特許第6461498号(P6461498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6461498建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461498
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
   E04B2/56 605Z
   E04B2/56 631G
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-131777(P2014-131777)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-8491(P2016-8491A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204170
【氏名又は名称】太陽エコブロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】石井 克侑
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−052828(JP,A)
【文献】 特開昭54−100112(JP,A)
【文献】 特開2004−143923(JP,A)
【文献】 特開平02−274953(JP,A)
【文献】 特開2010−196364(JP,A)
【文献】 米国特許第05899040(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向のそれぞれの側面に嵌合部を有するとともに、縦方向の一側面から他側面に貫通する空洞部を有する複数のブロックを備える建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造であって、複数のブロックにおける互いの空洞部が縦方向に一列に並ぶように位置を合わせるとともに、複数のブロックにおける互いの嵌合部を嵌合させてそれらブロックを縦横に隣接配置してブロック壁体本体を構成し、このブロック壁体本体における縦方向に一列に並んだ空洞部に、梁又は基礎に固着手段によって固着された定着プレートにボルト・ナットで締結して位置決めされる対のブラケットを介して両端が固定された線条体が挿入されてなり、該線条体緊張させた状態でブロック壁体本体を固定することによりブロック壁体本体に圧縮力を加えるようにして縦方向に並んだ複数のブロックを一体化した状態で建物へ取り付けるようにしてなることを特徴とする建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造
【請求項2】
ブロック壁体本体における縦方向に一列に並んだ空洞部に、グラウトが注入されてなることを特徴とする請求項1に記載の建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に噛み合わせ可能なインターロッキングブロックを用いて構成される建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造に関し、特に、予応力を加えた建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁や塀を構築するのに用いられてきた空洞をもったブロックや煉瓦などの形状は、縦方向(上下方向)の両面及び横方向(左右方向)の両面が平坦な直方体状のものが一般的であった。
そうした形状のブロックや煉瓦は、製造が容易で量産することができることから安価な建築材料として普及してきた。
【0003】
直方体状のブロックや煉瓦を縦横に配置し連結してブロック壁体を製作する際には、目地と呼ばれる連結部にモルタルや漆喰などの目地材と呼ばれる接着材が用いられる。
【0004】
しかし、モルタルや漆喰などの目地材の接着強度が弱い場合や、接着材の材料強度そのものが低い場合、ブロックの連結部分が力学的に弱点となる。
この力学的な弱点を補い、ブロック壁体として一体性を確保するために、ブロックの空洞部に棒鋼を挿入し棒鋼の周りにコンクリートやモルタルが充填されるが、ブロック壁体に外力が作用した際に生じる剪断応力や曲げ応力に対して、ブロックの空洞部内に充填されたコンクリート等や空洞部内に挿入された棒鋼が主となって抵抗し、高強度のブロックや煉瓦を用いてもブロック壁体の強度を高めることは不可能である。
さらに、ブロックの空洞部内に充填されるコンクリートやモルタルの強度が弱い場合や充填不良が起きた場合は、ブロック壁体の力学的性能(耐力)が低く、棒鋼が何らかの要因により錆びた場合、さらに耐力が低下する。
【0005】
上記のような問題を解決し得る技術として、擁壁の技術分野においては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−519207号公報
【0007】
特許文献1には、縦方向に突出する嵌合用の凸部としてのインターロックと、このインターロックの横方向両側に形成される凹部と、横方向の一面から他面に貫通するダクトとを有する複数の擁壁ブロックを、互いのダクトが横方向に一列に並ぶように位置を合わせるとともに、互いのインターロックと凹部とを嵌合させて縦横に隣接配置し、複数の擁壁ブロックを相互連結するために、横方向に一列に並んだダクトにケーブル又はロープを挿通し結び付けて擁壁マットを構成するようにした技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、擁壁ブロックにおける横方向の両面が平坦面とされ、横方向に隣接する擁壁ブロックは単に突き合わされているだけであるため、たとえ複数の擁壁ブロックがケーブル又はロープによって相互連結されていたとしても、擁壁マットに対して縦方向に剪断力が作用した場合、擁壁ブロックが縦方向にずれ易いという問題点がある。
また、擁壁マットに対して曲げ荷重が作用すると、圧縮力が作用する部分と引張力が作用する部分とが生じるが、横方向に一列に並んだダクトにケーブル又はロープを単に挿通して結び付けただけで複数の擁壁ブロックを相互連結するようにした構成では、連結力が不十分であるため、引張力が作用する部分において、隣接する擁壁ブロック間におけるインターロックと凹部との嵌合が外れて力学的性能が損なわれるという問題点がある。
そして、特許文献1に記載のものは、擁壁には好適なものであるが、これをそのまま建築物のブロック壁体に適用できるものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の技術の有する問題点に鑑み、外力作用時のブロックの縦方向及び横方向のずれをなくことができるとともに、ブロック相互間の連結力を高めて耐力の向上を図ることができる建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造は、縦方向及び横方向のそれぞれの側面に嵌合部を有するとともに、縦方向の一側面から他側面に貫通する空洞部を有する複数のブロックを備える建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造であって、複数のブロックにおける互いの空洞部が縦方向に一列に並ぶように位置を合わせるとともに、複数のブロックにおける互いの嵌合部を嵌合させてそれらブロックを縦横に隣接配置してブロック壁体本体を構成し、このブロック壁体本体における縦方向に一列に並んだ空洞部に、梁又は基礎に固着手段によって固着された定着プレートにボルト・ナットで締結して位置決めされる対のブラケットを介して両端が固定された線条体が挿入されてなり、該線条体緊張させた状態でブロック壁体本体を固定することによりブロック壁体本体に圧縮力を加えるようにして縦方向に並んだ複数のブロックを一体化した状態で建物へ取り付けるようにしてなることを特徴とする。
【0011】
また、ブロック壁体本体における縦方向に一列に並んだ空洞部にグラウトが注入されてなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造によれば、縦方向及び横方向のそれぞれの側面に嵌合部を有する複数のブロックを、互いの嵌合部を嵌合させて縦横に隣接配置してブロック壁体本体が構成されるので、ブロック壁体本体に対して縦方向に剪断力が作用した場合、ブロック相互間における横方向の嵌合部でその縦方向剪断力を受け止めることができ、ブロック壁体本体に対して横方向に剪断力が作用した場合、ブロック相互間における縦方向の嵌合部でその横方向剪断力を受け止めることができ、外力作用時のブロックの縦方向及び横方向のずれをなくことができる。
【0013】
そして、ブロック壁体本体における縦方向に一列に並んだ空洞部に線条体を挿入することにより、さらに、線条体を緊張させた状態でブロック壁体本体に固定することによってブロック壁体本体に圧縮力が加えることにより、ブロック相互間の連結力を高めて耐力の向上を図ることができ、ブロック壁体本体に対して曲げ荷重が作用するに伴い引張力が作用する部分において、隣接するブロック間における嵌合を外すように作用する力に対して対抗することができ、力学的性能を安定的に保つことができる。
【0014】
また、ブロック壁体本体における縦方向に一列に並んだ空洞部にグラウトが注入されてなるようにすることにより、グラウトの硬化によってブロック相互間が力学的により一体化され、特に縦方向の強度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1参考例に係る建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造を示す正面図である。
図2】同ブロック壁体を構成するインターロッキングブロックを示す図で、(a)はブロック壁体本体の主要部を構成するブロック正面図で、(b)はブロック壁体本体の上下端部を構成するブロック正面図である。
図3】同ブロック壁体を構成するインターロッキングブロックを示す図で、(a)はブロック壁体本体の主要部の欠けを補填するブロック正面図で、(b)はブロック壁体本体の下端部の欠けを補填するブロック正面図である。
図4】(a)は図1のA部拡大図で、(b)は図1のB部拡大図である。
図5】本発明の施形態に係る建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造を示す正面図である。
図6】(a)は図5のC部拡大図で、(b)は(a)のE−E線断面図である。
図7】(a)は図5のD部拡大図で、(b)は(a)のF−F線断面図である。
図8参考例に係る建築物のブロック壁体の取付構造と梁又は基礎の接合構造の別態様例を示す図で、(a)は図1のA部に相当する部分の拡大図で、(b)は(a)のG−G線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
参考例
図1には、参考例に係る建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造を示す正面図が示され、図2及び図3には、同ブロック壁体を構成する各種インターロッキングブロックの正面図が示されている。
【0018】
<ブロック壁体の概略説明>
図1に示されるブロック壁体1Aは、例えば、垂直RC(鉄筋コンクリート)造やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造、RM(鉄筋コンクリート組積)造、鉄骨造、木造などの建物における梁2、基礎3(又は梁(以下、同様。))及び柱4で囲まれる空間を塞ぐ耐振補強材を兼ねる壁体として用いられ、縦方向(上下方向)及び横方向(左右方向)に広がりをもつ外観視四角形状で当該ブロック壁体1Aの本体部分を構成するブロック壁体本体1aを備えている。
【0019】
<ブロック壁体本体の説明>
ブロック壁体本体1aの主要部は、千鳥状に配置されるコンクリート製又は焼成粘土製の複数のインターロッキングブロック(以下、単に「ブロック」という。)5を組み合わせて構成されている。
図2(a)に示されるように、ブロック5は、上下方向の長さに比べて左右方向の長さが長い直方体形状で、上下方向及び左右方向のそれぞれの両側面に波状又は鋸刃状を呈する所要の凹凸部よりなる嵌合部5a〜5dが形成されている。
また、ブロック5における左半部分及び右半部分のそれぞれの平面視中央部には、上側面から下側面に貫通する丸孔状の空洞部6が形成されている。
【0020】
図1に示されるように、ブロック壁体本体1aの主要部においては、左右方向に並ぶブロック5の相互間で互いの嵌合部5c,5d(図2(a)参照)が嵌合されて噛み合うようにされるとともに、1個のブロック5と次段の2個のブロック5との間において、1個のブロック5の嵌合部5b(図2(a)参照)に、次段の2個のブロック5のうちの左側のブロック5の右半部分の嵌合部5a(図2(a)参照)及び右側のブロック5の左半部分の嵌合部5a(図2(a)参照)が対応して、これらブロック相互間で互いの嵌合部5a,5bが嵌合されて噛み合い、さらにこれら2個のブロック5が次段の3個のブロック5と同様にして噛み合い、結果全てのブロック5が噛み合うようにされている。
【0021】
ブロック壁体本体1aの主要部においては、複数のブロック5が千鳥状に配置されることから、所要個数(本例では6個)のブロック5が左右方向に並んでなる第1の横並びブロック群31と、この第1の横並びブロック群31よりもブロック5の個数が1個少ない第2の横並びブロック群32とが交互に繰り返し所定段数積層される構成となる。
このため、ブロック壁体本体1aの主要部において、第2の横並びブロック群32の左右両側にそれぞれブロック5の半個分に相当する欠けが生じることになる。
かかる欠けを埋めるために、第2の横並びブロック群32の左右両側にそれぞれブロック5の半個分の形状寸法に形成された立方体形状のブロック10が配設されている。
【0022】
図3(a)に示されるように、ブロック10には、上下方向及び左右方向に隣接するブロック5と嵌合して噛み合うことができるように、波状又は鋸刃状を呈する所要の凹凸部よりなる嵌合部10a〜10dが上下方向及び左右方向のそれぞれの両側面に形成されている。
また、ブロック10の平面視中央部には、上側面から下側面に貫通する丸孔状の空洞部11が形成されている。
【0023】
図1に示されるように、ブロック壁体本体1aの上端部分は、前述したブロック5と若干形状が異なる複数のブロック15が左右方向に並べられて構成されている。
なお、ブロック15において、前述したブロック5と同一又は同様の構成要素のものには図に同一符号を付すに留めて重複説明を避け、以下においては、ブロック15に特有の部分を中心に説明することとする。
【0024】
図2(b)に示されるように、ブロック15においては、前述したブロック5の上側面に形成されている嵌合部5aに相当するものがなく、その上部に、空洞部6に対応する位置で前後方向及び上方に開放された切欠き凹部16が形成され、該切欠き凹部16が設けられる部位を除いた上面部分が平坦面17とされている。
【0025】
図1に示されるように、ブロック壁体本体1aの下端部分は、前述したブロック10と若干形状が異なる2つのブロック20を左右方向の両端位置に配設するとともに、これらのブロック20の間に、前述したブロック15を上下方向及び左右方向にそれぞれ反転させたものを複数個(本例では5個)配設して構成されている。
なお、ブロック20において、前述したブロック10と同一又は同様の構成要素のものは図に同一符号を付すに留めて重複説明を避け、以下においては、ブロック20に特有の部分を中心に説明することとする。
【0026】
図3(b)に示されるように、ブロック20においては、前述したブロック10の下側面に形成された嵌合部10bに相当するものがなく、その下部に、空洞部11に対応する位置で前後方向及び下方に開放された切欠き凹部21が形成され、該切欠き凹部21が設けられる部位を除いた下面部分が平坦面22とされている。
【0027】
図1に示されるように、ブロック壁体本体1aにおいては、上下方向に一列に並んだ空洞部6,11によって形成される線条体挿通路35が左右方向に所定ピッチで配設され、所定ピッチで配設される複数の線条体挿通路35のうち、適宜間隔位置にある所要の線条体挿通路35に線条体40Aが挿入されている。
【0028】
<線条体の説明>
線条体40Aは、鋼線や棒鋼、グラスファイバー棒などの引張強度が高い線材等を用いて構成されるもので、より具体的には、全長に亘って外周にネジが刻まれた、例えば、PC鋼棒又は高張力ネジフシ棒鋼よりなる2本の線材41,42を継手43によって繋ぎ合わせて構成されている。
図4(a)に示されるように、線条体40Aは、線条体挿通路35に挿入された状態において、線材41の上端部がブロック15の切欠き凹部16内から上方に所定長さ突出するとともに、図4(b)に示されるように、線材42の下端部がブロック20の切欠き凹部21の奥面から所定長さ突出して該切欠き凹部21内に納まるようにその全長寸法が定められている。
【0029】
<ブロック壁体の製造方法の説明>
以上に述べたブロック壁体1Aは、建設現場あるいは製造工場において、以下のようにして製造される。
まず、図1に示されるように、複数のブロック5,10,15,20における互いの空洞部6,11が上下方向に一列に並ぶように位置を合わせるとともに、複数のブロック5,10,15,20における互いの嵌合部5a〜5d,10a〜10dを適宜に嵌合させてそれらブロック5,10,15,20を上下左右に隣接するように千鳥状に配置してブロック壁体本体1aを構築する。
ここで、複数のブロック5,10,15,20を相互に嵌合させてブロック壁体本体1aを構築する際に、ブロック壁体本体1aの気密性や遮音性、耐火性を高めるために、ブロック相互間の目地材としてモルタルや漆喰などの無機系の材料や不燃性の有機系の接着剤を用いてもよい。
【0030】
次いで、ブロック壁体本体1aにおける所定ピッチで配設される複数の線条体挿通路35のうち、適宜間隔位置にある所要の線条体挿通路35に線条体40Aを挿入する。
その後、図4(a)に示されるように、ブロック15における切欠き凹部16の奥面との間にワッシャ44を介在させた状態で線材41にナット45を螺合するとともに、図4(b)に示されるように、ブロック20の切欠き凹部21の奥面との間にワッシャ46を介在させた状態で線材42にナット47を螺合し、それらナット45,47を締め込むことにより、線条体40Aを緊張させる。
そして、所定の締付トルクによるナット45,47の締め付け完了により、線条体40Aを緊張させた状態でブロック壁体本体1aに固定することができる。
【0031】
次いで、線条体40Aを挿入した線条体挿通路35に、無機あるいは有機の材料からなる硬化性の充填材であるグラウト(図示省略)を注入・充填し硬化させる。
ここで、グラウトの線条体挿通路35への注入は、ブロック5,10,15,20の側面に予め設けた空洞部6,11に通じる貫通口(図示省略)を介して圧入してもよいし、空洞部6,11に直接流しこんでもよい。
こうして、グラウトの注入によってブロック壁体本体1aが力学的により一体化され、特に上下方向の強度を高めることができる。
なお、線条体40Aが挿入されていない線条体挿通路35にグラウトを注入・充填してもよく、これによって上下方向の強度をさらに高めることができる。
【0032】
上記のようにして作製されるブロック壁体1Aの建物への取り付けについて図1及び図4を用いて以下に説明する。
【0033】
図1に示されるように、梁2の下面には定着プレート51が、基礎3の上面には定着プレート52が、それぞれ接着剤やプレート止めアンカー53等の公知の固着手段によって固着されている。
図4(a)に示されるように、線条体40Aにおける線材41の上端部にナット48を、図4(b)に示されるように、線材42の下端部にナット49を、それぞれ螺合しておき、このような状態のブロック壁体1Aを、梁2、基礎3及び柱4よりなる取付枠の内側に配して位置決め後、ナット48,49を緩める方向に操作してナット48,49を定着プレート51,52に押し当てるようにする。
そして、ナット48,49と定着プレート51,52とを溶接することにより、ブロック壁体1Aの建物への取り付けが完了する。
なお、ブロック壁体1Aの梁2、基礎3及び柱4と、ブロック壁体1Aの四周との隙間(ブロック15,20の切欠き凹部16,21を含む。)には、仕上げ施工において、モルタル等を充填するようにする。
【0034】
<作用効果の説明>
参考例のブロック壁体1Aによれば、上下方向及び左右方向のそれぞれの側面に嵌合部5a〜5d,10a〜10dを有する複数のブロック5,10,15,20を、互いの嵌合部5a〜5d,10a〜10dを嵌合させて上下左右に隣接配置してブロック壁体本体1aが構成されるので、ブロック壁体本体1aに対して上下方向に剪断力が作用した場合、ブロック相互間における左右方向の嵌合部5c,5d;10c,10dでその縦方向剪断力を受け止めることができ、ブロック壁体本体1aに対して左右方向に剪断力が作用した場合、ブロック相互間における上下方向の嵌合部5a,5b;10a,10bでその横方向剪断力を受け止めることができ、外力作用時のブロック5の上下方向及び左右方向のずれをなくことができる。
また、ブロック壁体本体1aにおける線条体挿通路35に挿入される線条体40Aを緊張させた状態でブロック壁体本体1aに固定することによってブロック壁体本体1aに圧縮力が加えられるので、ブロック相互間の連結力を高めて耐力の向上を図ることができ、ブロック壁体本体1aに対して曲げ荷重が作用するに伴い引張力が作用する部分において、隣接するブロック間の嵌合を外すように作用する力に対して対抗することができ、力学的性能を安定的に保つことができる。
【0035】
施形態〕
図5には、本発明の施形態に係る建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造を示す正面図が示されている。
図6には、図5のC部拡大図(a)及び(a)のE−E線断面図(b)がそれぞれ示されている。
図7には、図5のD部拡大図(a)及び(a)のF−F線断面図(b)がそれぞれ示されている。
なお、実施形態のブロック壁体1Bにおいて、参考例のブロック壁体1Aと同一又は同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、実施形態のブロック壁体1Bに特有の部分を中心に説明することとする。
【0036】
図5に示されるように、実施形態のブロック壁体1Bにおいては、参考例のブロック壁体1Aにおいて用いられた線条体40Aに代えて、線条体40Bが用いられる。
線条体40Bは、全長に亘って外周にネジが刻まれたPC鋼棒又は高張力ネジフシ棒鋼よりなる2本の線材41,42を継手43によって繋ぎ合わせるとともに、線材41の上端部に継手54が接続されるとともに、線材42の下端部に継手55が接続されて構成されている。
【0037】
ブロック壁体本体1aの上端側には、ブラケット56が配設されている。
図6(a)及び(b)に示されるように、ブラケット56は、ブロック壁体本体1aの左右方向の全幅に亘ってブロック壁体本体1aの上端面に当接可能で要所にボルト挿通孔を有する水平板部56aと、この水平板部56aにおけるブロック壁体本体1aの正面側から背面側に向かう方向の奥側端縁から一体的に立設される要所にボルト挿通孔を有する鉛直板部56bとにより構成されている。
【0038】
また、定着プレート51の下面には、要所に、ブラケット57が固着されている。
ブラケット57は、定着プレート51の下面に溶接される水平板部57aと、この水平板部57aにおけるブロック壁体本体1aの正面側から背面側に向かう方向の奥側端縁から一体的に垂設され、ブラケット56の鉛直板部56bに背面側から重ね合わせ可能な要所にボルト挿通孔を有する鉛直板部57bとにより構成されている。
【0039】
図7(a)及び(b)に示されるように、ブロック20の切欠き凹部21内には、ブラケット58が配設されている。
図7(b)に示されるように、ブラケット58は、切欠き凹部21の奥面に当接可能なボルト挿通孔を有する水平板部58aと、この水平板部58aにおけるブロック壁体本体1aの正面側から背面側に向かう方向の奥側端縁から一体的に垂設され、ボルト挿通孔を有する鉛直板部58bとにより構成されている。
【0040】
図7(a)及び(b)に示されるように、定着プレート52には、ブラケット59が固着されている。
図7(b)に示されるように、ブラケット59は、定着プレート52の上面に溶接される水平板部59aと、この水平板部59aにおけるブロック壁体本体1aの正面側から背面側に向かう方向の奥側端縁から一体的に立設され、ブラケット58の鉛直板部58bに背面側から重ね合わせ可能でボルト挿通孔を有する鉛直板部59bとにより構成されている。
【0041】
図6(a)及び(b)に示されるように、ブロック壁体1Bにおいては、ブラケット56の水平板部56aとの間にワッシャ60を介在させた状態で水平板部56aを貫通して継手54にボルト61を螺合するとともに、図7(a)及び(b)に示されるように、ブラケット58の水平板部58aとの間にワッシャ62を介在させた状態で水平板部58aを貫通して継手55にボルト63を螺合し、それらボルト61,63を締め込むことにより、線条体40Bを緊張させる。
そして、所定の締付トルクによるボルト61,63の締め付け完了により、線条体40Bを緊張させた状態でブロック壁体本体1aに固定することができる。
【0042】
上記のようにして作製されるブロック壁体1Bの建物への取り付けは、以下の通りである。
図5に示されるように、ブロック壁体1Bを、梁2、基礎3及び柱4よりなる取付枠の内側に配し、図6(b)及び図7(b)に示されるように、ブラケット56,57;58,59の鉛直板部同士56b,57b;58b,59bを重ね合わせるようにして位置決め後、それら鉛直板部同士56b,57b;58b,59bを貫通するボルト64;65にナット66;67を螺合して締め付けることにより、ブロック壁体1Bの建物への取り付けが完了する。
【0043】
以上に述べたブロック壁体1Bのその他の構成は、ブロック壁体1Aと同様であり、ブロック壁体1Bによっても、ブロック壁体1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造について、の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、の趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0045】
例えば、上記施形態においては、複数のブロック5,10,15,20を上下方向に積み重ねてブロック壁体本体1aを構築するようにした例を示したが、ブロック壁体本体1aを構築するその他の方法として、複数のブロック5,10,15,20を水平面上に並べるというものがあり、具体的には、複数のブロック5,10,15,20における互いの空洞部6,11が水平面上の縦方向に一列に並ぶように位置を合わせるとともに、複数のブロック5,10,15,20における互いの嵌合部5a〜5d,10a〜10dを適宜に嵌合させてそれらブロック5,10,15,20を水平面上の縦横に隣接するように千鳥状に配置してブロック壁体本体1aを構築するようにしてもよい。
【0046】
また、ブロック壁体1Aの建物への取付構造として、図4(a)に示されるものに代えて、図8(a)に示されるようなものを採用してもよい(参考例)
なお、図8(a)に示される取付構造において、図4(a)で述べた取付構造と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、図8(a)に示される取付構造に特有の部分を中心に説明することとする。
【0047】
図8(a)に示される取付構造においては、ブロック壁体1Aにおける線条体40Aを挿入した位置にある切欠き凹部16に対応するようにブラケット70が配設されている。
ブラケット70は、定着プレート51の下面に溶接される上側水平プレート部70aと、上側水平プレート部70aに対して所定間隔を有して切欠き凹部16内に配される下側水平プレート部70bと、これら水平プレート部70a,70bの一端部同士を一体的に接続する鉛直プレート部70cとを備え構成されている。
図8(b)に示されるように、下側水平プレート部70bには、当該下側水平プレート部70bの他端側に開放され、線条体40Aの線材41をその開放側から入り込ませることが可能なUの字状の切欠き部71が形成されている。
ブラケット70においては、線材41の上端部に螺合されたナット72が下側水平プレート部70bの上面に当接可能となるように線条体40Aの線材41を切欠き部71に入り込ませるとともに、切欠き部71の開放側が切欠き凹部16の内側面にて実質的に塞がれるように切欠き部71の開放側を、例えば、右側に向けた状態で下側水平プレート部70bを切欠き凹部16内に位置させた状態で、定着プレート51の下面に溶接されている。
【0048】
図8に示される取付構造によれば、ナット72を締め込んだり緩めたりする操作により、ブロック壁体1Aの高さを微調整することができる。
また、切欠き部71の開放側が切欠き凹部16の内側面にて実質的に塞がれているので、線材41の切欠き部71内への入り込み状態が確実に保たれ、梁2、基礎3及び柱4よりなる取付枠からブロック壁体1Aが外れるようなことがない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の建築物のブロック壁体と梁又は基礎の接合構造は、外力作用時のブロックの縦方向及び横方向のずれをなくことができるとともに、ブロック相互間の連結力を高めて耐力の向上を図ることができるという特性を有していることから、垂直RC造やSRC造、RM造、鉄骨造、木造などの建物における壁体としての用途に好適に用いることができるほか、例えば、擁壁、土留め壁、塀、門、舗装などの用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B ブロック壁体
1a ブロック壁体本体
5,15 インターロッキングブロック
5a〜5d 嵌合部
6,11 空洞部
10,20 インターロッキングブロック
10a〜10d 嵌合部
40A,40B 線条体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8