(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記造形において一つの層を形成するための走査の周期の時間内で、複数層の上記着色の層を形成するための走査をおこなうことを特徴とする請求項1または2に記載の、三次元構造物の形成装置。
上記造形において一つの層を形成するための走査の周期の時間内で、複数層の透明保護層を形成するための走査をおこなうことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の、三次元構造物の形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る三次元構造物の形成装置の一形態について、以下に説明する。
【0023】
なお、本願明細書において用いる文言「三次元構造物」は、造形物と、該造形物表面を着色している着色部分とを有する立体物のことと定義する。
【0024】
(1)三次元構造物の形成装置
図1は、本実施形態における、三次元構造物の形成装置(以下、形成装置と記載する)の主要構成を示したブロック図である。
【0025】
本実施形態の形成装置30は、造形物と該造形物表面を着色している着色部分とからなる三次元構造物を積層により形成する装置である。そのため、本実施形態の形成装置30は、
図1に示すように、記録ユニット10と、制御ユニット20(切替部)とを有している。記録ユニット10は造形および着色を行うユニットであり、その造形および着色を制御ユニット20が制御している。各構成について以下に詳述する。
【0026】
●記録ユニット10
図2は、記録ユニット10の具体的構成を図示したものである。
図2は、記録ユニット10のインク吐出面(下面)を示したものである。
【0027】
記録ユニット10は、キャリッジ13と、インクジェットヘッド11と、UV照射部12とを有している。
【0028】
キャリッジ13は、Y軸に沿って往復移動可能であり、インクジェットヘッド11およびUV照射部12を搭載している。
【0029】
インクジェットヘッド11は、インクジェット法を用いてインクを吐出する。吐出するインクには、紫外線硬化型インクを用いることができる。紫外線硬化型インクを用いれば、短時間で硬化できるため、積層させることが容易であり、三次元構造物をより短時間で製造することができるというメリットがある。紫外線硬化型インクは紫外線硬化型化合物を含む。紫外線硬化型化合物としては、紫外線を照射した際に硬化する化合物であれば限定されない。紫外線硬化型化合物としては、例えば、紫外線の照射により重合する硬化型モノマー及び硬化型オリゴマーが挙げられる。硬化型モノマーとしては、例えば、低粘度アクリルモノマー、ビニルエーテル類、オキセタン系モノマーまたは環状脂肪族エポキシモノマー等が挙げられる。硬化型オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマーが挙げられる。なお、本発明は紫外線硬化型インクに限定されるものではなく、例えば熱可塑性インクを用いることができる。熱可塑性インクを用いれば、吐出された加熱インクが冷却することによって硬化する。このとき、より短時間で硬化させるために強制的に冷却する手法を用いてもよい。
【0030】
インクジェットヘッド11は、
図2に示すように、造形材を吐出する第1インクジェットヘッドノズル部11Aと、着色材を吐出する第2インクジェットヘッドノズル部11Bとを有している。
【0031】
第1インクジェットヘッドノズル部11Aは、三次元構造物の一部である造形物を造形するための造形材であるインク、および造形物の周囲を覆ってオーバーハング部の積層を支持するサポート材のインクを吐出する。本実施形態では、造形材として透明インクおよび白色インクとを用いる。そのため、第1インクジェットヘッドノズル部11Aには、サポート材のインクを吐出するサポートインク用ノズル列SPと、造形インクを吐出する造形インク用ノズル列MAINと、白色インクを吐出する白色インク用ノズル列Wとを有している。造形インクには、従来周知の造形インクを用いることができるが、後述するように白色インクあるいは透明インクを用いることも可能である。
【0032】
第2インクジェットヘッドノズル部11Bは、三次元構造物の一部である着色部分を形成するための着色材であるインクを吐出する。本実施形態では、着色材として、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクおよび透明インクとを用いる。そのため、第2インクジェットヘッドノズル部11Bには、イエローインクを吐出するイエローインク用ノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタインク用ノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンインク用ノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックインク用ノズル列Kと、透明インクを吐出する透明インク用ノズル列CLとが設けられている。
【0033】
第1インクジェットヘッドノズル部11Aに具備される複数のノズル列、および第2インクジェットヘッドノズル部11Bに具備される複数のノズル列は、記録ユニット10の走査方向(Y軸方向)に沿って配列している。すなわち、
図2に示すように、イエローインク用ノズル列Yと、マゼンタインク用ノズル列Mと、シアンインク用ノズル列Cと、ブラックインク用ノズル列Kと、透明インク用ノズル列CLと、白色インク用ノズル列Wと、造形インク用ノズル列MAINと、サポートインク用ノズル列SPが、この順でY軸方向に沿って配列している。記録ユニット10は、これら複数のノズル列各々をキャリッジ13に搭載しているため、キャリッジ13の移動に伴うY方向への移動時に複数のノズル列から紫外線硬化型インクをZ軸方向に吐出(滴下)することが可能となっている。
【0034】
なお、各ノズル列は、複数のノズル孔をX軸方向に配列している。
【0035】
なお、ノズル列の配列順や数は
図2に示すものに限定されない。たとえば造形インク用ノズル列MAINと、サポートインク用ノズル列SPは他に比べて吐出量が多いので、複数列配列してもよく、ノズル列あたりのノズル孔の総数を増やして高密度にしてもよい。その結果として、造形のみである第1の動作モードの高速化が可能になる。また、減法混色によるカラー着色を可能にする為の白色インク用ノズル列Wを第2インクジェットヘッドノズル部11Bに設けてもよい。
【0036】
UV照射部12は、インク硬化用の光源を有した複数の照射器12Aを有しており、これをキャリッジ13に搭載している。具体的には、UV照射部12は、Y軸方向に沿って配列した3つの照射器12Aを有しており、間に第1インクジェットヘッドノズル部11Aと第2インクジェットヘッドノズル部11Bとを挟むようにして配設されている。すなわち、キャリッジ13には、Y軸方向に沿って、照射器12A、第1インクジェットヘッドノズル部11A、照射器12A、第2インクジェットヘッドノズル部11B、照射器12Aという順で配設されている。このように、全てのノズル列がY方向に配列して設けられているため、一回のY方向への移動で一層の全てのインクを吐出しての層形成も可能であり、且つ、一回のY方向への移動でインクの吐出と同時に紫外線照射もおこなわれるため、紫外線硬化型インクの場合での一層の硬化も吐出と同じタイミングでおこなうことができる。
【0037】
なお、UV照射部12を構成する3つの照射器12Aは何れも、Y軸方向の移動中に、着色部分を形成するための後述する小さいインク滴を硬化させる照射強度を少なくとも有している。3つの照射器12Aの全てが同じ照射強度であってもよく、照射強度が異なっていても良い。
【0038】
また、3つの照射器12Aの全てが、後述する小さいインク滴を硬化させる程度の照射強度しか有しておらず、後述する大きなインク滴をY軸方向への一回の移動中に硬化させることができない照射強度しか有していない場合には、該大きなインク滴をその照射器12Aによって仮硬化する態様としてもよい。この態様とすれば、仮硬化中に造形物の形状を調整することができ、調整後に完全硬化させることも可能である。
【0039】
●制御ユニット20
制御ユニット20は、記録ユニット10を制御するためにある。本実施形態の形成装置30の特徴点の一つは、この制御ユニット20が、記録ユニット10を制御することによって、造形物の造形のみの第1の動作モードと、造形物の造形と同時に該造形物表面を入力データに基づいてフルカラー着色する第2の動作モードとに動作モードを切り替えることができる点にある。
【0040】
制御ユニット20は、
図1に示すように、設定部21(切替部)と、第1制御部22と、第2制御部23とを有している。
【0041】
設定部21は、各種設定や入力操作をおこなうためにある。先述の動作モードの設定(切り替え)は、ユーザーがこの設定部21から設定することができる。設定部21は、設定内容や入力内容を示す情報を生成し、生成した情報を、第1制御部22および第2制御部23に出力することができる。
【0042】
第1制御部22は、設定部21から取得した情報に基づいて、記録ユニット10のインクジェットヘッド11の各種インクの吐出を制御する。具体的な制御の内容については、後述する。
【0043】
また、第1制御部22には、図示しない記憶部が設けられており、この記憶部には、三次元構造物の形状データ(着色部分を形成するための入力データも含む)等が記憶される。具体的には、記憶部には、最終製品の外観内観のデザイン・機構等を三次元CADによってデータ化した後、コンピュータによって該データをスライスして薄板を重ね合わせるような多層型のパターンデータが記憶されている。なお、三次元構造物の形状データは、第1制御部22の外部から取得するものであってもよいし、記憶部に予め記憶されているものであってもよいし、あるいは、第1制御部22の外部から取得した情報に基づいて第1制御部22が生成するものであってもよい。
【0044】
第2制御部23は、記録ユニット10のUV照射部12の照射を制御するためにある。
【0045】
なお、制御ユニット20には、キャリッジ13の移動の制御をおこなう制御部(不図示)も設けられている。
【0046】
(2)形成装置の動作(三次元構造物の形成方法)
本実施形態では、造形物の造形のみの第1の動作モードと、上記造形物の造形と同時に該造形物表面を入力データに基づいてフルカラー着色する第2の動作モードとを切り替えることができる。更に、本実施形態の特徴は、上述の形成装置30を用いて、造形において一つの層を形成するための走査の周期の時間内で、複数層の着色の層を形成するための走査をおこなう点にある。
【0047】
以下に形成装置を用いておこなう形成方法の詳細を説明するが、その前に、形成される三次元構造物の構成について説明する。
【0048】
(2−1)三次元構造物の構成
図3は、本実施形態の形成装置30を用いて形成される三次元構造物の外観図であり、
図4は、
図3の切断線A−A´における三次元構造物の矢視断面図である。
【0049】
三次元構造物5は、上面、下面、および側面が平面であり、且つ側面から上面にかけて湾曲面であり、また側面から下面にかけて湾曲面である、略円筒形状を有している。なお、三次元構造物の形状は、
図3に示す形状に限定されるものではなく、例えば後述する六面体のほか、球型や中空構造やリング構造や蹄鉄型などあらゆる形状に適用することができる。また、三次元構造物5の外側は、オーバーハングの構造物の造形を可能にするサポート層Sで覆われている。
【0050】
三次元構造物5は、その表層側(外周側)から内側(中心部側)に向かって、第2の透明層4と、着色剤(着色インク)を含むインクによって形成された着色層3と、透明インクによって形成された第1の透明層2(
図4)と、光反射性を有する白色インクから形成された白色層1(
図4)と、造形本体部分を構成する造形層Mとがこの順番で形成されている。すなわち、三次元構造物5は、中心部に在る造形層Mを、白色層1と、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とがこの順でコーティングしている。
【0051】
なお、本実施形態では、造形層Mおよび白色層1を造形物と見なすが、造形層Mのみを造形物として構成してもよいし、あるいは造形層Mを設けずに白色層1のみで造形物を構成してもよい。また、造形物には空洞が設けられていてもよい。
【0052】
造形層Mと、白色層1と、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4と、サポート層Sとは、いずれもインクジェット法を用いてインクを堆積することによって形成されている。なお、サポート層Sのサポートインクは水溶性であり、造形終了後に水により溶解除去することで、三次元構造物5を取り出すことができる。
【0053】
図4に示す三次元構造物5の断面は、
図3に示すXYZ座標系に関して、三次元構造物5の中央位置においてYZ平面に沿った断面を出現させたものである。
【0054】
三次元構造物5は、
図4に示すように、複数の層5a…をインクジェット法を用いて積層する積層方式によって形成された構造物である。なお、図面には、積層方向に沿った軸をZ軸とする座標系を示している。この座標系において、各層5a…は、それぞれXY平面に沿って広がっている。なお、
図4では、21層を積層しているが、積層する層の総数は特に制限はない。
【0055】
先述のように中心部に在る造形層Mから、表層側に向かって、白色層1と、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とがこの順で造形層Mをコーティングした三次元構造物5を、
図4のようにZ軸方向に複数の層にスライスしたかたちで得られる層5a…にはそれぞれ、その積層位置に応じて、造形層Mの一部分(以下、造形層の一部分50)、白色層1の一部分(以下、白色層の一部分51)、第1の透明層2の一部分(以下、第1の透明層の一部分52)、着色層3の一部分(以下、着色層の一部分52)または第2の透明層4の一部分(以下、第2の透明層の一部分54)を含む。
【0056】
具体的には、
図4に示すように、複数の層5aのうち、
図4に示す最下位置に在る層5aと、最上位置に在る層5aとを、第2の透明層の一部分54のみからなる層5aとする。そして、これらの層5aの対向側(内側)にそれぞれ、第2の透明層の一部分54が着色層の一部分53の外周に形成された層5aを配置する。さらにその内側に、外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53および第1の透明層の一部分52がこの順で形成された層5aを配置する。さらにその内側に、外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53、第1の透明層の一部分52および白色層の一部分51がこの順で形成された層5aを配置する。そして、これらに挟まれる中間領域を、外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53、第1の透明層の一部分52、白色層の一部分51および造形層の一部分50がこの順で形成された層5a(
図4では、層5a(n)および5a(n+1)を図示)を配置する。
図5に、外周端から中央に向かって第2の透明層の一部分54、着色層の一部分53、第1の透明層の一部分52、白色層の一部分51および造形層の一部分50がこの順で形成された層5aの平面図(XY平面図)を示す。
【0057】
なお、これら各種の層の配設数は
図4に示したものに限定されるものではない。また、
図4に示す三次元構造物5を積層方式によって形成するものであれば、各層5a…の構成は上述したものに限定されない。
【0058】
図4に示すように複数の層5a…がZ軸方向に積層されていることにより、各層5a…の第2の透明層の一部分54が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、第2の透明層4を形成している。また、着色層の一部分53を含んでいる各層5a…の着色層の一部分53が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、着色層3を形成している。また、第1の透明層の一部分52を含んでいる各層5a…の第1の透明層の一部分52が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、第1の透明層2を形成している。また、白色層の一部分51を含んでいる各層5a…の白色層の一部分51が概ね三次元構造物5の最外周表面方向に連なって、白色層1を形成している。また、造形層の一部分50を含んでいる各層5a…の造形層の一部分50が積層されて造形層Mを形成している。
【0059】
このように配置することにより、あらゆる方向から視認しても所望の色調を呈する三次元構造物5を実現することができる。
【0060】
ここで、本実施形態では、
図3および
図4に示す三次元構造物5のうち、表層側(外周側)から第2の透明層4と、着色層3と、第1の透明層2とまでが、「着色部分」に相当するものとする。そして、その内側の、白色層1と、造形層Mとが「造形物」に相当するものとする。すなわち、造形物とは、
図3および
図4に示す三次元構造物5から、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とを除いたものである。よって、造形物は、先述の各種の層5aのうち、造形層の一部分50と、白色層の一部分51とを含んだ領域のみを層とし、この層を積層することによって造形することができる。また、造形物は造形層の一部分50のみで造形してもよく、造形層の一部分50と第2の透明層4とで造形してもよい。
【0061】
すなわち、本実施形態の形成装置30は、造形物を造形する場合であっても、
図3および
図4に示す三次元構造物5を形成する場合であっても、インクジェット法を用いて層を積層することによって目的物(造形物、三次元構造物)を完成させることができる。
【0062】
なお、着色層3が「着色部分」に含まれ、造形層Mが「造形物」に含まれれば、これらの間に在る第1の透明層2および白色層1は「着色部分」および「造形物」の何れに含まれても良い。但し、着色層3で減法混色法によるカラー着色を可能にするためには白色層1の存在が必要である。
【0063】
(2−2)動作モードについて
本実施形態では、形成装置30が、造形物のみを造形する第1のモードと、造形物の造形と同時に
図4に示すように着色部分の形成とをおこなって三次元構造物5を形成する第2の動作モードとを備えている。
図3および
図4に示す各種の層5aを積層することによって造形物の造形と同時に着色部分が形成された三次元構造物5は、形成装置30を第2の動作モードで動作させたことによって得られる目的物である。一方、
図4に示す各5aのうちの造形層の一部分50と、白色層の一部分51とを含んでいる部分同士を積層すれば、造形物が造形される。この造形物は、形成装置30を第1の動作モードで動作させたことによって得られる目的物である。なお、造形物のみを造形する場合、最上位置および最下位置には、白色層の一部分51のみを有する層を配置(積層)する。
【0064】
また、本実施形態では、これらの動作モードを制御ユニット20の設定部21においてユーザーが切り替えることができる。これにより、(ユーザーが)造形物の造形だけを所望する場合と、造形物表面の色付けもおこなった三次元構造物を所望する場合とで、動作モードを切り替えることができる。
【0065】
そして、このようにモードを切り替えることができる形成装置30の更なるメリットが、第1の動作モードを選択した場合には、造形物を素早く造形(提供)することができる。この点を、形成装置30を用いた形成方法を説明するなかで明らかにする。
【0066】
(2−3)第2の動作モード
図6は、
図4に示す層5a(n)および5a(n+1)の表層付近の詳細を示した部分断面図である。
図6では、各層5a(n)および5a(n+1)において、インクジェットノズルから吐出された1滴のインクを模式的に1マスの立方体で示している。なお、
図6に示す層5a(n)および5a(n+1)には、説明の便宜上、
図4において破線で囲んだ領域のみを示しているため、造形層の一部分およびサポート層の一部分55は図示していない。
図6に示す層5a(n)および5a(n+1)の紙面右端が、各層の外周端の側面を連ねてなる第2の透明層4の最外面の一部であり、すなわち三次元構造物5の側面の一部である。また、
図6の着色層の一部分53は、シアン、マゼンタ、透明の3種類のインクで構成されており、巨視的には造形物の表面は明るいブルーとなっている。
【0067】
本実施形態の形成方法の特徴の一つは、
図6に示すように、白色層の一部分51を形成するためにインクジェットから吐出された1滴のインクのサイズは、第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54を形成するためにインクジェットから吐出される1滴のインクのサイズよりも大きい点にある。
図6は模式的でありあくまでも一例であるが、白色層の一部分51を形成するための1滴のインクの体積は、第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54を形成するための1滴のインクの体積の8倍である。
【0068】
このようにサイズに差をもたせる方法としては、白色層の一部分51を形成するためにインクジェットノズルから吐出するインク滴を、第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54を形成するためにインクジェットノズルから吐出するインク滴よりも大きくする方法がある。すなわち、インクジェットノズルから吐出する時点でのインク滴のサイズに、
図6に示すサイズの差を形成する方法である。
【0069】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、インクジェットノズルから吐出するインク滴の大きさは、白色層の一部分51、第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54の何れにおいても均一な大きさとして、白色層の一部分51を形成するための白色インクのみを単位時間当たりの吐出数を、第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54を形成するための各種インクの単位時間当たりの吐出数よりも多くする方法もある。この方法とすれば、白色層の一部分51を形成する白色インクがノズルから連続して吐出されることによって、これらのインク滴が着弾するまでの間に合わさるか、あるいは着弾時に合わさって堆積することによって、大きなサイズのインク滴を形成することができる。単位時間当たりの吐出数は、インク吐出タイミングを制御すれば実現可能である。
【0070】
図6に示すインク滴のサイズの差は、
図3に示す形成装置30において、制御ユニット20が記録ユニット10を制御することによって実現される。
【0071】
また、上記では1滴のインクの体積の差を8倍と説明したが、
図6に示す白色層の一部分51と、第1の透明層の一部分52等との関係は、1層の白色層の一部分51に対して、第1の透明層の一部分52等が2層形成されていると解釈することも可能である。これは、第2の動作モードで動作する形成装置30において、造形において一つの層を形成するための走査の周期の時間内で、2層の着色の層を形成するための走査をおこなうことによって実現することができる。
【0072】
すなわち、
図6に示す層5a(n)を形成する手順を説明すると、
図2に示す記録ユニット10をY軸方向に移動(走査)しながら、白色層の一部分51を形成するための白色インクを吐出して大きなインク滴で1層形成する。このとき、
図2に示すUV照射部12のうちの白色インク用ノズル列Wに近い照射器12Aを用いてインクを硬化させる。そして、白色層の一部分51を形成するための白色インクを吐出して大きなインク滴で1層形成すると同時に、透明インクと着色インクとを小さなインク滴で1層形成する。この小さなインク滴によって、
図6の層5a(n)の第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54のそれぞれの下半分を形成することができる。このとき、透明インクと着色インクとを吐出するノズル列に近い照射器12Aを用いてこれらのインクを硬化させる。
【0073】
そして、
図2に示す記録ユニット10をY軸方向に移動(走査)しながら、先に形成した下半分の透明インクおよび着色インクの堆積物の上に、透明インクおよび着色インクの小さなインク滴を形成して1層形成する。この1層が、
図6の層5a(n)の第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54のそれぞれの上半分を形成する。このときも、透明インクと着色インクとを吐出するノズル列に近い照射器12Aを用いてこれらのインクを硬化させる。この上半分を形成する走査において、記録ユニット10が、先に大きなインク滴で形成した白色層の一部分51を上を通過する。しかしながら、この通過中に、該白色層の一部分51に対して記録ユニット10から白色インクは滴下されない。
【0074】
ここまでで、
図6に示す層5a(n)を形成することができる。
【0075】
そして、続いて
図6に示す層5a(n+1)を形成するために、
図2に示す記録ユニット10をY軸方向に移動(走査)しながら、白色層の一部分51を形成するための白色インクを吐出して大きなインク滴で1層形成する。このとき、
図2に示すUV照射部12のうちの白色インク用ノズル列Wに近い照射器12Aを用いてインクを硬化させる。そして、白色層の一部分51を形成するための白色インクを吐出して大きなインク滴で1層形成すると同時に、透明インクと着色インクとを小さなインク滴で1層形成する。この小さなインク滴によって、
図6の層5a(n+1)の第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54のそれぞれの下半分を形成することができる。このとき、透明インクと着色インクとを吐出するノズル列に近い照射器12Aを用いてこれらのインクを硬化させる。
【0076】
そして、
図2に示す記録ユニット10をY軸方向に移動(走査)しながら、先に形成した下半分の透明インクおよび着色インクの堆積物の上に透明インクおよび着色インクの小さなインク滴を形成して1層形成する。この1層が、
図6の層5a(n+1)の第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54のそれぞれの上半分を形成する。このときも、透明インクと着色インクとを吐出するノズル列に近い照射器12Aを用いてこれらのインクを硬化させる。この上半分を形成する走査においても、記録ユニット10が、先に大きなインク滴で形成した白色層の一部分51を上を通過する。しかしながら、この通過中に、該白色層の一部分51に対して記録ユニット10から白色インクは滴下されない。
【0077】
ここまでで、
図6に示す層5a(n)の上に層5a(n+1)が積層される。
【0078】
なお、
図6には示していない造形層の一部分50を形成するための造形インクも、サポート層の一部分55を形成するためのサポートインクも、白色層の一部分51を形成するための白色インクと同じインク滴のサイズとする。
【0079】
以上が、造形物の造形と同時に着色部分を形成する第2の動作モードの手順である。第2の動作モードでは、造形物を構成する造形層の一部分および白色層の一部分51よりも、着色部分を構成する第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53、および第2の透明層の一部分54のインク滴が小さいことから、着色部分のインク解像度を高めることができ、フルカラーを高精細に表現でき、特に中間調の色調であっても良好に表現することができるというメリットがある。
【0080】
なお、
図6に示すように、着色層の一部分53には、着色インク(
図2のイエローインク用ノズル列Y、マゼンタインク用ノズル列M、シアンインク用ノズル列C、ブラックインク用ノズル列K)のみを堆積させるのではなく、
図2に示す透明インク用ノズル列CLから吐出される透明インクも堆積させる。なお、必ずしも着色層の一部分53に透明インクを堆積させなければならないというものではない。
【0081】
また、着色層の一部分53のみでなく、第1の透明層の一部分52および第2の透明層の一部分54も、小さいインク滴で形成することにより、表面のざらつきが少なく、光沢を出すことができる。特にこれは、三次元構造物5の最外層を構成する第2の透明層4の形成に有利である。
【0082】
(2−4)第1の動作モード
第1の動作モードでは、先に説明した白色層の一部分51のインク滴のサイズで、
図4に示す各層5aの造形層の一部分50、白色層の一部分51およびサポート層の一部分55のみを形成する。
【0083】
すなわち、
図6の一部を用いて説明すれば、第1の動作モードでは、層5a(n)の白色層の一部分51を形成するために、白色インクを吐出して大きなインク滴で1層形成する。同様に造形層の一部分を形成するための造形インクも吐出し、サポート層の一部分55を形成するためのサポートインクも吐出して、白色インクと同じ大きさのインク滴で1層形成する。このとき、
図2に示すUV照射部12のうちの白色インク用ノズル列Wおよび透明インク用ノズル列CLに近い照射器12Aを用いてこれらのインクを硬化させる。
【0084】
ここまでで、
図6の層5a(n)に相当する第1の動作モードで形成される層が完成する。
【0085】
そして、続いて
図6の層5a(n+1)の一部である白色層の一部分51(造形層の一部分も含む)を、先に形成した
図6の層5a(n)の一部の上に形成する。このときも、白色インクを吐出して大きなインク滴で1層形成する。同様に造形層の一部分を形成するための造形インクも吐出し、サポート層の一部分55を形成するためのサポートインクも吐出して、白色インクと同じ大きさのインク滴で1層形成する。そして、
図2に示すUV照射部12のうちの白色インク用ノズル列Wおよびサポートインク用ノズル列SPに近い照射器12Aを用いてこれらのインクを硬化させる。
【0086】
なお、造形物の表面を白色にせずに、造形用インクの色でよいのであれば白色インクの吐出は行わず、造形インクとサポートインクだけを吐出させればよく、さらに、オーバーハングの無い造形物であれば造形インクのみ吐出させればよい。
【0087】
ここまでで、
図6に示す層5a(n)および5a(n+1)の積層構造のうち、造形物の一部に相当する積層構造を造形することができる。
【0088】
このように、本実施形態によれば、目的に応じて、着色部分の形成に用いるインク滴よりも大きなインク滴を堆積させて造形物のみを形成する第1の動作モードと、造形物の造形と共に着色部分も形成する第2の動作モードとを切り替えることができる。これにより、造形物のみを所望する場合には第1の動作モードを選択すればよく、造形物のみを所望しているにも関わらず着色部分も形成されてしまうことがなく、形成に自由度がある。
【0089】
そして、造形物のみを所望するのであれば色調を考慮しなくてもよいため先述のように大きなインク滴を堆積させて形成することができる。これにより、目的物(造形物)を比較的早く完成させることができるというメリットもある。
【0090】
さらには、第1の動作モードでは、記録ユニット10の中で第1インクジェットヘッドノズル部11Aとそれに隣接する照射器12Aのみを動作させればよいので、Y方向の走査距離が第2の動作モードの半分以下であり、より短時間での造形が可能となる。
【0091】
以下に、制御ユニット20による制御フローを
図7を用いて説明する。
【0092】
本実施形態の形成装置30をスタートさせると、制御ユニット20の設定部21が、第1の動作モードが(ユーザーによって)選択されたか否かを示す情報を生成する(ステップS1)。この情報は、第1制御部22に出力される。
【0093】
第1制御部22では、設定部21から取得した情報に基づいて、該情報が、第1の動作モードが選択されたことを示す情報(
図7中のYES)であれば、造形物を、積層方式を用いて各層(造形領域)を先述した大きいインク滴で形成するように、インクジェットヘッド11を制御する(ステップS2)。また、このとき、第2制御部23においても設定部21から上記情報を取得する。そして、第2制御部23は、その情報に基づいて、UV照射部12のどの照射器12Aを照射させるかを決定し、UV照射部12を制御する。
【0094】
一方、設定部21から取得した情報が第1の動作モードが選択されていないことを示す情報(
図7中のNO)であれば、第2の動作モードで造形物と同時に着色部分を形成するようにインクジェットヘッド11を制御する。このとき、造形物の一部である造形領域は先述した大きいインク滴で形成するように、また、着色部分の一部である着色領域は先述した小さいインク滴で形成するように、インクジェットヘッド11を制御する(ステップS3)。また、このとき、第2制御部23においても設定部21から上記情報を取得する。そして、第2制御部23は、その情報に基づいて、UV照射部12のどの照射器12Aを照射させるかを決定し、UV照射部12を制御する。
【0095】
なお、何れの動作モードであっても、複数層単位の形成毎にZ軸に沿って垂直移動(走査)する。複数層の単位は、100μm〜2mmの範囲の高さ(Z軸方向)であり、好ましくは200μm〜1mmの範囲の高さとする。
【0096】
ここで、
図6に示した1層の白色層の一部分51に対して、着色部分を構成する第1の透明層の一部分、着色層の一部分および第2の透明層の一部分を何層(
図6では2層)にするかは、予め第1制御部22において決めておけばよい。
【0097】
また、
図6に示した1層の白色層の一部分51の厚さ、すなわち、
図4の各層5aの厚さ(Z軸方向の幅)は、5μm〜100μmとすることができ、好ましい範囲は10μm〜50μmとする。
【0098】
なお、制御ユニット20は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、制御ユニット20は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0099】
(3)その他の動作モード
上述の実施形態では、第1の動作モードと第2の動作モードの2種類の動作モードを切り替える態様について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、造形物のみを造形する際に白色インクのみで造形する動作モード(第3の動作モード)を備えてもよい。この第3の動作モードを、
図2に示す記録ユニット10において実現する際には、第1インクジェットヘッドノズル部11Aに含まれる白色インク用ノズル列Wから吐出する白色インクを造形材として用い、第1インクジェットヘッドノズル部11Aに近い照射器12Aによって硬化させる態様とすればよい。この第3の動作モードは、上述した第1の動作モードおよび第2の動作モードに加えて設けても良いし、第1の動作モードに替えて設けても良い。
【0100】
また、造形物のみを造形する際に透明インクのみで造形する動作モード(第4の動作モード)を備えてもよい。この第4の動作モードを、
図2に示す記録ユニット10において実現する際には、第2インクジェットヘッドノズル部11Bに含まれる透明インク用ノズル列CLから吐出する透明インクを造形材として用い、これを第2インクジェットヘッドノズル部11Bに近い照射器12Aによって硬化させる態様とすればよい。この第4の動作モードは、先述の第1の動作モードおよび第2の動作モード(および第3の動作モード)に加えて設けても良いし、第1の動作モード(または第3の動作モード)に替えて設けても良い。
【0101】
また、造形物を透明インクで造形し、上述した着色インクを用いて着色部分を形成する動作モードを備えてもよい(第5の動作モード)。この第5の動作モードを、
図2に示す記録ユニット10において実現する際には、第2インクジェットヘッドノズル部11Bに含まれる透明インク用ノズル列CLから吐出する透明インクを造形材として用い、これを第2インクジェットヘッドノズル部11Bに近い照射器12Aによって硬化させ、第2インクジェットヘッドノズル部11Bに含まれる他のノズル列Y,M,C,Kから吐出する着色インクを用い、これを第2インクジェットヘッドノズル部11Bに近い照射器12Aによって硬化させる態様とすればよい。この第5の動作モードは、先述の第1〜4の動作モードに加えて設けても良いし、第2の動作モードに替えて設けても良い。
【0102】
(4)三次元構造物のその他
三次元構造物5に関して、上記では本発明の特徴的構成に直接的に関係する部分のみを説明した。そこで、
図3および
図4に示した三次元構造物5のその他の構成について以下に説明する。
【0103】
以下に、白色層1(白色層の一部分51)と、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)と、着色層3(着色層の一部分53)と、第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)とについて、それぞれ説明する。
【0104】
●白色層1(白色層の一部分51)
白色層1(白色層の一部分51)は、光反射性を有する層であり、白色層1の少なくとも着色層側の表面において可視光の全領域の光を反射することができる光反射性を有している。
【0105】
白色層1(白色層の一部分51)は、白色顔料を含むインク(白色インク)から形成することができる。白色インクから形成することにより、白色層1において三次元構造物の表層側から着色層3を経由して入った光を良好に反射し、減法混色による着色を実現することができる。なお、白色でなくとも、金属粉末を含んだインクなどの光反射性を有するインクから形成される層であってもよい。
【0106】
●第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)の構成
第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)は、透明インクから形成される。
【0107】
ここで、透明インクとは、単位厚さ当たりの光透過率が50%以上である透明層を形成することができるインクであれば良い。透明層の単位厚さ当たりの光透過率が50%を下回ると、光の透過が不都合に阻止されて、造形物が減法混色による所望の色調を呈することができないため望ましくない。また、好ましくは、透明層の単位厚さ当たりの光透過率が80%以上となるインクを用い、透明層の単位厚さ当たりの光透過率が90%以上となるインクを用いることがより好ましい。
【0108】
白色層1(白色層の一部分51)と、着色層3(着色層の一部分53)との間に第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)を配設することにより、着色層3を形成する着色インクと白色層1を形成するインクとが混じり合うことを回避することができる。仮に、着色層を形成する着色インクが、第1の透明層を形成する透明インクと混じり合っても着色層3の色は失われないので色調に不都合な変化を生じさせることはない。したがって、着色層3において所望の色調(加飾)を呈した造形物を実現することができる。
【0109】
●着色層3(着色層の一部分53)
着色層3(着色層の一部分53)の形成に用いられるインクは、着色剤を含有する着色インクを含む。
【0110】
着色インクとしては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)、ブラック(K)、各々の淡色のインクが含まれるが、これに限定されるものではなく、赤(R)、緑(G)、青(B)や、オレンジ(Or)等を加えても良い。また、メタリックやパールや蛍光体色を使用することも可能である。所望の色調を表現するべく、これらの着色インクの一種類または複数種類を用いる。
【0111】
ところで、着色層3(着色層の一部分53)の第1着色領域53aを形成するために用いられる着色インクの量は、所望の(呈したい)色調によってばらつきがある。そのため、低濃度の明るい色調の場合は着色インクのみでは第1着色領域53aのインク充填密度が所定のインク充填密度を満たすに至らず、Z方向の高さに凹凸が形成される場合や、X、Y方向に沿った途中に着色インクが無い凹みが形成される場合がある。何れの場合も、本実施形態のように積層方式によって形成される造形物には不都合な凹凸を生じることになり、好ましくない。特に、
図1の(b)に示す積層構造の真ん中付近の垂直な造形面では、誤差拡散法によるインク形成で、着色層3の一つの断面が縦横各々のインク滴二滴の計四滴の充填密度の場合で、着色インクの数は最大(最高濃度)で四滴、最小(濃度ゼロ、つまり白色)でゼロとなるので、最小の場合は四滴分の隙間の空間を形成してしまう場合があり、造形面からも色調面からも大きく品質を損なう。
【0112】
そこで、本実施形態では、着色インクのみでは着色層3(着色層の一部分53)の第1着色領域53aのインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって着色層3(着色層の一部分53)の第1着色領域53aのインク充填密度を補填することをおこなう。すなわち、着色層3(着色層の一部分53)の第1着色領域53aを、着色インクと補填インクの合算の密度(インク滴の数)を一定となるように形成する。これにより、上述した凹みの発生を回避して、三次元構造物5の形状をち密に造形することができる。
【0113】
着色インクの吐出量、着色インクに構成される各色インクの着弾位置は予めわかっているため、これらを考慮すれば補填インクの補填量と補填位置(着弾位置)を判断することができる。該判断は、インクジェットヘッド装置または制御装置30(
図2)、あるいは他の制御手段においておこなうことができる。
【0114】
また、補填インクによりインク充填密度を補填することにより、着色層3の第1着色領域53aで形成される面が平坦になるために光沢感を持たせることができる。
【0115】
補填インクは、着色層3(着色層の一部分53)の第1着色領域53aに呈されるべき色調に悪影響を与えないインクであればよく、一例としては、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)および第2の透明層4(第1の透明層の一部分54)において用いる透明インクを採用することができる。
【0116】
なお、本実施形態では着色層3に基づいて説明しているが、本発明は着色層に限定されるものではなく、加飾層であれば特に制限はない。
【0117】
●第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)の構成
第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)は、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)において説明した透明インクを用いて形成される。なお、第2の透明層4と第1の透明層2とは同一種の透明インクを用いても形成されても良く、異種の透明インクを用いても形成されても良い。
【0118】
第2の透明層4は、着色層3の保護層としての機能を有するだけでなく、積層方式を採用している本発明(本実施形態)において、三次元構造物をち密に製造することを可能にするという優位な効果を奏する。すなわち、仮に着色層3が三次元構造物5の最表層を構成している場合、つまり着色層の一部分53を有する層5aにおいて仮に着色層の一部分53が最も端部に位置している場合には、着色層3(着色層の一部分53)が精度よく形成できない虞がある。しかしながら、本実施形態のように三次元構造物5の最表層に第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)が形成されていることにより、着色層3(着色層の一部分53)が精度よく形成されることから、第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)によって、所望の色調を呈することに寄与できる。
【0119】
また、仮に着色層3が三次元構造物5の最表層を構成している場合は、着色層3がむき出しになるので、擦れによる脱色や、紫外線による退色が起き易くなる。しかしながら、本実施形態のように三次元構造物5の最表層に第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)が形成されていることにより、脱色や退色を防止することができる。
【0120】
[付記事項]
本発明の一態様に係る形成装置30は、造形物と該造形物表面を着色している着色部分とを有する三次元構造物を、積層により形成する三次元構造物の形成装置であって、上記造形物の造形のみの第1の動作モードと、上記造形物の造形と同時に、該造形物表面を入力データに基づいてフルカラー着色する第2の動作モードとを有し、上記第1の動作モードと上記第2の動作モードとを切り替える制御ユニット20を備えていることを特徴としている。
【0121】
上記の構成によれば、制御ユニット20を備えていることにより、ユーザーが造形だけで良い場合と、造形物表面の色付けもおこなった三次元構造物を所望する場合とで、動作モードを切り替えることができる。
【0122】
また、例えば上記第2の動作モードにおいてフルカラー着色に用いるインク解像度が比較的小さい(細かい)場合に、色調を考慮する必要がなく造形だけをおこなえば良い第1の動作モードでは、フルカラー着色に用いるインク解像度よりも大きなインク解像度を用いて造形をおこなうことが可能である。この場合、第1の動作モードが選択されれば、造形物を迅速に形成することができるという効果を奏する。
【0123】
また本発明の一形態に係る形成装置30は、上記の構成に加えて、インクジェットヘッド11を備え、上記インクジェットヘッド11から、上記造形のための造形材、および上記着色のための着色材を吐出することによって形成した層を積層する。
【0124】
また本発明の一形態に係る形成装置30は、上記の構成に加えて、上記造形において一つの層を形成するための走査の周期の時間内で、複数層の上記着色の層を形成するための走査をおこなう。
【0125】
上記の構成によれば、色調を考慮する必要がない造形の部分よりもフルカラー着色部分のインク解像度が細かくなる。これにより、中間調の色調をフルカラー着色部分において良好に呈することができる。
【0126】
また本発明の一形態に係る形成装置30は、上記の構成に加えて、上記造形において一つの層を形成するための走査の周期の時間内で、複数層の透明保護層を形成するための走査をおこなう。
【0127】
上記の構成によれば、透明保護層の表面のざらつきを少なくすることができ、光沢をもたらすことができる。
【0128】
また本発明の一形態に係る形成装置30は、上記の構成に加えて、上記造形材および上記着色材として、紫外線硬化型インクを用いる。
【0129】
上記の構成によれば、造形材および着色材として紫外線硬化型インクを用いることにより、短時間で硬化できるため、積層させることが容易であり、目的物(造形物、三次元構造物)をより短時間で形成することができる。
【0130】
また本発明の一形態に係る形成装置30は、上記の構成に加えて、上記造形材を吐出する第1インクジェットヘッドノズル部11Aと、上記着色材を吐出する第2インクジェットヘッドノズル部11Bと、インク硬化用の光源を有した複数の照射器12Aとを備え、上記複数の照射部12Aは、上記第1インクジェットヘッドノズル部11Aおよび上記第2インクジェットヘッドノズル部11Bのそれぞれを走査方向に挟持するように配されている。
【0131】
上記の構成によれば、上記第1インクジェットヘッドノズル部および上記第2インクジェットヘッドノズル部のそれぞれを走査方向に挟持するように照射部が配されているため、滴下したインクを効率的に硬化させることができる。
【0132】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。