(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、吸入または揮発麻酔薬を患者に送達するための吸入デバイスとともに使用するための麻酔薬カートリッジであって、調節可能なスターラーまたは撹拌器;麻酔薬制御放出媒体および少なくとも1種の選択された吸入麻酔薬を備え、またはそれらからなり、前記麻酔薬に対する前記媒体の量は、前記調節可能なスターラーまたは撹拌器を使用した場合、選択された最小肺胞内濃度(MAC)で、0.125〜4.0×最小肺胞内濃度(MAC)の範囲内の実質的に一定または制御可能な速度で麻酔薬が送達され、それによりi)麻酔の誘導および/もしくは維持、またはii)沈静が可能となるような量である、麻酔薬カートリッジが提供される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、前記スターラーまたは撹拌器の調節により、使用者は、全ての0.05MAC間隔を含むがこれらに限定されない前記範囲内の任意のMAC値を選択することができる。典型的には、撹拌またはかき混ぜを増加させると、放出される麻酔薬の量、ひいては効果的なMAC値が増加し、一方撹拌またはかき混ぜを減少させると、放出される麻酔薬の量が減少し、ひいては効果的なMAC値が減少する。好ましくは、前記MAC値は、0.125、0.25、0.35、0.5、0.65、0.7、1.0、1.33、1.5、1.70、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5および4.0×最小肺胞内濃度(MAC)を含む群から選択される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、吸入または揮発麻酔薬を患者に送達するための吸入デバイスとともに使用するための麻酔薬カートリッジであって、スターラーまたは撹拌器;麻酔薬制御放出媒体および少なくとも1種の選択された吸入麻酔薬を備え、またはそれらからなり、さらに、前記麻酔薬に対する前記媒体の量は、吸入デバイス内の前記カートリッジを使用した場合、ひいてはスターラーまたは撹拌器を選択された速度で使用した場合、0.125〜4.0×最小肺胞内濃度(MAC)の範囲内の実質的に一定または制御可能な速度で麻酔薬が送達され、それによりi)麻酔の誘導またはii)麻酔の維持またはiii)沈静が可能となるような量である、麻酔薬カートリッジが提供される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、前記麻酔薬に対する前記媒体の量は、吸入デバイス内の前記カートリッジを使用した場合、全ての0.05MAC間隔を含むがこれらに限定されない前記範囲内の実質的に一定または制御可能な速度で麻酔薬が送達されるような量である。好ましくは、前記MAC値は、0.125、0.25、0.35、0.5、0.65、0.7、1.0、1.33、1.5、1.70、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5および4.0×最小肺胞内濃度(MAC)を含む群から選択される。
【0010】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記スターラーまたは撹拌器は、調節可能であり、それにより生成されるせん断力が調節可能である。
【0011】
本明細書において言及される最小肺胞内濃度(MAC)は、対象の50%において標準的な外科的刺激(従来的には外科用ナイフによる皮膚切開)に対する反応を防止する蒸気の濃度(1気圧におけるパーセンテージ、すなわち分圧として測定される)である。この測定は、定常状態(15分間の一定肺胞内濃度を仮定)で行われるが、これによって肺胞、血液および脳内のガスの間の平衡が可能となると仮定される。MACは、変化する条件下であっても所与の種に対して極めて一定に保たれるため、吸入全身麻酔薬の効能の有効な尺度として認められている。本明細書において言及されるMAC値は、40歳の年齢の平均成人男性に対するものである。
【0012】
MAC値は、異なる揮発性薬剤に対して様々である。セボフルランのMAC値1は、(放出レベル)2体積%であり、イソフルランのMAC値1は、1.2体積%であり、ハロタンのMAC値1は、0.76体積%であり、エンフルランのMAC値1は、1.6体積%であり、デスフルランのMAC値1は、6体積%である。
【0013】
したがって、MAC値1を有する本発明の麻酔薬カートリッジにおいて、前記麻酔薬制御放出媒体の量は、前記麻酔薬が、セボフルランの場合2体積%、イソフルランの場合1.2体積%、ハロタンの場合0.76体積%、エンフルランの場合1.6体積%、およびデスフルランの場合6体積%で放出されるような量である。
【0014】
セボフルランの場合、これは、例えばセボフルラン15ml、および7重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体105mlを使用した製剤120ml当たり、1L/分の流速を有するシステムにおいて達成され得る。イソフルランの場合、これは、例えばイソフルラン12ml、および12重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体98mlを使用した製剤110ml当たり、または、例えばイソフルラン9ml、および11重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体91mlを使用した製剤100ml当たり、1L/分の流速を有するシステムにおいて達成され得る。
【0015】
本発明は、上述のような120ml、110mlもしくは100mlの製剤体積、またはその対応するミリリットル倍数および/もしくは分数を使用して、あるいは、実際には、その対応するミリリットル倍数および/または分数を含む本明細書に記載の製剤体積のいずれを使用しても実施され得ることが、当業者に理解される。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記麻酔薬カートリッジは、1.0×最小肺胞内濃度(MAC)の実質的に一定または制御可能な速度で麻酔薬を送達し、ひいてはMAC値1を有し、前記MAC値1を有する本明細書に記載の製剤のいずれか、またはMAC値1を有するように撹拌された、かき混ぜられた、もしくはせん断された他の製剤のいずれかを含む、またはそれからなる。
【0017】
本発明の代替の実施形態において、前記麻酔薬カートリッジは、0.125、0.25、0.35、0.5、0.65、0.7、1.0、1.33、1.5、1.70、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5および4.0×最小肺胞内濃度(MAC)の実質的に一定な速度で送達し、ひいてはそれぞれMAC値0.125、0.25、0.35、0.5、0.65、0.7、1.0、1.33、1.5、1.70、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5および4.0を有し、前記の対応するMAC値を有する本明細書に記載の製剤のいずれか、または前記の対応するMAC値を有するように撹拌された、かき混ぜられた、もしくはせん断された他の製剤のいずれかを含む、またはそれからなる。
【0018】
MAC値2を有する本発明の麻酔薬カートリッジにおいて、前記麻酔薬制御放出媒体の量は、前記麻酔薬が、セボフルランの場合4体積%、イソフルランの場合2.4体積%、ハロタンの場合1.52体積%、エンフルランの場合3.2体積%、およびデスフルランの場合12体積%で放出されるような量である。
【0019】
例えば、セボフルランの場合、これは、例えばセボフルラン50ml、および18重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体110mlを使用した製剤160ml当たり、1L/分の流速を有するシステムにおいて達成され得る。例えば、イソフルランの場合、これは、例えばイソフルラン15ml、および22重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体85mlを使用した製剤100ml当たり、1L/分の流速を有するシステムにおいて達成され得る。
【0020】
最大4MAC(これを含む)のMAC値を得ることができる。例えば、
図47に示されるように、セボフルランの場合の1L/分の流速を有するシステムにおいて、例えばセボフルラン50ml、および15重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体110mlを使用した製剤160ml当たり、3MACおよび4MACが達成され得る。さらに、例えば、
図48に示されるように、イソフルランの場合の1L/分の流速を有するシステムにおいて、例えばイソフルラン20ml、および16重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体100mlを使用した製剤120ml当たり、4MACが達成され得る。
【0021】
代替として、表8および
図49aに示されるように、4L/分の流速を有するシステムにおいて、セボフルラン70ml、および25重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体90mlからなる製剤を使用して、セボフルランに対して2MACが達成され得、または、表9および
図49bに示されるように、これは、4L/分の流速を有するシステムにおいて、イソフルラン30ml、および23重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体100mlからなる製剤を使用して、イソフルランに対しても達成され得る。
【0022】
沈静目的においては、より低いMAC値で十分である。例えば、表5に示されるように、セボフルランに対する1L/分の流速を有するシステムにおいて、例えばセボフルラン5.5ml、および8重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体84.5mlを使用した製剤90ml当たり、0.25MACでの持続放出が達成され得る。例えば、表5に示されるように、これは、イソフルランの場合の1L/分の流速を有するシステムにおいて、例えばイソフルラン2.5ml、および13重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体77.5mlを使用した製剤80ml当たり達成され得る。
【0023】
例えば、表5に示されるように、セボフルランに対する1L/分の流速を有するシステムにおいて、例えばセボフルラン7.5ml、および4重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体112.5mlを使用した製剤120ml当たり、0.5MACでの持続放出が達成され得る。例えば、表5に示されるように、これは、イソフルランの場合の1L/分の流速を有するシステムにおいて、例えばイソフルラン4.5ml、および8重量%の界面活性剤、好ましくはZonyl FSN−100を含有する前記麻酔薬制御放出媒体95.5mlを使用した製剤100ml当たり達成され得る。
【0024】
本発明は、上述のような製剤体積、またはその対応するミリリットル倍数および/もしくは分数を使用して、あるいは、実際には、その対応するミリリットル倍数および/または分数を含む本明細書に記載の製剤体積のいずれを使用しても実施され得ることが、当業者に理解される。
【0025】
本明細書において、実質的に一定または制御可能な速度への言及は、それぞれ、所与のMAC値もしくは体積%での、0.2%以内までのドリフトでの揮発麻酔薬の放出、または同じく0.2%以内のドリフトでの代替のMAC値もしくは体積%への揮発麻酔薬の放出の調節を言及するものである。
【0026】
所与のMAC値を提供するカートリッジの選択は、患者の生理学的状態、患者の年齢、および他の薬物または医薬の併用投与によって変化し得る。低濃度の麻酔薬、または低MAC値では、麻酔を維持するために患者に送達される麻酔薬が不十分であるという危険性がある。高濃度では、揮発性麻酔薬剤は、呼吸器系および心臓血管系に対する抑制効果を有する。したがって、麻酔中は、適正な用量が投与されているかを判断するために生理学的パラメータが注意深く監視される。典型的には、麻酔を維持するために、成人には1×MACが与えられることが多く、一方小児には、成人相当で最大2×MACが与えられてもよい。しかしながら、沈静のためには、1未満のMAC値を有するカートリッジが使用されてもよい。したがって、使用中、カートリッジは、患者に対する最も適切なMAC値および問題となる用途を考慮して選択される。しかしながら、ある程度の投与の柔軟性を確保するために、カートリッジは、本発明の第1の態様において、調節可能なスターラーまたは撹拌器を備え、本発明の第2の態様において、理想的には、さらに麻酔薬制御放出媒体および麻酔薬の撹拌またはかき混ぜの量が変化され得る調節可能なスターラーまたは撹拌器を備え、したがって、麻酔薬の放出レベルが影響され、ひいては、一時的に、または調節された撹拌またはかき混ぜのレベルに相当する期間、前記MAC値が上昇または低下され得る。
【0027】
本明細書において開示される例において、本発明のカートリッジは、従来の6cm×1cm棒磁石スターラーである調節可能なスターラーを含む。
【0028】
例えば、セボフルランを使用する場合、セボフルラン15ml、および7重量%の界面活性剤を含有する前記麻酔薬制御放出媒体105mlの各製剤120mlに対して、250rpmの撹拌速度が1MAC値で麻酔薬を放出するが、撹拌が500rpmまで増加されると、MAC値は1.7MACに増加する。また、撹拌速度を100rpmまで減少させると、0.35MAC(0.7体積%)となる。
図37を参照されたい。
図47に示される代替例として、セボフルラン50mL、および15重量%のZonyl FSN−100水溶液110mLの製剤160mlを使用すると、表10に示されるように、500〜50rpmの間の撹拌速度が、流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、撹拌スピードの関数として、1L/分の窒素流速下で4.0〜0.125MACの間の値での麻酔薬の放出をもたらす。
【0029】
別の例において、イソフルランの場合、イソフルラン20ml、および16重量%の界面活性剤を含有する前記麻酔薬制御放出媒体100mlを使用した各製剤120mlに対して、200rpmの撹拌速度が、0.5MAC値で麻酔薬を放出するが、表11に示されるように、撹拌が315rpm以上、すなわち最大375rpmまで増加されると、MAC値は4MACに増加する。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記調節可能なスターラーは、その間の1rpmの全ての増分を含む50〜1000rpmの間、理想的にはその間の1rpmの全ての増分を含む200〜500rpmの間で動作するように設定される。本発明のこの実施形態において、前記スターラーは、従来の6cm×1cm棒磁石スターラーである。しかしながら、他の形態のスターラーまたは撹拌器、例えば、限定されないが、異なるサイズ、羽根ピッチ、表面積等のパドルスターラー、プロペラ等、または振動撹拌器等の撹拌器が使用されてもよいことが、当業者に理解される。各スターラーまたは撹拌器は、生成されるせん断力に依存して、麻酔薬の所与の体積%放出またはMAC値のために、異なる撹拌またはかき混ぜ速度で使用される。しかしながら、各スターラーまたは撹拌器によるこの撹拌またはかき混ぜ速度の決定は、当業者により理解され、実現可能である。したがって、使用中、各カートリッジは、本明細書に記載の本発明が、所与のスターラーまたは撹拌器を使用して所与の速度で撹拌された、またはかき混ぜられた場合に、例として示される全ての製剤を含めて、ある特定の量の揮発麻酔薬を放出するように、使用されるせん断デバイスを考慮して較正される。
【0031】
麻酔を誘導および維持するために吸入麻酔薬のみを使用する場合、MACの最大4倍から開始し(一般に意識の消失まで投与される)、次いで、麻酔を維持することを目的として0.25〜2.0MACまで吸入麻酔薬濃度を低減することが一般的な慣例であるが、これは、患者の生理学的反応に依存する。上述のように、麻酔を維持するためには、小児は、麻酔を維持するために1×MACを必要とすることが多い成人よりも高い濃度の麻酔薬を必要とすることが多く、小児は、麻酔を維持するために成人相当で2×MACを必要とすることが多い。
【0032】
したがって、本発明は、意識消失が達成されるまで4MACで麻酔薬の投与を提供するように撹拌またはかき混ぜが設定され、次いで、麻酔を維持するために、選択されたより低いMAC、例えば成人の場合1×MAC、および小児の場合成人相当で2×MACを確保するように撹拌またはかき混ぜが調節され得るように使用され得る。また、上述のように、麻酔薬放出カートリッジは、使用されるスターラーまたは撹拌器の種類を考慮して較正され、典型的には、各MAC値のために必要なカートリッジの内容物の撹拌またはかき混ぜに関する説明が提供される。
【0033】
代替として、意識消失を達成するために、麻酔薬の静脈注射が使用されてもよく、したがって、静脈麻酔薬および吸入麻酔薬の両方を使用した場合、静脈を介した意識消失の誘導後、一般に4×MACの吸入薬剤の初期濃度は必要ではなく、したがって、意識消失を維持するための、所与のMACカートリッジにおける撹拌デバイスの調節は、典型的には必要ではない。
【0034】
それぞれの患者に必要な麻酔薬剤の総量もまた、カートリッジ/吸入デバイスに流入し患者に送達されるガス(酸素、空気または亜酸化窒素)の流量(および患者の麻酔要求量)に依存することが、当業者に理解される。典型的には、1L/分の流速が使用される。流速は、患者にガスを送達するために使用される麻酔薬呼吸システムの種類に依存し、呼吸システムの設計は、患者の呼気二酸化炭素ガスの除去の効率を左右する。典型的な流速は、循環呼吸システムにおいては1L/分、Mapleson A呼吸システムにおいては3〜5L/分であってもよい。したがって、本発明のカートリッジは、これを考慮して較正される。
【0035】
外科手術は、様々な長さの期間継続するため、本発明は、異なる容積のカートリッジを包含する。したがって、上述の製剤において、本発明は、本明細書に記載のような製剤体積、またはその対応するミリリットル倍数および/もしくは分数を使用して実施され得ることが、当業者に理解される。追加的に、または代替として、本発明は、標準サイズのMAC値当たりの複数のカートリッジの使用を含み、使用されるそれぞれの追加的なカートリッジは、「プラグイン」追加カートリッジと呼ばれる。
【0036】
本発明の一実施形態において、我々は、成人に対する選択された吸入麻酔薬、例えばセボフルランの必要体積が、1時間2%を維持するためには約12.5mlであると計算したが、これによって、5体積%から50体積%の間の製剤含量において、麻酔薬制御放出媒体は、1時間当たり約25〜150mlとなる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、前記麻酔薬に対する前記媒体の量は、前記吸入デバイスを使用した場合、前記麻酔薬に対して1〜4×最小肺胞内濃度(MAC)の必要MACを達成するように、大用量の前記麻酔薬が第1の短期間内に送達され、また残りの量の麻酔薬が、第2の長期間にわたり0.25〜2.0×MACの実質的に一定または制御可能な速度で送達されるような量であり、それにより、麻酔の誘導中に麻酔薬の初期過剰圧力、続いて麻酔維持段階が可能となる。
図9〜16、および18〜20を参照されたい。
【0038】
麻酔の過剰圧力は、患者を麻酔させるために望ましく、麻酔ガスまたは蒸気の過剰濃縮によりこの効果を達成するために十分な量の麻酔の投与に認められた用語である。
【0039】
さらなる好ましい実施形態において、本発明のみを使用して、すなわち静脈麻酔薬なしで意識消失をもたらし、次いで維持する場合、麻酔薬は、理想的には、調節可能なスターラーまたは撹拌器を使用して、
図5に示される送達プロファイルに類似した様式で送達され、麻酔薬の総量の最大80%、好ましくは最大40%、典型的には最大10%、最も典型的には5〜10%が、最初の30秒から5分で送達され、減速期間の後、最長1時間の期間、比較的一定の速度で残りが送達される。したがって、カートリッジは、最長1時間の期間継続する手術または沈静が行われるために十分な麻酔薬を提供する。典型的には、スターラーまたは撹拌器の使用、ひいてはMAC値の変更のための操作説明が、各カートリッジに対し提供される。
図5、20、および34を参照されたい。
【0040】
前述のように、MACはまた年齢と共に変化し、若年患者において麻酔を維持するために必要な麻酔薬の濃度は、より高齢の患者に対する濃度よりも高い。したがって、本発明のさらなる実施形態において、前記カートリッジは、麻酔を維持する目的で、以下の少なくとも3種の製剤において利用可能である:麻酔薬制御放出媒体および麻酔薬の組合せが小児に対する使用に適切である第1の製剤:成人相当で2.0MAC;麻酔薬制御放出媒体および麻酔薬の組合せが成人に対する使用に適切である第2の製剤:1.0MAC;ならびに麻酔薬制御放出媒体および麻酔薬の組合せが高齢者に対する使用に適切である第3の製剤;成人相当で0.5MAC。それぞれの場合において、患者への送達のための製剤、またはカートリッジにおける麻酔薬の総量は、60分間一定の麻酔を維持するための量である。
【0041】
したがって、本発明のさらなる態様は、本明細書に記載のような複数の麻酔薬カートリッジを備えるキットを含み、前記カートリッジは、同じまたは異なるMAC値のカートリッジである。
【0042】
したがって、本発明はまた、異なる種類の患者および異なる長さの手術に対して、サイズおよび/または含量の両方の点において異なるカートリッジを提供し、さらに、本発明は、長期間の使用のための追加的プラグインカートリッジを含む。これらの異なるカートリッジのいずれも、本発明のキットに含まれ得る。さらに、前記キットは、理想的には、選択された、および理想的にはそれぞれのカートリッジの使用に関し、好ましくは、選択された撹拌もしくはかき混ぜ速度および/または流速、ならびに理想的には設定温度でそれぞれのカートリッジが使用され得る効果的な期間を示す一組の説明書を含むが、ほとんどの場合においては標準が使用され、循環システムにおいては、この標準は、20℃の温度で、250rpmの撹拌速度(6cm×1cmの棒磁石、または代替のスターラーもしくは撹拌器により提供される同等のせん断力を使用して)および1L/分の流速でカートリッジ当たり1時間の期間であることが提案され、あるいは、Mapleson Aシステムにおいては、この標準は、20℃の温度で、350rpmの撹拌速度(6cm×1cmの棒磁石、または代替のスターラーもしくは撹拌器により提供される同等のせん断力を使用して)および1L/分の流速でカートリッジ当たり1時間の期間であることが提案される。
【0043】
当業者に理解されるように、前記カートリッジからの麻酔薬の放出は、従来の様式で使用された場合、麻酔薬制御放出媒体上の、またはそれを通した呼吸可能ガスの流動速度によりある程度制御される。しかしながら、本発明は、デバイス内への呼吸可能ガス1リットル/分の典型的に妥当または通常の流速であるとみなされる流速での使用が意図されるが、デバイスは、0.5〜15Lの新鮮なガス流/分で機能する。
【0044】
麻酔の突然の低下が望ましい状況においては、これはカートリッジの撹拌、振盪もしくはかき混ぜを低減することにより、または、実際には、流速の増加等の任意の他の方法により達成することができ、これによって、
図35に示されるように、麻酔の突然の相対的低減がもたらされる。この操作は、カートリッジが使用され得る最長期間を改変することが、当業者に理解される。
【0045】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、麻酔薬は、安定および化学的に改質されていない状態で前記媒体中に分散または分布している。
【0046】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記麻酔薬制御放出媒体は、ゲルまたはエマルジョンである。
【0047】
エマルジョンは、疎水性分子を水中に安定に分散させることができる。本発明において、我々は、麻酔薬分子を水中に分散させるためにエマルジョンを形成した。したがって、我々は、直鎖フルオロカーボン疎水性鎖を有するエチレンオキシド系界面活性剤等のハロゲン化非イオン性界面活性剤、およびプロピレンオキシドまたはエチレンオキシド炭化水素界面活性剤を含む市販の非イオン性界面活性剤を使用した。当業者には、
図4に示されるように、本発明を実施するために使用され得る他の既知の界面活性剤または安定剤(ポリマー、粒子、界面活性剤または脂質を含むがこれらに限定されない)が認識される。理想的な界面活性剤は、不揮発性を有するものであり、これにより、呼吸可能ガスが前記麻酔薬制御放出媒体を通って、またはその上を通過した場合に、麻酔薬のみが前記麻酔薬制御放出媒体から放出される。この実施形態を使用して、0.25〜44体積%、すなわち3.1〜43.8体積%(表5〜9)の間の麻酔薬含量が達成され得る。
【0048】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、エマルジョンは、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはマクロエマルジョンであってもよい。
【0049】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、界面活性剤および少なくとも1種の麻酔薬を含有するエマルジョンは、nm範囲内、理想的には10〜1000nmの間、最も理想的には50〜1000nmの間、好ましくは数百nmの範囲内、すなわち100〜900nmの間、理想的には表5〜9に示される全ての値を含む118〜884nmの液滴サイズを有する。
【0050】
本明細書において、界面活性剤への言及は、油分子と水分子との間の界面における吸着および/または表面張力の低減により、油および水の混合物を安定化する任意の表面活性薬剤への言及を含む。
【0051】
より好ましくは、界面活性剤は、これらの任意のおよびすべての組合せを含む、Zonyl FSN−100、Capstone FS−63、Capstone FS−3100、Chemguard S−550L−100、Polyfox 159、Brij O20およびTweenの1つまたは複数である。
【0052】
さらにより好ましくは、界面活性剤は、これらの任意のおよびすべての組合せを含む、Zonyl FSN−100、Capstone FS−63、Capstone FS−3100、Chemguard S−550L−100、Polyfox 159、Polyfox 656、Polyfox 6520、Polyfox 636、Brij O20、Brij O5、Brij O10、Brij S2、Brij S721、Brij 35、Brij C2、Flexiwet NI−55、Novec FC 4430、Tween 60、Tween 80、Tween 20、Pluronics、BYK 340、Schwego Fluor EL 3711、Schwego Fluor EL 4311、WorleeAdd 386 F、WorleeAdd 380 F、Capstone FS−31、Capstone FS−65、Capstone FS−35、Novec 4200、Novec 4434、Dynol 607、Certonal 752およびCertonal 742の1つまたは複数である(これらの任意のおよびすべての組合せを含む)。
【0053】
我々は、表面へのエマルジョンによる麻酔薬の緩やかな拡散がその放出に影響し、ひいては適切な撹拌または制御されたかき混ぜにより微調整され得る制御要素をシステムに導入することを発見した。
【0054】
さらに、我々はまた、輸送を目的として、麻酔がゲルとして提供され得ることを発見した。このための典型的なゲル化剤は、キラル非ラセミビス−(α,β−ジヒドロキシエステル)をベースとする。これらは、モデル麻酔薬HPFPを含むフルオロカーボン液をゲル化することが知られている。当業者には、
図6に示されるもの等の、本発明のこの実施形態を実施するために使用され得る他の既知のゲル化剤が認識される。使用後、ゲルを溶解し、ひいては前記麻酔薬を溶液中の分散液として放出するために、選択された界面活性剤溶液、すなわち適切な重量%および体積がゲルに添加される。したがって、本発明のさらなる代替の実施形態において、前記麻酔薬制御放出媒体および前記少なくとも1種の選択された吸入麻酔薬は、ゲル化剤で増粘された、またはそれを含むエマルジョンを含む。本発明のこの実施形態において、界面活性剤を使用して液化形態に再構成する前に麻酔薬をゲル化することは、選択されたMAC値での麻酔薬の制御放出の点で製剤の機能に影響しない。
【0055】
したがって、本発明のさらなる代替の態様において、吸入または揮発麻酔薬を患者に送達するための吸入デバイスとともに使用するための麻酔薬カートリッジであって、調節可能なスターラーまたは撹拌器;麻酔薬制御放出媒体、ゲル化剤および少なくとも1種の選択された吸入麻酔薬を備え、またはそれらからなり、前記麻酔薬に対する前記媒体および/またはゲル化剤の量は、前記調節可能なスターラーまたは撹拌器を使用した場合、選択された最小肺胞内濃度(MAC)で、0.125〜4.0×最小肺胞内濃度(MAC)の範囲内の実質的に一定または制御可能な速度で麻酔薬が送達され、それによりi)麻酔の誘導および/もしくは維持、またはii)沈静が可能となるような量である、麻酔薬カートリッジが提供される。
【0056】
ほとんどのゲル化剤は、10重量%未満のゲル化剤であるが、他のゲル化剤はより高い濃度で使用され得る。当業者には、本発明を実施するために使用され得る他の既知のゲル化剤が認識される。本発明のこの実施形態において、麻酔薬は、典型的には振盪の補助の下、水および/または界面活性剤を添加してゲルを可溶化および/または分散させ、その上を、またはそれを通って呼吸可能ガスが流動して患者への送達のために麻酔ガスを同伴し得る本明細書に記載のような製剤を有する流体を形成し得る使用時点まで、ゲル中に安全に保存される。ゲル化混合物の一例は、1重量%のゲル化剤(例えば15mlのセボフルラン中の0.15gのG4)を含む、またはそれからなる。理想的には、これは、105mlの7重量%Zonyl FSN−100を使用して再構成される。再構成の目的は、ゲル化剤の濃度が、試料をゲル化するために必要な濃度を下回ることを確実とし、同時に本明細書に記載のような麻酔の制御放出のための製剤が達成されるのを確実とすることである。
【0057】
さらに、ゲルが存在する場合、溶液の温度もまた、製剤の粘度、ひいては麻酔薬の放出速度に影響し得る。したがって、この代替の態様において、本発明は、4℃から40℃の多くの厳しい環境において使用され得るように、広い温度範囲にわたり機能するように考案される。典型的には、製剤は、20℃の温度での使用のための製剤である。
【0058】
追加的に、本発明の代替の態様または実施形態において、本発明は、4℃から40℃の多くの厳しい環境において使用され得るように、広い温度範囲にわたり機能するように考案される。典型的には、製剤は、20℃の温度での使用のための製剤である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、上述のように、カートリッジは、1時間の間患者を麻酔するために十分な麻酔薬を送達するが、状況により必要とされる場合には、より大量の選択された製剤を含有するより大きなカートリッジが使用されてもよく、または、麻酔薬を放出するために、それぞれの単回使用カートリッジの合計に相当する任意の選択された期間までいくつかの連続的カートリッジが使用されてもよい。上述の事象のいずれにおいても、単一カートリッジの製剤は、調節可能なスターラーまたは撹拌器と共に使用された場合、麻酔ガス混合物の過剰摂取もしくは可燃性を防止するために、初期麻酔薬用量が4×MACの最大値に制限されるような、または、麻酔ガス混合物の過剰摂取もしくは炎症性を防止するために、一連のカートリッジの最初の1つもしくは複数が、4×MACの最大値に制限されるような製剤である。
【0060】
2つ以上のカートリッジが使用される場合、デバイス構成は、麻酔期間中、放出される麻酔薬のレベルに影響せずに空のカートリッジが交換され得る構成である。これは、典型的には、バネ式機構、ねじ込み式機構、トリガー放出機構、またはラッチ機構を包含し得るがこれらに限定されない従来の性質の、各カートリッジの迅速放出および再装着機構により達成される。
【0061】
本発明の上述の態様または実施形態のいずれにおいても、前記麻酔薬制御放出媒体および前記麻酔薬は、カートリッジ内で互いに混合された場合、その間の全ての1cm
2増分を含む10〜60cm
2の表面積、理想的にはその間の全ての1cm
2増分を含む20〜50cm
2の表面積、さらに最も理想的には50cm
2の表面積を有する。
図39〜40を参照されたい。
【0062】
本発明の上述の態様または実施形態のいずれにおいても、前記麻酔薬は、フッ素化炭化水素等の任意の既知の吸入麻酔薬であってもよく、その商業的に知られている例は、デスフルラン、イソフルラン、ハロタン、エンフルランおよびセボフルランである。当業者には、メトキシフルラン等、本発明を実施するために使用され得る他の既知の麻酔薬が認識される。
【0063】
本発明のさらなる有利な特徴は、処置が終わったらカートリッジが製造者に返却され、後の使用のために麻酔薬が補充され得ることである。
【0064】
本発明のさらなる態様において、患者の顔の上に位置付けるためのマスクと;前記マスクと流体連通する呼吸可能ガスの供給部、または供給部へのアクセスと、少なくとも1つの放出可能麻酔薬カートリッジ用の少なくとも1つの結合ポートとを備える吸入デバイスであって、さらに、前記カートリッジから放出された麻酔薬が、前記患者に送達される前に前記呼吸可能ガスと混合されるように適合または構成されている吸入デバイスが提供される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、前記カートリッジをデバイスに挿入すると麻酔薬の送達が開始し、または代替として、呼吸可能ガスがカートリッジの上を、またはそれを通って通過すると、弁が始動して麻酔薬の送達が開始する。
【0066】
さらにより理想的には、前述の弁、または追加的な弁が、前記カートリッジと前記呼吸可能ガス供給部との間に提供されており、それにより前記麻酔薬の流動が減衰または停止され得る。
【0067】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記デバイスは、麻酔ガスが前記カートリッジから放出されていることを使用者に伝えるためのモニターを含み、これは、色感知機能等の麻酔を検出するデバイスであってもよく、または、新しいカートリッジの使用開始時に始動し、ひいてはカートリッジが持続すべき時間を計測するために使用されるタイマーであってもよい。代替として、前記デバイスは、麻酔薬の蒸発に関連するカートリッジ内容物の体積変化を検出および表示する。
【0068】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記デバイスは、陽圧デバイスを備え、それにより補助換気または吸入が生じ得、その最も単純な実施形態において、これはポンピング可能なエアバッグの形態であるが、酸素、亜酸化窒素または酸素濃縮空気等の呼吸可能ガスの加圧キャニスターに接続された、機械式、空気圧式または電気式換気装置の形態であってもよい。
【0069】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記呼吸可能ガス供給部は、酸素を含有する上述のようなキャニスターもしくは容器、または空気に向けて開口した管である。
【0070】
好ましくは、本発明のデバイスは、キャリアガスがカートリッジの内容物を通して、またはその上部を流動するように構成されている。
【0071】
さらにより好ましくは、前記デバイスは、閉ループ回路を備え、それにより、理想的には天然または合成分子篩を使用して、患者からの呼気がまず二酸化炭素を除去するように処理され、次いで患者の呼気中のあらゆる麻酔薬が除去または後の使用のために再び捕捉される。当業者には、本発明の実施において好適に配備され得る、呼気から二酸化炭素または麻酔薬を除去するための他の従来のフィルタまたは抽出機が認識される。
【0072】
また、より好ましくは、前記デバイスは、それを通る呼吸可能ガスの流動速度を制御するためのポンプを備え、理想的には、限定されないが、それにより呼吸可能ガスは、麻酔を誘導するための第1の流速で、およびその後麻酔を維持するための第2の流速で送達され得る。この実施構成の一例を、
図35に示す。
【0073】
本発明のこのさらなる態様、すなわち吸入デバイスは、好ましい実施形態において、カートリッジに関連する上述の特徴のいずれかを含み得る、またはそれを特徴とし得る。
【0074】
本発明の製剤は、麻酔薬制御放出媒体および前記麻酔薬を会合させることにより調製され得る。一般に、本発明の製剤は、麻酔薬制御放出媒体および前記麻酔薬を均一および密に会合させることにより調製され得る。
【0076】
カートリッジが、界面活性剤溶液等の麻酔薬制御放出媒体、および任意選択でゲル化麻酔薬の再構成後にゲル化剤を含む場合、前記界面活性剤および前記ゲル化剤は両方とも不揮発性を有し、したがって、麻酔薬のみが前記製剤から放出されることが確実となる。
【0077】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載のような吸入デバイスと組み合わせて本発明のカートリッジを使用して揮発麻酔薬を送達する方法が提供される。
【0078】
本発明は、ヒトに対する使用に関連して説明されているが、本発明は、獣医学産業にも適用可能であり、したがって獣医学用麻酔薬を含むように変更されたカートリッジを含む。特に、麻酔薬剤はヒトにおける使用と獣医学的使用との間で異なるが、全て揮発性麻酔薬剤である。これは、本発明のデバイスが、獣医学的麻酔において有用であることを意味する。この用途において、適切なサイズのカートリッジ、ひいては特定のサイズの選択された動物にある量の麻酔薬を送達するための、少なくとも1種の麻酔薬および麻酔薬制御放出媒体の製剤を含有するカートリッジは、専用施設において、または現場で動物に手術を行うために獣医により本発明が使用され得るように提供される。本発明のさらなる好ましい使用において、前記動物は、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、または任意の他の家畜、農業用動物または野生種である。使用中、獣医は、特定の動物に対し使用するために適切なMAC値または麻酔薬体積%のカートリッジを選択する。
【0079】
以下の特許請求の範囲および上述の発明の説明において、明示的な言語または必要な含意により文脈上他の意味が必要とされない限り、用語「備える(comprises)」、または「備える(comprises)」もしくは「備える(comprising)」等の変化形は、包含的な意味で、すなわち、示された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態において、さらなる特徴の存在または追加を除外しないように使用される。
【0080】
あらゆる特許または特許出願を含む、本明細書において引用される全ての参考文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。いかなる参考文献も先行技術を構成するものと認められない。さらに、先行技術のいずれも、当該技術分野における共通の一般的知識の一部を構成するものと認められない。
【0081】
本発明のそれぞれの態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかと関連して説明される通りであってもよい。
【0082】
本発明の他の特徴は、以下の例から明らかとなる。概して言えば、本発明は、本明細書において開示される特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組合せまで拡張される(添付の特許請求の範囲および図面を含む)。したがって、本発明の特定の態様、実施形態または例と併せて説明される特徴、整数、特性、化合物または化学部分は、矛盾しない限り、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または例にも適用可能であることを理解されたい。
【0083】
さらに、別段に指定されない限り、本明細書において開示される任意の特徴は、同じ、または同様の目的を果たす代替の特徴により置き換えられてもよい。
【0084】
ここで、以下の図を参照して、例示のみを目的として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1a】本発明を試験するために使用される、基本的な実験的試験チャンバおよび設定を示す図である。具体的には、60mlガラス瓶に、隔壁、N
2入口および1mlシリンジ(空気に対して開口している)が装着されている。典型的には、試験は、3mlの試料、または麻酔薬含量に関して同等のものを使用した。ヘッドスペース濃度を、ガス流出口から(再循環なし)サンプリングし、バルーンを使用して窒素雰囲気を提供しながら、または試料の上に2L/分のN
2を通過させて、もしくは試料に吹き込んで、標準的な麻酔薬モニターで測定した。
【
図1b】別段に指定されない限り、製剤の表面積は50cm
2であり、撹拌棒は60mm×10mm(直径)であり、入口コネクターはガス供給部に接続され、出口コネクターは麻酔薬モニターに接続された、流動装置モデル6の概略図を示す。
【
図2】セボフルランの非制御蒸発がキャリアガス中での危険な高濃度をもたらす様子を示し、蒸発が生じる制限された時間スケールを示すグラフである。3mlの液体セボフルラン上をガスが2L/分で通過した後の、N
2キャリアガス流中のセボフルラン濃度である。(挿入概略図において、橙色は液体麻酔薬を表す。)
【
図3】水の層の下に液体麻酔薬を配置することにより、麻酔薬蒸発が抑制され得、これは蒸発を長期化するが、このシステムはまたかき混ぜに対し極めて敏感であり、キャリアガス中での危険な高濃度をもたらすことを示すグラフである。3mlの水を含む相分離試料中の3mlの液体セボフルラン上をガスが2L/分で通過した後の、N
2キャリアガス流中のセボフルラン濃度である。水(青色)は上層を形成する。30分および36分における濃度のスパイクは、格納容器の振盪によるものである。
【
図4-1】フルオロカーボンとのある程度の親和性を付与するために有用な官能基を強調した、製剤中に使用され得るいくつかの例示的界面活性剤およびポリマー安定剤の化学構造を示す図である。製剤中に使用され得る例示的クラスの界面活性剤およびポリマー安定剤の構造である。(a)フルオロカーボン−エチレンオキシド、(b)プロピレンオキシド−エチレンオキシド、(c)メトキシ末端官能基を有するより大きなエチレンオキシド。
【
図5】麻酔薬と界面活性剤溶液との混合が、より高い初期レベルに続く、1時間の延長された時間的経過にわたる安定なより低い麻酔薬濃度の適正な放出プロファイルをもたらすことを示すグラフである。界面活性剤溶液中に20重量%で分散した3mlのセボフルランを含有する製剤上をガスが2L/分で通過した後の、N
2キャリアガス流中のセボフルラン濃度である。挿入図は、麻酔薬/水界面において吸着された界面活性剤の層により安定化された麻酔薬の分散液滴の提案されるエマルジョン構造を示す。
【
図6】麻酔薬をゲル化するために使用され得る例示的低分子量ゲル化剤の化学構造を示す図である。
【
図7】ゲルの安定な保存および輸送特性を組合せ、デバイスにおける使用の前に安定剤の水溶液と混合することによりエマルジョン系に変換される2段階製剤化を示す概略図である。ゲル(i)およびエマルジョン(iii)の両方を組み込んだ2段階製剤化プロセスの概略図である。
【
図8】呼吸システムとともに使用する際における本発明の概略図である。F:新鮮なガス流(酸素/空気または酸素/亜酸化窒素);R:貯蔵バッグ;B:呼吸管;V:弁;M:フェイスマスクであり、DADは本発明の分散麻酔薬デバイスである。
【
図9】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で400〜500rpmで撹拌した、イソフルラン18mLおよび25重量%Zonyl FSN−100の水溶液102mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、1.8±0.2体積%(1.5MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図10】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で260rpmで撹拌した、イソフルラン13mLおよび13重量%Zonyl FSN−100の水溶液87mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、1.6±0.2体積%(1.3MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図11】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で200rpmで撹拌した、イソフルラン9mLおよび11重量%Zonyl FSN−100の水溶液91mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、1.2±0.2体積%(1MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図12】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で200rpmで撹拌した、イソフルラン12mLおよび12重量%Zonyl FSN−100の水溶液98mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、1.2±0.2体積%(1MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図13】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で200rpmで撹拌した、イソフルラン4.5mLおよび8重量%Zonyl FSN−100の水溶液95.5mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、0.6±0.1体積%(0.5MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図14】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で150rpmで撹拌した、イソフルラン2.5mLおよび13重量%Zonyl FSN−100の水溶液77.5mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、0.3±0.1体積%(0.25MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図15】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で260〜400rpmで撹拌した、イソフルラン15mLおよび22重量%Zonyl FSN−100の水溶液85mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2.4±0.2体積%(2MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図16】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、4L/分の窒素流速で300〜750rpmで撹拌した、イソフルラン30mLならびに5重量%Chemguard S−550L−100および6重量%Capstone FS−63の水溶液100mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2.4±0.2体積%(2MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図17】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、4L/分の窒素流速で375〜1000rpmで撹拌した、イソフルラン35mLおよび19重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2.4±0.2体積%(2MAC)イソフルランの平均放出が達成された。
【
図18】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で150rpmで撹拌した、セボフルラン5.5mLおよび8重量%Zonyl FSN−100の水溶液84.5mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、0.5±0.1体積%(0.25MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図19】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン7.5mLおよび4重量%Zonyl FSN−100の水溶液112.5mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、1±0.2体積%(0.5MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図20】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン15mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2±0.2体積%(1MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図21】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で300rpmで撹拌した、セボフルラン26mLおよび10重量%Zonyl FSN−100の水溶液134mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、3±0.2体積%(1.5MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図22】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で375rpmで撹拌した、セボフルラン40mLおよび20重量%Zonyl FSN−100の水溶液120mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、3.5±0.2体積%(1.75MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図23】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で312〜375rpmで撹拌した、セボフルラン50mLおよび18重量%Zonyl FSN−100の水溶液110mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、4±0.2体積%(2MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図24】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、4L/分の窒素流速で375〜625rpmで撹拌した、セボフルラン40mLおよび17重量%Zonyl FSN−100の水溶液100mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2±0.2体積%(1MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図25】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、4L/分の窒素流速で375〜625rpmで撹拌した、セボフルラン50mLおよび22重量%Zonyl FSN−100の水溶液90mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、3±0.2体積%(1.5MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図26】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、4L/分の窒素流速で500〜1000rpmで撹拌した、セボフルラン70mLおよび25重量%Zonyl FSN−100の水溶液90mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、4±0.2体積%(2MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図27】セボフルラン20mLおよび10重量%POLYFOX 159の水溶液110mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で、最初の10分の後の約90分の間2±0.2体積%の持続的セボフルラン放出を維持するために撹拌速度を15分毎に定期的に50rpm増加させ、2±0.2体積%(1MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図28】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で230rpmで撹拌した、セボフルラン15mLならびに5重量%Capstone FS−3100および3重量%Polyfox 159を含有する水溶液115mLを含有する130mLの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、1±0.1体積%(0.5MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図29】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン15mLならびに10重量%Polyfox 159および3重量%Capstone FS−3100を含有する水溶液112.5mLを含有する130mLの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2±0.2体積%(1MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図30】セボフルラン18mLならびに9重量%Capstone FS−3100および5重量%Polyfox 159を含有する水溶液115mLを含有する130mLの製剤の、1L/分の窒素流速でのセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、撹拌速度を230rpmから250rpmに徐々に増加させ、2±0.1体積%(1MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図31】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250pmで撹拌した、セボフルラン20mLならびに1重量%Brij O20および12重量%Capstone FS−3100を含有する水溶液110mLを含有する130mLの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、2±0.15体積%(1MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図32】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で200rpmで撹拌した、セボフルラン5mLならびに20重量%Brij O5 15mLおよび7重量%のTween 20 30mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフであり、0.5±0.1体積%(0.25MAC)セボフルランの平均放出が達成された。
【
図33】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン20mLならびに10重量%Brij O20 10mLおよびCapstone FS−3100 10mLを含有する水溶液110mLを含有する2つの130mLの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図34】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で150rpmで撹拌した、イソフルラン2.5mLおよび13重量%Zonyl FSN−100の水溶液77.5mLを含有する2つの製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図35】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分および4L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン15mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルに対する、窒素流速の効果を示すグラフである。
【
図36】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmおよび500rpmで撹拌した、セボフルラン15mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルに対する、撹拌速度の効果を示すグラフである。
【
図37】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速および異なる撹拌スピードでの、セボフルラン15mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルに対する、撹拌速度の効果を示すグラフである。
【
図38】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速、および315rpmで30分間、次いで250rpmでさらに30分間、最後に315の撹拌スピードでの、セボフルラン20mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液120mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図39a】それぞれ12.5、20、50および30cm
2の表面積を有する流動装置モデル4、5、6および7を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン6mLおよびの6.5重量%Zonyl FSN−100の水溶液34mLを含有する50mLの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図39b】表面積の関数として書き換えられた、10分および30分におけるデータを示すグラフである。
【
図40】流動装置モデル6対モデル7を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン15mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図41】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン7.5mLおよび15mLならびに6.5重量%Zonyl FSN−100の水溶液52.5mLおよび105mLを含有する製剤60mLおよび120mLの、セボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図42】(a)流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン20mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液120mLを含有する一定組成製剤の、異なる回のセボフルラン放出プロファイルである。(b)1L/分の窒素流速で、250rpmで30分間、次いで315rpmの撹拌スピードでの、セボフルラン20mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液120mLを含有する一定組成製剤のセボフルラン放出プロファイルであり、10回の実験に対してリサイクルされた製剤が使用された。
【
図43】サーモスタット制御されたガラスフローセル(S.A.=20cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で375rpmで撹拌した、セボフルラン15mLおよび9重量%Zonyl FSN−100の水溶液55mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルに対する、温度の効果を示すグラフである。
【
図44】サーモスタット制御されたガラスフローセル(S.A.=20cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で異なる速度で撹拌した、セボフルラン15mLおよび9重量%Zonyl FSN−100の水溶液55mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルに対する、温度の効果を示すグラフである。製剤は、10℃、20℃および40℃でそれぞれ400rpm、350rpmおよび200rpmで撹拌された。
【
図45】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で250rpmで撹拌した、セボフルラン15mLならびに7重量%および20重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する2つの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図46】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で、50×7mmの小型棒磁石および60×10mmの大型棒磁石を250rpmで使用して撹拌した、セボフルラン15mLおよび7重量%Zonyl FSN−100の水溶液105mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図47】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用した、撹拌スピードの関数としての、1L/分の窒素流速でのセボフルラン50mLおよび15重量%Zonyl FSN−100の水溶液110mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図48】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用した、撹拌の関数としての、1L/分の窒素流速でのイソフルラン20mLおよび16重量%Zonyl FSN−100の水溶液100mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図49a】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用した、撹拌の関数としての、4L/分の窒素流速でのセボフルラン70mLおよび20重量%Zonyl FSN−100の水溶液90mLを含有する製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図49b】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用した、撹拌の関数としての、4L/分の窒素流速でのイソフルラン50mLおよび40重量%Zonyl FSN−100の水溶液70mLを含有する製剤のイソフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図50】流動装置モデル6(S.A.=50cm
2)を使用して、1L/分の窒素流速で200〜500rpmで撹拌した、セボフルラン10mLおよび30重量%Polyfox−159の水溶液55mLを含有する65mLの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示すグラフである。
【
図51】セボフルラン10mLおよび30重量%Polyfox−159の水溶液55mLを含有するセボフルランマイクロエマルジョン製剤(65mL)の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
表1は、モデル麻酔薬分子2H,3H−パーフルオロペンタン(HPFP)が、揮発性フルオロカーボン液を界面活性剤水溶液と共に振盪することにより、高含量の揮発性フルオロカーボン液を提供するように製剤化され得ることを示す。試料の濁った/不透明の外観は、エマルジョン形成を示し;
表2は、モデル麻酔薬液体HPFPの製剤化による蒸発の緩和を示し;
表3は、モデル麻酔薬液体HPFPの製剤化による蒸発の緩和が、試験チャンバ内の試料の上、特にそれを通してキャリアガスを流動させることにより制御され得る様子を示し;
表4は、キャリアガス中の揮発性液体の濃度および麻酔薬の全てを放出するために要する時間が、試料を通るキャリアガスの流量により影響され得る様子、ならびに、揮発放出の抑制に対する製剤化の効果がこれらの条件下で維持される様子を示し;
表5は、Zonyl FSN−100により安定化されたエマルジョンを示す。流動装置6(50cm
2表面積)において試験した;
表6は、他の界面活性剤により安定化されたセボフルランエマルジョンを示す。流動装置6(50cm
2表面積)において試験した。略語:Capstone FS−3100(C);Polyfox 159(P);Brij O20(B);
表7は、放出に対する撹拌速度の効果を示す。流動装置6(50cm
2表面積)において、一定の温度および流速で、製剤ZS2.0を使用して試験した;
表8は、4L/分の流速での放出を示す。Zonyl FSN−100により安定化されたエマルジョンを、流動装置6(50cm
2表面積)において試験した。流速=4L/分;
表9は、流動装置6(50cm
2表面積)において試験した他の界面活性剤により安定化されたエマルジョンを示す。流速=4L/分。略語:Capstone FS−3100(C);Chemguard S−550L−100(S);
表10は、
図47に示される放出プロファイルデータを生成するために使用された撹拌速度の要約を示し;
表11は、
図48に示される放出プロファイルデータを生成するために使用された撹拌速度の要約を示し;
表12は、
図49aに示される放出プロファイルデータを生成するために使用された撹拌速度の要約を示し;
表13は、
図49bに示される放出プロファイルデータを生成するために使用された撹拌速度の要約を示す。
【0087】
材料および方法
セボフルランは、Abbottから供給された状態で使用した。2H,3Hパーフルオロペンタンは、Fluorochem UKから供給された状態で使用した。Zonyl FSO100は、DuPontから供給された状態で使用した。全ての水は、脱イオン化した。界面活性剤溶液中のセボフルラン、イソフルランまたはHPFPの製剤は、必要量のフルオロカーボンを、事前に調製された界面活性剤水溶液と、本明細書に記載の製剤のリストに記載される割合および濃度で(手により)激しく振盪することにより調製した。試験チャンバ1を使用して、隔壁、N
2入口および(針のない)1mlシリンジ(空気に対して開口している)が装着された60mlガラス瓶に、プラスチック管を介して適量の製剤を加えることにより、表1〜4に記載の製剤を試験し(その実験設定は、
図1aに示されている)、プラスチック管の中から流出ガスを継続的にサンプリングし、麻酔薬濃度を監視した。典型的には、3mlの試料、または麻酔薬含量に関して同等の量を使用した。バルーンを使用して流通なしに窒素雰囲気を提供するか、または、キャリアガスとしての窒素の連続流を、制御された流速で試料上を通過させる、もしくは試料に吹き込んだ。ヘッドスペースフルオロカーボン濃度を、流出ガスから(再循環なし)サンプリングし、標準的な麻酔薬モニター(Capnomac Ultima、Datex Instrumentarium Inc.、Heslinki、Finland)を使用して測定して、製剤中の麻酔薬に依存してセボフルランまたはイソフルラン設定で監視した。
【0088】
異なる試料容器を使用して必要に応じて表面積を変化させながら、また表に記載のような体積(典型的には30〜120ml)を使用して、表5以降に記載の製剤を
図1bに示される流動装置において試験した。制御流速で、典型的には1L/分から4L/分で試料チャンバに窒素ガスを通過させ、出口ストリームにおける麻酔薬濃度を標準的麻酔薬モニター(Capnomac Ultima、Datex Instrumentarium Inc.、Heslinki、Finland)で測定し、製剤中の麻酔薬に依存してセボフルランまたはイソフルラン設定で監視した。いくつかの場合において、20℃以外の温度を維持するために循環水浴に接続された二重壁ガラス水ジャケットからなるサーモスタット制御されたセルを使用した。
【0089】
エマルジョンの作製
既知の体積の麻酔薬を既知の体積の分散媒と混合することにより、エマルジョンを調製した。分散媒、典型的には界面活性剤溶液を、既知の界面活性剤濃度で事前に調製した。60秒の一定時間2つの成分を手で振盪することにより、エマルジョンを形成した。エマルジョンを形成するために、よりエネルギー的に強力な混合方法、例えば高せん断混合、超音波照射または乳化装置は必要なかったが、明らかに、それらは使用可能な代替的調製方法である。
【0090】
吸入デバイスのエマルジョン構造の使用
エマルジョンの形成は、JVC TK−C1380カラービデオカメラ(JVC、日本)を装備したOlympus BX50システム顕微鏡(Olympus、UK)を使用した光学顕微鏡画像化により決定し、Image Jソフトウェア(Fiji、USA)を使用して分析した。The Brookhaven ZetaPlus分析器(Brookhaven Instruments Ltd.、USA)を使用して、動的光散乱測定から追加的な測定値を得た。光散乱測定のために、エマルジョン濃度に依存してエマルジョンを20〜50倍希釈した。
【0091】
吸入デバイスの使用
本発明の典型的な吸入デバイスを
図8に示すが、このデバイスは、呼吸可能空気またはガス、この場合新鮮な空気の供給部と、その下流側に、当業者に知られた従来の結合機構に接続される放出可能麻酔薬カートリッジ(DAD)とを含む。図示されていないが、前記カートリッジは、調節可能な撹拌またはかき混ぜデバイスを備え、それにより、前記カートリッジからの麻酔薬の放出が、本明細書において、および図を参照して説明されるように制御され得る。
図8に示される実施形態において、貯蔵バッグが提供され、呼吸管がフェイスマスクに接続される。さらに、本発明のこの実施形態において、前記フェイスマスクは弁を含み、これにより麻酔の開始が制御され得る。本発明の他の実施形態において、前記吸入デバイスは、前記放出可能麻酔薬カートリッジの上流側の呼吸可能ガスの供給部またはキャニスターに接続され得る。追加的に、または代替として、前記呼吸管は、環状閉鎖システムを備えてもよく、この場合、さらなる呼吸管が、マスクを呼吸可能ガスの供給部に接続する。また、この実施形態において、前記フェイスマスクの下流側に、二酸化炭素または麻酔ガス等の選択されたガスを呼気から抽出するためのフィルタまたは抽出機が提供され、それにより、呼気ガスは好適に処理され、次いでリサイクルおよび再利用され得、呼気から抽出された麻酔薬もまた再利用され得る。放出可能麻酔薬カートリッジを除いて、吸入デバイスの構成および構成要素は、当業者に知られている。使用中、放出可能麻酔薬カートリッジは、対応する接続デバイス内に位置し、この位置付け動作がカートリッジから麻酔薬を放出させるか、または別個の弁がこの目的のために提供されている。マスクが患者の顔の上に設置され、デバイスは使用準備が整う。使用者が放出される麻酔薬の量を変更したい場合、本明細書に記載のように調節可能スターラーを使用して麻酔薬放出を増加または低減する。呼吸可能ガスの内蔵式供給部が使用される場合、フェイスマスクが患者に設置される前にそのスイッチを入れる。
【0092】
結果
図2は、3mlのセボフルランを試験チャンバ1に加えた後の排出キャリアガス流において検出されたセボフルラン濃度の時間依存性を示し、試料環境ヘッドスペースを通るキャリアガス流は2L/分である。最初の10分間にキャリアガス流出ストリームにおいて臨床的に危険な麻酔薬濃度(13〜15%)が記録され、約15〜16分において観察される麻酔薬濃度ゼロまでの突然の降下が記録されている。これは、蒸発プロセスのさらなる制御が必要であることを明確に示している。
【0093】
図3は、麻酔薬を等体積の水の下に配置することにより、蒸発のスピードが幾分緩和され得ることを示している。麻酔薬は、格納容器の底部に注入され、フルオロカーボンおよび水の自然の非混和性が、2つの相の著しい混合を防止する。2L/分のキャリアガス流を使用した。
【0094】
図3は、15%(臨床用途には高すぎる)の初期測定セボフルラン濃度が、最初の10分間で約8%の安定値に減少し、これがさらに約8分間持続してから、続く10分間で徐々にゼロまで低下することを示している。安定値は、非緩和セボフルランよりも必要臨床濃度領域に近いが、まだ必要量より高く、標的時間スケールの間持続しない。また、試料の穏やかなかき混ぜが、再び15%までの濃度のスパイクをもたらし、これは約2分間で急速にゼロに減衰する。このスパイクは、35分において再発し、製剤の全麻酔薬含量が低下するにつれて、より低い最大値およびより急速な減衰を示す。これは、かき混ぜにより敏感でなく、より長期の時間スケールにわたる送達を提供する、より確実な製剤が必要であることを示している。
【0095】
水および適切な安定剤と共に激しく振盪することによる液体麻酔薬の製剤化は、濁った、または不透明な分散液を形成し、これは、経時的に相分離し、したがってエマルジョン形成の特徴である。いくつかの例示的安定剤を、
図4に示す。セボフルランに構造的に類似する揮発性フルオロカーボン液2H,3H−パーフルオロペンタン(HPFP)を使用して、蒸発速度に対する製剤化パラメータの効果を調査した。表1および添付の画像は、Zonyl−FSO100の10重量%水溶液中のHPFPの製剤を報告している。9体積%から50体積%HPFP(3〜15重量%に相当)の間のHPFP濃度で60秒間手で振盪することにより、分散液が容易に形成された。これらの製剤の放出特性を表2および3に要約するが、これらは、30秒の一定の時点で記録されたフルオロカーボン濃度(セボフルランとして監視、したがってHPFPに対する相対値のみを示している)、またさらに測定値がゼロに降下するまでの時間を報告している。表2は、同等量の非製剤化HPFPに対する値と共に、2つの例示的製剤に対するこれらの値を報告している。ここで、試料を通る最小ガス流量下で蒸発を監視した(バルーンを取り付けて僅かなキャリアガス陽圧を提供することにより)。これらのデータは、液体がエマルジョンに組み込まれるか否かに関わらず、より高い揮発性フルオロカーボンレベルおよびゼロの気相濃度までのより長い時間が記録され、はじめにより大量のフルオロカーボンが存在することを示している。非製剤化HPFPと製剤化HPFPとの間で測定値を比較すると、製剤において大幅により低い測定キャリアガス濃度が観察され、一方、抑制の程度は、フルオロカーボン含量に依存する(製剤J5(29体積%HPFP)における17×低減と比較して、製剤J1(5体積%HPFP)においては50×低減が生じる)。表2はまた、同等量の不含フルオロカーボンと比較して、製剤J1においてゼロ測定濃度までの時間の4倍を超える増加を示し、J5の6倍高いHPFP含量は、ゼロ測定濃度までの時間を、20分の最大記録実験時間よりも長く延長した。
【0096】
試料を通した、およびその上での2L/分のキャリアガス流量下で製剤J5(30体積%HPFP)に関して実験を繰り返すと、製剤化の影響がさらに強調され、表3は、比較として不含HPFPおよび水の下のHPFPの両方に対するデータを含む。30秒の時点で、測定された同等のセボフルラン濃度は、水の層によりちょうど2分の1未満まで低減され、エマルジョンとしての製剤化により、4分の1に低減される。また、ゼロ濃度までの時間は、水だけにより約25%大幅に延長されるが、エマルジョンプロセスにより500%を超えて延長される(実験は25分で終了した)。また、表3は、試料の上よりもそれを通してキャリアガスを流動させることにより、放出が促進され得ることを示しており、30秒の時点で14倍高いフルオロカーボン濃度、およびゼロ測定濃度までの時間における3分の1未満への低減が記録された。これらのデータは、累積放出計算の結果と一致しており、99%を超える揮発性フルオロカーボンが製剤から放出されることを示している。したがって、同等のフルオロカーボン含量において、より高い気相濃度は、ゼロ濃度までのより短い時間をもたらし、等しい体積の製剤において、より高いフルオロカーボン含量は、これらのパラメータの両方を増加させる。
【0097】
図1aに示される装置を使用した場合のガス流速の影響は、表4中のデータによりさらに実証されるが、表4は、水の下のHPFPおよび30%HPFPエマルジョン製剤における試料を通したガス流速の影響を示す。これらのデータは、ゼロ記録HPFP濃度までの時間が、流速の増加と共に減少し、30秒の一定の時点で記録された濃度も同様であることを示している。製剤においては、ゼロ測定濃度までの時間が、0L/分から2L/分までの流通ガスで半分となる。
【0098】
セボフルラン実験
図5は、Zonyl FSO−100の10重量%溶液中で振盪することにより分散させた20重量%セボフルランを含有するエマルジョン製剤からのセボフルラン放出の時間依存性を示す。プロファイルの全体的形状を
図2中のものと比較すると、蒸発の抑制が、キャリアガス中の一定セボフルラン濃度が記録される安定領域の延長をもたらすことが明らかである。この安定領域は、不含セボフルラン対照試料(約13%、
図2)、または水の下のセボフルランの対照試料(約8%、
図3)よりもはるかに低い濃度である。1%未満では、製剤から送達される濃度は必要な臨床ウィンドウ(約4%)よりも低いが、製剤化およびガス流量条件の最適化を使用して、所望濃度を得ることができる。初期濃度はまた、製剤化により低下され(対照の約15%と比較して、製剤の初期化中約5%のセボフルラン)、約8%という臨床的に必要な濃度にはるかに近い値が得られる。この製剤化はまた、1時間の時間スケールにわたる麻酔薬の送達においても良好であり、したがって、臨床的に実行可能な分散液への最適化のための明らかな有力候補である。
【0099】
図6は、例示的な低分子量有機ゲル化剤、すなわち有機および/またはフルオロカーボン液をゲル化することが知られている分子の化学構造を示す。したがって、麻酔薬のゲル化は、制御麻酔薬放出の代替的方法である。
【0100】
図7は、使用時点で乳化剤の水溶液(界面活性剤溶液)と共に激しく振盪することによりエマルジョンに変換され得る、輸送および保存のための期待されるゲル化麻酔薬の製剤の堅牢性を組み合わせた2段階製剤化の概略図を示す。
【0101】
持続的イソフルラン放出製剤
表5に記載の製剤を使用して、同じく表5に記載の条件下、一定速度(MAC)(体積%)で1時間の持続的イソフルラン放出が、0.3%(MAC0.25)、0.6%(MAC0.5)、1.2%(MAC1)、1.6%(MAC1.33)、1.8%(MAC1.5)および2.4%(MAC2)において達成された。それぞれの個々の放出プロファイルのグラフを、
図9〜15に示す。
【0102】
表8に記載の製剤を使用して、同じく表8に記載の条件下、一定速度(MAC)(体積%)で1時間の持続的イソフルラン放出が、2.4%(MAC2)において達成された。それぞれの個々の放出プロファイルのグラフを、
図16〜17に示す。
【0103】
持続的セボフルラン放出製剤
表5に記載の製剤を使用して、同じく表5に記載の条件下、一定速度(MAC)(体積%)で1時間の持続的セボフルラン放出が、0.5%(MAC0.25)、1.0%(MAC0.5)、2%(MAC1)、3%(MAC1.5)、3.5%(MAC1.75)および4%(MAC2)において達成された。それぞれの個々の放出プロファイルのグラフを、
図18〜23に示す。
【0104】
表8に記載の製剤を使用して、同じく表8に記載の条件下、一定速度(MAC)(体積%)で1時間の持続的セボフルラン放出が、0.5%(MAC0.25)、2%(MAC1)、3%(MAC1.5)、および4%(MAC2)において達成された。それぞれの個々の放出プロファイルのグラフを、
図24〜26および
図36(1l/分)および
図41(4l/分)に示す。
【0105】
持続的混合界面活性剤放出製剤
表6に記載の製剤を使用して、同じく表6に記載の条件下、一定速度(MAC)(体積%)で1時間の持続的混合界面活性剤放出製剤が、2%(MAC1)および1.0%(MAC0.5)において達成された。それぞれの個々の放出プロファイルのグラフを、
図27〜32に示す。
【0106】
1L/分の窒素流速下、セボフルラン5mL、ならびに20重量%Brij O5 15mLおよび7重量%Tween 20 30mLを含有し、200rpmで撹拌された製剤を使用して、一定速度(体積%)で1時間の持続的セボフルラン放出が、0.5%(0.25MAC)において達成された。放出プロファイルを
図32に示す。この図は、水素化界面活性剤を使用して、水溶液中のセボフルラン分散液を安定化することができることを示している。
【0107】
製剤の再現性
製剤性能の再現性を、
図33〜34に示す。試料調製の再現性が示された。
図33および34は、それぞれセボフルランおよびイソフルランにおいて、独立して調製された2つの複製試料から得られたデータを示す。
【0108】
セボフルラン放出プロファイルに対するキャリアガス流速の効果
一定組成製剤、一定撹拌速度を使用して、また
図1bに示される装置を使用して、1L/分および4L/分の2つの異なる窒素流速で、放出セボフルラン濃度に対するキャリアガス流速の効果を調査した。得られたセボフルラン放出プロファイルを、
図35に示す。示されるように、キャリアガスの流速を増加させると、放出セボフルランの濃度の減少がもたらされるが、レベルは1時間の時間的経過にわたり一定に維持される。この場合、得られた放出のレベルは0.5MACであり、これは沈静目的に好適である。これは、臨床的設定、したがって流速に依存して、麻酔または沈静のために選択されたカートリッジを使用することができることを示している。
【0109】
エマルジョン構造
エマルジョン構造は、光学顕微鏡およびその後の画像分析により確認および評価した。1、2および3%の製剤の顕微鏡写真は、それぞれ1.5μm、1.4μmおよび1.4μmの液滴サイズを示した。これらの結果、および他の製剤の液滴サイズを、表5、6、8および9に示す。
【0110】
セボフルラン放出プロファイルに対する撹拌速度の効果
撹拌速度を使用して、製剤からのセボフルラン放出を変更および制御することができることが示された。
【0111】
例えば250rpmの撹拌速度で2%の着実な放出を提供する製剤の場合、より高い撹拌速度500rpmを使用すると、初期放出の増加がもたらされる。
図36に示されるように、セボフルランはより高い撹拌スピードでより急速に使用され、放出レベルはより低いスピードの場合よりもより急速に降下する。
【0112】
同じ回における異なる撹拌速度
図37に示されるように、撹拌速度を使用して、セボフルランの放出レベルを制御することができ、撹拌に対する応答は、迅速であると共に可逆的である。
図38は、撹拌速度を使用して、1時間の時間的経過にわたり異なる放出領域を提供することができ、または、80分のより長い時間スケールにわたり、0.1%未満のドリフトで2%の放出プロファイルを維持することができることを示している(
図36中の250rpmデータと比較されたい)。使用した磁気撹拌棒は、10mm(直径)×60mmであった。
【0113】
セボフルラン放出プロファイルに対する流動装置モデルの表面積の効果
適正な表面積を使用することの重要性は、表面積の全てを比較することができるようにより少量の2%製剤(50ml)を使用して、
図39(a)において示される。高表面積では放出がより高いが、低表面積では、臨床的に必要なレベルに達しない。選択されたデータ点が
図39(b)に書き換えられているが、表面積の増加の効果が、20cm
2および40cm
2の間のいずれかで横ばい状態となることを示している。30cm
2および50cm
2におけるデータの完全比較を、
図40に示す。
【0114】
セボフルラン放出プロファイルに対する製剤使用量の効果
存在する製剤の量を増加させると、放出のレベルが大幅に増加することはないが、放出のレベルが持続される時間スケールが延長する。これは、2%製剤に対して
図41に示される。
【0115】
製剤のリサイクル
製剤は、
図42に示されるように、性能の悪化をもたらすことなく使用され、セボフルランを補充され得る(水の損失を補う)。示されたデータは、新鮮な製剤、および最大10回の実験に使用された製剤に対するものである。
【0116】
麻酔薬放出に対する温度の効果
Zonyl−FSN−100界面活性剤により安定化されたセボフルランを使用した製剤からの麻酔薬放出に対する温度の効果を、
図43に示す。温度を増加させると、キャリアガス中のセボフルランの放出レベルが増加するが、これは、
図44に示されるように撹拌速度の調節により相殺され得、10℃、20℃および40℃で1L/分の窒素流速で一定組成製剤を使用したセボフルラン放出プロファイルは、それぞれ400rpm、350rpmおよび200rpmで撹拌することにより、1MACで安定化される。
【0117】
放出プロファイルに対する界面活性剤濃度の効果
麻酔薬、すなわちセボフルランの放出プロファイルに対する、使用した製剤中の界面活性剤、この場合Zonyl FSN−100の濃度の効果を調査した。
図45は、セボフルラン15mLならびに7重量%および20重量%の濃度のZonyl FSN−100を含有する2つの製剤のセボフルラン放出プロファイルを示す。この図において示されるように、より低い界面活性剤濃度を有する製剤が、より高いセボフルラン放出を生じる。例えば、7重量%FSN−100を含む製剤からの30分における放出セボフルランの濃度は2.1体積%であり、一方20重量%FSN−100を含む製剤からの対応する放出濃度は1.72体積%であった。
【0118】
放出プロファイルに対する磁石サイズの効果
撹拌棒のサイズの変更は、せん断力および混合/かき混ぜの程度を変更し、
図46に示されるように異なる放出レベルをもたらす。
【0119】
一体型放出製剤
本明細書において開発された技術を使用して、製剤が曝されるせん断力、または撹拌/かき混ぜ速度に依存して、異なる麻酔薬放出量/体積%またはMAC値を送達することができる製剤を提供することが可能である。
【0120】
例えば、撹拌速度の変更によってのみ異なる麻酔薬放出量/体積%またはMAC値を送達するように作製され得る、1L/分キャリアガス流速での使用のための製剤が開発されたが、これは、任意の一定レベルでの麻酔薬の長期的放出を提供する。示された例において、放出レベルは、4MAC以下である。
【0121】
したがって、この種の製剤は、麻酔の誘導に必要な最高濃度の麻酔薬を提供し、続いて麻酔を維持するためのより低い濃度での持続的放出を提供する一方で、制御された様式で撹拌速度を調節することにより送達濃度を増加および減少させる柔軟性を維持するために使用され得る。
【0122】
文章中で別段に指定されない限り、これらの一体型放出製剤におけるデータは、1L/分の窒素流速下、流動装置モデル6(表面積50cm
2)を使用して室温(20±2℃)で得られた。
【0123】
イソフルランに対しても、1L/分の窒素流速下、流動装置モデル6(表面積50cm
2)を使用して室温(20±2℃)で機能するように、類似の製剤を調製した。
【0124】
流動装置モデル6(表面積50cm
2)を使用した、室温(20±2℃)での4L/分のより高い窒素流速における使用のための同じ概念を例示する、2つのさらなる製剤を調製した。
【0125】
1L/分でのセボフルラン
図47は、110mlの15重量%Zonyl FSN−100の水溶液中で手で振盪することにより分散させた、50mlセボフルランを含有する製剤の放出を示す。撹拌速度は、表10に要約されるように、一定流速で異なる放出レベルが得られるように調節された。
【0126】
製剤化を使用して迅速に麻酔を誘導し、次いで所望のMAC/体積%で麻酔を維持することができることを示すために、4MAC(麻酔薬放出8体積%)の必要誘導レベルを20分間維持した。
図47中に明示的に示されている値の間の任意の所望の中間値は、系の撹拌の調節により得ることができる。前述のように、撹拌速度は、絶対値ではなく特定の実験設定値の代表であり、異なる装置またはかき混ぜ方法を使用して異なる撹拌速度が必要となるが、それにもかかわらず、それぞれの個々のカートリッジは、その中に含有されるせん断装置および/または使用される方法を鑑みて、これを考慮するように較正され得る。特に、すなわち、撹拌のスピード/様式を変更することによる麻酔薬の量の放出における制御された変化を得るための原理的概念は、他の撹拌またはかき混ぜ機構にわたって保持される。また、本明細書におけるデータに基づき、時間スケールは実験を示すのみであり、必要な放出がより低い程、より長期間固定体積の製剤が一定のMACを送達することは自明なはずである。これは、せん断/撹拌速度により放出が影響される製剤の全てに対して適用される、一般的な事柄である。
【0127】
1L/分での一体型イソフルラン放出製剤
図48は、16重量%Zonyl FSN−100の水溶液100ml中で手で振盪することにより分散させた、セボフルラン20mlを含有する製剤の放出を示す。撹拌速度は、表11に要約されるように、一定流速で異なる放出レベルが得られるように調節された。
【0128】
4L/分での一体型放出製剤
図49aは、
図47に示されるものと類似した放出挙動を示すが、4L/分のより高いキャリアガス流速でのものである。撹拌速度データを、表12に要約する。
図49b)は、
図48に示されるものと類似した放出挙動を示すが、4L/分のより高いキャリアガス流速でのものである。撹拌速度データを、表13に要約する。
【0129】
マイクロエマルジョンを使用して調製されたエマルジョン
図50は、本発明がマイクロエマルジョンを使用して実施され得ることを示す。示された例において、10mLのセボフルランおよび55mLの30重量%Polyfox−159の水溶液が、
図51に示されるような光学的に透明なマイクロエマルジョンを生成する。このマイクロエマルジョンの放出プロファイルは、本発明を実施するための必要な制御可能および一定の速度を示している。
【0130】
事前にゲル化された麻酔薬から調製されたエマルジョン
麻酔薬をゲルとして保存し、次いで界面活性剤溶液と混合して最終製剤を再構成することの実行可能性を示すために、その構造が以下に示されるゲル化剤G4を使用して、麻酔薬の試料を事前にゲル化した。使用したゲル化剤(G4)は、2つの不斉中心を連結する炭化水素鎖中に、2つのより小さいCH2基を含有する。
【0132】
セボフルランの事前ゲル化は、0.15gのG4を1mlのセボフルランに添加し、約70℃に加熱し、氷浴中で冷却することにより達成した。この加熱−冷却サイクルを2回繰り返すと、透明均質ゲルが得られた。必要な界面活性剤溶液を添加すると、2つの相は混合しないが、振盪すると、試料外観は、非ゲル化麻酔薬から調製された対照試料と同じであり、これはエマルジョンがまだ形成されることを示している。相分離するまで試料を放置したが、下相の液体の性質は、ゲルが混合により破壊され、相分離後は液体麻酔薬が保持されることを示している。
【0133】
結論
安定化された分散液としての麻酔薬等の揮発性フルオロカーボン液の製剤は、露出したフルオロカーボン液、またはその上に水の層を有する同じフルオロカーボン液上で測定された濃度と比較して、製剤の上を通過させたキャリアガスのストリーム中のそのフルオロカーボンの測定濃度を大きく低減した。したがって、分散液の形成は、キャリアガス中で送達される危険な高レベルの麻酔薬を低減する。経時的に、揮発性麻酔薬の全て(>99%)が製剤から放出され、次いで残りの界面活性剤溶液は、麻酔薬を再補充されて再利用され得る。一定ガス流速下で、より高レベルの麻酔薬が放出される短い開始期間後、濃度は、全ての麻酔薬が製剤から放出されるまで一定に維持される。したがって、麻酔薬送達のための望ましいプロファイルが示された。記録された麻酔薬のレベルは、安全および適切な臨床限界内であり、試料間で再現性がある。したがって、製剤化は、予測可能な時間スケールにわたる、麻酔薬の制御された長期送達を可能とする。
【0134】
キャリアガス中の麻酔薬濃度は、格納容器のヘッドスペースを通してではなく、製剤を通してキャリアガスを流動させることにより増加され得る。これはまた、濃度対時間の放出プロファイルの制御を提供する。代替として、分散液をかき混ぜて、そこからの麻酔薬の放出速度を変更することができる。
【0135】
表1は、モデル麻酔薬分子2H,3H−パーフルオロペンタン(HPFP)が、揮発性フルオロカーボン液を界面活性剤水溶液と共に振盪することにより、高含量の揮発性フルオロカーボン液を提供するように製剤化され得ることを示す。試料の濁った/不透明の外観は、エマルジョン形成を示す。
【0137】
表2は、モデル麻酔薬液体HPFPの製剤化による蒸発の緩和を示す。
【0139】
表3は、モデル麻酔薬液体HPFPの製剤化による蒸発の緩和が、試験チャンバ内の試料の上、特にそれを通してキャリアガスを流動させることによりさらに制御され得る様子を示す。
【0141】
表4は、キャリアガス中の揮発性液体の濃度および麻酔薬の全てを放出するために要する時間が、試料を通るキャリアガスの流量により影響され得る様子、ならびに、揮発放出の抑制に対する製剤の効果がこれらの条件下で維持される様子を示す。