(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、スイッチ100の平面図である。
図2及び
図3は、
図1に示すII−IIに沿った切断面の断面図である。
【0011】
このスイッチ100はプッシュボタンスイッチである。
このスイッチ100は、例えば、サイドドア等の車両用ドアの開閉の検出に利用される。車両用ドアが閉じられると、
図3に示すようにスイッチ100が車両用ドアによって押されるので、スイッチ100がオフとなる。一方、車両用ドアが開かれると、
図2に示すようにスイッチ100の押しが解除されるので、スイッチ100がオンとなる。
このスイッチ100は例えば室内灯の点灯・消灯に利用される。スイッチ100がオンに切り替わると、室内灯がスイッチ100によって通電されて、室内灯が点灯する。一方、スイッチ100がオフに切り替わると、室内灯がスイッチ100によって遮断されて、室内灯が消灯する。
【0012】
以下の説明では、スイッチ100を押す向きを下向きとし、スイッチ100の押しを解除する向きを上向きとして、上下方向を定める。この上下方向は必ずしも鉛直方向をいうものではない。従って、スイッチ100の設置場所又は向きに応じて、上下方向が水平方向、鉛直方向その他の方向にもなり得る。なお、車高方向は鉛直方向であり、車幅方向及び車長方向は水平方向である。
【0013】
スイッチ100は、ケース8、ブラケット81、カップリングケース83、摺動体1、プッシュロッド11、支持軸13、固定接片3、可動接片4、固定接片5、コイルばね2及び防水部材9等を備える。
【0014】
ケース8とブラケット81とカップリングケース83とは一体成形されたものであって、電気絶縁性の合成樹脂からなる。
ケース8は矩形の筒状に形成されており、ケース8の中心軸線が上下方向に延在する。ケース8の上端が開口し、ケース8の下端が閉塞されている。
ケース8の側面の下端には筒状のカップリングケース83が設けられている。カップリングケース83がケース8に対して垂直に設けられている。カップリングケース83の突端が開口している。
ケース8の上端にはブラケット81が形成されている。ブラケット81はケース8の上端から側方へ延出している。ブラケット81には、穴82が形成されている。
【0015】
ブラケット81上には導電性の端子板51が取り付けられている。端子板51には、穴52が形成されている。この穴52はブラケット81の穴82と同心状に配置されている。端子板51の穴52がブラケット81の穴82よりも小径であるので、端子板51の一部がブラケット81の穴82の縁から内側にはみ出ている。端子板51のうち穴52の周辺部がブラケット81の穴82を通じて車体に接触し、端子板51がねじ7によって車体に締結される。つまり、ねじ7が穴52に通されて、そのねじ7が車体に締め付けられることによって、端子板51がねじ7の頭部と車体との間に挟持される。これにより、端子板51が車体に導通して接地され、スイッチ100が車体に取り付けられる。なお、端子板51が車体に接触せずに、ねじ7が車体と端子板51を導通させてもよい。
【0016】
端子板51はブラケット81上においてケース8の上端にまで至っており、端子板51の端部である固定接片5がケース8内に向けて折り曲げられている。固定接片5はケース8の内面の上部に取り付けられている。
【0017】
ケース8の内面には、導電性の固定接片3が取り付けられている。固定接片3がケース8の中心線に関して固定接片5の反対側に配置されており、固定接片3と固定接片5が互いに離れている。固定接片3は、ケース8の内面に沿って上下方向に延在していて、ケース8の底部を貫通する。固定接片3の下端が端子31であり、その端子31がカップリングケース83内に向けて折り曲げられている。カップリングケース83がコネクタのハウジングに嵌合されると、端子31がコネクタの端子に接続される。
【0018】
ケース8内には電気絶縁性の摺動体1が嵌め込まれている。摺動体1の外面がケース8の内面に接触しており、摺動体1がケース8の内面によって上下方向に案内される。摺動体1の上面には、電気絶縁性のプッシュロッド11が立てられた状態に設けられている。このプッシュロッド11は、ケース8の上端の開口80の上方に突き出ている。摺動体1の下面には、プッシュロッド11よりも細い電気絶縁性の支持軸13が立てられた状態に設けられている。この支持軸13は、ケース8の内面から離間した状態でケース8に挿入されている。支持軸13とプッシュロッド11は同軸状に配置されている。摺動体1とプッシュロッド11と支持軸13は一体成形されたものである。従って、プッシュロッド11と支持軸13は摺動体1と一緒に上下方向に移動する。摺動体1が上昇すると、プッシュロッド11がケース8の開口80から上へ進出する。摺動体1が下降すると、プッシュロッド11がケース8の開口80に向かって後退する。
【0019】
摺動体1とプッシュロッド11と支持軸13は、合成樹脂からなる。特に、摺動体1とプッシュロッド11と支持軸13は、耐摩耗性、耐熱性及び自己潤滑性を有するポリアセタールからなる。なお、摺動体1とプッシュロッド11と支持軸13は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリプロピレン樹脂その他の合成樹脂からなるものとしてもよい。
【0020】
支持軸13の周囲には、コイルばね2が支持軸13を巻くように設けられている。コイルばね2が支持軸13に支持されて、コイルばね2の座屈が抑制される。ケース8の内の底部に筒状の座部84が設けられ、コイルばね2がその座部84内に保持されている。そして、コイルばね2は圧縮された状態で摺動体1の下面とケース8内の底部との間に挟まれている。コイルばね2は付勢部であり、コイルばね2の弾性力によって摺動体1が上方に付勢されている。
図2に示すようにプッシュロッド11がケース8の開口80から上に突き出た状態では、摺動体1の側面に形成された突起がケース8の内面に形成されたストッパに当接し、コイルばね2の弾性力がストッパに受けられる。これにより、摺動体1がケース8から上へ抜けないようになっている。
【0021】
また、摺動体1の下面には、導電性の可動接片4が設けられている。可動接片4に孔が穿設されており、支持軸13がその孔に挿入されることによって可動接片4が支持軸13に支持されている。可動接片4は、摺動体1の下面から下方に延設して、支持軸13の両側方に二股に分岐する。可動接片4の一方の側枝部が固定接片3に接触する接触端子41であり、可動接片4の他方の側枝部が固定接片5に接触する接触端子42である。接触端子41が板バネであり、接触端子41が弾性変形して固定接片3に押し付けられている。接触端子42も同様に弾性変形して、固定接片5に押し付けられている。
【0022】
可動接片4が摺動体1、プッシュロッド11及び支持軸13とともに上下に移動することによって、可動接片4が固定接片5に対して接離するが、可動接片4と固定接片3が互いに接触した状態に維持される。具体的には、車両用ドアが閉じられると、
図3に示すようにプッシュロッド11の先端12が車両用ドアによって下に押される。そうすると、摺動体1がコイルばね2の弾性力に抗して下に移動するが、接触端子41は固定接片3に接触したままであるのに対して、接触端子42が固定接片5から下に離間する。そのため、固定接片3と固定接片5が電気的に切り離される。一方、車両用ドアが開かれると、
図2に示すようにプッシュロッド11の押下が解除されて、摺動体1がコイルばね2の弾性力によって上に移動する。これにより、接触端子42が固定接片5に接触する。そのため、固定接片3と固定接片5が可動接片4によって導通する。
【0023】
ケース8、ブラケット81及び端子板51がそれらの上からフレキシブルな防水部材9によって覆われている。ここで、ケース8及びブラケット81の周縁部にフランジ85が形成されており、防水部材9の内側の縁に形成された溝にフランジ85が嵌め込まれることによって、止水性が確保されている。防水部材9はエラストマーからなり、例えば熱可塑性又は熱硬化性の合成ゴムからなる。ここで、エラストマーとは、ゴム弾性を有する高分子材料のことである。エラストマーとは、ゴム、合成ゴム、天然ゴム、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー等を含む概念であり、ゴム、合成ゴム、天然ゴム、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマーもエラストマーの一種である。エラストマーの弾性率、つまりヤング率は、金属、合成樹脂或いはガラス等と比較しても十分に低い。ゴム弾性とは、金属、合成樹脂或いはガラス等よりも十分に弾性率が低くて、大変形しやすい性質をいう。
【0024】
防水部材9のうち端子板51の穴82に重なる部分には、穴94が形成されている。また、防水部材9のうちケース8の上端の開口80を覆う部分91がドーム型又は半球型に膨出しており、その部分91の内側に空洞92が形成されている。この空洞92内にプッシュロッド11が収容されている。以下、この部分91をカバー91という。
【0025】
図4は、
図2に図示されたカバー91等の拡大断面図である。
図5は、カバー91を切断した状態で示した斜視図である。
図2、
図4及び
図5にしめすように、カバー91の頭頂部93が隆起した状態に形成されており、頭頂部93の頂面が平坦に形成されている。頭頂部93の裏側であってカバー91の内面には、収容凹部97が形成されている。その収容凹部97に摺接部材6が嵌め込まれ、収容凹部97の内面が摺接部材6に面接触している。収容凹部97の縁には、内側に突出した係止部95が形成されており、係止部95が摺接部材6に引っ掛かっている。これにより、収容凹部97から摺接部材6の脱落が抑制されている。
【0026】
収容凹部97の内面には凸部96が形成されている。一方、摺接部材6の上面には凹部62が形成されている。凸部96が凹部62に嵌め合うことによって、摺接部材6が収容凹部97の内面に沿って移動することが抑止される。
【0027】
収容凹部97は、プッシュロッド11の先端12に対向する位置に配置されている。摺接部材6がプッシュロッド11の先端12に接触する。摺接部材6の下面61は、つまりプッシュロッド11の先端12に接触する面は、凹曲面状、特に凹球面状に形成されている。プッシュロッド11の先端12が凸曲面状、特に凸球面状に形成されている。プッシュロッド11の先端12の曲率と摺接部材6の下面61の曲率が等しく、プッシュロッド11の先端12と摺接部材6の下面61が面接触する。
【0028】
摺接部材6は、自己潤滑素材からなる。特に、摺接部材6は、耐摩耗性、耐熱性及び自己潤滑性を有するポリアセタールからなる。摺接部材6及びプッシュロッド11ともに自己潤滑素材からなれば、それらの接触面における摩擦係数が低い。そのため、摺接部材6がプッシュロッド11に対して滑りやすい。
【0029】
摺接部材6とプッシュロッド11の接触面における摩擦係数は、仮にプッシュロッド11とカバー91が接触した場合のプッシュロッド11とカバー91の接触面における摩擦係数よりも低い。これは、プッシュロッド11とカバー91の接触面では、凝着を伴う摩擦が発生するのに対して、摺接部材6とプッシュロッド11の接触面での凝着摩擦が発生しないためである。
【0030】
また、カバー91がエラストマー、例えば合成ゴムからなるのに対して、摺接部材6がポリアセタールからなるので、摺接部材6の弾性率はカバー91の弾性率よりも十分に高い。よって、摺接部材6が剛体とみなせる。そのため、摺接部材6は、カバー91に対して滑りにくいが、プッシュロッド11に対して滑りやすい。
【0031】
車両用ドアが閉じられた時には、カバー91の頭頂部93の頂面が車両用ドアに面接触し、
図3に示すようにカバー91が押し潰される。これにより、プッシュロッド11、摺動体1、支持軸13及び可動接片4が下に移動するので、固定接片3と固定接片5が電気的に切り離される。
【0032】
車両用ドアが閉じられた状態で、車両用ドアが車両の走行等によって振動する。そうすると、カバー91の頭頂部93が車両用ドアに追従して振動する。それに伴い、摺接部材6がプッシュロッド11に対して滑る。そのため、プッシュロッド11がカバー91を摩耗させることがない。更に、プッシュロッド11がカバー91の頭頂部93の振動を阻害することがなく、カバー91に局所的な大きな負荷が発生し難い。よって、カバー91の長寿命化を実現することができ、スイッチ100の耐久性が高い。
【0033】
凸部96は、変形しても体積を一定に保つ性質、つまり非圧縮性を有する。そのため、凸部96がプッシュロッド11によってプッシュロッド11の軸方向に圧縮されると、その凸部96がその軸に直交する方向に膨張するように変形する。そうすると、凸部96と凹部62に強固に嵌め合う。よって、カバー91の頭頂部93が車両用ドアの振動に追従して変形しても、摺接部材6が収容凹部97から脱落するのを抑制できる。
【0034】
車両用ドアが開かれる時には、カバー91がドーム状又は半球状に復元される。この際、プッシュロッド11、摺動体1、支持軸13及び可動接片4が上に移動して、固定接片3と固定接片5が可動接片4により導通する。
【0035】
以上に説明した実施形態から設計変更した変形例について以下に説明する。以下に説明する各変更点を組み合わせて適用してもよい。
【0036】
上記実施形態では、摺接部材6が耐摩耗性、耐熱性及び自己潤滑性の観点からポリアセタールからなるものとした。それに対して、摺接部材6がポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリプロピレン樹脂その他の合成樹脂からなるものとしてもよい。摺接部材6がこのような合成樹脂であっても、プッシュロッド11の先端がカバー91に直接接触した場合よりも十分に有効である。
【0037】
上記実施形態では、カバー91の内面に凸部96が形成され、摺接部材6に凹部62が形成され、凸部96が凹部62に嵌め合っている。それに対して、カバー91の内面に凹部が形成され、摺接部材6に凸部が形成され、その凸部がその凹部に嵌め合うものとしてもよい。
【0038】
図7及び
図8に示すように、カバー91の内面に凸部が形成されておらず、摺接部材6に凹部が形成されていなくてもよい。
【0039】
以上に本発明を実施するための形態について説明した。以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明の実施形態は本発明の趣旨を逸脱することなく変更、改良され得ることは当業者にとって明らかである。
【0040】
本出願は、2017年5月30日に出願された日本国特許出願 特願2017−106586を基礎として優先権を主張したものである。この日本国特許出願の全内容は、参照によって本願に組み込まれる。
スイッチ(100)は、開口(80)を有するケース(8)と、開口(80)を覆い、ケース(8)の外側へ膨出するように形成されるエラストマーのカバー(91)と、ケース(8)内から開口(80)を通じてカバー(91)内に突出し、開口(80)からカバー(91)内に向かって進出するとともにカバー(91)から開口(80)に向かって後退するように移動可能に設けられたプッシュロッド(11)と、プッシュロッド(11)を開口(80)からカバー(91)内に進出する方向に付勢する付勢部(2)と、ケース(8)内に設けられる固定接片(5)と、プッシュロッド(11)とともに移動することによって固定接片(5)に対して接離する可動接片(4)と、カバー(8)の内面に設けられ、プッシュロッド(11)の先端に接触する摺接部材(6)と、を備える。