(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461329
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】シリコン酸化物の製造装置及び調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/113 20060101AFI20190121BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
C01B33/113 A
B01D5/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-519520(P2017-519520)
(86)(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公表番号】特表2017-535506(P2017-535506A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】CN2015083616
(87)【国際公開番号】WO2017004818
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】514013417
【氏名又は名称】深▲セン▼市貝特瑞新能源材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼春雷
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】岳敏
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−086254(JP,A)
【文献】
中国実用新案公告第2451567(CN,U)
【文献】
国際公開第03/025246(WO,A1)
【文献】
特開2001−220123(JP,A)
【文献】
特開2014−159358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
B01B 1/00−1/08
B01D 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化物の製造装置であって、少なくとも一つのタンク(1)を備え、前記タンク(1)は少なくとも一端に開口(2)が設けられ、前記タンク(1)は、原料(5)を収容する反応部(3)と、前記タンク(1)の開口端に設置された収集器(6)を収納する収集部(4)とを備え、前記反応部(3)はタンク(1)の開口端から離れて加熱炉(7)内に設置され、前記収集部(4)は開口(2)とともに前記加熱炉(7)外に設置され、前記タンク(1)はポート(8)によって真空化され、タンクカバー(9)によって開口(2)を開閉する、ことを特徴とするシリコン酸化物の製造装置。
【請求項2】
前記収集部(4)に冷却装置(10)が設けられることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項3】
前記加熱炉(7)が空気に連通していることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項4】
前記加熱炉(7)が電気加熱又は燃焼加熱を利用することを特徴とする請求項3に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項5】
前記収集器(6)は少なくとも一端が開口した円筒状構造であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項6】
前記収集器(6)はテーパーを有し、その小端がタンクカバー(9)に向かっていることを特徴とする請求項5に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項7】
前記ポート(8)は収集部(4)に設けられることを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項8】
前記冷却装置(10)は、前記収集部(4)に套設された冷却ジャケット(11)を有し、冷媒の循環によって冷却することを特徴とする請求項2に記載のシリコン酸化物の製造装置。
【請求項9】
シリコン酸化物の調製方法であって、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造装置を使用して、
加熱炉(7)を起動させる工程1と、
冷却装置(10)を起動させる工程2と、
タンクカバー(9)を開いて、原料(5)としてSi粉末とSiO2粉末を混合して反応部(3)に投入し、収集部(4)に収集器(6)を入れて、タンクカバー(9)をカバーする工程3と、
ポート(8)によってタンク(1)を真空化する工程4と、
タンク(1)中の原料(5)の反応が終了した後、加熱炉(7)と冷却装置(10)の作動を保持したまま、タンクカバー(9)を開いて収集器(6)を取り出し、反応部(3)に新たな原料(5)を投入して、収集部(4)に新たな収集器(6)を入れて、タンクカバー(9)をカバーして、ポート(8)によってタンク(1)を真空化させ、次回の反応を開始させるとともに、取り出した収集器(6)からシリコン酸化物製品(12)を剥離する工程5と、
調製が終了するまで、工程5を繰り返す工程6とを行う、ことを特徴とするシリコン酸化物の調製方法。
【請求項10】
前記タンク(1)の収容量は2〜200KGであり、前記加熱炉(7)の温度は1100〜1400℃であり、前記タンク(1)の真空度は0.01〜10000Paの範囲に保持され、前記冷却装置(10)の温度は100〜800℃であり、前記工程5で新たな収集器(6)を入れてから工程6で該収集器(6)を取り出すまでの時間は2〜60hであることを特徴とする請求項9に記載のシリコン酸化物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学工業用装置の分野に関し、特にシリコン酸化物の製造装置及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiOは光学ガラス、半導体材料及びリチウムイオン電池の負極材料を製造するための重要な原料である。
【0003】
SiOの生産条件が過酷であるため、その産量が市場ニーズを満足できない。従来開示されている生産方法は、真空及び高温の条件下でSiとSiO
2を反応させてSiOガスを発生させて、SiOを低温で凝固させることが一般的である。
【0004】
従来、工業用のSiO製造装置は反応室と収集室の両方が真空筒内に設置され、反応室と真空筒との間のキャビティに電熱線が設置されるものであり、このような装置は、反応室の寸法を効果的に増加できないため、製品の産量が低く、また、製品の各方向での材料組成の均一性も悪くなる。発熱素子が真空筒に設置されており、燃焼加熱が不能であるため、エネルギー消費量が大きい。反応室と収集室の両方が真空筒内に設置されているため、収集室中のSiOを取り出すのに装置全体を冷却しなければならず、連続的生産が実現できず、大量のエネルギーが無駄になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半連続生産を実現して、エネルギー消費量を低減させるシリコン酸化物の製造装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成させるために、本発明は下記の技術案を採用する。
【0007】
シリコン酸化物の製造装置であって、少なくとも一つのタンクを備え、前記タンクは、少なくとも一端に開口が設けられ、前記タンクは、原料を収容する反応部と、タンクの開口端に設置された収集器を収納する収集部とを備え、前記反応部はタンクの開口端から離れて加熱炉内に設置され、前記収集部は開口とともに前記加熱炉外に設置され、前記タンクはポートによって真空化され、タンクカバーによって開口を開閉するシリコン酸化物の製造装置。
【0008】
更に、前記収集部に冷却装置が設けられる。
【0009】
更に、前記加熱炉は空気に連通している。
【0010】
更に、前記加熱炉は電気加熱又は燃焼加熱を利用する。
【0011】
更に、前記収集器は少なくとも一端が開口した円筒状構造である。
【0012】
更に、前記収集器はテーパーを有し、その小端がタンクカバーに向かっている。
【0013】
更に、前記ポートは収集部に設けられる。
【0014】
更に、前記冷却装置は、前記収集部に套設された冷却ジャケットを含み、冷媒の循環によって冷却する。
【0015】
更に、前記反応部の軸線は水平である。
【0016】
本発明は、調製効率を向上させてエネルギー消費量を低減させるシリコン酸化物の調製方法を提供することをもう一つの目的とする。
【0017】
シリコン酸化物の調製方法であって、上記製造装置を利用して、
加熱炉を起動させる工程1と、
冷却装置を起動させる工程2と、
タンクカバーを開いて、原料としてSi粉末とSiO
2粉末を混合して反応部に投入し、収集部に収集器を入れてタンクカバーをカバーする工程3と、
ポートによってタンクを真空化させる工程4と、
タンク中の原料の反応が終了した後、加熱炉と冷却装置の作動を保持したまま、タンクカバーを開いて収集器を取り出し、反応部に新たな原料を投入して収集部に新たな収集器を入れて、タンクカバーをカバーして、ポートによってタンクを真空化させ、次回の反応を開始させるとともに、取り出した収集器からシリコン酸化物製品を剥離する工程5と、
調製が終了するまで、工程5を繰り返す工程6と、を行うシリコン酸化物の調製方法。
【0018】
更に、前記タンクの収容量は2〜200KGであり、前記加熱炉の温度は1100〜1400℃であり、前記タンクの真空度は0.01〜10000Paの範囲に保持され、前記冷却装置の温度は100〜800℃であり、前記工程5で新たな収集器を入れてから工程6で該収集器を取り出すまでの時間は2〜60h(時間)である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0020】
本発明に係るシリコン酸化物の製造装置は、反応部が加熱炉内に設置され、収集部と開口が加熱炉外に設置され、開口を開いて収集器を取り出して、新たな収集器を入れた後に開口を閉じることで、装置全体の冷却を必要とせず、加熱炉の連続作動を可能にし、更に効率が高くなる。従来の装置は、冷却する必要があるため、昇温と降温によりエネルギーが無駄になる。これに対し、本装置はエネルギーを大幅に節約するものである。その同時に、調製効率を向上させてエネルギー消費量を低減させる前記製造装置を用いた調製方法が提案されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係るシリコン酸化物の製造装置の構造模式図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例2に係るシリコン酸化物の製造装置の構造模式図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例3に係るシリコン酸化物の製造装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(符号の簡単な説明)
1、タンク;2、開口;3、反応部;4、収集部;5、原料;6、収集器;7、加熱炉;8、ポート;9、タンクカバー;10、冷却装置;11、冷却ジャケット;12、製品。
【0023】
以下、図面を参照しながら具体的な実施形態を利用して本発明の技術案を更に説明する。
【0024】
実施例1
図1に示されるように、シリコン酸化物の製造装置は、少なくとも一つのタンク1を備え、本実施例に係る装置は少なくとも一端に開口2が設けられた一つのタンク1を備え、本実施例に係るタンク1は一端だけに開口2が設けられ、タンク1は原料5を収容する反応部3と、タンク1の開口端に設置された収集器6を収納する収集部4とを備え、反応部3はタンク1の開口端から離れて加熱炉7内に設置され、収集部4は開口2とともに加熱炉7外に設置され、タンク1はポート8によって真空化され、タンクカバー9によって開口2を開閉する。
【0025】
反応時に、タンク1内の真空度が要求を満たすようにポート8によってタンク1中の気体を抜き出し、加熱炉7で反応部3内の原料5を加熱し、原料5を化学反応させて製品蒸気を生成した。収集部4が加熱炉7外に位置されるため、収集部4の周辺における空気の温度が加熱炉7より遥かに低く、それによって、製品蒸気がタンク1の外部の空気と熱交換して、収集器6に凝縮して固体製品12を形成した。一つの生産サイクルが経た後、タンクカバー9を開いて、開口2から収集器6を取り出し、新たな原料5を投入して、新たな収集器6を交換して、タンクカバー9をカバーする。このように上記過程を今回の生産が終了するまで繰り返す。この過程において、加熱炉7を停止する必要がなく、生産状態を保持することができるので、半連続生産が実現でき、効率を大幅に向上させて、エネルギーを節約することができる。
【0026】
本実施例では、タンク1の優れた密閉状態を確保するために、開口2をタンク1の一端だけに設置したが、当業者は必要に応じて、タンク1の両端に開口2を設置して、両方をタンクカバー9で密封することができる。
【0027】
本実施例の収集部4は空気冷却又は冷却装置によって冷却することができ、冷却要求に応じて冷却方式を選択すればよく、収集部4の冷却速度を高めるために、収集部4に冷却装置10が設けられる。
【0028】
加熱炉7が空気に連通しているため、電気加熱も燃焼加熱も可能となり、電気加熱は、中高周波誘導加熱、マイクロ波加熱及び抵抗加熱を含み、抵抗加熱は、シリコンカーバイドロッド抵抗加熱、シリコンモリブデンロッド抵抗加熱、グラファイト抵抗加熱を含み、燃焼加熱で用いる燃料として、天然ガス、石炭ガス、ガス、バイオマスガス又は人工ガスが使用できる。電気加熱に比べて、燃焼加熱はエネルギーを大幅に節約できる。タンク1内が真空状態であると、大気圧がタンク1の耐用年数に悪影響を与えるから、タンク1の耐用年数を確保するために、本実施例では、タンク1は耐熱鋼、セラミック、コランダム、炭化ケイ素及び炭素材料のうちの1種又は2種以上を使用し、シール性、加工性及び加工コストを確保するために、耐熱鋼が好ましく、更に好ましくは、タンク1は直径が100mm〜1000mmであり、長さが300mm〜5000mmである。
【0029】
収集器6は収集や取り扱いが容易に行えるように、少なくとも一端が開口した円筒状構造とする。
【0030】
本実施例では、収集器6はテーパーを有し、その小端がタンクカバー9に向かっているため、容易に取り出したり入れたりすることができる。
【0031】
ポート8はタンク1内の真空度を確保するように、収集部4に設けられる。
【0032】
本実施例では、冷却装置10は、収集部4に套設された冷却ジャケット11を含み、冷媒の循環によって冷却するものであり、水、空気、不活性ガス、冷却剤のいずれを採用してもよい、本実施例では、低コストの点から、循環水で冷却する。
【0033】
本実施例では、冷却ジャケット11は収集部4の内部に設置されても外部に設置されてもよい。
【0034】
収集器6は耐熱鋼、SUS、鉄皮、石英、グラファイト、タングステンシート、炭化ケイ素、酸化アルミニウム及びC/C複合材のうちの1種又は2種以上を使用する。
【0035】
本実施例に係る製造装置を使用してシリコン酸化物を調製する方法は、
加熱炉7を起動させる工程1と、
冷却装置10を起動させる工程2と、
タンクカバー9を開いて、原料5としてSi粉末とSiO
2粉末を混合して反応部3に投入し、収集部4に収集器6を入れて、タンクカバー9をカバーする工程3と、
ポート8によってタンク1を真空化させる工程4と、
タンク1中の原料5の反応が終了した後、加熱炉7と冷却装置10の作動を保持したまま、タンクカバー9を開いて収集器6を取り出し、反応部3に新たな原料5を投入して、収集部4に新たな収集器6を入れて、タンクカバー9を密封して、ポート8によってタンク1を真空化させ、次回の反応を開始させるとともに、取り出した収集器6からシリコン酸化物製品12を剥離する工程5と、
調製が終了するまで、工程5を繰り返す工程6とを含む。
【0036】
該方法によれば、調製過程において炉を停止する必要がなく、工程5と工程6によって装置の半連続作動を実現し、生産効率を大幅に向上させて、加熱炉7の昇温・降温過程によるエネルギーの無駄を避けた。
【0037】
生産効率の向上及びコスト削減を実現するために、タンク1の収容量を2〜200KGとし、加熱炉7の温度を1100〜1400℃とし、タンク1の真空度を0.01〜10000Paの範囲に保持し、冷却装置10の温度を100〜800℃とし、工程5で新たな収集器6を入れてから工程6で該収集器6を取り出すまでの時間を2〜60hとする。
【0038】
実施例2
図2に示されるように、本実施例は、タンク1の両端に開口2が設けられて、いずれもタンクカバー9で密封する以外、収集器6と冷却装置10の設置形態が実施例1と同様である。本実施例では、反応部3が加熱炉7内に設置され、反応部3の両側に位置する収集部4がいずれも加熱炉7外に設置され、それによって、優れた密封性を確保した前提では、本実施例は製品の調製速度及び生産効率を更に向上した。
【0039】
実施例3
図3に示されるように、本実施例は、装置に3つのタンク1が設置される以外、実施例1と同様であり、当業者にとって、生産の要求及び加熱炉7の寸法に応じてタンク1の数を合理的に設置することができ、該数は本実施例に限定されるものではない。本実施例では、加熱炉7の熱をうまく利用できるように、複数のタンク1が設置されている。
【0040】
勿論、本発明の上記実施例は、本発明で挙げられた例を明瞭に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。当業者にとっては、上記説明に基づき、ほかの様々な変形や変更を行うことができる。全ての実施形態を示すことが必要ではなく且つ不可能なことである。本発明の主旨や原則を脱逸せずに行った全ての変更、同等置換や改良等は、本発明の特許請求の範囲の保護範囲に属する。