特許第6461418号(P6461418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6461418
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】電流検出器用のコア及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20190121BHJP
   H01F 38/28 20060101ALI20190121BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20190121BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H01F27/24 H
   H01F38/28
   H01F41/02 K
   G01R15/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-195125(P2018-195125)
(22)【出願日】2018年10月16日
【審査請求日】2018年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597005587
【氏名又は名称】株式会社エス・エッチ・ティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 愛
(72)【発明者】
【氏名】北井 敦嘉
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/061850(WO,A1)
【文献】 特開2017−216390(JP,A)
【文献】 特開2004−77184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
G01R 15/20
H01F 38/28
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出器用のコアであって、
環状のコア本体を径方向に2カ所で切断して形成される一対のコア片であって、切断面どうしが第1ギャップと第2ギャップを存して対向するよう配置されたコア片と、
前記第1ギャップと前記第2ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の周面を部分的に樹脂で被覆した第1部分モールド及び第2部分モールドと、を具え、
前記第1部分モールドは、前記第1ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の一方の周面を被覆する第1−1モールド部材と、他方の前記コア片の前記切断面の周面を被覆する第1−2モールド部材と、を具え、
前記第2部分モールドは、前記第2ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の一方の周面を被覆する第2−1モールド部材と、他方の前記コア片の前記切断面の周面を被覆する第2−2モールド部材と、を具え、
前記第1−1モールド部材と前記第1−2モールド部材、又は、前記第2−1モールド部材と前記第2−2モールド部材の少なくとも一方は、前記樹脂から形成されるブリッジ部により繋がっている、
ことを特徴とする電流検出器用のコア。
【請求項2】
前記第1部分モールドは、前記ブリッジ部により前記第1−1モールド部材と前記第1−2モールド部材が繋がっており、
前記第2部分モールドは、前記第2−1モールド部材と前記第2−2モールド部材が繋がっていない構成であり、
前記第1部分モールドの前記ブリッジ部は、溝を有し、前記溝にて折り曲げて切断可能である、
請求項1に記載の電流検出器用のコア。
【請求項3】
前記ブリッジ部は、内径側に形成される、
請求項1又は請求項2に記載の電流検出器用のコア。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電流検出器用のコアの一方又は両方の前記ギャップに磁気検出素子を配置し、前記コア本体の中央にバスバーを挿入してなる電流検出器。
【請求項5】
電流検出器用のコアを製造する方法であって、
環状のコア本体を準備する工程、
前記コア本体部分的に樹脂を被覆して第1部分モールドと第2部分モールドを形成する部分モールド形成工程、
前記第1部分モールドが形成された位置で前記第1部分モールドと前記コア本体を径方向に切断して第1ギャップを形成する第1ギャップ形成工程、
前記第2部分モールドが形成された位置で前記第2部分モールドと前記コア本体を径方向に切断して第2ギャップを形成する第2ギャップ形成工程、
とを含んでおり、
前記第1ギャップ形成工程及び/又は前記第2ギャップ形成工程は、前記第1部分モールド及び/又は前記第2部分モールドの一部を切断することなく前記樹脂により繋がったブリッジ部を切り残すように実施される、
ことを特徴とする電流検出器用のコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出器用のコア及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、コア本体に複数のギャップを形成したコア及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性材料からなる環状のコア本体にギャップを形成してコアを作製し、コアの内周側にバスバーを配置すると共に、ギャップに磁気検出素子を配置してなる電流検出器が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−88019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気特性を高め、また、磁気飽和特性を調整するために、コア本体に複数のギャップを形成したコアも提案されている。たとえば、ギャップをコア本体に2つ形成し、一方のギャップに磁気検出素子を配置、他方のギャップは磁気飽和特性を安定させるための役割をなす。
【0005】
ギャップが1つの場合、環状のコア本体を切断し、ギャップを形成してもコアは略C字状形状を保った1つの部材のままであるが、ギャップを2つ形成すると、コア本体は、2つのコア片となり、ばらばらになる。
【0006】
とくに、コア本体として帯状鋼板を巻回した所謂巻きコアを採用した場合、コア本体には、鋼板の巻き始めと巻き終わりの位置にバラツキが生じる。また、特に巻きコアの場合、鋼板の巻き強さが異なると、同じ巻き数であってもコア本体の断面積が異なることがある。また、巻きコアは鋼板を巻回した後に焼鈍を施すが、巻回、焼鈍、ワニス含浸などの工程における残留応力が存在し、コア本体を切断したときに、巻回された帯状鋼板の復元力により、コア片が開いてしまうこともある。このように、断面積や開きが異なるコア片からコアを作製すると、ギャップにおけるコア片どうしの対向面積にバラツキが生じ、透磁率の低下を招き、所望の磁気特性や磁気飽和特性を得ることができず、直線性やその指標である直線領域における理想B−Hからの誤差を示すエラーレートに影響を与える虞がある。また、ギャップの形成位置がコア本体の中央でない場合には、ギャップ切断により得られるコア片は左右非対称となる。このため、2つのコア片を正しく組み合わせるペアリングが重要になる。
【0007】
このため、切断前後で他のコア本体から作製されたコア片とのペアリングを避け、同じコア本体から切断したコア片どうしを組み合わせて使用することが求められる。しかしながら、コア本体を切断してコア片を製造し、これらコア片を電流検出器への組込みする間に、同じコア本体から切断されたコア片をペアのまま維持することは困難且つ煩雑であった。
【0008】
本発明の目的は、コア片のペアリングを維持したまま、複数のギャップを形成することのできる電流検出器用のコア及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電流検出器用のコアは、
環状のコア本体を径方向に2カ所で切断して形成される一対のコア片であって、切断面どうしが第1ギャップと第2ギャップを存して対向するよう配置されたコア片と、
前記第1ギャップと前記第2ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の周面を部分的に樹脂で被覆した第1部分モールド及び第2部分モールドと、を具え、
前記第1部分モールドは、前記第1ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の一方の周面を被覆する第1−1モールド部材と、他方の前記コア片の前記切断面の周面を被覆する第1−2モールド部材と、を具え、
前記第2部分モールドは、前記第2ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の一方の周面を被覆する第2−1モールド部材と、他方の前記コア片の前記切断面の周面を被覆する第2−2モールド部材と、を具え、
前記第1−1モールド部材と前記第1−2モールド部材、又は、前記第2−1モールド部材と前記第2−2モールド部材の少なくとも一方は、前記樹脂から形成されるブリッジ部により繋がっている。
【0010】
前記第1部分モールドは、前記ブリッジ部により前記第1−1モールド部材と前記第1−2モールド部材が繋がっており、
前記第2モールドは、前記第2−1モールド部材と前記第2−2モールド部材が繋がっていない構成であり、
前記第1部分モールドの前記ブリッジ部は、溝を有し、前記溝にて折り曲げて切断可能とすることが望ましい。
【0011】
前記ブリッジ部は、前記内径側に形成することができる。
【0012】
本発明の電流検出器は、
上記電流検出器用のコアの一方又は両方の前記ギャップに磁気検出素子を配置し、前記コア本体の中央にバスバーを挿入してなる。
【0013】
本発明の電流検出器用のコア製造方法は、
環状のコア本体を準備する工程、
前記コア本体の部分的に樹脂を被覆して第1部分モールドと第2部分モールドを形成する部分モールド形成工程、
前記第1部分モールドが形成された位置で前記第1部分モールドと前記コア本体を径方向に切断して第1ギャップを形成する第1ギャップ形成工程、
前記第2部分モールドが形成された位置で前記第2部分モールドと前記コア本体を径方向に切断して第2ギャップを形成する第2ギャップ形成工程、
とを含んでおり、
前記第1ギャップ形成工程及び/又は前記第2ギャップ形成工程は、前記第1部分モールド及び/又は前記第2部分モールドの一部を切断することなく前記樹脂により繋がったブリッジ部を切り残すように実施される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電流検出器用のコアによれば、コアは、コア本体を切断して第1ギャップと第2ギャップを形成する際に、コア片どうしを部分的に樹脂で被覆した第1部分モールドと第2部分モールドにより連繋している。この第1部分モールド及び第2部分モールドは、少なくとも一方がブリッジ部により連繋されているから、第1ギャップと第2ギャップを形成しても、ブリッジ部によってコア片どうしペアが崩れることはない。従って、この状態でコアを電流検出器に組み込むことで、同じコア本体から形成されたコア片どうしのペアを維持することができる。故に、コアが帯状鋼板を巻回した巻きコアであっても、第1ギャップと第2ギャップの切断前後で他のコア本体のコア片とのペアリングを避け、同じコア本体から切断したコア片どうしを組み合わせて使用することができる。このため、ギャップを介して対向する切断面の面積及び帯状鋼板の復元力による開きもほぼ同じであり、透磁率の低下を防止して、安定した磁気特性や磁気飽和特性を得ることができ、所望の直線性やエラーレートを得ることができる。非対称位置にギャップを形成したコア本体の場合もペアリングを確保できる。
【0015】
また、本発明に係る電流検出器用のコアは、第1ギャップ及び/又は第2ギャップ間を繋ぐブリッジ部により、ギャップの間隔を維持することができるから、電流検出器への組込みの際にギャップの調整等を不要にすることができる。コア本体は全体を樹脂モールドするのではなく、部分的なモールドであるためインサート成形などの樹脂成形時や使用中の線膨張によりモールドからコアに作用する応力を低減させることができ、磁気特性を安定化させることができる。
【0016】
コアに形成された複数のギャップは、1のギャップは磁気検出素子を配置し、他方のギャップは磁気飽和防止用として用いることができる。また、第1ギャップと第2ギャップにそれぞれ高電流用、低電流用の磁気検出素子を配置し、高電流、低電流の検出を行なうようにしてもよい。また、第1ギャップと第2ギャップに同じ又は同等の磁気検出素子を配置して、磁気検出素子の障害発生に備えて冗長化を図るようにしてもよい。
【0017】
本発明の電流検出器用のコアの製造方法によれば、コア本体は、第1ギャップと第2ギャップを形成する位置に予め第1部分モールドと第2部分モールドを施し、部分モールドされた領域に第1ギャップと第2ギャップを形成する。第1部分モールド及び/又は第2部分モールドは、ギャップ形成工程において、一部を切断することなくブリッジ部として切り残すことで、コア片がギャップ形成によりばらばらになってしまうことはない。従って、上記のとおり、コア片のペアが崩れることはなく、ギャップ間隔も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコアの平面図である。
図2図2は、コア本体に部分モールドを形成した平面図である。
図3図3は、本発明の異なる実施形態に係るコアの平面図である。
図4図4は、図3の変形例である。
図5図5は、ブリッジ部に溝を形成し、コア片どうしを折り曲げて切断可能とした実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るコア10について、図面を参照しながら説明を行なう。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にコア10の平面図である。コア10は、環状のコア本体12の2カ所を切断したコア片20,23を有し、コア片20,23どうしは、その切断面21,24を第1ギャップ26と第2ギャップ28が形成されるように対向して配置して構成される。コア片20,23は、ギャップ26,28を存して対向する切断面21,24の周面(外周面)を樹脂で部分的に被覆した部分モールド30,40が形成されている。以下、2つの部分モールドを適宜第1部分モールド30、第2部分モールド40と称する。図示の実施形態では、ギャップ26,28は2カ所であるが、複数箇所であれば3カ所以上であっても構わない。
【0021】
部分モールド30,40は、図1に示すように、以下で説明するブリッジ部33,43となる部分を、他の部分に比べて厚く形成することが望ましい。これにより、ギャップ26,28の切断でも確実にブリッジ部33,43を切り残しできつつ、部分モールド30,40を全体的に薄くすることができる。
【0022】
コア10は、複数に分割されたコア片20,23がばらばらになることなく、少なくとも環状の形態を維持できるように、ギャップ26,28を跨ぐ部分モールド30,40の少なくとも一方、望ましくは両方が、図1に示すように、ブリッジ部33,43により連繋されている。図示の実施形態では、第1部分モールド30は、一方のコア片20の切断面21の周囲に形成された第1−1モールド部材31と、他方のコア片23の切断面24の周囲に形成された第1−2モールド部材32がブリッジ部33によって連繋されている。また、第2部分モールド40は、一方のコア片20の切断面21の周囲に形成された第2−1モールド部材41と、他方のコア片23の切断面24の周囲に形成された第2−2モールド部材42がブリッジ部43によって連繋されている。
【0023】
本発明のコア10は、電流検出器の部品として用いることができ、たとえば、ギャップ26,28の一方又は両方に磁気検出素子を挿入し、中央の開口にバスバーを挿通させることで電流センサーを構成する。磁気検出素子を挿入しないギャップは、たとえば磁気飽和防止用のギャップの役割をなす。図示では、ギャップ26,28の幅は同じであるが、磁気検出素子を挿入するギャップ幅を広く採り、磁気飽和防止用のギャップ幅を狭くすることもできる。
【0024】
本発明では、コア片20,23は、環状のコア本体12を切断して形成される。コア本体12は、磁性材料から構成することができ、磁性材料の薄板を巻回して焼鈍した巻きコア、環状の磁性材料の薄板を積層した積層コア、磁性材料粉末を圧粉成形したダストコアを例示できる。本発明は、コア本体12を切断したときに、コア片20,23どうしのペアを違えることなく維持することができるから、コア本体12に巻き始めと巻き終わりで巻回数の異なる巻きコアや、ギャップ26,28の形成位置が中央からずれた非対称形状のコア片20,23からなるコアに特に好適である。
【0025】
部分モールド30,40は、電気絶縁性の樹脂であり、インサート成形などによりコア本体12形成することができる。樹脂として、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)を例示することができる。インサート成形は、たとえばコア本体12と部分モールド30,40に対応する凹みを有する金型を用い、コア本体12を配置して、各種射出成形機を用いて溶融状態の樹脂を圧入・硬化させることにより行なうことができる。部分モールド30,40は、コア本体12の一部、すなわち、コア本体12の外周を部分的に被覆するように設ける。モールドをコア本体12の全体に形成すると、インサート成形の際にコア本体12に応力が加わり、また、インサート成形後は、コア本体12の材料とモールドする樹脂との線膨張率の差により、コア本体12に応力が生じ、コア本体12の磁気特性が不安定になる虞がある。一方、部分モールド30,40を部分的に施すことで、これら応力の発生を低減でき、コア本体12の磁気特性の安定化を図ることができる。
【0026】
本発明のコア10は、図2に示すように、環状のコア本体12にギャップ26,28を形成する位置に上記要領にて部分モールド30,40を形成する(部分モールド形成工程)。図示の実施形態では、コア本体12は、矩形の環状体であるが、円形、楕円形等であっても構わない。また、部分モールド30,40は、コア本体12の対向する辺に形成しているが、隣り合う辺、或いは、同じ辺に形成することもできる。ギャップ26,28の形成位置がコア本体12の中央からずれている場合には、その対応する位置に部分モールド30,40を形成すればよい。
【0027】
然して、コア本体12には、部分モールド30,40が形成された位置に、ダイシングブレード等により、ギャップ26,28を形成する。ギャップ26,28は、コア本体12を径方向に完全に切断し、コア本体12が2つのコア片20,23に分割されるまで実施する(第1ギャップ形成工程、第2ギャップ形成工程)。このとき、部分モールド30,40は、図1に示すように、完全には切断せず、部分モールド30,40は、第1ギャップ26を挟んで切断された第1−1モールド部材31と第1−2モールド部材32がブリッジ部33により連繋され、第2ギャップ28を挟んで切断された第2−1モールド部材41と第2−2モールド部材42がブリッジ部43により連繋されるように一部を切り残す。たとえば、ダイシングブレードを図1中矢印Aで示すように、コア本体12の径方向に侵入させてギャップ26,28を形成する場合、内径側にブリッジ部33,43が残るように切断を行なうことができる。側面側から切断を行なう場合、他方の側面側にブリッジ部33,43を切り残す。ブリッジ部33,43の切残し厚さは、樹脂の種類に応じて考慮する必要があるが、たとえばPPSの場合1mm以上を確保することが望ましい。なお、ダイシングブレードの厚さを変えることで、ギャップ26,28の幅は適宜調整可能である。
【0028】
具体的実施形態として、コア本体12及び部分モールド30,40の切断に用いるダイシングブレードは、直径が約10cm〜22.5cmの場合、砥石回転数を2000rpm程度とする湿式切断とすることができる。また、コア本体12を完全に切断し、ブリッジ部33,43を切り残すために、切断機は、コア本体12の高さと砥石の高さを常に一定に保つ制御を行なうテーブル移動自動切込式切断機を採用することが望ましい。
【0029】
上記のように、予め部分モールド30,40を形成した部分にギャップ26,28を形成することで、ダイシングブレードでコア本体12を切断した場合であっても、コア本体12の切り屑が切断面21,24に残りにくくすることができる。とくに、コア本体12が巻きコアの場合、部分モールド30,40を形成しておくことで、ギャップ26,28の形成時に切断面21,24に電子部品において忌避される導電性異物となる金属バリやささくれが発生することを防止できる。
【0030】
ギャップ26,28が形成されたコア10は、図1に示すように、コア片20,23は、切断面21,24間にギャップ26,28が形成されており、コア片20,23どうしは、ブリッジ部33,43により接続された第1部分モールド30と第2部分モールド40により連繋状態が維持されている。従って、コア本体12を切断し、ギャップ26,28を形成する過程において、コア本体12は、2つのコア片20,23に分割されるが、コア片20,23どうしは、部分モールド30,40によってばらばらになることなく、環状の形態を維持することができるから、同じコア本体12から形成されたコア片20,23のペアが崩れることはない。また、コア片20,23は、ブリッジ部33,43によってギャップ26,28の間隔が一定に維持されるから、ギャップ幅の調整等も不要である。
【0031】
得られたコア10は、中央にバスバーを挿入し、一方のギャップ26又は28に磁気検出素子を配置して電流検出器として用いることができる。磁気検出素子を配置しないギャップは磁気飽和を調整するために用いることができる。もちろん、両方のギャップ26,28に磁気検出素子を配置することもできる。この場合、一方を高電流用の磁気検出素子、他方を低電流用の磁気検出素子とすることで、低電流から高電流まで広い範囲の磁気検出を行なうことのできる高価な磁気検出素子に代えて、検出範囲の比較的狭い安価な磁気検出素子を採用することができる利点がある。また、各ギャップ26,28に同じ又は同等の磁気検出素子を採用することもできる。これにより、障害発生時に磁気検出素子を切り替える。即ち、電流検出器の冗長化を図ることができる。また、両磁気検出素子からの出力の平均を採ることで、検出精度を高めることもできる。
【0032】
なお、コア10の使用温度(たとえば−40℃〜130℃)において、部分モールド30,40の樹脂が線膨張することで、ギャップ26,28の間隔が広狭変化してしまう虞がある。このような場合、線膨張係数がコア本体12の材料に近い樹脂を部分モールド30,40に用いることが望ましい。たとえば、コア本体12に線膨張係数が約1.17〜1.2×10−5/℃のケイ素鋼板を採用する場合、線膨張係数が約1.7〜2.5×10−5/℃であるPPSを部分モールド30,40の樹脂として採用できる。
【0033】
本発明のコア10によれば、複数のギャップ26,28を形成する際に、予めギャップ26,28の形成位置に部分モールド30,40を施し、さらに、ギャップ26,28を形成する際に、部分モールド30,40が完全に切断されずブリッジ部33,43を切り残したことで、コア片20,23のペアがばらばらになることはない。このため、本発明のコア10は、巻きコアにとくに好適であり、巻きコアに本発明を適用することで、電磁鋼板の巻き数や巻き強さによるコア片20,23の切断面21,24の面積を略同じとすることができ、さらには、同じコア本体12から切断されたコア片20,23であれば、コアの巻回、焼鈍、ワニス含浸などの工程における残留応力があっても、その復元力による切断後のコア片20,23の開きも略同じであるから、ギャップ26,28を介してコア片20,23を向き合わせたときに、切断面21,24が好適に対向する。したがって、切断面の面積の不一致やずれを原因とする透磁率の低下を抑え、磁気特性や磁気飽和特性のバラツキを抑えることができ、さらには、直線性やエラーレートへの影響を抑えることができる。また、ブリッジ部33,43は、バスバーとコア本体12との絶縁効果も具備する。また、ギャップ26,28の形成位置により非対称形状となるコア片20,23についてもペアを維持できるから、組付ミスなどを低減できる。
【0034】
上記実施形態では、部分モールド30,40の両方にブリッジ部33,43を切り残してギャップ26,28の形成を行なったが、図3に示すように、一方の部分モールド30は、ブリッジ部33を切り残してギャップ26を形成し、他方の部分モールド40はブリッジ部を切り残さずに完全に切断するようギャップ28を形成しても構わない。この場合、部分モールド40は分離しているが、分離箇所が1カ所のみであるからコア片20,23どうしはばらばらになることなくブリッジ部33によって繋がっているので、コア片20,23のペアを維持することができる。この場合、図4に示すように、矢印B方向にダイシングブレードによる切断を行なうこともでき、後で切断される部分モールド30は、外径側にブリッジ部33を形成することもできる。
【0035】
また、図4にて説明した一方の部分モールド部30のみブリッジ部33を残してギャップ26を形成し、他方の部分モールド40は完全に切断する場合、図5(a)に示すように、ブリッジ部33は幅方向に溝34を形成することができる。溝34は、電流検出器への組込みの際に、図5(b)に示すように、コア片20,23を掴んで溝34の幅を狭める方向にブリッジ部33に1又は複数回力を加えることで(図5(b)中矢印C)、図5(c)に示すように、ブリッジ部33を溝34にて折り曲げて、第1−1モールド部材31と第1−2モールド部材32を切断することができる。これにより、コア片20,23をばらして、電流検出器の要求に応じたギャップ26,28の幅で組み込みを行なうことができる。なお、溝34に代えて、ブリッジ部33を折り曲げることで容易に切断できるように薄く形成しても構わない。
【0036】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0037】
たとえば、上記実施形態では、ギャップ26,28の幅は同じであるが、これらの幅を違えるようにしても構わない。また、部分モールド30,40は、少なくともギャップ26,28の形成位置に設ければよく、追加で電流検出器のケーシング等に位置決めするための部分モールドを施すこともできる。
【符号の説明】
【0038】
10 コア
12 コア本体
20 コア片
23 コア片
26 第1ギャップ
28 第2ギャップ
30 第1部分モールド
33 ブリッジ部
40 第2部分モールド
43 ブリッジ部
【要約】
【課題】本発明は、コア片のペアリングを維持したまま、複数のギャップを形成することのできる電流検出器用のコア及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る電流検出器用のコア10は、環状のコア本体12を径方向に2カ所で切断して形成される一対のコア片20,23であって、切断面21,24どうしが第1ギャップ26と第2ギャップ28を存して対向するよう配置されたコア片と、前記第1ギャップと前記第2ギャップを挟んで対向する前記コア片の前記切断面の周面を部分的に樹脂で被覆した第1部分モールド30及び第2部分モールド40と、を具え、第1部分モールドは、前記ギャップを挟んでブリッジ部33により繋がっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5