特許第6461552号(P6461552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461552
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】シールリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
   F16J15/18 C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-213934(P2014-213934)
(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-80112(P2016-80112A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】深田 純
(72)【発明者】
【氏名】大矢 直久
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−018466(JP,U)
【文献】 特開2002−372154(JP,A)
【文献】 特開平06−213322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心とする環状に形成され、
前記中心軸に垂直に延びる第1垂直面と、前記第1垂直面の内周側の第1縁部から前記中心軸に平行に延びる第1平行面と、前記第1縁部から間隔をあけて前記第1垂直面に設けられた第1係合部と、を有する第1端部と、
前記中心軸に垂直に延び、前記第1垂直面に面接触する第2垂直面と、前記第2垂直面の内周側の第2縁部から前記中心軸に平行に延び、前記第1平行面に面接触する第2平行面と、前記第2縁部から間隔をあけて前記第2垂直面に設けられ、前記第1係合部に係合する第2係合部と、を有する第2端部と、
から構成される合口部を具備する
シールリング。
【請求項2】
請求項1に記載のシールリングであって、
前記第1平行面が内周側を向き、前記第1係合部が凸形状に形成され、
前記第2平行面が外周側を向き、前記第2係合部が凹形状に形成されている
シールリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器に利用可能なシールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の自動変速機などの油圧機器では、オイル漏れを防止するためにシールリングが用いられる。シールリングは、例えば、シャフトがハウジングに挿通される構成を有する油圧機器において、シャフトとハウジングとの間を封止する。
【0003】
シールリングは、合口部を備え、その外径が若干の変化を生ずることができるように構成されている。力が付与されていない自由状態のシールリングでは、合口部が少し開いている。
【0004】
シールリングを油圧機器に組み付けるためには、まず、シールリングをシャフトの溝部に装着する。そして、シールリングが装着されたシャフトを、シールリングをその外径がハウジングの内周面よりやや小さくなるように変形させながら、ハウジングに挿通させる。
【0005】
油圧機器に組み付けられたシールリングは、自由状態よりも外径が小さくなっているため、自由状態に戻ろうとする弾性力によってハウジングの内周面に密着する。これにより、シールリングとハウジングとの間をオイルが通過できなくなる。
【0006】
このようなシールリングでは、自由状態の外径を大きくするほど、ハウジング内で自由状態に戻ろうとする弾性力が大きくなるため、ハウジングの内周面に対する密着力が増大する。これにより、シールリングとハウジングとの間のシール性が向上する。
【0007】
ところが、自由状態のシールリングの外径がハウジングの内周面の径よりも大幅に大きいと、シールリングがハウジング内に入りにくくなる。これにより、シールリングを装着したシャフトをハウジングにスムーズに挿通させることができなくなるため、組み付け性が悪化する。
【0008】
特許文献1には、カギ状に形成された合口部を相互に係合させることにより自由状態の外径が小さく保たれるように構成されたシールリングが開示されている。このシールリングでは、良好な組み付け性を維持しつつ、ハウジングの内周面に対する密着力を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−213322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、カギ状に形成された合口部を有するシールリングでは、合口部に隙間が発生するため、合口部においてオイル漏れが発生しやすくなる。したがって、このようなシールリングではシール性が低下する。
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、高いシール性、及び良好な組み付け性を兼ね備えたシールリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るシールリングは、中心軸を中心とする環状に形成されている。
上記シールリングは、第1端部と、第2端部と、を具備する。
上記第1端部は、上記中心軸に垂直に延びる第1垂直面と、上記第1垂直面の内周側の第1縁部から上記中心軸に平行に延びる第1平行面と、上記第1縁部から間隔をあけて上記第1垂直面に設けられた第1係合部と、を有する。
上記第2端部は、上記中心軸に垂直に延び、上記第1垂直面に面接触する第2垂直面と、上記第2垂直面の内周側の第2縁部から上記中心軸に平行に延び、上記第1平行面に面接触する第2平行面と、上記第2縁部から間隔をあけて上記第2垂直面に設けられ、上記第1係合部に係合する第2係合部と、を有する。
【0013】
この構成のシールリングでは、第1係合部と第2係合部との係合により、自由状態にて、第1端部と第2端部とが離間せず、一定の外径が保たれるため、高い組み付け性が得られる。
また、このシールリングでは、第1垂直面と第2垂直面とが面接触し、第1平行面と第2平行面とが面接触しているため、第1端部と第2端部との間におけるオイル漏れが発生しにくい。
更に、このシールリングでは、第1係合部及び第2係合部がそれぞれ第1縁部及び第2縁部から離間しており、第1垂直面と第2垂直面との面接触が第1係合部及び第2係合部の内周側で保たれている。このため、このシールリングでは、第1係合部及び第2係合部が設けられているものの、シール性が損なわれない。
このように、上記の構成により、高いシール性、及び良好な組み付け性を兼ね備えたシールリングを提供することができる。
【0014】
上記第1平行面が内周側を向き、上記第1係合部が凸形状に形成されていてもよい。
上記第2平行面が外周側を向き、上記第2係合部が凹形状に形成されていてもよい。
これにより、上記シールリングの具体的な構成を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
高いシール性、及び良好な組み付け性を兼ね備えたシールリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るシールリングの側面図である。
図2】上記シールリングの合口部を拡大して示す斜視図である。
図3A】上記シールリングの合口部の第1端部を拡大して示す斜視図である。
図3B】上記シールリングの合口部の第2端部を拡大して示す斜視図である。
図4】上記シールリングの合口部を外周面側から示す図である。
図5】上記シールリングの合口部を外周面側から示す図である。
図6】上記シールリングの合口部を外周面側から示す図である。
図7】比較例に係るシールリングの合口部を拡大して示す斜視図である。
図8A】比較例に係るシールリングの合口部の第1端部を拡大して示す斜視図である。
図8B】比較例に係るシールリングの合口部の第2端部を拡大して示す斜視図である。
図9A】変形例1に係るシールリングの合口部を外周側から示す図である。
図9B】変形例2に係るシールリングの合口部を外周側から示す図である。
図9C】変形例3に係るシールリングの合口部を外周側から示す図である。
図9D】変形例4に係るシールリングの合口部を外周側から示す図である。
図10A】変形例5に係るシールリングの合口部を拡大して示す斜視図である。
図10B】変形例5に係るシールリングの合口部の第1端部を拡大して示す斜視図である。
図10C】変形例5に係るシールリングの合口部の第2端部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
[シールリング1の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係るシールリング1の側面図である。本実施形態に係るシールリング1は、油圧式の自動車用自動変速機など、種々の油圧機器に適用可能である。図1は力が付与されていない自由状態のシールリング1を示している。
【0019】
シールリング1は、第1端部10a及び第2端部10bから構成される合口部10を有し、中心軸Cを中心とする環状に形成されている。また、シールリング1は、外周面1a、内周面1b、第1側面1c、及び第2側面1dを有する。外周面1a及び内周面1bは、中心軸Cに平行な面である。側面1c,1dは、外周面1aと内周面1bとを接続する面である。
【0020】
シールリング1を形成する材料は、駆動環境などにより適宜決定可能であり、例えば、鋳鉄などの金属材料や、熱可塑性樹脂である。シールリング1の摩擦損失を低減するためには、シールリング1を形成する材料は摺動特性に優れることが好ましい。また、シールリング1を形成する材料は耐熱性に優れることが好ましい。
【0021】
シールリング1の形成に適した熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)などが挙げられる。
【0022】
また、シールリング1を形成する熱可塑性樹脂は、複数種類の材料が複合化された複合材料であってもよく、カーボンや炭素繊維などによって強化したいわゆるエンジニアリングプラスチックであってもよい。
【0023】
図2図4は、自由状態のシールリング1の合口部10を示す図である。図2は、合口部10を拡大して示す斜視図である。図3Aは、合口部10の第1端部10aを拡大して示す斜視図である。図3Bは、合口部10の第2端部10bを拡大して示す斜視図である。図4は、合口部10を外周面1a側から示す図である。
【0024】
第1端部10aは、第1端面13aと、第1凸部11aと、第1凹部12aとを有する。第2端部10bは、第2端面13bと、第2凸部11bと、第2凹部12bとを有する。端面13a,13bは内周面1b側の領域に設けられ、凸部11a,11b及び凹部12a,12bは外周面1a側の領域に設けられている。
【0025】
端面13a,13bは、第1側面1cと第2側面1dとの間の全幅にわたって設けられている。端面13a,13bは、シールリング1の外周面1a及び内周面1bに垂直であり、相互に対向している。第1凸部11a及び第2凹部12bは、第1側面1c側の領域に設けられている。第2凸部11b及び第1凹部12aは、第2側面1d側の領域に設けられている。
【0026】
第1端部10aの第1凸部11aは、第1端面13aから外周面1aに沿って突出している。第1凹部12aは、第1端面13aから外周面1aに沿って凹んでいる。第2端部10bの第2凸部11bは、第2端面13bから外周面1aに沿って突出している。第2凹部12bは、第2端面13bから外周面1aに沿って凹んでいる。
【0027】
第1端部10aの第1凸部11aの先端部には、第2側面1d側に突出する第1係合部14aが設けられている。これにより、第1凸部11aは、全体として、カギ状となっている。第1係合部14aは、第1凸部11aにおける外周面1a側の領域に配置されている。
【0028】
第2端部10bの第2凹部12bには、その周方向の全幅にわたって、第2側面1d側に凹む第2係合部14bが設けられている。第2係合部14bは、第2凹部12bにおける外周面1a側の領域に配置されている。
【0029】
第1端部10aの第1係合部14aと第2端部10bの第2係合部14bとは相互に係合している。つまり、凸形状の第1係合部14aが凹形状の第2係合部14b内に入り込んでいる。自由状態のシールリング1では、第1係合部14aの後端部が第2係合部14bの先端部に引っ掛かっている。
【0030】
図5は、第1端部10aの第1係合部14aと第2端部10bの第2係合部14bとが係合していない状態のシールリング1の合口部10を外周面1a側から示す図である。この状態のシールリング1では、第1端部10aと第2端部10bとが離間しており、自由状態における外径Dよりも大きい外径Dとなっている。
【0031】
図5に示す状態のシールリング1は、ハウジングの内周面の径に対して外径Dが大きいため、ハウジング内に入りにくい。したがって、この状態のシールリング1では、当該シールリング1を装着したシャフトをハウジングにスムーズに挿通させることができないため、良好な組み付け性が得られない。
【0032】
シールリング1の製造プロセスでは、まず図5に示す状態に形成された後に、第1係合部14aと第2係合部14bとが係合させられ、図4に示す自由状態とされる。自由状態のシールリング1では、第1係合部14aと第2係合部14bとの係合により、図5に示す状態における外径Dよりも小さい外径Dに保たれる。
【0033】
つまり、自由状態のシールリング1では、第1端部10aの第1係合部14aの後端部が第2端部10bの第2係合部14bの先端部に引っ掛かっているため、外径Dより大きい外径となるように変形することができない。なお、第1係合部14aと第2係合部14bとのより確実な係合を得るため、第1係合部14aの突出量及び第2係合部14bの凹み量は、0.05mm以上であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るシールリング1では、自由状態における外径Dがハウジングの内周面の径よりもやや大きく設定される。これにより、シールリング1がハウジング内に入りやすくなるため、当該シールリングを装着したシャフトがハウジングにスムーズに挿通するようになる。したがって、自由状態のシールリング1では、良好な組み付け性が得られる。
【0035】
図6は、シャフト及びハウジングに組み付けられた状態のシールリング1の合口部10を外周面1a側から示す図である。この状態のシールリング1では、自由状態における外径Dよりも小さい外径Dとなっている。このとき、第1係合部14aの後端部が第2係合部14bの先端部から離れ、第2係合部14bによる第1係合部14aの拘束が解除される。
【0036】
図6に示す状態のシールリング1は、第1係合部14aが第2係合部14bによって拘束されていないため、図5に示す状態に戻ろうとする弾性力をハウジングの内周面に付与する。つまり、ハウジング内の外径Dのシールリング1は、自由状態の外径Dよりも更に大きい外径Dに戻ろうとする弾性力によって、ハウジングの内周面に対して密着する。したがって、シールリング1では、ハウジングの内周面に対する強い密着力が得られる。
【0037】
このように、シールリング1では、自由状態における小さい外径Dにより良好な組み付け性が得られるとともに、ハウジングに対する強い密着力によりハウジングとの間の高いシール性が得られる。
【0038】
更に、本実施形態に係るシールリング1は、合口部10におけるオイル漏れが良好に抑制される構成を有する。以下、合口部10の詳細な構成について説明する。
【0039】
[合口部10の詳細]
シールリング1の合口部10では、第1端部10aと第2端部10bとが面接触している3つのシール部が組み合わされた構成によって、高いシール性が実現されている。当該3つのシール部について、図2図4を参照しながら説明する。
【0040】
第1シール部は、第1端部10aの第1凸部11aの内周側を向いた平行面17aと、第2端部10bの第2凹部12bの外周側を向いた平行面17bと、によって構成されている。第1シール部を構成する平行面17a,17bは、中心軸Cに平行な面であり、相互に面接触している。このため、平行面17a,17b間にはオイルが進入しにくい。
【0041】
第2シール部は、第2端部10bの第2凸部11bの内周側を向いた平行面18bと、第1端部10aの第1凹部12aの外周側を向いた平行面18aと、によって構成されている。第2シール部を構成する平行面18a,18bは、中心軸Cに平行な面であり、相互に面接触している。このため、平行面18a,18b間にはオイルが進入しにくい。
【0042】
第3シール部は、第1端部10aにおける第1凸部11a及び第1凹部12aの第2側面1d側を向いた垂直面15aと、第2端部10bにおける第2凸部11b及び第2凹部12bの第1側面1c側を向いた垂直面15bと、によって構成されている。第3シール部を構成する垂直面15a,15bは、中心軸Cに垂直な面であり、相互に面接触している。このため、垂直面15a,15b間にはオイルが進入しにくい。
【0043】
また、垂直面15a,15bは、内周側の縁部おいて、平行面17a,17b及び平行面18a,18bに対して直交している。このため、仮に、平行面17a,17b間、垂直面15a,15b間、及び平行面18a,18b間に僅かな隙間が生じた場合にも、垂直面15a,15bの縁部で屈曲した当該隙間を流路とするオイル漏れは発生しにくい。
【0044】
更に、シールリング1は、第3シール部に上述の第1係合部14a及び第2係合部14bが設けられているものの、第3シール部におけるシール性が損なわれない構成を有する。以下、当該構成について説明する。
【0045】
第1端部10aの第1係合部14aは、垂直面15aに設けられている。より詳細には、第1係合部14aは垂直面15aの内周側の縁部から間隔をあけて配置され、つまり垂直面15aが第1係合部14aの内周側に残されている。これにより、垂直面15aは第1凸部11a及び第1凹部12aの周方向の全幅にわたって延びている。
【0046】
第2端部10bの第2係合部14bは、垂直面15bに設けられている。より詳細には、第2係合部14bは垂直面15bの内周側の縁部から間隔をあけて配置され、つまり垂直面15bが第2係合部14bの内周側に残されている。これにより、垂直面15bは第2凸部11b及び第2凹部12bの周方向の全幅にわたって延びている。
【0047】
これらの構成により、第1端部10aの第1凸部11aと第2端部10bの第2凹部12bとが、垂直面15a及び垂直面15bの内周側の縁部に沿って隙間なく密着する。このため、シールリング1では、第3シール部に第1係合部14a及び第2係合部14bが設けられているものの、第3シール部におけるシール性が損なわれない。
【0048】
なお、垂直面15aと垂直面15bとの間でより良好なシール性を得るために、第1垂直面15aにおける第1係合部14aの内周側の領域と、第2垂直面15bにおける第2係合部14bの内周側の領域との接触面積が十分に広いことが好ましい。このため、第1係合部14aと垂直面15aの内周側の縁部との間隔、及び第2係合部14bと垂直面15bの内周側の縁部との間隔が、いずれも0.05mm以上であることが好ましい。
【0049】
[比較例]
図7図8Bは、本実施形態の比較例に係るシールリング101の合口部110を示す図である。図7は、シャフト及びハウジングに組み付けられた状態のシールリング101の合口部110を拡大して示す斜視図である。図8Aは、合口部110の第1端部110aを拡大して示す斜視図である。図8Bは、合口部110の第2端部110bを拡大して示す斜視図である。
【0050】
本比較例に係るシールリング101は、以下に示す構成以外について、上記実施形態に係るシールリング1の構成と同様である。本比較例に係るシールリング101の構成のうち、上記実施形態に係るシールリング1と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
シールリング101の合口部110では、第1端部110aの第1係合部114a及び第2端部110bの第2係合部114bが、垂直面115a及び垂直面115bの径方向の全幅にわたって形成されている。つまり、第1係合部114a及び第2係合部114bが、垂直面115a及び垂直面115bの外周側の縁部から内周側の縁部まで連続している。
【0052】
したがって、第1端部110aの垂直面115aは第1係合部114aで途切れ、第2端部110bの垂直面115aは第2係合部114bで途切れている。換言すると、第1端部110aの垂直面115aは第1凸部11aの先端部には設けられておらず、第2端部10bの垂直面115bは第2凹部12bには設けられていない。
【0053】
このため、図7に示すように、シールリング101の合口部110では、第1端部110aの第1凸部11aと、第2端部110bの第2凹部12bとの間に、内周側から外周側へと貫通する隙間が発生する。したがって、合口部110では、図7及び図8Bに矢印で示すように、第1凸部11aと第2凹部12bとの隙間を、内周側から外周側にオイルoが通過しやすくなる。
【0054】
このように、本比較例に係るシールリング101では、第1係合部114a及び第2係合部114bを設けることにより、第1凸部11aと第2凹部12bとの間に隙間が発生するため、シール性が低下する。
【0055】
[変形例]
図9A〜9D,10A〜10Cは、上記実施形態に係るシールリング1の変形例を示す図である。各変形例に係るシールリング2〜5は、以下に示す構成以外について、上記実施形態に係るシールリング1の構成と同様である。各変形例に係るシールリング2〜5の構成のうち、上記実施形態に係るシールリング1と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
(変形例1)
図9Aは、変形例1に係るシールリング2の合口部20を外周面1a側から示す図である。合口部20では、上記実施形態に係る合口部10とは異なり、第1係合部24aが第1凸部11aの先端部から間隔をあけて配置され、第2係合部24bが第2凹部12bの両端部から間隔をあけて配置されている。
【0057】
本変形例1に係るシールリング2でも、第1係合部24aと第2係合部24bとの係合により自由状態における外径を小さく保つことができるため、良好な組み付け性が得られる。また、第1端部20aの第1凸部11aと第2端部20bの第2凹部12bとが垂直面15a及び垂直面15bの内周側の縁部に沿って隙間なく密着するため、高いシール性が得られる。
【0058】
(変形例2)
図9Bは、変形例2に係るシールリング3の合口部30を外周面1a側から示す図である。合口部30では、上記実施形態に係る合口部10とは反対に、第1係合部34aが凹形状に形成され、第2係合部34bが凸形状に形成されている。
【0059】
本変形例2に係るシールリング3でも、第1係合部34aと第2係合部34bとの係合により自由状態における外径を小さく保つことができるため、良好な組み付け性が得られる。また、第1端部30aの第1凸部11aと第2端部30bの第2凹部12bとが垂直面15a及び垂直面15bの内周側の縁部に沿って隙間なく密着するため、高いシール性が得られる。
【0060】
(変形例3)
図9Cは、変形例3に係るシールリング4の合口部40を外周面1a側から示す図である。合口部40では、上記実施形態に係る合口部10とは異なり、第1係合部44a及び第2係合部44bが、相互に係合可能となるように、凹形状と凸形状とが組み合わされて構成されている。
【0061】
本変形例3に係るシールリング4でも、第1係合部44aと第2係合部44bとの係合により自由状態における外径を小さく保つことができるため、良好な組み付け性が得られる。また、第1端部40aの第1凸部11aと第2端部40bの第2凹部12bとが垂直面15a及び垂直面15bの内周側の縁部に沿って隙間なく密着するため、高いシール性が得られる。
【0062】
(変形例4)
図9Dは、変形例4に係るシールリング5の合口部50を外周面1a側から示す図である。合口部50では、上記実施形態に係る合口部10とは異なり、第1端部50aの第1係合部54aに第1凹部12a側に突出する第1返し部59aが設けられ、第2端部50bの第2係合部54bに第2凹部12b側に凹む第2返し部59bが設けられている。
【0063】
本変形例4に係るシールリング5では、自由状態において、第1係合部54aの第1返し部59aと、第2係合部54bの第2返し部59bとが相互に嵌合する。このため、自由状態のシールリング5では、第1係合部54aが第2係合部54bから外れることを防止することができる。これにより、シールリング5をシャフト及びハウジングに組み付ける際の作業性が向上する。
【0064】
(変形例5)
図10Aは、変形例5に係るシールリング6の合口部60を示す斜視図である。図10Bは合口部60の第1端部60aを示す斜視図であり、図10Cは合口部60の第2端部60bを示す斜視図である。本変形例5に係るシールリング6では、第1係合部64aと第2係合部64bとの接触面が斜面として構成されている。
【0065】
つまり、第1係合部64aには、上記実施形態に係る第1係合部14aを、その先端部の外周面1aに接続する縁部から、内周面1b側の垂直面15aに接続する縁部に向けて、斜めに切断した形状の第1斜面69aが形成されている。第2係合部64bには、上記実施形態に係る第2係合部14bにおける外周面1aに接続する縁部と、垂直面15bに接続する縁部との間を斜めに延びる第2斜面69bが形成されている。
【0066】
このような構成により、シールリング6では、第1係合部64aの第1斜面69aと第2係合部64bの第2斜面69bとが面接触している。
【0067】
本変形例5に係るシールリング6でも、第1係合部64aと第2係合部64bとの係合により自由状態における外径を小さく保つことができるため、良好な組み付け性が得られる。また、第1端部60aの第1凸部11aと第2端部60bの第2凹部12bとが垂直面15a及び垂直面15bの内周側の縁部に沿って隙間なく密着するため、高いシール性が得られる。
【0068】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
例えば、上記実施形態に係るシールリング1では、側面1c,1dが相互に平行な平面として構成されているが、側面1c,1dの形状は適宜変更可能である。一例として、側面1c,1dは内周面1b側ほど相互に近接する傾斜面として構成されていてもよい。また、側面1c,1dは、内周面1b側に沿って凹形状に形成されたポケットを有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…シールリング
10…合口部
10a,11b…端部
11a,11b…凸部
12a,12b…凹部
13a,13b…端面
14a,14b…係合部
15a,15b…垂直面
17a,17b…平行面
18a,18b…平行面
C…中心軸
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C