特許第6461301号(P6461301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6461301電気モータの動作を制御するための方法および装置
<>
  • 特許6461301-電気モータの動作を制御するための方法および装置 図000002
  • 特許6461301-電気モータの動作を制御するための方法および装置 図000003
  • 特許6461301-電気モータの動作を制御するための方法および装置 図000004
  • 特許6461301-電気モータの動作を制御するための方法および装置 図000005
  • 特許6461301-電気モータの動作を制御するための方法および装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461301
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】電気モータの動作を制御するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20190121BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20190121BHJP
【FI】
   H02P27/08
   H02M7/48 E
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-501040(P2017-501040)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公表番号】特表2017-521035(P2017-521035A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2015062813
(87)【国際公開番号】WO2016005129
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】102014213199.5
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ヒンツェ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュルツェ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ポイケルト
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−211985(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0257319(US,A1)
【文献】 国際公開第98/037493(WO,A1)
【文献】 特開昭59−172989(JP,A)
【文献】 国際公開第94/008392(WO,A1)
【文献】 特開2007−245763(JP,A)
【文献】 特開2013−062913(JP,A)
【文献】 特開2014−079154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(1)の動作を制御するための方法であって、
前記電気モータ(1)の電気的各相に印加される各電圧が、
前記電気モータ(1)のロータ位置と、
回転速度制御器(5)により制御回路内で実施される前記電気モータ(1)の回転数の目標値と実際値との比較と、
前記回転速度制御器(5)の下流に置かれた電流制御器(6)において実施される、前記電気モータ(1)の電力供給ユニットにおいて測定された総電流(IDC_ist)の目標値と実際値との比較と、
に依存するように変調制御されて生成され、かつ、出力される、方法において、
前記電流制御器(6)の入力側の目標値(IDC)は、変調のための現在のデューティファクタ(T)と、前記回転速度制御器(5)の出力側から出力されかつ前記電気モータ(1)の等価的相電流として形成された第1の操作量(IAC)との乗算によって形成され、
この場合、前記回転速度制御器(5)の前記第1の操作量(IAC)は、前記下流に置かれた電流制御器(6)において、前記回転速度制御器(5)の出力側に配置された乗算器(7)を用いて実施される現在のデューティファクタ(T)と乗算に基づいて、前記電気モータ(1)の等価的な相電流実効値になる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デューティファクタ(T)は、前記電流制御器(6)の出力側から出力される第2の操作量(Uout)を、前記電力供給ユニットにおいて得られる中間回路の最大電圧(UZK)によって除算することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電流制御器(6)によって、前記第2の操作量(Uout)としての前記電気モータ(1)の等価的な電圧振幅値が生成される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の操作量(IAC)は、前記変調のための前記デューティファクタ(T)と乗算する前に制限される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記電流制御器(6)の入力側の目標値(IDC)は、制限される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記変調のための現在のデューティファクタ(T)と、前記回転速度制御器(5)の出力側から出力される前記第1の操作量(IAC)との乗算前に、
前記電流制御器(6)の入力側の目標値(IDC)は、総電流制限値(IDC_grenz)から、現在のデューティファクタ(T)との除算を用いた、等価的電流制限値(IAC_grenz)への換算によって制限される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧は、前記電気モータ(1)のロータ位置を特徴付けるロータ位置角度(φ)に依存して、空間ベクトル変調において求められる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
電気モータ(1)の動作を制御するための装置であって、
前記電気モータ(1)の電気的各相に、制御された各電圧を出力するための電力供給ユニットを備え、
前記電力供給ユニットは、前記電気モータ(1)のロータ位置を検出する少なくとも1つの検出ユニット(4)と、前記電気モータ(1)の回転数の目標値と実際値との比較を実施する、制御回路内に配置された少なくとも1つの回転速度制御器(5)と、に接続されており、
前記回転速度制御器(5)には、前記電力供給ユニットにおいて測定された総電流(IDC_ist)の目標値と実際値との比較を実施する電流制御器(6)が下流に置かれており、
前記回転速度制御器(5)の出力側に乗算器(7)が配置されており、前記電流制御器(6)の入力側の目標値(IDC)が、変調のための現在のデューティファクタ(T)と、前記回転速度制御器(5)の出力側から印加されかつ前記電気モータ(1)の等価的相電流として形成された第1の操作量(IAC)との、該乗算器(7)を用いた乗算によって形成され、
それによって、前記回転速度制御器(5)の前記第1の操作量(IAC)は、前記下流に置かれた電流制御器(6)において、前記回転速度制御器(5)の出力側に配置された乗算器(7)を用いて実施される現在のデューティファクタ(T)と乗算に基づいて、前記電気モータ(1)の等価的相電流実効値になる
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記電流制御器(6)の出力側に割り算器(9)が配置されており、該割り算器(9)を用いて、前記デューティファクタ(T)は、前記電流制御器(6)の出力側から印加される第2の操作量(Uout)を、前記電力供給ユニットにおいて得られる中間回路の最大電圧(UZK)によって除算することにより生成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の操作量(Uout)は、前記電気モータ(1)の等価的電圧振幅値である、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記電力供給ユニットは、ブリッジ回路を含む、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記ブリッジ回路は、B6ブリッジ回路である、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両用変速機のための環境または用途における電気モータの動作を制御するための方法および装置に関している。
【0002】
電気機械方式または油圧方式で操作される車両用変速機は、ポンプ駆動若しくは直接駆動のための1つ以上の電気モータを含んでおり、この場合少なくとも1つの電気モータを用いて、車両用変速機のセレクタ装置若しくはギヤシフト装置並びにクラッチ装置および制動装置が駆動制御される。
【0003】
従来技術からは、車両用変速機のためのそのような電気モータを制御するための様々な方法が公知である。電気モータの個々のモータ巻線への電流供給は、特にコスト的理由から、いわゆるブロック転流およびいわゆるB6ブリッジ回路を用いて制御されている。ここでは転流ステップ内で、ブリッジ回路のハーフブリッジのいわゆる高圧側スイッチと、ハーフブリッジのいわゆる低圧側スイッチとが切り換えられる。この転流ステップは、電気モータのロータ位置に依存して制御され、この場合ロータ位置の特定のために、例えば電気モータ内に複数のホールセンサが設けられている。これらのホールセンサは、ハイ/ロー論理レベルを介して60°の電気的角度分解能が実現されるように配置されている。
【0004】
この角度分解能を高めるために、複数の高分解能角度センサを使用することが公知である。それにより、電気モータの電気的位相に出力する電圧の、それぞれのロータ位置への良好な適合化が可能である。その際に実現されるいわゆる正弦波転流は、円滑なモータ動作と同時に電気モータの高い利用効率も可能にする。ここでの電圧は、ロータ角度に関する情報に依存して、空間ベクトル変調を用いて、それが正弦波状となるように生成される。
【0005】
正弦波転流のもとで、電気モータの効率をさらに高めるために、モータ巻線の最大電流を、90°の固定のオフセットが生じるようにロータの磁石位置と同期させることが公知である。この目的のために、電気モータの位相電流が、出力される位相電圧の制御のために、ロータ位置に関する情報と併せて使用されるいわゆるベクトル制御(磁界方向制御)が用いられる。
【0006】
本発明が基礎とする課題は、特に車両用変速機のための電気モータの動作を制御するための従来技術に対して改善された方法および改善された装置を提供することにある。
【0007】
前記課題は本発明により、方法に関しては請求項1に記載された特徴によって解決され、装置に関しては請求項8に記載された特徴によって解決される。
【0008】
本発明の有利な構成は従属請求項の態様である。
【0009】
特に車両用変速機のための環境または用途における、電気モータの動作を制御するための本発明による方法では、変調において、前記電気モータの電気的位相に印加される電圧が、前記電気モータのロータ位置と、回転速度制御器により制御回路内で実施される前記電気モータの回転数の目標値/実際値比較と、前記回転速度制御器の下流に置かれた電流制御器において実施される、前記電気モータの電力供給ユニットにおいて測定された総電流の目標値/実際値比較と、に依存して生成され、制御されて出力され、前記電流制御器の入力側の目標値は、変調のための現在のデューティファクタと、前記回転速度制御器の出力側から印加される第1の操作量との乗算によって形成され、前記回転速度制御器の前記第1の操作量は、前記下流に置かれた電流制御器において、現在のデューティファクタとの乗算を用いて、前記電気モータの等価的相電流値になる。この等価的相電流値は、相電流の実効値である。
【0010】
本発明による解決手段は、電気モータを制御するための制御機器の直流電流限界値において、または、電気モータ若しくは電子制御ユニットの相電流限界値において、または、電源網、特に電気モータが配置されている車両の搭載電源網の電流限界値において、電気モータの動作を可能にする。この場合は動作点の特別な考慮を必要とせずに、上位に置かれた装置からの電気モータへの任意の回転数要求が実現可能である。この方法は、使用可能な電流に依存して、電気モータの最大限可能な回転数を簡単に制御し、単純な総電流測定を用いて独立したモータ相電流限界値および/または直流電流限界値を可能にする。さらに特定の態様では、電流制御器の入力側における目標値としての総電流の使用に基づき、電力供給ユニットにおける非常に簡単で信頼性の高い測定によって特定される総電流を制御量として使用することが可能である。そのようにして得られた相電流情報によって、コストのかかる相電流フィードバック測定を必要とせずに、電気モータの効率を最適化するための動作点に依存したパイロット制御角度の最適調整が可能となる。
【0011】
この方法の一改善構成によれば、デューティファクタは、電流制御器の出力側から出力される第2の操作量を、電力供給ユニットにおいて得られる中間回路の最大電圧値で除算することによって特定される。この特定は特に簡単に実現可能であり、電圧供給の変動を高い信頼性でもって補償する。
【0012】
この方法のさらに可能な実施形態では、電流制御器を用いて、第2の操作量としての、電気モータの等価的電圧振幅値が生成されるので、デューティファクタは、この等価的モータ電圧を、中間回路電圧によって除算するにより簡単な方法で生成可能になる。
【0013】
一改善構成によれば、第1の操作量は、変調のためのデューティファクタとの乗算前に制限される。それにより、簡単な方法で、モータ相電流の等価的実効値が制限可能である。
【0014】
可能なさらなる改善構成によれば、総電流は制限される。特に、総電流目標値の制限は、変調のための現在のデューティファクタと、回転速度制御器の出力側から出力される第1の操作量との乗算前に、現在のデューティファクタとの除算を用いた、総電流制限値の、等価的電流制限値への換算によって行われる。それにより、電気モータの電力供給ユニットの受け入れられた総電流を簡単な方法で制限可能である。
【0015】
電気モータの非常に高い角度分解能と、その結果としての高い利用効率のもとで、非常に滑らかなモータ回転を実現するために、電圧は、電気モータのロータ位置を特徴付けるロータ位置角度に依存して、空間ベクトル変調において求められる。
【0016】
電気モータの動作を制御するための本発明による装置は、電気モータの電気的位相への制御された電圧出力のための電力供給ユニットを備え、この電力供給ユニットは、電気モータのロータ位置を検出する少なくとも1つの検出ユニットと、電気モータの回転数の目標値/実際値比較を実施する、制御回路内に配置された少なくとも1つの回転速度制御器とに接続されている。電力供給ユニットにおいて測定された総電流の目標値/実際値比較を実施する電流制御器が、この回転速度制御器の下流に置かれており、回転速度制御器の出力側には、乗算器が配置されており、該乗算器を用いて、電流制御器の入力側の目標値が、変調のための現在のデューティファクタと、回転速度制御器の出力側から印加される第1の操作量との乗算によって形成され、それによって、回転速度制御器の第1の操作量は、下流に置かれた電流制御器において、現在のデューティファクタとの乗算を用いて、電気モータの等価的な相電流実効値になる。
【0017】
本発明による装置を用いれば、簡単な方法で、電気モータの最大限可能な回転数が、得られる電流に依存して、制御可能である。ここでのこの装置は、電力供給ユニット、例えばB6ブリッジとして構成された出力段における簡単な総電流測定を用いて、モータの独立した相電流および/または直流電流制限を可能にし、特に簡単で安価な構造と非常に僅かな計算能力しか必要としないことによって優れている。またこの装置は、従来技術から公知のフィールド指向の制御に比べて、設置スペースとコストのかかる相電流フィードバック測定用の構成要素なしで、簡単かつ安価に構成されている。さらに特定の態様では、電流制御器の入力側における目標値としての総電流の使用に基づき、供給ユニットにおける非常に簡単で信頼性の高い測定によって特定される総電流を制御量として使用することが可能である。そのようにして得られた相電流情報によって、コストのかかる相電流フィードバック測定を必要とせずに、電気モータの効率を最適化するための動作点に依存したパイロット制御角度が最良に設定調整可能となる。
【0018】
この装置の可能な改善構成では、電流制御器の出力側に、割り算器が配置されており、該割り算器を用いて、デューティファクタは、電流制御器の出力側から印加される第2の操作量を、供給ユニットにおいて得られる最大中間回路電圧によって除算することによって生成可能である。この割り算器は、特に簡単に実現可能なデューティファクタの生成を可能にし、電気モータの制御中の電力供給の変動を高い信頼性をもって補償可能になる点で優れている。
【0019】
可能な実施形態では、第2の操作量は、電気モータの等価的電圧振幅値である。それにより、デューティファクタは、この等価的モータ電圧値を、中間回路電圧値によって除算することによる簡単な方法で生成可能である。
【0020】
この装置のさらに可能な実施形態では、供給ユニットは、ブリッジ回路、例えば、電気モータのブロック転流を非常に簡単かつ高い信頼性のもとで実現可能であるB6ブリッジ回路を含む。
【0021】
以下では、本発明の実施形態を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電気モータを駆動制御するための制御回路の第1の実施形態の概略的ブロック回路図
図2】電気モータを駆動制御するための制御回路の第2の実施形態の概略的ブロック回路図
図3図1または図2による制御回路の回転速度制御器の第1の操作量の制限を詳細に示した本発明による方法の概略的フローチャート
図4図1または図2による制御回路の回転速度制御器の第1の操作量の制限並びに図1または図2による制御回路の総電流の目標値の制限を詳細に示した本発明による方法の概略的フローチャート
図5】変調のためのデューティファクタの生成を詳細に示した本発明による方法の概略的フローチャート
【0023】
相互に対応する部分には、全ての図面において同じ参照番号が付されている。
【0024】
図1は、電気モータ1を駆動制御するための制御回路の可能な第1の実施形態をブロック図で示している。
【0025】
ここでは、ブロックまたは正弦波転流によって、電気モータ1の個々のモータ巻線への電流供給が、B6ブリッジ3を制御するための制御ユニット2により制御される。ここでは、詳細には図示されていない方法で、パルス幅変調のための転流ステップ内において、B6ブリッジ3のハーフブリッジの少なくとも1つの高圧側スイッチと、ハーフブリッジの少なくとも1つの低圧側スイッチとが切り換えられる。この転流ステップは、この場合電気モータ1のロータ位置に依存して制御される。
【0026】
さらに検出ユニット4を用いて、電気モータ1の実際の回転数nistが特定され、フィードバックされ、電気モータ1の目標回転数nsollとの比較に乗算されることにより、電気モータ1の等価的相電流実効値が第1の操作量IACとして生成される。
【0027】
さらに検出ユニット4を用いて、電気モータ1のロータ位置を表すロータ位置角度φが特定され、このロータ位置角度φは、空間ベクトル変調のための制御ユニット2に供給される。この制御ユニット2は、回転速度制御器5の下流に置かれた電流制御器6の第2の操作量から形成される電圧ベクトルの振幅値と、ロータ位置角度φとから、B6ブリッジ3のための駆動制御信号を生成する。
【0028】
すなわち、電気モータ1の動作を制御するために、変調において電気モータの電気的各相に印加される電圧が、電気モータ1のロータ位置と、回転速度制御器5を用いて実施される電気モータ1の実際の回転数nistと目標回転数nsollとの比較と、下流に置かれた電流制御器6を用いて実施される、電気モータ1の電力供給ユニットにおいて測定された総電流IDC_istの目標値/実際値比較と、に依存して生成され、制御されて出力される。
【0029】
電流制御器6の入力側の目標値IDCは、回転速度制御器5の出力側に配置された乗算器7を用いて、以下の式、
DC≒IAC・T(0…1) (1)
に従って、変調のための現在のデューティファクタTと、回転速度制御器5の出力側から印加される第1の操作量IACとの乗算によって形成される。ここでのデューティファクタTは、信号処理ユニット8によって乗算器7に供給される。
【0030】
このようにして、デューティファクタTによる換算の前に、電気モータ1の等価的相電流が生じ、換算の後は、電流制御器6の入力側に総電流の目標値IDCが生じる。これらの2つの特性量は、設定調整可能な最大限界値との比較によって制限可能である。
【0031】
そのようにして総電流として生成された目標値IDCは、総電流IDC_istの実際値と比較され、この場合電流制御器6は、この比較に依存して、第2の操作量としてUoutとして電気モータ1の等価的電圧振幅値を生成する。
【0032】
それにより、図示の実施形態は、特に変速機環境または車両用変速機のための用途における、電気モータ1を駆動制御するための下流に置かれた電流制御器6を備えた簡単な回転速度制御回路の拡張を表し、この実施形態は、総電流IDC_istおよび電気モータ1の等価的相電流実効値の制限を実現可能にしている。この場合用いられる唯一の制御量として、容易に測定可能なB6ブリッジ3の総電流IDC_istが使用される。
【0033】
図2には、電気モータ1を駆動制御するための制御回路の可能な第2の実施形態がブロック回路図で示されている。
【0034】
図1に示す第1の実施形態とは異なり、デューティファクタTは、電流制御器6の出力側から印加される第2の操作量Uoutと、B6ブリッジ3において得られる最大中間回路電圧UZKとによる除算において形成される。この中間回路電圧UZKは、高い測定精度を達成するために、直接B6ブリッジ3において特定される。なぜなら通常の線路パスと電気的構成部品にとって、大電流のもとでは高い電圧降下を引き起こすからである。例えばB6ブリッジ3として構成された出力段の総電流IDC_istも、同様にB6ブリッジ3における電気抵抗R1において特定される。
【0035】
このように算出された変調のための現在のデューティファクタTの、回転速度制御器5の出力側における乗算へのフィードバックによって、別個の制御並びに制限のために、B6ブリッジ3の総電流IDC_istの特性量および第1の操作量IACとしての等価的相電流実効値が得られる。総電流IDC_istは、図示の実施形態では、下流に置かれた電流制御器6のための目標量IDCとして使用される。
【0036】
図3は、回転速度制御器5の第1の操作量IAC並びに目標値IDCの制限を詳細に示した本発明による方法の可能な実施形態のフローチャートを示し、そこでは、総電流制限値IDC_grenzが、第1の操作量IACのための電流制限値IAC_grenzに換算される。
【0037】
この目的のために、第1の操作量IACおよび目標値IDCのための限界値IAC_lim、およびIDC_limが生成され、この場合目標値IDCのための限界値IDC_limが、現在のデューティファクタTと一緒に割り算器9に供給される。この除算の結果と第1の操作量IACのための限界値IAC_limとの最小値算出Minによって、電流制限値IAC_grenzが特定される。
【0038】
第1の操作量IACは、この電流制限値IAC_grenzと比較され、この比較の結果に依存して、符号JおよびNによって表される異なったパスがフローチャートにおいて選択される。第1の操作量IACが、電流制限値IAC_grenzよりも大きい場合には、第1の操作量IACは、電流制限値IAC_grenzの値に設定調整される。
【0039】
それにより第1の操作量IACは、変調のためのデューティファクタTとの乗算の前に、次のように制限される。すなわちこの第1の操作量IACが、最大でも電流制限値IAC_grenzの値を有するように制限される。この場合転流Kは、制御ユニット2およびB6ブリッジ3を用いてこの制限値に依存して実施される。
【0040】
図4は、本発明による方法の可能な実施形態のフローチャートを示す。図3に示された実施形態とは異なり、回転速度制御器5の第1の操作量IACの制限と、総電流IDC_istの目標値IDCの制限は、相互に独立して実施される。
【0041】
この場合は、目標値IDCが、限界値IDC_limから生成された総電流制限値IDC_grenzよりも小さいか否かが検査される前に、まず第1の操作量IACが、電流制限値IAC_grenzに制限される。これが当てはまらない場合、目標値IDCは、総電流制限値IDC_grenzの値に設定調整される。
【0042】
それにより、第1の操作量IACは、変調のためのデューティファクタTとの乗算前に、第1の操作量IACが最大でも電流制限値IAC_grenzの値を有するように制限され、そして、総電流IDC_istの目標値IDCは、中間回路電圧UZKによる除算前に、目標値IDCは最大でも総電流制限値IDC_grenzの値を有するように制限される。この結果、転流Kは、制御ユニット2およびB6ブリッジ3を用いてこれらの制限値に依存して実施される。
【0043】
図5は、本発明による方法の可能な実施形態のフローチャートを示しており、この場合図4に示す図面に対して付加的に、第2の操作量Uoutを中間回路電圧UZKによって除算することによるデューティファクタTの生成が示されている。
【符号の説明】
【0044】
1 電気モータ
2 制御ユニット
3 B6ブリッジ
4 検出ユニット
5 回転速度制御器
6 電流制御器
7 乗算器
8 信号処理ユニット
9 割り算器
AC 第1の操作量
AC_grenz 電流制限値
AC_lim 限界値
DC 目標値
DC_grenz 総電流制限値
DC_ist 総電流
DC_lim 限界値
J イエス
K 転流
Min 最小値形成
N ノー
ist 実際の回転数
soll 目標回転数
R1 抵抗
T デューティファクタ
out 第2の操作量
ZK 中間回路電圧
φ ロータ位置角度
図1
図2
図3
図4
図5