(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6461386
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】構造部材および燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20190121BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
B60K15/03 Z
B62D29/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-13731(P2018-13731)
(22)【出願日】2018年1月30日
【審査請求日】2018年7月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515239722
【氏名又は名称】SRDホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 達也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊輔
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特表2017−501066(JP,A)
【文献】
中国実用新案第202557283(CN,U)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0046183(US,A1)
【文献】
特開2009−234406(JP,A)
【文献】
特開2015−30117(JP,A)
【文献】
特開2009−132297(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0217635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B62D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、
前記構造部材は、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な径方向を備え、
前記構造部材の先端において露出しつつ、当該構造部材の内部を前記軸方向に沿って貫通するガス導入路が形成され、
前記径方向に窪んで形成され、第1の穴を通じて前記ガス導入路に通ずる第1の隙間が形成され、
前記軸方向に沿って前記第1の穴より前記先端から遠い位置において、前記ガス導入路に通ずる第2の穴が形成され、
前記径方向に窪んで形成され、前記第2の穴を通じて前記ガス導入路に通ずる第2の隙間が形成される、
構造部材。
【請求項2】
請求項1に記載の構造部材であって、
前記第1の隙間には当該第1の隙間を確保する少なくとも二つの柱状部材が設けられ、
前記第1の穴は、前記二つの柱状部材が交差する位置に設けられる、
構造部材。
【請求項3】
請求項2に記載の構造部材であって、
前記二つの柱状部材は、前記径方向に沿った平面上において垂直に交差する、
構造部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の構造部材であって、
前記第1の穴が、前記ガス導入路へガスが流入するガス流入穴であり、
前記第2の穴が、前記ガス導入路からガスが流出するガス流出穴である、
構造部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の構造部材を用いた燃料タンク。
【請求項6】
燃料タンクであって、
当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材を有し、
前記構造部材は、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な径方向を備え、
前記構造部材の先端において露出しつつ、当該構造部材の内部を前記軸方向に沿って貫通するガス導入路が形成され、
前記径方向に窪んで形成され、第1の穴を通じて前記ガス導入路に通ずる第1の隙間が形成され、
前記軸方向に沿って前記第1の穴より前記先端から遠い位置において、前記ガス導入路に通ずる第2の穴が形成され、
前記第1の隙間は、前記構造部材の先端に位置する平面頂部と台座部の間に設けられ、
前記台座部は前記径方向に突出したフランジ部の上に設けられ、
前記壁が、前記第1の隙間に入り込むとともに、前記台座部と前記フランジ部により画定される段差部の上に配置されている、
燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造部材および燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの如き容器には、その内側及び外側に種々の部材が取り付けられる。このような部材の取り付け方法として種々の技術が開示されている。また、燃料タンクは、従来は金属製のものが用いられてきたが、近年は軽量化等の理由から、熱可塑性樹脂の如き樹脂により成形される樹脂燃料タンクが用いられるようになっている。このような事情に鑑み、部品の燃料タンクなどのへの取り付け方法についても新た技術が提案されている。
【0003】
特許文献1は、構成部品を成形品に連結する方法およびそのようなシステムを開示している。特許文献1に開示の方法では、(a)ブロー成形される成形品の壁に隣接して空隙を有する構成部品を配置すると共に、金型の成形面に設けられた凹部に構成部品の空隙を配置する工程と、(b)成形品の壁がまだ少なくとも部分的に溶融している間に、構成部品の一部を成形品の壁の一部に重ね合わせる工程と、(c)構成部品と成形品の壁との接続を保つために、成形品の壁を、成形品の壁の一部と重なり合った構成部品の一部と共に冷却する工程と、を有し、(b)の工程において、構成部品と関連して少なくとも1つのツールを動かすことにより、成形品の壁の一部が構成部品の一部に重なり合うまで、ツールが、成形品の壁の一部と係合して成形品の壁の一部を動かし、成形品の壁の一部が、少なくとも部分的に空隙に動かされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5871280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、構成部品をブロー成形される成形品の壁に取り付ける方法に関するものである。この方法は、ブロー成形におけるパリソンと構成部品を金型の壁、例えば壁の凹部などに当てておき、金型を締めた後に空気を吹き込む(ブローアップ)。この際、パリソンの一部が構成部品の空隙に移動して、パリソンの壁の一部が構成部品の二つの部分の間に挟み込まれることにより、パリソンと構成部品が接合する。
【0006】
特許文献1の方法によれば、構成部品とパリソンの間に隙間が形成された状態で金型を締めるため、隙間に滞留していたガスの逃げ場がなくなることになる。この結果、パリソンの構成部品の空隙への移動が、滞留したガスの圧力により妨げられ、最終的に、構成部品とパリソンの接合強度の低下につながるおそれがある。
【0007】
本発明は、燃料タンクを構成する壁に対し、高い信頼性をもって取り付けられ得る構造部材の構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構造部材は、燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、前記構造部材は、前記壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な径方向を備え、前記構造部材の先端において露出しつつ、当該構造部材の内部を前記軸方向に沿って貫通するガス導入路が形成され、前記径方向に窪んで形成され、第1の穴を通じて前記ガス導入路に通ずる第1の隙間が形成され、前記軸方向に沿って前記第1の穴より前記先端から遠い位置において、前記ガス導入路に通ずる第2の穴が形成される。
【0009】
本発明の構造部材は、例えば前記第1の隙間には当該第1の隙間を確保する少なくとも二つの柱状部材が設けられ、前記第1の穴は、前記二つの柱状部材が交差する位置に設けられる。
【0010】
本発明の構造部材は、例えば前記二つの柱状部材は、前記径方向に沿った平面上において垂直に交差する。
【0011】
本発明の構造部材は、例えば前記径方向に窪んで形成され、前記第2の穴を通じて前記ガス導入路に通ずる第2の隙間が形成される。
【0012】
本発明の構造部材は、例えば前記第1の穴が、前記ガス導入路へガスが流入するガス流入穴であり、前記第2の穴が、前記ガス導入路からガスが流出するガス流出穴である。
【0013】
本発明の燃料タンクは、上述の構造部材を用いたものである。
【0014】
本発明の燃料タンクは、例えば前記第1の隙間は、前記構造部材の先端に位置する平面頂部と台座部の間に設けられ、前記台座部は前記径方向に突出したフランジ部の上に設けられ、前記壁が、前記第1の隙間に入り込むとともに、前記台座部と前記フランジ部により画定される段差部の上に配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構造部材においては、ガスを逃がすことの可能なガス導入路および二つの穴が設けられており、成形時に構造部材とタンクの壁の材料の間で滞留しがちなガスを逃がすことができ、両者を適切に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る構造部材を用いた樹脂燃料タンクの一例の斜視図である。
【
図2】
図2は、従来の構造部材の取り付け方法の工程を模式的に示す図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程をそれぞれ示す。
【
図3】
図3は、実施形態の構造部材の全体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の構造部材とパリソンが互いに係合した状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の構造部材とパリソンが互いに係合した状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の構造部材の一部を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線に沿った断面図、(c)は(a)のD−D線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の構造部材の一部を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のE−E線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の構造部材とパリソンを取り付ける過程を示す図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程をそれぞれ示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態に基づいて、本発明の詳細およびその他の特徴について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る構造部材を用いた樹脂燃料タンクの一例の斜視図である。樹脂燃料タンク100は、自動車等に取り付けられる燃料タンクであり、軽量化等の観点から、本体60は熱可塑性樹脂の如き樹脂により成形されている。また、本体60の内部空間には平板状の内蔵部材70、構造部材1が配置され、構造部材1が、本体60の内部の壁と内蔵部材70を接続することにより、内蔵部材70が本体60の内部に安定的に固定され、樹脂燃料タンク100の形状を維持する役割を果たす。
【0019】
図2は、特許文献1に記載の如き、従来の取り付け方法の工程において起こり得る問題を模式的に示している。
図2(a)の第1工程では、従来の構造部材1Aが、内蔵部材70の本体60の壁を成形するパリソン30に隣接して位置し、パリソン30の一部が金型200の壁に接触している状態を示している。この状態では、構造部材1Aとパリソン30の間のD領域に、ガス(空気)溜りが発生し得る。
【0020】
図2(b)の第2工程では、第1工程から構造部材1Aが、パリソン30を介して、金型200の壁に押し込まれている状態を示しており、パリソン30の一部が金型200の壁に密着する。さらに第2工程に続く
図2(c)の第3工程では、金型を締めることにより、構造部材1Aとパリソン30が金型200の壁に密着するため、
図2(a)で滞留していたガスの逃げ場がなくなり、構造部材1Aの表面に形成された空隙等に移動し、例えば空隙に対応したE領域にガスが滞留する。
【0021】
この結果、パリソン30の構造部材1Aの空隙への移動が、滞留したガスの圧力により妨げられ、最終的に、構造部材1Aとパリソン30のいわゆるアンカー効果が抑制され、両者の接合強度の低下につながるおそれがある。
【0022】
図3は、上述した課題の解決に対応した、本発明の一実施形態の構造部材1の全体を示す斜視図である。構造部材1は全体的に略円筒形状の外形を有し、本体60と内蔵部材70を接続するとともに、本体60の壁を支持するとともに本体60の内部に所定の空間を確保する柱部材としての役割を果たす内部構造部材の一種である。構造部材1は、本体60の壁を支持する方向に沿う軸方向(Z方向)と、この軸方向とは垂直な径方向(X方向)を備えている。
【0023】
構造部材1は、基部3と、基部3の上に配置された第2の隙間形成部材4と、第2の隙間形成部材4の上に配置されたフランジ部5と、フランジ部5の上に配置された台座部6と、台座部6の上に配置された第1の隙間形成部材7と、第1の隙間形成部材7の上であって、構造部材1の先端(頂部)に形成された平面頂部8を有する。基部3、第2の隙間形成部材4、フランジ部5、台座部6、第1の隙間形成部材7、平面頂部8は、構造部材1の軸方向における中心部を中心として同軸上に配置されている。さらに、構造部材1の軸方向に沿って、かつ径方向における面内の中心には、ガス導入路Cが先端の平面頂部8において露出しつつ、構造部材1の中心を貫通するように形成されている。
【0024】
基部3は、図示せぬ下側の内蔵部材70に固定される部分であり、固定の形態などは特に限定されず、固定される部材も特に限定されない。基部3の上面に配置された第2の隙間形成部材4は、構造部材1の軸方向に垂直な平面視で十字形状を有する。そして、第2の隙間形成部材4は、基部3とフランジ部5との間に第2の隙間G2を確保する。第2の隙間G2は構造部材1の径方向に窪んで形成されて所定の空間を確保している。
【0025】
第2の隙間形成部材4の上に配置されたフランジ部5は、構造部材1の径方向で最も外側に突出した円盤状の部材である。フランジ部5の上面に配置された台座部6は、フランジ部5の上側平面に形成され、フランジ部5と協働して階段状の段差部Sを画定する。台座部6の上面に配置された第1の隙間形成部材7は、第2の隙間形成部材4と同様に、構造部材1の軸方向に垂直な平面視で十字形状を有する(
図5(b)、
図7(b)参照)。そして、第1の隙間形成部材7は、台座部6と平面頂部8との間に第1の隙間G1を確保する。平面頂部8は、第1の隙間形成部材7の上であって構造部材1の頂部に位置し、平面を有する円盤状の部材であって、その中心にはガス導入路Cが開口している。
【0026】
図4は、実施形態の構造部材1と、成形時に本体60の壁の材料となるパリソン30が互いに係合した状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
図5は、
図4と同様に、実施形態の構造部材1とパリソン30が互いに係合した状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
【0027】
構造部材1の上部(フランジ部5より上の部分)の表面は、平面頂部8、台座部6、フランジ部5及びそれらの間に存在する第1の隙間G1、段差部Sにより、凹凸形状になっており、この部分がパリソン30と結合するアンカー部20を形成する。アンカー部20はパリソン30との間でアンカー効果を発揮し、両者は強固に結合する。
【0028】
特に
図4(b)、
図5(a)に示す様に、本実施形態では、構造部材1の第1の隙間G1にパリソン30が入り込んでおり、アンカー部20とパリソン30との接合部の強度が向上し、接合の安定化が図られている。すなわち、第1の隙間G1は構造部材1の径方向に窪んで形成されて所定の空間を確保し、第1の隙間G1に入り込んだパリソン30と構造部材1の間で、いわゆるアンカー効果が発揮され、両者は強固に接合する。また、パリソン30は第1の隙間G1に連続して形成された段差部Sに配置された状態になっており、この部分によっても接合強度が向上する。
【0029】
図6は、実施形態の構造部材1の一部を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線に沿った断面図、(c)は(a)のD−D線に沿った断面図である。
【0030】
図6(a)〜(c)に示す様に、構造部材1の軸方向における中心部には、ガス導入路Cが平面頂部8から基部3まで、構造部材1の中心を貫通するように形成されている。後述するように、
図2(a)で示した製造時における第1工程で構造部材1の上部に溜まったガス(空気)は、構造部材1のガス導入路Cおよび第1の隙間G1から流入して、下方に移動することが可能である。ガス導入路Cは第1の隙間G1、第2の隙間G2に連通しており、ガス導入路Cから流入したガスが、第1の隙間G1から流入したガスと合流し、第2の隙間G2から流出する。
【0031】
図7は、
図6と同様に、実施形態の構造部材1の一部を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のE−E線に沿った断面図である。
図7(b)に示す様に、台座部6の上面に配置された第1の隙間形成部材7は、第2の隙間形成部材4と同様に、構造部材1の軸方向に垂直な平面視で十字形状を有する。第1の隙間形成部材7、第2の隙間形成部材4は四つの分割された柱状部材(リブ)7aから構成されるということもできる。少なくとも二つの柱状部材7aを、径方向に沿った平面上において垂直に交差することにより、隙間を確保することができる。また、十字形状に配置された四つの柱状部材7aにより、隙間を確保しつつも所定の強度が確保される。
【0032】
また、
図3、
図4(b)、
図6(b)、
図7(b)に示す様に、二つの(または4つの)柱状部材7aが交差する位置に、第1の穴H1が設けられる。第1の隙間G1は、この第1の穴H1を通じてガス導入路Cに通ずることになる。同様に、二つの(または4つの)柱状部材が交差する位置に、第2の穴H2が設けられる。第2の穴H2は、軸方向に沿って第1の穴H1より構造部材1の先端から遠い位置に設けられることになり、第2の隙間G2は、この第2の穴H2を通じてガス導入路Cに通ずることになる。
【0033】
また、本実施形態では、
図4(b)に示す様に、樹脂燃料タンク100の本体60を成形するパリソン30の形状を袋形状にし、フランジ部5、台座部6、第2の隙間形成部材4、平面頂部8を含むアンカー部20を囲っている。この結果、構造部材1のアンカー部20、特に第1の隙間G1にパリソン30が入り込みやすくなり、アンカー効果が効果的に発揮され、構造部材1が安定的に所定の位置に固定される。
【0034】
図8は、実施形態の構造部材1とパリソン30を取り付ける(接合する)過程を示す図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程をそれぞれ示す断面図である。予めブロー成形により、所定の大きさのパリソン30を成形しておく、その後
図8(a)に示す様に、第1の金型201の凹部202にパリソン30を配置するとともに、構造部材1をパリソン30に隣接した位置に配置する。その後、
図8(a)の第1工程から
図8(b)の第2工程で示す様に第1の金型201の移動(下降)を開始すると、構造部材1の平面頂部8の平面がパリソン30を押しつつ、パリソン30が凹部202に入り込む。
【0035】
上述した様に、構造部材1の表面には、予め凹凸形状をなすアンカー部20が形成されている。そのため、第1の金型201の移動を開始すると、パリソン30はさらにアンカー部20に密着し、パリソン30と構造部材1が結合されることとなる。
【0036】
この際、
図2で説明した様に、結合前にアンカー部20とパリソン30との間にはガス(空気)が滞留しており、このガスがアンカー部20とパリソン30との結合を妨げるおそれがある。しかしながら、本実施形態の構造部材1においては、上述した通り、ガスの通過を可能とするガス導入路C、第1の穴H1、第2の穴H2が設けられている。そのため、
図8(a)から
図8(b)の工程において、パリソン30とアンカー部20の間に滞留したガス(空気)が移動可能となっている。本例では、矢印Pで示す様に、ガスはガス導入路Cから流入するとともに、矢印Qで示す様に、ガスは第1の隙間G1から第1の穴H1を通じて流入し、ガス導入路Cのガスに合流する。
【0037】
図8(c)の第3工程では、第1の金型201がパリソン30と構造部材1を把持した状態で、第1の金型201の周りに存在する第2の金型203を移動(下降)させ、第1の金型201および第2の金型203を型締めし、さらに第1の金型201および第2の金型203の内部に空気が吹き込まれ(ブローアップ)、パリソン30は凹部202を含む第1の金型201の内壁および第2の金型203の内壁に密着する。そして、ガス導入路C、第1の隙間G1から流入したガスは下方に移動し、矢印Rで示す様に、第2の穴H2を通じて第2の隙間G2から流出する。
【0038】
よって、本実施形態の構造部材1によれば、パリソン30と構造部材1のアンカー部20との間に滞留したガス(空気)を、ガス導入路Cのみならず、パリソン30が入り込む第1の隙間G1を用いて積極的に逃がすことができる。よって、滞留したガスが、パリソン30の第1の隙間G1への移動を妨げるのを抑制することができ、パリソン30と構造部材1(のアンカー部20)との必要な接合強度を確保するとともに、接合強度を向上させることが可能となる。
【0039】
本実施形態では、第1の穴H1が、ガス導入路Cへガスが流入するガス流入穴として機能し、第2の穴H2が、ガス導入路Cからガスが流出するガス流出穴として機能する。第2の穴H2および第2の隙間G2は、第1の穴H1および第1の隙間G1より、構造部材1の先端から遠い側、即ちガスが流れる下流側に位置しており、円滑にガスを排出することができる。
【0040】
尚、本体60、構造部材1を形成する素材は特に限定されない。本体60は、変性ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂により成形され得るが、特に素材は限定されない。また、構造部材1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂により成形され得るが、特に素材は限定されない。本体60と構造部材1を同じ素材により成形してもよい。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1 構造部材
3 基部
4 第2の隙間形成部材
5 フランジ部
6 台座部
7 第1の隙間形成部材
7a 柱状部材
8 平面頂部
20 アンカー部
30 パリソン
60 本体
70 内蔵部材
100 樹脂燃料タンク
C ガス導入路
G1 第1の隙間
G2 第2の隙間
H1 第1の穴(ガス流入穴)
H2 第2の穴(ガス流出穴)
S 段差部
【要約】
【課題】成形時に構造部材と燃料タンクの壁の材料の間で滞留しがちなガスを逃がし、両者を適切に接合する。
【解決手段】燃料タンクの内部空間に配置されて、当該燃料タンクの壁を支持可能な構造部材であって、構造部材は、壁を支持する方向に沿う軸方向と、当該軸方向とは垂直な径方向を備え、構造部材の先端において露出しつつ、当該構造部材の内部を軸方向に沿って貫通するガス導入路が形成され、径方向に窪んで形成され、第1の穴を通じてガス導入路に通ずる第1の隙間が形成され、軸方向に沿って第1の穴より先端から遠い位置において、ガス導入路に通ずる第2の穴が形成される。
【選択図】
図3