもとのU(p)およびV(p)から
H(p)=arctan[V(p),U(p)]
のように計算されたもとの色相である。
【0072】
第五段階または第六段階の終わりに、画像の各色のYUV座標は、YUV色空間における拡張された色を表わす新たなY'U'V'座標にマッピングされる。
【0073】
この第一の実施形態の最後の第七段階(図1には示さず)では、拡張された色の新たなY'U'V'座標は、それ自身としては既知の仕方で、RGB色空間において同じ拡張された色を表わす対応する新たなR'G'B'座標に変換し戻される。必要であれば、上記の第一段階で色が受領された色空間において拡張された色を表現するよう、これらのR'G'B'座標は線形化解除される。
【0074】
図1に示されるように、これらの拡張された色に基づく拡張された画像は今や、高ダイナミックレンジ内で再現されるために、ピーク・ルミナンスDmaxをもつ表示装置に送られる準備が整った。
【0075】
〈利点〉
本発明に基づく方法を通じて得られる拡張された画像は、同じシーンのHDR画像の見え方に可能な限り近い。得られた拡張されたコンテンツは、たとえ控えめな拡張が適用できるだけの場合でも、LDR入力画像に比べてより高い視覚的品質である。このルミナンス拡張方法は、明るい画像特徴を向上させ、光源およびハイライトの見え方を見る者に伝え、一方、中間レンジ値を保存する。これら拡張された画像を再生するために使われる表示装置のルミナンス・レンジに依存して、暗い値は保存されてもよく、あるいは画像中のグローバル・コントラストを向上させるためにさらに圧縮されてもよい。
【0076】
本発明に基づく方法は、色のルミナンスを拡張するために使われる拡張指数値を定義するために、空間領域における低域通過フィルタリング・プロセスを使う。この低域通過フィルタリング・プロセスは、画像のいくらかの詳細をならす。有利なことに、このような詳細の除去は、拡張されたルミナンスに適用されるルミナンス向上因子を得るために使われる高空間周波数の、空間領域における前記抽出によって補償される。換言すれば、ルミナンス値の低域通過フィルタリングの空間成分によって引き起こされる画像の詳細の平滑化を少なくとも部分的に補償するよう、ルミナンス値の高域通過フィルタリングの空間成分が実行される。
【0077】
上記のようにルミナンスに対して二側面低域通過フィルタを使って、ノイズまたは帯生成アーチファクトのような小さな局所的詳細をならす一方で画像の明るい領域を優遇する拡張マップが得られる。これにより、ノイズやテクスチャー情報を増幅することなく、明るい領域を拡張できる。
【0078】
実のところ、たいていの現行のHDR LCD表示装置の限界の一つは、これらの装置の空間的に変動するバックライトが、これらの装置の前面のLCDパネルに比べて相対的に低い解像度をもつということである。その結果、そのようなHDR表示装置は非常に高いグローバル・コントラストを達成できるが、局所的にはコントラストが悪くなる。これは特に、ハイライトのような画像の小さな高コントラスト・エリアにおいて、あるいは暗い領域と明るい領域の間の急な遷移において、目に見える。画像におけるコントラストを向上させるための多くの解決策が利用可能であるが、逆トーンマッピングのコンテキストでは、ノイズや他のアーチファクトまでも向上されないことを保証するよう特別な注意が必要とされる。画像の高空間周波数を抽出するための上記した二パスの二側面フィルタリング・プロセスは、ノイズおよびアーチファクトを向上させることなくコントラストを向上させるために特に好適である。
【0079】
ピクセル拡張指数値E(p)が上記のように再整形された値E'(p)に再整形されるとき、得られる拡張された画像は、画像を再生するために使われる表示装置の利用可能なダイナミックレンジを最もよく活用する。
【0080】
〈第一の実施形態の第一の変形〉
画像のシーケンス、すなわちビデオ・コンテンツの逆トーンマッピングについて、上記の方法の実施形態は、シーケンスのある画像から次の画像へと、逐次的に適用される。この方法がシーケンスの相続く各画像に独立に適用される場合、得られるHDRシーケンスの拡張された画像どうしの間の時間的なコヒーレンスを保証するのが難しいことがありうる。実のところ、シーンにおける明るいオブジェクトが動く場合、フリッカリング・アーチファクトが生じることがありうる。この問題を避けるため、拡張された映像の平均ルミナンスが一定のままであることを保証することによって、単純な時間的処理が適用されることが好ましい。上記の第一の実施形態において述べたように拡張されたルミナンス値Y'exp,iが得られた前記シーケンスの画像iについて、調整された拡張されたルミナンス値Y"exp,iが次のように計算され、拡張された画像についてY'exp,iの代わりに使われる:
【0081】
【数6】
一つのシーンにおける強い特徴が次のシーンに伝搬されないことを保証するために、すべてのカットの始まりにおいて平均はリセットされる。これは、既存のカット検出アルゴリズムを用いることによって達成できる。
【0082】
〈第一の実施形態の第二の変形〉
この第二の変形は、上記の実施形態の第二段階において得られた中間的なピクセル拡張指数値E(p)からの再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値E'(p)の計算に関する。ここでは、式
E'(p)=a[E(p)]2+b[E(p)]+c
のように、中間的なピクセル拡張指数値E(p)の二次関数に従ってピクセル拡張指数値を再整形することが提案される。
【0083】
この式において、E(p)は前の式におけるようにmax(E(p))によってスケーリングされないことを注意しておく。
【0084】
第一の例では、上記の式におけるパラメータa,b,cは定数として設定され、特定の表示装置について最適化されることができる。
【0085】
第二の例では、上記の式におけるパラメータa,b,cはDmaxに依存して計算されることができる。たとえばパラメータa,b,cの値を計算するために次式が使用される。
【0086】
【数7】
式(s-1)および(s-2)の定数に与えられる値の例を表1に示す。
【0087】
【表1】
第三の例では、パラメータa,b,cの値は、ピクセル拡張指数値E(p)自身の値に依存する。E(p)の暗い値についてとE(p)の明るい値についてとで異なるようにして、拡張後に得られる画像の陰およびハイライトをよりよく制御するためである。
【0088】
ここで、この変形に基づくすべての再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値は最終的な拡張指数マップE'(p)をなし、これが先のものを置き換える。
【実施例2】
【0089】
画像の逆トーンマッピングの方法の第二の実施形態が、ここで、上記のような、ただし本実施形態を実装するよう特に構成された画像処理装置を使って開示される。
【0090】
第一の実施形態と比べると、違いは:
・各ピクセルpについて、ピクセル拡張指数値E'(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルのルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得る第二段階と、
・前記画像の各ピクセルpについてのピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)を得るよう高空間周波数を抽出する第四段階
に関する点のみである。
【0091】
この第二の実施形態では、色は、ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間、たとえばYUV色空間においてこれらの色を表わす三つの色座標のセットとして受領される。ここでもまた、ルミナンスをクロミナンスから分離する他のいかなる色空間が代わりに使用されることもできる。したがって、画像の任意のピクセルpの色に、ルミナンス値Y(p)および二つのクロミナンス値U(p)、V(p)が関連付けられる。
【0092】
より具体的には、三つの色座標のこれらのセットは、ウェーブレット圧縮の型の圧縮されたフォーマットのもとで受領される。したがって、色のルミナンスY(p)は、ウェーブレット分解の増大していく諸レベルにエンコードされ、各レベルは少なくとも高周波数係数LHおよび低周波数係数LLをもつ。このことはたとえば図2に記載される。ここで、LL、LH、HLおよびHHサブバンド・パーティションは、図3に描かれるように、それぞれ近似された画像および水平エッジ、垂直エッジおよび斜めエッジをもつ画像を示す。
【0093】
ピクセル拡張指数マップおよびピクセル・ルミナンス向上マップを生成するために、この実施形態では、ウェーブレット分解の一つのレベルだけが使われる。
【0094】
本方法の第二段階を実装するために、いわゆるハール・リフティング(Haar lifting)・ウェーブレット実装が使われ、ピクセルpのピクセル拡張指数値E(p)はLLサブバンドから得られる。hΨ(n)={1/√2;1/√2}およびhφ(n)={1/√2;−1/√2}は畳み込みフィルタである。
【0095】
したがって、この実施形態の上記第二段階において、各ピクセルのピクセル拡張指数値は、このピクセルpの色のルミナンスをエンコードする最高レベルの低周波数係数A(p)=LLに等しいとし、次いでこのピクセルの前記空間的近傍において低域通過フィルタリングを実行して計算される。
【0096】
本方法の上記第四段階を実装するために、空間領域においてルミナンスの高周波数の前記抽出は、ピクセルpのルミナンスY(p)とこのピクセルの前記低周波数係数A(p)との間の差を計算することによって実行される。より精密には、4で割った解像度でのもとのルミナンスY(p)の低周波数バージョンA(p)であるLLサブバンドがアップサンプリングされ、次いでこのもとのルミナンスY(p)から減算されて、次のようにピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)が得られる:Yenhance(p)=((Y(p)−cA(p)↑2)+128)/255*2。
【0097】
このように、LLサブバンドから除去された高周波数のみが、ルミナンス向上マップYenhanceの基礎を生成するために保持される。
【0098】
他のすべての段階は、第一の実施形態において記載された段階と同様である。むろん、最後の第七段階はなくしてもよい。得られる拡張された色の新たなY'U'V'座標は、対応する新たなR'G'B'座標に変換される必要がないことがあるからである。
【0099】
本発明は具体例および好ましい実施形態に関して記述されているが、本発明がこれらの例および実施形態に限定されないことは理解される。したがって、当業者には明らかであろうが、特許請求される本発明は、本稿に記載される具体例および好ましい実施形態からの変形を含む。個別的な実施形態のいくつかが別個に記述され、特許請求されることがありうるが、本願で記載され、特許請求される実施形態のさまざまな特徴が組み合わせて使われてもよいことは理解される。請求項に現われる参照符号は単に例であって、請求項の範囲に対して限定する効果はもたないものとする。
いくつかの付記を記載しておく。
〔付記1〕
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングの方法であって:
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル拡張指数値E'(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)のルミナンスY(p)を、前記ピクセルのルミナンスY(p)の、このピクセルについて得られたピクセル拡張指数値E'(p)乗と、前記ピクセルについて得られたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスYexp(p)に逆トーンマッピングするステップとを含む、
画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記2〕
前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、得られる画像の平均拡張ルミナンスがもとの画像の平均ルミナンスにほぼ等しくなるようこれらの値が分布し直されるように再整形することにもよって得られる、付記1記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記3〕
所与のピーク・ルミナンスDmaxをもつ表示装置上で再現されるよう適応された付記1または2記載の画像の逆トーンマッピングの方法であって、前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記画像のピクセルにわたる最大ルミナンスmax(Y)の、この最大ルミナンスmax(Y)をもつピクセルについて得られたピクセル拡張指数値乗が、前記ピーク・ルミナンスDmaxに等しくなるよう、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を再スケーリングすることにもよって得られる、画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記4〕
前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、これらの値に適用される二次関数を通じて再整形することによって得られる、付記1または2記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記5〕
各ピクセルのピクセル拡張指数値を計算するために、前記低域通過フィルタリングは、前記ピクセルの前記空間的近傍において適用される第一のガウス関数および前記ピクセルの色のルミナンス値の近傍において適用される第二のガウス関数の積を計算することによって実行される、付記1ないし4のうちいずれか一項記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記6〕
ピクセル・ルミナンス向上値を計算するために、ルミナンス値の高周波数の前記抽出は、第二の低域通過フィルタリングを第三の低域通過フィルタリングで割った比を計算することによって実行され、前記第三の低域通過フィルタリングは、前記第二の低域通過フィルタリングより画像中のより多くの詳細を除去するよう構成される、付記5記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記7〕
前記色のルミナンスはウェーブレット分解の増大していく諸レベルにエンコードされており、各レベルは少なくとも高周波数係数(LH)および低周波数係数(LL)をもち、
各ピクセルのピクセル拡張指数値は、前記ピクセル(p)の色のルミナンスをエンコードする最高レベルの低周波数係数A(p)=LLに等しいとし、次いで前記ピクセルの前記空間的近傍において前記低域通過フィルタリングを実行して計算される、付記1ないし4のうちいずれか一項記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記8〕
ピクセルのピクセル・ルミナンス向上値の前記計算のために、前記ピクセルの前記近傍に位置されるピクセルのルミナンス値の高周波数の前記抽出は、前記ピクセルのルミナンスY(p)と前記ピクセルの前記低周波数係数A(p)との間の差を計算することによって実行される、付記7記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記9〕
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングのための画像処理装置であって:
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル拡張指数値を、このピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るよう構成された低域通過フィルタリング・モジュールと、
・前記低域通過フィルタリング・モジュールによって与えられる前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、再整形/再スケーリングするよう構成された再整形/再スケーリング・モジュールと、
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル・ルミナンス向上値を、このピクセルのルミナンス近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るよう構成された高周波抽出モジュールと、
・前記画像の各ピクセルのルミナンスを、前記ピクセルのルミナンスの、前記再整形/再スケーリング・モジュールによってこのピクセルについて与えられたピクセル拡張指数値乗と、前記高周波抽出モジュールによって前記ピクセルについて与えられたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスに逆トーンマッピングするよう構成された逆トーンマッピング・モジュールとを有する、
画像処理装置。
図1
図2
図3