【実施例1】
【0039】
画像の逆トーンマッピングの方法の第一の実施形態について、上記の画像処理装置を使って、ここで
図1を参照して述べる。
【0040】
たとえば画像受領器を使って、各ピクセルの色に関係したすべてのデータをもつ画像が受領される。ここで、この画像の各ピクセルに関連する色は三つの色座標、すなわち各色チャネルR、G、Bについて一つの色座標、にエンコードされている。
【0041】
この実施形態の第一の準備段階(
図1には示さず)では、これらの色の受領されたRGB色座標が、必要であれば、それ自身としては既知の仕方で、規格化され、任意的には線形化され、それにより、受領された画像の色は表示装置のRGB色空間で表現される。このRGB色空間は標準化されることができ、対応する表示装置は仮想的な表示装置である。次いで、これらの色は、ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間、たとえばYUV色空間に変換される。RGB色空間からYUV色空間へのこの変換はそれ自身としては既知であり、よって詳細には述べない。ルミナンスをクロミナンスから分離する他の任意の色空間、たとえばXYZ、Yxy、CIE Labが代わりに使用されることができる。したがって、受領された画像の任意のピクセルpの色にルミナンス値Y(p)および二つのクロミナンス値U(p)、V(p)が関連付けられる。これから述べる逆トーンマッピングの方法の実施形態のねらいは、これらのルミナンス値Y(p)のそれぞれに指数値E'(p)を適用することによって、これらのルミナンス値を拡張されたルミナンス値に拡張することである。
【0042】
この実施形態の第二段階では、低域通過フィルタリング・モジュールを使って、ルミナンス値Y(p)をもつ画像の各ピクセルpについて、中間的なピクセル拡張指数値E(p)が得られる。これは、ピクセルpの空間的近傍内および任意的にはルミナンス値Y(p)の近傍内でもある諸ピクセルのルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによる。この低域通過フィルタリング段階は好ましくはガウス関数を使う。E(p)はたとえば次式を通じて得られる。
【0043】
【数2】
ここで、f
sは画像の空間領域で適用される第一のガウス関数であり、f
rはルミナンス・レンジ領域で適用される第二のガウス関数であり、
Ωはピクセルpを中心とする前記画像の窓のサイズであり、
p
iはこの窓内のピクセルである。窓サイズはたとえば5または7であることができる。窓サイズの同様の値が計算効率のためには好ましい。
【0044】
本発明に基づく方法のこの第一の実施形態では、低域通過フィルタリングは二側面フィルタ〔バイラテラル・フィルタ〕である。「二側面」〔バイラテラル〕という語は、ここではフィルタリングが空間領域およびルミナンス・レンジ領域の両方で実行されるという事実をいう。
【0045】
好ましくは第一のガウス関数f
sの標準偏差σ
sの値は2以上である。
【0046】
第二のガウス関数f
rの標準偏差σ
rの値は好ましくは、もとの画像におけるテクスチャーおよびノイズをならすのに十分大きいが、この画像のオブジェクト間のエッジを横断するのを避けるには十分小さいべきである。標準偏差σ
rの値は好ましくは0.1max(Y)から0.5max(Y)までの間で選ばれる。ここで、max(Y)は、もとの画像の全ピクセルにわたる最大ルミナンス値である。
【0047】
この第一の実施形態の特定の実装では、第一のガウス関数f
sについての標準偏差はσ
s=3に設定され、ルミナンス・レンジ・ガウス関数f
rについての標準偏差はσ
r=0.3×max(Y)に設定された。
【0048】
ここで、この低域通過フィルタリングを通じて得られるすべての中間的なピクセル拡張指数値は、中間的な拡張指数マップE(p)をなす。
【0049】
再整形/再スケーリング・モジュールを使って、この実施形態の第三段階では、中間的な拡張指数マップは、当該画像にわたるピクセル拡張指数値の分布に依存するシグモイド関数を使って最終的な拡張指数マップに再整形される、および/または拡張された画像を再現するために使われる表示装置のピーク・ルミナンスに基づいて再スケーリングされる。
【0050】
上記で計算されたピクセル拡張指数値は相対スケールでピクセル毎の拡張を示すが、これらの拡張値は、一組の制約条件に従うよう再スケーリングされる必要がある。逆トーンマッピング方法によって与えられるHDR画像を再現するために使用できるHDR表示装置の増大した能力にもかかわらず、この方法によって得られる拡張されたHDR画像における平均ルミナンスは好ましくは、もとのLDR画像のものと匹敵するレベルに維持されるべきである。同時に、ルミナンスの拡張は、ハイライトを適切に拡張するために、拡張されたHDR画像を再現するために使用される表示装置のピーク・ルミナンスDmaxを考慮に入れるべきである。したがって、この第三段階を通じて、再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値E'(p)が次式を通じて得られる。
【0051】
【数3】
ここで、パラメータαはルミナンス拡張の全体的な挙動を制御するために使用されることができ、
E(p)は上記の第二段階で計算された中間的なピクセル拡張指数値であり、
max(E)は画像の全ピクセルにわたるE(p)の最大値であり、
項log(D
max)/log(max(Y))はY(p)=max(Y)であるときにY(p)
E'(p)=Dmaxとなることを許容する。
【0052】
パラメータαの目的は、ルミナンス拡張がどのくらい「平坦」であるかを制御することである。これは、空間的に変動する拡張と一定の指数との間のバランスを取る重みである。αについての値が大きいほどルミナンス拡張は局所的になり、よってより極端な結果につながる。一方、αについての値が小さいほど、よりグローバルに近い拡張につながる。値α=0.1が実際に、ハイライト拡張と中間トーンの効果的な管理との間の良好なトレードオフをもたらした。
【0053】
この第一の実施形態のある特定の実装では、パラメータαは値α=0.1に設定された。この値はハイライト拡張と中間トーンの効果的な管理との間の良好なトレードオフをもたらすからである。
【0054】
ここで、すべての再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値は最終的な拡張指数マップE'(p)をなす。
【0055】
この実施形態の第四段階では、高周波抽出モジュールを使って、ルミナンス値Y(p)をもつ前記画像の各ピクセルpについてのピクセル・ルミナンス向上値Y
enhance(p)を得るために、もとの画像におけるルミナンス値の高空間周波数が抽出される。この段階はたとえば、以下のような三つのサブステップを通じて実行される。
【0056】
フィルタリングの第一サブステップでは、画像のルミナンスにおける大きな変動を含むがノイズまたは他の小さな特徴は除外する基本層Y
baseが、第一はピクセルpの空間的近傍におけるもの、第二はルミナンス値Y(p)の近傍におけるものである上記と同じガウス関数f'
s、f'
rを使って、次のように計算される:
【0057】
【数4】
ここで、Ω'は、好ましくは上記と同じサイズをもつピクセルpを中心とする前記画像の窓のサイズであり、
p
iはこの窓内のピクセルである。
【0058】
この第一の実施形態のこの特定の実装では、空間的ガウス関数f'
sについての標準偏差は今やσ'
s=10に設定され、ルミナンス・レンジ・ガウス関数f'
rについての標準偏差はσ'
r=0.1×max(Y)に設定される。
【0059】
フィルタリングの第二サブステップでは、第一サブステップによって得られた基本層Y
baseがやはりガウス関数を使って、だが画像中のより多くのルミナンス詳細を除去するためにルミナンス・レンジにおけるより大きな標準偏差を用いて、二度目にフィルタリングされ、次のようにY'
baseを得る:
【0060】
【数5】
ここで、f"
s、f"
rは、第一はピクセルpの空間的近傍における、第二はルミナンス値Y(p)の近傍における上記と同じガウス関数であり、
ここで、Ω"は、好ましくは上記と同じサイズをもつピクセルpを中心とする前記画像の窓のサイズであり、
p
iはこの窓内のピクセルである。
【0061】
任意的に、Y'
base(p)は、最終的なHDR画像におけるノイズを最小にするために、上記で定義したE(p)に等しく設定されることができる。
【0062】
この第一の実施形態のある特定の実装では、空間的ガウス関数f"
sについての標準偏差は今やσ"
s=σ'
sに設定され、ルミナンス・レンジ・ガウス関数f"
rについての標準偏差は画像中のより多くのルミナンス詳細を除去するよう、すなわちσ"
r>σ'
rとなるよう設定される。たとえば、σ"
r=0.3×max(Y)である。
【0063】
画像中のルミナンス値の高周波数の抽出の第三にして最後のサブステップでは、画像の各ピクセルについて、ピクセル・ルミナンス向上値Y
enhance(p)が、第一サブステップの結果Y
base(p)を第二サブステップの結果Y'
base(p)で割った比として計算される。よって、Y
enhance(p)=Y
base(p)/Y'
base(p)である。σ"
r>σ'
rなので、この比は、画像中のルミナンス値の高空間周波数の抽出に対応する。本発明から外れることなく、画像中のルミナンス値の高空間周波数の抽出の他の方法が使用できる。
【0064】
ここで、すべての最終的なピクセル・ルミナンス向上値は、ルミナンス値の高周波数の上記抽出のため、画像のルミナンス値に適用されたときにその詳細を向上させるルミナンス向上マップをなす。
【0065】
この実施形態の第五段階では、逆トーンマッピング・モジュールを使って、画像の各ピクセルpのルミナンスY(p)は、このピクセルのルミナンスの、上記の第三段階からこのピクセルについて得られた最終的なピクセル拡張指数値E'(p)乗と、上記の第四段階からこのピクセルについて得られたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスY
exp(p)に逆トーンマッピングされる。つまり、Y
exp(p)=Y(p)
E'(p)×[Y
enhance(p)]
cである。
【0066】
指数パラメータcは、ピクセル・ルミナンス向上値によってもたらされる詳細の向上の量を制御する。したがって、cの値が大きくなるほど画像エッジのコントラストは徐々に増大する。c=1.5の値が使われることが好ましい。
【0067】
上記のように画像のルミナンスを拡張するとき、ルミナンスおよびコントラストの変化が画像中の色の見え方および飽和度に影響することがある。そのルミナンス・レンジを拡張する間、画像の芸術的意図を保存するために、画像の色情報が、第六の任意的な段階において管理されてもよい。好ましくは、色の飽和度が、前記拡張指数値をガイドとして使って、向上される。より具体的には、各ピクセルの色の飽和度は、このピクセルの拡張指数に等しい因子によって向上される。ピクセルpの色の飽和度はたとえば、YUV空間の円筒バージョンにおいて次のように計算される、このピクセルのクロマ値C(p)を調整することによって向上される。
【0068】
C(p)=√(U(p)
2+V(p)
2)
調整されたクロマ値C'(p)は、このピクセルpの拡張指数E'(p)とこのピクセルのクロマ値C(p)の積として、
C'(p)=E'(p)×C(p)
のように計算される。
【0069】
この実施形態の上記特定の実装では、C(p)をC'(p)に変換するクロマ・スケーリングは、ハイライトを過剰飽和させるのを避けるために、たとえば光の爆発および明るい光を避けるために、好ましくは1.5の因子に制限される。
【0070】
C'(p)のこれらの新たな値を用いて、クロミナンスU'(p)、V'(p)の新たな値が、ここではLCHのような円筒形の色空間からYUV空間への変換の通常の仕方を使って、計算される。
【0071】
U'(p)=cos[H(p)]×C'(p)
V'(p)=sin[H(p)]×C'(p)
ここで、H(p)はもとのU(p)およびV(p)から
H(p)=arctan[V(p),U(p)]
のように計算されたもとの色相である。
【0072】
第五段階または第六段階の終わりに、画像の各色のYUV座標は、YUV色空間における拡張された色を表わす新たなY'U'V'座標にマッピングされる。
【0073】
この第一の実施形態の最後の第七段階(
図1には示さず)では、拡張された色の新たなY'U'V'座標は、それ自身としては既知の仕方で、RGB色空間において同じ拡張された色を表わす対応する新たなR'G'B'座標に変換し戻される。必要であれば、上記の第一段階で色が受領された色空間において拡張された色を表現するよう、これらのR'G'B'座標は線形化解除される。
【0074】
図1に示されるように、これらの拡張された色に基づく拡張された画像は今や、高ダイナミックレンジ内で再現されるために、ピーク・ルミナンスDmaxをもつ表示装置に送られる準備が整った。
【0075】
〈利点〉
本発明に基づく方法を通じて得られる拡張された画像は、同じシーンのHDR画像の見え方に可能な限り近い。得られた拡張されたコンテンツは、たとえ控えめな拡張が適用できるだけの場合でも、LDR入力画像に比べてより高い視覚的品質である。このルミナンス拡張方法は、明るい画像特徴を向上させ、光源およびハイライトの見え方を見る者に伝え、一方、中間レンジ値を保存する。これら拡張された画像を再生するために使われる表示装置のルミナンス・レンジに依存して、暗い値は保存されてもよく、あるいは画像中のグローバル・コントラストを向上させるためにさらに圧縮されてもよい。
【0076】
本発明に基づく方法は、色のルミナンスを拡張するために使われる拡張指数値を定義するために、空間領域における低域通過フィルタリング・プロセスを使う。この低域通過フィルタリング・プロセスは、画像のいくらかの詳細をならす。有利なことに、このような詳細の除去は、拡張されたルミナンスに適用されるルミナンス向上因子を得るために使われる高空間周波数の、空間領域における前記抽出によって補償される。換言すれば、ルミナンス値の低域通過フィルタリングの空間成分によって引き起こされる画像の詳細の平滑化を少なくとも部分的に補償するよう、ルミナンス値の高域通過フィルタリングの空間成分が実行される。
【0077】
上記のようにルミナンスに対して二側面低域通過フィルタを使って、ノイズまたは帯生成アーチファクトのような小さな局所的詳細をならす一方で画像の明るい領域を優遇する拡張マップが得られる。これにより、ノイズやテクスチャー情報を増幅することなく、明るい領域を拡張できる。
【0078】
実のところ、たいていの現行のHDR LCD表示装置の限界の一つは、これらの装置の空間的に変動するバックライトが、これらの装置の前面のLCDパネルに比べて相対的に低い解像度をもつということである。その結果、そのようなHDR表示装置は非常に高いグローバル・コントラストを達成できるが、局所的にはコントラストが悪くなる。これは特に、ハイライトのような画像の小さな高コントラスト・エリアにおいて、あるいは暗い領域と明るい領域の間の急な遷移において、目に見える。画像におけるコントラストを向上させるための多くの解決策が利用可能であるが、逆トーンマッピングのコンテキストでは、ノイズや他のアーチファクトまでも向上されないことを保証するよう特別な注意が必要とされる。画像の高空間周波数を抽出するための上記した二パスの二側面フィルタリング・プロセスは、ノイズおよびアーチファクトを向上させることなくコントラストを向上させるために特に好適である。
【0079】
ピクセル拡張指数値E(p)が上記のように再整形された値E'(p)に再整形されるとき、得られる拡張された画像は、画像を再生するために使われる表示装置の利用可能なダイナミックレンジを最もよく活用する。
【0080】
〈第一の実施形態の第一の変形〉
画像のシーケンス、すなわちビデオ・コンテンツの逆トーンマッピングについて、上記の方法の実施形態は、シーケンスのある画像から次の画像へと、逐次的に適用される。この方法がシーケンスの相続く各画像に独立に適用される場合、得られるHDRシーケンスの拡張された画像どうしの間の時間的なコヒーレンスを保証するのが難しいことがありうる。実のところ、シーンにおける明るいオブジェクトが動く場合、フリッカリング・アーチファクトが生じることがありうる。この問題を避けるため、拡張された映像の平均ルミナンスが一定のままであることを保証することによって、単純な時間的処理が適用されることが好ましい。上記の第一の実施形態において述べたように拡張されたルミナンス値Y'
exp,iが得られた前記シーケンスの画像iについて、調整された拡張されたルミナンス値Y"
exp,iが次のように計算され、拡張された画像についてY'
exp,iの代わりに使われる:
【0081】
【数6】
一つのシーンにおける強い特徴が次のシーンに伝搬されないことを保証するために、すべてのカットの始まりにおいて平均はリセットされる。これは、既存のカット検出アルゴリズムを用いることによって達成できる。
【0082】
〈第一の実施形態の第二の変形〉
この第二の変形は、上記の実施形態の第二段階において得られた中間的なピクセル拡張指数値E(p)からの再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値E'(p)の計算に関する。ここでは、式
E'(p)=a[E(p)]
2+b[E(p)]+c
のように、中間的なピクセル拡張指数値E(p)の二次関数に従ってピクセル拡張指数値を再整形することが提案される。
【0083】
この式において、E(p)は前の式におけるようにmax(E(p))によってスケーリングされないことを注意しておく。
【0084】
第一の例では、上記の式におけるパラメータa,b,cは定数として設定され、特定の表示装置について最適化されることができる。
【0085】
第二の例では、上記の式におけるパラメータa,b,cはD
maxに依存して計算されることができる。たとえばパラメータa,b,cの値を計算するために次式が使用される。
【0086】
【数7】
式(s-1)および(s-2)の定数に与えられる値の例を表1に示す。
【0087】
【表1】
第三の例では、パラメータa,b,cの値は、ピクセル拡張指数値E(p)自身の値に依存する。E(p)の暗い値についてとE(p)の明るい値についてとで異なるようにして、拡張後に得られる画像の陰およびハイライトをよりよく制御するためである。
【0088】
ここで、この変形に基づくすべての再整形/再スケーリングされたピクセル拡張指数値は最終的な拡張指数マップE'(p)をなし、これが先のものを置き換える。
【実施例2】
【0089】
画像の逆トーンマッピングの方法の第二の実施形態が、ここで、上記のような、ただし本実施形態を実装するよう特に構成された画像処理装置を使って開示される。
【0090】
第一の実施形態と比べると、違いは:
・各ピクセルpについて、ピクセル拡張指数値E'(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルのルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得る第二段階と、
・前記画像の各ピクセルpについてのピクセル・ルミナンス向上値Y
enhance(p)を得るよう高空間周波数を抽出する第四段階
に関する点のみである。
【0091】
この第二の実施形態では、色は、ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間、たとえばYUV色空間においてこれらの色を表わす三つの色座標のセットとして受領される。ここでもまた、ルミナンスをクロミナンスから分離する他のいかなる色空間が代わりに使用されることもできる。したがって、画像の任意のピクセルpの色に、ルミナンス値Y(p)および二つのクロミナンス値U(p)、V(p)が関連付けられる。
【0092】
より具体的には、三つの色座標のこれらのセットは、ウェーブレット圧縮の型の圧縮されたフォーマットのもとで受領される。したがって、色のルミナンスY(p)は、ウェーブレット分解の増大していく諸レベルにエンコードされ、各レベルは少なくとも高周波数係数LHおよび低周波数係数LLをもつ。このことはたとえば
図2に記載される。ここで、LL、LH、HLおよびHHサブバンド・パーティションは、
図3に描かれるように、それぞれ近似された画像および水平エッジ、垂直エッジおよび斜めエッジをもつ画像を示す。
【0093】
ピクセル拡張指数マップおよびピクセル・ルミナンス向上マップを生成するために、この実施形態では、ウェーブレット分解の一つのレベルだけが使われる。
【0094】
本方法の第二段階を実装するために、いわゆるハール・リフティング(Haar lifting)・ウェーブレット実装が使われ、ピクセルpのピクセル拡張指数値E(p)はLLサブバンドから得られる。h
Ψ(n)={1/√2;1/√2}およびh
φ(n)={1/√2;−1/√2}は畳み込みフィルタである。
【0095】
したがって、この実施形態の上記第二段階において、各ピクセルのピクセル拡張指数値は、このピクセルpの色のルミナンスをエンコードする最高レベルの低周波数係数A(p)=LLに等しいとし、次いでこのピクセルの前記空間的近傍において低域通過フィルタリングを実行して計算される。
【0096】
本方法の上記第四段階を実装するために、空間領域においてルミナンスの高周波数の前記抽出は、ピクセルpのルミナンスY(p)とこのピクセルの前記低周波数係数A(p)との間の差を計算することによって実行される。より精密には、4で割った解像度でのもとのルミナンスY(p)の低周波数バージョンA(p)であるLLサブバンドがアップサンプリングされ、次いでこのもとのルミナンスY(p)から減算されて、次のようにピクセル・ルミナンス向上値Y
enhance(p)が得られる:Y
enhance(p)=((Y(p)−cA(p)↑2)+128)/255*2。
【0097】
このように、LLサブバンドから除去された高周波数のみが、ルミナンス向上マップY
enhanceの基礎を生成するために保持される。
【0098】
他のすべての段階は、第一の実施形態において記載された段階と同様である。むろん、最後の第七段階はなくしてもよい。得られる拡張された色の新たなY'U'V'座標は、対応する新たなR'G'B'座標に変換される必要がないことがあるからである。
【0099】
本発明は具体例および好ましい実施形態に関して記述されているが、本発明がこれらの例および実施形態に限定されないことは理解される。したがって、当業者には明らかであろうが、特許請求される本発明は、本稿に記載される具体例および好ましい実施形態からの変形を含む。個別的な実施形態のいくつかが別個に記述され、特許請求されることがありうるが、本願で記載され、特許請求される実施形態のさまざまな特徴が組み合わせて使われてもよいことは理解される。請求項に現われる参照符号は単に例であって、請求項の範囲に対して限定する効果はもたないものとする。
いくつかの付記を記載しておく。
〔付記1〕
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングの方法であって:
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル拡張指数値E'(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)についてのピクセル・ルミナンス向上値Yenhance(p)を、前記ピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るステップと、
・前記画像の各ピクセル(p)のルミナンスY(p)を、前記ピクセルのルミナンスY(p)の、このピクセルについて得られたピクセル拡張指数値E'(p)乗と、前記ピクセルについて得られたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスYexp(p)に逆トーンマッピングするステップとを含む、
画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記2〕
前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、得られる画像の平均拡張ルミナンスがもとの画像の平均ルミナンスにほぼ等しくなるようこれらの値が分布し直されるように再整形することにもよって得られる、付記1記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記3〕
所与のピーク・ルミナンスDmaxをもつ表示装置上で再現されるよう適応された付記1または2記載の画像の逆トーンマッピングの方法であって、前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記画像のピクセルにわたる最大ルミナンスmax(Y)の、この最大ルミナンスmax(Y)をもつピクセルについて得られたピクセル拡張指数値乗が、前記ピーク・ルミナンスDmaxに等しくなるよう、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を再スケーリングすることにもよって得られる、画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記4〕
前記ピクセル拡張指数値E'(p)は、前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、これらの値に適用される二次関数を通じて再整形することによって得られる、付記1または2記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記5〕
各ピクセルのピクセル拡張指数値を計算するために、前記低域通過フィルタリングは、前記ピクセルの前記空間的近傍において適用される第一のガウス関数および前記ピクセルの色のルミナンス値の近傍において適用される第二のガウス関数の積を計算することによって実行される、付記1ないし4のうちいずれか一項記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記6〕
ピクセル・ルミナンス向上値を計算するために、ルミナンス値の高周波数の前記抽出は、第二の低域通過フィルタリングを第三の低域通過フィルタリングで割った比を計算することによって実行され、前記第三の低域通過フィルタリングは、前記第二の低域通過フィルタリングより画像中のより多くの詳細を除去するよう構成される、付記5記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記7〕
前記色のルミナンスはウェーブレット分解の増大していく諸レベルにエンコードされており、各レベルは少なくとも高周波数係数(LH)および低周波数係数(LL)をもち、
各ピクセルのピクセル拡張指数値は、前記ピクセル(p)の色のルミナンスをエンコードする最高レベルの低周波数係数A(p)=LLに等しいとし、次いで前記ピクセルの前記空間的近傍において前記低域通過フィルタリングを実行して計算される、付記1ないし4のうちいずれか一項記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記8〕
ピクセルのピクセル・ルミナンス向上値の前記計算のために、前記ピクセルの前記近傍に位置されるピクセルのルミナンス値の高周波数の前記抽出は、前記ピクセルのルミナンスY(p)と前記ピクセルの前記低周波数係数A(p)との間の差を計算することによって実行される、付記7記載の画像の逆トーンマッピングの方法。
〔付記9〕
ルミナンスをクロミナンスから分離する色空間で色が表現されている画像の逆トーンマッピングのための画像処理装置であって:
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル拡張指数値を、このピクセルの空間的近傍におけるピクセルの色のルミナンス値を低域通過フィルタリングすることによって得るよう構成された低域通過フィルタリング・モジュールと、
・前記低域通過フィルタリング・モジュールによって与えられる前記低域通過フィルタリングされたルミナンス値を、再整形/再スケーリングするよう構成された再整形/再スケーリング・モジュールと、
・前記画像の各ピクセルについてのピクセル・ルミナンス向上値を、このピクセルのルミナンス近傍におけるピクセルの色のルミナンス値の高周波数の抽出によって得るよう構成された高周波抽出モジュールと、
・前記画像の各ピクセルのルミナンスを、前記ピクセルのルミナンスの、前記再整形/再スケーリング・モジュールによってこのピクセルについて与えられたピクセル拡張指数値乗と、前記高周波抽出モジュールによって前記ピクセルについて与えられたピクセル・ルミナンス向上値の、1以上である指数パラメータc乗との積を通じて得られる拡張されたルミナンスに逆トーンマッピングするよう構成された逆トーンマッピング・モジュールとを有する、
画像処理装置。