特許第6461521号(P6461521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461521
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】肌シートの加熱装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/22 20060101AFI20190121BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   A45D44/22 F
   A47K7/00 102
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-176961(P2014-176961)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-49329(P2016-49329A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−133344(JP,A)
【文献】 特開2016−36485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/22
A47K 7/00
B65D 81/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース(1)に、肌シート(S)を収容する装填空間(17)と、装填空間(17)に収容された肌シート(S)を加熱する加熱部(44・45・46)が設けられており、
装填空間(17)に装填した肌シート(S)を押し付ける移動体(25・1b)が設けられており、
移動体(25・1b)の移動動作に連動して加熱部(44・45・46)を駆動するように構成されており、
移動体(25・1b)と移動体(25・1b)の押し付け力を受ける受体(19・20・1a)とにより、肌シート(S)が挟持されるよう構成されており、
受体(19・20・1a)は、肌シート(S)が当接する加熱部(44・46)を含み、
移動体(25・1b)は本体ケース(1)で往復動可能に支持されて、本体ケース(1)の外面に設けた操作具(8)で受体(19・20・1a)に対して接離操作可能であり、
移動体(25・1b)を操作具(8)で受体(19・20・1a)へ向かって接近操作した状態において、装填空間(17)に装填した肌シート(S)が移動体(25・1b)と受体(19・20・1a)の加熱部(44・46)と間に挟持されており、
加熱部(44・46)に対する駆動状態をオン・オフするスイッチ(75・111)が本体ケース(1)に設けられており、
移動体(25・1b)を操作具(8)で受体(19・20)へ向かって接近操作するのに連動して、前記スイッチ(75・111)をオン状態に切り換えることを特徴とする肌シートの加熱装置。
【請求項2】
加熱部(44・46)は、加熱プレート(51・64)と、加熱プレート(51・64)を加熱する電熱体(53・66)と、加熱プレート(51・64)および電熱体(53・66)を受体19・20・1aから離れる方向に弾性付勢する弾性体(55・68)とを含み、
加熱プレート(51・64)および電熱体(53・66)が受体(19・20・1a)に対して出没自在に設けられることを特徴とする請求項1に記載の肌シートの加熱装置。
【請求項3】
肌シート(S)の有無を検出する検出部を有しており、装填空間(17)に肌シート(S)が無い状態においては、加熱部(44・46)の駆動を行わないよう構成されており、
受体(19・20)は、出没自在の加熱プレート(51・64)および電熱体(53・66)を有する加熱部(44・46)と、加熱プレート(51・64)および電熱体(53・66)の受体(19・20)へ向かう側への退入により加熱部(44・46)を駆動するスイッチ(75)とを含み、
上記検出部が、移動体(25)の押し付け動作の際、肌シート(S)が無い状態においては、加熱部(44・46)が退入せず加熱部(44・46)の駆動を行わない構成であることを特徴とする請求項2に記載の肌シートの加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌シートを体温より高めの温度に加熱する加熱装置に関する。肌シートとしては、保湿液などの美容液が含浸させてあるシートマスク、ウェットティッシュ、メイク落とし液を含むコットンシート、温湿布、尻拭きシートなどがある。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱装置は、例えば特許文献1に見ることができる。そこでは、ティッシュ容器を収容する収納箱と、収納箱の上開口を覆う蓋体と、蓋体の内部に配置されるヒーター、断熱材などで加熱装置を構成している。蓋体は内蓋体と外蓋体とからなり、両蓋体の内部に先のヒーターおよび断熱材が配置してある。外蓋体の中央にはウェットティッシュを取出す取出口が開口され、開閉自在な取出口蓋で覆ってある。ティッシュ容器は収納箱の内部に設けた密着板で支持されており、密着板をコイルばねで押上げ付勢することにより、ティッシュ容器の上面が内蓋体に密着している。加熱時には、ヒーターを作動させることにより、その熱が内蓋体を介してティッシュ容器に伝導して、同容器内のウェットティッシュを温めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3278305号(段落番号0011〜0017、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の加熱装置は、ヒーターを作動させる場合、蓋体を閉じ、電源プラグを電源コンセントに差し込む操作が必要であるため、加熱に係る操作が煩わしい。電源プラグを差し込んだ状態で蓋体のみの開閉を行いウェットティッシュを加熱することも考えられるが、その場合、常にヒーターが作動することになるため、電力の無駄が生じる。
【0005】
本発明の目的は、速やかに肌シートを加熱できる肌シートの加熱装置を提供することにある。
本発明の目的は、使い勝手に優れるとともに消費電力に無駄が生じるのを防止できる肌シートの加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱装置は、本体ケース1に、肌シートSを収容する装填空間17と、装填空間17に収容された肌シートSを加熱する加熱部44・45・46が設けられている。装填空間17に装填した肌シートSを押し付ける移動体25・1bが設けられている。移動体25・1bの移動動作に連動して加熱部44・45・46を駆動することを特徴とする。
【0007】
肌シートSの有無を検出する検出部を有しており、装填空間17に肌シートSが無い状態においては、加熱部44・45・46の駆動を行わないことを特徴とする。
【0008】
移動体25・1bと移動体25・1bの押し付け力を受ける受体19・20・1aとにより、肌シートSが挟持されるよう構成されている。受体19・20・1aは、肌シートSが当接する加熱部44・46を含んでいる。移動体25・1bは本体ケース1で往復動可能に支持されて、本体ケース1の外面に設けた操作具8で受体19・20・1aに対して接離操作可能である。移動体25・1bを操作具8で受体19・20・1aへ向かって接近操作した状態において、装填空間17に装填した肌シートSが移動体25・1bと受体19・20・1aの加熱部44・46と間に挟持されている。加熱部44・46に対する駆動状態をオン・オフするスイッチ75が本体ケース1に設けられている。移動体25・1bを操作具8で受体19・20へ向かって接近操作するのに連動して、前記スイッチ75・111をオン状態に切り換えることを特徴とする。
【0009】
加熱部44・46は、加熱プレート51・64と、加熱プレート51・64を加熱する電熱体53・66と、加熱プレート51・64および電熱体53・66を受体19・20・1aから離れる方向に弾性付勢する弾性体55・68とを含み、加熱プレート51・64および電熱体53・66が受体19・20・1aに対して出没自在に設けられることを特徴とする。
【0010】
肌シートSの有無を検出する検出部を有しており、装填空間17に肌シートSが無い状態においては、加熱部44・46の駆動を行わないよう構成されている。受体19・20は、加熱プレート51・64および電熱体53・66を有する加熱部44・46と、加熱プレート51・64および電熱体53・66の受体19・20へ向かう側への退入により加熱部44・46を駆動するスイッチ75とを含む。上記検出部が、移動体25の押し付け動作の際、肌シートSが無い状態においては、加熱部44・46が退入せず加熱部44・46の駆動を行わない構成であることを特徴とする。
【0011】
本体ケース1が、移動体25と移動体25の押し付け力を受ける受体1aとから成る。移動体25は、その内壁200側に設けられる出没自在の押圧体100と、押圧体100が内壁200から離れる方向に押圧体100を弾性付勢する弾性体101と、押圧体100の内壁200側への退入により加熱部44を駆動するスイッチ75とを含む。上記検出部が、移動体25の押し付け動作の際、肌シートSが無い状態においては、押圧体100が退入せず加熱部44の駆動を行わない構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る加熱装置では、移動体25・1bの移動動作に連動して加熱部44・45・46を駆動すると、移動体25・1bを移動動作するだけで加熱部44・45・46を駆動させて、肌シートSの加熱を開始できる。従って、ユーザーは、装填空間17に肌シートSを装填して、移動体25を移動動作したのちは、別途、スイッチ操作を行う必要がなく、速やかに肌シートを加熱できる。
【0013】
肌シートSの有無を検出する検出部を有しており、装填空間17に肌シートSが無い状態においては、加熱部44・45・46の駆動を行わないので、装填空間17に肌シートSが無いにもかかわらず、加熱部44・45・46を駆動することがなく、電力が無駄に消費されるのを防止できる。
【0014】
移動体25・1bを操作具8で受体19・20・1aへ向かって接近操作するのに連動して、前記スイッチ75・111をオン状態に切り換えることにより、移動体25・1bを移動動作するだけで加熱部44・46を駆動させて、肌シートSの加熱を開始できる。従って、ユーザーは、装填空間17に肌シートSを装填して、操作具8で移動体25・1bを移動動作したのちは、スイッチ操作を行う必要がない。
【0015】
加熱部44・46は、加熱プレート51・64と、加熱プレート51・64を加熱する電熱体53・66と、加熱プレート51・64および電熱体53・66を受体19・20・1aから離れる方向に弾性付勢する弾性体55・68とを含み、加熱プレート51・64および電熱体53・66が受体19・20・1aに対して出没自在に設けられることにより、肌シートSを移動体25と加熱部44・46で挟持した状態において、加熱部44・46(加熱プレート51・64)を弾性体55・68の付勢力で肌シートSに密着させることができる。従って、加熱部44・46と肌シートSとの間の熱伝導をさらに効果的に行って、肌シートSを速やかに加熱することができる。
【0016】
受体19・20は、加熱プレート51・64および電熱体53・66を有する加熱部44・46と、加熱プレート51・64および電熱体53・66の受体19・20へ向かう側への退入により加熱部44・46を駆動するスイッチ75とを含み、検出部が、移動体25の押し付け動作の際、肌シートSが無い状態においては、加熱部44・46が退入せず加熱部44・46の駆動を行わない構成であることにより、装填空間17に肌シートSが無いにもかかわらず、加熱部44・46を駆動することがなく、電力が無駄に消費されるのを防止できる。
【0017】
移動体25は、その内壁200側に設けられる出没自在の押圧体100と、押圧体100が内壁200から離れる方向に押圧体100を弾性付勢する弾性体101と、押圧体100の内壁200側への退入により加熱部44を駆動するスイッチ75とを含み、検出部が、移動体25の押し付け動作の際、肌シートSが無い状態においては、押圧体100が退入せず加熱部44の駆動を行わない構成であることにより、装填空間17に肌シートSが無いにもかかわらず、加熱部44を駆動することがなく、電力が無駄に消費されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る肌シートの加熱装置を示す斜視図である。
図2】本発明に係る肌シートの加熱装置の側面図である。
図3】加熱装置を第1辺部と正対する側から見た正面図である。
図4】加熱装置を第2辺部と正対する側から見た平面図である。
図5図3におけるA−A線断面図である。
図6図4におけるB−B線断面図である。
図7図2におけるC−C線断面図である。
図8図7におけるD−D線断面図である。
図9】肌シートの加熱状態を示す図3と同等の正面図である。
図10】ヒーター制御回路の回路説明図である。
図11図2におけるE−E線断面図である。
図12】スイッチの作動状態を示す動作説明図である。
図13】肌シートの使用状態を示す説明図である。
図14】加熱装置の別の実施例を示す縦断正面図である。
図15】加熱装置のさらに別の実施例を示す斜視図である。
図16図15に係る加熱装置の縦断側面図である。
図17】加熱装置のさらに別の実施例を示す斜視図である。
図18図17に係る加熱装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし図13は、本発明に係る肌シートの加熱装置の実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図1に示すように加熱装置は、直方体状の本体ケース1と、同ケース1を支持するベース体2と、本体ケース1の右側面に固定した鏡体3を備えている。図2に示すように、本体ケース1は側面視が正方形状に形成されて、その対角線が垂直になるようにベース体2で支持してあり、これに伴い本体ケース1の前上の第1辺部4と後上の第2辺部5が、水平の対角線より上側に位置し、前下の第3辺部6と後下の第4辺部7が水平の対角線より下側に位置している。第1辺部4の下部には、後述する移動体25を移動操作するためのダイヤル(操作具)8が設けてある。ダイヤル8の周囲には位置指標8aが突設してあり、常態における位置指標8aは、図3に示すようにダイヤル周縁の真上の中立位置に位置させてある。
【0020】
第3辺部6と第4辺部7に挟まれた下隅の左右中央には揺動アーム10が突設してあり、この揺動アーム10をベース体2に設けた一対のブラケット11で揺動軸12を介して支持することにより、本体ケース1の全体が揺動軸12の回りに左右方向へ傾動可能に支持してある。任意の傾動位置まで傾斜させた状態において、本体ケース1は自己の重量に抗して傾斜姿勢を保持し続けることができる。このように、本体ケース1をベース体2で左右傾動可能に支持することにより、肌シートSの加熱を待つ間に、適度に傾動させた鏡体3を見ながら顔肌の美容処理を並行して行うことができる。
【0021】
本体ケース1には、所定の大きさに折畳まれた肌シートSを保持するシート保持部と、シート保持部に装填された肌シートSを加熱する加熱部が設けてある。シート保持部には、肌シートSを収容する装填空間17が設けてある。装填空間17は、左右に対向する一対の対向壁(受体)19・20と、第4辺部7寄りの内奥壁21と、第3辺部6側の底壁22とで区画されており、その内部に移動体25が設けてある。一対の対向壁19・20の間に移動体25を設けることにより、装填空間17の内部が、図3に向かって右側の対向壁(受体)19と移動体25に挟まれた第1装填空間26と、左側の対向壁(受体)20と移動体25に挟まれた第2装填空間27に区分される。
【0022】
図2に示すように、肌シートSには、外形寸法が大小に異なる大サイズの肌シートS1と小サイズの肌シートS2とがあるが、両肌シートS1・S2を総称する場合には肌シートSと言う。なお、大サイズの肌シートS1と小サイズの肌シートS2のサイズの違いは相対的なものであって、空間寸法が大きな第1装填空間26に装填される肌シートS1を大サイズとし、空間寸法が小さな第2装填空間27に装填される肌シートS2を小サイズとするが、小サイズの肌シートS2を第1装填空間26に装填して加熱してもよい。この実施例では大サイズの肌シートS1として、化粧水や保湿液などの美容用液が含浸させてあるシートマスクを例示しており、小サイズの肌シートS2としてメイク落とし液を含むコットンシートを例示している。シートマスクは適当な大きさの四角形状に折畳まれて、蒸散防止用の包装袋に個包装してあり、その外形寸法は後述する加熱プレート51・59よりひとまわり小さい。また、コットンシートは原形のまま蒸散防止用の包装袋に個包装してあり、その外形寸法は後述する加熱プレート64・71よりひとまわり小さい。
【0023】
第1装填空間26と第2装填空間27は、それぞれ第1辺部4と第2辺部5に沿って開口するL字状の辺部開口を介して外部空間に臨ませてあり、この辺部開口のうち第1辺部4の側の開口部が第1装填空間26のシート出入口28となる。また、先の辺部開口のうち第2辺部5の側の開口部が第2装填空間27のシート出入口29となる。各シート出入口28・29を構成しない側の辺部開口のそれぞれには、肌シートSの装填を阻む障壁体30・31が、辺部開口を左右に横断する状態で設けてある。このように、第1装填空間26のシート出入口28の開口位置と、第2装填空間27のシート出入口29の開口位置が異ならせてあると、大サイズの肌シートS1の第1装填空間26に対する装填方向と、小サイズの肌シートS2の第2装填空間27に対する装填方向とは、互いに直交する関係となる。従って、大サイズの肌シートS1が誤って第2装填空間27に装填され、あるいは、小サイズの肌シートS2が誤って第1装填空間26に装填されるのを良く防止できる。
【0024】
移動体25は、装填空間17の内部を左右に区分する区分壁34と、区分壁34の底壁22寄りから左側の対向壁20へ向かって突設される底規制壁(規制壁)35(図6参照)と、区分壁34の内奥壁21寄りから左側の対向壁20へ向かって突設される奥規制壁36(図5参照)を一体に備えている。このように、底規制壁35および奥規制壁36を設けることにより、第2装填空間27の空間寸法を第1装填空間26の空間寸法より小さくしている。図7および図8に示すように、区分壁34の下部には、スライド壁37とラック38が設けてあり、スライド壁37を本体ケース1のガイド溝39で案内支持することにより、移動体25を底壁22に沿って左右方向へ往復スライドすることができる。さらに、先のラック38をピニオン40で移動操作することにより、移動体25を右側の対向壁19へ向かって接近移動させ、あるいは移動体25を左側の対向壁20へ向かって接近移動させて、肌シートSを対向壁19・20へ向かって押付け操作できる。つまり、移動体25は本体ケース1で往復動可能に支持されて、対向壁19・20に対してダイヤル8で接離操作可能になっている。ピニオン40は、先に説明したダイヤル8のダイヤル軸41に固定してあり、ダイヤル8およびダイヤル軸41は、本体ケース1で回転のみ自在に支持されている。
【0025】
先の障壁体30・31のうち、第1装填空間26側の障壁体30は、区分壁34の第2辺部5側の周縁に形成してあり、第2装填空間27側の障壁体31は、区分壁34の第1辺部4側の周縁に形成してある。第1装填空間26側の障壁体30の外面には、大サイズの肌シートS1が装填対象である旨の表示が設けてあり、第2装填空間27側の障壁体31の外面には、小サイズの肌シートS2が装填対象である旨の表示が設けてある。
【0026】
図5および図6において、加熱部は対向壁19に設けた第1加熱部44と、区分壁34の対向壁19との対向面の側に設けた第2加熱部45と、対向壁20に設けた第3加熱部46と、区分壁34の対向壁20との対向面の側に設けた第4加熱部47で構成してある。第1加熱部44は、対向壁19の外面に露出する加熱プレート51と、加熱プレート51の内側に固定したヒーターホルダー(電熱体ホルダー)52と、同ホルダー52に装着したPTCヒーター(電熱体)53とからなり、PTCヒーター53の熱を、加熱プレート51を介して肌シートS1に伝導する。第1加熱部44は対向壁19の一部を成していると考えることができ、また第3加熱部46は対向壁20の一部を成していると考えることができる。
【0027】
加熱プレート51およびヒーターホルダー52は、対向壁19に設けたガイド穴54で出退可能に支持されて、4個のプレートばね(弾性体)55で移動体25へ向かって進出付勢してある。つまり加熱プレート51およびヒーターホルダー52は、4個のプレートばね(弾性体)55により対向壁19の内壁から離れる内向き方向に弾性付勢されている。プレートばね55は圧縮コイルばねからなり、その一端がヒーターホルダー52に接当され、他端が鏡体3の内面に固定したアルミニウム製の伝熱体56に接当してある。PTCヒーター53の熱は、加熱プレート51に伝導するのと同時に、プレートばね55を介して伝熱体56に伝導し、さらに、ヒーターホルダー52の輻射作用によって伝熱体56へ伝導して鏡体3を加熱する。従って、加熱装置の作動時に鏡体3が曇るのを確実に防止できる。このように、鏡体3を第1加熱部(加熱部)44の近傍の本体ケース1の外面に配置しておくことにより、加熱部の熱を有効に利用して鏡体3の曇り止めを行える。図示していないが、加熱プレート51とヒーターホルダー52との間には絶縁シートが配置してある。第2から第4の各加熱部45〜47においても同様に絶縁シートが配置してある。なお、加熱プレート51は図5に示す状態が進出限界位置になっており、この位置を越えて進出することはない。第3加熱部46における加熱プレート64も同じである。このように、加熱プレート51および電熱体53が対向壁(受体)19に対して出没自在に設けられている。
【0028】
第2加熱部45は、区分壁34の対向壁19との対向面に露出する加熱プレート59と、加熱プレート59の内側に固定したヒーターホルダー(電熱体ホルダー)60と、同ホルダー60に装着したPTCヒーター(電熱体)61とからなり、PTCヒーター61の熱を、加熱プレート59を介して肌シートS1に伝導する。
【0029】
第3加熱部46は、対向壁20の外面に露出する加熱プレート64と、加熱プレート64の内側に固定したヒーターホルダー(電熱体ホルダー)65と、同ホルダー65に装着したPTCヒーター(電熱体)66とからなり、PTCヒーター66の熱を、加熱プレート64を介して肌シートS2に伝導する。加熱プレート64およびヒーターホルダー65は、対向壁20に設けたガイド穴67で出退可能に支持されて、圧縮コイルばねからなる4個のプレートばね68で移動体25へ向かって進出付勢してある。つまり加熱プレート64およびヒーターホルダー65は、4個のプレートばね(弾性体)68により対向壁20の内壁から離れる内向き方向に弾性付勢されている。このように、加熱プレート64および電熱体66が対向壁(受体)20に対して出没自在に設けられている。
【0030】
第4加熱部47は、第2加熱部45のヒーターホルダー60を利用して構成してあり、区分壁34の対向壁20との対向面に露出する加熱プレート71を、ヒーターホルダー(電熱体ホルダー)60の左側面に固定して構成してある。第1〜第4の各加熱部44〜47の加熱プレート51・59・64・71は、いずれもアルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属製の板材で形成してある。また、第1装填空間26に臨む加熱プレート51・59は、第1装填空間26の空間寸法に見合う大きさに形成してあり、第2装填空間27に臨む加熱プレート64・71は第2装填空間26の空間寸法に見合う大きさに形成してある。加熱プレート51・59・64・71は、PTCヒーター53・61・66の熱を受けて遠赤外線を放射するセラミック板材で形成することができる。また、加熱プレート51・59・64・71は、熱伝導性に優れているプラスチック板材を素材にして形成してあってもよく、その場合には、加熱プレート51・59・64・71がヒーターホルダー52・60・65を兼ねるようにして、加熱プレート51・59・64・71とヒーターホルダー52・60・65を一体化することができる。
【0031】
加熱装置は、大サイズの肌シートS1と小サイズの肌シートS2のいずれか一方を、第1装填空間26または第2装填空間27に択一的に装填して加熱する。例えば、大サイズの肌シートS1を加熱する場合には、1個ないし複数個の肌シートS1を第1辺部4側のシート出入口28から第1装填空間26内に差込み装着し、図9に示すようにダイヤル8を中立位置から時計回転方向へ回転操作して移動体25を対向壁19側へ移動操作し、肌シートS1を一対の加熱プレート51・59で挟持する。また、小サイズの肌シートS2を加熱する場合には、1個ないし複数個の肌シートS2を第2辺部5側のシート出入口29から第2装填空間27内に差込み装着し、ダイヤル8を中立位置から反時計回転方向へ回転操作して移動体25を対向壁20側へ移動操作し、肌シートS2を一対の加熱プレート64・71で挟持する。このように、肌シートSは移動体25と対向壁19・20の間で挟持される。
【0032】
上記のシート挟持動作に連動して、各PTCヒーター53・61・66を作動させるために、図10に示すヒーター制御回路を設けている。ヒーター制御回路には、ダイヤル8の回転操作に応じて電源を第1給電路74に接続する第1スイッチ(スイッチ)75と、電源を第2給電路76に接続する第2スイッチ(スイッチ)77が設けてある。図11に示すように、第1スイッチ75と第2スイッチ77はいずれもマイクロスイッチからなり、そのレバー78の先端にローラー79が設けてある。レバー78およびローラー79を切り換え操作するために、ダイヤル軸41に操作カム80を設け、その周囲に第1カム凹部81と、第2カム凹部82を前後にずれた状態で設けている。ダイヤル8が中立位置にあるとき、第1スイッチ75のローラー79は第1カム凹部81に落込み係合してオフ状態になっている。また、ダイヤル8が中立位置にあるとき、第2スイッチ77のローラー79は第2カム凹部82に落込み係合してオフ状態になっている。
【0033】
第1スイッチ75は、ダイヤル8が中立位置から時計回転方向へ回動操作された状態と、ダイヤル8が中立位置から反時計回転方向へ回動操作された状態のいずれの場合にもオン状態に切り換る。また第2スイッチ77は、ダイヤル8が中立位置から反時計回転方向へ回動操作された場合にのみオン状態に切り換り、ダイヤル8が中立位置から時計回転方向へ回動操作された場合にはオフ状態を維持する。
【0034】
図6図10において、符号75aは、肌シートS1(S)の有無によってスイッチのオン・オフ状態が切り換わる第1検知スイッチ(検知スイッチ)であり、符号77aおよび符号77aaは、肌シートS2(S)の有無によってスイッチのオン・オフ状態が切り換わる第2検知スイッチ(検知スイッチ)である。装填空間17内に肌シートSが装填されている状態で、移動体25が対向壁19もしくは対向壁20へ向かって接近操作された場合には、加熱部44もしくは加熱部46が対向壁19もしくは対向壁20の側へ退入する。このとき、ガイド穴54もしくはガイド穴67の内壁に配設されている第1検知スイッチ75aもしくは第2検知スイッチ77a・77aaに加熱部44もしくは加熱部46が当接することで、具体的には、ヒーターホルダー52の側壁もしくはヒーターホルダー65の側壁が当接することで、第1検知スイッチ75aもしくは第2検知スイッチ77a・77aaをオン状態に切り換えることができる。
【0035】
また、装填空間17内に肌シートSが装填されていない状態で、移動体25が対向壁19もしくは対向壁20へ向かって接近操作された場合には、加熱部44もしくは加熱部46が対向壁19もしくは対向壁20の側へ退入することはなく、突出姿勢を維持し続けるので、第1検知スイッチ75aもしくは第2検知スイッチ77a・77aaをオン状態に切り換えることはできない。
【0036】
図10に示すように、第1給電路74は、第1加熱部44のPTCヒーター53と、第2加熱部45のPTCヒーター61に接続されており、移動体25が対向壁19側へ移動操作された状態において、第1スイッチ75のみがオン状態に切り換って、第1検知スイッチ75aのオン状態を条件に第1装填空間26側の両PTCヒーター53・61が作動する。また、第2給電路76は第3加熱部46のPTCヒーター66に接続されており、移動体25が対向壁20側へ移動操作した状態においては、第1スイッチ75と第2スイッチ77の両者がオン状態に切り換って、第2検知スイッチ77a・77aaのオン状態を条件に3個のPTCヒーター53・61・66が作動する。このように、移動体25が対向壁20側へ移動操作された状態において、第1装填空間26に臨むPTCヒーター53を同時に作動させるのは、鏡体3を加熱して鏡体表面の曇り止めを行うためである。図11において符号83は、操作カム80の回転限界を規定するストッパーである。上記のように、移動体25をダイヤル8で対向壁19(または20)へ向かって接近操作するのに連動して、各スイッチ75・77をオン状態に切り換えると、各スイッチ75・77の切り換え操作を別途行う必要がないので、肌シートS1・S2の加熱を速やかに開始できる。
【0037】
上述したように、たとえダイヤル8を回動操作させてスイッチ75・77をオン状態に切り換えたとしても、検知スイッチ75a・77a・77aaがオン状態に切り換わっていなければ、給電路74・76は開状態のままであり、PTCヒーター53・61・66は作動しない。これにより肌シートSが無いにもかかわらずPTCヒーター53・61・66が作動して電力が無駄に消費されるのを防止できる。また、PTCヒーター53・61・66が作動し続けることで、加熱装置が不安全な状態となるのを防止できる。本実施例では、このように、肌シートSの有無を検出する検出部を有している。この検出部は、移動体25による押し付け動作の際、肌シートSが無い状態においては、加熱部44・45・46が退入せず加熱部44・45・46の駆動を行わない構成のことであり、具体的には、出没自在の加熱部44・46と加熱部44・46を付勢するプレートばね55・68と加熱部44・46の往復移動によりオン・オフする検知スイッチ75a・77a・77aaから成る。本実施例では、加熱部44・46を利用して検知スイッチ75a・77a・77aaをオン・オフしたが、別途に出没自在の出没体を設けて検知スイッチ75a・77a・77aaをオン・オフ状態とする構成であってもよい。
【0038】
上記検出部は、その他構成として、以下の構成が考えられる。例えば移動体25が対向壁19もしくは対向壁20へ向かって接近操作されたとき、肌シートSが無い場合でも、加熱部44の加熱プレート51もしくは加熱部46の加熱プレート64に対して直接、加熱部45の加熱プレート59もしくは加熱プレート71が当接できる構成としておく。肌シートSが有る場合は、肌シートSが介在することで、加熱部44の加熱プレート51もしくは加熱部46の加熱プレート64に対して加熱部45の加熱プレート59もしくは加熱プレート71が直接当接できない。肌シートSが無い場合は、肌シートSが介在することはないので、加熱部44の加熱プレート51もしくは加熱部46の加熱プレート64に対して加熱部45の加熱プレート59もしくは加熱プレート71が直接当接する。加熱部44の加熱プレート51もしくは加熱部46の加熱プレート64と、加熱部45の加熱プレート59もしくは加熱プレート71の双方を電極部としたうえで、一方から他方に向けてパルス電流を流せるよう構成し、パルス電流が流れた場合は、肌シートSが無いと判断し、パルス電流が流れないままであれば、肌シートSが有ると判断する電流検出部を設ける。そして、この電流検出部の信号を受けて、制御部(CPU)により図10における検知スイッチ75a・77a・77aaのオン・オフ状態を切り換える構成とした肌シートSの有無を検出する検出部であってもよい。
【0039】
各PTCヒーター53・61・66が作動すると、ダイヤル8の上部の左側に設けたLED表示具85(図3参照)が明滅して、各PTCヒーター53・61・66が作動中であることを表示する。この状態以降は、本体ケース1を適度に傾動させて、鏡体3を見ながら、洗髪後の毛髪を乾燥する、あるいは乱れた髪を整えるなどヘアードライヤによる整髪作業を行うことができる。さらには化粧水などの美容用液をイオン導入作用で顔肌に浸透させる、あるいはマッサージ器具で顔肌をマッサージするなど肌美容器具による美容処理を行うことができる。また、顔肌の美容処理を行う間に、PTCヒーター53の熱を、伝熱体56を介して鏡体3の裏面全体に均等に伝導させて、鏡体表面の曇り止めを行うことができる。肌シートSの加熱を行う間に、先のような他の美容機器(電気機器)を併用するために、本体ケース1の第3辺部6に、他の美容機器の電源コード87を接続するための交流(商用)電源を出力するソケット(接続構造)88が設けてある。本体ケース1の外面に露出しているソケット88は、ソケット88用の給電路を有し、PTCヒーター53・61・66に電力を供給するために配設された本体ケース1内の交流(商用)電源給電路に接続されている。これにより、ソケット88に美容機器のプラグ栓刃は差し込めば、美容機器に電力が供給され肌シートSを加熱している加熱装置に近い位置で毛髪乾燥や肌のお手入れができる。なお、接続構造は交流(商用)電源を出力するソケット以外に、本体ケース1内に交直流変換器を設けて整流後の電流を供給できるコネクター構造としてもよい。
【0040】
各PTCヒーター53・61・66の作動開始から一定時間が経過すると、LED表示具85が連続点灯して肌シートS1(またはS2)の加熱が完了したことを表示する。この時点で、ユーザーがダイヤル8を中立位置へ回転操作することにより、移動体25を対向壁19・20の左右中央へ戻して、第1スイッチ75および/または第2スイッチ77の両者をオフ状態に切り換えることができる。つまり移動体25の移動動作に連動して加熱部44・45・46の駆動を停止することができる。また、肌シートS1(またはS2)を第1装填空間26(または第2装填空間27)から取出して包装袋を開封することにより、温められたシートマスク(あるいはコットンシート)を取出して展張することができる。さらに、温められたシートマスクを展開したのち、図13に示すように顔肌に貼り付けることにより、冷たい思いをすることもなくシートマスクを顔肌に密着させて、顔肌のスキンケアを行うことができる。上記のように、移動体25をダイヤル8で対向壁19(または20)へ向かって接近操作するのに連動して、各スイッチ75・77をオン状態に切り換えると、各スイッチ75・77の切り換え操作を別途行う必要がないので、肌シートS1・S2の加熱を速やかに開始できる。また、移動体25を移動させ肌シートSを挟持したものの、加熱部を駆動し忘れるといった不具合を防止できる。また、移動体25を元の位置に動作させるだけで、加熱部44の駆動を停止できるので、電力が無駄に消費されるのを防止できるうえ、加熱された肌シートSの取出しを容易に行うことができる。なお、加熱部44の駆動を停止する場合は、後述するように駆動開始から所定時間経過したのちにスイッチをオフするタイマー回路を設けて加熱部44の駆動を停止させるよう構成することができる。また、温度センサーを設けて所定温度(例えば43℃)に到達した時点で加熱部44の駆動を停止させるよう構成することができる。いずれにしても、移動体25の移動動作に連動して加熱部44を駆動するので、操作が単純化され使い勝手に優れるとともに、肌シートSの加熱が終了すれば加熱部44の駆動を停止できるので電力が無駄に消費されるのを防止できる。
【0041】
各PTCヒーター53・61・66の制御は、タイマーを利用して行うことができる。例えば、第1スイッチ75がオン操作されるのと同時に、各PTCヒーター53・61・66とタイマー回路を作動させ、ヒーターへの通電開始から一定時間が経過したことをタイマー回路で検知し、各PTCヒーター53・61・66への通電を自動的に停止する。このとき、各PTCヒーター53・61・66に対する通電が停止されるのと同時にアラーム音を発することにより、肌シートSの加熱が終了したことをユーザーに明確に報知することができる。アラーム音を確認したユーザーは、ダイヤル8および移動体25を中立位置へ戻すことにより、温められた肌シートSを装填空間から取出して顔肌等に適用することができる。ダイヤル8が中立位置へ戻された状態では、第1スイッチ75および第2スイッチ77がオフ状態に切り換えるので、このことを利用して先のタイマー回路をリセットすることができる。
【0042】
以上のように構成した加熱装置によれば、肌シートS1を一対の加熱プレート51・59で挟持して加熱するので、PTCヒーター53・61の熱を、加熱プレート51・59を介して効果的に肌シートS1に伝導できる。また、肌シートS2を一対の加熱プレート64・71で挟持して加熱するので、PTCヒーター66・61の熱を、加熱プレート64・71を介して効果的に肌シートS2の伝導できる。従って、従来のこの種の加熱装置に比べて、肌シートSを速やかに加熱して即応性を向上できる。加えて、肌シートSの温度が室温より低く、かつ両者の温度差が大きい場合であっても肌シートSを短時間で加熱でき、しかも、肌シートSを温度むらのない状態で均等に加熱できる
【0043】
肌シートSの加熱が終了したら、ダイヤル8を回動操作して、移動体25を対向壁19・20から離れる向きへ移動操作するだけで、加熱された肌シートSを開放して、その取出しを容易に行えるので、肌シートSによる以後のスキンケアを速やかに行える。このとき移動体25の移動動作に連動してPTCヒーター53・61・66の作動が停止するので、消費電力に無駄が生じるのを防止できる。また、各スイッチ75・77の切り換え操作を別途行う必要がないため使い勝手に優れる。さらに、本体ケース1の外面に鏡体3を配置しているので、鏡台の鏡を使用する必要もなく、肌シートSの加熱を待つ間に、適度に傾動させた鏡体3を見ながら顔肌の美容処理を並行して行うことができる。なお、本実施例においては、加熱装置の電源をオン・オフ状態に切り換える電源スイッチを設けていないが、ベース体2上に設けたものであってもよい。
【0044】
図14は、加熱装置の別の実施例を示す。そこでは、装填空間17を、右側の対向壁19と移動体25に挟まれた第1装填空間26のみで構成し、さらに、加熱部を対向壁(受体)19に設けた第1加熱部44のみで構成して、加熱装置の構造を簡素化した。また、本体ケース1の左右側面のそれぞれに鏡体3・3を固定して、本体ケース1が左右いずれの側に傾動された場合でも、鏡体3・3を利用できるようにした。移動体25は、本体ケース1の第1辺部4に設けたスライドノブ(操作具)8で往復スライド操作可能とし、ラック38およびピニオン40は省略した。また、第1加熱部44のみで肌シートS1を加熱するので、移動体25がスライドノブ8でスライド操作されるのに連動して第1スイッチ75をオン状態に切り換えて、PTCヒーター53を作動させるようにした。
【0045】
左右の鏡体3・3の内面にはそれぞれ伝熱体56・56が配置され、各伝熱体56・56の内面は受壁91・92で支持されている。PTCヒーター53の熱を各鏡体33に伝導するために、受壁91・92および区分壁34のそれぞれに、一群の通気穴93・94・95を形成している。右側の鏡体3は、プレートばね55から伝熱体56へ伝導する伝導熱と、通気穴93を通過して伝熱体56へ伝導するヒーターホルダー52の輻射熱によって加熱されて、鏡体表面の曇り止めを行う。左側の鏡体3は、加熱された肌シートS1の輻射熱が、通気穴94・95を通過して伝熱体56へ伝導し、さらに、温められた空気が通気孔94・95を介して伝熱体56に接触することで鏡体表面の曇り止めを行う。また、本実施例においても、たとえスライドノブ8をスライド操作させてスイッチ75をオン状態に切り換えたとしても、検知スイッチ75aがオン状態に切り換わっていなければ、給電路74は開状態のままであり、PTCヒーター53・61は作動しない。これにより肌シートSが無いにもかかわらずPTCヒーター53・61が作動して電力が無駄に消費されるのを防止できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。なお、区分壁34と対向壁20の間の空間は、第1装填空間26に装填した肌シートS1を加熱する際に、別の肌シートS1・S2を予熱する空間として利用することができる。この実施例から理解できるように、加熱装置には少なくとも1個の装填空間17が設けてあれば足りる。
【0046】
図15図16は、加熱装置のさらに別の実施例を示す。そこでは、ベース体2で後傾状に固定支持した本体ケース1を、丸皿状の本体部(受体)1aと、本体部1aに対して前後方向へ揺動開閉可能にヒンジ軸98で連結される蓋体(移動体)1bとで構成した。蓋体1bは、ヒンジ軸98の中心を通る水平面より下側へ向かって下り傾斜する開放位置と、本体部1aのシート出入口28を閉止する閉止位置との間で開閉でき、閉止位置における蓋体1bの外面に円形の鏡体3が固定してある。
【0047】
図16に示すように、本体部1aを蓋体1bで閉止した状態においては、本体部1aの内底の対向壁(内壁)190と、蓋体1bの内面の対向壁(内壁)200とが正対して、肌シートSを収容する装填空間17を区画している。本体部1a側の対向壁190には第1加熱部44と、肌シートSを挟持して同シートのずれ落ちを防ぐクリップ体99とが設けてある。また、蓋体1b側の対向壁200には一群の通気孔95が通設されて、その内側に鏡体3を加熱するための伝熱体56が設けてある。さらに、対向壁200の中央に、肌シートSを第1加熱部44へ向かって押付けるシート押え突起(押圧体)100が出没自在に設けられ、ばね(弾性体)101で対向壁190へ向かって進出付勢してある。つまりシート押え突起100は、ばね101により蓋体1bの対向壁200から離れる内向き方向に弾性付勢されている。シート押え突起100は、アルミニウムなどの熱伝導に優れた金属を素材にして形成してある。ベース体2の前面上部には、加熱装置の電源スイッチをオン・オフする電源スイッチノブ102と、PTCヒーター53が作動中であることを表示するLED表示具85とが設けてある。他の構成については、先の実施例と同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
本体部1aに対して蓋部1bが閉止操作されるとき、肌シートSに接当したシート押え突起100は、ばね101の付勢力に抗して対向壁200の側へ退入するが、この退入動作を利用してスイッチ75をオン状態に切り換えて、PTCヒーター53を作動させている。スイッチ75をオン操作するのは、シート押え突起100から対向壁200に向けて突出した押圧部100aである。本体部1aに対して蓋部1bを開放操作したときのシート押え突起100は、ばね101の付勢力を受けて対向壁200から離れる向きに突出し、これに伴い先のスイッチ75がオフ状態に切り換わるので、PTCヒーター53の作動を停止できる。なお、本体部1aに対して蓋部1bを開閉(接離)操作する操作具8は、蓋部1bの縁の部分である。装填空間17内に肌シートSが装填されていない状態で、蓋部1bが閉止操作された場合には、シート押え突起100が対向壁200の側へ退入することはなく、突出姿勢を維持し続けるので、スイッチ75がオンされることはない。したがって肌シートSが無いにもかかわらずPTCヒーター53が作動して電力が無駄に消費されるのを防止できる。このように、シート押え突起100を利用してPTCヒーター53の通電状態をオン・オフすることができる。つまり、蓋部1bの移動動作に連動して加熱部44が駆動される。また、肌シートSの有無を検出する検出部を有しており、検出部は、蓋部1bによる押し付け動作の際、肌シートSが無い状態においては、押圧体100が退入せず加熱部44の駆動を行わない構成であり、具体的には、出没自在のシート押え突起100とシート押え突起100を弾性付勢するばね101とシート押え突起100の往復移動によりオン・オフするスイッチ75から成る。つまり本実施例においては、PTCシーター(電熱体)53を駆動するスイッチ75が、肌シートSの有無を検知する検知スイッチ75aを兼ねている。したがって本実施例の場合、図1ないし図13の実施例における検知スイッチ75aは必要なく省略することができる。
【0049】
本実施例における加熱部44の駆動は、先ず、電源スイッチノブ102を手動でオン操作し、加熱装置の電源スイッチをオン状態にする。そして、蓋体1bを開放した状態で、肌シートSをシート出入口28から装填空間17内に装填し、肌シートSを加熱プレート51の外面に被せ付けた状態で、その上辺部をクリップ体99で挟持固定する。次に図16に示すように、蓋体1bを閉止姿勢にしたうえで本体部1aに開放不能に係合する。この状態では、シート押え突起100が肌シートSを加熱プレート51に押付けて密着させており、鏡体3は、本体部1aと同じ角度で後傾している。このとき上述したようにシート押え突起100が対向壁200の側へ退入し、PTCヒーター53が作動する。PTCヒーター53の作動中はLED表示具85が点滅して肌シートSを加熱中であることを表示する。このとき鏡体3を見ながら顔肌の美容処理やスキンケアを、肌シートSの加熱に並行して行うことができる。加熱された肌シートSの熱は、シート押え突起100とばね101を介して伝熱体56へ伝導し鏡体表面の曇り止めを行う。同時に、加熱された肌シートS1の輻射熱が、通気穴95を通過して伝熱体56へ伝導し、さらに、温められた空気が通気孔95を介して接触することで伝熱体56へ伝導する。PTCヒーター53の作動開始から一定時間が経過すると、LED表示具85が連続点灯して肌シートSの加熱が完了したことを表示する。蓋体1bを開放して、肌シートSをクリップ体99から抜き出すことにより、温められた肌シートSを装填空間17の外へ取り出すことができる。このとき、上述したようにシート押え突起100は対向壁200から離れる向きに突出することで、PTCヒーター53の作動が停止する。なお、シート押え突起100は、肌シートSの面積よりも大きく設定したうえで、PTCヒーター、ニクロム線ヒーターなどの電熱体を設けた構成であってもよい。
【0050】
図17および図18は、加熱装置のさらに別の実施例を示す。そこでは、本体ケース1をベース体2に設けたスタンド穴105に着脱可能として、本体ケース1の下部をスタンド穴105に差込んで後傾姿勢に起立保持した状態と、本体ケース1をベース体2から取外して片手で握った状態のいずれかで使用できるようにした。本体ケース1は、一対の挟持体106・107をヒンジ軸98で接離可能に連結して構成してある。両挟持体106・107のうち、図18に向かって左側の挟持体106が先の実施例における本体部(受体)1aとして機能し、残る挟持体107が先の実施例における蓋部(移動体)1bとして機能する。挟持体106・107は、それぞれ円形の対向壁19・20と、グリップ腕109・110を一体に備えており、対向壁19の側に第1加熱部44と、伝熱体56と、鏡体3が設けられ、対向壁20の側に第2加熱部45が設けてある。挟持体106・107のグリップ腕109・110は、図示していないばねで互いに開く方向へ移動付勢してある。また、グリップ腕109・110の対向面の内部には、各PTCヒーター53・61に対する通電状態を切り換えるスイッチ111と、スイッチ111を切り換え操作する切換突起112が設けてある。なお、図示していないが、この実施例における電源は、両挟持体106・107のいずれか一方に配置した2次電池または1次電池を使用する。
【0051】
使用時には、一対の挟持体106・107の対向壁19・20の対向面の間に肌シートSを挟持することにより、スイッチ111をオン状態に切り換えてPTCヒーター53・61を作動させ、一対の加熱プレート51・59の間に挟まれた肌シートSを加熱する。この挟持状態を保持し続けるために、グリップ腕109・110の対向面に、市販されているプッシュラッチを設けておくとよい。プッシュラッチは、1度目の押込み操作で押込み相手を捕捉してグリップ腕109・110を挟持状態に保持でき、2度目の押込み操作で押込み相手の捕捉を解除してグリップ腕109・110を開放することができる。スイッチ111をオン状態に切り換えたのちは、グリップ腕109・110の下端をスタンド穴105に差込んで、本体ケース1をベース体2で静止保持することにより、鏡体3を見ながら顔肌の美容処理やスキンケアを、肌シートSの加熱に並行して行うことができる。また、グリップ腕109・110を片手でつかんだ状態で鏡体3を見ながら、顔肌の状態や、眉毛あるいはまつ毛の状態などを確認することができる。上記のように、一対のグリップ腕109・110は、プッシュラッチで挟持状態を保持し続けることができるが、グリップ腕109・110の下端をスタンド穴105に装着した状態において、挟持状態を保持し続けるように構成することができる。先に説明したように、両グリップ腕109・110はばねで開き方向へ移動付勢してあるが、スタンド穴105に装着した各グリップ腕109・110の下端を穴の内面壁で受止めて開き方向への移動を規制し、挟持状態を保持できるようにするのである。なお、本体部1aに対して蓋部1bを開閉(接離)操作する操作具8は、グリップ腕110と図示しない開き方向に付勢するばねである。本実施例も上記実施例と同様に、移動体1bを対向壁19へ向かって接近操作するのに連動して、スイッチ111をオン状態に切り換えると、スイッチ111の切り換え操作を別途行う必要がないので、肌シートSの加熱を速やかに開始できる。また、移動体1bを移動させ肌シートSを挟持したものの、加熱部を駆動し忘れるといった不具合を防止できる。また、移動体1bを元の位置に動作させるだけで、加熱部44・45の駆動を停止できるので、電力が無駄に消費されるのを防止できるうえ、加熱された肌シートSの取出しを容易に行うことができる。
【0052】
上記構成の肌シートの加熱装置は、以下の態様で実施することができる。
本体ケース1に、肌シートSを収容する装填空間17と、装填空間17に収容された肌シートSを加熱する加熱部44・45・46が設けられており、
装填空間17に装填した肌シートSを押し付ける移動体25・1bと移動体25・1bの押し付け力を受ける受体1a・19・20とにより、肌シートSが挟持されるよう構成されており、
移動体25の移動動作に連動して加熱部44・45・46を駆動することを特徴とする肌シートの加熱装置。
このように、移動体25・1bの移動動作に連動して加熱部44・45・46を駆動すると、移動体25・1bを移動動作するだけで加熱部44・45・46を駆動させて、肌シートSの加熱を開始できる。従って、ユーザーは、装填空間17に肌シートSを装填して、移動体25を移動動作したのちは、別途、スイッチ操作を行う必要がなく、肌シートS1・S2の加熱を速やかに開始できる。また、移動体25・1bを移動させ肌シートSを挟持したものの、加熱部44・45・46を駆動し忘れるといった不具合を防止できる。
【0053】
電熱体53・61・66はPTCヒーターである必要はなく、ニクロム線ヒーターや、ペルチェ素子(熱電変換素子)であってもよい。ペルチェ素子で電熱体53・61・66を構成する場合には、ペルチェ素子に供給される電流の極性を切り換えて、外気温の違いに応じて肌シートSを加熱し、あるいは冷却することができる。例えば、冬場には肌シートSが密着する側を放熱面にして肌シートSを加熱し、夏場にはペルチェ素子に供給される電流の極性を反転して、肌シートSが密着する側を吸熱面にして肌シートSを冷却することができる。本体ケース1の側面視形状は正方形である必要はなく、装填空間17に装填される肌シートSの外形や大きさに応じて自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 本体ケース
3 鏡体
4 第1辺部
5 第2辺部
8 操作具(ダイヤル)
17 装填空間
19・20 対向壁
25 移動体
26 第1装填空間
27 第2装填空間
28 第1装填空間のシート出入口
29 第2装填空間のシート出入口
44 第1加熱部
45 第2加熱部
S1 大サイズの肌シート
S2 小サイズの肌シート
S 肌シート(総称)
図1
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