(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
判別部は、伸縮部材間の伸縮量の差分と予め設定される差分の閾値との比較、又は、伸縮量の差分の変化率と予め設定される変化率の閾値との比較によって、異常値が一時的か恒久的かを判別する、
請求項1に記載の伸縮制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る伸縮制御装置について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明に係る伸縮制御装置が適用され得る装置の一例として、リフト装置1が
図1に示されている。また、本発明の一実施形態に係る伸縮制御装置100の概要について
図2を参照しつつ説明する。さらに、伸縮制御装置100を用いた伸縮制御方法の一実施形態の概要について、
図3を参照しつつ説明する。
図1は、リフト装置1を模式的に示した斜視図である。
図2は、伸縮制御装置100の制御系の一部を示すブロック図である。
図3は、伸縮制御装置100を用いた伸縮制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0016】
図1に示すように、リフト装置1は、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24と、2本の第1ビーム3と、2本の第2ビーム4とを備えている。
【0017】
なお、リフト装置1は、
図1において二点鎖線で示す荷物W、例えば半導体製造装置の容器本体の上部に配置される蓋部材、及び、該蓋部材の上方に載置される他の部品等を揚重する作業に用いることができる。
リフト装置1は、揚重する荷物が半導体製造装置の一部品に限られず、例えば荷物を水平状態に維持しつつ、ブレ、振動及び衝撃等を生じさせないように揚重することが求められている荷物に対して適用することができる。
【0018】
第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24は、それぞれが独立して伸縮自在の筒状部材である。
図1に示すように第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24は、リフト装置1の設置面に対して略直交して立設されている。
なお、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24は、本発明における伸縮部材の一例である。第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24は、基本的に全て同一部材を用いることができる。本発明における伸縮部材は、荷物の幅方向両側に少なくとも1本ずつ配置されれば良く、3本以上ずつ設けられていても良い。
【0019】
第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の伸縮機構としては、特に制限されないが、例えば半導体製造装置の部品の揚重作業ではミリ単位での伸縮制御が必要となることがあるので、微少な伸縮制御が容易な伸縮機構、具体的には電動モータとボールネジとを組み合わせた機構等を採用するのが好ましい。
【0020】
図1に示すように、2本の第1ビーム3は、長尺状部材であり、荷物Wの幅方向に沿って相互に平行になるように配置される。2本の第1ビーム3のうち、一方は第1伸縮部材21と第2伸縮部材22との上端部間に渡され、他方は第3伸縮部材23と第4伸縮部材24との上端部間に渡される。第1ビーム3は、それぞれが略水平方向に沿って延在し、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24が伸縮することによって第1ビーム3も上下動することができる。
【0021】
図1に示すように、2本の第2ビーム4は、長尺状部材であり、荷物Wの幅方向に略直交する方向に沿って相互に平行になるように配置される。第2ビーム4は、それぞれが前方及び後方において吊下げ部材5を有し、2本の第1ビーム3の間に渡される。第2ビーム4は、第1ビーム3の上方から掛け渡されるように配置される。
【0022】
図1に示すように、吊下げ部材5は、揚重作業時に荷物Wに対して係合等によって接続される部材であり、第2ビーム4から垂下される。吊下げ部材5として具体的には、例えばスリング、チェーン又はフック等を用いることができる。
【0023】
上述のリフト装置1に対して、
図2に示す制御系を有する伸縮制御装置100が適用される。
図2に示すように、伸縮制御装置100は、第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63、及び第4ストロークセンサ64と、演算装置7と、操作入力部8と、コントローラ9とを備える。
【0024】
第1ストロークセンサ61は、第1伸縮部材21の伸縮量を検出する部材である。第2ストロークセンサ62は、第2伸縮部材22の伸縮量を検出する部材である。第3ストロークセンサ63は、第3伸縮部材23の伸縮量を検出する部材である。第4ストロークセンサ64は、第4伸縮部材24の伸縮量を検出する部材である。具体的には、第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63、及び第4ストロークセンサ64は長さ検出器の一種であり、例えば第1伸縮部材21が伸縮した長さを伸縮量として検出する。
なお、第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63、及び第4ストロークセンサ64は、本発明における伸縮量検出部の一例である。
【0025】
後述するように伸縮制御装置100には安全性向上のために、リフト停止機能が設定されている。リフト停止機能は、各伸縮部材間の伸縮量の差分に基づいて作用する。よって、第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63、及び第4ストロークセンサ64が検出する伸縮量は、演算装置7に入力されて差分の算出等が行われる。
【0026】
操作入力部8は、作業者が上記リフト装置1の操作を入力する部材であり、適宜の押ボタン、及び操作レバー等が設けられる。
【0027】
コントローラ9は、演算装置7による演算結果と、操作入力部8に入力された操作に基づいた信号とが入力される。コントローラ9は、揚重作業の状況を数値化又は画像化してディスプレイ等の表示部材10に表示させることができる。また、コントローラ9は、演算結果又は操作入力部8で入力された操作に基づいて、第1電動モータ111、第2電動モータ112、第3電動モータ113及び第4電動モータ114に対して駆動信号を出力することができる。なお、第1電動モータ111、第2電動モータ112、第3電動モータ113及び第4電動モータ114は、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24をそれぞれ伸縮動作させるための部材である。
【0028】
次に、伸縮制御装置100を用いた伸縮制御方法の一実施形態について、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、伸縮制御方法を用いた伸縮動作停止の解除処理に係るフローチャートである。
【0029】
なお、前提として、リフト装置1及び伸縮制御装置100には、リフト停止機能が設定されているものとする。リフト停止機能によって、複数の伸縮部材を備えるリフト装置の安全性が担保される。具体的にリフト停止機能は、例えば第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の間の伸縮量の差分に基づいて、各伸縮部材の伸縮動作の継続又は停止を決定する機能である。なお、このリフト停止機能自体は従来から昇降装置等で用いられてきた機能である。リフト停止機能が有効である限り、伸縮量の差分が所定値を超えると、安全性担保のために伸縮動作が強制的に停止されるようになっている。
【0030】
先ず、伸縮制御装置100において、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24が、各伸縮部材を同時に伸縮させる伸縮動作中であるか否かをコントローラ9が判断する(ステップS1)。伸縮動作中であると判断された場合は、伸縮量検出工程に移る(ステップS1のYES)。伸縮動作中でないと判断された場合、例えば駆動停止中等の場合は、操作入力部8等を介して操作の入力がなされるまで伸縮動作は開始されない(ステップS1のNO)。
【0031】
次いで、第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63、及び第4ストロークセンサ64によって、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の各伸縮量を検出する(ステップS2)。この工程は、本発明の伸縮量検出部による伸縮量検出工程の一例である。
【0032】
次に、第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63、及び第4ストロークセンサ64で検出される各伸縮量の少なくとも一つが異常値であると検出する(ステップS3のYES)。この工程は、本発明の異常値検出部による異常値検出工程の一例である。
【0033】
異常値の検出形態としては、例えば各伸縮部材間の伸縮量の差分を演算装置7によって常に算出しておき、予め設定された所定値を、算出された差分が超えた場合に、少なくとも1つの伸縮量が異常値を示しているとコントローラ9が判断して、異常値を検出したこととする形態等を挙げることができる。すなわち、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の伸縮量の差分に一定以上の差異が生じると、異常値を検出したと判断することになる。
このときに用いる所定値は、荷物Wの種類、揚重作業に要求される精度等に鑑みて適宜に設定される。該所定値は、リフト停止機能のトリガーとなる値である。
【0034】
なお、異常値が検出されない場合は、リフト停止機能が作用しないので、伸縮動作が継続される(ステップS3のNO)。
【0035】
異常値検出工程において異常値が検出されると、リフト停止機能が作用する。つまり、異常値が検出されることによって、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の各伸縮動作が一致していないことになるので、安全な揚重作業を安全に遂行することができないと判断される。このときに、安全性を担保するためにリフト停止機能が作用し、コントローラ9から第1電動モータ111、第2電動モータ112、第3電動モータ113及び第4電動モータ114に対して出力されていた駆動信号が遮断される。これにより、各伸縮部材の伸縮動作が停止する(ステップS4)。
【0036】
次いで、異常値検出工程で検出された異常値が、一時的か恒久的かを判別する。この工程は、本発明の判別部による判別工程の一例である。
【0037】
ここで、伸縮量が異常値を示し得る状況について説明する。
該状況の一例として、例えば意図しない電気的なノイズ等がリフト装置1に入力されてしまうことによって、一時的に伸縮量が大きく変動してしまう状況が挙げられる。この場合、実際には各伸縮部材の伸縮量を目視等で比較してもリフト停止機能のトリガーである上記所定値を超えておらず、かつ各ストロークセンサも正常に駆動しているにも関わらず、ノイズ等の外的要因によって伸縮量のみが強制的に変動させられている。
【0038】
更に、伸縮量が異常値を示し得る状況の他の例として、例えば各伸縮部材の伸縮速度のズレに起因して、各伸縮量間の差分が上記所定値を超えてしまうことにより、恒久的に伸縮量が異常値を示す状況が挙げられる。この場合、各伸縮量間の差分は実際に生じているので、該差分を小さくする伸縮動作を行わない限りは、各伸縮量間の差分が上記所定値以下に戻ることは無い。
【0039】
例えば異常値が検出されるまでの各伸縮量の変化率が、伸縮速度に対して急激に変化する場合、及び、伸縮量の差分が上記所定値の数倍〜数百倍に変動する場合等は、各伸縮部材の伸縮速度の差異等によって生じ得るものではないので、検出された異常値が一時的であるという判別がなされる(ステップS5のYES)。
【0040】
これに対して、各伸縮量の変化率と伸縮速度とが比例関係又は略比例関係にある場合、及び、各伸縮量間の差分が上記所定値に漸次近づいた後に到達する場合等は、通常の伸縮動作で生じ得るものであるので、検出された異常値が恒久的であるという判別がなされる(ステップS5のNO)。検出された異常値が恒久的である場合は、本実施形態に係る伸縮動作停止の解除処理とは別の作業、例えば異常値が検出された原因を取り除く作業が発生する。
なお、本発明においては、異常値が恒久的であるという判別がなされる場合の伸縮量の変化形態を予め想定しておき、該想定以外で生じる異常値は、全て異常値が一時的であると判別するようにしても良い。
【0041】
続いて、一時的な異常値を示す伸縮量を特定する(ステップS6)。この工程は、本発明の特定部による特定工程の一例である。
ここでは、複数検出される伸縮量のうち、どの伸縮量が一時的な異常値を示しているかを特定する。なお、判別工程で各伸縮量の変化率、又は、伸縮量間の差分を用いたのであれば、一時的な異常値を示している伸縮量は判別工程で計算に用いた伸縮量であると容易に特定可能である。
【0042】
本発明に係る伸縮制御装置が適用される装置において、各伸縮量が表示部材10に表示されている場合は、一時的な異常値を示すと特定された伸縮量を強調表示する等して一時的な異常値であることを容易に視認可能にしておくのが良い。
【0043】
次に、一時的な異常値を仮の正常値に上書きする(ステップS7)。この工程は、本発明の上書き部による上書き工程の一例である。
上書きされる仮の正常値は、一時的な異常値を示している伸縮量が異常値を示すようになる前に示していた正常値である必要は無い。仮の正常値は、他の正常値を示している伸縮量と仮の正常値との差分が、リフト停止機能のトリガーとなる上記所定値を超えないように設定される。仮の正常値として、具体的には、他の正常値を示している伸縮量同士で差分を算出したときに上記所定値以下であれば、他の正常値を示す伸縮量の平均値、中間値、最大値又は最小値等を採り得る。
【0044】
上書き工程を経ることによって、伸縮動作の停止状態を解除するための準備が整う。
次に、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24を同時に伸縮させる伸縮動作の操作が、操作入力部8において再度入力されたか否かを、コントローラ9が判断する(ステップS8)。
【0045】
まず、操作が入力されている場合(ステップS8のYES)は、コントローラ9が第1電動モータ111、第2電動モータ112、第3電動モータ113及び第4電動モータ114に対して駆動信号を出力する。これにより、リフト停止機能による伸縮動作の停止状態が解除されて、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24を同時に伸縮する伸縮動作が再開する(ステップS9)。仮の正常値は上記所定値に鑑みて設定されているので、リフト装置1は各伸縮部材が伸縮動作を継続可能な状態となる。
なお、操作が入力されていない場合(ステップS8のNO)は、操作入力部8等を介して操作の入力がなされるまで伸縮動作は再開されない。
【0046】
なお、リフト装置1の安全性を向上するためには、リフト停止機能が作用することによって伸縮動作が停止している状態を、上書き工程後に自動で解除するのではなく、操作入力部8等において再度の操作の入力がなされるまで解除しないのが好ましい。
【0047】
以上により、本実施形態に係る伸縮制御方法の全ての工程が完了する。以上の工程を経た伸縮制御装置100における第1ストロークセンサ61、第2ストロークセンサ62、第3ストロークセンサ63及び第4ストロークセンサ64では、正常値を示す伸縮量と、仮の正常値を示す伸縮量とが検出された状態となって伸縮動作が再開される。
【0048】
ここで、一時的な異常値が検出された場合に、該一時的な異常値が示されている限りリフト停止機能が作用し続けるので、伸縮動作を再開することができない。これに鑑みて、従来ではリフト停止機能を無効にし、一時的な異常値は放置した状態で伸縮動作を再開していた。一時的な異常値を示している伸縮量の実際の伸縮量が不明な状態では、リフト停止機能が無効となっているので、他の正常値を示している伸縮量と作業者による視認作業とに基づいて、伸縮速度を低速にして慎重に伸縮動作を行う必要があった。
また、例えば半導体製造装置等の部品のように揚重作業にミリ単位の伸縮制御が必要な荷物を揚重する場合は、リフト停止機能を無効にして作業者が視認しつつ伸縮動作を行ったとしても、要求される揚重作業の精度を満足することができない可能性があった。
【0049】
上記従来の問題点に対して、本実施形態では、正常値を示す伸縮量と、仮の正常値を示す伸縮量との差分が、リフト停止機能のトリガーとなる上記所定値以下であるので、上書き工程完了後にはリフト停止機能を無効にすることなく、伸縮動作の継続が可能である。
【0050】
本発明においては、伸縮制御方法の各工程を全て自動で行っても良く、工程毎にディスプレイ等の表示部材10で状況を作業者が確認しつつ、段階的に処理を進めていくようにしても良い。
【0051】
図1に示したリフト装置1を用いて、例えば半導体製造装置の部品等の揚重作業を行う場合、荷物Wを半導体製造装置の容器本体から地切りするときに、高い精度で荷物Wを水平状態に維持することが要求される。これは、荷物Wを容器本体に戻すときにも同様であり、高い精度で荷物Wを水平状態に維持しつつ容器本体の上部に載置する必要がある。
【0052】
揚重作業に高い精度が要求される場合、荷物Wが地切りされたときの第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の各伸縮量が重要となる。
【0053】
従来であれば、特に荷物Wが容器本体に戻されるときに作業者の目視等に基づいて地切り時の姿勢を再現しようとしていたので、地切り位置近傍では伸縮速度を低速又は極低速に設定せざるを得なかった。これにより、揚重作業に係る作業効率の低下を招く可能性があった。
【0054】
これに対して、リフト装置1では荷物Wが地切りされたときの各伸縮部材の各伸縮量を基点として登録することができる。任意の点の基点登録作業について、
図4及び
図5を参照しつつ以下に説明する。
図4及び
図5は、基点登録作業の説明図である。なお、
図4(B)、
図4(D)、
図4(E)、
図5(B)、
図5(D)及び
図5(E)は、表示部材10に示される各伸縮量の表示態様の一例である。
【0055】
図4(A)は、
図1に示したリフト装置1を第1伸縮部材21と第3伸縮部材23とが前方に位置する方向から見た側面図である。また、
図4(B)は、
図4(A)に示す状態の第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24の各伸縮量を示す説明図である。なお、
図4(B)に示した伸縮量は、各欄の下段に全縮状態からの各伸縮量を示し、上段に基点位置からの各伸縮量を示す。
【0056】
図4(A)に示す状態では、各伸縮部材が全縮状態であり、この状態を基点として予め登録されている。
図4(A)に示すリフト装置1は、吊下げ部材5が撓んだ状態であり、荷物Wは地切りされていない。よって、
図4(B)に示す伸縮量は、全ての項目がゼロとなっている。
【0057】
図4(C)に示すリフト装置1は、
図4(A)に示した状態から荷物Wが地切りされる位置まで各伸縮部材が伸長した状態である。この状態での各伸縮量は、
図4(D)に示す各欄の上段の値と下段の値とから明らかなように、全縮状態からの各伸縮量と、全縮時を基点としたときの基点からの各伸縮量とが一致している。
【0058】
荷物Wが地切りされる位置で操作入力部8等を用いて基点登録を行うことによって、
図4(E)に示すように、各データの下段に示した全縮状態からの各伸縮量は維持され、上段に示した基点からの各伸縮量がリセットされてゼロになる。
【0059】
続いて
図5(A)に示すリフト装置1は、吊下げ部材5により荷物Wを吊下げつつ
図4(C)に示した状態から各伸縮部材が更に伸長した状態である。この状態での各伸縮量は、
図5(B)に示すように、全縮状態からの各伸縮量と、基点として登録した荷物Wの地切り位置からの各伸縮量とが、いずれも
図4(E)に示した数値より大きくなっている。
【0060】
更に
図5(C)に示すリフト装置1は、吊下げ部材5により荷物Wを吊下げつつ
図5(A)に示した状態から各伸縮部材が短縮した状態である。この状態での各伸縮量は、
図5(D)に示すように、全縮状態からの各伸縮量と、基点として登録した荷物Wの地切り位置からの各伸縮量とが、いずれも
図5(B)に示した数値より小さくなっている。
【0061】
図5(C)に示した状態から各伸縮部材を更に短縮すると、荷物Wが地切りされる位置まで戻すことができる。このときの各伸縮量は、
図5(E)に示すように、
図4(E)に示した各伸縮量と同じになる。
【0062】
荷物Wを地切り位置まで戻す際に、基点として登録した荷物Wの地切り位置からの伸縮量を表示部材10等に示すようにしているので、各伸縮部材の必要な各伸縮量が容易に分かる。更に、各伸縮量として全縮状態からの各伸縮量も示しているので、伸縮動作中の荷物Wの水平状態等を管理し易い。よって、各伸縮部材の伸縮動作全体、及び、特に荷物Wの地切り位置近傍での各伸縮部材の伸縮動作について、従来よりも迅速かつ正確に行うことができるので、揚重作業に係る作業効率が向上する。
【0063】
図1に示したリフト装置1は、屋内での揚重作業をすることが多い。作業領域によっては、第1伸縮部材21、第2伸縮部材22、第3伸縮部材23及び第4伸縮部材24をそれぞれ伸長すると、各伸縮部材が全伸状態となる前に、各伸縮部材、第1ビーム3及び第2ビーム4等が作業領域の天井面等に接触してしまう可能性がある。
【0064】
これに鑑みて、従来では所定の高さまで伸長した各伸縮部材を検知するリミットスイッチと、該リミットスイッチにより検知信号が入力されると各伸縮部材の伸長動作を停止する停止手段とを設けることによって、伸長動作の規制を行っていた。
しかしながら、作業領域が変更される度に、伸長可能な高さも変わるので、リミットスイッチ等の配置を変更する必要があった。
【0065】
図1に示したリフト装置1では、
図4(E)に示した基点の登録と同様に、操作入力部8によって上限値も登録可能であり、各伸縮部材が登録された上限値まで伸長すると停止させる停止手段を適宜に設けておくことができる。これにより、各伸縮部材の伸長動作を安全な範囲内に規制することができる。
【0066】
伸長動作の規制形態として具体的には、例えば各伸縮部材のうち、第1伸縮部材21の伸長高さが登録された上限値に達したときに全ての伸縮部材の伸長動作を停止する形態、又は、上限値に達した伸縮部材から順に伸長動作を停止していき、全ての伸縮部材が上限値に達した時点でリフト装置1の伸長動作を完了とする形態等を採用することができる。
【0067】
この伸長高さの規制によって、天井面、又は作業領域上方の障害物の高さを一旦設定すれば、伸縮部材の伸長動作が規制される。これにより、伸長高さの限界値付近では慎重に作業する必要が無くなるので、揚重作業に係る作業効率が向上する。リミットスイッチ等の検知手段を設ける必要性及び検知手段の調整の必要性も無くなる。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。