特許第6461340号(P6461340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許6461340プリント基板への実装を行うための方法およびシステムならびにコンピュータプログラム
<>
  • 特許6461340-プリント基板への実装を行うための方法およびシステムならびにコンピュータプログラム 図000002
  • 特許6461340-プリント基板への実装を行うための方法およびシステムならびにコンピュータプログラム 図000003
  • 特許6461340-プリント基板への実装を行うための方法およびシステムならびにコンピュータプログラム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461340
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】プリント基板への実装を行うための方法およびシステムならびにコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20190121BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H05K13/02 Z
   G05B19/418 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-525614(P2017-525614)
(86)(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公表番号】特表2017-535962(P2017-535962A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015072898
(87)【国際公開番号】WO2016074857
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】102014222940.5
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー プファフィンガー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ロイアー
【審査官】 小金井 匠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−246897(JP,A)
【文献】 特開2006−171916(JP,A)
【文献】 特開平11−177281(JP,A)
【文献】 特開2012−134565(JP,A)
【文献】 特表2015−531160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装ライン(110)によってプリント基板(120)に実装を行うための方法(200)において、
・前記実装ライン(110)には、セットアップ(165,170)が用意されており、
・前記セットアップ(165,170)には、複数のプリント基板種類(122)を含む1つのセットアップファミリ(175,180)が割り当てられており、
・前記セットアップ(165,170)には、複数の構成部品種類(160)が割り当てられており、
・これによって、1つのセットアップファミリ(175,180)の1つのプリント基板種類(122)のプリント基板(120)に、当該セットアップ(165,170)の前記複数の構成部品種類(160)の各構成部品(155)が実装可能であり、
・第1計画期間(240)が設定されており、前記第1計画期間(240)は複数の第2計画期間(245)に区分されており、
・それぞれのセットアップ(165,170)は、各自に割り当てられている前記構成部品種類(160)の前記構成部品(155)のストックを1つ又は複数のセットアップテーブル(140)上に用意することによって実現され、
・利用可能なセットアップテーブル(140)の数には限りがあり、
・前記セットアップは、固定セットアップ(165)と可変セットアップ(170)とに区別され、
・固定セットアップ(165)は、前記第1計画期間(240)の間、1つ又は複数のセットアップテーブル(140)上で変更されることなく実現されたままであり
・可変セットアップ(170)は、1つの第2計画期間(245)内に一時的にのみ、1つ又は複数のセットアップテーブル(140)に実現され
前記方法は、
a)1つの所定の第2計画期間(245)において、1つのプリント基板種類(122)の所定の個数(215)のプリント基板(120)に、割り当てられている構成部品種類(160)の構成部品(155)をそれぞれ実装するための、複数のオーダー(210)を検出するステップと、
b)全てのオーダーに基づいて、構成部品種類(160)を固定セットアップ(165)に割り当てるステップであって、固定セットアップのセットアップファミリ(175)が、固定セットアップ(165)に割り当てられており、かつ、複数のプリント基板種類(122)を含み、これらのプリント基板種類(122)に割り当てられたプリント基板(120)には、この割り当てられた固定セットアップ(165)の構成部品種類(160)の構成部品(155)を完全に実装することができる、ステップと、
c)生産量とオーダー数との重み付けされた組み合わせの最大化に関して、前記割り当てを最適化するステップであって、前記オーダー数は、前記固定セットアップ(165)を用いて実装可能なオーダー(210)の数に相当し、前記生産量は、前記オーダー数に算入されている各オーダー(210)の製造時間の合計に相当し、前記重み付けされた組み合わせは、前記オーダー数と第1重み付け係数との積と、前記生産量と第2重み付け係数との積との合計を含む、ステップと、
d)それぞれの第2計画期間(245)に関して、
・前記それぞれの第2計画期間(245)のオーダー(210)に基づいて、構成部品種類(160)を可変セットアップ(170)に割り当て、
・それぞれ1つのオーダー(210)を処理するために、前記実装ライン(110)に前記固定セットアップ(165)又は前記可変セットアップ(170)を配置すべき順序(300)を決定するステップと、
e)全ての第2計画期間(245)の、前記決定された順序(300)の品質を含む1つの基準を決定するステップであって、前記基準は、前記全ての第2計画期間(245)の前記決定された順序(300)に基づいており、停止時間の最小化、可変セットアップの数の最小化、セットアップの配置処理の回数の最小化、セットアップの変更の回数の最小化、又は複数の上述した因子の重み付けされた組み合わせを含む、ステップと、
f)前記基準が最適化されている最適化された重み付けを決定するステップであって、前記ステップb)からe)を、前記組み合わせの重み付けを変更しながら繰り返すことによって前記基準を最適化し、前記基準が所定の品質に達するまで、又は所定の処理時間が経過するまで、前記ステップb)からe)を繰り返す、ステップと、
g)前記最適化された重み付けに基づいて決定されたセットアップ(165,170)を用いて、プリント基板(120)に実装を行うステップと、
を有することを特徴とする、方法(200)。
【請求項2】
前記停止時間を短縮するために、前記生産量をより重く重み付けする、
請求項記載の方法(200)。
【請求項3】
前記可変セットアップの数を低減するために、前記生産量をより軽く重み付けする、
請求項記載の方法(200)。
【請求項4】
前記重み付けされた組み合わせは、前記オーダー数で乗算された、前記固定セットアップ(165)に割り当てられている構成部品種類の数(220)の合計である成分をさらに含む、
請求項1からのいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項5】
前記ステップc)を、混合整数計画法を用いて実施する、
請求項1からのいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項6】
コンピュータプログラムであって
処理装置(115)にて実行されるか、又はコンピュータ読み出し可能な媒体に記憶されている場合に、
請求項1からのいずれか1項に記載の、実装ライン(110)によってプリント基板(120)に実装を行うための方法(200)を実行するためのプログラムコード手段を有する、
コンピュータプログラムにおいて、
・前記実装ライン(110)には、セットアップ(165,170)が用意されており、
・前記セットアップ(165,170)には、複数のプリント基板種類(122)を含む1つのセットアップファミリ(175,180)が割り当てられており、
・前記セットアップ(165,170)には、複数の構成部品種類(160)が割り当てられており、
・これによって、1つのセットアップファミリ(175,180)の1つのプリント基板種類(122)のプリント基板(120)に、当該セットアップ(165,170)の前記複数の構成部品種類(160)の各構成部品(155)が実装可能であり、
・第1計画期間(240)が設定されており、前記第1計画期間(240)は複数の第2計画期間(245)に区分されており、
・それぞれのセットアップ(165,170)は、各自に割り当てられている前記構成部品種類(160)の前記構成部品(155)のストックを1つ又は複数のセットアップテーブル(140)上に用意することによって実現可能であり、
・前記セットアップは、固定セットアップ(165)と可変セットアップ(170)とに区別され、
・固定セットアップ(165)は、前記第1計画期間(240)の間、1つ又は複数のセットアップテーブル(140)上で変更されることなく実現されたままとなるように構成されており、
・可変セットアップ(170)は、1つの第2計画期間(245)内に一時的にのみ、1つ又は複数のセットアップテーブル(140)に実現されるように構成されている、
ことを特徴とするコンピュータプログラム
【請求項7】
プリント基板(120)に実装を行うためのシステム(100)において、実装ライン(110)と、処理装置(115)とを含
・前記実装ライン(110)には、セットアップ(165,170)が用意されており、
・前記セットアップ(165,170)には、複数のプリント基板種類(122)を含む1つのセットアップファミリ(175,180)が割り当てられており、
・前記セットアップ(165,170)には、複数の構成部品種類(160)が割り当てられており、
・これによって、1つのセットアップファミリ(175,180)の1つのプリント基板種類(122)のプリント基板(120)に、当該セットアップ(165,170)の前記複数の構成部品種類(160)の各構成部品(155)が実装可能であり、
・第1計画期間(240)が設定されており、前記第1計画期間(240)は複数の第2計画期間(245)に区分されており、
・それぞれのセットアップ(165,170)は、各自に割り当てられている前記構成部品種類(160)の前記構成部品(155)のストックを1つ又は複数のセットアップテーブル(140)上に用意することによって実現可能であり、
・前記セットアップは、固定セットアップ(165)と可変セットアップ(170)とに区別され、
・固定セットアップ(165)は、前記第1計画期間(240)の間、1つ又は複数のセットアップテーブル(140)上で変更されることなく実現されたままとなるように構成されており、
・可変セットアップ(170)は、1つの第2計画期間(245)内に一時的にのみ、1つ又は複数のセットアップテーブル(140)に実現されるように構成されており、
・前記処理装置(115)は、請求項1から5のいずれか1項記載の方法(200)を実行するために構成されている、
ことを特徴とするシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に実装を行うための方法及びシステムに関する。ここでは、プリント基板に構成部品を実装するために構成されている実装ラインが前提とされる。
【0002】
電子モジュールは、プリント基板と、プリント基板上に機械的及び電気的に固定された構成部品とを含む。プリント基板を製造するために構成部品は、実装機(pick-and-place)を用いてプリント基板上に配置され、その後、リフロー炉においてプリント基板とはんだ付けされる。1つの実装ライン上では、複数の実装機が順次に動作することができる。多数のプリント基板を製造するために、複数の実装ラインを含む実装システムを使用することができる。
【0003】
実装ラインでは、所定の構成部品種類の構成部品のストックがセットアップテーブル上に備え付けられる。備え付けられたセットアップテーブルの1つにおいて全ての構成部品が揃っていないプリント基板に実装を行うべき場合には、これらのセットアップテーブルは、このプリント基板のために必要とされる構成部品が備え付けられている別のセットアップテーブルと交換される。通常、利用可能なセットアップテーブルの数には限りがあり、1つのセットアップテーブルに1つの構成部品種類の構成部品を備え付けることは高コストになりうる。従って、比較的長い計画期間の間、1つ又は複数のセットアップテーブル上で変更されることなく取り付けられたままとなる固定セットアップを作成することができる。
【0004】
独国特許出願公開第102012220904号明細書(DE 10 2012 220 904 A1)は、実装ラインのための固定セットアップを決定するための方法に関する。
【0005】
実装ラインの稼働率を良好にするためにできるだけ、所定の実装オーダーの残りの構成部品種類が割り当てられる可変セットアップが効率的に実装ラインに配置されうるように、固定セットアップを決定することが重要である。本発明の基礎となる課題は、プリント基板への実装を改善するための改善された技術を提供することである。上記の課題は、本発明によれば、独立請求項に記載の対象によって解決される。従属請求項は、好ましい実施形態を示す。
【0006】
実装ラインには、セットアップが用意されており、前記セットアップには、複数のプリント基板種類を含む1つのセットアップファミリが割り当てられており、前記セットアップには、複数の構成部品種類が割り当てられており、これによって、1つのセットアップファミリの1つのプリント基板種類のプリント基板に、当該セットアップの前記複数の構成部品種類の各構成部品が実装可能である。このために第1計画期間が設定されており、前記第1計画期間は、複数の第2計画期間に区分されている。それぞれのセットアップは、各自に割り当てられている前記構成部品種類の前記構成部品のストックを1つ又は複数のセットアップテーブル上に用意することによって実現可能である。前記セットアップは、固定セットアップと可変セットアップに区別され、固定セットアップは、前記第1計画期間の間、1つ又は複数のセットアップテーブル上で変更されることなく実現されたままとなるように構成されており、可変セットアップは、1つの第2計画期間内に一時的にのみ、1つ又は複数のセットアップテーブルに実現されるように構成されている。
【0007】
実装ラインによってプリント基板に実装を行うための本方法は、(a)所定の第2計画期間において、1つのプリント基板種類の所定の個数のプリント基板に、割り当てられている構成部品種類の構成部品をそれぞれ実装するための、複数のオーダーを検出するステップと、(b)全てのオーダーに基づいて、構成部品種類を固定セットアップに割り当てるステップと、(c)生産量とオーダー数との重み付けされた組み合わせの最大化に関して、前記割り当てを最適化するステップと、(d)それぞれの第2計画期間に関して、前記それぞれの第2計画期間のオーダーに基づいて、構成部品種類を可変セットアップに割り当て、それぞれ1つのオーダーを処理するために、前記実装ラインに前記固定セットアップ又は前記可変セットアップを配置すべき順序を決定するステップと、さらには、(e)全ての第2計画期間の、決定された前記順序の品質を含む1つの基準を決定するステップと、(f)前記ステップ(b)から(e)を、前記組み合わせの重み付けを変更しながら繰り返すステップと、(g)前記基準が最適化されている最適化された重み付けを決定するステップと、(h)前記最適化された重み付けに基づいて決定されたセットアップを用いて、プリント基板に実装を行うステップと、を有する。
【0008】
本方法によればとりわけ、どのような重み付けにすれば、実装ラインにおいて良好に取り扱い可能な可変セットアップをもたらすような、実装ラインのための固定セットアップを決定することができるのかを決定することが可能となる。このことは例えば、まだ全てのオーダーが判明していない後続の第1計画期間のための固定セットアップを決定するために有用であろう。これにより、ここでも良好に取り扱い可能な可変セットアップを高確率でもたらすような固定セットアップを、履歴的又は統計的なオーダーデータに基づいて決定することが可能となる。本発明によれば、固定セットアップへの構成部品の割り当ての最適化を、生産量とオーダー数との重み付けされた組み合わせに関して最適化すべきであることが判明した。最適化された重み付けを決定することにより、固定セットアップの作成に関して特定の状況下において互いに衝突するおそれのある2つの目標基準間における良好な妥協が見出される。
【0009】
第2計画期間における決定された順序の品質を判断するための基準は、種々異なるように選択することができる。従って、実装ライン又はオーダーの要件又は技術的状況に合わせて基準を調整することができる。
【0010】
1つの実施形態では、前記基準は、停止時間の最小化を含む。前記停止時間は、前記順序において後続する第2セットアップの実現が完了する前に、第1セットアップを用いた前記実装ライン上での実装が終了している場合に発生する。換言すると、第2セットアップを実現するために予め充分な時間が残っていない場合に、停止時間が発生する可能性がある。実装ラインの調達及び稼働は、著しいコストと結びつく可能性があるので、停止時間の回避又は最小化が特に重要である。
【0011】
前記停止時間を短縮するために、前記生産量をより重く重み付けすることができる。例えば停止時間が不満足にも長くなっているために基準が準最適であることが判明した場合には、組み合わせの重み付けを生産量の方向に狙いを定めてシフトすることができる。
【0012】
さらに別の実施形態では、前記基準は、可変セットアップの数の最小化を含む。実現しなければならない可変セットアップが少なくなればなるほどセットアップの配置にかかるコストが小さくなるので、可変セットアップを、改善された順序にすることが可能となる。
【0013】
1つの変形形態では、前記可変セットアップの数を低減するために、前記生産量がより軽く重み付けされる。好ましくは、生産量の重み付けは、停止時間が許容可能な閾値を下回ったままにするために必要な限りだけ低減される。この閾値は、例えばゼロとすることができる。さらに別の実施形態では、前記基準は、セットアップの配置工程の回数の最小化を含む。前記セットアップの配置工程は、1つの可変セットアップに割り当てられている1つの構成部品種類の構成部品のストックを少なくとも1つのセットアップテーブルに備え付ける工程を含む。セットアップの配置工程の実施が必要となる頻度が少なくなれば少なくなるほど、セットアップの配置を準備するためにより多くの時間を利用することができる。
【0014】
さらに別の実施形態では、前記基準は、前記実装ラインにおける第1セットアップから第2セットアップへの変更の回数の最小化を含む。
【0015】
さらに別の実施形態では、前記基準は、複数の上述した因子の重み付けされた組み合わせを含むこともできる。これによって、本方法の達成可能な結果を改善することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記基準が所定の品質に達するまで、又は所定の処理時間が経過するまで、前記ステップb)からe)が繰り返される。所定の処理時間内に基準の許容可能な品質が達成できなかった場合には、基準に対する許容閾値を変更するか、又は本方法の実行時間に影響を与えるパラメータを変更することが可能である。基準のさらなる改善を可能にするために、例えば実装ラインの備え付けを変更することが可能である。
【0017】
前記重み付けされた組み合わせを、拡張することも可能である。とりわけ前記組み合わせは、割り当てられている前記オーダー数で乗算された、前記固定セットアップに割り当てられている構成部品種類の数の合計を含む成分だけ拡張することができる。さらに別の成分又は追加の成分も可能である。
【0018】
特に好ましくは、少なくとも前記ステップc)は、混合整数計画法を用いて実施される。混合整数計画法は、コンピュータの支援を受けて高品質の最適化結果を提供することができる。
【0019】
コンピュータプログラム製品は、処理装置にて実行されるか、又はコンピュータ読み出し可能な媒体に記憶されている場合に、上述した方法を実行するためのプログラムコード手段を有する。
【0020】
プリント基板に実装を行うためのシステムは、実装ラインと、上述した方法を実行するための処理装置とを含む。
【0021】
本発明の上述した特性、特徴、及び利点、並びにこれらを達成する手法は、図面に関連してより詳細に説明される以下の実施例の記載に関連してより明瞭かつ明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実装システムを示す図である。
図2図1の実装システムの実装ラインのための固定セットアップを決定するための方法のフロー図である。
図3図1の実装システムの実装ラインにセットアップを配置するための例示的な順序を示す図である。
【0023】
図1は、例示的な実装システム100を示す。実装システム100は、1つ又は複数の実装ライン110と、処理又は制御装置115とを含む。各実装ライン110は、任意選択の1つの搬送システム125と、1つ又は複数の実装機130とを含む。各実装機130は、1つ又は複数の実装ヘッド135を含み、各実装ヘッド135はそれぞれ、セットアップテーブル140から構成部品155を取り上げて、搬送システム125上に配置されているプリント基板120上の所定の位置へと位置付けるように構成されている。プリント基板120は通常、実装工程中は、実装機130に対して静止している。
【0024】
セットアップテーブル140は通常、複数の供給装置150を含み、そのうちの1つだけを図1に例として図示している。各供給装置150は、所定の構成部品種類160の構成部品155のストックを用意している。供給装置150は通常、構成部品155に関して「トラック」と表現されうる貯蔵能力を有する。1つのトラックは通常8mm幅であり、1つのセットアップテーブル140のトラック数は例えば40に制限されている。同じ1つの構成部品種類160の構成部品155は通常、1つのベルト、1つのトレイ、又は1つのパイプに用意されている。
【0025】
各構成部品種類160は、供給装置150及びセットアップテーブル140において、通常は互いに隣接している所定数のトラックを必要とする。供給装置150における1つの構成部品種類160の構成部品155の数は、ここでは簡略化のために事実上無限大であると仮定され、従って、補充は不要である。一般的に供給装置150は、複数の異なる構成部品種類160の構成部品155を用意するように構成することができ、通常は、複数の異なる供給装置150を1つのセットアップテーブル140に取り付けることができる。
【0026】
実装機130において、セットアップテーブル140の1つにおいて存在してない構成部品種類160の構成部品155が必要とされる場合には、通常、取り付けられたセットアップテーブル140の1つにおける構成部品155の割り当てが変更されるのではなく、セットアップテーブル140ごと完全に、適切に準備が整えられた別のセットアップテーブル140と交換される。
【0027】
セットアップ165,170は、複数の構成部品種類160の集合を含み、それぞれ1つ又は複数のセットアップテーブル140によって実現される。これらのセットアップテーブルはそれぞれ、セットアップ165,170の構成部品種類160の構成部品155のストックが備え付けられており、実装ライン110に取り付けられる。ここでは、固定セットアップ165と可変セットアップ170とを区別することができる。固定セットアップ165は、所定の計画期間の間、1つ又は複数のセットアップテーブル140上で変更されることなく配置されたままとなるように設けられている。その一方で、可変セットアップ170は、計画期間内に一時的にのみ、1つ又は複数のセットアップテーブル140上に配置されたままとなるように構成されている。計画期間は、例えば最長で約10日とすることができる。1つ又は複数のセットアップテーブル140上に可変セットアップ170が実現されている時間は、通常、計画期間よりも格段に短い。この時間は、例えば数時間又は数日とすることができるが、通常1週間より長くはない。
【0028】
セットアップファミリ175,180は、複数のプリント基板種類122を含み、厳密に1つのセットアップ165,170に割り当てられており、またその逆も同様である。ここでは、固定セットアップのセットアップファミリ175と、可変セットアップのセットアップファミリ180とを区別することができる。固定セットアップのセットアップファミリ175は、固定セットアップ165に割り当てられており、かつ、複数のプリント基板種類122を含み、これらのプリント基板種類122に割り当てられたプリント基板120には、この割り当てられた固定セットアップ165の構成部品種類160の構成部品155を完全に実装することができる。同様にして、可変セットアップのセットアップファミリ180は、可変セットアップ170に割り当てられており、かつ、複数のプリント基板種類122を含み、これらのプリント基板種類122に割り当てられたプリント基板120には、この割り当てられた可変セットアップ170の構成部品種類160の構成部品155を完全に実装することができる。
【0029】
実装ライン110の稼働中には、それぞれ割り当てられたプリント基板120に実装を行うために複数の異なるセットアップ165,170が順次に実装ライン110に取り付けられる。実装ライン110におけるセットアップ165,170の交換は、セットアップの変更と呼ばれ、通常、実装ライン110の停止を必要とする。
【0030】
固定セットアップ165又は可変セットアップ170を実現するために、通常、1つ又は複数のセットアップテーブル140に対して、これらが実装ライン110に取り付けられていない間に所定の構成部品種類160の構成部品155のストックが補充される。必要なくなった構成部品種類160の、既に補充されている構成部品155は、予め回収するか、又は補充したままにしておくことができる。この工程は、セットアップの事前準備と呼ばれ、1時間又は数時間、例えば約6〜10時間の範囲の処理時間が必要とされる場合がある。
【0031】
可変セットアップ170に関連した補充のコスト、回収のコスト、及びセットアップの変更のコストを最小化するために、通常、できるだけ多くのプリント基板種類122を固定セットアップ165に含めることが試みられる。しかしながら可変セットアップ170のない理想的な事例は、実際にはほとんど実現することができない。
【0032】
実装ライン110を稼働する上で、セットアップファミリ175,180又はセットアップ165,170をどのように構成するかが重要である。セットアップファミリ175,180又はセットアップ165,170を作成する際には、例えば構成部品種類160に関するセットアップテーブル140の限られた貯蔵能力を遵守すること、又は、例えば含鉛はんだ又は無鉛はんだを使用するという理由から特定のプリント基板種類122を同じ1つのセットアップファミリ175にグループ化すること、などといった2次制約を考慮することができる。
【0033】
セットアップファミリ175,180又はセットアップ165,170の作成は、制御装置115によって実施することができる。制御装置115はさらに、実装ライン110にセットアップ165,170を配置すべき順序を決定することができる。制御装置115はさらに、実装ライン110又は実装システム100全体における実装を制御することができる。
【0034】
図2は、図1の実装システム100の実装ライン110におけるセットアップの順序を決定するための方法200のフロー図を示す。
【0035】
実装ライン上でプリント基板種類122のプリント基板120に実装を行うために、オーダー210が設けられる。オーダー210は通常、プリント基板種類122と、実装が行われるべきプリント基板120の個数215とを少なくとも含む。プリント基板種類122には1つ又は複数の構成部品種類160が割り当てられており、これらの構成部品種類160の構成部品155をそれぞれ1つ又は複数、実装することができる。
【0036】
プリント基板種類122には、さらに別の情報を割り当てることができる。例えば、各プリント基板120上に実装すべき構成部品種類160の数220、プリント基板120の実装箇所の数225、又は、プリント基板120の製造時間230を指定することができる。実装箇所の数225は通常、構成部品種類160とは関係なく、1つのプリント基板種類122の1つのプリント基板120上に実装すべき構成部品155の個数に相当する。
【0037】
オーダー210には、このオーダー210を実施すべき緊急度の高さを示す優先度235を割り当てることができる。
【0038】
第1計画期間240の間に多数のオーダー210が設けられており、この第1計画期間240は、複数の第2計画期間245に区分されている。第1計画期間は、例えば数ヶ月又は1年を含むことができる。第2計画期間は、例えば1日又は数日、若しくは1週間又は数週間を含むことができる。通常、全ての第2計画期間245は同じ長さであり、好ましくは互いに直接的に連続している。1つの実施形態では、第1計画期間240は、少なくとも20の第2計画期間245を含む。
【0039】
それぞれの第2計画期間245には、1つ又は複数のオーダー210が割り当てられている。あるオーダー210が、このオーダー210に割り当てられた第2計画期間245内に完了されない場合には、このオーダーを状況によっては次の第2計画期間245に延期することができる。この場合には、このオーダー210の優先度を上げることができる。
【0040】
本方法200は、第1計画期間240の複数のオーダーのために1つの固定セットアップ165を決定し、それぞれの第2計画期間245のために少なくとも1つの可変セットアップ170を決定する。できるだけ、実装ライン110のセットアップを配置する作業において可変セットアップ170が良好に取り扱い可能となるように固定セットアップ165を決定するために、固定セットアップ165は、生産量とオーダー数との重み付けされた組み合わせに関して最適化される。
【0041】
オーダー数は、固定セットアップ165を用いて実装可能なオーダー210の数に相当する。生産量は、オーダー数に算入されている各オーダー210の製造時間の合計に相当する。
【0042】
重み付けされた組み合わせは、例えばオーダー数と第1重み付け係数との積と、生産量と第2重み付け係数との積との合計を含むことができる。一方の重み付け係数を増加する場合には、それと同時に他方の重み付け係数を減少させることが好ましい。これらの係数の合計は、例えば常に所定の定数、特に1とすることができる。
【0043】
固定セットアップ165へのプリント基板種類122の割り当ては、線形計画法を用いて最適化することが好ましい。線形計画法は、(混合)整数線形計画法(MIP:Mixed Integer Programming)の解法の基礎である。MIPを用いた具体的な問題の処理に関して、実際に広く普及しており有効性が判明している一連の良好な市販の標準ソルバー(Ilog、Gurobi、Xpress)が利用可能である。この場合、最適化基準として、生産量とオーダー数との重み付けされた組み合わせが指定される。
【0044】
次に、決定された固定セットアップ165が実装ライン110の動作に対してどのような影響を及ぼすかが、好ましくはシミュレーションによって評価される。このために、それぞれの第2計画期間245に属する製造時間230を有している各オーダー210を、実装ライン110上で処理することができるようにするために、それぞれの第2計画期間245に対して可変セットアップ170が作成される。
【0045】
その後、図3を参照してより詳細に後述するように、好ましくは、実装ライン110における固定セットアップ165及び/又は可変セットアップ170の順序が決定される。この後、全ての第2計画期間245の、決定された順序の品質を含む1つの基準が決定される。この基準は例えば、実装ライン110の停止時間の最小化を含むことができる。上述したように、さらに別の基準又は組み合わせられた基準も可能である。基準は、好ましくは決定された1つ又は複数の固定セットアップ165に依存しており、固定セットアップ165の作成は、生産量とオーダー数との組み合わせの重み付けに依存している。最適化された基準を提供するために、上記の各ステップは、生産量とオーダー数との組み合わせの重み付けを変更しながら繰り返すことができる。可変セットアップ170の作成の最適化を可能にする重み付けを見出すために、これらのステップを、種々異なる重み付けを用いてできるだけ頻繁に実施することが好ましい。
【0046】
次に、最適化された重み付けに基づいて決定されたセットアップ165,170を用いて、プリント基板120に実装を行うことができる。
【0047】
さらには、固定セットアップ165を決定するために決定された重み付けを、上記の第1計画期間240に後続するさらに別の第1計画期間240のために引き継ぐことができる。この重み付けは、実装ライン110における実際の状態を反映することができ、従って、この重み付けにより、さらに別の第1計画期間240の第2計画期間245における可変セットアップ170の作成を改善することが可能となる。
【0048】
図3は、図1の実装システム100の実装ライン110におけるセットアップ165,170の例示的な順序300を示す。セットアップA−B−C−B−Dは、例示的な1つの第2計画期間245内において順次に配置される。ここでは、セットアップA及びDは固定セットアップ165であり、セットアップB及びCは可変セットアップ170である。
【0049】
固定セットアップAが実装ライン110に配置されている間に、セットアップテーブル140に可変セットアップBを整えておくことができる。固定セットアップ165を用いて実装を行うことができる全てのプリント基板120が実装ライン110を通過し終わると、可変セットアップBへの変更が実施される。可変セットアップBを用いて実装が行われている間に、可変セットアップCを準備しておくことができる。充分なセットアップテーブル140が存在する場合には、固定セットアップAがまだ実装ライン110に用意されている間に、可変セットアップCの実現を開始することが可能である。
【0050】
次いで、上述したように可変セットアップBへの変更が実施され、その後、固定セットアップDへの変更が実施される。好ましくは、時間的に後にある可変セットアップB又はCの配置の実現が、時間的に前にある可変セットアップB又はCを用いた製造時間よりもより多くの時間を消費する危険に陥る場合には、順序300において2つの可変セットアップB又はCの間に固定セットアップA又はDが挿入される。決定された固定セットアップA及びDと、決定された可変セットアップB及びCとに関する順序300の正確な結果は、種々異なる方法で定量化することができる。1つ又は複数の第2計画期間245の順序300の品質を反映する基準の決定に関しては、図2の説明が参照される。
【0051】
本発明の詳細を、好ましい実施形態に基づいて詳しく図示及び説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されておらず、当業者が本発明の保護範囲から逸脱することなくこれらの実施形態から他の変形形態を導出することが可能である。
図1
図2
図3