(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461486
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】締結具
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20190121BHJP
F16B 39/284 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
F16B35/00 P
F16B39/284 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-101362(P2014-101362)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-218780(P2015-218780A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】上野 美光
(72)【発明者】
【氏名】村田 知明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 弘忠
(72)【発明者】
【氏名】大槻 潔人
(72)【発明者】
【氏名】辻井 邦夫
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−017012(JP,A)
【文献】
実開昭59−059512(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3175027(JP,U)
【文献】
特開2013−024418(JP,A)
【文献】
特開2006−177436(JP,A)
【文献】
実開昭61−091618(JP,U)
【文献】
実開平06−043320(JP,U)
【文献】
特開昭59−144809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 39/284
F16B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、これよりも大径のつば部と、首下不完全ねじ部および完全ねじ部が成形された脚部とからなり、つば部は脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置まで折り曲げられてなる締結具であって、つば部の肉厚は頭部側からつば部の縁部に至るまで漸増し、かつ当該つば部は頭部との接合部付近において最小の肉厚を有し、当該接合部付近から折れ曲げられていることを特徴とする締結具。
【請求項2】
前記つば部の脚部軸線方向断面は、外周側において頭部側から縁部に至るまで延びる直線を有していることを特徴とする請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記つば部の座面は平面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の締結具。
【請求項4】
締付工具が係合する駆動穴を持つ頭部と、これよりも大径のつば部と、首下不完全ねじ部および完全ねじ部が成形された脚部とからなり、つば部は脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置まで折り曲げられてなる締結具であって、つば部の肉厚は頭部側からつば部の縁部に至るまで漸増し、かつ当該つば部は頭部との接合部付近において最小の肉厚を有し、当該接合部付近から折り曲げられており、しかも当該つば部の内面は頭部下面に形成されて脚部を囲むように延びる平面と頭部との接合部付近で連なることを特徴とする締結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部径よりも大径のつば部を備えたつば付ねじのような締結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品を中心に製品の軽量化が進み、板厚が0.3mmから0.5mm程度と極めて薄い被締結板が多用され、これら被締結板を重ね合わせる締結が多くなっている。これらの締結に際しては、締結コストを低減するために、タッピンねじが使用されているが、この種のタッピンねじでは通常ねじ部が転造により成形される。そのため、このタッピンねじは頭部首下付近に所定のねじ山高さに達しない不完全ねじ山と所定のねじ溝深さに達しない不完全ねじ溝とねじ山未成形部とからなる首下不完全ねじ部を有している。このタッピンねじにより被締結板を締結すると、ねじ山未成形部が被締結板に塑性成形されためねじ部に達してこれを破壊したり、不完全ねじ山がめねじ部に位置してめねじ部との間で十分な引っ掛かり率が得られなかったりする等の問題が発生している。
【0003】
これらの問題に対応するため、タッピンねじの首下不完全ねじ部の影響を受けないように各種の工夫が凝らされている。その一例として、特許文献1に示すようにねじ山を転造する金型の転造開始位置が上面位置となるようにして、頭部首下のねじ山未成形部をなくしたねじがあるが、不完全ねじ山の成形は避けられず、十分な対応とは言えない。
【0004】
また、別の例として、特許文献2に示すように首下不完全ねじ部を覆うように座金を組み込んだ座金組み込みねじもあるが、この座金組み込みねじでは座金の下穴にねじを挿入したり、または圧入したりする工程が必要となっている。そのため、ねじ自体の製造コストが増大するばかりか、被締結板の締結に際してその供給トラブルが多く、組立コスト増を招き、これも十分な対応とは言えない。
【0005】
さらに、もう一つの例として、特許文献3に示すように頭部径よりも大径のつば部を備えたつば付タッピンねじが利用され、つば部の外周にローレット加工を施し、首下不完全ねじ部を覆うようにしたものもある。このつば付タッピンねじの場合、つば部の変形量に限りのあることから、十分に首下不完全ねじ部を覆うことができない。また、タッピンねじの外観も悪くなるというような問題もあり、これも十分な対応とは言えない。
【0006】
その他の例として、特許文献4に記載のつば付ねじがある。このつば付ねじ51は、
図8に示すように駆動穴52aが成形された頭部52とその軸心に沿って延びる脚部53とを有している。前記頭部52は、その周縁から外方に延びるつば部54を有し、このつば部54はプレス工程により深く折り曲げられ、後記首下不完全ねじ部53aを完全に覆うように構成されている。また、前記脚部53は頭部52の首下付近に成形された不完全ねじ山(図示せず)および不完全ねじ溝53ab並びにねじ山未成形部53acからなる首下不完全ねじ部53aと完全ねじ山53baを持つ完全ねじ部53bとを有している。このつば付ねじ51によれば、ねじ自体の製造コスト増を招くものの、被締結板(図示せず)の締結時には首下不完全ねじ部53aが被締結板よりも上方に飛び出して位置する。そのため、被締結板のめねじ部(図示せず)には完全ねじ部53bの完全ねじ山53baが螺合し、ねじの引っ掛かり率が大きくなって十分な摩擦力が得られる。これにより、つば付ねじ51は十分な保持力を有するので、締結時に空転したり、締結後に保持力の低下を招いたりするような問題は解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−125225号公報
【特許文献2】特開2001-41216号公報
【特許文献3】実公昭56−14416号公報
【特許文献4】特公平2−31248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このつば付ねじ51にあっては、プレス工程でつば部54を深く折り曲げる際に、つば部54の外周にバリが発生するのを防ぐため、つば部54の中間付近につば部54の余肉が移動して盛り上がるように考慮されている。そのため、つば部54の肉厚が頭部52側に向かうにしたがって厚くなって、つば部54での弾性力を十分に得られないばかりか、つば部54の縁部54cへの余肉の移動量が少なく、つば部座面54aを十分に確保するような加工を施すための十分な肉厚が得られないというような新たな問題が生じている。
【0009】
また、このつば付ねじ51にあっては、プレス工程で首下不完全ねじ部53aを完全に覆うまでつば部54を折り曲げることができるように、頭部52には脚部53を囲むように深く入り込んだ環状凹溝52baが形成されている。この環状凹溝52baにより頭部52の周縁付近の肉厚が薄くなり、つば部54の折り曲げが容易になっている。その反面、頭部52には駆動穴52aが成形されていることから、駆動穴52aと環状凹溝52baとが接近することとなり、駆動穴52aの周辺に十分な肉厚を確保できない。そのため、つば部54の折り曲げ時に駆動穴52aの上部側が外方に引き伸ばされたり、逆に駆動穴52aの下部側が内方に押し込まれたりして、駆動穴52aを変形させてしまうという別の問題が生じている。
【0010】
本発明の第1の目的は上記問題を解消することであり、首下不完全ねじ部の影響を受けずに被締結板を締結するとともに、つば部の折り曲げも容易でかつ締結時の弾性力を十分に保持し、しかもつばの縁部に各種の成形を施すことができる締結具を提供することである。
【0011】
また、本発明の第2の目的は首下不完全ねじ部の影響を受けずに被締結板を締結するとともに、つば部の折り曲げ時に頭部の駆動穴を変形させることのない締結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記第1の目的を達成するために、頭部と、これよりも大径のつば部と、首下不完全ねじ部および完全ねじ部が成形された脚部とからなり、つば部は脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置まで折り曲げられてなる締結具であって、つば部の肉厚は頭部側からつば部の縁部に至るまで漸増
し、かつ当該つば部は頭部との接合部付近において最小の肉厚を有し、当該接合部付近から折れ曲げられていることを特徴としている。この構成によれば、被締結板の下穴に締付具をねじ込んで、つば部座面が被締結板に当接すると、脚部の首下不完全ねじ部が被締結板から上方に飛び出すように位置する。そのため、首下不完全ねじ部の影響を受けずに脚部の完全ねじ山部で被締結板を締結できるばかりか、締結時に脚部に軸力が加わると、頭部とつば部との接合位置付近全域が容易に撓む。これにより、被締結板の締結時に十分な弾性力が得られるため、緩み止めも図られる。また、つば部はその縁部付近に十分な肉厚を持っているので、縁部に各種の成形を施すことができるばかりか、頭部との接合位置付近全域で肉厚が薄いので折り曲げ時の応力も小さくなる。そのため、脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置までつば部を深く折り曲げても、その外周面に加工割れが生じることがない。
【0013】
また、本発明は締結具が繰り返し使用されても、弾性力が低下しないようにするため、つば部の脚部軸線方向断面は、外周側において頭部側から縁部
に至るまで延びる直線を有していることが望ましい。
【0014】
さらに、本発明は被締結板とつば部座面との摩擦力を確保して頭部のゆるみ方向の回転を防止するため、つば部座面は平面に形成されていることが望ましい。
【0015】
本発明は、第2の目的を達成するために、締付工具が係合する駆動穴を持つ頭部と、これよりも大径のつば部と、首下不完全ねじ部および完全ねじ部が成形された脚部とからなり、つば部は脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置まで折り曲げられてなる締結具であって、つば部の肉厚は頭部側からつば部の縁部に至るまで漸増
し、かつ当該つば部は頭部との接合部付近において最小の肉厚を有し、当該接合部付近から折り曲げられており、しかも当該つば部の内面は頭部下面に形成されて脚部を囲むように延びる平面
と頭部との接合部付近で連なることを特徴としている。この構成によれば、首下不完全ねじ部の影響を受けずに被締結板を締結することができるばかりか、駆動穴の周辺には十分な肉厚が得られる。そのため、脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置までつば部を深く折り曲げる際に、引っ張り力や圧縮力が駆動穴周辺に加わっても、駆動穴が変形することがない。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、首下不完全ねじ部の影響を受けずに被締結板を締結することができるばかりか、つば部の折り曲げも容易でかつ締結時に十分な弾性力を保持できて緩み止めも図られる締結具を提供することができる。また、本発明によれば脚部の首下不完全ねじ部を覆う位置までつば部を折り曲げる際に引っ張り力や圧縮力が駆動穴周辺に加わっても、駆動穴が変形することがない締結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る締結具の一例であるつば付ねじの要部を拡大した説明図。
【
図2】本発明の実施形態に係る締結具の一例であるつば付ねじの正面図。
【
図3】
図2のつば付ねじをその軸線に沿って切断した端面図。
【
図6】
図2のつば付ねじの他の応用例を示す説明図。
【
図7】
図2のつば付ねじの変形例を示す要部断面図。
【
図8】従来例に係るつば付ねじの一部を切り欠いた要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る締結具の一例のつば付タッピンねじ(以下、つば付ねじという)を図面に基づき説明する。このつば付ねじ1は、
図1ないし
図4に示すように、駆動工具の一例の十字ドライバ(図示せず)と係合可能な十字形状の駆動穴2aが成形された頭部2と、その軸心に沿って下方に延びる脚部3とを有している。前記頭部2は、その周縁から外方に延びかつ頭部2よりも大径のつば部4を有し、このつば部4はその縁部4cが後記する首下不完全ねじ部3aの周囲を完全に覆う位置まで折り曲げられている。つば部4の脚部軸線方向断面は、外周4b側において頭部2側から縁部4c
に至るまで延びる直線を有するように構成されている。また、前記頭部2の下面2bは脚部3を囲むように延びる平面でなっており、前記駆動穴2aが頭部2に深く成形されていても駆動穴2aの周囲には十分な肉厚が得られるように構成されている。
【0019】
前記脚部3は、頭部2の首下付近に所定のねじ山高さに達しない不完全ねじ山3aaおよび所定のねじ溝深さに達しない不完全ねじ溝3abでなる首下不完全ねじ部3aを有している。また、この脚部3は前記首下不完全ねじ部3aに順次連続する完全ねじ部3b、めねじ成形部3cおよび先絞り形状の先端案内部3dを有している。前記完全ねじ部3bは所定のねじ山高さを備えた完全ねじ山3baおよび所定の深さを備えた完全ねじ溝3bbを有し、めねじ成形部3cは被締結板5にめねじ部5cbを徐々に塑性成形する成形ねじ山3caを有している。
【0020】
前記つば部4は頭部2との接合部Pの付近において最小の肉厚を有し、しかもこの肉厚は頭部側からつば部の縁部
の平面に至るまで漸増(
図1中、つば部4から延びる2本の補助線参照)するように構成されている。この構成により、つば部4はその折り曲げに際して頭部2との接合部Pの付近全域にわたって薄くなるので折れ曲がり易く、かつ撓み易くなっている。また、前記つば部4はその縁部4c付近に各種の加工を施すに十分な肉厚を持っており、つば部4の縁部4cがつば部4の折り曲げ時に圧縮されて十分な広さの平面でなるつば部座面4aが形成されている。
【0021】
上記つば付ねじでは、
図4に示すように薄い2枚の被締結板5,5を締結する際に、これらを貫通して穿設された下穴(図示せず)に先端案内部3d、めねじ成形部3cが順に挿入され、その壁面にめねじ部5cbが塑性成形される。
【0022】
続いて、このめねじ部5cbには完全ねじ部3bの完全ねじ山3baがねじ込まれ、ついにはつば部座面4aが被締結板5に当接する位置に達する。この時、首下不完全ねじ部3aの不完全ねじ山3aaおよび不完全ねじ溝3abが被締結板5から上方に飛び出して位置するので、首下不完全ねじ部3aの影響を受けることなく、被締結板5,5は締結される。また、このつば付ねじ1によれば、被締結板5,5の下穴に成形されためねじ部5cbに完全ねじ部3bの完全ねじ山3baが螺合する。そのため、この完全ねじ山3baとめねじ部5cbとの引っ掛かり率も高く、十分な摩擦力を得て、十分な保持力を確保することができる。さらに、被締結板5,5の締結時に脚部3に軸力が加わると、頭部2とつば部4との接合位置Pの付近全域が撓み易いことから、つば部4は十分な弾性力を保持して緩み止めの効果も持続することができる。しかも、つば部4
の肉厚は頭部側からつば部の縁部の平面に至るまで漸増してつば部4はその縁部4c付近に十分な肉厚を持っているので、その縁部4cの圧縮強度が大きく、縁部4cに各種の加工を施すことができる。そのため、つば部4の折り曲げ時につば部4の縁部4cを圧縮しても、つば部4の縁部4cに加工割れが生じるようなことはない。これにより、被締結板5に当接するつば部座面4aを十分な広さの平面に成形することができるようになり、被締結板5との摩擦力を十分に確保して頭部2の緩み方向の回転を防ぐことができる。
【0023】
また、前述のつば付ねじ1ではつば部4の肉厚は頭部2との接合位置Pの付近全域で薄くて折り曲がり易くなっているので、折り曲げ時の応力が小さくなる。そのため、脚部3の首下不完全ねじ部3aの周囲を覆う位置までつば部4を深く折り曲げても、その外周面に加工割れが生じることがない。
【0024】
さらに、つば部4の脚部軸線方向断面が外周4b側において頭部2側から縁部4c
に至るまで延びる直線を有する構成であるので、つば付ねじ1が繰り返し使用されても、つば部4の弾性力が低下するようなことは生じない。
【0025】
なお、上記つば付ねじ1は十字ドライバが係合する駆動穴2aを持つ頭部2とこれよりも大径のつば部4と首下不完全ねじ部3aおよび完全ねじ部3bが成形された脚部3とからなり、つば部4はその縁部4cが脚部3の首下不完全ねじ部3aの周囲を覆う位置まで折り曲げられ、さらに頭部2の下面2bが脚部3を囲むように延びる平面に形成されている構成を持つだけでもよい。この構成によれば、首下不完全ねじ部3aの影響を受けずに被締結板5,5を締結することができる。また、駆動穴2aの周辺に十分な肉厚が得られるので、つば部4を深く折り曲げる際に駆動穴2aの周辺に引っ張り力や圧縮力が加わっても、駆動穴2aが変形するようなことがない。
【0026】
本発明の実施形態に係るつば付ねじの応用例を、
図5および
図6に示す。
図5において、つば付ねじ11はOリング16を組込んだ防水対応のつば付ねじであってもよく、この場合つば付ねじ11はタッピンねじに限定されない。このつば付ねじ11は、上述のつば付ねじ1とは脚部13の形状において相違する。この脚部13は、頭部首下から順次連続する不完全ねじ部13a、完全ねじ部13b、めねじ成形部13cおよび先端案内部13dを有している。前記不完全ねじ部13aは頭部12の首下付近に不完全ねじ山13aaおよび不完全ねじ溝13abに加えてねじ山未成形部13acを有している。また、前記不完全ねじ部13a,完全ねじ部13bおよびめねじ成形部13cの各ねじ山13aa,13ba,13caの形状は非対称三角形状をしており、その隣接する2個のねじ山間の平ら部は薄板でなる2枚の被締結板(図示せず)の締結に最適な幅を有している。このつば付ねじ11では、Oリング16は頭部12の下面12bを形成する平面に当接するように組込まれる。また、このOリング16はつば部14からはみ出すに十分な太さを持つように選定されており、つば部14が相手部品(図示せず)に当接するまでつば付ねじ11がねじ込まれると、Oリング16は
図5中想像線で示すようにつば部14内に収納された状態で圧縮される。そのため、相手部品にOリング16を収納するための座ぐり穴等の加工を施す必要がない。また、このつば付ねじ11ではつば部14が深く折り曲げられているので、つば部14の内面とOリング16とにより形成されるスペースSが少なくなる。そのため、Oリング16の圧縮時にスペースS内に余肉が充満するようにOリング16が選定されていると、スペースS内に移動する余肉を少なくできる。これにより、Oリング16の圧縮率が高くなって防水効果を格段に向上させることができる。
【0027】
図6において、つば付ねじ21は電気機器(図示せず)の端子台27に取付けられる端子ねじであってもよく、この場合もつば付ねじ21はタッピンねじに限定されない。このつば付ねじ21は、頭部22の首下付近に不完全ねじ山23aaと不完全ねじ溝23abとねじ山未成形部23acとを備えた首下不完全ねじ部23aを有している。このつば付ねじ21によれば、つば部24が端子台27に当接する時、端子台27に成形されためねじ部27cbに当接する恐れのあるねじ山未成形部23acは端子台27から上方に飛び出している。そのため、つば付ねじ21は脚部23の完全ねじ部23bにより端子台27にしっかりと取付けられるので、端子台27から浮き上がることがなく、振動等により緩んで端子台27から脱落するようなこともない。
【0028】
本発明の実施形態に係るつば付ねじの変形例を、
図7に示す。このつば付ねじ31は、つば部34の外周面の形状以外、前述のつば付ねじ1と同一の形状をしているので、同一部分の説明を省略する。
図7において、前記つば部34の脚部軸線方向断面は外周34b側において頭部32側から縁部34c
に至るまで延びる湾曲線を有している。このつば付ねじ31によれば、頭部3とつば部34との接合位置Pの付近全域での撓み易さが格段に向上しているので、被締結板35,35の締結時には十分な弾性力を得ることができる。
【0029】
なお、本発明の実施形態について説明したが、締結具はつば付タッピンねじに限定されるものでなく、つば付ボルトあるいはタッピン性能を持たないつば付ねじであってもよい。また、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…つば付ねじ
2…頭部
2a…駆動穴
2b…下面
3…脚部
3a…首下不完全ねじ部
3b…完全ねじ部
4…つば部