(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間層には、前記発熱抵抗体又は電極体に電気的に接続され、前記中間層の上面から下面まで延びる少なくとも1つのビアが設けられ、前記基層には、前記基層の下面から前記ビアに向けて開口する少なくとも1つの接続孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック装置。
前記中間層には、前記発熱抵抗体又は電極体及び前記導線に電気的に接続され、前記中間層の上面から下面まで延びる少なくとも1つのビアが設けられ、前記導線が前記ビア及び前記接続導体を接続していることを特徴とする請求項10に記載のセラミック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックヒータの性能は、内部のヒータ線の配線又はパターンによって左右され、細かく緻密なヒータパターンを形成可能であることが望まれる。特に、ヒータ線が細いと抵抗値が上がり、発熱量自体を効率的に向上させることができる。しかしながら、特許文献1のような従来技術では、下部成形体上に平面状に形成されたヒータ線上にセラミックス粉体を充填して加圧する工程において、ヒータ線の平面パターンが細かく緻密であるほど、ヒータ線が断線し易いという問題が挙げられる。特には、加圧成型した下部成形体の上面は、脆弱であり、平坦面を形成及び維持することが困難であることから、ヒータ線がセラミックス粉体と下部成形体とによって挟圧されることで、平面形パターンを維持できず、変形したり、断線したりする虞があった。また、特許文献1のセラミックヒータでは、ヒータ線を埋設したセラミックス成型体を焼結する工程において、セラミックス成型体が収縮変形することが避けられず、同様に焼結時にヒータ線が変形したり、断線したりする虞があった。それ故、従来技術では、ヒータ線の断線を避けるべく、ある程度太い又は厚いパターンが採用され、ヒータ線のパターンを複雑化又は緻密化し難かったことが課題であった。
【0006】
また、ヒータ線のパターンが複雑化又は緻密化していくと、パターンの線が増えて始端及び終端が増えたり、始端・終端周辺に外部接続端子のスペースを割くことが難しくなったりする。そして、パターンが複雑化しても、ヒータを搭載する装置の都合上、外部接続端子を特定の位置にする、又は特定のエリアに集約するよう設計することが求められる。しかし、特許文献1のセラミックヒータでは、ヒータ線への電力供給のため、ヒータプレートを切削加工してヒータ線に直付けされるようにして電極端子が形成される。それ故、従来技術では、ヒータ線のパターンの複雑化又は緻密化に対応できないこともまた課題として挙げられる。
【0007】
さらに、特許文献1のセラミックヒータでは、セラミック焼結体内にヒータ線が埋め込まれるが、焼成後、X線撮影のような特殊な装置を使わなければ、ヒータ線が適切に配置されているかを検査することができない。特には、ヒータ線の平面パターンが傾いているかどうか、ヒータ線がどの程度の深さに位置しているかを事後的に目視で検査することが不可能であった。すなわち、ヒータパターンが所定の平面に沿って配置されているかを事後的に目視検査可能なセラミックヒータを提供することも追加の課題として挙げられる。なお、当該課題は、セラミックヒータ以外の静電チャック用電極装置、RF電極装置など他の用途のセラミック装置にも共通している。
【0008】
本発明の目的は、上記課題の少なくとも1つを解決する、セラミック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態のセラミック装置は、セラミック焼結体からなり、少なくとも、基層、前記基層上面に積層された中間層及び前記中間層上面に積層された被覆層を備えるセラミック基体と、
平面状に延在する所定のパターンを有し、前記セラミック基体に埋設された通電可能な発熱抵抗体又は電極体と、を備え、
前記中間層の上面には水平面が定められ、前記中間層の上面に沿って前記発熱抵抗体又は電極体が配置されるとともに、前記被覆層が前記発熱抵抗体又は電極体を被覆するように前記中間層上面に積層されたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明のセラミック装置によれば、セラミック基体が基層、中間層及び被覆層から構成され、平面状のパターンを有する発熱抵抗体又は電極体が、水平面を定める中間層上面に沿って配置されている。そして、被覆層が発熱抵抗体又は電極体とともに中間層上面を被覆している。つまり、発熱抵抗体又は電極体が中間層上面の水平面に沿って配置されていることから、平面状のパターンが歪んだり、発熱抵抗体又は電極体が断線したりすることが防止され得る。これにより、従来よりも細かく緻密なパターンを描くことが可能となる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記中間層には、前記発熱抵抗体又は電極体に電気的に接続され、前記中間層の上面から下面まで延びる少なくとも1つのビアが設けられ、前記基層には、前記基層の下面から前記ビアに向けて開口する少なくとも1つの接続孔が設けられてもよい。すなわち、中間層の上面に発熱抵抗体又は電極体が配置され、中間層を厚さ方向に貫通するビアの端面が中間層の下面に配置され、下層を貫通する接続孔がビアに連通している。これにより、外部接続端子をパターンの始端・終端の位置に直付けすることなく、電気接続部を外部に露出させることができる。したがって、本発明は、パターンの複雑化・緻密化への対応を可能とするものである。
【0012】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記中間層と前記基層との間で平面状に延在する所定の導線パターンを有する導線をさらに備え、前記中間層には、前記導線から前記中間層の上面に向けて前記中間層の厚さ未満の長さで延びる少なくとも1つの接続導体がさらに設けられ、前記基層には、前記基層の下面から前記接続導体に向けて開口する少なくとも1つの接続孔が設けられてもよい。すなわち、基層の接続孔から中間層の下面側に配置された接続導体を介し、中間層の下面側に配置された導線に電力を供給することが可能となる。そして、導線の導線パターンは発熱抵抗体又は電極体のパターンと独立して配線可能であることから、導線が発熱抵抗体又は電極体のパターンに干渉することはない。また、接続導体の上面が、発熱抵抗体又は電極体のパターンと絶縁されているので、導線と発熱抵抗体又は電極体とがセラミック基体内部でショートすることも防止される。さらに、発熱抵抗体又は電極体と独立した又は発熱抵抗体又は電極体に関連した各種目的・用途に応じた所定の導線パターンを有する導線による回路を追加することができる。その結果、パターンの複雑化・緻密化に対応した設計が可能となる。
【0013】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記中間層下面には水平面が定められ、前記中間層の下面に沿って前記導線が配置されてもよい。すなわち、導線が中間層下面の水平面に沿って配置されていることから、平面状の導線パターンが歪んだり、導線が断線したりすることが防止され得る。これにより、従来よりも細かく緻密な導線パターンを描くことが可能となる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記接続導体は、丸みを帯びた上端部を有してもよい。すなわち、接続導体の上端部の先端の角が丸くなっているため、ヒータ使用時に熱応力が生じても、クラックが発生する起点となる虞が軽減される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記基層、前記中間層及び前記被覆層の各境界において、隣接する層が隙間なく密着していてもよい。すなわち、各層が隙間なく密着することにより、絶縁不良が発生せず、熱伝導にロスが発生することが抑えられる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記中間層の明度が前記基層及び前記被覆層の明度と異なってもよい。すなわち、発熱抵抗体又は電極体が中間層の上面に沿って配置されていることから、側方から境界線を目視すれば、パターンがどの深さにあるのか、傾いていないかどうかを容易に判別することができる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、発熱抵抗体又は電極体がパターン化された導体箔からなってもよい。また、導線がパターン化された導体箔からなってもよい。さらに、電極体が静電チャック用電極又はRF電極であってもよい。
【0018】
本発明の別実施形態のセラミック装置は、
セラミック焼結体からなり、少なくとも、基層、前記基層上面に積層された中間層及び前記中間層上面に積層された被覆層を備えるセラミック基体と、
前記中間層と前記被覆層との間で延在する所定のパターンを有し、前記セラミック基体に埋設された通電可能な発熱抵抗体又は電極体と、
前記中間層と前記基層との間で延在する所定の導線パターンを有し、前記発熱抵抗体又は電極体と異なる層で前記セラミック基体に埋設された導線と、を備え、
前記中間層には、前記導線から前記中間層の上面に向けて前記中間層の厚さ未満の長さで延びる少なくとも1つの接続導体がさらに設けられ、
前記基層には、前記基層の下面から前記接続導体に向けて開口する少なくとも1つの接続孔が設けられていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、本発明のセラミック装置によれば、基層の接続孔から中間層の下面側に配置された接続導体を介し、中間層の下面側に配置された導線に電力を供給することが可能となる。そして、導線の導線パターンは発熱抵抗体又は電極体のパターンと独立して配線可能であることから、導線が発熱抵抗体又は電極体のパターンに干渉することはない。また、接続導体の上面が、発熱抵抗体又は電極体のパターンと絶縁されているので、導線と発熱抵抗体又は電極体とがセラミック基体内部でショートすることも防止される。さらに、発熱抵抗体又は電極体と独立した又は発熱抵抗体又は電極体に関連した各種目的・用途に応じた所定の導線パターンを有する導線による回路を追加することができる。その結果、パターンの複雑化・緻密化に対応した設計が可能となる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態のセラミック装置によれば、上記構成において、前記中間層には、前記発熱抵抗体又は電極体及び前記導線に電気的に接続され、前記中間層の上面から下面まで延びる少なくとも1つのビアが設けられ、前記導線が前記ビア及び前記接続導体を接続してもよい。すなわち、基層の接続孔から中間層の下面側に配置された導線及び接続導体を介し、ビアを経て、中間層の上面側に配置された発熱抵抗体又は電極体に電力を供給することが可能となる。特には、導線の導線パターンはパターンと独立して配線可能であることから、接続導体及び接続孔の位置の任意の平面位置に定めることが可能となる。つまり、導線及び接続導体を介することで、発熱抵抗体又は電極体の始端・終端の位置とは無関係に電力供給部を特定の位置にする、又は特定のエリアに集約するように設計することができる。よって、本発明のセラミック装置は、設計の自由度を拡張するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセラミック装置は、発熱抵抗体又は電極体のパターンをより一層、複雑化及び緻密化することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態のセラミック装置は、全体として所定厚の円盤形状を有し、半導体製造装置に搭載されて製造工程でウェハ等の対象を加熱する用途に使用されるセラミックヒータである。しかしながら、ここで説明するセラミックヒータは、本発明を具現化した一例にすぎず、本発明のセラミック装置が種々の用途に使用可能であることはいうまでもない。
【0024】
図1は、セラミックヒータ100を概略的に示す部分断面斜視図である。
図2は、セラミックヒータ100の側面図である。
図3及び
図4は、セラミックヒータ100のA−A,B−B断面図である。なお、
図1乃至
図4は、説明の便宜上、セラミックヒータ100の構造を模式的に表現したものであり、各図の厳密な整合性を問わない。
【0025】
図1に示すとおり、セラミックヒータ100は、セラミック焼結体からなる円盤状のセラミック基体110と、セラミック基体110に埋設されて通電により発熱するヒータ線120と、ヒータ線120と厚さ方向に異なる層でセラミック基体110に埋設された導線130と、を備える。セラミックヒータ100は、その上面及び下面が平行且つ平滑な水平面をなすように形成される。
【0026】
セラミック基体110は、セラミック焼結体からなる。本実施形態では、セラミック基体110は、窒化アルミニウム(AlN)原料粉末の焼結体である。なお、セラミック基体を構成するセラミック材料は、窒化ケイ素(SiN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)等であってもよい。また、セラミック基体110は、
図2に示すように、下層に配置される所定厚の基層111、該基層111上面に積層された中間層112、及び、該中間層112上面に積層された被覆層113からなる三層構造を有している。各層は隙間なく積層されている。各層の境界線は、セラミックヒータ100の上面及び下面と平行に延びている。中間層112の上面及び下面には、(セラミックヒータ100の上面及び下面と平行に延在する)平坦且つ平滑な水平面が定められている。換言すれば、中間層112の上面及び下面は、実質的に凹凸のない平面であるが、基層111の上面には、導線130を収容するための凹部が形成されているとともに、被覆層113の下面には、ヒータ線120を収容するための凹部が形成されている。つまり、基層111が導線130の側面及び下面に密着するように導線130を内部に埋め込み、被覆層113がヒータ線120の側面及び上面に密着するようにヒータ線120を内部に埋め込んでいる。
【0027】
また、セラミック基体110は、
図2の側面視において模式的に示すように、各層で異なる明度を有している。具体的には、中間層112は、他の基層111及び被覆層113に比べて、灰色の濃淡において、より明るい色を有している。すなわち、基層111、中間層112及び被覆層113は一体的に形成されているが、その明度によって各層の境界を判断することができる。換言すると、目視によって、基層111、中間層112及び被覆層113が適切に平行に配置されているかを検査することが可能である。後述するように、製造工程において、基層111及び被覆層113と、中間層112との間に焼成時間の差を意図的に設けることによって、層間に明度差を形成した。そして、本実施形態では、基層111及び中間層112の厚みがほぼ等しく、被覆層113の厚みが基層111及び中間層112の厚みの約2倍である。つまり、ヒータ線120が配置される中間層112と被覆層113との間の境界が、セラミックヒータ100の厚み方向の略中央に位置するように構成されている。これにより、セラミックヒータ100全体が均一に発熱可能である。
【0028】
また、
図3に示すように、中間層112には、該中間層112の上面から下面まで延びる複数(本実施形態では2)のビア114が設けられている。ビア114は、中間層112に隙間なく埋設されている。また、ビア114の上端面及び下端面は中間層112の上面及び下面と同一平面上に延在している。換言すると、ビア114は基層111及び被覆層113には埋入していない。そして、ビア114は、中間層112の上面と下面とを電気的に接続する導体からなる。導体として、一般に、モリブデン、タングステン、ニオブ及びタンタルから選択される1種以上の導電性の高融点金属もしくはこれらを1種以上含む合金が選択されることが好ましい。本実施形態では、ビア114は、中間層112を厚さ方向に貫通するモリブデンのピンからなる。しかしながら、ビアは、ビアホールに金属メッキしたものであってもよい。
【0029】
そして、中間層112には、該中間層112の下面から上面に向けて中間層112の厚さ未満の長さで延びる少なくとも1つ(本実施形態では1)の接続導体115が設けられている。接続導体115は、中間層112に隙間なく埋設されている。また、接続導体115下端面は、中間層112の下面と同一平面上に延在している。他方,接続導体115の上端部は、
図3の部分拡大図に示すように、丸みを帯びている。すなわち、接続導体115の上端部の先端の角が丸くなっているため、ヒータ使用時に熱応力が生じても、中間層112内部にクラックが発生する起点が生じることが抑えられる。
【0030】
さらに、基層111には、該基層111を厚さ方向に貫通し、該基層111の下面からビア114に向けて開口する少なくとも1つの接続孔116,117と、基層111の下面から接続導体115に向けて開口する少なくとも1つの接続孔118とが設けられている。ビア用の接続孔116,117は、基層111の下面側からビア114に連通し、電力供給用の外部端子のための接続ポートを提供する。接続導体用の接続孔118は、基層111の下面側から接続導体115に連通し、同様に外部端子のための接続ポートを提供する。
【0031】
ヒータ線120は、平面状に延在する所定のヒータパターンを有する面状発熱抵抗体である。発熱抵抗体として、一般に、モリブデン、タングステン、ニオブ及びタンタルから選択される1種以上の高融点金属もしくはこれらを1種以上含む合金が選択され得る。そして、本実施形態では、モリブデンが選択された。また、本実施形態では、ヒータ線120は、パターン化された導体箔からなる。一般的に、ヒータ線120の断面積が小さいほど、抵抗値が相対的に上昇し、より高い発熱量を得られる。
図4に示すように、ヒータ線120は、細幅且つ薄厚の導線が複雑且つ緻密に配線されたヒータパターン部121と、該ヒータパターン部121の始端である始端部122と、該ヒータパターン部121の終端である終端部123とを備える。なお、
図4に示したヒータパターンは、例示にすぎず、当業者によって任意の形状のヒータパターンが選択され得る。換言すると、
図4の例示的なヒータパターンは、その位置関係において
図1乃至
図3に対して整合的に示したものではない。云うまでもないが、径方向の両端に始端及び終端が配置されるようにパターンが設計されてもよいし、中心付近に始端及び終端が配置されてもよい。
【0032】
ヒータ線120は、水平面である中間層112の上面に載置され、その平面形状が中間層112上面に沿って維持されている。このとき、中間層112上面及びヒータ線120下面が隙間なく密着している。また、ヒータ線120は、該中間層112上面に積層された被覆層113によって被覆されている。このとき、被覆層113とヒータ線120及び中間層112とが隙間なく密着している。すなわち、ヒータ線120のヒータパターン部121は、中間層112の上面に沿って平面形状を維持しつつ延在している。換言すると、中間層112上面を平面形状に制御したことによって、ヒータ線120が厚さ方向に屈曲することなく、ヒータ線120の平面形状が確実に維持されている。
【0033】
導線130は、平面状に延在する所定の導線パターン(図示せず)を有する導体である。導線130は、接続対象に電気的に接触する接続部131を有する。導体として、一般に、モリブデン、タングステン、ニオブ及びタンタルから選択される1種以上の高融点金属もしくはこれらを1種以上含む合金が選択され得る。そして、本実施形態では、モリブデンが選択された。本実施形態では、導線130は、中間層112の下層側から上層側のヒータ線120に電力を供給する経路として用いられる。また、本実施形態では、導線130は、パターン化された導体箔からなる。なお、導線130は、それ自体を発熱させることを目的としなくてもよく、ヒータ線120よりも発熱しないように相対的に断面積が大きく設計され得る。あるいは、導線130の導体パターンは、所定の機能を有する回路部やヒータ線のような発熱部を一部又は全部に含んでもよい。
【0034】
導線130は、水平面である中間層112の下面に配置され、その平面形状が中間層112下面に沿って維持されている。このとき、中間層112下面及び導線130上面が隙間なく密着している。また、導線130は、該中間層112下面に形成された基層111に埋設されている。このとき、基層111と導線130及び中間層112とが隙間なく密着している。すなわち、導線130の導線パターンは、中間層112の下面に沿って平面形状を維持しつつ延在している。換言すると、中間層112下面を平面形状に制御したことによって、導線130が厚さ方向に屈曲することなく、導線130の平面形状が確実に維持されている。
【0035】
本実施形態のセラミックヒータ100において、ヒータ線120の始端部122下面に一方のビア114の上端面が接触し、導線130の一端(
図3の左側)の接続部131上面にビア114の下端面が接触することによって、ビア114がヒータ線120と導線130を電気的に接続している。また、導線130の他端(
図3の右側)の接続部131上面に接続導体115の下端が接触している。つまり、ビア114及び接続導体115が導線130によって電気的に接続されている。なお、接続導体115の上端部が中間層112の上面に露出していないので、ヒータ線120と導線130とがショートする虞がない。そして、接続孔116,118のいずれかを選択して外部電源に接続された外部端子(一方の電極端子)を差し込むことにより、ヒータ線120の始端部122に外部電源を電気的に接続することができる。また、ヒータ線120の終端部123下面に他方のビア114の上端面が接触し、ビア114下端面が接続孔117を介して中間層112下面側に臨んでいる。接続孔117に外部端子(他方の電極端子)を差し込むことにより、ヒータ線120の終端部123に外部電源を電気的に接続することができる。すなわち、基層111下面で開口した接続孔116〜118を介して、セラミックヒータ100に外部電源から電力を供給することが可能である。
【0036】
続いて、本実施形態のセラミックヒータ100を製造する方法について説明する。本実施形態のセラミックヒータ100の製造方法は、ビア114及び接続導体115を含む中間層112に対応するセラミック焼結体を形成する工程と、セラミック焼結体の上面及び下面を研磨して水平面を有する中間層112の前駆焼結体を得る工程と、前駆焼結体の上下研磨面にヒータ線120及び導線130を形成する工程と、前駆焼結体の上面側及び下面側に被覆層及び基層をそれぞれ形成する工程と、接続孔を基層111に形成する工程とを含む。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0037】
まず、セラミックヒータ100の径に対応する型にセラミック原料粉末(本実施形態では、AlN粉末)を投入するとともに、型の中で高融点金属のピンを垂直に立つように所定の位置に配置する。ピンは高融点金属の粉末を使用した成形体でもよい。ピンは、ビア114及び接続導体115の設置位置に配置される。ピンの径は任意に選択され得る。そして、加圧した状態でセラミック原料粉末を窒素雰囲気中で所定時間(数時間)焼成する。例示的には、セラミック原料粉末を焼成可能な温度は約1750〜2000度であり、加圧条件は約150〜250kgf/cm
2とした。これにより、中間層112に対応するセラミック焼結体112’を得た(
図5(a)参照)。加圧焼成(ホットプレス)の導入により、ピンが焼成時に動くことを防止し、ピンを所定の位置に正確に配置することができる。特には、上下から加圧したまま焼成するため、焼成時の焼結体の収縮が、上下方向のみで平面方向にほとんど収縮しないため、端子導体・ビア導体の位置精度が高くなる。
【0038】
なお、本工程において、ピンを焼成前に配置することにより、焼結基板へ穴開けするポストファイア法と比べて、例えば、直径1mm以上のような大径のビア・導体を形成することが可能である。大径のビアを使用する場合のメリットとして、(1)大電流が流せること、(2)ビア・接続導体とヒータ線・導線との接続面積が増えて、導通の信頼性が上がること、(3)位置ずれによるビア・接続導体とヒータパターン・導体パターンとの接続不良や接続孔形成時の導通不良のリスクが低減することなどが挙げられる。
【0039】
次に、型からセラミック焼結体112’を取り出して、
図5(a)の点線に沿って、ビア114に対応するピンの上端面及び下端面が露出し、且つ、接続導体115に対応するピンの下端面が露出するようにセラミック焼結体112’の上面及び下面を研磨して、セラミック焼結体112’を所定厚さに調整した。これにより、上面及び下面に水平面(研磨面)が形成された中間層112の前駆焼結体112”を得た。そして、
図5(b)に示すように、前駆焼結体112”の各研磨面(上面及び下面)にシートパターン状のヒータ線120及び導線130の導体箔を所定の位置に載置する(配置する)。なお、ヒータ線及び導線は、蒸着やエッチング、スクリーン印刷など他の形成手段によって形成されてもよい。
【0040】
次いで、基層111に対応する量のセラミック原料粉末を型に投入して、プレス成型し、基層111の前駆体111’を形成する。
図6(a)に示すように、プレス成型したセラミック原料粉末の上にヒータ線120及び導線130を貼り付けた中間層112の前駆焼結体112”を載置する。さらに、前駆焼結体112”上に被覆層113に対応する量のセラミック原料粉末を投入してプレス成型し、被覆層113の前駆体113’を形成する。前駆焼結体112”をセラミック原料粉末で挟圧することにより、前駆焼結体112”の硬質な水平面に沿って配置されたヒータ線120及び導線130がセラミック原料粉末中に埋め込まれる。
【0041】
そして、
図6(b)に示すように、カーボンプレートをセラミック原料粉末上に載せて、加圧した状態でセラミック原料粉末を窒素雰囲気中で所定時間(数時間)、焼成する。例示的には、セラミック原料粉末を焼成可能な温度は約1750〜2000度であり、加圧条件は約150〜250kgf/cm
2とした。前駆焼結体112”がセラミック原料粉末の成型体と比べて十分に硬質であることから、加圧時にヒータ線120及び導線130が変形することなく水平面に沿って平面形状に維持される。その結果として、ヒータ線120及び導線130を断線や変形させることなく、基層111、中間層112及び被覆層113の3層構造を有するセラミック基体110が得られる。また、加圧焼成の導入により、ビア114及び接続導体115と、ヒータ線120及び導線130との相対位置が焼成時に変動することを防止することができる。特には、上下から加圧したまま焼成するため、焼成時の焼結体の収縮が上下方向のみで平面方向にほとんど収縮しないため、各部材の面内の位置精度が高くなる。位置精度の向上により、ビア114、接続導体115、ヒータ線120及び導線130間の接続不良や、接続孔116〜118の形成時の導通不良のリスクを低減できる。
【0042】
そして、セラミック基体110の表面及び側面を研磨する。中間層112が2度の焼成工程を経て形成されることにより、中間層112の明度が基層111及び被覆層113の明度よりも高くなる。そして、中間層112と基層111及び被覆層113との間の境界を目視することによって、ヒータ線120及び/又は導線130が水平方向からずれているかどうかを検査することができる。中間層112が傾斜していると、セラミックヒータ100の外面とヒータ線120との距離が変動することから、所望のヒータ性能を得られない場合がある。万が一、中間層112が傾斜してしまっても、境界線を基準としてセラミック基体110の外面を研磨すれば、セラミック基体110上面とヒータ線120のヒータパターンとを平行に調整することができる。
【0043】
続いて、ビア114、接続導体115(又は導線130との接点部分)に連通するように、基層111の下面に接続孔116〜118を形成する。そして、接続孔116〜118を介して、搭載先の装置の外部電源に合わせて、給電用の金属端子をセラミックヒータ100に接続することができる。
【0044】
なお、上記実施例の製造方法は、一例にすぎず、本発明の技術範囲内であれば、任意に置換、省略及び/又は追加可能である。
【0045】
以下、本発明に係る一実施形態のセラミックヒータ100における作用効果について説明する。
【0046】
本実施形態のセラミックヒータ100によれば、セラミック基体110が基層111、中間層112及び被覆層113から構成され、平面状のヒータパターンを有するヒータ線120が、水平面を定める中間層112上面に沿って配置されている。そして、被覆層113がヒータ線120とともに中間層112上面を被覆している。つまり、ヒータ線120が中間層112上面の水平な研磨面に沿って配置されていることから、平面状のヒータパターンが歪んだり、ヒータ線120が断線したりすることが防止され得る。これにより、従来よりも細かく緻密なパターンを描くことが可能となる。また、中間層112の明度が基層111及び被覆層113の明度と異なっていることにより、側方から境界線を目視すれば、ヒータ線120がどの深さにあるのか、又は、傾いていないかどうかを、特殊な装置を使用することなく、容易に判別することができる。さらに、本実施形態のセラミックヒータ100は、基層111の接続孔116〜118から中間層112の下面側に配置された導線120及び接続導体115を介し、ビア114を経て、中間層112の上面側に配置されたヒータ線120に電力を供給することが可能である。特には、導線130の導線パターンはヒータパターンと独立して配線可能であることから、接続導体115及び接続孔118の位置の任意の平面位置に定めることが可能となる。つまり、導線130及び接続導体115を介することで、ヒータ線130の始端・終端の位置とは無関係に電力供給部を特定の位置にする、又は特定のエリアに集約するよう設計することができる。その結果、本実施形態のセラミックヒータ100は、ヒータパターンの複雑化・緻密化に対応することができる。
【0047】
[別実施形態・変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の複数の変形例を説明する。各実施形態において、下二桁が共通する構成要素は、特定のない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0048】
(1)本発明のセラミック装置は、上記実施形態に限定されない。
図7のセラミック装置200では、該中間層212の上面から下面まで延びる2つのビア214,214が設けられているとともに、該中間層212の下面から上面に向けて中間層212の厚さ未満の長さで延びる1つの接続導体215が設けられている。一方(
図7の左側)のビア214の下方には、接続孔が形成されておらず、他方(
図7の右側)のビア214の下方に接続孔216が形成されている。接続導体215は他方のビア214に近接配置されている。また、接続導体215の下方に接続孔218が形成されている。そして、導線230がビア214及び接続導体215を接続している。すなわち、本変形例のセラミック装置200は、給電用ポート(又は端子)を集約させたものである。
【0049】
(2)本発明のセラミック装置は、上記実施形態に限定されない。
図8のセラミック装置300では、該中間層312の上面から下面まで延びる2つのビア314,314が設けられているとともに、該中間層312の下面から上面に向けて中間層312の厚さ未満の長さで延びる2つの接続導体315,315が設けられている。接続導体315,315はビア314,314から離れて配置されているものの、接続導体315,315が互いに集約して配置されている。両方のビア314,314の下方には、接続孔が形成されておらず、両方の接続導体315,315の下方にのみ接続孔318,318が形成されている。そして、2つの導線330,330が隣接するビア314,314及び接続導体315,315を接続している。すなわち、本変形例のセラミック装置300は、発熱抵抗体又は電極体のパターン(又はビア)の位置に寄らず、給電用ポート(又は端子)を任意の位置に集約させたものである。
【0050】
(3)本発明のセラミック装置は、上記実施形態に限定されない。
図9のセラミック装置400では、該中間層412の上面から下面まで延びる2つのビア414,414が設けられているとともに、該中間層412の下面から上面に向けて中間層412の厚さ未満の長さで延びる2つの接続導体415,415が設けられている。両方のビア414,414の下方に接続孔416,417が形成され、両方の接続導体415,415の下方に接続孔418,418が形成されている。そして、導線430が接続導体415,415同士を接続し、ビア416,417とは電気的に接続されていない。すなわち、本変形例のセラミック装置400のように、発熱抵抗体又は電極体のパターンと独立した機能・用途を有する導線パターンを有する導線430の回路が個別に配置又は追加されてもよい。
【0051】
(4)本発明のセラミック装置は、上記実施形態に限定されない。
図10のセラミック装置500のように、導線及び接続導体が省略されてもよい。このような簡易な構成のセラミック装置500であっても、本発明の技術的思想の下、従来よりも発熱抵抗体又は電極体のパターンの複雑化・緻密化を達成するものである。
【0052】
(5)本発明のセラミック装置の形状寸法は、上記実施形態に限定されない。例えば、セラミック装置は円盤状でなくてもよく、矩形状や楕円形や他の多角形状などの任意の形状から選択されてもよい。また、各層の相対的な厚みや径は、用途等に応じて任意に設定することが可能である。さらに、セラミック基体は、3層構造に限定されず、上下に新たな層が追加されてもよい。
【0053】
(6)上記実施形態のセラミック装置では、各層の明度が焼成回数又は時間によって付加されているが、各層の材料又は成分を変更することによって各層の明度を変更してもよい。
【0054】
(7)上記実施形態のセラミック装置では、その製造方法において、中間層となるセラミック焼結体を基層及び被覆層となるセラミック原料粉末で挟み込んで加圧焼成することによってセラミック装置を製造したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、基層及び被覆層の一方又は両方をセラミック原料粉末でなくセラミック焼結体として準備し、セラミック焼結体を積層して約1750〜2000度、100〜200kgf/cm
2の条件で加圧焼成してもよい。このとき、各層に対応するセラミック焼結体同士は直接接合されてもよい。あるいは、セラミック焼結体の接合面に、母材のセラミックと同じ種類の粉末で作製した接合材料が塗布もしくは印刷され、該接合材料を各層に挟んだ状態でセラミック焼結体同士が加圧焼成されてもよい。
【0055】
(8)上記実施形態のセラミック装置は、その静電気力でシリコンウエハ等を保持することに主に用いられる静電チャック用電極装置であってもよい。すなわち、セラミック装置は、上記実施形態のヒータ線120に代えて、静電チャック用途に特化した所定の回路パターンを有する電極体を備え得る。該静電チャック用電極装置の電極体は、セラミック表面上に正負に帯電したエリアを発生させるように構成される。静電チャック用電極装置においても、上記実施形態のセラミックヒータ100と同様に、電極が傾かない、端子位置を自由に設計できる、パターンを緻密化できるといった本発明の効果が発揮されることは云うまでもない。なお、発熱抵抗体及び電極体が同時に用いられてもよい。
【0056】
(9)上記実施形態のセラミック装置は、対象をプラズマ処理することなどに主に用いられるRF(高周波)電極装置であってもよい。すなわち、セラミック装置は、上記実施形態のヒータ線120に代えて、RF放電用途に特化した所定の回路パターンを有する電極体を備え得る。このセラミック装置によれば、一対のRF電極装置が対象を挟むように対向配置して、2つのRF電極間に高周波電圧を印加すると、電極間にプラズマが発生して、対象をプラズマ処理することが可能である。RF電極装置においても、上記実施形態のセラミックヒータ100と同様に、電極が傾かない、端子位置を自由に設計できる、パターンを緻密化できるといった本発明の効果が発揮されることは云うまでもない。なお、発熱抵抗体及び電極体が同時に用いられてもよい。
【0057】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【解決手段】セラミック装置100は、セラミック焼結体からなり、少なくとも、基層111、基層111上面に積層された中間層112及び中間層112上面に積層された被覆層113を備えるセラミック基体110と、平面状に延在する所定のパターンを有し、セラミック基体110に埋設された通電可能な発熱抵抗体又は電極体120と、を備える。中間層112の上面には水平面が定められ、中間層112の上面に沿って発熱抵抗体又は電極体120が配置されるとともに、被覆層113が発熱抵抗体又は電極体120を被覆するように中間層上面に積層された。