特許第6461220号(P6461220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461220
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】治具およびメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/00 20060101AFI20190121BHJP
   F16D 55/226 20060101ALI20190121BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20190121BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20190121BHJP
   B25B 27/02 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   F16D65/00 E
   F16D55/226 104F
   B66B5/00 D
   B66B11/08 G
   B25B27/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-64362(P2017-64362)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168866(P2018-168866A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 紀三郎
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−198454(JP,A)
【文献】 特開2008−019911(JP,A)
【文献】 特開昭60−049139(JP,A)
【文献】 実開昭54−074870(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00 − 71/04
B66B 5/00
B66B 11/08
B25B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ装置のメンテナンス用の四角い開口を通してブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、あるいは、前記ブレーキ装置の内部に挿入する際に用いる治具であって、
ウェブと、前記ウェブを挟んで対向する2つのフランジと、前記各フランジの各側端から外側に向かって延びる2つのつばと、を有するつば付溝形断面部材である本体と、
前記本体の前記ウェブに設けられた孔に差し込まれ、先端が前記ブレーキパッドに接続される長ねじと、
前記長ねじにねじ込まれるナットと、を含み、
2つの前記つばの前記ウェブと反対側の面を開口周縁のブレーキ装置外面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと反対側からねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、
2つの前記つばの前記ウェブの側の面を前記開口周縁のブレーキ装置内面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと前記ウェブとの間にねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部に挿入すること、
を特徴とする治具。
【請求項2】
請求項1に記載の治具であって、
2つの前記つばの先端間の長さは前記開口の幅よりも長く、一方の前記つばの先端と他方の前記フランジの外面の間の長さは前記開口の対角長さよりも短いこと、
を特徴とする治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の治具であって、
前記つばのウェブ側の面と前記ウェブのつば側の面との距離は、前記開口周縁の前記ブレーキ装置内面と前記開口周縁の前記ブレーキ装置外面との距離よりも長いこと、を特徴とする治具。
【請求項4】
ブレーキ装置のメンテナンス用の四角い開口を通してブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、あるいは、前記ブレーキ装置の内部に挿入するメンテナンス方法であって、
ウェブと、前記ウェブを挟んで対向する2つのフランジと、前記各フランジの各側端から外側に向かって延びる2つのつばと、を有するつば付溝形断面部材である本体と、前記本体の前記ウェブに設けられた孔に差し込まれ、先端が前記ブレーキパッドに接続される長ねじと、前記長ねじにねじ込まれるナットと、を含む治具を準備し、
2つの前記つばの前記ウェブと反対側の面を開口周縁のブレーキ装置外面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと反対側からねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、
2つの前記つばの前記ウェブの側の面を前記開口周縁のブレーキ装置内面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと前記ウェブとの間にねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部に挿入すること、
を特徴とするメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのブレーキパッドをブレーキ装置の内部から抜き出し、あるいはブレーキ装置の内部に挿入する際に用いる治具、および、この治具を用いたブレーキ装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには、巻き上げ機の回転を制動するためのブレーキ装置が設けられている。ブレーキ装置は、巻き上げ機と共に回転するブレーキディスクと、ブレーキディスクに押し付けられてブレーキディスクを制動するブレーキパッドと、ブレーキパッドをブレーキディスクに接離させるアクチュエーターとを含んでいる。ブレーキディスクは、定期点検の際にブレーキ装置の内部から取り外して調整したり、交換したりすることが必要となる。
【0003】
従来、ブレーキ装置の内部からブレーキパッド抜き出す場合には、ブレーキパッドに抜き出し用の棒部材を取り付けて、梃棒を使って棒部材を手前に引き抜いていた。また、ブレーキパッドをブレーキ装置の内部に挿入する場合には、棒部材をプラスチックハンマー等でたたき入れていた。このような場合、作業に大きな力が必要な上、棒部材や梃棒が変形してしまう場合があった。
【0004】
一方、ディスクブレーキのピストンを抜く工具として、ねじを利用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−198454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された工具では、部材を引き抜くことは可能でも、引き抜いた部材を挿入することは難しい。そこで、本発明は、簡便な構成で容易にブレーキパッドの抜き差しを可能とする治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の治具は、ブレーキ装置のメンテナンス用の四角い開口を通してブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、あるいは、前記ブレーキ装置の内部に挿入する際に用いる治具であって、ウェブと、前記ウェブを挟んで対向する2つのフランジと、前記各フランジの各側端から外側に向かって延びる2つのつばと、を有するつば付溝形断面部材である本体と、前記本体の前記ウェブに設けられた孔に差し込まれ、先端が前記ブレーキパッドに接続される長ねじと、前記長ねじにねじ込まれるナットと、を含み、2つの前記つばの前記ウェブと反対側の面を開口周縁のブレーキ装置外面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと反対側からねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、2つの前記つばの前記ウェブの側の面を前記開口周縁のブレーキ装置内面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと前記ウェブとの間にねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部に挿入すること、を特徴とする。
【0008】
本発明の治具において、2つの前記つばの先端間の長さは前記開口の幅よりも長く、一方の前記つばの先端と他方の前記フランジの外面の間の長さは前記開口の対角長さよりも短いこと、としてもよい。
【0009】
本発明の治具において、前記つばのウェブ側の面と前記ウェブのつば側の面との距離は、前記開口周縁の前記ブレーキ装置内面と前記開口周縁の前記ブレーキ装置外面との距離よりも長くしてもよい。
【0010】
本発明のブレーキ装置のメンテナンス用の四角い開口を通してブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、あるいは、前記ブレーキ装置の内部に挿入するメンテナンス方法は、ウェブと、前記ウェブを挟んで対向する2つのフランジと、前記各フランジの各側端から外側に向かって延びる2つのつばと、を有するつば付溝形断面部材である本体と、前記本体の前記ウェブに設けられた孔に差し込まれ、先端が前記ブレーキパッドに接続される長ねじと、前記長ねじにねじ込まれるナットと、を含む治具を準備し、2つの前記つばの前記ウェブと反対側の面を開口周縁のブレーキ装置外面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと反対側からねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部から抜き出し、2つの前記つばの前記ウェブの側の面を前記開口周縁のブレーキ装置内面に当て、前記長ねじの前記ブレーキパッドと前記ウェブとの間にねじ込んだ前記ナットを回転させて前記開口を通して前記ブレーキパッドを前記ブレーキ装置の内部に挿入すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
簡便な構成で容易にブレーキパッドの抜き差しを可能とする治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エレベーターのブレーキ装置の側断面図である。
図2図1に示すブレーキ装置のA−A断面である。
図3】ブレーキパッドを抜き出すために図1に示すブレーキ装置に治具を取り付けた状態を示す側断面図である。
図4図1に示すブレーキ装置に治具を取り付けた状態を開口の側からみた側面図である。
図5】ブレーキパッドを差し込むために図1に示すブレーキ装置に治具を取り付けた状態を示す側断面図である。
図6】治具を開口の中にセットする手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本実施形態の治具50について説明する。最初に治具50を用いてブレーキパッド21の抜き出し、挿入を行うエレベーターのブレーキ装置10の構成について簡単に説明する。
【0014】
図1図2に示すように、ブレーキ装置10は、ケーシング11と、ブレーキパッド21をブレーキディスク16に対して接離させる駆動装置20とを備えている。ケーシング11は、図示しない巻き上げ機と共に回転するブレーキディスク16を回転自在に支持するベースに固定されている。ケーシング11は内部15が空洞の箱型で、側面に駆動装置20がとりつけられている。駆動装置20は、先端にブレーキパッド21が係合してブレーキディスク16に対して接離する方向に進退する段付スライダ23と、段付スライダ23の段部に係合する駆動板24と、ケーシング11に取り付けられて駆動板24を吸引する電磁コイル25と、ケーシング11に取り付けられて駆動板24をブレーキディスク16に向かって付勢するコイルスプリング26とで構成される。
【0015】
図1図2に示すように、ブレーキパッド21の段付スライダ23の側の面には、ダブテール型の溝22aが設けられている。また、段付スライダ23の先端には、溝22aにはまり込む傘型の係合突起22bが設けられている。図2に示すように、ブレーキパッド21の溝22aに段付スライダ23の係合突起22bを係合させることによって、段付スライダ23と共に移動する。
【0016】
電磁コイル25に通電していない状態では、コイルスプリング26は、駆動板24を介して段付スライダ23をブレーキディスク16に向かって付勢してブレーキパッド21をブレーキディスク16に押し付けている。電磁コイル25に通電すると、電磁コイル25が駆動板24を吸引する力がコイルスプリング26の付勢力よりも大きくなるので、ブレーキパッド21は、ブレーキディスク16の表面から離れる。
【0017】
図1図2に示すように、ケーシング11には、ブレーキパッド21の取り付け、取り外しを行うための四角い開口12が設けられている。開口12の周縁のケーシング11の内面14は平面となっている。また、開口12の周縁のケーシング11の外面13は平面状の四角フランジとなっている。
【0018】
次に、図3図4を参照しながら、治具50の構成について説明する。図3図4に示すように、治具50は、つば付溝形断面部材である本体30と、長ねじ34と、ナット36とで構成される。
【0019】
本体30は、ウェブ31と、ウェブ31を挟んで対向する2つのフランジ32と、各フランジ32の各側端から外側に向かって延びる2つのつば33と、を有するつば付溝形断面部材である。本体30は、例えば、帯状の鋼板をプレス等によって曲げ加工したものでよい。本体30のウェブ31には、長ねじ34を通す孔35が設けられている。
【0020】
次に治具50を用いてブレーキ装置10の内部15からブレーキパッド21を抜き出す際の手順の例について説明する。
【0021】
まず、図3に示すように、長ねじ34の先端をケーシング11の内部15に挿入して先端をブレーキパッド21の端面に設けられたねじ穴にねじ込んで長ねじ34とブレーキパッド21とを接続する。次に、本体30の孔35に長ねじ34を通し、図3図4に示すようにつば33のウェブ31と反対側の面を開口12の周縁のケーシング11の外面13の上に載置する。また、ブレーキパッド21と反対側の後端から長ねじ34にナット36をねじ込んでおく。
【0022】
そして、スパナ等によりナット36がウェブ31に当たるようにねじ込むと、長ねじ34はケーシング11に対して図3中の矢印の方向に移動する。長ねじ34が矢印の方向に移動すると、長ねじ34の先端に接続されたブレーキパッド21もケーシング11に対して矢印の方向に移動し、ブレーキパッド21の溝22aが段付スライダ23の先端の係合突起22bから抜ける。
【0023】
溝22aが係合突起22bから抜けたら、長ねじ34を開口12から引き出してブレーキ装置10の内部15からブレーキパッド21を抜き出す。これで、ブレーキパッド21の抜き出しは終了する。
【0024】
次に、図5図6を参照しながら、ブレーキパッド21をブレーキ装置10の内部15に挿入する手順の例について説明する。
【0025】
まず、長ねじ34の先端をブレーキパッド21のねじ穴にねじ込んでおく。また、ナット36を長ねじ34にねじ込んでおく。次に、ブレーキパッド21の溝22aが係合突起22bに係るように長ねじ34を保持しながら、ウェブ31の孔35に長ねじ34を通す。これにより、ナット36は、ブレーキパッド21とウェブ31との間に配置される。
【0026】
図6の一点鎖線に示すように、一方のつば33の先端と他方のフランジ32の外面の間の長さL2は開口12の対角長さDよりも短い。このため、本体30を開口12の対角線方向にして、一方のつば33をケーシング11の内面14に沿うようにケーシング11の内部15に挿入すると他方のつば33も開口12からケーシング11の内部15に落とし込むことができる。
【0027】
また、図6の実線に示すように、2つのつば33の先端間の長さL1は開口12幅Wよりも長くなっている。このため、他方のつば33を回転させると、2つのつば33のウェブ31の側の面が共にケーシング11の内面14に接するようにする。
【0028】
また、図5に示すように、つば33のウェブ31の側の面とウェブ31のつば33の側の面との距離Hは、開口12の周縁のブレーキ装置10の内面14と開口12の周縁のブレーキ装置10の外面13との距離tよりも長い。このため、つば33のウェブ31の側の面が内面14に接するようにセットすると、外面13とウェブ31との間には距離Sの隙間ができる。
【0029】
この隙間からスパナ等を差し込んで、ナット36を緩める方向に回転させると、長ねじ34はケーシング11に対して図5中の矢印の方向に移動する。長ねじ34が矢印の方向に移動すると、長ねじ34の先端に接続されたブレーキパッド21もケーシング11に対して矢印の方向に移動し、ブレーキパッド21の溝22aが段付スライダ23の先端の係合突起22bに嵌まり込んでいく。
【0030】
そして、係合突起22bが溝22aの奥まで入り込んだら、長ねじ34をブレーキパッド21から外し、本体30と共に開口12からブレーキ装置10の外に引き出すとブレーキパッド21の挿入が終了する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の治具50は、簡便な構成で容易にブレーキパッド21の抜き差しが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
10 ブレーキ装置、11 ケーシング、12 開口、13 外面、14 内面、15 内部、16 ブレーキディスク、20 駆動装置、21 ブレーキパッド、22a 溝
22b 係合突起、23 段付スライダ、24 駆動板、25 電磁コイル、26 コイルスプリング、30 本体、31 ウェブ、32 フランジ、35 孔、36 ナット、50 治具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6