(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性エラストマー材料が、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、及び加硫化ゴム介在物を含む熱可塑性加硫物(TPV)から選択されたものとなっている、請求項12に記載のハウジング部分。
【背景技術】
【0002】
注射可能な液体製剤(liquid drug formulation、液体薬剤処方物)を患者に送達するためにシリンジを用いることは、よく知られている。シリンジは、中空針によって患者の皮膚を突刺し、当該中空針を通して、(例えば、溶液の形態又は懸濁の形態にある)注射可能な液体薬剤を患者の筋肉又は組織に送達するようになっている。典型的に、シリンジは、所定量の液体薬剤を収容するバレルと、液体を投与する針先端部を画定する中空針と、バレル内にて軸方向に移動可能なプランジャーとを備える。
【0003】
シリンジと共に用いられるように自動注射器を設けることもよく知られている。このような自動注射器は、典型的には、シリンジを収容する1つ又は複数のハウジング部分を備えるハウジングと、シリンジから液体製剤を自動的に送達すべく使用時に起動する作動機構とを備える。作動機構は、典型的には、駆動源(例えば、強バネ)を備える。この駆動源は、シリンジバレル内にてプランジャーを軸方向移動させるべく、駆動力をプランジャーに伝達する駆動伝達要素(例えば、プランジャーロッド)を駆動可能とするように移動させる。このようなプランジャーの移動の結果、液体薬剤が、シリンジバレルから中空針に押し出されて、その針先端部を介して患者に投与される。
【0004】
安全上及び衛生上の理由から、中空針は、注射過程に液体製剤を放出するときを除いて、自動注射器のハウジングから突出しないことが望ましい。このような理由から、針受入部を用いて、シリンジの中空針を、当該針を針受入部によって覆った第1の位置(すなわち、休止位置)から、患者の皮膚を注射位置まで突き刺すために当該針の少なくとも先端部をハウジングの針受入部から突出させた第2の位置(すなわち、使用位置)まで軸方向に移動可能とするようにハウジングを構成した自動注射器が開発されてきている。薬剤送達は、針をこのような注射位置とするときにのみ、開始できるべきである。このようにして、第1に、シリンジを「休止」位置から「使用」位置に移動させるべく駆動力を伝達させるように機能し、第2に、その後でのみ、液体薬剤内容物をシリンジバレルから放出すべく駆動力をプランジャーに伝達させるように機能する2段階作動機構をもたらす自動注射器が開発されてきている。
【0005】
自動注射器の大半は、シリンジ及び作動機構の両方を同一の装置のハウジング内に組み入れる単一装置として構成されている。このような装置は、通常、使い捨て可能となるように、具体的には、液体製剤の注射送達後、及び典型的にはシリンジのハウジング内への後退後、装置の全体を安全に廃棄できるように構成されている。
【0006】
一般的に、自動注射器のハウジングは、当該ハウジングに収容された自動注射器の要素を保護するように機能する。ハウジングは、例えば、自動注射器が硬い面上に落下したときに生じるような機械的な衝撃を受けた場合、これらの要素を保護するように機能すると望ましい。保護機能の具体的な態様として、典型的にはガラスから成るシリンジを含む自動注射器の要素の破損を阻止すること、及び/又はハウジング内における機能要素の望ましくない変位又は移動、特に、作動機構の意図しない起動を阻止することが挙げられる。
【0007】
周知の自動注射器ハウジングは、相対的に硬質な材料又は略非圧縮性材料から形成された殻状要素(shell form)を備える。態様によっては、殻状要素は、例えば、クラムシェル形状(clam-shell form)を有する1つ又は複数のハウジング部分から構成されることがある。他の態様では、前方ハウジング及び後方ハウジングが、一緒に合わさって全体としてハウジングを形成する前方ハウジング部分及び後方ハウジング部分から構成されることもある。また、機械的な衝撃減衰機能又はユーザーの手によって保持される軟質グリップ面をもたらすために、殻状要素の一部に相対的に軟質な材料又はより高圧縮性材料から形成された被覆体を設けることも知られている。
【0008】
ところで、出願人は、自動注射器のハウジングが、内側殻面(inner shell surface、内側シェル面)及び外側殻面(outer shell surface、外側シェル面)を画定し、かつ相対的に硬質な材料又は略非圧縮性材料から構成される殻状本体(shell form body、シェル状本体)と、相対的に軟質な材料又はより高圧縮性材料から形成され、かつ殻状本体の外側殻面の少なくとも一部を覆う被覆体と、殻状本体に画定された少なくとも1つの窓であって、被覆体が少なくとも1つの窓内に延在する、少なくとも1つの窓と有する1つ又は複数のハウジング部分を備える場合、機械的衝撃を受けた場合の保護機能が改良されることを見出している。
【0009】
特許文献1は、容器を収容する空洞を密閉するハウジングを備えた自動注射装置を開示している。オーバーモールド成形された第1の把持面が、ハウジングにおける第1の外側面上のハウジング部分に沿って長手方向に延び、オーバーモールド成形された第2の把持面が、第1の外側面と反対側に位置するハウジングにおける第2の外側面上のハウジング部分に沿って長手方向に沿って延びている。
【0010】
特許文献2は、所定の閾値を越える機械的衝撃に応じて柔軟に変形可能な本体を有する医療用装置を開示している。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一態様によれば、内側殻面及び外側殻面を画定し、かつ相対的に硬質な材料又は略非圧縮性材料から構成される殻状本体と、相対的に軟質な材料又はより高圧縮性材料から形成され、かつ前記殻状本体の前記外側殻面の少なくとも一部を覆う被覆体と、殻状本体にて画定された少なくとも1つの窓であって、前記被覆体が少なくとも1つの窓内に延在している、少なくとも1つの窓とを備える自動注射器用ハウジング部分が提供される。
【0013】
本発明のこれらの及び他の実施形態について、本発明の種々の実施形態を単なる例示の目的でのみ記載する以下の実施の形態にて説明する。
【0014】
本明細書に記載される自動注射器の態様に関して、「前方(前側)」という用語は、使用時に注射部位の最も近くに位置する装置の端部(すなわち、針先端部)を意味するために用いられ、「後部」又は「後方(後側)」という用語は、使用時に注射部位から最も遠くに位置する装置の端部を意味するために用いられる。本明細書における「軸」という用語は、装置の前端部から装置の後端部に延び、典型的には、シリンジの軸に対応する軸に基づいて用いられる。
【0015】
また、液体製剤を収容するシリンジと共に使用される自動注射器装置用ハウジングに用いられるハウジング部分が提供される。シリンジは、液体製剤を患者に注射送達する用途に適するように構成される。ハウジングは、シリンジを収容する1つ又は複数のハウジング部分と、シリンジからの液体製剤を自動的に送達すべく使用時に起動する作動機構とを備える。
【0016】
ハウジング部分は、内側殻面及び外側殻面を画定する殻状本体を備える。殻状本体は、相対的に硬質な材料又は略非圧縮性材料から構成される。一実施形態では、殻状本体は、Lustran ABS 348の商品名でIneos AG(Avenue des Uttins 3, 1180 Rolle、スイス)から市販されているようなアクリルニトリルブタジエンスチレン材料から構成される。
【0017】
ハウジング部分は、相対的に軟質な材料又はより高圧縮性材料から形成された被覆体を備える。一実施形態では、被覆体は、熱可塑性エラストマー材料から構成される。一実施形態では、被覆体は、エチレン/ブチレン中間ブロックによりゴム状特性を与えられるランダムコポリマーである(Kratonの商品名で市販されているような)スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマーからなる群から選択される熱可塑性エラストマー(TPE)から構成される。
【0018】
TPEの硬度及び弾力性は、スチレン/ブチレンブロックとエチレン/ブチレンブロックとの相対比率並びに鉱物充填剤及びエクステンダー油のような配合剤の添加によって決定することができる。このようなTPE配合物は、Kraiburg、Mediprene、及びVersaflexの商品名で市販されている。一実施形態では、TPE材料は、代替的に、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)ブロックコポリマー(例えば、Kraton, Septon)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、及び加硫化ゴム介在物を含む熱可塑性加硫物(TPV)(例えば、Santoprene)からなる群からのポリマーに基づくものであってもよい。特性を最適化するための同様の検討が、SEBSの場合にも適用される。一実施形態では、前述のポリマーの混合物が利用されてもよい。一実施形態では、被覆体は、GLS TPE OM1040X-1(デュロメータ硬度:40ショアA)又はGLS TPE OM1060X−1(デュロメータ硬度:60ショアA)の商品名でPolyOne Corporation (833 Ridgeview Drive, McHenry, IL60050、米国)から市販されている熱可塑性エラストマーから構成される。一実施形態では、被覆体は、殻状本体の外側殻面の少なくとも一部を覆うようになっている。
【0019】
一実施形態では、被覆体は、40ショアAから60ショアA、例えば、40ショアAから50ショアA、さらに具体的には、42ショアAの硬度を有する材料から構成される。一実施形態では、衝撃吸収性能、耐久性、及び触覚の最適な組合せを、試験及び研究室の実験によって得るとよい。
【0020】
ハウジング部分は、殻体本体に画定された少なくとも1つの窓(例えば、窓開口又は窓孔)を有する。窓は、殻状本体の内側殻面から外側殻面に延びる。
【0021】
ハウジング部分の窓の大きさ及び配置は、特に衝撃抵抗に関して、ハウジング部分の正確な機能要求に基づいて決定されるとよい。一実施形態では、第1の窓は、殻状本体の後部に設けられる。一実施形態では、(例えば、第1の窓よりも小さな寸法を有する)第2の窓が、第1の窓の前方位置にて殻状本体に設けられる。
【0022】
被覆体は、少なくとも1つの窓(開口又は孔)内にて延びる。一実施形態では、被覆体は、少なくとも1つの窓内に少なくとも内側殻面の深さまで延びる。一実施形態では、被覆体のこのような延在によって、内側の殻部分との結合(例えば、化学結合)が生じ、これによって、両方の部分が、衝撃吸収特性をもたらすハイブリッド変形面として機能することになる。
【0023】
一実施形態では、被覆体は、内側突出要素を画定するように内側殻面の深さを超えて窓内に延びる。一実施形態では、このような被覆体の延在によって、内側殻及び/又は内側殻の(例えば、隣接又は追従する)内方突起との結合(例えば、化学結合)が生じ、これによって、被覆体が、追加的な圧縮能力を有し、及び/又はより大きい衝撃吸収特性をもたらすことになる。
【0024】
一実施形態では、被覆体は、殻状本体へのオーバーモールド成形品として設けられる。一実施形態では、殻状本体は、第1のモールド成形プロセスによって形成され、被覆体は、第2のモールド成形プロセスによって設けられるようになっている。一実施形態では、殻状本体及び被覆体は一体モールド形状を有する。
【0025】
一実施形態では、殻状本体はクラムシェル形状を有する。一実施形態では、殻状本体は、円筒状又は楕円体状のクラムシェル形状を有しており、従って、2つの円筒状又は楕円体状のクラムシェルハウジング部分が一緒に合わさり、円筒状又は楕円体状のハウジング形状を画定することになる。
【0026】
一実施形態では、ハウジング部分は、自動注射器用ハウジングの後方部分を画定している。一実施形態では、窓は、後方ハウジング部分の後端部側に設けられる。一実施形態では、被覆体は、ユーザーが後方部分を握るための把持面をもたらすようになっている。
【0027】
一実施形態では、落下衝撃に対するハウジング部分の衝撃抵抗は、標準落下試験に基づいて決定される。例えば、ISO11608−1:2012は、10個の新しい装置を水平姿勢にて自然落下させる試験、10個の新しい装置を垂直A姿勢にて自然落下させる試験、及び10個の新しい装置を垂直B姿勢にて自然落下させる試験を含む落下試験を定義している。各落下試験は、10mmを越える厚みの木によって裏当てされた3mm厚みの滑らかな硬質かつ
剛性的な鋼上に向けて1mの高さから落下を行う。
【0028】
ハウジング部分は、自動注射器用ハウジングに用いられること適している。一実施形態では、ハウジングは、前述したように1つ又は複数のハウジング部分を備える。
【0029】
自動注射器もまた提供される。自動注射器は、ハウジング空洞を画定する前述したようなハウジングを備える。ハウジング空洞は、シリンジを受け入れるように構成され、典型的には、この目的のために寸法決めされ、かつ形作られる。ハウジングは、単一部分ハウジングアセンブリとして構成されていてもよいし、又は多重部分(例えば、2部分)ハウジングアセンブリとして構成されていてもよい。
【0030】
一実施形態では、シリンジは、ハウジング内にて、例えば、駆動軸と平行な方向又は駆動軸に沿った方向に移動可能になっている。一実施形態では、シリンジは、ハウジング内にて、シリンジの針先端部をハウジング内に位置させた第1の位置から、少なくとも針先端部をハウジングの針突出開口から突出させた第2の位置まで移動可能になっている。
【0031】
ハウジング空洞内に受入れ可能なシリンジは、所定量の液体製剤を保持するシリンジバレルと、バレルの前端部に位置し、かつ液体製剤を投与するための針先端部を画定する中空針と、シリンジバレル内にて軸方向に移動可能な(例えば、ゴムストッパの形態にある)プランジャーとを備える。シリンジプランジャーは、患者に注射するために液体製剤をバレルから中空針を介して投与先端部から放出させることを可能にするように、バレル内にて軸方向に移動可能になっている。シリンジバレルは、典型的には、ガラスから構成されるが、硬化ポリエチレン、ポリカーボネート、又は環状オレフィンポリマーのような相対的に硬質なプラスチックポリマーから構成されていてもよい。
【0032】
一実施形態では、プランジャーは、シリンジバレルの側壁と相互に摩擦作用する天然又は合成ポリマー摩擦材料から構成される。適切なプランジャーの材料の例としては、天然又は合成ゴム又はエラストマー材料が挙げられる。
【0033】
さらに詳細には、シリンジバレルは、適切な量の液体製剤を収容するバレルチャンバを画定するように選択される。一実施形態では、この適切な量は、患者に送達される製剤の単回投与量に対応するように選択される。言い換えれば、この単回投与量の送達が、患者に注射するためにバレルチャンバの液体製剤の内容物の大半を、中空針を通して放出することを意味する。
【0034】
一実施形態では、シリンジバレルの後端部は端側フランジを備える。一実施形態では、シリンジバレルの前端部は、肩部をもたらすように形作られる。一実施形態では、この肩部の前方にて、シリンジが首部分(ネック部分)までさらに細くなり、当該首部分が、典型的には、シリンジの針保持部を形成する。
【0035】
一実施形態では、針バリアに対して、シリンジキャリアが設けられる。シリンジキャリアは、針バレルの長手方向の一部又は全てを覆った状態で取り付けられるように構成される。また、シリンジキャリアは、シリンジバレルをさらに超えて延び、シリンジバレルの前方肩部及びシリンジバレル(の前方肩部)から延びる中空針を長手方向にて全体的又は部分的に密閉するとよい。
【0036】
一実施形態では、シリンジキャリアは、シリンジバレルを受け入れるように構成されており、シリンジバレルの後端部のフランジを少なくとも部分的に覆った状態で取り付けられるようになっている。一実施形態では、シリンジキャリアは、シリンジの端側フランジの周りにスナップ嵌合するように構成される。一実施形態では、当該フランジは、シリンジキャリアの関連する「端側フランジ」部によって、効果的にキャップ装着されるようになっている。一実施形態では、シリンジフランジガード要素が、シリンジキャリアに設けられる。
【0037】
一実施形態では、シリンジキャリアは、柔軟なフィンガー要素を画定するように、その壁に1つ又は複数のスリットを備えており、当該柔軟なフィンガー要素によって、シリンジキャリアは、撓んで開くことができるようになっている。一実施形態では、このような柔軟なフィンガー要素の存在は、スリーブ付きシリンジの組立において有利になる。なぜならば、典型的にはシリンジバレルよりも大きな直径を有するニードルカバー(例えば、
剛性的ニードルシールド)が、シリンジをシリンジキャリア内に圧入するときに、当該シリンジキャリアの中心を通過できるからである。一実施形態では、この後、シリンジの後端部の端側フランジが、シリンジキャリアの後端部内にスナップ嵌合され、これによって、一旦組み立てられたのであれば、シリンジが当該スリーブ内に係止されることになる。
【0038】
一実施形態では、シリンジ及び/又はシリンジキャリアをハウジング空洞内に位置決め及び/又は保持すべく、1つ又は複数の位置決め及び/又は保持構造部がハウジングに設けられている。一実施形態では、当該1つ又は複数の位置決め及び/又は保持構造部は、ハウジングの内部に設けられた1つ又は複数のスナップ嵌合構造部から構成される。
【0039】
一実施形態では、シリンジの前方肩部に対して、1つ又は複数の肩支持構造部が設けられる。一実施形態では、当該1つ又は複数の肩支持構造部は、ハウジングと一体である(例えば、ハウジングと一体に形成される)。他の実施形態では、当該1つ又は複数の肩支持構造部は、ハウジングに設けられた1つ又は複数の個別の肩支持部によって画定される。
【0040】
中空針は針孔を画定しており、当該針孔は、最も典型的には、円形断面及び選択された孔直径を有する。一実施形態では、孔直径は、針を通る液体製剤を放出させることに必要な力及び放出される液体製剤の粘度に影響を及ぼすことを理解されたい。
【0041】
本明細書における使用に適した典型的な針の例としては、グレード23G、25G、又は27Gの12.5mm(半インチ)長さの薄肉針が挙げられる。これらは、約0.2mmから約0.4mm、例えば、約0.24mmから約0.37mmの針孔を有する。他の例として、3ベベル及び5ベベルのようなベベルを有する通常のシリンジに用いられる標準壁針及び薄肉壁針の両方が挙げられる。
【0042】
ハウジング及びその任意の内側ハウジングサブアセンブリは、シリンジを受入れ可能なハウジング空洞と、実施形態によっては、針突出開口とを画定するように形作られる。ハウジング空洞は、典型的には円筒状であり、これによって、シリンジの代表的な円筒状外側輪郭に適合することになる。ハウジング空洞は、ハウジング及びその内側ハウジングサブアセンブリとシリンジとの間に「鍵と鍵孔(lock and key)」関係を画定すべく、溝、凹み、又は他の形状構造部又は表面構造部のいずれかを有するようにさらに形作られるとよい。色付きガイド、矢印、及び任意の他の表面マークが用いられてもよい。
【0043】
典型的には、ハウジング及び/又はその任意の内側ハウジングサブアセンブリは、シリンジのバレルを受け入れるバレル受入部と、シリンジのプランジャーを受け入れるプランジャー受入部と、実施形態によっては、シリンジの中空針を受け入れるための針受入部とを備える。
【0044】
一実施形態では、ハウジング及び/又はその任意の内側ハウジングサブアセンブリのプランジャー受入部は、シリンジバレル内のプランジャーを、プランジャー受入部によって受け入れて、第1の位置からシリンジバレル内にいくらか移動する第2の位置に(例えば、軸方向において)移動させることを可能にする。一実施形態では、使用中、プランジャーは、ほとんどの実施形態にてバレルの液体製剤の内容物全てを放出する完全押込み位置まで移動可能になっている。
【0045】
一実施形態では、ハウジング及び/又はその任意の内側ハウジングサブアセンブリの針受入部が針突出開口を備えており、例えば、患者への送達のために中空針及びその針先端部を通る液体製剤の放出中、中空針が、当該針突出開口を通ってハウジングから突出するとよい。
【0046】
一実施形態では、シリンジは、ハウジング空洞内にて、針先端部をハウジング内に位置させた休止位置から針先端部を針突出開口から突出させた使用位置まで移動できるようになっている。
【0047】
シリンジがハウジング内にて移動可能である場合、安全上及び衛生上の理由から、注射過程にて液体製剤が放出されるときを除けば、針がハウジングから(すなわち、外に)突出しないことが望ましい。そのため、ハウジング及び/又はその任意の内側ハウジングサブアセンブリ並びにそれによって画定されたハウジング空洞は、一般的に、ハウジングの針受入部によって、シリンジの針を、当該針を針受入部によって全体的に収容(又は包囲)した第1の位置から、針の少なくとも先端部をハウジングの針受入部から突出させた第2の位置まで軸方向に移動させることができるように構成されている。
【0048】
一実施形態では、シリンジがハウジング内にて移動可能である場合、ハウジングは付勢手段(例えば、戻りバネ)を備える。この付勢手段は、針を常時第1の位置に向かって付勢するように構成されており、このような付勢手段の付勢は、第2の位置への針の移動を可能にすべく、シリンジの作動中に、(例えば、作動機構によって)克服されるようになっている。
【0049】
一実施形態では、ハウジングは着脱可能なキャップを備える。着脱可能なキャップは、針突出開口を覆った状態で取り付けられており、これによって、例えば、針突出開口を閉鎖するように機能する。そのため、キャップ装着位置にあるとき、着脱可能なキャップは、ハウジングの針受入部内への汚染物質の侵入を阻止するように作用することを理解されたい。
【0050】
一実施形態では、シリンジは針カバーをさらに備える。針カバーは、針先端部を鞘入れするように(例えば、密閉するために)鞘入れ形態に構成された針シースを画定している。
【0051】
一実施形態では、針シースは、天然又は合成ゴム材料のような(例えば、弾性的に)圧縮可能な材料から構成される。貯蔵形態では、針先端部は、針先端部の密封を得ることができるように針シース内に固着されている(例えば、針シース内に打ち込まれており、又は突き刺されている)。通常、針先端部の少なくとも先端側の3mm〜4mmがこのように鞘入れされる。臨床上の理由から、一実施形態では、針先端部の密封は、針先端部を通って針孔及びシリンジバレルチャンバ内への汚染物質、細菌等の通過を阻止するように作用することを理解されたい。無菌密封が好ましい。
【0052】
一実施形態では、針カバーは、その針シースを覆う針シースカバーを備える。一実施形態では、針シースカバーは、
剛性材料(例えば、ポリプロピレン)から構成される。一実施形態では、針シースカバーは、針シースを保持するように配置された1つ又は複数の把持要素(例えば、フック部)を備える。一実施形態では、針シースは、1つ又は複数の把持要素を受け入れるように構成された1つ又は複数の構造部、例えば、1つ又は複数の凹み、溝、又は空洞を備える。
【0053】
一実施形態では、針カバーは、ハウジング用の着脱可能なキャップに設けられる(例えば、着脱可能なキャップに固定又は一体化されている)。そのため、一実施形態では、針カバーはキャップ内に突出しており、これによって、着脱可能なキャップがキャップ装着位置にあるとき、針シース及びそのための任意の針シースカバーは、シリンジの針先端部を受け入れるように配置される。このような実施形態では、キャップ装着位置にあるとき、針先端部は針シースによって鞘入れされており、キャップが取り外されたとき、針シース及びそのための任意の針シースカバーも取り外され、これによって、針先端部が鞘出しされることになる。一実施形態では、着脱可能なキャップは、任意選択的にテーパを付した本質的に閉鎖された円筒状キャップチャンバを画定しており、針シース及び任意の針シースカバーは、この円筒状チャンバの軸に沿って設けられる。
【0054】
一実施形態では、着脱可能なキャップの内部にコネクタが設けられる。このコネクタは、針カバーを把持すべく(すなわち、針シース及び/又はそのための任意の針シースカバーを保持すべく)、1つ又は複数の針カバー把持要素を画定する。一実施形態では、このような把持要素は、キャップ装着位置にあるとき、針カバーを把持するように配置される。一実施形態では、このような把持要素は、(例えば、追加的に)、キャップが取り外されたときにも、針カバーを把持するように構成されており、これによって、キャップの取外しによってニードルカバーも取り外され、その結果、針先端部が鞘出しされることになる。一実施形態では、針カバー把持要素は、着脱可能なキャップの(例えば、円筒状キャップチャンバの)頂部内面からその開放端に向かって突出するように配置される。
【0055】
一実施形態では、コネクタは、中心ハブに取り付けられた1つ又は複数の針カバー把持要素(例えば、把持脚部)を備える。一実施形態では、コネクタは、ケージ状針カバーグリッパの形態にある。一実施形態では、各把持要素(例えば、把持脚部)は、(例えば、その足部に)1つ又は複数の把持突起部、例えば、1つ又は複数の内向きフック部又は内向き棘部を備える。一実施形態では、内向きフック部又は内向き棘部は、把持脚部に対して傾斜して配置される。一実施形態では、コネクタは、中心ハブを頂部内側キャップ壁又は面に隣接させるか又はそこからいくらか離して配置し、かつ把持脚部を頂部内側キャップ壁又は面からキャップの開放端に向かって突出させるように、着脱可能なキャップ内に配置される。その他の針カバーグリッパの構成は、国際公開第2009/081103号に開示されている。この文献の内容は、その全てを参照することによってここに含むものとする。
【0056】
一実施形態では、着脱可能なキャップはコネクタを備える。コネクタは、針カバー内に取り付けられると共に、当該針カバーに係合するように、かつ着脱可能なキャップの内側部分に係合するように形作られている。一実施形態では、コネクタは、中心ハブに取り付けられた第1の脚部の形態にあり、かつ互いに対称的に離間した1つ又は複数の針グリッパ要素を備える。第1の脚部は、それぞれ、コネクタの前方領域側を向く1つ又は複数の内向き棘部を有し、針カバーの近位領域に係合するように構成されている。一実施形態では、1つ又は複数の内向き棘部は第1の脚部に対して傾斜して配置される。一実施形態では、コネクタは、互いに対称的に離れた1つ又は複数の第2の脚部もまた備える。第2の脚部は、それぞれ、コネクタの前方領域に位置する1つ又は複数の外向き棘部を有しており、以下に述べるように、着脱可能なキャップ又はキャップインサートの内側部の前方領域に係合するように構成されている。一実施形態では、1つ又は複数の第1の脚部は、初期状態で、水平方向に対して約60°〜約80°の角度で付勢されている。この種の着脱可能なキャップ及びコネクタの構成は、国際公開第2009/090499号及び国際公開第2010/007395号に開示されている。これらの文献の内容は、その全てを参照することによってここに含むものとする。
【0057】
一実施形態では、特に、コネクタが中心ハブに取り付けられた1つ又は複数の針カバー把持要素(例えば、把持脚部)を備える場合、中心ハブが着脱可能なキャップの頂部内側キャップ壁に対して離れるように、コネクタを着脱可能キャップ内に位置決めすることが望ましい。このように位置決めされると、把持脚部は、頂部内側キャップ壁からキャップの開放端に向かって突出することになる。
【0058】
機能に関して、自動注射器は、シリンジの作動(すなわち、起動)を可能にするように構成される。そのため、自動注射器は、軸駆動力をシリンジに自動的に伝達させる駆動伝達要素もまた備える。好ましくは、この駆動伝達要素は、往復駆動要素(drive shuttle、駆動シャトル)の形態にあるが、他の適切な形態も考えられる。
【0059】
好ましい実施形態では、自動注射器は、エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵部を備える。エネルギー貯蔵部は、軸駆動力を、駆動伝達要素を介してシリンジに与えるように解放可能になっている。一実施形態では、自動注射器は、エネルギー貯蔵部を駆動伝達要素に連結するために、(例えば、往復動要素(shuttle element、シャトル要素)の形態にある)第2の連結部を備える。一実施形態では、エネルギー貯蔵部は、バネ(例えば、圧縮バネ又はトーションバネ)のような機械的エネルギー貯蔵部から構成される。他の態様では、エネルギー貯蔵部は、圧縮液体又は解放時にジェットエネルギー推進源をもたらす圧縮ガス推進剤の容器によってもたらされてもよい。
【0060】
一実施形態では、エネルギー貯蔵部は、最大60Nの軸駆動力をシリンジに加えることができるようになっている。エネルギー貯蔵部が圧縮バネである場合、加えられる力は、典型的には、作動プロフィールの全体に亘って、作動の開始時における60N〜40Nの範囲から作動プロフィールの終了時における40N〜20Nの範囲に変化するようになっている。エネルギー貯蔵部が圧縮液体又はガス推進剤である場合、典型的には、より一定の力が作動プロフィールの全体に亘って加えられることになる。
【0061】
一実施形態では、軸駆動力の解放(例えば、作動機構の作動)は、トリガー(例えば、ユーザー作動可能なトリガー)に応答するようになっている。一実施形態では、トリガーは、ボタン、スイッチ、又はレバー装置から構成される。他の実施形態では、皮膚に対する装置のハウジングの押圧に応答して作動することが可能な押圧作動機構が考えられる。
【0062】
一実施形態では、駆動伝達要素のプランジャー端部は、部分的又は全体的に、シリンジバレルの側壁と相互に摩擦作用する天然又は合成ポリマー摩擦材料から構成される。適切なプランジャー端部の材料の例として、天然又は合成ポリマー又はエラストマー材料が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、自動注射器は、駆動伝達要素をシリンジのシリンジバレルに連結させるように構成される第1の連結具を備える。一実施形態では、駆動伝達要素はプランジャーロッドになっている。
【0064】
一実施形態では、第1の連結具は、シリンジを使用位置に移動させたときに分離(例えば、離脱)するように構成された可逆的連結具(例えば、着脱可能な連結具)になっている。一実施形態では、第1の連結具は駆動伝達要素の前方位置にある。そのため、使用操作中、第1の連結具は、初期状態で適所に位置しており、駆動伝達要素(例えば、往復駆動要素)に加えられた軸駆動力が、シリンジの休止位置から使用位置に向かう駆動可能な運動をもたらすことになる。次いで、この第1の連結具が離脱し、これによって、駆動伝達要素(例えば、往復駆動要素)に加えられたさらなる軸駆動力が、シリンジバレル内におけるシリンジプランジャーの駆動可能な運動をもたらし、最終的に、完全押出位置に達し、このとき、最も好ましくは、シリンジバレルの液体製剤の内容物全てがそこから駆動可能に放出されることになる。
【0065】
一実施形態では、往復駆動要素は、軸方向対称形態、例えば、円筒形状を有しており、(例えば、ゴムストッパ状の)シリンジプランジャー用のプランジャーロッドが、当該円筒内に軸方向に適切に受け入れられる。ガイド(例えば、端壁の中心開口)が、この軸方向の受入れを助長するように往復動要素に設けられていてもよい。
【0066】
一実施形態では、往復動要素は、1つ又は複数の従動子(例えば、ペグ又はノッチ)を備える。従動子は、プランジャーロッドの1つ又は複数のトラック(例えば、溝又は長孔)に受け入れられてトラック−従動子をもたらすように構成されており、これによって、往復駆動要素の移動に対してプランジャーロッドの移動を連結させることができる。
【0067】
一実施形態では、第1の作動ステップにおいて、トラック−従動子関係は、往復動要素(及びプランジャーロッド)の初期の駆動運動時にて、前方軸駆動力をプランジャーロッドに伝達するように構成されている。一実施形態では、さらなる作動ステップにおいて、トラック−従動子関係は、往復動要素(及びスリーブ付きプランジャーロッド)の後続の駆動運動時にて、往復駆動要素及びプランジャーロッドを互いに離して、これによって、前方軸駆動力を、もはや、プランジャーロッドに伝達しないように構成されている。これは、装置の完全押出位置(又は、「注射ストローク」の終了)に対応している。
【0068】
一実施形態では、シリンジの針が使用後に針シュラウド要素によって包囲されることが、自動注射器にとって望ましい。従って、特に、注射処置の終了後に移動又はそれ以外の方法によって操作され、かつシリンジの針を覆う手段を設けることが望ましい。一実施形態では、このような手段は、注射過程の終了時に包囲形態に移動するように構成された移動可能なシュラウド要素を備える。軸駆動力が第2の連結具を用いて(例えば、前述のプランジャーロッドに対する往復駆動要素の可逆的連結を用いて)駆動伝達要素に連結されるエネルギー貯蔵部によって与えられる場合、移動可能な針シュラウド要素(針シュラウド手段)が(例えば、第3の連結具を介して)軸方向駆動源に連結されたのであれば、当該針シュラウド要素のこのような運動が可能になることを理解されたい。前記連結具は、プランジャーがシリンジバレル内にて完全押出位置に移動したときに連結されるように構成された可逆的連結具になっている。そのため、この完全押出位置では、軸駆動力が移動可能なシュラウド要素に伝達され、当該シュラウド要素が包囲位置(シュラウド位置)に移動されることになる。
【0069】
他の態様では、使用後にシリンジの針をハウジング内に後退させること、すなわち、針を第2の位置(すなわち、使用位置)から後退位置に後退させることが、自動注射器にとって望ましい。後退位置は、実施形態によっては、第1の位置(すなわち、休止位置)に対応しており、他の実施形態では、第3の位置、実施形態によっては、針送達開口からさらに離れた第3の位置に対応している。軸駆動力が第2の連結具によって駆動伝達要素に連結されるエネルギー貯蔵部によって与えられる場合、駆動伝達要素(例えば、プランジャーロッド)がエネルギー貯蔵部に可逆的に連結されていたのであれば、このようなシリンジ後退をより良好に行なうことができることを理解されたい。
【0070】
従って、一実施形態では、エネルギー貯蔵部は、第2の連結具を介して駆動伝達要素に連動している。第2の連結具は着脱可能な連結具であり、駆動伝達要素のプランジャー端部が(例えば、前述のプランジャーロッド及びスリーブへの往復駆動要素の可逆的連結によって)シリンジバレル内にてシリンジプランジャーを完全に押し出す位置に移動したときに、離脱するように構成されている。すなわち、第2の連結具は、シリンジプランジャーが完全押出位置に移動したときに分離(例えば、離脱)されるように構成された可逆的連結具(例えば、着脱可能な連結具)である。理想的には、使用時に、駆動伝達要素は、一旦エネルギー貯蔵部(すなわち、軸駆動源)から離脱されたのであれば、自在に運動し、その逆の軸方向運動が阻止されないようになっている。そのため、針後退機構は、この自在に運動可能な駆動伝達要素との相互作用によって阻止されることなく、(例えば、軽戻りバネに応答して)シリンジ針をハウジング内に後退させるように構成することができる。代替的に、針シュラウド機構は、この時点で作動するように構成されていてもよい。
【0071】
一実施形態では、自動注射器は、駆動伝達要素を軸駆動源に連結する第2の連結具を追加的に備える。前記第2の連結具は、シリンジプランジャーがシリンジバレル内にて完全押出位置に移動したときに離脱するように構成された可逆的連結具になっている。
【0072】
一実施形態では、自動注射器は、移動可能な針シュラウド要素と、移動可能なシュラウド要素を前記軸駆動源に連結するための第3の連結具とを追加的に備える。前記第3の連結具は、シリンジプランジャーがシリンジバレル内において完全押出位置に移動したときに連結するように構成された可逆的連結具になっている。
【0073】
一実施形態では、第1,第2,及び第3の連結具のいずれか又は全てが、共通の連結要素内に構成される。
【0074】
一実施形態では、起動機構をその作動後にリセットするために、リセット機構が設けられている。リセット機構は、例えば、バネ、モータ、機械的装置、又はリセット連結具から構成されるとよい。
【0075】
本発明によって改変され得る代表的な自動注射器の例として、米国特許第4,553,962号、米国特許第4,378,015号、及び米国特許第5,304,128号;国際公開第99/22790号(Elan Corporation)、国際公開第00/09186号(Mediject Corporation)、国際公開第2005/070481号、及び国際公開第2007/083115号(The Medical House PLC);並びに国際公開第2009/081103号、国際公開第2009/081130号、国際公開第2009/081132号、国際公開第2009/081133号、及び国際公開第2010/007395号(UCB Pharma SA)に記載されている自動注射器が挙げられる。これらの文献の全ては、参照することによってここに含まれるものとする。
【0076】
一実施形態では、自動注射器は、幼児による作動機構の望ましくない作動を阻止する幼児安全構造部を備えている。
【0077】
本発明のさらなる態様によれば、シリンジが装着されていない前述の自動注射器と、液体製剤を含むシリンジとを備える部品キットが提供されることになる。
【0078】
本発明のさらなる態様によれば、シリンジが装着されていない前述の自動注射器と、そのための包装と、任意選択的に液体製剤を含むシリンジとを備える部品キットが提供されることになる。
【0079】
適切な包装は、典型的には、自動注射器及びシリンジのための容器から構成される。一実施形態では、包装は、シリンジを予め装填した自動注射器のための区画を備える。一実施形態では、包装は、自動注射器及びシリンジの「キット」のための個別の区画を備える。
【0080】
添付の図面を参照して、本開示についてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、本明細書に記載されているシステム、装置、及び方法の全般的な理解を促すために、いくつかの例示的な実施形態について説明する。明瞭さ及び例示を目的として、これらのシステム及び方法について、注射器を受け入れるように構成された自動注射器に関して説明する。当業者であれば、本明細書に記載されているシステム、装置、及び方法が必要に応じて改変かつ修正されてもよいこと、これらのシステム、装置、及び方法が他の適切な用途に用いられてもよいこと、並びにこのような他の追加及び修正が本発明の範囲から逸脱するものではないことを理解するであろう。
【0083】
以下、図面を参照すると、
図1及び
図2は第1の自動注射器装置1を示している。具体的には、
図1は、キャップ装着形態にある装置1を示しており、
図2は、着脱可能なキャップ60を取り外した状態の自動注射器装置1を示している。
図3A及び
図3Bは、組み合わされた状態では、液体製剤5を収容するシリンジ10と共に用いられるように構成された自動注射器装置1の分解図を示している。自動注射器装置1は、2つのクラムシェル部20,22から形成された略円筒状の後部外側ハウジングと、略円筒状の前方ハウジング部24とを備える。ハウジング20,22,24は、シリンジ10を受け入れるように構成されており、この目的のために寸法決めされ、かつ形作られている。前方外側ハウジング24は、シリンジからの薬剤5の投与をチェックすべくシリンジ10の内容物を観察することを可能にする観察ポート2を備える。
【0084】
シリンジ10は、液体製剤5を保持するバレル12と、このバレル12の前端部に位置する(
図3A及び
図3Bでは見えていないが、例えば、
図8C及び
図9Cでは見えている)中空針14と、バレルの後端部に位置するシリンジフランジ16と、ゴムストッパの形態にあるシリンジプランジャー18とを備える。シリンジプランジャー18は、液体製剤5を、中空針14を通して放出させることを可能にすべく、プランジャーロッド80の駆動運動に応じてバレル12内にて軸移動するように構成される。中空針14は、円形断面(例えば、23G,25G,又は27Gの孔直径)を有する針孔と、針先端部15とを画定している。シリンジ10は、(
図3A及び
図3Bでは見えていないが、例えば、
図8A及び
図9Aでは見えている)針カバー17及び
剛性針シールド19をさらに備える。
【0085】
シリンジ10はシリンジキャリア35内にて受け入れられている。シリンジキャリア35は、前方開口を画定する前方リップ36及び前方フランジ37を有しており、その後部に、直径方向にて互いに向き合って配置された一対の後端側ラッチアーム38を備える。後端側ラッチアーム38は、シリンジフランジガード39を受け入れるように構成される。注射使用時に(例えば、
図8C及び
図9Cを参照)、シリンジ10の針14の先端部15は、シリンジキャリア35の前方リップ36によって画定された開口から突出することになる。シリンジ10は、シリンジキャリア35内における軸移動を制限されている。具体的には、シリンジフランジガード39とシリンジフランジ16との相互作用が、その後方軸運動の程度を制限している。以下にさらに詳細に説明するように、注射使用中、シリンジキャリア35及びそれによって支持されたシリンジ10を休止位置から注射位置に移動させる駆動力は、シリンジフランジガード39に加えられるようになっている。ここで用いられる適切なシリンジフランジガード39のさらなる詳細は、出願人による国際公開第2015/015230号に開示されている。
【0086】
戻りバネ27は、その後端部をシリンジキャリア35の前方フランジ37に当接させるように、シリンジキャリア35の前方部分の周りに取り付けられている。戻りバネ27の前端部は、装置1の前方ヘッド部26内に受け入れられている。前方ヘッド部26は針送達開口29を画定している。
【0087】
針カバーグリッパ56が、着脱可能なキャップ60にさらに設けられており、かかる針カバーグリッパ56は、ケージ状(又は花状)構造の形態にあり、かつ中心ハブ59を中心として配置された複数の把持要素58を画定している。このような把持要素58は、着脱可能なキャップ60を取り外すときに、
剛性針シースシールド19を把持するように構成されており、そのため、キャップ60の取外しによって、
剛性針シースシールド19及びそれによって密閉された針シース17が取り外され、針先端部15が鞘出しされることになる。
【0088】
図3Bに示されているように、自動注射器装置1のハウジング20,22、24は、内側ハウジングスリーブ40を受け入れるように構成される。内側ハウジングスリーブ40は、目視可能なプラグ42によって、後方ハウジング部20,22に固定されるようになっている。また、内側ハウジングスリーブ40は、前方ヘッド部26に螺合するネジ付き前端部43を画定している。内側ハウジングスリーブ40は、シリンジ10及びそのシリンジキャリア35を受け入れる内側ハウジング空洞を画定している。内側ハウジングスリーブ40は、駆動バネ48、駆動バネキャップ49、並びに前方脚部52及び後方脚部54を有する往復駆動要素50用のハウジングもまた画定している。これら全ての動作については、後でさらに詳細に説明する。後方シリンダ45が、内側ハウジングスリーブ40の後端部の周りに取り付けられている。
【0089】
図3A及び
図9Aに示されるように、装置1は、内側ヘッドピップ部(inner head pip)63をそれぞれに設けた一対のボタン62を有する耐発射ラッチ機構を備える。ボタン62は、前方ハウジング部24の開口に嵌入されている。各ボタン62は、ラッチバネ64と協働している。ラッチバネ63の形態は、
図7にさらに詳細に示されている。各ボタン62のヘッドピップ部63は、ラッチバネ64のピップ部受入開口を通って突出している。各ラッチバネ64の鋸刃66を付けたアーム65が、前方ハウジング部24の内壁内に画定されたラッチバネ64の受入れ空洞内に着座している。
図1及び
図9Aのキャップ装着形態では、着脱可能なキャップ60の内壁が、各ボタン62をラッチバネ64の付勢に対して押し込むように作用し、これによって、ラッチバネ64の半径方向最内側面が内側ハウジングスリーブ40と干渉し、前方ハウジング部に対する内側ハウジングスリーブ40の相対運動を係止し、これによって、装置1のどのような偶発的な作動も阻止するようになっている。
図2及び
図9Bのキャップ取外し形態では、着脱可能なキャップ60が取り外され、もはや、ボタン62に対して作用できなくなっている。ラッチバネ64の付勢作用によって、各ボタン62は半径方向外方に押し出される。従って、ラッチバネ64の半径方向最内側面は、もはや、内側ハウジングスリーブ40と干渉せず、これによって、もはや、前方ハウジング部に対する内側ハウジングスリーブ40の相対運動を係止しない。その結果、キャップを取り外した装置1はユーザー操作によって作動されることになる。これについては、後でさらに詳細に説明する。
【0090】
後部外側ハウジングの2つの対応するクラムシェル部20,22のそれぞれは、被覆された形態にある。以下、これらの対応する部分20,22の1つのみの詳細な形態を示す
図4〜
図6を参照して、この被覆形態についてさらに詳細に説明する。
【0091】
図4は、装置1の後部外側ハウジングのクラムシェルハウジング部20の円筒状/楕円体状のクラムシェル本体70を示す。殻状本体70は、内側殻面712及び外側殻外面73を画定しており、相対的に硬質な材料又は略非圧縮性材料から構成される。後方窓72及び前方窓76が殻状本体70に画定されている。また、後方ハウジング20,22は、目視可能なプラグ42を受け入れるように形作られている(
図3B参照)。
【0092】
図5は、
図4のクラムシェル本体70を示しているが、ここでは、クラムシェル本体70は、相対的に軟質な材料又はより高圧縮性材料から形成された被覆体75を備える。被覆体75は殻状本体70の外側殻面73を覆っている。被覆体75は、殻状本体70に対するオーバーモールド成形物として設けられている。被覆体75は、殻状本体72の窓72,76内に延びている。被覆体75は、少なくとも内側殻面71の深さを有する第1の窓カバー78を画定するように後方窓72内に延びている。被覆体は、内側突出要素77を画定するように、内側殻面71の深さを超えて前方窓76内に延びている。
【0093】
図6は、被覆体75を有する
図5のクラムシェル本体70を示すと共に、後方シリンダ45がいかに配置されているかを示す。
【0094】
窓72,76の幾何学的形態及び相対的寸法は、被覆体75を有する殻状本体70が、装置1において崩壊することなく又は衝撃エネルギーを不必要にどこかに伝達することなく、いかに衝撃によって変形し、衝撃エネルギーを吸収するかを最適化するように、選択されている。アセンブリの全体が硬すぎるのであれば、衝撃エネルギーが十分に吸収されないことがわかっている。代替的に、アセンブリの全体が柔軟すぎるのであれば、十分な構造的完全性をもたらすことがない。殻状本体及び被覆体に用いられる材料の適切な選択は、前述したように規定される。一実施形態では、殻状本体は、アクリロニトリルブタジエンスチレン材料から構成され、被覆体は、熱可塑性エラストマー材料から構成される。
【0095】
図8A〜
図8E及び
図9A〜
図9E並びに典型的な使用操作の以下の説明を参照することによって、自動注射器装置1のさらなる態様が理解されるだろう。明瞭化のために、
図8A〜
図8E及び
図9A〜
図9Eにおいては、説明される使用操作に最も関連する部品のみに部番が付されている。
【0096】
図1、
図8A、及び
図9Aに示されているように、典型的な使用操作の第1の段階では、装置1は、「休止」状態にあり、着脱可能なキャップ60は適所に配置されている。この位置では、シリンジ10の針14及び投与先端部15は、針カバー17及びその
剛性針シールド19によって鞘入れされている。
図9Aに最もよく示されているように、耐発射ラッチ機構62,64が装置1の偶発的な作動を防ぐように作用している。具体的には、着脱可能なキャップ60の内壁は、各ボタン62をラッチバネ64の付勢に対して押し込むように作用しており、これによって、ラッチバネ64の半径方向最内側面が内側ハウジングスリーブ40と干渉し、前方ハウジング部分24に対する内側ハウジングスリーブ40の意図されない相対運動が係止されている。
【0097】
図2、
図8B、及び
図9Bに示されるように、典型的な使用操作の第2の段階では、キャップ60が取り外され、装置1の前方ヘッド部26及びその針開口29が露出する。キャップ60が取り外されると、針カバーグリッパ56によってキャップ60に取り付けられている
剛性針シースシールド19及び針シース17も取り外され、これによって、シリンジ針14の先端部15が鞘出しされることになる。
【0098】
ここで、装置1は「使用可能」状態にある。この状態では、針14の先端部15は前方ヘッド部26によって取り囲まれていることに留意されたい。このキャップ取外し形態では、着脱可能なキャップ60は、もはや、ボタン62に作用することができない。ラッチバネ64の付勢によって、各ボタン62は、半径方向外方に押し出され、ラッチバネ64の半径方向最内側面は、もはや、内側ハウジングスリーブ40と干渉せず、これによって、もはや、前方ハウジング部分に対する内側ハウジングスリーブ40の相対運動を係止することがない。そのため、ユーザー操作によって、キャップが取り外された装置1を作動させることができる。
【0099】
ユーザーは、装置1の後方ハウジング20,22を掴み、針送達開口29を皮膚の所望の注射点に置く。ここで、前方ヘッド部26を皮膚の注射面に押し付けることによって、圧力が前方ヘッド部26に加えられ、その結果、ハウジング20,22,24に対する前方ヘッド部26及び内側ハウジングスリーブ40の後方運動が生じる。この運動の結果として、装置1の注射動作が起動される。
【0100】
作動中、内側ハウジングスリーブ40の第1の棚部41に対する往復駆動要素50の前方脚部52の係合の結果として、往復駆動要素50も、最初に、いくらか後方に移動する。往復駆動要素50が前進すると、その後方脚部54が、後方シリンダ45の(見えていない)リブとの相互作用の結果として内方に撓み、内側ハウジングスリーブ40から離脱する。この内方撓みの結果として、後方脚部54は「ハンマーヘッド」を形成する。このハンマーヘッドは、プランジャーロッド80のテーパ付き駆動ヘッド82と相互に駆動作用し、これによって、往復駆動要素50をプランジャーロッド80に連結することになる。
【0101】
前方脚部52は、後方シリンダ45の第2の棚部44と相互作用する斜面を画定しており、その結果として、前方脚部52が内方に押し込まれ、これによって、駆動バネキャップ49を介して伝達される駆動バネ48の駆動力によって、内側ハウジングスリーブ40に対する往復駆動要素50の前方運動が可能になる。前方脚部52のこの内方撓みのさらなる結果は、前方脚部52の前面をシリンジキャリア35のアセンブリのシリンジフランジガード39の後面に係合させることにあり、これによって、往復駆動要素50の前方運動によっても、シリンジキャリア35及びそれによって支持されたシリンジ10の前方運動が生じることになる。
【0102】
ここで、往復駆動要素50は、駆動バネ48の駆動力によって前方に移動し、これによって、シリンジキャリア35及びそれによって支持されたシリンジ10を
図8C及び
図9Cの「シリンジ前進」位置に前進させる。この位置では、シリンジ針先端部15が、針送達開口29から突出する。シリンジストッパ18は、シリンジバレル12内にて前方に移動しないので、このシリンジ前進ステップでは、流体5は放出されない。シリンジ10のこの前進は、シリンジキャリア35の前端側フランジ37と相互作用する軽戻りバネ27によってのみ軽く受けられる。「シリンジ前進」位置では、シリンジキャリア35の前方フランジ37は、前方ハウジング部26の突出円形内端壁28に当接し、シリンジ10のさらなる前方運動が妨げられることになる。
【0103】
この点又はその近傍において、往復駆動要素の前方脚部52が、内側ハウジング40の前方長孔44(
図3B参照)内に向かって外方に撓み、シリンジキャリア35のシリンジフランジガード39からのこれらの脚部52の離脱を可能にし、これによって、往復駆動要素50をシリンジキャリア35及びこれによって支持されたシリンジ10から離脱させることになる。
【0104】
往復駆動要素50がシリンジキャリア35から離脱した結果として、往復駆動要素50によって加えられた全てのさらなる前方駆動力が、プランジャーロッド80のテーパ付きヘッド82と往復駆動要素50の内方に撓んだ後方脚部54との「ハンマーヘッド」相互作用によって、プランジャーロッド80に伝達される。従って、プランジャーロッド80は、シリンジバレル12内にて押し込まれ、軸方向力をシリンジストッパ18に加え、この押込み運動の結果として、
図8D及び
図9Dに示されているように、シリンジ10の流体内容物5を放出することになる。
【0105】
注射ストロークの終点に達すると、往復駆動要素50の後方脚部54は、外方に撓んで、内側ハウジングスリーブ40の中央長孔46(
図3B参照)内に受け入れられる。この外方の撓みの効果によって、後方脚部54の頭部をプランジャーロッド80のテーパ付き駆動ヘッド82から離脱させ、これによって、「ハンマーヘッド」を取り外し、往復駆動要素50をプランジャーロッド80から離脱させることになる。従って、プランジャーロッド80は、駆動バネ48に影響されることなく、内側ハウジングスリーブ40内にて軸方向に移動することができる。
【0106】
ここで、シリンジキャリア35及びそれによって支持されたシリンジ10は、すでに圧縮されている軽戻りバネ27の戻り力を受けることになる。軽戻りバネ27のこの戻り力は、シリンジキャリア35を後方に移動させるように作用し、これによって、シリンジ10を
図8E及び
図9Eの「使用終了」位置に後退させる。この「使用終了」位置において、シリンジ針14の先端部15は、再び前方ハウジング部26によって包囲される。プランジャーロッドヘッド82は、この過程において往復駆動要素50の後方脚部54を通過することになる。後部外側タグ54は、内側ハウジングスリーブ40の中央長孔46内に向かって外方に撓んでいるので、プランジャーロッドヘッド82の通過が可能になる。従って、シリンジ10は、事実上、その最初の包囲位置に戻り、これによって、ユーザーが偶発的に使用済み針14,15に接触する危険を排除することができる。また、この「注射終了」位置において、往復駆動要素50の前方タグ52は、内側ハウジングスリーブ40の前方長孔44の前棚端部に着座し、これによって、往復駆動要素50のさらなる前進を阻止することになる。典型的には、装置1は使用後に廃棄されるようになっている。
【0107】
本発明の自動注射器は、薬剤、特に、多数の疾患、傷害、若しくは病気の治療及び/又は予防をするための薬剤の注射送達に適している。これらの疾患、傷害、又は病気の例として、感染症(ウイルス感染症、例えば、HIV感染症、細菌感染症、菌性感染症、及び寄生虫感染症);感染症に関連する内毒素ショック;炎症疾患/自己免疫、例えば、変形性関節症、関節リウマチ、乾癬性関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、強直性脊椎炎、COPD、喘息、アルツハイマー病、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、及び乾癬;中枢神経系及び抹消神経系の免疫介在性炎症疾患、例えば、多発性硬化症及びギラン・バレー症候群;移植片対宿主症;移植臓器拒絶;疼痛;癌(黒色腫、肺芽腫、肉腫、扁平上皮癌、移行上皮癌、及び卵巣癌のような固形腫瘍、血液悪性腫瘍、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、胃癌、並びに大腸癌);先天性傷害、例えば、膿胞性線維症、及び鎌状赤血球貧血症;成長傷害;癇癪;不妊治療;心臓病、例えば、心筋梗塞のような虚血性疾患、並びにアテローム性動脈硬化症及び血液内凝固症;骨疾患、例えば、骨減少症及び骨粗しょう症;並びに代謝性疾患/特発性疾患、例えば、糖尿病が挙げられる。
【0108】
一実施形態では、本明細書における自動注射器のシリンジは、(例えば、2℃〜8℃で)冷凍保存され、室温(例えば、18℃〜30℃又はその近傍)で注射送達されるように設計された液体製剤を含む。一実施形態では、20℃の送達温度における液体製剤の粘度は、120mPa.s(120センチポアズ)未満、実施形態によっては、100mPa.s(100センチポアズ)未満である。
【0109】
適切な薬剤は、化学物質、多糖類、ステロイド、特に、糖タンパク質、ポリペプチド、及びオリゴペプチド、並びにその高分子誘導体を含む天然タンパク質及び組替えタンパク質を含む生物活性剤から選択されるとよい。特定のタンパク質、ポリペプチド、及びオリゴペプチドの例として、ホルモン、例えば、インスリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、副腎皮質刺激ホルモン、ソマトトロピン、エリスロポエチン、及びオキシトシン;リンホカイン、ケモカイン、及びインターロイキンのようなサイトカイン並びにその受容体、例えば、インターロイキン(IL)−1α、IL−1β、IL−1R、IL−2、IR−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、IL−17、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ、顆粒球単球コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子−α;成長因子、例えば、神経成長因子及び血小板由来因成長因子;酵素、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子;並びに特に免疫グロブリンが挙げられる。免疫グロブリンの例として、全抗体及び機能的活性フラグメント並びに/又はその誘導体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組替え抗体、多価抗体、単特異的又は多特異的抗体、ヒト化又はキメラ抗体、単一鎖抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びF(ab’)
2フラグメントが挙げられる。このようなタンパク質、ポリペプチド、及びオリゴペプチドの高分子誘導体の例として、タンパク質、ポリペプチド又はオリゴペプチドと、天然又は合成ポリマーとの間で形成された誘導体が挙げられ、合成ポリマーは、例えば、多糖類ポリマー若しくはポリ(エチレングリコール)[PEG]のようなポリアルキレンポリマー又はその誘導体、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)[mPEG]である。特定の薬剤として、成長ホルモン及び不妊治療用ホルモンが挙げられる。他の特定薬剤は、癲癇治療薬、例えば、ブリバラセタム及びセレトラセタムである。
【0110】
本明細書における自動注射器装置は、薬剤が免疫グロブリン又はそのフラグメント、特に、PEG化又はmPEG化抗体フラグメントである場合、特に有用であることが分かっている。
【0111】
本明細書における液体製剤は、典型的には、薬液を含むと共に、追加的に他の任意選択的な処方成分、例えば、緩衝液(例えば、乳酸塩、酢酸塩)、NaCl、及びpH調整剤(例えば、NaOH)を含む水性処方物である。
【0112】
本明細書における自動注射器は、液体製剤における薬剤(例えば、治療用生物学的薬剤)の濃度が極めて高い場合、特に有用であることが分かっている。特に、薬剤がPEG化抗体であるなら、自動注射器装置は、該薬剤の濃度が100mg/mLを超え、特に、150mg/mLを超え、例えば、200mg/mLである場合、特に有用であることが分かっている。
【0113】
前述の実施形態は、単なる例示に過ぎず、ここに述べた細部に限定されるものではないことを理解されたい。本開示においていくつかの実施形態が提示されているが、開示されたシステム、装置、方法及びそれらの構成要素は、本開示の範囲を逸脱することなく、多くの他の特定の形態によって実施されてもよいことを理解されたい。
【0114】
当業者であれば、この開示を再検討した後、変更形態及び修正形態を思いつくであろう。開示された特徴は、本明細書において述べた1つ又は複数の他の特徴に対するどのような組合せ及び部分的組合せ(例えば、多数の従属的な組合せ及び部分的組合せ)によって、実施されてもよい。前述又は前掲された種々の特徴は、その任意の構成要素も含めて、他のシステムに組み合されてもよいし、又は組み入れられてもよい。さらに、いくつかの特徴が省略されてもよいし、又は実施されなくてもよい。変更、交換、及び代替の例は、当業者によって明らかであり、本明細書において開示された情報から逸脱することなくなされてもよい。本明細書に引用されている全ての文献は、参照することによって、その全体をここに含み、かつ本願の一部を成すものとする。
【0115】
本明細書及び請求項が一部をなす本願は、いずれかの後の出願に対する優先権の基礎として用いられることもある。このような後の出願の請求項は、本願に記載の特徴又は特徴の組合せに関するものであろう。それらは、製品、方法、又は使用の請求項の形態を取ることがあり、例示的かつ非制限的に以下の請求項の1つ又は複数を含むこともある。