(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461382
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】シュラウド付きタービンブレード
(51)【国際特許分類】
F01D 5/22 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
F01D5/22
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-568073(P2017-568073)
(86)(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公表番号】特表2018-524513(P2018-524513A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2015038221
(87)【国際公開番号】WO2017003416
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コク−ムン タム
(72)【発明者】
【氏名】チン−パン リー
(72)【発明者】
【氏名】エリック チェン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ケスター
【審査官】
齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−291405(JP,A)
【文献】
特開2013−117227(JP,A)
【文献】
米国特許第5350277(US,A)
【文献】
特開2009−168014(JP,A)
【文献】
米国特許第5531568(US,A)
【文献】
米国特許第6491498(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 5/20
F01D 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン構成要素(10)であって、
全体として細長い翼(32)を備え、該翼(32)は、前縁(34)と、後縁(36)と、正圧面(38)と、前記正圧面(38)の反対側にある負圧面(40)と、前記翼(32)の半径方向外側端部(44)にある先端(24)と、前記翼(32)をディスクに連結するために前記翼(32)の半径方向内側端部(48)に連結された根元部(46)と、を有しており、
前記翼(32)の前記先端(24)に連結されたシュラウド(22)を備え、
前記シュラウド(22)は、ほぼ前記正圧面(38)から前記負圧面(40)へ向かう方向に延在し、タービンエンジン(64)内で周方向に延在しており、
前記シュラウド(22)は、少なくとも部分的に、前記翼(32)の前記先端(24)に連結されたシュラウドベース(20)と、前記シュラウドベース(20)から半径方向外側に延在するナイフエッジシール(50)とから成り、
前記シュラウドベース(20)の半径方向外側面(25)に位置し、前記翼(32)の前記先端(24)に半径方向で隣接する流れ調整体(70,70a,70b)を備え、該流れ調整体(70,70a,70b)は、
前記シュラウドベース(20)の前記半径方向外側面(25)よりもさらに半径方向内側に位置する傾斜した半径方向外側面(72)を備え、該傾斜した半径方向外側面(72)は、ほぼ前記翼(32)の前記負圧面(40)から前記正圧面(38)の方向で第1縁部(74)から第2縁部(76)へと、前記第1縁部(74)が前記第2縁部(76)よりもさらに半径方向内側に位置するように延在しており、
前記傾斜した半径方向外側面(72)には複数のクーラント排出孔(80)が位置しており、該複数のクーラント排出孔(80)は、前記翼(32)の内部(81)に流体接続されている、
タービン構成要素(10)。
【請求項2】
前記第1縁部(74)は、前記全体として細長い翼(32)と前記シュラウド(22)との交差部で、前記全体として細長い翼(32)の前記負圧面(40)にほぼ整列している、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【請求項3】
前記傾斜した半径方向外側面(72)の前記第1縁部(74)は、前記シュラウドベース(20)の前記半径方向外側面(25)よりもさらに半径方向内側に位置しており、
半径方向に延在する壁面(78)が、前記傾斜した半径方向外側面(72)を前記シュラウドベース(20)の前記半径方向外側面(25)に接続しており、
前記傾斜した半径方向外側面(72)は、前記半径方向に延在する壁面(78)に対して所定の角度を成している、請求項2記載のタービン構成要素(10)。
【請求項4】
前記半径方向に延在する壁面(78)に対する前記傾斜した半径方向外側面(72)の前記角度は、前記翼(32)のプロファイルの関数として、前記第1縁部(74)に沿って変化する、請求項3記載のタービン構成要素(10)。
【請求項5】
前記傾斜した半径方向外側面(72)の前記角度は、前記翼プロファイルの前縁(34)から後縁(36)に向かう方向で漸進的に浅くなるように、前記第1縁部(74)に沿って変化する、請求項4記載のタービン構成要素(10)。
【請求項6】
前記第2縁部(76)は概して、前記全体として細長い翼(32)と前記シュラウド(22)との交差部で、前記全体として細長い翼(32)の前記正圧面(38)のプロファイルを有している、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【請求項7】
前記傾斜した半径方向外側面(72)の前記第2縁部(76)は、前記シュラウドベース(20)の前記半径方向外側面(25)と同じ半径方向の高さにあり、前記傾斜した半径方向外側面(72)と前記シュラウドベース(20)の前記半径方向外側面(25)との間の交差部を形成している、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【請求項8】
前記流れ調整体(70,70a,70b)は、前記シュラウドベース(20)の前記半径方向外側面(25)上に質量が削減された領域を画定する切欠により形成されている、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【請求項9】
前記シュラウドベース(20)は、前記ナイフエッジシール(50)の上流に延在する上流区分(52)と、前記ナイフエッジシール(50)の下流に延在する下流区分(54)とを有しており、前記流れ調整体(70,70a)は、前記シュラウドベース(20)の前記下流区分(54)に位置している、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【請求項10】
前記シュラウドベース(20)は、前記ナイフエッジシール(50)の上流に延在する上流区分(52)と、前記ナイフエッジシール(50)の下流に延在する下流区分(54)とを有しており、前記流れ調整体(70,70b)は、前記シュラウドベース(20)の前記上流区分(52)に位置している、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【請求項11】
前記シュラウドベース(20)は、前記ナイフエッジシール(50)の上流に延在する上流区分(52)と、前記ナイフエッジシール(50)の下流に延在する下流区分(54)とを有しており、前記流れ調整体(70)は、前記シュラウドベース(20)の前記下流区分(54)に位置する下流の流れ調整体(70a)と、前記シュラウドベース(20)の前記上流区分(52)に位置する上流の流れ調整体(70b)と、を有している、請求項1記載のタービン構成要素(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にタービン構成部品に関し、より詳細にはシュラウド付きタービン翼に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ガスタービンエンジンは、空気を圧縮するための圧縮機と、圧縮空気を燃料と混合し混合物に点火するための燃焼器と、電力を発生するためのタービンブレードアセンブリとを備えている。燃焼器はしばしば、華氏2500度を超過し得る高温で作動する。典型的なタービン燃焼器構成は、タービンブレードアセンブリをこのような高温に曝す。したがって、タービンブレードは、このような高温に耐え得る材料から製造されなければならない。
【0003】
タービンブレードは、一方の端部における根元部分と、タービンブレードの反対側の端部における、根元部分に連結されたプラットフォームから外側に向かって延在するブレードを形成する細長い部分とから成っている。ブレードは通常、根元部分と反対側の先端と、前縁と、後縁とから成っている。タービンブレードによって発生するトルク量を減少させる先端流の漏れを阻止するために、タービンブレードの先端はしばしば、タービンのガス流路におけるリングセグメントとブレードとの間の隙間のサイズを減少させる先端機構を有している。いくつかのタービンブレードは、
図1Aに示すような、先端に取り付けられる外側シュラウドを有している。
【0004】
図1Bに示すような先端漏れ損失は、本質的に、仕事の抽出の機会を失うことであり、空気力学的な二次的損失も招く。先端上の漏れを減じるために、シュラウド付きブレードは通常、先端ギャップに密に延在するための周方向のナイフエッジを備えている。タービン先端シュラウドは、ブレード減衰の目的のためにも使用される。
【0005】
シュラウドの重量を減らし、これによりブレード引張荷重を減じるために、いくつかの最新の先端シュラウドは、全リング型とは対照的に、扇形にされている。扇形にすることにより除去された材料は、
図1Aでは網掛け領域により示されている。扇形にすることによる材料の除去は、シュラウドのカバー率を減少させ、これに伴う漏れが増大し、二次的な空気力学的効率を増大させるので、タービンの空気力学的効率にとって有益ではない。
【0006】
いくつかのシュラウド付きブレードは内部冷却もされており、例えば米国特許第5531568号明細書に開示されているように、排出されたブレードクーラントから仕事を抽出するために、過去にはフェンスが使用されていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
タービン構成要素であって、漏れ流、および排出されたクーラント流を、高温の主ガス流に整列させるように方向付けるように構成された流れ調整体を備えた、シュラウド付き翼を含むタービン構成要素が設けられる。流れ調整体は、シュラウドベースの半径方向外側面に、翼の先端に半径方向で隣接して位置している。流れ調整体は、シュラウドベースの半径方向外側面よりもさらに半径方向内側に位置する傾斜した半径方向外側面を有する。傾斜した半径方向外側面は、ほぼ翼の負圧面から正圧面への方向で第1縁部から第2縁部へと、第1縁部が第2縁部よりもさらに半径方向内側に位置するように延在している。傾斜した半径方向外側面上には複数のクーラント排出孔が位置している。複数のクーラント排出孔は、翼の内部へと流体接続されている。
【0008】
1つの実施形態では、翼は全体として細長く(generally elongated)形成されており、この翼は、前縁と、後縁と、正圧面と、この正圧面の反対側にある負圧面と、翼の半径方向外側端部にある先端と、翼を支持するために、かつロータディスクに翼を連結するために、翼の半径方向内側端部に連結された根元部と、を有している。翼の先端にはシュラウドが連結されている。シュラウドは、ほぼ正圧面から負圧面に向かう方向に延在し、タービンエンジン内で周方向に延在している。シュラウドは少なくとも部分的に、翼の先端に連結されたシュラウドベースと、シュラウドベースから半径方向外側に延在するナイフエッジシールとから成っている。
【0009】
1つの実施形態では、第1縁部は、全体として細長い翼とシュラウドとの交差部で、全体として細長い翼の負圧面にほぼ整列している。
【0010】
1つの実施形態では、流れ調整体の傾斜した半径方向外側面の第1縁部は、シュラウドベースの半径方向外側面よりもさらに半径方向内側に位置していてよい。半径方向に延在する壁面は、流れ調整体の傾斜した半径方向外側面を、シュラウドベースの半径方向外側面に接続している。流れ調整体の傾斜した半径方向外側面は、半径方向に延在する壁面に対して所定の角度を成している。
【0011】
さらに別の実施形態では、半径方向に延在する壁面に対する傾斜した半径方向外側面の角度は、翼のプロファイルの関数として、第1縁部に沿って変化する。傾斜した半径方向外側面の角度は、翼プロファイルの前縁から後縁に向かう方向で漸進的に浅くなるように変化してよい。
【0012】
1つの実施形態では、第2縁部は概して、全体として細長い翼とシュラウドとの交差部で、全体として細長い翼の正圧面のプロファイルを有している。流れ調整体の傾斜した半径方向外側面の第2縁部は、シュラウドベースの半径方向外側面と同じ半径方向の高さにあってよく、流れ調整体の傾斜した半径方向外側面とシュラウドベースの半径方向外側面との間の交差部を形成していてよい。
【0013】
1つの実施形態では、流れ調整体は、シュラウドベースの半径方向外側面上に質量が削減された領域を画定する切欠により形成されている。
【0014】
シュラウドベースは、ナイフエッジシールの上流に延在する上流区分と、ナイフエッジシールの下流に延在する下流区分とを有している。1つの実施形態では、流れ調整体は、シュラウドベースの下流区分に位置していてよい。選択的な実施形態では、流れ調整体は、シュラウドベースの上流区分に位置している。好適な実施形態では、流れ調整体は、シュラウドベースの下流区分に位置する下流の流れ調整体と、シュラウドベースの上流区分に位置する上流の流れ調整体とを有している。
【0015】
流れ調整体の利点は、この流れ調整体が、シュラウドキャビティ内の仕事の抽出を促進することにある。傾斜は、翼の正圧面から負圧面への漏れ流およびクーラント流を阻止するフェンスのようにも作用する。
【0016】
流れ調整体の別の利点は、この流れ調整体が、先端上の漏れ流と排出されたクーラント流とを主ガス流に適合するように整列させることにある。シュラウドキャビティ内の先端上の漏れ流と排出されたクーラント流とは、最終的に主ガス流路に再進入しなければならない。本発明の設計の特徴は、仕事を抽出するためだけでなく、漏れ流およびクーラント流の調整もするためのものであり、その結果、主ガス流路内に再進入する際の空気力学的損失が減少する。
【0017】
流れ調整体のさらに別の利点は、この流れ調整体により結果としてシュラウドの重量が減少することにある。その結果、翼応力が減少し、シュラウド荷重を支持しなければならない翼区分が減少し、その結果、空気力学的なプロファイル損失が減少し、これにより翼の空気力学的効率が向上する。翼応力の低減により、ブレードのクリープ抵抗も高められる。
【0018】
流れ調整体のさらに別の利点は、この流れ調整体が、先端シュラウドの冷却のために先端冷却流をより広い範囲に広げることにある。周方向で、傾斜は、翼シュラウドにおいて局所的に流れ面積を増大させ、これにより流速は減少し、静圧は増大する。この結果、仕事の抽出を促進するシュラウド上の圧力面が生じる。
【0019】
これらのおよびその他の実施形態について、以下でより詳しく説明する。
【0020】
本発明を図面の助けを借りてより詳しく示す。図面は、本発明の好適な構成を示し、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】外側シュラウドを備えた従来のタービン翼を示す斜視図である。
【
図1B】漏れ流および主ガス流と共に示された従来のタービン翼の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による少なくとも1つの流れ調整体を備えたシュラウド付きタービン翼を有するガスタービンエンジンを示す斜視図である。
【
図3】シュラウド付き翼を示す、タービンケーシングからロータハブに向かう方向で上方から見た斜視図である。
【
図4】1つの実施形態による流れ調整体を有したシュラウド付き翼を示す、タービンケーシングからロータハブに向かう方向で上方から見た斜視図である。
【
図5】流れ方向で見た上流の流れ調整体を示す、
図4のV−V線に沿った断面図である。
【
図6】流れ方向に反して見た下流の流れ調整体を示す、
図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【
図7】本発明の実施形態による流れ調整体を備えたシュラウド付き翼上に圧力の輪郭と速度ベクトルとを示したCFD計算の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適な実施の形態の以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面が参照され、図面には、例として、限定としてではなく、本発明を実施可能な特定の実施の形態が示されている。本発明の思想および範囲から逸脱することなく、その他の実施の形態が使用されてもよいし、変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0023】
図2を参照すると、タービンエンジン64が示されている。このタービンエンジンは、本発明の実施形態を組み込むことができるタービン構成要素10を備えている。例示した実施形態では、タービン構成要素10はタービンブレードである。タービン構成要素10は、ロータディスクから、タービンエンジン64においてほぼ半径方向に延在する全体として細長い翼(generally elongated airfoil)32から成っている。翼32は、前縁34と、後縁36と、正圧面38と、この正圧面38の反対側にある負圧面40と、翼32の半径方向外側の第1端部44にある先端24と、翼32を支持するための、かつロータディスクに翼32を連結するための、翼32の半径方向内側の第2端部48で翼32に連結された根元部46とを有する。タービン構成要素10は、全体として細長い翼32の先端24に連結される1つ以上のシュラウド22を有していてよく、このシュラウドは外側シュラウドと呼ばれる。シュラウド22は、ほぼ正圧面38から負圧面40へ向かう方向に延在していてよく、タービンエンジン64内で周方向に延在していてよい。シュラウド22は少なくとも部分的に、全体として細長い翼32の先端24に連結されるシュラウドベース20と、このシュラウドベース20から半径方向外側に延在するナイフエッジシール50とから成っていてよい。ナイフエッジシール50は、タービンエンジン64の周方向に延在しており、タービンエンジン64のステータ上のハニカム構造51に対して密な先端ギャップを形成し、これにより先端上の漏れを減じている。
【0024】
図3に示したように、シュラウドベース20は、主ガス流に対してナイフエッジシール50の上流に延在する上流区分52と、主ガス流に対してナイフエッジシール50の下流に延在する下流区分54とを有していてよい。主ガス流は、タービンエンジン64の駆動媒体の流れに関する。シュラウドベース20には複数のクーラント通路80が設けられている。クーラント通路80は、シュラウドベース20の半径方向外側面25に開かれており、翼32の中空の内部からのクーラントを、シュラウドベース20の半径方向外側面25上にフィルム冷却を提供するように方向付ける。
【0025】
通路80を通って排出されたクーラントは、先端上の漏れ流と共に、最終的に主ガス流に入る。
図4〜
図6を参照すると、流れ調整体70の実施形態が示されている。この流れ調整体70は、先端上の漏れ流を伴う、シュラウドベース20の外側面25から排出されたクーラント流を、より良好な仕事の抽出と、空気力学的損失の低減のために調整する。図示するように、示された流れ調整体70は、シュラウドベース20の半径方向外側面25に位置している。流れ調整体70は、翼32に対して半径方向で隣接して位置している。すなわち、流れ調整体70は、翼32のすぐ上方で、シュラウドベース20の一部に位置している。
【0026】
流れ調整体70は、シュラウドベース20の半径方向外側面25よりもさらに半径方向内側に位置する傾斜した半径方向外側面72を有する。
図5および
図6に示したように、傾斜した半径方向外側面72は、ほぼ翼32の負圧面40から正圧面38の方向で第1縁部74から第2縁部76へと延在している。傾斜は、第1縁部74が、第2縁部76よりもさらに半径方向内側に位置するように方向付けられている。複数のクーラント排出孔80は、流れ調整体70の傾斜した半径方向外側面72上に位置している。クーラント排出孔80は、翼32の内部81へと流体接続されている。
【0027】
図示した実施形態では、流れ調整体70は、シュラウドベース20の上流区分52および下流区分54の両方に、すなわちナイフエッジシール50の各側に配置されている。したがって、図示した流れ調整体70は、第1部分、すなわち下流区分54に位置する下流の流れ調整体70aと、第2部分、すなわち上流区分52に位置する上流の流れ調整体70bとを有している。選択的な実施形態では、流れ調整体70は下流の流れ調整体70aのみを、または上流の流れ調整体70bのみを有していてもよい。
図5および
図6はそれぞれ、上流の流れ調整体70bおよび下流の流れ調整体70aの部分図を示している。
【0028】
1つの実施形態では、傾斜した半径方向外側面72の第1縁部74は、全体として細長い翼32とシュラウド22との交差部で、翼32の負圧面40にほぼ整列している。すなわち、第1縁部74(
図4には示さず)は、翼32の先端24の負圧面40のすぐ上方に位置しており、
図4に示したように、翼先端24における負圧面40の輪郭にほぼ沿って延在している。第2縁部76(
図4には示さず)は、翼32とシュラウド22との交差部で、ほぼ翼32の正圧面38のプロファイルを有していてよい。
【0029】
図5および
図6に示したように、傾斜した半径方向外側面72の第1縁部74は、シュラウドベース20の半径方向外側面25よりもさらに半径方向内側に位置する。半径方向に延在する壁面78は、傾斜した半径方向外側面72をシュラウドベース20の半径方向外側面25に接続している。半径方向に延在する壁面78は、相応して、翼32の負圧面40に整列している。図示した実施形態では、傾斜した半径方向外側面72の第2縁部76は、シュラウドベース20の半径方向外側面25と同じ半径方向の高さにあり、傾斜した半径方向外側面72とシュラウドベース20の半径方向外側面25との間の交差部を形成している。
【0030】
傾斜した半径方向外側面72は、傾斜の勾配を規定する半径方向に延在する壁面78に対して所定の角度を成す。半径方向に延在する壁面78に対する傾斜した半径方向外側面72の角度の向きにより、先端上の漏れ流、および孔80から排出されたクーラントが、翼32の正圧面38から負圧面40へと流れないようにするためのフェンス状の構造が提供される。このような機構は、シュラウドキャビティ内の仕事の抽出を促進する。
【0031】
傾斜した半径方向外側面72が、半径方向に延在する壁面78に対して成す角度は、翼32のプロファイルに関するものであってよい。図示した実施形態では、傾斜の角度は、翼のプロファイルの関数として、第1縁部の輪郭に沿って変化する。特に、傾斜の角度は、翼プロファイルの前縁34から後縁36に向かう方向で漸進的に浅くなるように変化してもよい。その結果、
図5および
図6に示したように、上流の流れ調整体70bにおける傾斜の勾配は、下流の流れ調整体70aにおける傾斜の勾配よりも通常は急である。傾斜の本発明による構成は、排出されたクーラント流と先端上の漏れ流とを、特にこれらの流れが主ガス流路に再進入しようとするとき、主流に適合するように整列させる。
【0032】
1つの実施形態では、流れ調整体70は、シュラウドベース20の半径方向外側面25における切欠により形成されている。この切欠は、シュラウドベース20の質量が削減された領域を画定する。その結果、翼応力が減少し、シュラウド荷重を支持しなければならない翼区分が減少し、その結果さらに、空気力学的なプロファイル損失が減少し、これにより翼32の空気力学的効率が向上する。翼応力の低減により、ブレードのクリープ抵抗も高められる。シュラウドベース20の質量の削減による別の利点は、ナイフエッジシール50の接触が向上することにある。
【0033】
使用中、主流内の高温ガスは、シュラウド22とタービンステータとの間の密なギャップを通過して漏れ流を形成することがある。同時に、通常は圧縮機空気を含む翼のクーラントは、翼32の内部81からシュラウド22を通って流れ、流れ調整体70の傾斜した半径方向外側面72に設けられたクーラント孔80から排出される。漏れ流と排出されたクーラント流とは、シュラウド付きタービン翼32の下流の高温の主ガス流の方向に流れるように、流れ調整体70によって案内される。少なくとも1つの実施形態では、漏れ流と排出されたクーラント流とは、漏れ流調整体70の半径方向外側に延在する壁面78に衝突して、再び方向付けられる。周方向で、漏れ流調整体の半径方向外側面は、傾斜部として方向付けられていることにより、シュラウド22において局所的な流れ面積を増加させ、したがって、流速は低下し、静圧が増加し、その結果、仕事の抽出を促進するシュラウド22上に合成圧力面が生じる。この技術的効果は、数値流体力学の計算によって確認されており、
図7に示すように、シュラウド付き翼上に圧力の輪郭および速度ベクトルを描くことによって説明することができる。図面の右部分91は、図示した実施形態による流れ調整体を備えたシュラウド付き翼上の圧力の輪郭および速度ベクトルを示しており、左部分は、本発明による流れ調整体を備えないベースライン構造によるシュラウド付き翼上の圧力の輪郭および速度ベクトルを示している。図から分かるように、図解91には、ベースライン構造と比較して、極めて高い静圧の比較的大きな領域93が示されている。この静圧は明らかに、傾斜した流れ調整体により提供された流れ面積の増大の結果として回収されたものである。増大した静圧の回収により仕事の抽出は促進され、これによりエンジン効率およびパワー出力も改善される。
【0034】
特定の実施形態を詳細に説明してきたが、当業者であれば、本開示の全体的な教示に照らして、そのような詳細に対する様々な変更および代替案を開発できることがわかるだろう。したがって、開示された特定の構成は単なる例であって、添付の特許請求の範囲全体、およびこれに等価の任意のものおよび全てのものを含む本発明の範囲を限定しようとするものではない。