(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る生体信号処理装置の一例としての、生体信号測定装置100と、生体信号測定装置100とともに用いるCPAP、ASVなどの呼吸支援装置200の構成例を示すブロック図である。なお、本実施形態の生体信号処理装置は、いわゆる簡易ポリグラフ検査装置であり、解析に供される生体信号、具体的には呼吸関連信号を患者から取得するための構成、並びに呼吸支援装置による給気圧(鼻腔圧)を測定するための構成を有している。しかしながら、本発明に係る生体信号処理装置において、生体信号を測定するための構成は必須で無い。本発明に係る生体信号処理装置は、予め測定ならびに記録された生体信号を、例えば直接接続された、またはネットワークを介して接続された記憶装置や記憶媒体から取得するなど、任意の方法で取得可能であればよい。また、本実施形態の生体信号処理装置は、簡易ポリグラフのような睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断に用いる生体信号を処理する装置であるが、本発明は取り扱う生体信号の種類に依存しない。
【0012】
(構成)
本実施形態に係る生体信号測定装置100において、SpO
2センサ101は、脈波および動脈血酸素飽和度を例えば被検者の指先で測定する透過式のセンサである。なお、脈波の測定用にSpO
2センサ101とは別のセンサを用いてもよい。カニューレ102は、被検者の鼻孔および口近傍に開口を有し、接続されたエアフローセンサ(圧力センサ)106によって、被検者の口鼻呼吸波形やいびき音、また呼吸支援装置200のマスク211内の圧力(鼻腔圧)を検出するために用いられる。胸部・腹部センサ103は、被検者の呼吸努力運動を検出するためのセンサである。なお、以下ではエアフローセンサ(圧力センサ)106を単に圧力センサ106と表記する場合がある。
【0013】
このように、本実施形態の生体信号測定装置100は、呼吸関連波形を測定するためのセンサとしてエアフローセンサ106と、胸部・腹部センサ103とを有している。圧力センサ106によって測定される口鼻呼吸波形(圧力変化波形)からは、無呼吸状態と低呼吸状態の両方が検出可能である。
【0014】
心電図電極104は心電図を取得するための電極であり、例えば単極または双極2チャンネルの心電図を検出するための電極である。加速度センサ105は、体位(例えば、右側臥位、左側臥位、仰臥位、伏臥位、および立位)および体動を測定するためのセンサである。
【0015】
メモリ107は、制御部110が作業用に用いる。また、メモリ107は装置の設定値の記憶に利用可能な不揮発性の領域を有してもよい。さらに、メモリ107は、データストレージもしくは記憶装置を含んでもよい。表示部108は例えば液晶ディスプレイ(LCD)を有し、装置の動作状況、測定波形、ユーザ情報、GUIなどの表示に用いる。
【0016】
制御部110は、生体信号測定装置100の動作を制御する。制御部110は例えばCPUと、CPUが実行する制御プログラムを記憶する不揮発性メモリと、CPUが不揮発性メモリから読み出したプログラムを実行するために用いるRAMを有する。なお、これらの不揮発性メモリおよびRAMの少なくとも一部としてメモリ107を用いてもよい。
【0017】
また、本実施形態の制御部110は、測定された脈波から推定胸腔内圧波形を生成する機能を有する。脈波から推定胸腔内圧波形を生成する方法に特に制限は無いが、例えば特開2006−55501号公報に記載されるような、脈波信号の包絡線として生成した呼吸波形と、呼吸波形の包絡線との差分として生成することができる。推定胸腔内圧波形から絶対的な値を読み取ることはできないが、上気道の抵抗がない場合の鼻腔圧は胸腔内圧と近似する。従って、上気道の抵抗がない状態で測定された鼻腔圧の波形の大きさに推定胸腔内圧波形の大きさを合わせることにより、推定胸腔内圧の絶対値を推測することは可能となる。そのため、本実施形態においては、推定胸腔内圧波形と鼻腔圧波形との比較を容易に行うための機能を提供する(詳細は後述する)。
【0018】
入力部109は、ユーザが生体信号測定装置100に各種の指示や設定を入力するための入力機器群である。入力部109が備えうる入力機器にはキーボード、マウス、ジョイスティック、トラックボール、タッチパッド、スイッチ、ボタン、ダイヤル、タッチパネル等、機械的な入力を行う機器はもちろん、音声コマンドなどの非機械的な入力を受け付ける機器も含まれる。入力部109からの入力は制御部110に与えられ、制御部110は入力に応じた動作を実現させる。
なお、スピーカ等の発音手段を設け、装置の動作状態やエラー発生、操作手順などを音声などによってユーザに報知するように構成してもよい。
【0019】
記録部111は測定した生体信号をデータファイルとして記録媒体に記録したり、記録媒体に記録された測定済みのデータを読み出したりする。記録部111は使用する記録媒体に応じて任意の構成を採りうるが、ここでは記録媒体として着脱可能な半導体メモリカードを用いるものとする。
【0020】
出力部112は外部装置と通信するためのインタフェースである。接続可能な外部機器の種類や通信プロトコルに特に制限は無く、また、通信媒体も有線、無線のいずれであってもよい。なお、記録部111では記録を行わず、出力部112を通じて通信可能な外部装置で記録を行うようにしてもよい。また、出力部112は異なる通信方式に対応し、通信方式に応じたコネクタを有してもよい。例えば外部装置としてプリンタが接続される場合、プリンタは出力部112とケーブルで接続されてもよいし、無線ネットワークを通じて接続されてもよい。
【0021】
呼吸支援装置200は、CPAP(固定圧型、APAP、BiPAP)やASV等の、患者の気道に陽圧の空気を供給することによって無呼吸や低呼吸の発生を抑制する装置である。呼吸支援装置200は本体210とマスク211とがホース212で接続されており、本体210が有する送風機によってホース212を通じてマスク211内に所定圧の空気が供給される。APAPやASVの場合、マスク211内の圧力(鼻腔圧)を圧力センサ213で測定し、呼吸状態や気道の閉塞状態に応じて、本体210が送風機を制御して給気圧を制御する。固定圧型CPAPの場合、本体210は設定された供給圧で送風機を連続的に動作させる。
【0022】
なお、呼吸支援装置200は本発明と直接関係がなく、また公知であるため、これ以上の詳細については説明を省略する。ここでは、給気圧を圧力センサ213の出力に応じて自動調整するAPAP、BiPAP、ASV等の装置を用いるものとする。なお、固定圧型のCPAPを用いる場合には、所定時間ごとに給気圧を順次変化させるように予め設定しておく。なお、呼吸支援装置200を動作させない場合(給気圧0)において測定を行う場合には、二酸化炭素の再吸気を防ぐため、マスクを外した状態で測定することが望ましい。
【0023】
(測定・記録動作)
センサ101,103〜105やカニューレ102が被検者の所定部位に装着され、入力部109から測定開始の指示が入力されると、生体信号測定装置100は生体信号の測定・記録を開始する。制御部110は、各種のセンサ101,103〜106からの入力信号に対して例えばA/D変換やフィルタ処理など予め定められた処理を適用し、測定時刻と対応付けてメモリ107に順次書き込んでゆく。また、制御部110は、測定された脈波から推定胸腔内圧波形を生成し、他の生体信号と同様に測定時刻と対応付けてメモリ107に順次書き込んでゆく。
【0024】
カニューレ102に接続された圧力センサ106は、鼻カニューレまたは口鼻カニューレからの気流を電気信号へ変換する。制御部110は、この電気信号に増幅処理およびフィルタ処理を適用し、圧力センサ106から得られる信号を周波数成分によって鼻腔圧の変化を示す信号、呼吸波形を示す信号、気道音(いびき)を示す信号に分離する。なお、カニューレが鼻カニューレであれば鼻呼吸波形が、口の近傍にも開口を有する口鼻カニューレであれば口鼻呼吸波形が得られる。
【0025】
例えば、圧力センサ106から得られる電気信号について500Hz程度を遮断周波数とするローパスフィルタを適用して増幅した信号を基本信号とする。また、基本信号に対してさらに2〜3Hzを遮断周波数とするローパスフィルタを適用した信号を鼻腔圧の信号とする。さらに、基本信号に対して0.01〜0.1Hzを遮断周波数とするハイパスフィルタと2〜3Hzを遮断周波数とするローパスフィルタを適用した信号を適用した信号を呼吸信号とする。また、基本信号に対して0.01〜0.1Hzを遮断周波数とするハイパスフィルタと150〜200Hzを遮断周波数とするローパスフィルタを適用した信号を気道音信号とすることができる。
【0026】
また、鼻腔圧の変化を示す信号(鼻腔圧信号)、呼吸波形を示す信号(呼吸信号)、気道音(いびき)を示す信号(気道音信号)の呼吸関連信号は、それぞれ電圧から圧力[cmH
2O]に変換されて記録される。なお、呼吸信号や気道音信号は連続的に記録されるが、鼻腔圧信号は、所定時間単位(たとえば秒単位)に変換されて記録される。
また、呼吸努力波形は胸部・腹部センサから得られる。なお、本実施形態では胸骨上窩波形は測定していないが、胸骨上窩波形を取得するように構成してもよい。
【0027】
制御部110は、メモリ107に書き込んだ各種の測定データを記録部111に供給し、記録媒体に順次所定の形式でデータファイルとして記録する。例えば、測定データの種類ごとに予め定められたファイル名を用いて記録することで、記録されているデータファイルの名前から、測定されたデータの種類を把握することが可能になる。
【0028】
次に、本実施形態の生体信号測定装置100における波形比較機能について、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
S101で制御部110は、例えば表示部108に表示されているメニュー画面もしくはプルダウンメニューなどから、波形比較指示が入力されるのを待機する。この間、他の指示が入力されれば、制御部110は指示に応じた処理を行うが、本発明と直接関連しないため説明を省略する。
【0029】
なお、波形比較指示は便宜的な名称であり、実際には波形比較を伴う任意の処理動作の実行指示を意味する。例えば、本記録に先立ってゲインなどの値を調整するためのキャリブレーション動作の実行指示であったり、任意の2波形を純粋に比較する動作の実行指示であったりする。また、本実施形態の波形比較機能は、比較する2波形のスケール(表示倍率)を独立して変更(もしくは、特定の一方の波形を変更)する縮尺機能を備えている。
【0030】
S101で波形比較指示が入力されたと判定された場合、制御部110は処理をS103に進め、比較対象の生体信号データを例えば記録部111から取得する。比較対象の生体信号データの取得先は外部装置であってもよい。また、比較対象の生体信号データは、S101において波形比較指示とともに指定されてもよいし、予め定められていてもよい。ここでは、ある生体情報の絶対的な値の変化を測定した生体信号(基準生体信号もしくは参照生体信号と呼ぶ)と、基準生体信号と値の変化が近似した生体信号(代用生体信号)とが比較対象の生体信号データであるものとする。具体的には、基準生体信号が鼻腔圧であり、代用生体信号が推定胸腔内圧であるものとするが、この特定の組み合わせに限定されない。
【0031】
これら比較対象の生体信号は、同一被検者に対して同時に測定され、例えば記録部111に関連付けられて記録されているものとする。本実施形態では例えば同じ測定で記録された複数の生体信号のファイルを、測定に固有な名称(例えば測定日時)を有する共通のフォルダに、かつ生体信号の種類がファイル名や拡張子によって識別可能に記録する。制御部110は指定された測定日時に対応するフォルダに記録されている特定の生体信号のデータを読み出し、メモリ107に格納する。S103で読み出すデータは、記録された全期間のデータでなくてもよく、例えば記録開始時から数分間のデータであってよい。データの読み出しを行う区間をユーザに指定させてもよい。
【0032】
S103で比較対象の生体信号データを取得すると、制御部110は処理をS105に進め、波形比較用画面を表示部108に表示する。波形比較用画面の例については後で詳しく説明する。
【0033】
S107で制御部110は、波形比較用画面の表示中に変更指示が入力されたかどうかを判定し、変更指示が入力されていればS109で指示に応じた表示内容の更新を行い、変更指示が入力されていなければ処理をS115に進める。なお、変更指示とは表示内容の更新を必要とする指示を包括した表現であり、1種類の指示を示すとは限らない。後述するように、本実施形態の波形比較用画面では、表示倍率や、相対的な移動量(オフセット値)の調整、表示範囲の変更などが可能であり、これらの調整や変更動作はいずれもS107において変更指示の入力と判定される。
【0034】
S115で制御部110は、波形比較用画面の表示中に自動調整指示が入力されたかどうかを判定し、自動調整指示が入力されていればS117へ、入力されていなければS111へ、処理を進める。S117で制御部110は比較対象の生体信号のうち基準生体信号の平均振幅に代用生体信号の平均振幅が合致する表示倍率とオフセット値を自動算出する。自動調整処理の詳細については後述する。自動調整処理が終了すると、制御部110は処理をS109に進め、自動計算した表示倍率やオフセット値を波形比較用画面の表示に反映させたのち、処理をさらにS111に進める。
【0035】
S111で制御部110は、波形比較動作の完了指示が入力されたかどうかを判定し、入力されていればS113へ処理を進め、入力されていなければS107へ処理を戻す。完了指示は例えば波形比較用画面に含まれる終了ボタンの選択であってよい。
【0036】
S113で制御部110は、終了指示があった時点における表示倍率とオフセット値を比較対象の生体信号の平均振幅の情報とともに保存する。なお、このステップは表示倍率やオフセット値を利用しない場合には実行されなくてもよい。
【0037】
図3に波形比較用画面300の例を示す。波形比較用画面300は、波形表示領域310と、倍率調整部320と、オフセット調整部330と、自動調整ボタン340と、終了ボタン350とを有している。なお、他のGUI要素が含まれていてもよい。
【0038】
ラベル305は波形表示領域310に表示されている生体信号の種類を提示する領域である。
波形表示領域310は比較対象の生体信号を表示する領域であり、本実施形態では比較対象の生体信号301,302を、測定時刻(横軸)で位置合わせした上で重畳表示している。なお、比較対象の生体信号の測定位置や測定方法の違いにより、測定時刻で位置合わせすると位相がずれる場合には、表示区間に含まれるピークのいずれかの頂点で位置合わせするようにしてもよい。
【0039】
なお、波形表示領域310に比較対象の生体信号301,302を表示する際、制御部110は、波形表示領域310の縦軸の中央を0(基線レベル)として、表示区間に含まれる基準生体信号および代用生体信号の最大振幅が波形表示領域310に収まるようなスケールで表示する。あるいは、表示区間における最大振幅が波形表示領域310の縦軸の所定割合(例えば80%)となるようなスケールで基準生体信号および代用生体信号を表示してもよい。これは、基準生体信号のダイナミックレンジに代用生体信号のダイナミックレンジが合致するように表示倍率を微調整する際に、基準生体信号や代用生体信号が小さく表示されていると精度の良い表示倍率の調整がしづらいためである。なお、比較対象の生体信号301,302に絶対値を示す生体信号が含まれている場合、波形表示領域310の縦軸の最小および最大目盛りに対応する絶対値を表示してもよい。
図3の例では、基準生体信号である鼻腔圧が絶対値を示すため、実測値に応じた±5cmH2Oが表示されている。
【0040】
また、制御部110は、代用生体信号301と基準生体信号302のそれぞれについて波形表示領域310の縦軸を+100〜−100とした場合の、基線レベル(0)から上向きのピークの平均値と、下向きのピークの平均値とを、取得した区間の全体、予め定めた長さの区間、または表示区間について算出する。そして、波形表示領域310に、上向きピークの平均値を示す指標である点線3011,3021および、下向きピークの平均値を示す指標である点線3012,3022を表示する。上向きのピークの平均値と、下向きのピークの平均値との合計が平均振幅となる。また、各平均値を縦軸にも表示する。制御部110はさらに、代用生体信号301と基準生体信号302について、波形や点線、縦軸に表示する平均値をそれぞれ色分けするなど視覚的に異ならせて表示する。
【0041】
制御部110は波形表示領域310の下に水平スクロールバー311を表示する。水平スクロールバー311が操作されると、制御部110は表示区間を時間軸方向に移動させる。また、ピークの平均値を表示区間について算出する場合には、制御部110は変更後の表示区間について上述したピークの平均値の算出を再度行い、指標の表示を更新する。
【0042】
倍率調整部320およびオフセット調整部330は、ユーザが手動で表示倍率および基線レベルを調整するためのユーザインタフェースである。
図3の例では、それぞれスピンボタン321,331とテキストボックス322,332から構成され、スピンボタン321,331の上または下ボタンの操作により予め定められた単位ごとに設定値が変化し、現在の設定値はテキストボックス322,332に表示される。また、テキストボックス322,332にキーボード等を用いて所望の値を直接入力することにより設定値を変更してもよい。本実施形態において表示倍率は0.1倍単位、オフセット値は1単位で設定可能である。オフセット値は縦軸を+100〜−100とした相対的な値であるため無名数であり、正の値が上方向へのオフセット値、負の値が下方向へのオフセット値である。
【0043】
本実施形態において、倍率調整部320およびオフセット調整部330は、比較対象の生体信号のうち基準生体信号以外の生体信号を対象とする。しかし、比較対象の生体信号の全てを対象とするように構成してもよいし、対象とする生体信号を、基準生体信号を含めて選択できるように構成してもよい。例えば、対象とする生体信号をラジオボタン323,333やプルダウンメニュー等から選択可能に構成すればよい。
【0044】
なお、倍率調整部320によって調整可能な表示倍率は水平方向(この場合は時間方向)および垂直方向(振幅方向)の両方であっても、一方であってもよい。一方向における表示倍率を調整する場合、水平方向か垂直方向かを選択するためのGUI要素(例えばラジオボタン)が波形比較用画面300に含まれる。単純に波形全体を拡大または縮小表示したい場合には、両方向の表示倍率を変更すればよい。しかし、例えば、ピークの平均値を表示区間について算出する構成の場合、水平方向の表示倍率が変更されると表示区間も変更され、平均振幅値も変化する。そのため、一方の表示倍率を変更して両者の振幅が合致するように調整しづらくなる。この場合は、水平方向の表示倍率は変更せず、垂直方向のみ表示倍率を変更したほうが使い勝手が良い。また、ユーザの意向に応じて柔軟な表示形態を提供するという観点からも、倍率調整部320の対象方向を選択可能とすることが望ましい。
【0045】
自動調整ボタン340は、基準生体信号302の平均振幅に代用生体信号301の平均振幅が合致する表示倍率とオフセット値を生体信号測定装置100で自動計算するようにユーザが指示するためのユーザインタフェースである。自動調整ボタン340が選択された際の動作については後述する。
【0046】
ユーザは、
図3に示すような波形比較用画面300を用いて、比較対象の生体信号を比較することができる。比較対象の生体信号波形301,302が位置合わせされ、かつ重畳表示されるため、それぞれの生体信号波形が重畳されずに並べて表示される場合よりも、両者を容易に比較することができる。例えば、基線レベルで縦方向に位置合わせされているため、振幅の違いの把握が容易である。また、ピークの平均値に相当する位置が波形表示領域310内に示されるため、個別のピークでなく、ある期間における平均的な振幅の差も容易に把握できる。また、上方向のピークと下方向のピークについて独立して平均値を示しているため、同方向のピークの平均値の差を比較することで、基線レベルの差(オフセット)についても容易に把握できる。
【0047】
また、表示倍率やオフセットを調整可能なため、比較対象の生体信号を拡大・縮小表示させたり、上下方向に相対的に移動させたりすることが可能であり、柔軟な比較操作が可能である。さらに、上向きピークの平均値を示す指標である点線3011と3021、下向きピークの平均値を示す指標である点線3012と3022がそれぞれ合致するように(基準生体信号の平均振幅に代用生体信号の平均振幅が合致するように)ユーザに表示倍率やオフセットを調整させることで、基準信号と値の変化が近似する代用生体信号の値を絶対的な値に変換するための換算係数を得るキャリブレーション動作を容易に行えるようになる。
【0048】
終了ボタン350が選択されると、制御部110は、S105で算出した個々の生体信号の上方向のピーク平均値と下方向のピーク平均値、オフセット値、および変更後の表示倍率を保存する。
【0049】
オフセットの調整だけで平均振幅を合致させることができる場合(表示倍率1.0)には、代用生体信号の測定値は、基準生体信号の測定値(絶対値)と1対1で対応する。一方、表示倍率が変更された場合、基準生体信号の平均振幅(=上方向のピーク平均値+下方向のピーク平均値)が、代用生体信号の平均振幅×表示倍率に相当する。これら対応関係を用いることで、代用生体信号の測定値を絶対値に変換することが可能になる。この変換においてオフセット値を用いることができる(必須ではない)。
【0050】
次に、
図4のフローチャートを用いて、
図2のS117における自動調整処理について説明する。上述通り、自動調整処理は、波形比較画面300の自動調整ボタン340が選択された場合に実行される。
【0051】
制御部110は、S201で、基準生体信号と代用生体信号の表示区間における平均振幅を算出し、S203で、代用生体信号の平均振幅を基準生体信号の平均振幅に合わせるための倍率を算出する。
図3の例では、代用生体信号の平均振幅のピーク値が+78と−90であり、基準生体信号の平均振幅のピーク値が+75と−82である。
この場合、倍率は
(75+82)/(78+90)=0.93
オフセット値は、
{(78×0.93−75)+(−90×0.93−(−82))}/2=−2.08
となる。
そして、S205で制御部110は代用生体信号の平均振幅のピーク値を基準生体信号の平均振幅のピーク値に合わせるためのオフセット値を算出する。このようにして、自動的に算出した倍率とオフセット値とをS109で表示に反映させる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の生体信号処理装置によれば、複数の生体信号を位置合わせして重畳表示する波形比較用画面を提供するので、両者を容易に比較することを可能にする。また、生体信号の縮尺とオフセットを変更可能とすることで、一方の生体信号を他方の生体信号に換算するための情報を取得することが可能である。これは、比較対象の生体信号に、絶対値を表す生体信号と、絶対値を表す生体信号と値の変化が近似した生体信号とが含まれている場合に特に有用である。
【0053】
なお、本発明に係る生体信号処理装置は、一般的に入手可能な、パーソナルコンピュータのような汎用情報処理装置に、上述した動作を実行させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)として実現することもできる。従って、このようなプログラムおよび、プログラムを格納した記憶媒体(CD−ROM、DVD−ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。