【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。実施例1〜2及び比較例1〜4は、130℃の注型温度(注型成形用金型の設定温度)での硬化時間を短時間化することを想定して、組成調整した例である。実施例3〜5は、実施例1〜2とは異なるビスフェノール型エポキシ樹脂及び酸無水物系硬化剤を用いて、130℃〜150℃の注型温度での硬化時間を選択的に高めるように組成調整した例である。
【0047】
〔実施例1〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部、無機充填剤としての溶融シリカ:150重量部、硬化促進剤(A)としての2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール(常温で反応活性である):0.2重量部、潜在性硬化促進剤(B)としての1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のオクチル酸塩(反応活性開始温度が約100℃である):0.3重量部、及び潜在性硬化促進剤(C)としての三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(反応活性開始温度が約120℃である):0.2重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化は、
図5のようになり、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は4.3時間であった。
【0048】
また、実施例1のエポキシ樹脂組成物について、成形温度を90〜150℃の温度に設定した際のゲル化時間をゲルタイムテスター(安田精機製作所製No.153)で測定した。測定結果を
図6に示す。このゲルタイムテスターは、熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間を測定する装置で、熱硬化性樹脂組成物を入れた試験管中で回転するローターが、ゲル化に伴う一定のトルク発生により、磁気カップリング機構を介して脱落するまでの時間を、ゲル化時間として測定するものである。なお、注型成形作業での離型可能な時間は、その温度でのゲル化時間とは一致せず、成型物の肉厚でも異なるが、経験的にゲル化時間の1.5倍〜2.5倍程度長くなる傾向がある。
【0049】
図6に示されるように、実施例1のエポキシ樹脂組成物についてのゲル化時間の温度変化(ゲル化曲線)は、約120℃以上の温度でゲル化速度が、後述する比較例1〜4のエポキシ樹脂組成物に比べ顕著に上昇しており、潜在性硬化促進剤(C)の反応活性開始温度よりやや高い温度付近に変曲点(約127℃)を有し、注型温度付近(125℃〜150℃)で選択的に反応が速くなっている挙動であった。このゲル化挙動は、比較例のようなゲル化時間が単調減少する挙動とは異なることが分かる。また、注型温度である130℃でのゲル化時間は8分であり、後述する比較例より著しく短い。
【0050】
実施例1のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、実施例1のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、130℃に加熱した注型成形用金型に5kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により15分間加熱硬化させ、注型成形用金型から離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物には、ボイドやヒケなどの形状異常はないことを確認した。このように、実施例1のエポキシ樹脂組成物を使用することで、ポットライフを2時間以上確保しながら、後述する比較例のエポキシ樹脂組成物と比べて、60%前後の1次硬化時間を短縮することが可能であった。
【0051】
〔実施例2〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部、無機充填剤としての溶融シリカ:150重量部、硬化促進剤(A)としての2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール(常温で反応活性である):0.2重量部、潜在性硬化促進剤(B)としての1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(反応活性開始温度が約100℃である):0.2重量部、及び潜在性硬化促進剤(C)としての三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(反応活性開始温度が約120℃である):0.4重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1との違いは、潜在性硬化促進剤(C)の配合量を潜在性硬化促進剤(B)の配合量より多くしたことである。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化は、
図5のようになり、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は4.0時間であった。
【0052】
実施例2のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図6に示す。
図6に示されるように、実施例2のエポキシ樹脂組成物についてのゲル化時間の温度変化は、125℃付近からゲル化速度が急激に上昇しており、その変曲点も130℃(実施例1より3℃高い)に明確に存在する挙動であった。また、注型温度である130℃でのゲル化時間は6分であり、実施例1より2分短くなった。
【0053】
実施例2のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、実施例2のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、130℃に加熱した注型成形用金型に5kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により12分間加熱硬化させ、注型成形用金型から離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物には、ボイドやヒケなどの形状異常はないことを確認した。このことから、潜在性硬化促進剤(B)と潜在性硬化促進剤(C)との配合比を制御することで、ゲルタイム変化の変曲点が制御できること及び反応速度の注型温度領域での選択性を高められることが分かった。
【0054】
〔比較例1〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部、及び無機充填剤としての溶融シリカ:150重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1との違いは、硬化促進剤(A)、潜在性硬化促進剤(B)及び潜在性硬化促進剤(C)を添加しなかったことである。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化は、
図5のようになり、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は6時間となり、注型作業を行うには十分な時間があった。
【0055】
比較例1のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図6に示す。
図6に示されるように、比較例1のエポキシ樹脂組成物のゲル化曲線は、温度の上昇とともに、単調減少する挙動であった。また、注型温度である130℃でのゲル化時間は35分であった。
【0056】
比較例1のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、比較例1のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、130℃に加熱した注型成形用金型に5kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により加熱硬化させたところ、離型できる状態まで硬化させるのに80分を要した。離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。硬化速度が遅く、硬化時の発熱による温度上昇が比較的少ないため、離型後の成型物には、ボイドやヒケの形状異常は観察されなかった。
【0057】
〔比較例2〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部、無機充填剤としての溶融シリカ:150重量部、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のオクチル酸塩(反応活性開始温度が約100℃である):0.7重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1との違いは、硬化促進剤(A)、潜在性硬化促進剤(B)及び潜在性硬化促進剤(C)の代わりに、潜在性硬化促進剤(B)としての1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のオクチル酸塩のみを添加したことである。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化は、
図5のようになり、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は3.5時間となり、注型作業を行うには十分な時間があった。
【0058】
比較例2のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図6に示す。
図6に示されるように、比較例2のエポキシ樹脂組成物のゲル化曲線は、比較例1と同様に温度とともに単調減少する挙動であり、注型温度領域に実施例のような明確な変曲点は存在せず、注型温度領域の顕著な反応性向上は得られなかった。また、注型温度である130℃でのゲル化時間は22分であった。
【0059】
比較例2のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、比較例2のエポキシ樹脂組成物60℃の温度に保持したまま、130℃に加熱した注型成形用金型に5kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により加熱硬化させたところ、離型できる状態まで硬化させるのに48分を要した。離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。硬化時の発熱による温度上昇が多いため、離型後の成型物には、ヒケの形状異常が観察された。
この比較例のように、硬化促進剤を1種類だけ添加した場合は、反応活性開始温度に達した瞬間に重合反応が一気に進行するため、急激な発熱を引き起こし易く、この発熱により硬化反応が加速され、成型物の形状や肉厚によっては、成型物にヒケやボイドのような形状異常を引き起こす。
一方、実施例のように、低温、中温及び高温と異なる反応活性開始温度を有する硬化促進剤を2時間以上のポットライフが確保できる配合で添加している場合、低温側から硬化促進剤が機能し、樹脂温度が徐々に上昇し、樹脂の重合反応を徐々に進行させるため、硬化時の発熱による温度上昇が抑えられている。
【0060】
〔比較例3〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部、無機充填剤として溶融シリカ:150重量部、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール(常温で反応活性である):0.5重量部、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のオクチル酸塩(反応活性開始温度が約100℃である):0.5重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1との違いは、硬化促進剤(A)、潜在性硬化促進剤(B)及び潜在性硬化促進剤(C)の代わりに、注型温度領域での反応速度を高めるため、硬化促進剤(A)及び潜在性硬化促進剤(B)のみをポットライフが確保できる範囲内で増量して添加したことである。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化は、
図5のようになり、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は2.0時間となり、注型作業を実施可能なレベルであった。
【0061】
比較例3のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図6に示す。
図6に示されるように、比較例3のエポキシ樹脂組成物のゲル化曲線は、温度とともに単調減少する挙動であり、注型温度領域に実施例のような明確な変曲点は存在せず、注型温度領域の顕著な反応性向上は得られなかった。また、注型温度である130℃でのゲル化時間は17分であった。
【0062】
比較例3のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、比較例3のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、130℃に加熱した注型成形用金型に5kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により加熱硬化させたところ、離型できる状態まで硬化させるのに40分を要した。離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物は、硬化促進剤(A)の添加により、硬化発熱温度が抑制されており、離型した成型物には形状異常はなく、良好であった。
この比較例のように、硬化促進剤(A)及び潜在性硬化促進剤(B)の2種類を、60℃で2時間のポットライフを確保できる範囲内で最適化した場合、実施例1のような短時間(15分)での離型を達成することはできない。
【0063】
〔比較例4〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部、無機充填剤としての溶融シリカ:150重量部、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール(常温で反応活性である):0.2重量部、及び三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(反応活性開始温度が約120℃である):0.5重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1との違いは、硬化促進剤(A)、潜在性硬化促進剤(B)及び潜在性硬化促進剤(C)の代わりに、硬化促進剤(A)及び潜在性硬化促進剤(C)のみを添加したことである。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化は、
図5のようになり、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は4.8時間となり、注型作業を行うには十分な時間があった。
【0064】
比較例4のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図6に示す。
図6に示されるように、比較例4のエポキシ樹脂組成物のゲル化曲線は、温度とともに単調減少する挙動であり、注型温度領域に実施例のような明確な変曲点は存在せず、注型温度領域の顕著な反応性向上は得られなかった。注型温度である130℃でのゲル化時間は19分であり、潜在性硬化促進剤(C)を増量したにもかかわらず短くならなかった。
【0065】
比較例4のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、比較例4のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、130℃に加熱した注型成形用金型に5kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により加熱硬化させたところ、離型できる状態まで硬化させるのに47分を要した。離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物は、硬化促進剤(A)の添加により、硬化発熱温度が抑制されており、離型した成型物には形状異常はなく、良好であった。
この比較例のように、硬化促進剤(A)及び潜在性硬化促進剤(C)の2種類を添加した場合、注型成形用金型に注入されたエポキシ樹脂組成物の温度は、除々に上昇するが、潜在性硬化促進剤(C)の反応活性開始温度が高いため、温度上昇時のエポキシ樹脂の重合が遅く、実施例1のような短時間(15分)での離型を達成することはできない。
【0066】
〔比較例5〕
実施例1のメチルテトラヒドロ無水フタル酸:85.5重量部の代わりに、ポリエチレンポリアミン:20重量部を使用して、60℃で混合したところ、混合途中でゲル化して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製することができなかった。これは、硬化剤として常温硬化性の脂肪族アミンを用いたため、硬化速度は劇的に速くなるが、発熱反応が高く、可使時間が著しく短くなるためである。この比較例のようなエポキシ樹脂組成物は、一定の作業時間が必要な高電圧機器向けの成形用途には適さない。
【0067】
〔実施例3〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:210g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としての無水メチルナジック酸:80重量部、無機充填剤としての溶融シリカ:130重量部、硬化促進剤(A)としてのN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(常温で反応活性である):0.3重量部、潜在性硬化促進剤(B)としての1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(反応活性開始温度が約80℃である):0.2重量部、及び潜在性硬化促進剤(C)としての三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体(反応活性開始温度が約125℃である):0.5重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化を測定したところ、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は4時間であった。
【0068】
実施例3のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図7に示す。
図7に示されるように、実施例3のエポキシ樹脂組成物についてのゲル化時間の温度変化は、潜在性硬化促進剤(C)の反応活性開始温度付近(130℃)に明確な変曲点を有する挙動となり、注型温度である140℃でのゲル化時間は6分であった。
【0069】
実施例3のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、実施例3のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、140℃に加熱した注型成形用金型に8kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により10分間加熱硬化させ、注型成形用金型から離型した後、155℃で12時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物を観察したところ、ボイドやヒケなどの形状異常はないことを確認した。
【0070】
〔実施例4〕
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:170g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのメチルテトラヒドロ無水フタル酸:80重量部、無機充填剤としての結晶シリカ:150重量部、硬化促進剤(A)としてのN,N−ジメチルベンジルアミン(常温で反応活性である):0.1重量部、潜在性硬化促進剤(B)としての臭化テトラフェニルホスホニウム(反応活性開始温度が約90℃である):0.2重量部、及び潜在性硬化促進剤(C)としての三塩化ホウ素N,N−ジエチルジオクチルアミン錯体(反応活性開始温度が約125℃である):0.3重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化を測定したところ、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は5時間であった。
【0071】
実施例4のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図7に示す。
図7に示されるように、実施例4のエポキシ樹脂組成物についてのゲル化時間の温度変化は、潜在性硬化促進剤(C)の反応活性開始温度付近(128℃)に明確な変曲点を有する挙動となり、注型温度である140℃でのゲル化時間は6分であった。
【0072】
実施例4のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、実施例4のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、140℃に加熱した注型成形用金型に10kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により10分間加熱硬化させ、注型成形用金型から離型した後、145℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物を観察したところ、ボイドやヒケなどの形状異常はないことを確認した。
【0073】
〔実施例5〕
ビスフェノールAD型エポキシ樹脂(エポキシ当量:175g/eq):100重量部、酸無水物系硬化剤としてのトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸:85重量部、無機充填剤としてのアルミナ:300重量部、硬化促進剤(A)としての(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール(常温で反応活性である):0.1重量部、潜在性硬化促進剤(B)としての1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(反応活性開始温度が約100℃である):0.2重量部、及び潜在性硬化促進剤(C)としての三塩化ホウ素モノエチルアミン錯体(反応活性開始温度が約12
5℃である):0.3重量部を、60℃で15分間混合した後、真空脱泡して注型成形用エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物の60℃での粘度変化を測定したところ、粘度が2倍になるまでの時間(ポットライフ)は4.5時間であった。
【0074】
実施例5のエポキシ樹脂組成物について、実施例1と同様にしてゲル化時間を測定した。測定結果を
図7に示す。
図7に示されるように、実施例5のエポキシ樹脂組成物についてのゲル化時間の温度変化は、潜在性硬化促進剤(C)の反応活性開始温度付近(125℃)に明確な変曲点を有する挙動となり、140℃での注型温度でのゲル化時間は7分であった。
【0075】
実施例5のエポキシ樹脂組成物を用いて注型成形を実施した。即ち、実施例5のエポキシ樹脂組成物を60℃の温度に保持したまま、140℃に加熱した注型成形用金型に4kg/cm
2の圧力で注入し、加圧ゲル化法により15分間加熱硬化させ、注型成形用金型から離型した後、150℃で16時間の二次硬化を行い、成型物を得た。成型物には、ボイドやヒケなどの形状異常はないことを確認した。
【0076】
〔実施例6〕
実施例1のエポキシ樹脂組成物と注型条件で、電極を埋め込んだ絶縁ロッドを成形した。離型後の二次硬化時間は、135℃で16時間とした。この絶縁ロッドを用いて、破壊電界を測定したところ60kV/mmであり、汎用の高電圧機器用注型樹脂と同等以上であることを確認した。また、ヒートサイクル試験(100℃〜−30℃、100サイクル)を行った後、クラック発生もなく、更に、絶縁特性、機械特性、耐熱特性などの成型物特性に全く変化がないことが確認され、長期信頼性の高い注型絶縁物であることが実証された。
【0077】
〔実施例7〕
実施例5のエポキシ樹脂組成物と注型条件で、絶縁スペーサを成形した。離型後の二次硬化時間は、150℃で20時間とした。この絶縁スペーサを用いて、耐SF
6分解ガス性の評価を実施した。評価は、放電容器内にSF
6を封入後、針対平板電極を用いて5時間の連続放電を行い、その後に表面抵抗をJIS K6911に準じて測定した。表面抵抗の低下は殆どなく、耐SF
6分解ガス性を有することが判った。