【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、部分的には、哺乳動物への5%濃度のソフト抗コリン作用性化合物の毎日の局所的適用が、多汗症を処置することにおける以前の問題のうちの多くを克服するという発見に関する。ソフト抗コリン作用性化合物とグリコピロレートとを比較する以前の公開された散瞳研究において、匹敵する活性には、グリコピロレートと比較して、5倍(5×)もの、またはそれより高い濃度の上記ソフト抗コリン作用性化合物が必要であったようである。驚くべきことに、本発明の化合物は、グリコピロレートの匹敵する用量を使用して報告された類似の汗の減少のレベルで、汗の生成の臨床的に有意な減少を提供し得、このことは、潜在的に、本発明の化合物を多汗症の適切な処置選択肢にする。
【0014】
さらに、本発明は、多汗症の従来の処置によってこれまで達成されなかった利点を提供する。例えば、上記適用されるソフト抗コリン作用性化合物は、Botox処置と関連する副作用を有さず、全身性の抗コリン作用性薬剤もしくは局所的グリコピロレートと比較した場合に、改善された安全性プロフィールを有し得る。
【0015】
概要
ソフト抗コリン作用性薬剤を使用する哺乳動物被験体(例えば、多汗症に罹患しているヒト)における過剰な発汗状態を処置する方法が記載され、これらを含む薬学的組成物が提供される。記載される方法は、就寝前に局所投与される場合の、ソフト抗コリン作用薬の予想外の活性に関する。
【0016】
1つの例示的実施形態において、以下の式を有する化合物が提供され:
【化1】
ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置を、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物である。
【0017】
他の例示的実施形態において、前述の式の化合物のうちの1種もしくはそれより多く、およびそのための薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物;前述の式の化合物のうちの1種もしくはそれより多くおよび別の発汗抑制剤(例えば、塩化アルミニウム)を含む薬学的組み合わせ物;ならびに本発明の組成物および組み合わせ物を使用する方法が提供される。
【0018】
上記組成物は、好ましくは、多汗症の処置、予防もしくは改善における局所的適用のために製剤化される。
【0019】
1つの好ましい実施形態は、被験体における多汗症を処置、予防もしくは改善するための方法を包含し、ここで上記方法は、以下の工程を包含する:
a)薬学的に受容可能なビヒクルおよび約1.0%〜約25%の以下の式を有する化合物を含む組成物を提供する工程:
【化2】
(ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置を、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物である);ならびに
b)就寝前に多汗症に罹患している被験体に上記組成物を局所投与する工程であって、上記局所投与は、等しい濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与後に汗の生成が未処置のベースライン状態と比較して減少する量と予想外に実質的に等しい量、少なくとも約6時間にわたって汗の生成が未処置のベースライン状態と比較して減少するようなものである、工程。
【0020】
本発明の方法は、好ましくは、ヒト被験体に上記組成物を投与することによって行われ、好ましくは、上記被験体の手掌領域、足底領域、鼠径領域、腋窩領域、および顔面領域から選択される、汗の減少の必要のある解剖学的表面領域において、上記被験体の皮膚に適用され得る。
【0021】
本発明の方法は、汗の生成を約25%〜約99%、好ましくは約30%〜約75%、より好ましくは約45%〜約60%、最も好ましくは約50%減少させ得、これらは、多汗症を処置するための適応症についての臨床的に有意なエンドポイントであり得る。
【0022】
上記方法は、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム(foam)、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンなどとして製剤化される組成物を使用し得、好ましくは、約2%〜約10%の濃度の上記化合物を含む。1つの好ましい実施形態は、70% エタノール中の上記化合物の5%溶液として製剤化される組成物を使用する。
【0023】
さらに、睡眠サイクル後の、この睡眠サイクルの前の用量の後約6〜10時間以内の第2の用量の投与はまた、好ましい投与方法もしくは投与レジメンであり得る。
【0024】
驚くべきことに、本発明の方法は、汗の生成を約8時間〜約24時間、および好ましくは、約8時間〜約12時間減少させ得る。
【0025】
本発明の別の方法は、多汗症に罹患している被験体が就寝前に、薬学的に受容可能なビヒクルおよび約1.0%〜約25%の以下の式を有する化合物:
【化3】
を含む組成物を局所投与されることによる、新規な投与レジメンに関し、
ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物であり、その結果、未処置のベースライン状態と比較して、汗の生成は、少なくとも約6時間にわたって少なくとも約25%減少するか、または汗の生成は、等価な濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与後に、未処置のベースライン状態と比較して汗の生成が減少される量に実質的に等しい応答である。
【0026】
本発明に従う投与レジメンは、好ましくは、ヒト被験体への上記組成物の投与によって行われ、上記被験体の手掌領域、足底領域、鼠径領域、腋窩領域、および顔面領域から選択される解剖学的表面領域において上記被験体の皮膚に適用され得る。
【0027】
本発明に従う投与レジメンは、汗の生成を約25%〜約99%、好ましくは約30%〜約75%、より好ましくは約45%〜約60%、最も好ましくは約50%減少させ得、これらは、多汗症を処置するための適応症についての臨床的に有意なエンドポイントであり得る。
【0028】
本発明に従う投与レジメンは、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンなどとして製剤化される組成物を使用し得、好ましくは、約2%〜約10%の濃度の上記化合物を含む。1つの好ましい実施形態は、70% エタノール中の上記化合物の5%溶液として製剤化される組成物を使用する。
【0029】
さらに、本発明に従う投与レジメンは、第1の投与の後に、上記被験体が覚醒した後に、上記被験体に上記組成物の第2の用量を局所投与する工程を包含するさらなる工程を包含し得る。驚くべきことに、本発明に従う本投与レジメンは、汗の生成を約8時間〜約24時間、および好ましくは、約8時間〜約12時間減少させ得る。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
就寝前に、多汗症に罹患している哺乳動物被験体のある領域の皮膚に局所投与するための医薬組成物の調製における、以下の式を有する化合物:
【化5】
の使用であって、ここでRは、メチルもしくはエチルであり、該化合物は、2位においてR立体配置、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物であり;該組成物は、約1.0%〜約25%の該化合物および薬学的に受容可能なビヒクルを含み、その結果、未処置のベースライン状態と比較して、汗の生成は、少なくとも約6時間にわたって少なくとも約25%減少する、使用。
(項目2)
以下の式を有する化合物:
【化6】
であって、ここでRは、メチルもしくはエチルであり、該化合物は、2位においてR立体配置、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物であり;該化合物は、医薬組成物の調製における使用のためのものであり、該医薬組成物は、約1.0%〜約25%の該化合物および薬学的に受容可能なビヒクルを含み、就寝に先立つ被験体の罹患皮膚領域への局所投与によって多汗症を処置するためのものである、化合物。
(項目3)
以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する、項目1に記載の使用:
a)前記被験体は、ヒトである;
b)汗の生成は、約25%〜約99%減少する;
c)前記組成物は、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンとして製剤化される;
d)汗の生成は、約8時間〜約24時間減少する;
e)Rは、メチルである;
f)前記組成物は、手掌領域、足底領域、鼠径領域、腋窩領域もしくは顔面領域から選択される解剖学的表面領域において前記被験体の皮膚に適用される;
g)汗の生成は、等価な濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与後に汗の生成が未処置のベースライン状態と比較して減少する量に実質的に等しい量減少する。
(項目4)
以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する、項目1または3に記載の使用:
a)汗の生成は、約30%〜約75%減少する;
b)前記組成物は、約2%〜約10%の前記化合物を含む、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンとして製剤化される;
c)汗の生成は、約8時間〜約12時間減少する;
d)Rは、エチルである。
(項目5)
以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する、項目1、3または4に記載の使用:
a)汗の生成は、約45%〜約60%減少する;
b)前記組成物は、70% エタノール中の前記化合物の5%溶液として製剤化される。
(項目6)
汗の生成は、約50%減少する、項目1、3、4または5に記載の使用。
(項目7)
前記局所投与は、前記被験体が起床後の朝に、前記組成物の第2の用量を投与することをさらに包含する、項目1、3、4、5または6に記載の使用。
(項目8)
前記化合物は、以下からなる群より選択される、項目1、3、4、5、6または7に記載の使用:
(i) 3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(ii) 3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(iii) (2R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(iv) (2R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(v) (2R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(vi) (2R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(vii) (2R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(viii) (2R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(ix) (2R,1’R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(x) (2R,1’S,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xi) (2R,1’R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xii) (2R,1’S,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xiii) (2R,1’R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xiv) (2R,1’S,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xv) (2R,1’R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;および
(xvi) (2R,1’S,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド。
(項目9)
以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する医薬組成物の調製において使用するための、項目2に記載の化合物:
a)該組成物は、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンとして製剤化される;
b)該組成物は、約2%〜約10%の前記化合物を含む;
c)該組成物は、70% エタノール中の前記化合物の約5%溶液を含む;
d)該組成物は、Rがメチルである化合物を含む。
(項目10)
医薬組成物の調製における使用のための項目2に記載の化合物であって、該化合物は
、以下からなる群より選択される、化合物:
(i) 3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(ii) 3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(iii) (2R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(iv) (2R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(v) (2R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(vi) (2R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(vii) (2R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(viii) (2R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(ix) (2R,1’R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(x) (2R,1’S,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xi) (2R,1’R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xii) (2R,1’S,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(エトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xiii) (2R,1’R,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xiv) (2R,1’S,3’S)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;
(xv) (2R,1’R,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド;および
(xvi) (2R,1’S,3’R)3−(2−シクロペンチル−2−フェニル−2−ヒドロキシアセトキシ)−1−(メトキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジニウムブロミド。